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特許7631759軟質チューブ及びその製造方法、並びにシート搬送ローラー及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】軟質チューブ及びその製造方法、並びにシート搬送ローラー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20250212BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20250212BHJP
   B29D 23/00 20060101ALI20250212BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20250212BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
B65H5/06 A
G03G15/00 420
B29D23/00
B29C45/14
B29C45/26
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020197164
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085460
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-06-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今津 賀文
(72)【発明者】
【氏名】森 基
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-120944(JP,A)
【文献】特開平1-113216(JP,A)
【文献】特開2016-97645(JP,A)
【文献】特開2001-79894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/06
G03G 15/00
B29D 23/00
B29C 45/14
B29C 45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート搬送ローラーのシート搬送部に使用する軟質チューブであって、
外周面に二乗平均平方根傾斜Sdqが0.30~0.44の範囲内にある凹凸形状を有する領域を有するとともに、前記外周面の凹凸形状を有する領域の算術平均高さSaが3.4~22.0μmの範囲内にあり、前記軟質チューブの25℃におけるショアA硬度が40~80の範囲内にあることを特徴とする軟質チューブ。
【請求項2】
前記凹凸形状がランダムな凹凸形状であることを特徴とする請求項1に記載の軟質チューブ。
【請求項3】
前記外周面にパーティングラインが存在しないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軟質チューブ。
【請求項4】
前記軟質チューブの構成材料が、熱可塑性エラストマーを含むことを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の軟質チューブ。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の軟質チューブを製造する軟質チューブの製造方法であって、
射出成形又は圧縮成形で成形することを特徴とする軟質チューブの製造方法。
【請求項6】
軸部材と前記軸部材の外周面に配設されるチューブ状のシート搬送部を備えるシート搬送ローラーであって、
前記シート搬送部が、請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の軟質チューブであることを特徴とするシート搬送ローラー。
【請求項7】
前記軟質チューブの構成材料のSP値と前記軸部材の構成材料のSP値の差が1(cal/cm1/2以下であることを特徴とする請求項に記載のシート搬送ローラー。
【請求項8】
請求項又は請求項に記載のシート搬送ローラーを製造するシート搬送ローラーの製造方法であって、
前記軟質チューブを成形する工程と、
前記軟質チューブを保持する保持部と前記軟質チューブの内周面に接するように前記軸部材が成形される成形部を有する金型の前記保持部に前記軟質チューブを挿入する工程と、
前記金型の成形部で前記軸部材を成形する工程と
を有する特徴とするシート搬送ローラーの製造方法。
【請求項9】
前記軸部材を成形する工程において、前記軟質チューブの内周面と前記軸部材の外周面を溶融接合することを特徴とする請求項に記載のシート搬送ローラーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質チューブ及びその製造方法、並びにシート搬送ローラー及びその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、シート搬送部材として用いる外周面に凹凸形状を有する軟質チューブにおいて、製造時の凹凸削れが抑制された軟質チューブ及びその製造方法、並びに、当該軟質チューブを用いたシート搬送ローラー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター複合機等の複合機(MFP)等のシート搬送ローラーは、回転可能な軸部材とその外周面に配設されるチューブ状のシート搬送部が組み合わされた構成となっている。シート搬送部は紙等のシートをグリップして搬送できるようにエチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、熱可塑性エラストマーなどのゴム弾性を有する軟質部材が使用され、押出成形や射出成形にて形状を作ることが多い。
【0003】
しかし、このようなシート搬送ローラーを使って、例えば、紙を搬送すると搬送した紙から発生する紙粉がシート搬送部に付着し、その紙粉が紙と再度接触した際にシート搬送部が滑って空回りする欠点や印刷後の紙に紙粉が再付着して紙粉の跡が残ってしまう欠点がある。これらの欠点を回避する方法として、押出成形によりシート搬送部の外周面に、軸部材の長さ方向と平行なローレット溝を設けることで、シート搬送部に紙粉が付きにくい構成にする方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
そのメカニズムは、シート搬送時に紙粉を凹部(溝)に逃がすことでシート搬送部表面に紙粉が付着するのを防止するというものである。しかし、シート搬送部の外周面にローレット溝を設ける場合、ローレット溝の凹凸の形状により、例えば、ローレット溝の凹凸が離れていると、シート搬送部とシートの間の面圧が断続的になりグリップにムラが発生しシートの搬送性に影響することがある。また、ローレット溝の凹凸の距離を短くすれば、シートの搬送性は改善するが、凸部がシートと強く接触しシートに凸部の跡が発生するか問題がある。
【0005】
