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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】自立運転システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20250212BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20250212BHJP
   H02J 3/40 20060101ALI20250212BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/38 170
H02J3/38 180
H02J3/40
H02J7/34 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020201785
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2022089411
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智希
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-153295(JP,A)
【文献】特開2004-335343(JP,A)
【文献】特開2016-092850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 3/40
H02J 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統から独立した自立運転が可能であり、電力貯蔵装置と、燃料電池および内燃力発電設備の少なくとも一方と、負荷設備と、再生エネルギー発電設備とを備える自立運転システムであって、
1日における予め定められた期間において、前記負荷設備における需要電力と、前記電力貯蔵装置の充電率との関係に基づいて、前記電力貯蔵装置の充電率の目標値である目標充電率を設定し、
前記燃料電池および前記内燃力発電設備の少なくとも一方の出力電力の上限を、前記負荷設備の容量に基づく上限電力または前記需要電力から、前記再生エネルギー発電設備の発電電力を差し引いた電力に制限する上限制限部をさらに備える、
自立運転システム。
【請求項2】
前記上限制限部により上限が制限された前記出力電力の時間変化率を、前記出力電力の時間変化率の予め定められた上限に基づいて制御する変化率制限部をさらに備える、請求項1に記載の自立運転システム。
【請求項3】
前記変化率制限部は、前記上限制限部により上限が制限された前記出力電力の時間変化率を、前記出力電力の時間変化率の予め定められた上限を超えないように制御する、請求項2に記載の自立運転システム。
【請求項4】
電力系統から独立した自立運転が可能であり、電力貯蔵装置と、燃料電池および内燃力発電設備の少なくとも一方と、負荷設備と、を備える自立運転システムであって、
1日における予め定められた期間において、前記負荷設備における需要電力と、前記電力貯蔵装置の充電率との関係に基づいて、前記電力貯蔵装置の充電率の目標値である目標充電率を設定し、
前記目標充電率は、前記需要電力の変化に応じて変化し、
前記目標充電率を、前記需要電力の変化に対する、前記目標充電率の予め定められた変化率よりも高く設定する、
自立運転システム。
【請求項5】
電力系統から独立した自立運転が可能であり、電力貯蔵装置と、燃料電池および内燃力発電設備の少なくとも一方と、負荷設備と、を備える自立運転システムであって、
1日における予め定められた期間において、前記負荷設備における需要電力と、前記電力貯蔵装置の充電率との関係に基づいて、前記電力貯蔵装置の充電率の目標値である目標充電率を設定し、
前記目標充電率は、前記需要電力の変化に応じて変化し、
前記目標充電率を、前記需要電力の変化に対する、前記目標充電率の予め定められた変化率よりも低く設定する、
自立運転システム。
【請求項6】
前記電力貯蔵装置は、前記需要電力と、前記目標充電率との関係を記憶する記憶部を有し、
前記記憶部に記憶された、前記需要電力と前記目標充電率との関係に基づいて、前記電力貯蔵装置の充電率を設定する、請求項4または5に記載の自立運転システム。
【請求項7】
前記電力貯蔵装置の種類に基づいて、前記電力貯蔵装置の充電率を設定する、請求項4または5に記載の自立運転システム。
【請求項8】
電力系統から独立した自立運転が可能であり、電力貯蔵装置と、燃料電池および内燃力発電設備の少なくとも一方と、負荷設備と、を備える自立運転システムであって、
1日における予め定められた期間において、前記負荷設備における需要電力と、前記電力貯蔵装置の充電率との関係に基づいて、前記電力貯蔵装置の充電率の目標値である目標充電率を設定し、
1日における前記予め定められた期間の開始時における前記目標充電率を、前記予め定められた期間の開始時よりも予め定められた時間前における前記目標充電率よりも高く設定する
立運転システム。
【請求項9】
電力系統から独立した自立運転が可能であり、電力貯蔵装置と、燃料電池および内燃力発電設備の少なくとも一方と、負荷設備と、を備える自立運転システムであって、
1日における予め定められた期間において、前記負荷設備における需要電力と、前記電力貯蔵装置の充電率との関係に基づいて、前記電力貯蔵装置の充電率の目標値である目標充電率を設定し、
1日における前記予め定められた期間の終了時における前記目標充電率を、前記予め定められた期間の終了時よりも予め定められた時間前における前記目標充電率よりも低く設定する
立運転システム。
【請求項10】
