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特許7631777半導体スイッチ回路および無停電電源装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】半導体スイッチ回路および無停電電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20250212BHJP
   H03K 17/725 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
H02J9/06 120
H03K17/725 E
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020207451
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2021097595
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】P 2019227888
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】北野 陽大
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-103840(JP,U)
【文献】国際公開第2019/038830(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/06
H03K 17/725
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源と負荷との間に設けられ、互いに逆並列に接続される一対のサイリスタを各々含み、互いに並列に接続されている複数の半導体スイッチ部と、
前記複数の半導体スイッチ部の各々に直列に接続されるインダクタとを備え、
前記半導体スイッチ部に直列に接続される前記インダクタの両端電圧に基づいた信号が所定の閾値以上の場合に、前記サイリスタがオフ状態からオン状態にならない失を検出するように構成されている、半導体スイッチ回路。
【請求項2】
交流電源と負荷との間に設けられ、互いに逆並列に接続される一対のサイリスタを各々含み、互いに並列に接続されている複数の半導体スイッチ部と、
前記複数の半導体スイッチ部の各々に直列に接続されるインダクタとを備え、
前記半導体スイッチ部に直列に接続される前記インダクタの両端電圧に基づいて、前記サイリスタがオフ状態からオン状態にならない失弧を検出するように構成されており、
前記インダクタの両端電圧を検出する電圧検出部をさらに備え、
前記電圧検出部により検出された前記インダクタの両端電圧に基づいた信号が、所定の閾値以上の場合に、前記サイリスタの失を検出するように構成されている、半導体スイッチ回路。
【請求項3】
前記所定の閾値は、前記複数の半導体スイッチ部の分担電圧に基づいて設定された第1閾値を含み、
前記インダクタの両端電圧に基づいた信号が、前記第1閾値以上の場合に、前記サイリスタの失を検出するように構成されている、請求項2に記載の半導体スイッチ回路。
【請求項4】
前記電圧検出部は、前複数の半導体スイッチ部毎に設けられている、請求項2または3に記載の半導体スイッチ回路。
【請求項5】
前記所定の閾値は、前記サイリスタの定格電圧に基づいて設定された第2閾値を含み、
前記電圧検出部は、前記複数の半導体スイッチ部の各々に直列に接続される前記インダクタのそれぞれの両端電圧の差を検出し、
前記インダクタのそれぞれの両端電圧の差に基づいた信号が、前記第2閾値以上の場合に、前記サイリスタの失を検出するように構成されている、請求項2に記載の半導体スイッチ回路。
【請求項6】
前記複数の半導体スイッチ部は、互いに並列に接続されている第1半導体スイッチ部および第2半導体スイッチ部を含み、
前記インダクタは、前記第1半導体スイッチ部に直列に接続される第1インダクタと、前記第2半導体スイッチ部に直列に接続される第2インダクタとを含み、
前記第1インダクタおよび前記第2インダクタは、略等しい大きさのインダクタンスを有する、請求項5に記載の半導体スイッチ回路。
【請求項7】
前記電圧検出部は、前記第1半導体スイッチ部および前記第2半導体スイッチ部の両方がオンの状態において、前記第1インダクタおよび前記第2インダクタのそれぞれの両端電圧の差を検出するように構成されている、請求項6に記載の半導体スイッチ回路。
【請求項8】
前記電圧検出部は、前記第1インダクタおよび前記第2インダクタが逆極性となるように接続されることによって、前記第1インダクタおよび前記第2インダクタのそれぞれの両端電圧の差を検出するように構成されている、請求項6または7に記載の半導体スイッチ回路。
【請求項9】
前記電圧検出部は、変圧器を含み、
前記変圧器は、2つのコイルを有する1次側巻線と、1つのコイルを有する2次側巻線とを含み、前記1次側巻線の2つのコイルの各々に対して、前記第1インダクタおよび前記第2インダクタのそれぞれが逆極性となるように接続されることによって、前記第1インダクタおよび前記第2インダクタのそれぞれの両端電圧の差を検出するように構成されている、請求項8に記載の半導体スイッチ回路。
【請求項10】
前記複数の半導体スイッチ部に含まれる前記サイリスタのうちの少なくとも1つのサイリスタが失の状態である場合に、失の状態であることを示す信号を出力するように構成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の半導体スイッチ回路。
【請求項11】
前記複数の半導体スイッチ部の各々に直列に接続される前記インダクタは、前記半導体スイッチ部の各々に流れる電流を平均化するように構成されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の半導体スイッチ回路。
【請求項12】
交流電源からの交流電力を直流電力に変換するコンバータ部と、
前記コンバータ部からの前記直流電力を交流電力に変換し、変換した前記交流電力を負荷に供給するインバータ部と、
前記交流電源と前記負荷との間に、前記コンバータ部および前記インバータ部に並列に接続され、前記交流電源からの前記交流電力を前記負荷に供給するバイパス回路部と、
前記バイパス回路部に設けられた半導体スイッチ回路とを備え、
前記半導体スイッチ回路は、
互いに逆並列に接続される一対のサイリスタを各々含み、互いに並列に接続されている複数の半導体スイッチ部と、
前記複数の半導体スイッチ部の各々に直列に接続されるインダクタとを含み、