このような問題を解決するために、特許文献2には、硬度がショアAスケールで10~30°のゴムや熱可塑性エラストマーからなるシート搬送部の外周面に表面粗さRaが30~80μmのシボ模様を付けることで、シート搬送部への紙粉付着を抑制しシート搬送性を確保する方法が提案されている。特許文献2では、シート搬送部の外周面に上記のシボ模様をつけるために、プレス成形(圧縮成形)や射出成形等の金型を用いた成形法が用いられている。
【0006】
しかし、金型の凹凸形状を利用して外周面に凹凸形状を持つ軟質チューブを成形し、成形後、軸方向(長さ方向)に押し出す又は引き抜いて離型しようとするとアンダーカットの状態となり、金型の凹凸により、軟質チューブの外周面の凹凸が削れる、いわゆる「凹凸削れ」が発生しやすくなることが難点である。また、硬度がショアAスケールで10~30°のように硬度が低いゴム弾性体の場合は、タック性が上がって金型への貼りつきが強くなるため、離形時に凹凸がより一層削れやすくなることが問題である。
【0007】
径方向に離型する金型構成にすれば、アンダーカットの箇所が少なくなるものの、パーティング部付近は相変わらずアンダーカットが残ったままのため、凹凸削れの根本改善にはならない。加えて、可動側金型と固定側金型の加工誤差でパーティング部に段差ができるため、シート搬送時に異音が発生する、シートにダメージを与える等の新たな問題が発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第3813480号公報
【文献】特許第3707706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、シート搬送部材として用いる外周面に凹凸形状を有する軟質チューブにおいて、製造時の凹凸削れが抑制された軟質チューブ及びその製造方法、並びに、当該軟質チューブを用いたシート搬送ローラー及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、軟質チューブの外周面の凹凸形状を、二乗平均平方根傾斜Sdqが0.03~0.50の範囲内となるように調整することで、製造時の凹凸削れが抑制されること見出し本発明に至った。すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0011】
1.シート搬送ローラーのシート搬送部に使用する軟質チューブであって、
外周面に二乗平均平方根傾斜Sdqが0.30~0.44の範囲内にある凹凸形状を有する領域を有するとともに、前記外周面の凹凸形状を有する領域の算術平均高さSaが3.4~22.0μmの範囲内にあり、前記軟質チューブの25℃におけるショアA硬度が40~80の範囲内にあることを特徴とする軟質チューブ。
【0014】
.前記凹凸形状がランダムな凹凸形状であることを特徴とする第1項に記載の軟質チューブ。
【0015】
.前記外周面にパーティングラインが存在しないことを特徴とする第1項又は第2項に記載の軟質チューブ。
【0016】
.前記軟質チューブの構成材料が、熱可塑性エラストマーを含むことを特徴とする第1項から第項までのいずれか一項に記載の軟質チューブ。
【0017】
.第1項から第項までのいずれか一項に記載の軟質チューブを製造する軟質チューブの製造方法であって、射出成形又は圧縮成形で成形することを特徴とする軟質チューブの製造方法。
【0018】
.軸部材と前記軸部材の外周面に配設されるチューブ状のシート搬送部を備えるシート搬送ローラーであって、前記シート搬送部が、第1項から第項までのいずれか一項に記載の軟質チューブであることを特徴とするシート搬送ローラー。
【0019】
.前記軟質チューブの構成材料のSP値と前記軸部材の構成材料のSP値の差が1(cal/cm1/2以下であることを特徴とする第項に記載のシート搬送ローラー。
【0020】
.第項又は第項に記載のシート搬送ローラーを製造するシート搬送ローラーの製造方法であって、前記軟質チューブを成形する工程と、前記軟質チューブを保持する保持部と前記軟質チューブの内周面に接するように前記軸部材が成形される成形部を有する金型の前記保持部に前記軟質チューブを挿入する工程と、前記金型の成形部で前記軸部材を成形する工程とを有する特徴とするシート搬送ローラーの製造方法。
【0021】
.前記軸部材を成形する工程において、前記軟質チューブの内周面と前記軸部材の外周面を溶融接合することを特徴とする第項に記載のシート搬送ローラーの製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の上記手段により、シート搬送部材として用いる外周面に凹凸形状を有する軟質チューブにおいて、製造時の凹凸削れが抑制された軟質チューブ及びその製造方法、並びに、当該軟質チューブを用いたシート搬送ローラー及びその製造方法を提供することができる。本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、以下のように推察している。
【0023】
本発明の軟質チューブは、外周面に二乗平均平方根傾斜Sdqが0.03~0.50の範囲内にある凹凸形状を有する領域を有する。凹凸形状を有する領域を、以下「凹凸領域」ともいう。二乗平均平方根傾斜Sdq(以下、単に「Sdq」ともいう。)とは、定義領域の全ての点における傾斜の二乗平均平方根により算出されるパラメーターであり、具体的には、下記式(I)を用いて算出される。Sdqは、粗さ曲線上の二乗平均平方根傾斜Rdq(JIS B0601に規定)を面に拡張したパラメーターに相当し、ISO25178に規定されたパラメーターである。
【0024】
【数1】
【0025】
式(I)中の記号は以下の意味を示す。
A:測定範囲の面積
∂z(x,y)/∂x:X方向に隣り合う点の傾斜
∂z(x,y)/∂z:Y方向に隣り合う点の傾斜
【0026】
本発明者らは、外周面の凹凸形状を表す各種パラメーターのうちSdqに注目し、当該Sdqを調整することで、シート搬送性と製造時の凹凸削れの抑制の両立が可能であることを見出した。軟質チューブは、外周面の凹凸領域におけるSdqが0.03以上であれば、これをシート搬送ローラーに用いた場合に、実使用に問題ないレベルのシート搬送性を実現できる。軟質チューブは、外周面の凹凸領域におけるSdqが0.50以下であれば、軟質チューブを製造する際に凹凸削れの抑制が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A】本発明の軟質チューブの実施形態の一例を示す斜視図
図1B図1Aに示す軟質チューブの平面図
図1C図1Aに示す軟質チューブを図1BのIC-ICで切断した断面図
図1D図1Aに示す軟質チューブを図1BのID-IDで切断した断面図
図2】本発明のシート搬送ローラーの実施形態の一例を示す斜視図
図3A】本発明の軟質チューブの実施形態の一例の外周面を撮影した写真(18倍)
図3B】本発明の軟質チューブの実施形態の一例の外周面近傍の拡大断面図
図4A】本発明の軟質チューブの製造方法の実施形態の一例を示す断面図
図4B】本発明の軟質チューブの製造方法の実施形態の別の一例を示す断面図
図4C】軟質チューブにおけるパーティングラインを説明する斜視図
図5A】本発明のシート搬送ローラーの製造方法の実施形態の一例に用いる金型の断面図