電力系統から独立した自立運転が可能であり、電力貯蔵装置と、燃料電池および内燃力発電設備の少なくとも一方と、負荷設備と、再生エネルギー発電設備とを備る自立運転システムであって、
1日における予め定められた期間において、前記負荷設備における需要電力と、前記電力貯蔵装置の充電率との関係に基づいて、前記電力貯蔵装置の充電率の目標値である目標充電率を設定し、
前記予め定められた期間において、前記需要電力から前記再生エネルギー発電設備から出力される発電電力を差し引いた制限電力と、前記目標充電率との関係に基づいて、前記目標充電率を設定する
立運転システム。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1から10のいずれか一項に記載の自立運転システムとして機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自立運転システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「燃料電池は、その発電原理に起因して、発電量を急激に変更できない。よって、負荷追従制御を燃料電池に適用しても、負荷の消費電力が急増すると、負荷の消費電力に対して燃料電池の出力電力に不足が生じる。」と記載されている(段落0004)。
特許文献2には、「余剰電力の予測値と実際値との比較結果と、蓄電池の充電率と第1設定値との比較結果とに基づき、水素の製造および貯蔵量と、蓄電池の充電量と、燃料電池の発電量とを制御する」と記載されている(請求項1)。
特許文献3には、「発電可能であって、必要に応じて電力を発電する負荷追従機能を有する燃料電池と、・・・を具備する・・・電力供給システム。」と記載されている(請求項1)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2013-74757号公報
[特許文献2] 特開2020-54085号公報
[特許文献3] 特開2015-226353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
自立運転システムにおいては、蓄電池の充電率が適切に制御されることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、自立運転システムを提供する。自立運転システムは、電力系統から独立した自立運転が可能であり、電力貯蔵装置と、燃料電池および内燃力発電設備の少なくとも一方と、負荷設備と、を備える。自立運転システムは、1日における予め定められた期間において、負荷設備における需要電力と、電力貯蔵装置の充電率との関係に基づいて、電力貯蔵装置の充電率の目標値である目標充電率を設定する。
【0005】
目標充電率は、需要電力の変化に応じて変化してよい。自立運転システムは、目標充電率を、需要電力の変化に対する、目標充電率の予め定められた変化率に基づいて設定してよい。
【0006】
自立運転システムは、目標充電率を、目標充電率の予め定められた変化率よりも高く設定してよい。
【0007】
自立運転システムは、目標充電率を、目標充電率の予め定められた変化率よりも低く設定してよい。
【0008】
電力貯蔵装置は、需要電力と、目標充電率との関係を記憶する記憶部を有してよい。自立運転システムは、記憶部に記憶された、需要電力と目標充電率との関係に基づいて、電力貯蔵装置の充電率を設定してよい。
【0009】
自立運転システムは、電力貯蔵装置の種類に基づいて、電力貯蔵装置の充電率を制御してよい。
【0010】
自立運転システムは、1日における予め定められた期間の開始時における目標充電率を、予め定められた期間の開始時よりも予め定められた時間前における目標充電率よりも高く設定してよい。
【0011】
自立運転システムは、1日における予め定められた期間の終了時における目標充電率を、予め定められた期間の終了時よりも予め定められた時間前における目標充電率よりも低く設定してよい。
【0012】
自立運転システムは、再生エネルギー発電設備をさらに備えてよい。自立運転システムは、予め定められた期間において、需要電力から再生エネルギー発電設備から出力される発電電力を差し引いた制限電力と、目標充電率との関係に基づいて、目標充電率を設定してよい。
【0013】
本発明の第2の態様においては、プログラムを提供する。プログラムは、コンピュータを、自立運転システムとして機能させる。
【0014】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一つの実施形態に係る自立運転システム100の一例を示す図である。
図2】自立運転システム100の周波数fの制御の一例を示す図である。
図3A】自立運転システム100が電力系統200から独立した自立運転をしている場合における、燃料電池等30の出力制御の一例を示すブロック図である。
図3B】補正貯蔵電力Paを充電率Sから導出する制御の一例を示すブロック図である。
図4】自立運転システム100が電力系統200から独立した自立運転をしている場合における、負荷設備40の需要電力Pdm、燃料電池等30の出力電力Pf、再生エネルギー発電設備10の発電電力Pgの、1日における時間変化の一例を示す概念図である。
図5】需要電力Pdmと、電力貯蔵装置20の目標充電率Sdとの関係の一例を示す図である。
図6】自立運転システム100が電力系統200から独立した自立運転をしている場合における、負荷設備40の需要電力Pdm、燃料電池等30の出力電力Pf、再生エネルギー発電設備10の発電電力Pg、電力貯蔵装置20の放電電力Pdまたは電力貯蔵装置20への充電電力Pc、および、電力貯蔵装置20の充電率Sの、1日の予め定められた期間における時間変化の一例を示す図である。