前記半導体スイッチ部に直列に接続される前記インダクタの両端電圧に基づいた信号が所定の閾値以上の場合に、前記サイリスタがオフ状態からオン状態にならない失を検出するように構成されている、無停電電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体スイッチ回路および無停電電源装置に関し、特に、互いに逆並列に接続される一対のサイリスタを備える半導体スイッチ回路および無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに逆並列に接続される一対のサイリスタを備える無停電電源装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1では、商用電源と負荷との間に無停電電源装置が設けられている。また、無停電電源装置には、インバータと、インバータに直列に接続される蓄電池とが設けられている。また、インバータと負荷とは、互いに並列に接続されている。また、商用電源と、インバータおよび負荷との間には、半導体スイッチが設けられている。また、半導体スイッチは、互いに逆並列に接続された一対のサイリスタを含む。
【0004】
また、上記特許文献1に開示されている無停電電源装置では、商用電源の健全時には、半導体スイッチが点されることにより、商用電源から負荷に交流電力が供給される。また、商用電源の健全時には、インバータにより変換された電力が、蓄電池に充電される。また、商用電源が停電した場合などでは、半導体スイッチを消させて、蓄電池からインバータを介して負荷に交流電力が供給される。
【0005】
また、上記特許文献1に開示されている無停電電源装置では、半導体スイッチの商用電源側の端子電圧を検出する変圧器と、半導体スイッチの負荷側の端子電圧を検出する変圧器とが設けられている。そして、半導体スイッチの点中の両端の端子電圧の偏差が、所定の設定値を超えた場合に、半導体スイッチに含まれるサイリスタが失(点しなくなる状態。言い換えると、オフ状態からオン状態にならない点不能の状態)であると判定される。
【0006】
ここで、上記特許文献1には明記されていないが、商用電源から比較的大きな電力が負荷に供給される場合、複数の半導体スイッチを互いに並列に接続するとともに、互いに並列に接続された複数の半導体スイッチを介して、商用電源から負荷に電力が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-126980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、互いに並列に接続された複数の半導体スイッチを介して、商用電源から負荷に電力が供給される従来の構成では、互いに並列に接続された複数の半導体スイッチのうちの1つの半導体スイッチが故障(サイリスタが失)した場合でも、他の半導体スイッチを介して電力が負荷に供給される。このため、上記特許文献1のように、複数の半導体スイッチの点中の両端の端子電圧の偏差に基づいて、半導体スイッチが失しているか否かを判定する場合、故障していない他の半導体スイッチの両端電圧(サイリスタの順電圧)が検出されるので、サイリスタの失が検出できないという問題点がある。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、複数の半導体スイッチ部が互いに並列に接続されている場合でも、サイリスタの失を検出することが可能な半導体スイッチ回路および無停電電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による半導体スイッチ回路は、交流電源と負荷との間に設けられ、互いに逆並列に接続される一対のサイリスタを各々含み、互いに並列に接続されている複数の半導体スイッチ部と、複数の半導体スイッチ部の各々に直列に接続されるインダクタとを備え、半導体スイッチ部に直列に接続されるインダクタの両端電圧に基づいた信号が所定の閾値以上の場合に、サイリスタがオフ状態からオン状態にならない失を検出するように構成されている。
【0011】
この発明の第1の局面による半導体スイッチ回路では、上記のように、半導体スイッチ部に直列に接続されるインダクタの両端電圧に基づいて、サイリスタがオフ状態からオン状態にならない失を検出するように構成されている。これにより、半導体スイッチ部に含まれるサイリスタがオフ状態からオン状態にならない失の状態になった場合には、失になったサイリスタに電流が流れないので、失になったサイリスタを含む半導体スイッチ部に接続されるインダクタの両端電圧が略0になり、また、当該サイリスタの通電電流分は、他の並列のサイリスタに分流されるため、失弧した半導体スイッチ部以外の半導体スイッチ部に接続されるインダクタの両端電圧が上昇する。これにより、複数の半導体スイッチ部が互いに並列に接続されている場合でも、サイリスタの失を検出することができる。
【0012】
この発明の第2の局面による半導体スイッチ回路は、交流電源と負荷との間に設けられ、互いに逆並列に接続される一対のサイリスタを各々含み、互いに並列に接続されている複数の半導体スイッチ部と、複数の半導体スイッチ部の各々に直列に接続されるインダクタとを備え、半導体スイッチ部に直列に接続されるインダクタの両端電圧に基づいて、サイリスタがオフ状態からオン状態にならない失弧を検出するように構成されており、インダクタの両端電圧を検出する電圧検出部をさらに備え、電圧検出部により検出されたインダクタの両端電圧に基づいた信号が、所定の閾値以上の場合に、サイリスタの失弧を検出するように構成されている。
この発明の第2の局面による半導体スイッチ回路では、上記のように、インダクタの両端電圧を検出する電圧検出部をさらに備え、電圧検出部により検出されたインダクタの両端電圧に基づいた信号が、所定の閾値以上の場合に、サイリスタの失を検出するように構成されている。これにより、サイリスタが失した場合に、他のインダクタの両端電圧が上昇するため、閾値以上のインダクタの両端電圧を電圧検出部により検出することによって、容易に、サイリスタの失を検出することができる。
【0013】
上記第2の局面による半導体スイッチ回路において、好ましくは、所定の閾値は、複数の半導体スイッチ部の分担電圧に基づいて設定された第1閾値を含み、インダクタの両端電圧に基づいた信号が、第1閾値以上の場合に、前記サイリスタの失を検出するように構成されている。ここで、複数の半導体スイッチ部の各々には、接続されるインダクタに発生する誘起電圧に応じた分担電圧が印加される。そこで、複数の半導体スイッチ部に含まれるインダクタの誘起電圧が、想定される複数の半導体スイッチ部の電流分担不平衡分の電圧上昇値を上回り、かつ、サイリスタの通常通電電流範囲から乖離して上昇していることを検出した場合にサイリスタが失していると判定されるように、所定の閾値(第1閾値)を設定することによって、容易に、サイリスタの失を検出することができる。