図5B】本発明のシート搬送ローラーの製造方法の実施形態の一例の軟質チューブを挿入工程後の断面図
図5C】本発明のシート搬送ローラーの製造方法の実施形態の一例の軸部材の成形工程後の断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の軟質チューブは、シート搬送ローラーのシート搬送部に使用する軟質チューブであって、外周面に二乗平均平方根傾斜Sdqが0.03~0.50の範囲内にある凹凸形状を有する領域を有することを特徴とする。この特徴は、各請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0029】
Sdqは、例えば、測定機として3次元白色光干渉型顕微鏡(Wyko(ブルカージャパン社製)を用いて測定することができる。具体的には、凹凸領域について、ランダムに5箇所の測定領域2.3mm×1.7mmを選択する。各測定領域において上記測定機を用いて、0.5μmピッチで位置座標(x,y,z)を測定し、位置座標を測定した各測定点においてX方向に隣り合う点の傾斜及びY方向に隣り合う点の傾斜を算出する。
【0030】
ランダムな5箇所の各測定領域において、各測定点で得られた値をそれぞれ式(I)に挿入して各測定領域におけるSdqを算出し、さらに、5箇所の測定領域におけるSdqの平均値を凹凸領域のSdqとする。
【0031】
本発明の軟質チューブの実施態様としては、前記外周面の凹凸形状を有する領域の算術平均高さSaが3.4~50.0μmの範囲内にあることが好ましい。算術平均高さSa(以下、単に「Sa」)とは、定義領域の全ての点における平均面に対する高さの絶対値により算出されるパラメーターであり、具体的には、下記式(II)を用いて算出される。Saは、粗さ曲線上の算術平均高さRa(JIS B0601に規定)を面に拡張したパラメーターに相当し、ISO25178に規定されたパラメーターである。
【0032】
【数2】
【0033】
式(II)中の記号は以下の意味を示す。
A:測定範囲の面積
|Z(x,y)|:平均面に対する高さの絶対値
【0034】
Saの測定は、例えば、凹凸領域について、Sdqの測定領域と同じ5箇所の測定領域で、上記同様の測定機を用いて行う。まず、選択された測定領域において0.5μmピッチで位置座標(x,y,z)を測定し、当該測定領域における平均面の高さを算出する。次いで、各位置座標を測定した各測定点における平均面に対する高さの絶対値を求め、式(II)に挿入してSaを求める。さらに、5箇所の測定領域におけるSaの平均値を凹凸領域のSaとする。
【0035】
軟質チューブは、外周面の凹凸領域におけるSaが3.4μm以上であると、シート搬送性が良好であるとともに、シート搬送時に発生する紙粉等の軟質チューブへの付着の抑制が可能となる。軟質チューブは、外周面の凹凸領域におけるSaが50μm以下であると軟質チューブを製造する際の凹凸削れをより抑制できる。
【0036】
本発明の軟質チューブの実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記軟質チューブの25℃におけるショアA硬度が40~85の範囲内にあることが好ましく、前記凹凸形状がランダムな凹凸形状であることが好ましい。なお、ショアA硬度は、JIS Z2246に準拠した方法で測定できる。以下、本明細書において、特に断りのない限りショアA硬度は、25℃において、JIS Z2246に準拠した方法で測定したショアA硬度をいう。
【0037】
本発明の軟質チューブの実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記外周面にパーティングラインが存在しないことが好ましい。なお、パーティングラインとは、製品に金型の合わせ目(パーティング部)に沿って生成されたライン状の段差やバリをいう。また、パーティングラインの詳細については、後述する。
【0038】
本発明の軟質チューブの実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記軟質チューブの構成材料が、熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。
【0039】
本発明の軟質チューブの製造方法は、上記本発明の軟質チューブを製造する軟質チューブの製造方法であって、射出成形又は圧縮成形で成形することを特徴とする。射出成形又は圧縮成形で成形すれば、生産性がよく低コストで生産できる上に、外周面の凹凸形状をSdq0.03~0.50にすれば、課題である凹凸削れを抑制できるためである。
【0040】
本発明のシート搬送ローラーは、軸部材と前記軸部材の外周面に配設されるチューブ状のシート搬送部を備えるシート搬送ローラーであって、前記シート搬送部が、上記本発明の軟質チューブであることを特徴とする。
【0041】
本発明のシート搬送ローラーの実施態様としては、軟質チューブと軸部材の密着性を高める観点から、前記軟質チューブの構成材料のSP値と前記軸部材の構成材料のSP値の差が1(cal/cm1/2以下であることが好ましい。なお、本明細書において、SP値は、Fedorsによる方法[Polym.Eng.Sci.14(2)152,(1974)]により計算された理論値である。」は、Fedorsによる方法[Polym.Eng.Sci.14(2)152,(1974)]により計算された数値である。
【0042】
本発明のシート搬送ローラーの製造方法は、前記軟質チューブを成形する工程と、前記軟質チューブを保持する保持部と前記軟質チューブの内周面に接するように前記軸部材が成形される成形部を有する金型の前記保持部に前記軟質チューブを挿入する工程と、前記金型の成形部で前記軸部材を成形する工程とを有する特徴とする。
【0043】
本発明のシート搬送ローラーの製造方法の実施態様としては、軟質チューブと軸部材の密着性を高める観点から、前記軸部材を成形する工程において、前記軟質チューブの内周面と前記軸部材の外周面を溶融接合することが好ましい。
【0044】
以下、図面を参照しながら、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。ただし、本発明の範囲は図示例に限定されない。図示例の軟質チューブ及びシート搬送ローラーは本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0045】
[軟質チューブ]
本発明の軟質チューブは、シート搬送ローラーのシート搬送部に使用する軟質チューブであって、外周面に二乗平均平方根傾斜Sdqが0.03~0.50の範囲内にある凹凸形状を有する領域を有することを特徴とする。
【0046】
本発明の軟質チューブは軟質材料で構成される。当該軟質材料は、例えば、JIS K6251に準拠して測定される伸び(伸張率)が100%以上の材料である。軟質材料としては、応力を加えるとひずみが生じるが、除荷すれば短時間で略元の寸法に回復するゴム弾性を有することが好ましい。
【0047】