図7】自立運転システム100が電力系統200から独立した自立運転をしている場合における、需要電力Pdm、出力電力Pf、発電電力Pg、放電電力Pdまたは充電電力Pc、および、充電率Sの、1日における時間変化の第1比較例を示す図である。
図8】自立運転システム100が電力系統200から独立した自立運転をしている場合における、負荷設備40の需要電力Pdm、燃料電池等30の出力電力Pf、電力貯蔵装置20の放電電力Pdまたは電力貯蔵装置20への充電電力Pc、および、電力貯蔵装置20の充電率Sの、1日の予め定められた期間における時間変化の一例を示す図である。
図9】自立運転システム100が電力系統200から独立した自立運転をしている場合における、需要電力Pdm、出力電力Pf、放電電力Pdまたは充電電力Pc、および、充電率Sの、1日における時間変化の第2比較例を示す図である。
図10】自立運転システム100の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る自立運転システム100の一例を示す図である。自立運転システム100は、電力貯蔵装置20、燃料電池等30および負荷設備40を備える。自立運転システム100は、再生エネルギー発電設備10を備えてよい。本例においては、自立運転システム100は、再生エネルギー発電設備10を備えている。図1において、自立運転システム100の範囲が破線にて示されている。
【0018】
燃料電池等30とは、燃料電池および内燃力発電設備との少なくとも一方を指す。内燃力発電設備とは、内燃機関が用いられた発電設備を指す。内燃機関とは、例えばディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等である。電力系統200からの電力は、送電線60および配線62により、電力貯蔵装置20、燃料電池等30および負荷設備40に供給される。電力系統200からの電力は、送電線60および配線62により、再生エネルギー発電設備10に供給されてよい。
【0019】
再生エネルギー発電設備10は、例えば太陽電池および風力発電装置の少なくとも一方である。電力貯蔵装置20は、蓄電池22およびPCS(パワーコンディショナ)24を有してよい。PCS24は、蓄電池22の放電電力を直流から交流に変換し、且つ、充電電力を交流から直流に変換する。
【0020】
電力貯蔵装置20は、蓄電池22、PCS(パワーコンディショナ)24および記憶部26を有してよい。PCS24は、蓄電池22の放電電力を直流から交流に変換し、且つ、充電電力を交流から直流に変換する。記憶部26は、上限電力Pmax(後述)または需要電力Pdm(後述)と、目標充電率Sd(後述)との関係を記憶する。記憶部26については、後述する。
【0021】
負荷設備40は、電力の供給により稼働する設備である。負荷設備40は、所謂需要家の負荷であってよい。
【0022】
遮断手段50は、電力系統200への落雷等が発生した場合に、送電線60と配線62との間の電気的接続を遮断する。これにより、電力系統200から、再生エネルギー発電設備10、電力貯蔵装置20、燃料電池等30および負荷設備40への電力の供給は、遮断される。自立運転システム100は、電力系統200から独立した自立運転が可能である。即ち、電力系統200からの電力の供給が遮断手段50により遮断された場合、自立運転システム100は、配線62に接続された電力貯蔵装置20、燃料電池等30および負荷設備40を自立運転する。
【0023】
制御手段90は、燃料電池等30からの出力電力、電力貯蔵装置20の放電電力または電力貯蔵装置20への充電電力、再生エネルギー発電設備10の発電電力を、通信線64を通じて取得する。制御手段90は、通信線64を通じて取得した当該出力電力、当該放電電力または充電電力、当該発電電力に基づいて、燃料電池等30の出力電力を制御する。
【0024】
図2は、自立運転システム100における周波数fの制御の一例を示す図である。電力貯蔵装置20の充電率を、充電率Sとする。充電率Sとは、電力貯蔵装置20における全蓄電容量に占める残容量の割合である。本例においては、充電率Sは、蓄電池22の全蓄電容量に占める残蓄電量の割合である。充電率Sは、SOC(State of Charge)とも称される。図2は、電力貯蔵装置20の充電率Sが上限を超えた場合および下限未満となった場合における周波数fの制御の一例を含んでいる。充電率Sの上限および下限を、それぞれ上限ULおよび下限DLとする。
【0025】
本例においては、時刻taから時刻tbまでの間、充電率Sは上限ULに等しく、時刻tcから時刻tdまでの間、充電率Sは下限DLに等しくなっているとする。図2において、時刻taから時刻tbまでの間の充電率S、および、時刻tcから時刻tdまでの間の充電率Sが、太線にて示されている。
【0026】
図2に示される周波数f0は、自立運転システム100の予め定められた周波数である。周波数f0は、50Hzであってよい。時刻taおよび時刻tbにおける自立運転システム100の周波数を、周波数fuとする。時刻tcおよび時刻tdにおける自立運転システム100の周波数を、周波数fdとする。周波数fuおよび周波数fdは、例えば50.2Hzおよび49.8Hzである。
【0027】
本例においては、時刻taから時刻tbまでの間、充電率Sは上限ULに等しい。このため、自立運転システム100は、時刻taから時刻tbまでの間、周波数fを制御することが困難となる。本例においては、時刻tcから時刻tdまでの間、充電率Sは下限DLに等しい。このため、自立運転システム100は、時刻tcから時刻tdまでの間、周波数fを制御することが困難となる。自立運転システム100が電力系統200から独立した自立運転を維持するためには、充電率Sは上限ULと下限DLとの間に維持されることが好ましい。図2において、時刻taから時刻tbまでの間の周波数f、および、時刻tcから時刻tdまでの間の周波数fが、太線にて示されている。