【0014】
上記第2の局面による半導体スイッチ回路において、好ましくは、電圧検出部は、複数の半導体スイッチ部毎に設けられている。このように構成すれば、複数の半導体スイッチ部毎に、サイリスタが失しているか否かを検出することができる。
【0015】
上記第2の局面による半導体スイッチ回路において、好ましくは、所定の閾値は、サイリスタの定格電圧に基づいて設定された第2閾値を含み、電圧検出部は、複数の半導体スイッチ部の各々に直列に接続されるインダクタのそれぞれの両端電圧の差を検出し、インダクタのそれぞれの両端電圧の差に基づいた信号が、第2閾値以上の場合に、サイリスタの失を検出するように構成されている。このように構成すれば、インダクタのそれぞれの両端電圧の差と所定の閾値(第2閾値)とを比較することによって、複数の半導体スイッチ部の失を検出することができる。そのため、インダクタのそれぞれの両端電圧を別個に検出して閾値と比較する場合と異なり、検出された信号と閾値とを比較する構成を共通の構成とすることができる。その結果、インダクタのそれぞれの両端電圧の差に基づいた信号と第2閾値とを比較することによって、並列に接続された複数の半導体スイッチ部の失を検出するために、回路構成が複雑化することを抑制することができる。
【0016】
この場合、好ましくは、複数の半導体スイッチ部は、互いに並列に接続されている第1半導体スイッチ部および第2半導体スイッチ部を含み、インダクタは、第1半導体スイッチ部に直列に接続される第1インダクタと、第2半導体スイッチ部に直列に接続される第2インダクタとを含み、第1インダクタおよび第2インダクタは、略等しい大きさのインダクタンスを有する。このように構成すれば、第1インダクタと第2インダクタとのインダクタンスの大きさが略等しいため、半導体スイッチ部のサイリスタが正常である場合には、第1インダクタの両端電圧と第2インダクタの両端電圧とを略等しい大きさとすることができる。そのため、第1インダクタおよび第2インダクタのそれぞれの両端電圧の差を略0とすることができる。一方で、半導体スイッチ部のサイリスタが失した場合には、第1インダクタおよび第2インダクタのそれぞれの両端電圧の差が0ではなくなる。このため、第1インダクタおよび第2インダクタのそれぞれの両端電圧の差が略0であるか否かを判定することによって、半導体スイッチ部のサイリスタの失をより容易に検出することができる。また、本明細書では、「略等しい」とは、完全に等しい大きさのみならず個体差およびノイズなどによる微差(誤差)を含む広い概念として記載している。同様に、「略0」とは、個体差およびノイズなどによる微小な値を含む広い概念として記載している。
【0017】
この場合、好ましくは、電圧検出部は、第1半導体スイッチ部および第2半導体スイッチ部の両方がオンの状態において、第1インダクタおよび第2インダクタのそれぞれの両端電圧の差を検出するように構成されている。ここで、スイッチをオンにするように第1半導体スイッチ部および第2半導体スイッチ部を制御した場合においても、失したサイリスタには電流が流れない。そのため、第1半導体スイッチ部および第2半導体スイッチ部のいずれかのサイリスタが失している場合には、スイッチがオンの状態における第1インダクタおよび第2インダクタのそれぞれの両端電圧の差が、サイリスタが正常の場合とは異なる。そこで、第1半導体スイッチ部および第2半導体スイッチ部の両方がオンの状態において、第1インダクタおよび第2インダクタのそれぞれの両端電圧の差を検出することによって、サイリスタの失を精度よく検出することができる。
【0018】
上記半導体スイッチ部が第1半導体スイッチ部および第2半導体スイッチ部を含む半導体スイッチ回路において、好ましくは、電圧検出部は、第1インダクタおよび第2インダクタが逆極性となるように接続されることによって、第1インダクタおよび第2インダクタのそれぞれの両端電圧の差を検出するように構成されている。このように構成すれば、第1インダクタおよび第2インダクタを逆極性となるように接続することによって、第1インダクタの両端電圧と第2インダクタの両端電圧とをそれぞれ別個に検出することなく、第1インダクタおよび第2インダクタのそれぞれの両端電圧の差の大きさを検出することができる。そのため、第1インダクタの両端電圧と第2インダクタの両端電圧とを、それぞれ別個に検出する構成を設ける場合と比べて、第1インダクタおよび第2インダクタのそれぞれの両端電圧の差を容易に検出することができる。
【0019】
この場合、好ましくは、電圧検出部は、変圧器を含み、変圧器は、2つのコイルを有する1次側巻線と、1つのコイルを有する2次側巻線とを含み、1次側巻線の2つのコイルの各々に対して、第1インダクタおよび第2インダクタのそれぞれが逆極性となるように接続されることによって、第1インダクタおよび第2インダクタのそれぞれの両端電圧の差を検出するように構成されている。このように構成すれば、1次側巻線の逆極性の接続によって、第1インダクタおよび第2インダクタのそれぞれの両端電圧の差を取得することができるとともに、2次側巻線からの出力によって、第1インダクタおよび第2インダクタのそれぞれの両端電圧の差を変圧して検出することができる。そのため、変圧器によって、第1インダクタおよび第2インダクタのそれぞれの両端電圧の差を増幅した検出信号(検出値)を取得することができる。その結果、増幅された信号を所定の閾値(第2閾値)と比較することによってサイリスタの失を検出することができるので、サイリスタの失を精度よく検出することができる。また、変圧器を用いることによって、1次側巻線と2次側巻線とが絶縁されるため、電圧を検出するインダクタ側と、失を検出するための演算回路側とを絶縁することができる。このため、インダクタ側(半導体スイッチ部側)の異常が、演算回路側に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0020】
上記第1および第2の局面による半導体スイッチ回路において、好ましくは、複数の半導体スイッチ部に含まれるサイリスタのうちの少なくとも1つのサイリスタが失の状態である場合に、失の状態であることを示す信号を出力するように構成されている。このように構成すれば、失の状態であることを示す信号に基づいて、半導体スイッチ回路が設けられる装置を停止させることができるので、失の状態のサイリスタが含まれた状態で、装置が継続的に使用されるのを抑制することができる。
【0021】
上記第1および第2の局面による半導体スイッチ回路において、好ましくは、複数の半導体スイッチ部の各々に直列に接続されるインダクタは、半導体スイッチ部の各々に流れる電流を平均化するように構成されている。このように構成すれば、半導体スイッチ部に流れる電流(通電電流)が偏ることに起因して、半導体スイッチ部(サイリスタ)が故障するのを抑制することができる。