図1Aは本発明の軟質チューブの実施形態の一例である軟質チューブ1の斜視図を示す。図1B図1C及び図1Dは、図1Aに示す軟質チューブ1の平面図、当該平面図において軟質チューブ1をIC-ICで切断した断面図、及びID-IDで切断した断面図を示す。図2は、本発明のシート搬送ローラーの実施形態の一例を示す斜視図である。図2に示すシート搬送ローラー10は、軸部材2と軸部材2の外周面S3に配設されるチューブ状のシート搬送部である、図1A~1Dに図示される軟質チューブ1を備える。図3Aは、本発明の軟質チューブの実施形態の一例の外周面を撮影した写真(18倍)であり、図3Bは、本発明の軟質チューブの実施形態の一例の外周面近傍の拡大断面図を示す。
【0048】
図1A図1Dに示す軟質チューブ1は、内径φ1、外径φ2、長さLの軟質材料からなるチューブ体である。軟質チューブ1は、シート搬送ローラーのシート搬送部に用いられる。軟質チューブ1が用いられるシート搬送ローラーとして、図2に示すシート搬送ローラー10が例示できる。図2には、併せてシート搬送ローラー10がシートPを搬送する機構を模式的に示す。
【0049】
シート搬送ローラー10は、例えば、軸部材2が周方向、図2ではRD方向に回転することで軟質チューブ1が同じ方向に回転し、その回転により軟質チューブ1の外周面S1に接するように配置されたシートPがグリップされて図2中のPD方向に搬送される機構である。具体的には、シートPは、例えば、シート搬送ローラー10の軟質チューブ1と、軟質チューブ1に接するように対向して配置される円柱状の転動体である「ころ」(図示せず)との間に挟持され、軟質チューブ1ところの間を通過するかたちで搬送される。
【0050】
軟質チューブ1の外周面S1は、搬送されるシートに接触する面である。外周面S1は、Sdqが0.03~0.50の範囲内にある凹凸領域を有する。Sdqが0.03~0.50の範囲内にある凹凸領域を以下「凹凸領域A」ともいう。外周面S1において、凹凸領域Aは、軟質チューブ1の長さ方向に所定幅Wをもって外周の全周に亘って存在することが好ましい。なお、凹凸領域Aは、凹凸領域A全体としてSdqが0.03~0.50の範囲内にある限り、Sdqが0.03~0.50の範囲内にある単一の凹凸形状の領域からなってもよく、Sdqが0.03~0.50の範囲内にある異なる凹凸形状を有する複数の領域から構成されていてもよい。
【0051】
所定幅Wは、シートの搬送力を担保できれば特に制限されない。なお、軟質チューブ1における外周面S1は、所定幅W外の領域を有する場合は、その領域は凹凸のない平坦領域であってよい。
【0052】
ここで、本明細書において、凹凸領域とは、10倍の顕微鏡観察において、目視で凹凸形状が認められる領域をいう。
【0053】
凹凸領域Aにおける、Sdqは0.03~0.50である。Sdqが当該範囲内であれば、軟質チューブをシート搬送ローラーに用いた場合に、実使用に問題ないレベルのシート搬送性を実現できるとともに、軟質チューブを製造する際に凹凸削れの抑制が可能である。本発明の効果をより顕著に発現できる観点から、Sdqは、0.30~0.44の範囲内にあることが好ましい。
【0054】
Sdqは凹凸形状の凹凸の傾斜に係るパラメーターであり、Sdqが小さいほど凹凸の傾斜が緩やかであることを示す。Sdqが過度に小さいと、山頂点の間隔が長くなりすぎてグリップ力の低下やグリップムラが発生してしまう。シート搬送性については、軟質チューブの材質、形状、シートの材質等によるが、本発明の軟質チューブによれば、概ね以下のシートについて、実使用に問題ないレベルのシート搬送性が得られる。
【0055】
本発明において、シート搬送ローラーが対象とするシートとしては、プリンター複合機等の複合機(MFP)等に記録媒体として用いられるシートが特に制限なく使用可能である。シートの例には、塗工紙(例えばアート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙、キャスト紙等)や非塗工紙等の紙製シート;ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート等のプラスチックで構成されるプラスチック製シート;金属類やガラス等の無機物からなるシート;が含まれる。
【0056】
シートの厚みや形状等は、本発明の画像形成方法により得られる画像記録物の用途に応じて適宜選択される。
【0057】
凹凸削れについては、軟質チューブを構成する軟質材料の硬度にもよるが、Sdqが、上記の上限値以下であれば、金型の種類を問わずアンダーカットの状態を招くことが殆どない。
【0058】
凹凸領域AにおけるSaは、上に説明したとおり3.4~50.0μmの範囲内が好ましく、3.4~22.0μmの範囲内がより好ましい。
【0059】
図3Aに、本発明の軟質チューブの実施形態の一例の外周面の凹凸領域Aを撮影した写真(18倍)を示す。図3Aに示す凹凸領域Aでは、凹凸形状がシボ模様としてランダムに形成されている。本発明の軟質チューブにおいて、凹凸領域Aにおける凹凸形状は、このようなランダムな凹凸形状であることが好ましい。ランダムな凹凸形状であれば、紙粉等の軟質チューブへの付着をより効率よく抑制することが可能となる。ランダムな凹凸形状の例としては、シボ模様以外に、ウロコ模様等の皮革模様、梨地模様、木目、岩目、砂目、布目、絹目等の布地模様、不規則な幾何学模様等が挙げられる。
【0060】
上記凹凸形状は、例えば、金型を用いた成形方法において、軟質チューブの外周面に対応する成形面の形状を軟質チューブの外周面と面対称の形状に加工した金型を用いて、軟質チューブを金型成形することで形成可能である。この場合、金型の成形面における凹凸領域Aに対応する領域の凹凸形状はSdqが0.03~0.50であり、Sdqは0.30~0.44が好ましい。また、金型の成形面における凹凸領域Aに対応する領域の凹凸形状はSaが3.4~50.0μmの範囲内にあるのが好ましく、3.4~22.0μmの範囲内がより好ましい。
【0061】
ここで、後述の図4Bに示されるように径方向に金型が離型する方法では、得られる軟質チューブ1の外周面S1に、金型の合わせ目(パーティング部PT)に対応して、長さ方向の全長に亘って延びるパーティングラインPLが形成される(図4Cを参照)。パーティングラインが存在するとシート搬送時に異音が発生する、シートにダメージを与える等の問題が懸念されるため、軟質チューブ1は外周面S1にパーティングラインを有しないことが好ましい。
【0062】
また、図3Bは、本発明の軟質チューブの実施形態の一例の外周面近傍の拡大断面図を示す。図3Bに示す断面は、図3Aに示されるシボ模様のように凹凸形状がランダムに配された凹凸領域Aの断面であり、例えば、図1Cに示される、軟質チューブを長さ方向に直交する面で切断した断面の外周面近傍の拡大図である。図3Aに示されるシボ模様のように凹凸形状がランダムに配された凹凸領域Aでは、図1Dに示される、軟質チューブを長さ方向に平行な面で切断した断面の外周面近傍の拡大図においても、図3Bで示されるのと同様に凹凸形状がランダムに配された状態の断面図が得られる。
【0063】
軟質チューブ1を構成する軟質材料は、上記のとおり、例えば、JIS K6251に準拠して測定される伸び(伸張率)が100%以上の材料であり、応力を加えるとひずみが生じるが、除荷すれば短時間で略元の寸法に回復するゴム弾性を有することが好ましい。また、軟質チューブ1を構成する軟質材料としては、ショアA硬度が40~85の範囲内にあることが好ましく、60~80の範囲内にあることがより好ましい。