【0028】
図3Aは、自立運転システム100が電力系統200から独立した自立運転をしている場合における、燃料電池等30の出力制御の一例を示すブロック図である。負荷設備40の需要電力を需要電力Pdmとする。燃料電池等30の出力電力を出力電力Pfとする。再生エネルギー発電設備10の発電電力を発電電力Pgとする。電力貯蔵装置20の放電電力を放電電力Pdとし、電力貯蔵装置20への充電電力を充電電力Pcとする。
【0029】
自立運転システム100は、加算部31、PI制御部32、加算部33、上限制限部36および変化率制限部34を備えてよい。電力貯蔵装置20の放電電力Pdまたは電力貯蔵装置20への充電電力Pcを、蓄電池電力Pとする。需用電力Pdm、または、出力電力Pfと発電電力Pgと蓄電池電力Pとの和の電力を、電力P1とする。
【0030】
加算部31は、電力P1から、燃料電池等30の現在の出力電力Pfを減算する。加算部31は、電力P2を出力する。電力P2は、電力P1から出力電力Pfが減算された電力である。PI制御部32は、電力P2をPI制御した電力P3を出力する。加算部33は、電力P3と補正貯蔵電力Paとを加算する。補正貯蔵電力Paは、電力貯蔵装置20に貯蔵された電力を補正した電力である。補正貯蔵電力Paについては後述する。加算部33は、電力P4を出力する。電力P4は、電力P3と補正貯蔵電力Paとが加算された電力である。
【0031】
上限制限部36は、制限電力Prに基づいて、電力P4の上限を制限する。制限電力Prとは、後述するとおり、上限電力Pmaxまたは需要電力Pdmから、再生エネルギー発電設備の発電電力Pgを差し引いた電力である。上限制限部36は、電力P4の上限を制御することにより、燃料電池等30の出力電力Pfの上限を制限する。上限制限部36は、電力P4の上限を制限した電力P5を出力してよい。
【0032】
変化率制限部34は、電力P5の時間変化率を制限する。燃料電池等30の出力電力Pfにおける時間変化率の上限は、予め定められている場合がある。当該上限は、例えば、1分当たり100kWの1%の変化率(1%/分)である。このため、変化率制限部34は、出力電力Pfの時間変化率が当該上限を超えないように、電力P5の時間変化率を制限する。変化率制限部34は、電力P5の時間変化率を制限した電力p5を出力する。燃料電池等30は、電力P5により制御される。
【0033】
図3Bは、補正貯蔵電力Paを充電率Sから導出する制御の一例を示すブロック図である。自立運転システム100は、加算部38および制御部39を備えてよい。
【0034】
電力貯蔵装置20の予め定められた目標充電率であって、充電率Sの上限ULと下限DLとの間における目標充電率を、目標充電率Sdとする。電力貯蔵装置20の現在の充電率を、充電率Spとする。電力貯蔵装置20に貯蔵された電力を補正した補正貯蔵電力を、補正貯蔵電力Pa(図3A参照)とする。補正貯蔵電力Paは、充電率Spと目標充電率Sdとに基づいて算出されてよい。本例においては、加算部38は、目標充電率Sdから充電率Spを減算する。本例において、制御部39は、目標充電率Sdから充電率Spを減算した結果を制御することにより、補正貯蔵電力Paを導出する。制御部39は、目標充電率Sdから充電率Spを減算した結果のゲインを制御することにより、補正貯蔵電力Paを導出してよい。
【0035】
図4は、自立運転システム100が電力系統200から独立した自立運転をしている場合における、負荷設備40の需要電力Pdm、燃料電池等30の出力電力Pf、再生エネルギー発電設備10の発電電力Pgの、1日における時間変化の一例を示す概念図である。図4における出力電力Pfは、図3Aに示されるブロック図により制御されている。
【0036】
需要電力Pdmとは、負荷設備40を稼働させるために必要な電力である。需要電力Pdmは、自立運転システム100における全ての需要家負荷の総和であってよい。自立運転システム100が電力系統200から独立した自立運転をしている場合、発電電力Pgおよび出力電力Pfが、負荷設備40に供給される。
【0037】
本例は、再生エネルギー発電設備10の発電電力Pgが、需要電力Pdmと比較して無視できるほど小さい場合の一例である。悪天候の場合等においては、再生エネルギー発電設備10の発電電力Pgが、1日にわたり需要電力Pdmと比較して無視できるほど小さくなる場合がある。自立運転システム100の変更等により負荷設備40が増加した場合においても、再生エネルギー発電設備10の発電電力Pgが、1日にわたり需要電力Pdmと比較して無視できるほど小さくなる場合がある。発電電力Pgが需要電力Pdmと比較して無視できるほど小さいとは、発電電力Pgが需要電力Pdmの5%未満である場合であってよく、1%未満である場合であってもよい。
【0038】
図4において、需要電力Pdmの時間変化が実線で、出力電力Pfが細かい破線で、発電電力Pgが一点鎖線で、それぞれ示されている。需要電力Pdmとは、負荷設備40を稼働させるために必要な電力である。需要電力Pdmは、自立運転システム100における全ての需要家負荷の総和であってよい。自立運転システム100が電力系統200から独立した自立運転をしている場合、発電電力Pgおよび出力電力Pfが、負荷設備40に供給される。本例においては、発電電力Pgが需要電力Pdmと比較して無視できるほど小さいので、出力電力Pfが負荷設備40に供給される。
【0039】