【0022】
この発明の第の局面による無停電電源装置は、交流電源からの交流電力を直流電力に変換するコンバータ部と、コンバータ部からの直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を負荷に供給するインバータ部と、交流電源と負荷との間に、コンバータ部およびインバータ部に並列に接続され、交流電源からの交流電力を負荷に供給するバイパス回路部と、バイパス回路部に設けられた半導体スイッチ回路とを備え、半導体スイッチ回路は、互いに逆並列に接続される一対のサイリスタを各々含み、互いに並列に接続されている複数の半導体スイッチ部と、複数の半導体スイッチ部の各々に直列に接続されるインダクタとを含み、半導体スイッチ部に直列に接続されるインダクタの両端電圧に基づいた信号が所定の閾値以上の場合に、サイリスタがオフ状態からオン状態にならない失を検出するように構成されている。
【0023】
この発明の第の局面による無停電電源装置では、上記のように、半導体スイッチ部に直列に接続されるインダクタの両端電圧に基づいて、サイリスタがオフ状態からオン状態にならない失を検出するように構成されている。これにより、半導体スイッチ部に含まれるサイリスタがオフ状態からオン状態にならない失の状態になった場合には、失になったサイリスタに電流が流れないので、失になったサイリスタを含む半導体スイッチ部に接続されるインダクタの両端電圧が略0になり、また、当該サイリスタの通電電流分は、他の並列のサイリスタに分流されるため、失弧した半導体スイッチ部以外の半導体スイッチ部に接続されるインダクタの両端電圧が上昇する。その結果、複数の半導体スイッチ部が互いに並列に接続されている場合でも、サイリスタの失を検出することが可能な無停電電源装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、上記のように、半導体スイッチ部が互いに並列に接続されている場合でも、サイリスタの失を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態による無停電電源装置の全体の構成を示したブロック図である。
図2】第1実施形態による無停電電源装置の半導体スイッチ回路(1相分)の構成を示したブロック図である。
図3】第1実施形態による無停電電源装置の半導体スイッチ部の構成を示した回路図である。
図4】第1実施形態による無停電電源装置の半導体スイッチ回路(3相分)の構成を示したブロック図である。
図5】第2実施形態による無停電電源装置の全体の構成を示したブロック図である。
図6】第2実施形態による無停電電源装置の半導体スイッチ回路の構成を示したブロック図である。
図7】変形例による無停電電源システムの全体の構成を示したブロック図である。
図8】変形例による変圧器の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
[第1実施形態]
図1図4を参照して、第1実施形態による無停電電源装置100の構成について説明する。
【0028】
(無停電電源装置の構成)
図1に示すように、無停電電源装置100は、コンバータ部1を備えている。コンバータ部1は、交流電源200aからの交流電力を直流電力に変換するように構成されている。また、交流電源200aとコンバータ部1との間には、機械式のスイッチ部2aが設けられている。
【0029】
また、無停電電源装置100は、インバータ部3を備えている。インバータ部3は、コンバータ部1からの直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を負荷210に供給するように構成されている。また、インバータ部3と負荷210との間には、機械式のスイッチ部2bが設けられている。
【0030】
また、無停電電源装置100は、直流電源4を備えている。直流電源4は、コンバータ部1とインバータ部3との間に接続され、交流電源200aの異常時に負荷210に電力を供給するように構成されている。具体的には、直流電源4の直流電力がインバータ部3により交流電力に変換されて負荷210に供給される。また、直流電源4と、コンバータ部1およびインバータ部3との間には、機械式のスイッチ部2cが設けられている。
【0031】
また、無停電電源装置100は、バイパス回路部5を備えている。バイパス回路部5は、交流電源200bと負荷210との間に、コンバータ部1およびインバータ部2に並列に接続され、交流電源200bからの交流電力を負荷210に供給するように構成されている。
【0032】
また、無停電電源装置100は、半導体スイッチ回路10を備えている。半導体スイッチ回路10は、バイパス回路部5に設けられている。なお、半導体スイッチ回路10の詳細な構成は、後述する。また、バイパス回路部5には、半導体スイッチ回路10に並列に配置される機械式のスイッチ部6が設けられている。スイッチ部6は、バイパス給電中(交流電源200bからバイパス回路部5を介して、負荷210に給電中)には、主にスイッチ部6を閉路することにより電力を供給している。半導体スイッチ回路10は、スイッチ部6の開路および閉路の際に補助的に用いられる(所定の時間だけオンする)。
【0033】
また、無停電電源装置100は、制御部7を備えている。制御部7は、無停電電源装置100の全体を制御するように構成されている。たとえば、制御部7は、コンバータ部1およびインバータ部3の駆動を制御する。また、制御部7は、半導体スイッチ回路10およびスイッチ部6の駆動(オンオフ)を制御する。
【0034】
無停電電源装置100は、通常時には、交流電源200bから、バイパス回路部5を介して負荷210に給電を行う。また、バイパス回路部5を介した給電中に、バイパス回路部5に異常が発生した場合には、インバータ部3から負荷210に給電を行う。なお、通常時にインバータ部3から負荷210に給電を行うとともに、インバータ部3などの故障時に、バイパス回路部5を介して負荷210に給電を行ってもよい。また、無停電電源装置100は、負荷210から発生する高調波電流や無効電力を吸収するアクティブフィルタ動作を行う。
【0035】
(半導体スイッチ回路の詳細な構成)
図2図4を参照して、半導体スイッチ回路10の詳細な構成について説明する。なお、図2では、1相分の半導体スイッチ回路10が記載されているが、実際には、図4に示すように、半導体スイッチ回路10は、3相に対して設けられている。
【0036】