【0064】
ショアA硬度が40以上であることで、軟質チューブの製造時における凹凸削れをより抑制できる。さらに、シート搬送時に発生する紙粉等の軟質チューブへの付着をより抑制できる。ショアA硬度が85以下であることで、シート搬送性も十分に確保できる。
【0065】
軟質チューブ1を構成する軟質材料としては、従来から公知の、特にシート搬送ローラーのシート搬送部に用いられているゴム及び熱可塑性エラストマーから選択される少なくとも1種の材料を主として含有する軟質材料が挙げられる。軟質チューブの構成する軟質材料には、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。軟質チューブ1は構成材料として熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。
【0066】
ゴムとして、具体的には、ブチルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム、1,2-ポリブタジエン、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。
【0067】
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、塩素化ポリエチレン、塩ビ系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、アイオノマー、エチレンビニルアセテート(EVA)等が用いられる。ショアA硬度の観点からスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー等が好ましい。
【0068】
熱可塑性エラストマーとしては、市販品を用いることができる。具体的には、スチレン系エラストマーとして、アーネストン(登録商標)CJシリーズ、CEシリーズ(クラレプラスチックス社製)、テファブロック(登録商標)(三菱ケミカル社製)等が挙げられる。また、オレフィン系エラストマーとして、トレックスプレーン(商標名)(三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
【0069】
また、軟質チューブ1を構成する軟質材料としては、熱可塑性エラストマーと樹脂を適宜混合して、適度に硬度を有する軟質材料を作製して用いてもよい。樹脂としては、以下の動的架橋熱可塑性エラストマーの成分として用いる樹脂と同様の樹脂が挙げられる。樹脂としては、ポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。
【0070】
さらに、樹脂と熱可塑性エラストマーのどちらか1成分か又は2成分以上の混合組成物の中に架橋したゴム成分を微分散した動的架橋熱可塑性エラストマーを用いてもよい。熱可塑性エラストマー及びゴム成分としては、上記に例示した化合物を用いることができる。
【0071】
動的架橋熱可塑性エラストマーの成分として用いる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、アクリロニトリル-スチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂等が用いられる。
【0072】
軟質チューブ1は、シート搬送ローラーのシート搬送部として用いる際に、例えば、図2に示すように、軸部材2の外周面S3に軟質チューブ1の内周面S2が接するように軸部材2の外側に配設される。軸部材2とともに軟質チューブ1が回転するためには、両者の界面、すなわち軸部材2の外周面S3と軟質チューブ1の内周面S2とは密着状態にあることが求められる。当該界面は接着剤を介して接着される、又は、熱融着等で界面が溶融接合されることが好ましい。
【0073】
上記において界面の良好な密着状態を得るために、軸部材2が樹脂を主体とする材料で構成され、軸部材2の外周面S3と軟質チューブ1の内周面S2とは熱融着で溶融接合されることが好ましい。このような溶融接合の条件を勘案すれば、軟質チューブ1を構成する材料はSP値が、軸部材2を構成する材料のSP値と近いことが好ましい。具体的には両者の差は1(cal/cm1/2以内であることが好ましい。
【0074】
図2に示すシート搬送ローラー10においては、1本の軸部材2に対して軸部材2の両端から略同じ距離だけ内側に軟質チューブ1の外側の端が位置するように2個の軟質チューブ1が間隔を置いて配設されている。軸部材2の長さは、例えば、搬送されるシートPの幅(搬送方向に直交する方向の長さ)より長くなるように設計され、2個の軟質チューブ1は外側の端がシートPの幅方向の両端より内側に位置するように配設されている。
【0075】
シート搬送ローラー10において、軟質チューブ1の個数及び配設位置は図2に示すものに限定されない。例えば、軟質チューブ1の1個がその両端が、軸部材2の両端より内側に位置するように、軸部材2の外周面S3に設けられた構成でもよい。また、例えば、3個以上の軟質チューブ1が等間隔を置いて軸部材2の外周面S3に設けられた構成でもよい。1本の軸部材2に対して、軟質チューブ1を複数個用いる場合、各軟質チューブ1の内径φ1及び外径φ2は同じにするが、長さLは、同じであっても異なってもよい。
【0076】
軟質チューブ1の大きさに関し、長さLの下限については、シートPの種類(材質、大きさ)にもよるが、シート搬送性を確保する観点から10mmが好ましい。軟質チューブ1における長さLの上限については、上記のとおりシート搬送ローラー10の設計により適宜選択される。軟質チューブ1の内径φ1は、軸部材2の外径と同じであり、概ね4~16mmの範囲内とすることができる。軟質チューブ1の外径φ2は、肉厚T;(φ2-φ1)/2と内径φ1により決まる。軟質チューブ1の肉厚Tは、シートPの種類や軟質チューブ1構成材料である軟質材料の種類にもよるが、シート搬送性を確保する観点から、概ね1~3mmの範囲内とすることができる。
【0077】
軟質チューブ1は、シート搬送性の観点から、外径φ2及び肉厚Tは長さ方向において均一であることが好ましい。さらに、肉厚Tは周方向においても均一であることが好ましい。
【0078】
軟質チューブ1の外周面S1は上記のとおりに構成される。軟質チューブ1の内周面S2は、軸部材2の外周面S3との密着性が担保される形状が好ましい。ただし、軟質チューブ1を金型に挿入後、軸部材2を成形して溶融接合する製造方法の場合は、軟質チューブ1の内周面S2がどのような形状でも軸部材2の外周面S3と接触し溶融接合され、密着性が担保される。
【0079】
[軟質チューブの製造方法]
本発明の軟質チューブは、外周面に凹凸領域Aを有するように製造されれば、製造方法は特に限定されない。本発明における製造時の凹凸削れが抑制される効果が顕著に示されることから、金型を用いた製造方法が好ましく、射出成形又は圧縮成形で成形することがより好ましい。
【0080】