時刻tt1は、需要電力Pdmが下限電力Pminから増加し始める時刻である。時刻tt1以降、需要電力Pdmを満たすべく、出力電力Pfが増加し始める。出力電力Pfの時間変化率は、需要電力Pdmの時間変化率よりも小さくなりやすい。このため、出力電力Pfは、需要電力Pdmに追従することが困難である。このため、需要電力Pdmを満たす電力が不足する。不足する当該電力を補うため、後述するとおり、電力貯蔵装置20の放電電力Pdが負荷設備40にさらに供給される。本例では、電力貯蔵装置20は、負荷設備40に対して「定格電圧および定格周波数」の供給を実現する充放電制御にて、負荷設備40を運転する。これにより、自立運転システム100における配線62の周波数および電圧は、適正範囲に維持される。
【0040】
時刻tt2は、需要電力Pdmが、負荷設備40の容量に基づく上限電力Pmaxに等しくなる時刻である。本例においては、時刻tt2から時刻tt4まで、需要電力Pdmは上限力Pmaxに等しい。時刻tt3は、出力電力Pfが需要電力Pdm(上限電力Pmax)に等しくなる時刻である。時刻tt1から時刻tt3までの間の放電電力量を、放電電力量Pd1とする。放電電力量Pd1は、図4における領域D1の面積で示される。
【0041】
時刻tt4は、需要電力Pdmが上限電力Pmaxから減少し始める時刻である。時刻tt4以降、出力電力Pfは減少し始める。出力電力Pfの時間変化率は、需要電力Pdmの時間変化率よりも小さくなりやすい。このため、出力電力Pfは、需要電力Pdmに追従することが困難である。このため、時刻tt3以降、需要電力Pdmを超える電力が負荷設備40に供給されることを防ぐように、後述するとおり、需要電力Pdmを超える当該電力は、電力貯蔵装置20に貯蔵(充電)される。当該電力を充電電力Pcとする。
【0042】
時刻tt5は、需要電力Pdmが下限電力Pminに等しくなる時刻である。本例においては、時刻tt5から、次の1日における時刻tt1まで、需要電力Pdmは下限電力Pminに等しい。時刻tt6は、出力電力Pfが需要電力Pdm(下限電力Pmin)に等しくなる時刻である。時刻tt4から時刻tt6までの間の充電電力量を、充電電力量Pc1とする。充電電力量Pc1は、図4における領域D2の面積で示される。
【0043】
自立運転システム100は、1日における予め定められた期間において、負荷設備40における需要電力Pdmと、電力貯蔵装置20の充電率Sとの関係に基づいて、電力貯蔵装置20の目標充電率Sdを設定する。このため、発電電力Pgが1日にわたり、需要電力Pdmと比較して無視できるほど小さい場合であっても、充電率Sが適切に設定されやすくなる。
【0044】
自立運転システム100は、1日における予め定められた期間において、需要電力Pdmから再生エネルギー発電設備の発電電力Pgを差し引いた制限電力Pr(図3A参照)と、電力貯蔵装置20の充電率Sとの関係に基づいて、電力貯蔵装置20のの目標充電率Sdを設定してもよい。発電電力Pgが需要電力Pdmと比較して予め定められた大きさを超えた場合、自立運転システム100は、上限電力Pmaxまたは需要電力Pdmから、発電電力Pgを差し引いた電力と、出力電力Pfとに基づいて、電力貯蔵装置20の充電率Sを制御してよい。これにより、充電率Sがより適切に制御されやすくなる。需要電力Pdmと比較した場合における発電電力Pgの予め定められた大きさとは、例えば、発電電力Pgが需要電力Pdmの5%以上である場合である。
【0045】
図5は、需要電力Pdmと、電力貯蔵装置20の目標充電率Sdとの関係の一例を示す図である。上限ULと下限DLとの間における、目標充電率Sdの最大値を最大目標充電率Sdmaxとし、最小値を最小目標充電率Sdminとする。
【0046】
目標充電率Sdは、需要電力Pdmの変化に応じて変化してよい。需要電力Pdmの変化に対して、目標充電率Sdが予め定められた変化率で変化する場合を、自立運転システム100の標準形態Estとする。本例においては、標準形態Estにおいて、目標充電率Sdは需要電力Pdmの変化に対して比例して変化する。標準形態Estとは、再生エネルギー発電設備10が予め定められた発電電力Pgを発電する場合である。標準形態Estとは、再生エネルギー発電設備10が、想定されている発電電力Pgを発電する場合であってよい。図5において、標準形態Estの場合における、需要電力Pdmと目標充電率Sdとの関係が一点鎖線にて示されている。本例の標準形態Estにおいては、需要電力Pdmの変化に伴い、目標充電率Sdが直線状に変化する。標準形態Estとは、発電電力Pgが需要電力Pdmと比較して無視できるほど小さくない場合であってもよい。
【0047】
下限電力Pminから上限電力Pmaxにわたり、目標充電率Sdが標準形態Estよりも高く設定される場合を、自立運転システム100の高充電率形態EHとする。下限電力Pminから上限電力Pmaxにわたり、目標充電率Sdが標準形態Estよりも低く設定される場合を、自立運転システム100の低充電率形態ELとする。
【0048】
記憶部26(図1参照)は、需要電力Pdmと目標充電率Sdとの関係を記憶してよい。記憶部26は、標準形態Est、高充電率形態EHおよび低充電率形態ELのそれぞれの場合における、需要電力Pdmと目標充電率Sdとの関係を記憶してよい。記憶部26は、上限電力Pmaxと目標充電率Sdとの関係を記憶していてよく、下限電力Pminと目標充電率Sdとの関係を記憶していてよい。
【0049】
図6は、自立運転システム100が電力系統200から独立した自立運転をしている場合における、負荷設備40の需要電力Pdm、燃料電池等30の出力電力Pf、再生エネルギー発電設備10の発電電力Pg、電力貯蔵装置20の放電電力Pdまたは電力貯蔵装置20への充電電力Pc、および、電力貯蔵装置20の充電率Sの、1日の予め定められた期間における時間変化の一例を示す図である。図6に示される例においては、予め定められた期間とは日中の期間である。図6における出力電力Pfは、図3Aに示されるブロック図により制御されている。