第1実施形態では、図3に示すように、半導体スイッチ回路10は、複数(第1実施形態では、1つの相に対して2つ)の半導体スイッチ部11を備えている。複数の半導体スイッチ部11は、交流電源200bと負荷210との間に設けられている。また、複数の半導体スイッチ部11は、互いに逆並列に接続される一対のサイリスタ12を各々含む。なお、サイリスタ12は、ゲートからカソードへゲート電流を流すことにより、アノードとカソード間を導通させることが可能な3つの端子を有する半導体素子である。
【0037】
また、半導体スイッチ回路10は、複数の半導体スイッチ部11(半導体スイッチ部11aおよび11b)の各々に直列に接続されるインダクタ13(インダクタ13aおよび13b)を備えている。インダクタ13は、インダクタ13を流れる電流によって形成される磁場に電力を蓄えることが可能な受動素子である。また、インダクタ13は、たとえば、コイルにより構成されている。また、インダクタ13は、サイリスタ12の順電圧の個体差が無視できる程度の誘起電圧を発生可能なインダクタンスLを有するインダクタ13が選択される。
【0038】
また、第1実施形態では、複数の半導体スイッチ部11(半導体スイッチ部11aおよび11b)の各々に直列に接続されるインダクタ13(インダクタ13aおよび13b)は、半導体スイッチ部11の各々に流れる電流を平均化するように構成されている。半導体スイッチ部11に含まれるサイリスタ12は、個体差(順電圧の差)を有するので、半導体スイッチ部11aを流れる電流(I)と、半導体スイッチ部11bを流れる電流(I)との間には、ばらつきが生じる。そして、インダクタ13に交流電流が流れると、インダクタ13を流れる交流電流によって発生した磁界が他の巻線を横切るため、誘起電圧(=ωLI)が発生する。誘起電圧は、インダクタ13に流れる交流電流の変化を妨げるように働く。また、誘起電圧は、サイリスタ12の順電圧よりも高くなるように構成されている。これにより、インダクタ13(インダクタ13aおよび13b)は、半導体スイッチ部11aおよび11bの各々に流れる電流を平均化する。また、半導体スイッチ部11aと半導体スイッチ部11bとは並列に接続されているので、複数の半導体スイッチ部11から電流I(=I+I)が流れ出す。
【0039】
ここで、第1実施形態では、図2に示すように、半導体スイッチ回路10は、半導体スイッチ部11に直列に接続されるインダクタ13の両端電圧に基づいて、サイリスタ12がオフ状態からオン状態にならない失を検出するように構成されている。具体的には、半導体スイッチ回路10には、サイリスタ12の失を検出する演算回路14が設けられている。
【0040】
具体的には、半導体スイッチ回路10(演算回路14)は、インダクタ13の両端電圧を検出する変圧器15を備えている。具体的には、変圧器15の1次側は、インダクタ13の両端に接続されている。また、変圧器15の2次側は、整流器16(ダイオード)に接続されている。なお、整流器16は、両波整流回路から構成されている。また、整流器16の出力側には、LPF(Low-pass filter)17が接続されている。LPF17は、整流器16から出力された電圧の脈動を平滑化する。また、LPF17の出力側には、比較器18が接続されている。また、変圧器15を用いることにより、電圧の検出点(インダクタ13側)と、演算回路14とが絶縁される。なお、電圧の検出の精度が確保可能であるのならば、電圧の検出点と演算回路14とを絶縁しなくてもよい(変圧器15を除去してもよい)。また、変圧器15は、特許請求の範囲の「電圧検出部」の一例である。
【0041】
そして、第1実施形態では、半導体スイッチ回路10は、変圧器15により検出されたインダクタ13の両端電圧に基づいた信号が、所定の閾値(第1閾値)以上の場合に、サイリスタ12の失を検出するように構成されている。具体的には、変圧器15により検出されたインダクタ13の両端電圧が、整流器16およびLPF17を介して比較器18に入力される。そして、比較器18は、入力された信号(インダクタ13の両端電圧に基づいた信号)と、第1閾値とを比較する。そして、比較器18は、入力された信号が第1閾値以上の場合に、Hレベルの信号を出力する。すなわち、比較器18からHレベルの信号が出力されたことに基づいて、サイリスタ12の失が検出される。
【0042】
詳細には、インダクタ13aには、半導体スイッチ部11aを流れる電流(I)に応じた誘起電圧V(=ωLI)が発生する。また、インダクタ13bには、半導体スイッチ部11bを流れる電流(I)に応じた誘起電圧V(=ωLI)が発生する。そして、サイリスタ12が失した場合、電流が流れなくなるので、インダクタ13bには、半導体スイッチ部11aに流れていた電流分(I)の誘起電圧V+V(=ωL(I+I))が発生する。そして、この電圧を、変圧器15が検出することにより、比較器18からHレベルの信号が出力される。
【0043】
また、第1実施形態では、所定の閾値(第1閾値)は、複数の半導体スイッチ部11の分担電圧に基づいて設定されている。すなわち、サイリスタ12が失していない場合、インダクタ13aおよび13bには、それぞれ、半導体スイッチ部11aおよび11bの分担電流に応じた電圧(分担電圧)が発生する。たとえば、第1閾値は、この分担電圧の110%の値である。
【0044】
また、第1実施形態では、変圧器15は、半導体スイッチ部11毎に設けられている。すなわち、各相において、2つの半導体スイッチ部11aおよび11bに対して1つずつ(合計2つ)、変圧器15が設けられている。つまり、半導体スイッチ部11毎に、電圧が検出される。なお、整流器16、LPF17および比較器18も、半導体スイッチ部11毎に設けられている。
【0045】
また、第1実施形態では、半導体スイッチ回路10は、複数の半導体スイッチ部11に含まれるサイリスタ12のうちの少なくとも1つのサイリスタ12が失の状態である場合に、失の状態であることを示す信号を出力するように構成されている。具体的には、半導体スイッチ部11毎に設けられている2つの比較器18の出力側には、OR回路19が設けられている。これにより、半導体スイッチ部11aおよび半導体スイッチ部11bに含まれるいずれかのサイリスタ12が失した場合でも、OR回路19からHレベルの信号が出力される。これにより、半導体スイッチ回路10に含まれるいずれのサイリスタ12が失した場合でも、失を検出することが可能になる。
【0046】
なお、上記したように、図2では、1つの相の半導体スイッチ部11が示されているが、図4に示すように、実際には、相毎に、複数の半導体スイッチ部11が設けられている。具体的には、半導体スイッチ回路10は、U相の半導体スイッチ部11a(図4の#1U相)および半導体スイッチ部11b(#2U相)と、V相の半導体スイッチ部11a(#1V相)および半導体スイッチ部11b(#2V相)と、W相の半導体スイッチ部11a(#1W相)および半導体スイッチ部11b(#2W相)とを含む。そして、OR回路19は、全ての半導体スイッチ部11に対して共通に1つ設けられている。これにより、複数の半導体スイッチ部11に含まれるいずれのサイリスタ12が失した場合でも、失を検出することが可能になる。