図4A及び図4Bは、本発明の軟質チューブの製造方法の実施形態の一例及び別の一例を示す断面図である。図4Aに示す例は、軟質チューブ1を長さ方向(軸方向)に離型するように構成された金型を用いた軟質チューブの製造方法の例である。図4Bに示す例は、軟質チューブ1を径方向に離型するように構成された金型を用いた軟質チューブの製造方法の例である。
【0081】
具体的には、図4Aには、外側金型21a、内側金型21bからなる可動側金型21と固定側金型23を用いて、射出成形により軟質チューブ1を成形した後、可動側金型21から軟質チューブ1を長さ方向に離型する例を示す。
【0082】
図4Aの例では、可動側金型21と固定側金型23を合わせた状態で、可動側金型21内の軟質チューブ1の成形部に連通する注入口(不図示)から当該成形部に軟質チューブ1の構成材料である、例えば、熱可塑性エラストマーを注入する。注入時には熱可塑性エラストマーは加熱により流動性が付与された状態である。
【0083】
なお、外側金型21aの成形面Sは、軟質チューブ1の外周面S1が有する凹凸領域Aの凹凸形状と面対称の凹凸形状を有する。熱可塑性エラストマーの注入時には、可動側金型21と固定側金型23は、熱可塑性エラストマーの流動を妨げず、かつ熱可塑性エラストマーが固化する温度以下の温度に加熱される。熱可塑性エラストマーと金型の加熱温度は、熱可塑性エラストマーの種類による。射出速度及び圧力は適宜調整する。射出速度は、例えば、2~5mm/秒が好ましく、圧力は10~30MPaに保持されることが好ましい。保持時間は、2~5秒程度が好ましい。
【0084】
その後、可動側金型21と固定側金型23を室温付近まで冷却し、軟質チューブ1の形状が固定された後、可動側金型21と固定側金型23を分離する。冷却時間は、20秒以上が好ましい。この状態が図4Aで示される状態である。図4Aにおいて符号22はエジェクターピンを示す。エジェクターピン22を、矢印で示される軟質チューブ1の長さ方向(軸方向)に押し出すことで、軟質チューブ1が離型される。エジェクターピンの押出速度は1~5mm/秒とすることが好ましく、1.5~4mm/秒がより好ましい。
【0085】
ここで、離型前の外側金型21aと軟質チューブ1は、外側金型21aの成形面S側と軟質チューブ1の外周面S1側で、嵌合した状態であるが、軟質チューブ1の外周面S1の凹凸領域Aにおいては、Sdqが上記範囲内にあることで、離型時に凹凸形状が弾性変形しやすくなるため、アンダーカットの状態にはならず、凹凸削れの発生を抑制できる。
【0086】
図4Bには、可動側金型24、固定側金型25及び内側金型26を用いて、射出成形により軟質チューブ1を成形した後、可動側金型24から軟質チューブ1を径方向に離型する例を示す。
【0087】
図4Bの例では、可動側金型24、固定側金型25及び内側金型26を合わせた状態で、軟質チューブ1の成形部に連通する注入口(不図示)から当該成形部に軟質チューブ1の構成材料である、例えば、熱可塑性エラストマーを注入する。注入時には熱可塑性エラストマーは加熱により流動性が付与された状態である。
【0088】
なお、可動側金型24及び固定側金型25の成形面Sは、軟質チューブ1の外周面S1が有する凹凸領域Aの凹凸形状と面対称の凹凸形状を有する。熱可塑性エラストマーの注入時には、可動側金型21と固定側金型23は、熱可塑性エラストマーの流動を妨げず、かつ熱可塑性エラストマーが固化する温度以下の温度に加熱される。熱可塑性エラストマーと金型の加熱温度は、熱可塑性エラストマーの種類による。射出速度及び圧力は適宜調整する。射出速度は、例えば、2~5mm/秒が好ましく、圧力は10~30MPaに保持されることが好ましい。保持時間は、2~5秒程度が好ましい。
【0089】
その後、可動側金型24、固定側金型25及び内側金型26を室温付近まで冷却し、軟質チューブ1の形状が固定された後、可動側金型24と固定側金型25を分離する。冷却時間は適宜調整する。冷却時間は、20秒以上が好ましい。この状態が図4Bで示される状態である。なお、分離前の固定側金型25と軟質チューブ1は、固定側金型25の成形面S側と軟質チューブ1の外周面S1側で、嵌合した状態であるが、軟質チューブ1の外周面S1の凹凸領域Aにおいては、Sdqが上記範囲内にあることで、金型分離時に凹凸形状が弾性変形しやすくなるため、アンダーカットの状態にはならず、凹凸削れの発生を抑制できる。
【0090】
図4Bにおいて符号22はエジェクターピンを示す。エジェクターピン22を、矢印で示される軟質チューブ1の径方向に押し出すことで、軟質チューブ1が離型される。エジェクターピンの押出速度は1~5mm/秒とすることが好ましい。
【0091】
内側金型26は、例えば、スライドコア方式により軟質チューブ1から引き抜かれる。なお、離型前の可動側金型24と軟質チューブ1は、可動側金型24の成形面S側と軟質チューブ1の外周面S1側で、嵌合した状態であるが、軟質チューブ1の外周面S1の凹凸領域Aにおいては、Sdqが上記範囲内にあることで、離型時に凹凸形状が弾性変形しやすくなるため、アンダーカットの状態にはならず、凹凸削れの発生を抑制できる。
【0092】
ここで、図4Bに示されるとおり、可動側金型24と固定側金型25のパーティング部PTは、加工誤差によりズレが生じることは避けられない。このズレに起因して、軟質チューブ1の外周面S1において、上記のパーティング部PTに対応する箇所に段差Dが形成される。段差Dは、可動側金型24と固定側金型25の2箇所のパーティング部PTに沿って、軟質チューブ1の外周面S1の長さ方向の全長に亘ってそれぞれライン状に形成され、パーティングラインとなる。図4Cにこのようにして形成されたパーティングラインPLを有する軟質チューブ1の斜視図を示す。図4Cには示されていないが、この軟質チューブ1は、図示されたのと同様のパーティングラインPLを背面にさらに1本有する。
【0093】
軟質チューブ1はパーティングラインPLを有しないことが好ましい。したがって、本発明において、軟質チューブ1は、軟質チューブ1を長さ方向(軸方向)に離型するように構成された金型を用いて成形することが好ましい。
【0094】
[シート搬送ローラー]
本発明のシート搬送ローラーは、軸部材と前記軸部材の外周面に配設されるチューブ状のシート搬送部を備えるシート搬送ローラーであって、前記シート搬送部が、上記本発明の軟質チューブであることを特徴とする。
【0095】
本発明のシート搬送ローラーは、必須部材として軸部材とシート搬送部を備える。図2に示すシート搬送ローラー10を例にして、シート搬送ローラー10が有する必須部材の一つである軟質チューブ1について上に説明した。以下に、シート搬送ローラー10におけるもう一つの必須部材である軸部材2について説明する。
【0096】
上記のとおり、軸部材2はその外周面S3と軟質チューブ1の内周面S2が密着されている。これにより、軸部材2を周方向に回転させれば、軟質チューブ1も同時に周方向に回転する。軸部材2は、軟質チューブ1を支持し回転させることで、上記のとおりシートPが搬送されることが可能なように構成される。
【0097】
軸部材2を構成する材料は、上記機能が果たせる材料であれば特に制限されない。具体的には、適度な剛性を有する各種金属及び樹脂等が挙げられる。具体的には、JIS K7171に準拠した曲げ弾性率が、概ね1200(N/mm)以上の材料が好ましい。また、軟質チューブ1との密着性を考慮すると軸部材2を構成する材料は、樹脂が好ましい。