【0050】
図6において、需要電力Pdmの時間変化が実線で、出力電力Pfが細かい破線で、発電電力Pgが一点鎖線で、放電電力Pdまたは充電電力Pcの時間変化が粗い破線で、それぞれ示されている。図6において、充電率Sの時間変化が二点鎖線で示されている。図6において、1日における各時刻が0時0分から4時間置きに示されている。本例においても、図4に示される例と同様に、発電電力Pgは需要電力Pdmと比較して無視できるほど小さい。発電電力Pgがゼロである場合、放電電力Pdは需要電力Pdmから出力電力Pfを差し引いた値となり、充電電力Pcは出力電力Pfから需要電力Pdmを差し引いた値となる。
【0051】
1日における予め定められた期間が開始する時刻を、時刻t0とする。時刻t0は、需要電力Pdmが増加し始める以前の時刻であってよい。本例においては、時刻t0から、燃料電池等30の出力電力Pfが増加し始める。
【0052】
出力電力Pfの時間変化率は、需要電力Pdmの時間変化率よりも小さくなりやすい。このため、時刻t1以降の所定のタイミングにおいて、需要電力Pdmは出力電力Pfよりも大きくなりやすい。当該所定のタイミングを時刻t1'とする。
【0053】
時刻t2は、需要電力Pdmが、負荷設備40の容量に基づく上限電力Pmaxとなる時刻である。上限電力Pmaxは、自立運転システム100が自立運転をする系統の定格負荷であってよい。時刻t3は、出力電力Pfが上限電力Pmaxに等しくなる時刻である。時刻t4は、需要電力Pdmが低下し始める時刻である。
【0054】
電力貯蔵装置20の時刻t0における充電率Sを、充電率S0'とする。本例においては、時刻t0から出力電力Pfが増加し始める。これにより、充電率Sは、時刻t0における充電率S0'から増加し始める。充電率Sは、需要電力Pdmと出力電力Pfとの大小関係が逆転する時刻t1'まで増加した後、時刻t1'を境に低下し始める。
【0055】
時刻t1'における充電率S(充電率Sの最大値)を充電率S0とする。本例においては、自立運転システム100は、時刻t0における目標充電率Sdを、時刻t0よりも予め定められた時間前における目標充電率Sdよりも高く設定する。本例においては、時刻t1'から時刻t3までの間、電力貯蔵装置20は放電電力Pdを負荷設備40に供給し続ける。このため、充電率Sは、時刻t1'から時刻t3まで、充電率S0から減少し続ける。本例においては、自立運転システム100は、時刻t0における充電率Sdを、時刻t0よりも前における目標充電率Sdよりも高く設定するので、充電率Sは、下限DL未満になりにくくなる。
【0056】
なお、本例は、再生エネルギー発電設備10の発電電力Pgが、需要電力Pdmと比較して無視できるほど小さい場合(例えば、発電電力Pgが需要電力Pdmの5%未満である場合)における、充電率Sの設定の一例であるが、発電電力Pgが需要電力Pdmと比較して予め定められた大きさである場合(例えば、発電電力Pgが需要電力Pdmの5%以上である場合)においても、時刻t0における目標充電率Sdを時刻t0よりも予め定められた時間前における目標充電率Sdよりも高く設定することで、充電率Sは、下限DL未満になりにくくなる。
【0057】
自立運転システム100は、時刻t0以降、電力貯蔵装置20の充電率Sを、標準形態Est(図5参照)にて設定してよい。自立運転システム100は、高充電率形態EHにより、充電率Sを、標準形態Estにより設定される充電率Sよりも高めに設定してもよい。自立運転システム100は、低充電率形態ELにより、充電率Sを、標準形態Estにより設定される充電率Sよりも低めに設定してもよい。
【0058】
自立運転システム100は、記憶部26(図1参照)に記憶された、上限電力Pmaxまたは需要電力Pdmと、目標充電率Sdとの関係に基づいて、電力貯蔵装置20の充電率Sを制御してもよい。自立運転システム100は、記憶部26に記憶された、高充電率形態EHの場合における、上限電力Pmaxまたは需要電力Pdmと目標充電率Sdとの関係に基づいて、充電率Sを制御してよい。
【0059】
図7は、自立運転システム100が電力系統200から独立した自立運転をしている場合における、需要電力Pdm、出力電力Pf、発電電力Pg、放電電力Pdまたは充電電力Pc、および、充電率Sの、1日における時間変化の第1比較例を示す図である。第1比較例においては、燃料電池等30の出力電力Pfは、時刻t1から増加し始める。このため、電力貯蔵装置20の充電率Sは、時刻t0から増加し始めない。充電率Sは、時刻t1まで、充電率S0よりも小さい充電率S0'に維持される。このため、第1比較例においては、時刻t1以降、充電率Sは充電率S0'から低下し始める。このため、充電率Sは下限DL未満になりやすい。
【0060】
図8は、自立運転システム100が電力系統200から独立した自立運転をしている場合における、負荷設備40の需要電力Pdm、燃料電池等30の出力電力Pf、電力貯蔵装置20の放電電力Pdまたは電力貯蔵装置20への充電電力Pc、および、電力貯蔵装置20の充電率Sの、1日の予め定められた期間における時間変化の一例を示す図である。図8における出力電力Pfは、図3Aに示されるブロック図により制御されている。なお、図8において再生エネルギー発電設備10の発電電力Pgは、省略されている。
【0061】
本例において、1日における予め定められた期間が終了する時刻を、時刻t5とする。時刻t5は、需要電力Pdmが低下し始める時刻であってよい。本例においては、時刻t5から、燃料電池等30の出力電力Pfが減少し始める。