【0047】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0048】
第1実施形態では、上記のように、半導体スイッチ回路10は、半導体スイッチ部11に直列に接続されるインダクタ13の両端電圧に基づいて、サイリスタ12がオフ状態からオン状態にならない失を検出するように構成されている。これにより、半導体スイッチ部11に含まれるサイリスタ12がオフ状態からオン状態にならない失の状態になった場合には、失になったサイリスタ12に電流が流れないので、また、当該サイリスタ12の通電電流分は、他の並列のサイリスタ12に分流されるため、失弧した半導体スイッチ部11以外の半導体スイッチ部11に接続されるインダクタ13の両端電圧が上昇する。その結果、複数の半導体スイッチ部11が互いに並列に接続されている場合でも、サイリスタ12の失を検出することができる。
【0049】
また、第1実施形態では、上記のように、半導体スイッチ回路10は、変圧器15により検出されたインダクタ13の両端電圧に基づいた信号が、所定の閾値(第1閾値)以上の場合に、サイリスタ12の失を検出するように構成されている。これにより、サイリスタ12が失した場合に他のインダクタ13の両端電圧が上昇するため、第1閾値以上のインダクタ13の両端電圧を変圧器15により検出することによって、容易に、サイリスタ12の失を検出することができる。
【0050】
また、第1実施形態では、上記のように、所定の閾値は、複数の半導体スイッチ部11の分担電圧に基づいて設定された第1閾値を含み、インダクタ13の両端電圧に基づいた信号が、第1閾値以上の場合に、サイリスタ12の失を検出するように構成されている。ここで、複数の半導体スイッチ部11の各々には、接続されるインダクタ13に発生する誘起電圧に応じた分担電圧が印加される。そこで、複数の半導体スイッチ部11に含まれるサイリスタ12が失していない状態(正常な状態)から乖離した電圧が検出された場合にサイリスタ12が失していると判定されるように、所定の閾値(第1閾値)を設定することによって、容易に、サイリスタ12の失を検出することができる。
【0051】
また、第1実施形態では、上記のように、変圧器15は、複数の半導体スイッチ部11毎に設けられている。これにより、複数の半導体スイッチ部11毎に、サイリスタ12が失しているか否かを検出することができる。
【0052】
また、第1実施形態では、上記のように、半導体スイッチ回路10は、複数の半導体スイッチ部11に含まれるサイリスタ12のうちの少なくとも1つのサイリスタ12が失の状態である場合に、失の状態であることを示す信号を出力するように構成されている。これにより、失の状態であることを示す信号に基づいて、半導体スイッチ回路10が設けられる無停電電源装置100を停止させることができるので、失の状態のサイリスタ12が含まれた状態で、無停電電源装置100が継続的に使用されるのを抑制することができる。
【0053】
また、第1実施形態では、上記のように、複数の半導体スイッチ部11の各々に直列に接続されるインダクタ13は、半導体スイッチ部11の各々に流れる電流を平均化するように構成されている。これにより、半導体スイッチ部11に流れる電流(通電電流)が偏ることに起因して、半導体スイッチ部11(サイリスタ12)が故障するのを抑制することができる。
【0054】
[第2実施形態]
次に、図5および図6を参照して、第2実施形態の無停電電源装置400について説明する。第2実施形態では、変圧器15を2つの半導体スイッチ部11毎に設けるように構成した第1実施形態とは異なり、2つの半導体スイッチ部411に対して共通の1つの変圧器415が設けられている。なお、変圧器415は、特許請求の範囲における「電圧検出部」の一例である。
【0055】
図5に示すように、第2実施形態による無停電電源装置400は、半導体スイッチ回路410を備える。半導体スイッチ回路410は、第1実施形態による半導体スイッチ回路10と同様に、スイッチ部6の開路および閉路の際に補助的に用いられる。
【0056】
図6に示すように、半導体スイッチ回路410は、第1実施形態と同様に、複数(2つ)の半導体スイッチ部411を備えている。具体的には、半導体スイッチ部411は、互いに並列に接続されている半導体スイッチ部411aおよび半導体スイッチ部411bを含む。また、半導体スイッチ部411(半導体スイッチ部411aおよび半導体スイッチ部411b)は、それぞれ、第1実施形態と同様に、互いに逆並列に接続される一対のサイリスタ12を含む。なお、半導体スイッチ部411aは特許請求の範囲における「第1半導体スイッチ部」の一例である。また、半導体スイッチ部411bは、特許請求の範囲における「第2半導体スイッチ部」の一例である。
【0057】
また、半導体スイッチ回路410は、第1実施形態と同様に、複数の半導体スイッチ部411の各々に直列に接続されるインダクタ413を備えている。第2実施形態では、インダクタ413は、半導体スイッチ部411aの負荷210側に直列に接続されるインダクタ413aと、半導体スイッチ部411bの負荷210側に直列に接続されるインダクタ413bとを含む。なお、インダクタ413aおよびインダクタ413bは、それぞれ半導体スイッチ部411aおよび半導体スイッチ部411bの交流電源200b側に直列に接続されていてもよい。また、インダクタ413aは、特許請求の範囲における「第1インダクタ」の一例である。また、インダクタ413bは、特許請求の範囲における「第2インダクタ」の一例である。
【0058】
また、第2実施形態では、インダクタ413aおよびインダクタ413bは、略等しい大きさのインダクタンスL(インピーダンス)を有する。そして、第1実施形態と同様に、インダクタ413aおよびインダクタ413bのインダクタンスLは、サイリスタ12の順電圧の個体差が無視できる程度の誘起電圧を発生可能な大きさを有する。たとえば、インダクタ413aおよびインダクタ413bのインダクタンスLは、サイリスタ12において発生する順電圧の5倍の誘起電圧を発生させる大きさである。したがって、インダクタ413aおよびインダクタ413bは、第1実施形態と同様に、半導体スイッチ部411aおよび半導体スイッチ部411bに流れる電流を平均化(バランス)する。すなわち、半導体スイッチ部411aおよびインダクタ413aに流れる電流Iと、半導体スイッチ部411bおよびインダクタ413bに流れる電流Iとは、略同じ大きさとなる。そのため、インダクタ413aに発生する誘起電圧Vおよびインダクタ413bに発生する誘起電圧Vは、略等しい大きさとなる。つまり、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の大きさは、略等しい大きさとなる。