【0098】
軸部材2は軟質チューブ1と熱融着等により溶融接合されていることが好ましい。溶融接合における接合性を高めるために、上記のとおり、軟質チューブ1を構成する軟質材料はSP値が、軸部材2を構成する材料のSP値と近いことが好ましい。具体的には両者の差は1(cal/cm1/2以内であることが好ましい。
【0099】
上記SP値の観点から、軸部材2を構成する材料としては、上記動的架橋熱可塑性エラストマーの成分として用いる樹脂と同様の樹脂が挙げられる。軸部材2を構成する材料としては、軟質チューブ1を構成する材料のSP値に応じて、上記条件を満たすSP値を有する材料を適宜選択すればよい。
【0100】
軸部材2を構成する材料として好ましく用いられる樹脂として、具体的には、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂等が好ましく、環境面やコストの観点からポリプロピレンがより好ましい。なお、本明細書において、「ポリプロピレン」の用語は、原料モノマーとしてプロピレンを主成分として、例えば、50モル%以上用いた(共)重合体をいう。他の樹脂についても同様に定義される。
【0101】
上記樹脂としては、市販品を用いることができる。具体的には、ポリプロピレンとして、PP-R200(金発科技社製)、ノバテック(登録商標)PPの各種グレード、例えば、BC3AD(日本ポリプロ社製)等が挙げられる。
【0102】
軸部材2の形状は、円柱状が好ましい。なお、軸部材2は外周面S3に軟質チューブ1を有する部分が円筒状であれば、他の部分は必ずしも円筒状である必要はない。軟質チューブ1を有しない部分における、軸部材2の長さ方向に直交する面で切った断面の形状は、必要に応じて、多角形、星形、軟質チューブ1を有する部分と径が異なる円形等であってもよい。
【0103】
軸部材2の大きさに関し、少なくとも、軸部材2が軟質チューブ1を有する部分については、外径は軟質チューブ1の内径φ1と同じであり、概ね4~16mmの範囲内とすることができる。軸部材2の外径は、例えば、全長に亘って概ね4~16mm程度とすることができる。軸部材2の長さは、搬送するシートの大きさにより適宜調整される。
【0104】
軸部材2が樹脂からなる場合、軸部材2は、例えば、押出成形、射出成形及び圧縮成形等により成形できる。後述する本発明のシート搬送ローラーの製造方法においては、射出成形が用いられる。
【0105】
シート搬送ローラー10は、例えば、プリンター複合機の給紙部等に設置されて用いられる。給紙部において、軸部材2の両端が軸受に取り付けられ、少なくとも片端が駆動部に接続される。また、給紙部には、例えば、シート搬送部である軟質チューブ1に対向するようにして、かつ、シート(紙)が搬送できる程度に円柱状の転動体であるころを押し付けて配置される。軟質チューブ1ところは互いの長さ方向(軸方向)が平行するように配置される。シート(紙)は上記隙間部分で軟質チューブ1ところに挟持される。そして、軸部材2の周方向への回転に伴い回転する軟質チューブ1の回転と共にシート(紙)は搬送される。
【0106】
[シート搬送ローラーの製造方法]
本発明のシート搬送ローラーは、例えば、軸部材の長さ方向の所定の位置に、軸部材の外周面と軟質チューブの内周面が密着するように、軟質チューブを配設することで製造できる。軸部材の外周面と軟質チューブの内周面の密着は、例えば、接着剤等による接着で行ってもよく、熱融着等の溶融接合で行ってもよい。本発明のシート搬送ローラーは、以下に説明する本発明の製造方法により製造されることが好ましい。
【0107】
本発明のシート搬送ローラーの製造方法は、本発明のシート搬送ローラーを製造する方法であって、下記(1)~(3)の工程を有することを特徴とする。
【0108】
(1)上記本発明の軟質チューブを成形する工程
(2)上記軟質チューブを保持する保持部と上記軟質チューブの内周面に接するように軸部材が成形される成形部を有する金型の上記保持部に軟質チューブを挿入する工程
(3)上記金型の成形部で上記軸部材を成形する工程
【0109】
上記(1)の工程については、上に説明した本発明の軟質チューブの製造方法が適用できる。(2)及び(3)の工程について図面を参照しながら以下に説明する。
【0110】
図5A図5B及び図5Cは、本発明のシート搬送ローラーの製造方法の実施形態の一例に用いる金型30の断面図、(2)の工程後の軟質チューブ1が挿入された金型30の断面図及び、(3)工程後の軟質チューブ1と軸部材2を含む金型30の断面図を示す。
【0111】
本発明の製造方法に用いる金型を、図5Aに示す金型30を例にして説明するが、金型はこれに限定されない。図5Aに示す金型30は、例えば、パーティング部PT等でX方向に分離可能な第1金型31及び第2金型32からなる。
【0112】
金型30は、第1金型31及び第2金型32を合わせた状態で、軟質チューブ1を保持する保持部41と、保持部41に保持された軟質チューブ1の内周面S2に接するように軸部材2が成形される成形部42を有する。金型30は、さらに、成形部42から金型30の外部に連通する樹脂注入路43を有する。金型30は、保持部41を2箇所に有し、例えば、図2に示すシート搬送ローラー10を成形するための金型として使用できる。その場合、軟質チューブ1を保持する保持部41は、シート搬送ローラー10における軟質チューブ1の配設位置に対応する2箇所に設けられている。
【0113】
樹脂注入路43は、金型30外部に通じる開口部から軸部材2の構成材料である樹脂が注入され成形部42に到達できるように設けられている。
【0114】
(2)の工程では、例えば、金型30から第1金型31のみを分離した状態で、2箇所の保持部41に軟質チューブ1を挿入する。保持部41は、(3)の工程時に軟質チューブ1が移動しないように、軟質チューブ1の外周形状と同寸同形に形成される。なお、(3)の工程後においても軟質チューブ1の外周面S1の凹凸領域Aにおける凹凸形状が保持される必要がある。しかしながら、通常、(3)の工程においては、保持部41に軟質チューブ1の外周面S1と同等の凹凸形状を付けなくても凹凸形状が保持可能なため、保持部41の面に特別な形状を付けなくてもよい。軟質チューブ1を挿入した後、第1金型31を第2金型32とパーティング部PTで合わせて、図5Bに断面が示される状態にする。
【0115】
(3)の工程では、樹脂注入路43の開口部から軸部材2の構成材料である樹脂を注入し成形部42に移送して、成形部42を当該樹脂で充填する。この際、樹脂は加熱により流動性が付与された状態とする。樹脂の注入時には、第1金型30と第2金型31は、樹脂の流動を妨げず、かつ樹脂が固化する温度以下の温度に加熱される。樹脂と金型の加熱温度は、樹脂の種類による。射出速度及び圧力は適宜調整する。射出速度は、例えば、30~70mm/秒が好ましく、圧力は50~70MPaに保持されることが好ましい。保持時間は、5~20秒程度が好ましい。
【0116】