【0062】
出力電力Pfの時間変化率は、需要電力Pdmの時間変化率よりも小さくなりやすい。このため、時刻t5以降の所定のタイミングにおいて、需要電力Pdmは出力電力Pfよりも小さくなりやすい。当該所定のタイミングを時刻t6'とする。時刻t7は、出力電力Pfが需要電力Pdm(下限電力Pmin)に等しくなる時刻である。
【0063】
電力貯蔵装置20の時刻t5における充電率Sを、充電率S1'とする。本例においては、時刻t5から出力電力Pfが減少し始める。これにより、充電率Sは、時刻t5における充電率S1'から減少し始める。充電率Sは、需要電力Pdmと出力電力Pfとの大小関係が逆転する時刻t6'まで減少した後、時刻t6'を境に増加し始める。
【0064】
時刻t6'における充電率S(充電率Sの最小値)を充電率S1とする。本例においては、自立運転システム100は、時刻t5における目標充電率Sdを、時刻t5よりも予め定められた時間前の目標充電率Sdよりも低く設定する。本例においては、時刻t6'から時刻t8までの間、需要電力Pdmを超える電力が負荷設備40に供給され続ける。このため、充電率Sは、時刻t6'から時刻t8まで、充電率S1から増加し続ける。本例においては、自立運転システム100は、時刻5における目標充電率Sdを、時刻t5よりも予め定められた時間前における目標充電率Sdよりも低く設定するので、充電率Sは、上限ULを超えにくくなる。
【0065】
自立運転システム100は、時刻t5以前においては、電力貯蔵装置20の目標充電率Sdを、標準形態Est(図5参照)にて設定してよい。自立運転システム100は、高充電率形態EHにより、目標充電率Sdを、標準形態Estにより設定される目標充電率Sdよりも高めに設定してもよい。自立運転システム100は、低充電率形態ELにより、目標充電率Sdを、標準形態Estにより設定される目標充電率Sdよりも低めに設定してもよい。自立運転システム100は、時刻t5以降は、目標充電率Sdを予め設定された値に設定してよい。これにより、1日の予め定められた期間以外である、例えば夜間の時間帯を除いて、蓄電池22(図1参照)の劣化を抑制するための低めの充電率に近づけることができる。
【0066】
自立運転システム100は、記憶部26(図1参照)に記憶された、上限電力Pmaxまたは需要電力Pdmと、目標充電率Sdとの関係に基づいて、電力貯蔵装置20の充電率Sを制御してもよい。自立運転システム100は、記憶部26に記憶された、低充電率形態ELの場合における、上限電力Pmaxまたは需要電力Pdmと目標充電率Sdとの関係に基づいて、充電率Sを制御してよい。
【0067】
なお、Li(リチウム)イオン電池が用いられた電力貯蔵装置20の場合、時刻t6'以降、時刻t0までの間(即ち夜中の期間)においては、充電率Sは、上限ULと下限ULとの間の中央値よりも低く設定されることが好ましい。充電率が当該中央値よりも低く設定されることにより、Li(リチウム)イオン電池が劣化しにくくなる。
【0068】
図9は、自立運転システム100が電力系統200から独立した自立運転をしている場合における、需要電力Pdm、出力電力Pf、放電電力Pdまたは充電電力Pc、および、充電率Sの、1日における時間変化の第2比較例を示す図である。第2比較例においては、燃料電池等30の出力電力Pfは、時刻t6から減少し始める。このため、電力貯蔵装置20の充電率Sは、時刻t5から減少し始めない。充電率Sは、時刻t6まで、充電率S1よりも大きい充電率S1'に維持される。このため、第2比較例においては、時刻t6以降、充電率Sは充電率S1'から増加し始める。このため、充電率Sは上限ULを超えやすい。
【0069】
自立運転システム100は、電力貯蔵装置20の種類に基づいて、電力貯蔵装置20の予め定められた充電率を制御してよい。電力貯蔵装置20の種類とは、蓄電池22(図1参照)の電極の材料の種類であってよい。蓄電池22が、所謂鉛蓄電池の場合、充電率Sは90%以上に維持されることが好ましい。鉛蓄電池とは、蓄電池22の電極に鉛が用いられている蓄電池である。蓄電池22が、所謂Li(リチウム)イオン電池の場合、充電率Sは30%以上80%以下に維持されることが好ましい。Li(リチウム)イオン電池とは、蓄電池22の電極にLi(リチウム)が用いられている蓄電池である。自立運転システム100は、電力貯蔵装置20に鉛蓄電池が用いられている場合の充電率を、Li(リチウム)イオン電池が用いられている場合の充電率よりも、高く制御してよい。
【0070】
自立運転システム100は、電力貯蔵装置20の種類に基づいて、電力貯蔵装置20の目標充電率Sdを制御してよい。自立運転システム100は、電力貯蔵装置20の種類に基づいて、電力貯蔵装置20の目標充電率Sdを、高充電率形態EH(図5参照)または低充電率形態EL(図5参照)にて、制御してよい。
【0071】
電力貯蔵装置20に、鉛蓄電池が用いられている場合、自立運転システム100は、電力貯蔵装置20の目標充電率Sdを高充電率形態EHにて制御してよい。電力貯蔵装置20にLi(リチウム)イオン電池が用いられている場合、自立運転システム100は、電力貯蔵装置20の目標充電率Sdを低充電率形態ELにて制御してよい。電力貯蔵装置20にLi(リチウム)イオン電池が用いられている場合において、充電率Sが80%を超える状態で維持され続けた場合、Li(リチウム)イオン電池は、充電率Sが80%未満の状態で維持され続けた場合よりも、劣化しやすい。このため、電力貯蔵装置20にLi(リチウム)イオン電池が用いられている場合、自立運転システム100は、電力貯蔵装置20の目標充電率Sdを低充電率形態ELにて制御することが好ましい。
【0072】