【0059】
ここで、第2実施形態では、半導体スイッチ回路410は、第1実施形態とは異なり、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差に基づいて、サイリスタ12の失を検出するように構成されている。サイリスタ12が全て正常であれば、インダクタ413aおよびインダクタ413bの両端電圧は、略等しい大きさとなる。そのため、インダクタ413aおよびインダクタ413bの両端電圧のそれぞれの差は略0となる。一方で、サイリスタ12の内のいずれか1つが異常(失)の場合には、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差は0ではなくなる。そこで、第2実施形態では、半導体スイッチ回路410は、インダクタ413aおよび413bのそれぞれの両端電圧の差に基づいた信号が、所定の閾値(第2閾値)以上の場合に、サイリスタ12の失を検出するように構成されている。
【0060】
具体的には、半導体スイッチ回路410には、サイリスタ12の失を検出する演算回路414が設けられている。第2実施形態では、半導体スイッチ回路410(演算回路414)は、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差を検出する変圧器415を備えている。変圧器415は、2つのコイルを有する1次側巻線415aと、1つのコイルを有する2次側巻線415bとを含む。そして、変圧器415は、1次側巻線415aの2つのコイルの各々に対して、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれが逆極性となるように接続されることによって、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差を検出するように構成されている。
【0061】
たとえば、変圧器415の1次側巻線415aは、極性(巻き方向)の異なる2つのコイルを含む。そして、極性の異なる2つのコイルの各々に、インダクタ413aおよびインダクタ413bが並列に接続される。すなわち、変圧器415の1次側巻線415aに、インダクタ413aの誘起電圧Vおよびインダクタ413aの誘起電圧Vが、逆極性となるように印加される。逆極性となるように印加された誘起電圧Vおよび誘起電圧Vは互いに打ち消しあうため、変圧器415の1次側巻線415aには、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差となる電圧が印加される。そして、変圧器415は、2次側巻線415bからインダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差を増幅(変圧)した信号を出力する。
【0062】
また、演算回路414は、整流器416(ダイオード)、LPF417、および、比較器418を含む。整流器416(ダイオード)、LPF417、および、比較器418は、第1実施形態による整流器16、LPF17、および、比較器18と同様に動作する。具体的には、変圧器415の2次側巻線415bは、整流器416(ダイオード)に接続されている。そして、2次側巻線415bからの信号は、整流器416によって整流され、LPF417によって平滑化される。そして、LPF417の出力側には、比較器418が接続されている。比較器418は、LPF417から入力された信号(インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差に基づいた信号)と、所定の閾値(第2閾値)とを比較する。そして、入力された信号が第2閾値以上の場合に、サイリスタ12の失が検出される。
【0063】
第2実施形態では、所定の閾値(第2閾値)は、サイリスタ12の定格電圧に基づいて設定される。たとえば、第2閾値は、サイリスタ12の定格電圧の25%に対応する値が設定される。すなわち、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差が、サイリスタ12の定格電圧の25%以上の大きさとなった場合に、比較器418によって、サイリスタ12の失を検出したことを示す信号が出力されるように、第2閾値が設定される。
【0064】
また、第2実施形態では、変圧器415は、半導体スイッチ部411aおよび半導体スイッチ部411bの両方がオンの状態において、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差を検出するように構成されている。すなわち、制御部7によって半導体スイッチ部411aおよび半導体スイッチ部411bに対して、スイッチをオンにする(サイリスタ12を点:ターンオンする)指令が出力されている状態において、両端電圧の差を検出するサイリスタ12の失の検査が行われる。
【0065】
なお、無停電電源装置400のその他の構成は、第1実施形態による無停電電源装置100と同様である。
【0066】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0067】
第2実施形態では、上記のように、所定の閾値は、サイリスタ12の定格電圧に基づいて設定された第2閾値を含み、変圧器415(電圧検出部)は、複数の半導体スイッチ部411の各々に直列に接続されるインダクタ413のそれぞれの両端電圧の差を検出し、インダクタ413のそれぞれの両端電圧の差に基づいた信号が、第2閾値以上の場合に、サイリスタ12の失を検出するように構成されている。このように構成すれば、インダクタ413のそれぞれの両端電圧の差と所定の閾値(第2閾値)とを比較することによって、複数の半導体スイッチ部411の失を検出することができる。そのため、インダクタ413のそれぞれの両端電圧を別個に検出して閾値と比較する場合と異なり、検出された信号と閾値とを比較する構成を共通の構成とすることができる。その結果、インダクタ413のそれぞれの両端電圧の差に基づいた信号と第2閾値とを比較することによって、並列に接続された複数の半導体スイッチ部411の失を検出するために、回路構成が複雑化することを抑制することができる。
【0068】