(3)の工程において、樹脂及び金型の温度を調整することで、軟質チューブ1の内周面S2と軸部材2の外周面S3を溶融接合することができる。本発明の製造方法においては、当該溶融接合が可能な温度に樹脂及び金型の温度を調整することが好ましい。ただし、樹脂及び金型の温度は、軟質チューブ1の外周面S1の凹凸領域Aにおける凹凸形状を保持できる温度とする。
【0117】
(3)の工程において、成形品を内部に有する金型30を樹脂の固化温度以下まで冷却し、成形品の形状が固定された後、第1金型31及び第2金型32を分離する。冷却時間は適宜調整する。冷却時間は、20秒以上が好ましい。なお、図5Cに示すように、成形品は、1本の軸部材2に対して軟質チューブ1を2個有する、例えば、図2に示すシート搬送ローラー10に、樹脂注入路43の形状に成形された樹脂部材2Xが付属したものである。成形品を金型30から離型した後、樹脂部材2Xを切断し、シート搬送ローラー10とする。
【実施例
【0118】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0119】
[軟質チューブの製造]
熱可塑性エラストマーとして、以下の表Iに示すスチレン熱可塑性エラストマーを用いて、以下の条件で軟質チューブ1~11を製造した。
【0120】
【表1】
【0121】
軟質チューブは、形状が円筒形であり、サイズについては、外径が16mm、内径が12mm、長さが10mmとなるように金型を用いて射出成形した。
【0122】
金型としては、図4Aに示すのと同様の軟質チューブを長さ方向に離型する構成の金型であり成形面Sが異なる形状を有する金型A~Gを用いた。表IIに示す金型と熱可塑性エラストマーを用いて軟質チューブ1~11を次の成形条件1~3で製造した。成形条件1は、熱可塑性エラストマー温度:210℃、金型温度:40℃、射出速度:5mm/秒、冷却時間:35秒、保圧:15MPa、エジェクターピンの押出速度:1.5mm/秒であった。成形条件2及び成形条件3は、それぞれエジェクターピンの押出速度を3.0mm/秒及び4.5mm/秒とした以外は成形条件1と同様であった。以下、表IIにおける軟質チューブ3,,6,及び11の備考欄の本発明を、参考例と読み替える。
【0123】
<外周面凹凸形状の測定>
軟質チューブの外周面凹凸形状は、当該軟質チューブの製造の際に用いた金型A~Gの成形面の凹凸形状を計測することで行った。は、それぞれ全体がランダムな凹凸形状を有していた。
【0124】
金型A~Gの成形面における凹凸形状のSa、Sdqは、具体的には、金型A~Gの成形面と同条件で加工した平面プレートの凹凸形状を測定して得られたSa、Sdqとした。測定領域は、ランダムに5箇所の測定領域2.3mm×1.7mmを選択した。3次元白色光干渉型顕微鏡(Wyko(ブルカージャパン社製)を用いて、上記に示した方法で、各測定領域におけるSdq及びSaを測定し、さらに、5箇所の測定領域におけるSdq及びSaの平均値を算出した。結果を表IIに示す。
【0125】
ここで、比較例である軟質チューブ1、2については、以下の評価において凹凸削れの発生が確認されている。したがって、表IIの凹凸形状欄に記載されているSdq及びSaは、金型の成形面のSdq及びSaであり、軟質チューブ1、2の外周面の凹凸形状を反映していない。本発明の実施例である軟質チューブ3~11については、表IIの凹凸形状欄に記載されているSdq及びSaは、金型の成形面のSdq及びSaであり、かつ、軟質チューブ3~11の外周面のSdq及びSaである。
【0126】
<凹凸削れ評価>
軟質チューブ1~11において、製造時における凹凸削れを以下の基準で評価した。なお、凹凸削れは目視で判断し、外周面の凹凸が僅かでも削れている場合を「凹凸削れの発生あり」とした。結果を表IIに示す。
【0127】
(評価基準)
〇:成形条件1~3の全てで凹凸削れの発生なし。
△:成形条件3でのみで凹凸削れが発生した。すなわち、成形条件次第で凹凸削れを抑制できる。
×:成形条件1~3の全てで凹凸削れが発生した。
【0128】
[シート搬送ローラーの製造]
軸部材の材料としてポリプロピレン(PP-R200(金発科技社製)、SP値=8.1(cal/cm1/2)を用いて、図5Aに示すのと同様の金型を用いて、本発明の製造方法による射出成形により、図2に示すのと同様の構成の1本の軸部材に対して2個の軟質チューブを有するシート搬送ローラーを製造した。
【0129】
用いた軟質チューブは、上記の成形条件1で得られた軟質チューブ1~11であり、この軟質チューブ1~11を用いたシート搬送ローラー1~11を製造した。軸部材の外径は12mmであり、長さは220mmとした。
【0130】
具体的には、シート搬送ローラー1については、金型を分離して2箇所の保持部に2個の軟質チューブ1を挿入した後、金型の3パーツをパーティング部で合わせて、図5Bに断面が示される状態にした。その後、樹脂注入路43の開口部から軸部材2の構成材料である上記ポリプロピレンを注入し成形部42に移送して、成形部42を上記ポリプロピレンで充填し軸部材を成形した。成形条件は、樹脂温度:210℃、金型温度:50℃、射出速度:70mm/秒、冷却時間:50秒、保圧:50MPaとした。成形後、金型から成形品を離型し、不要部分を切断してシート搬送ローラー1を得た。
【0131】
軟質チューブ1を軟質チューブ2~11に替えた以外は同様にして、シート搬送ローラー2~11を製造した。
【0132】
<紙粉付着評価>
プリンター複合機(コニカミノルタ社製))の給紙部に、上記で得られたシート搬送ローラー1~11をそれぞれ装着して、紙(コニカミノルタCFペーパーA4)を100回搬送して軟質チューブに紙粉を付着させた後、紙全域をプロセスブルー(シアン+マゼンダ)で塗りつぶすように印刷した紙(コニカミノルタCFペーパーA4)を5枚搬送し、紙に紙粉が再付着するかを確認した。紙粉の付着状態は目視で確認し、以下の基準で評価した。結果を表IIに示す。
【0133】
(評価基準)
a:紙粉付着が全くなく、紙粉付着の影響を受けやすいローラーに使えるレベルである。
b:紙粉付着があり、紙粉付着の影響を受けにくいローラーに使えるレベルである。
【0134】
<紙搬送性評価>
プリンター複合機(コニカミノルタ社製))の給紙部に、上記で得られたシート搬送ローラー1~11をそれぞれ装着して、軟質チューブところの間に紙片(幅2cm、長さ29.7cmに切断したコニカミノルタCFペーパー)を幅方向が軟質チューブの長さ方向(軸方向)と一致するように挟み、紙片を長さ方向に引き抜く際の引き抜き力をプッシュブルゲージで測定した。紙搬送性は、引き抜き力の測定値から以下の基準で評価した。結果を表IIに示す。
【0135】
(評価基準)
〇:引き抜き力が2.5N以上であり紙搬送力は十分である。
△:引き抜き力が2.0N以上2.5N未満であり紙搬送力は規格内である。
×:引き抜き力が2.0N未満であり紙搬送力は不足している。
【0136】
【表2】
【0137】
表IIから、本発明の軟質チューブにおいては、製造時の凹凸削れが抑制されていることが分かる。また、好ましい態様では紙粉付着が抑制され、紙搬送性も問題ないことが分かる。
【符号の説明】
【0138】
1 軟質チューブ
2 軸部材
10 シート搬送ローラー
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C