図10は、自立運転システム100の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の一例を示す図である。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る方法または当該方法の段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0073】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インタフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0074】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0075】
通信インタフェース2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0076】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0077】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0078】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0079】
CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0080】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。
【0081】
CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0082】
上述したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0083】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0084】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
[項目1]
電力系統から独立した自立運転が可能であり、電力貯蔵装置と、燃料電池および内燃力発電設備の少なくとも一方と、負荷設備と、を備える自立運転システムであって、
1日における予め定められた期間において、前記負荷設備における需要電力と、前記電力貯蔵装置の充電率との関係に基づいて、前記電力貯蔵装置の充電率の目標値である目標充電率を設定する、
自立運転システム。
[項目2]
前記目標充電率は、前記需要電力の変化に応じて変化し、
前記目標充電率を、前記需要電力の変化に対する、前記目標充電率の予め定められた変化率に基づいて、設定する、項目1に記載の自立運転システム。
[項目3]
前記目標充電率を、前記目標充電率の前記予め定められた変化率よりも高く設定する、項目2に記載の自立運転システム。
[項目4]
前記目標充電率を、前記目標充電率の前記予め定められた変化率よりも低く設定する、項目2に記載の自立運転システム。
[項目5]
前記電力貯蔵装置は、前記需要電力と、前記目標充電率との関係を記憶する記憶部を有し、
前記記憶部に記憶された、前記需要電力と前記目標充電率との関係に基づいて、前記電力貯蔵装置の充電率を設定する、項目2から4のいずれか一項に記載の自立運転システム。
[項目6]
前記電力貯蔵装置の種類に基づいて、前記電力貯蔵装置の充電率を設定する、項目2から4のいずれか一項に記載の自立運転システム。
[項目7]
1日における前記予め定められた期間の開始時における前記目標充電率を、前記予め定められた期間の開始時よりも予め定められた時間前における前記目標充電率よりも高く設定する、項目1から6のいずれか一項に記載の自立運転システム。
[項目8]
1日における前記予め定められた期間の終了時における前記目標充電率を、前記予め定められた期間の終了時よりも予め定められた時間前における前記目標充電率よりも低く設定する、項目1から7のいずれか一項に記載の自立運転システム。
[項目9]
再生エネルギー発電設備をさらに備え、
前記予め定められた期間において、前記需要電力から前記再生エネルギー発電設備から出力される発電電力を差し引いた制限電力と、前記目標充電率との関係に基づいて、前記目標充電率を設定する、
項目1から8のいずれか一項に記載の自立運転システム。
[項目10]
コンピュータを、項目1から9のいずれか一項に記載の自立運転システムとして機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0085】
10・・・再生エネルギー発電設備、20・・・電力貯蔵装置、22・・・蓄電池、24・・・PCS、26・・・記憶部、30・・・燃料電池等、31・・・加算部、32・・・PI制御部、33・・・加算部、34・・・変化率制限部、36・・・上限制限部、38・・・加算部、39・・・制御部、40・・・負荷設備、50・・・遮断手段、60・・・送電線、62・・・配線、64・・・通信線、90・・・制御手段、100・・・自立運転システム、200・・・電力系統、2200・・・コンピュータ、2201・・・DVD-ROM、2210・・・ホストコントローラ、2212・・・CPU、2214・・・RAM、2216・・・グラフィックコントローラ、2218・・・ディスプレイデバイス、2220・・・入/出力コントローラ、2222・・・通信インタフェース、2224・・・ハードディスクドライブ、2226・・・DVD-ROMドライブ、2230・・・ROM、2240・・・入/出力チップ、2242・・・キーボード
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10