また、第2実施形態では、上記のように、複数の半導体スイッチ部411は、互いに並列に接続されている半導体スイッチ部411a(第1半導体スイッチ部)および半導体スイッチ部411b(第2半導体スイッチ部)を含み、インダクタ413は、半導体スイッチ部411aに直列に接続されるインダクタ413a(第1インダクタ)と、半導体スイッチ部411bに直列に接続されるインダクタ413b(第2インダクタ)とを含み、インダクタ413aおよびインダクタ413bは、略等しい大きさのインダクタンスLを有する。このように構成すれば、インダクタ413aとインダクタ413bとのインダクタンスLの大きさが略等しいため、半導体スイッチ部411のサイリスタ12が正常である場合には、インダクタ413aの両端電圧とインダクタ413bの両端電圧とを略等しい大きさとすることができる。そのため、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差を略0とすることができる。一方で、半導体スイッチ部411のサイリスタ12が失した場合には、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差が0ではなくなる。このため、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差が略0であるか否かを判定することによって、半導体スイッチ部411のサイリスタ12の失をより容易に検出することができる。
【0069】
また、第2実施形態では、上記のように、変圧器415(電圧検出部)は、半導体スイッチ部411a(第1半導体スイッチ部)および半導体スイッチ部411b(第2半導体スイッチ部)の両方がオンの状態において、インダクタ413a(第1インダクタ)およびインダクタ413b(第2インダクタ)のそれぞれの両端電圧の差を検出するように構成されている。ここで、スイッチをオンにするように半導体スイッチ部411aおよび半導体スイッチ部411bを制御した場合においても、失したサイリスタ12には電流が流れない。そのため、半導体スイッチ部411aおよび半導体スイッチ部411bのいずれかのサイリスタ12が失している場合には、スイッチがオンの状態におけるインダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差が、サイリスタ12が正常の場合とは異なる。そこで、半導体スイッチ部411aおよび半導体スイッチ部411bの両方がオンの状態において、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差を検出することによって、サイリスタ12の失を精度よく検出することができる。
【0070】
また、第2実施形態では、上記のように、変圧器415(電圧検出部)は、インダクタ413a(第1インダクタ)およびインダクタ413b(第2インダクタ)が逆極性となるように接続されることによって、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差を検出するように構成されている。このように構成すれば、インダクタ413aおよびインダクタ413bを逆極性となるように接続することによって、インダクタ413aの両端電圧とインダクタ413bの両端電圧とをそれぞれ別個に検出することなく、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差の大きさを検出することができる。そのため、インダクタ413aの両端電圧とインダクタ413bの両端電圧とを、それぞれ別個に検出する構成を設ける場合と比べて、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差を容易に検出することができる。
【0071】
また、第2実施形態では、上記のように、変圧器415(電圧検出部)は、2つのコイルを有する1次側巻線415aと、1つのコイルを有する2次側巻線415bとを含み、1次側巻線415aの2つのコイルの各々に対して、インダクタ413a(第1インダクタ)およびインダクタ413b(第2インダクタ)のそれぞれが逆極性となるように接続されることによって、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差を検出するように構成されている。このように構成すれば、1次側巻線415aの逆極性の接続によって、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差を取得することができるとともに、2次側巻線415bからの出力によって、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差を変圧して検出することができる。そのため、変圧器415によって、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差を増幅した検出信号(検出値)を取得することができる。その結果、増幅された信号を所定の閾値(第2閾値)と比較することによってサイリスタ12の失を検出することができるので、サイリスタ12の失を精度よく検出することができる。また、変圧器415を用いることによって、1次側巻線415aと2次側巻線415bとが絶縁されるため、電圧を検出するインダクタ413側と、失を検出するための演算回路414側とを絶縁することができる。このため、インダクタ413側(半導体スイッチ部411側)の異常が、演算回路414側に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0072】
なお、第2実施形態によるその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0073】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0074】
たとえば、上記第1~第2実施形態では、各相毎に2つの半導体スイッチ部11(411)が設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、各相毎に3つ以上の半導体スイッチ部11(411)が設けられていてもよい。
【0075】
また、上記第1~第2実施形態では、本発明の「電圧検出部」として、変圧器15(415)が用いられる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、変圧器15(415)以外の電圧検出部を設けてもよい。
【0076】
また、上記第1実施形態では、複数の半導体スイッチ部11に対して共通のOR回路19が設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、OR回路19を設けずに、サイリスタ12の失を個別に検出してもよい。たとえば、複数の半導体スイッチ部11(比較器18)の各々から出力された信号をシリアル信号として、制御部7に入力してもよい。これにより、制御部7により、いずれの半導体スイッチ部11のサイリスタ12が失したのかを特定することが可能になる。
【0077】
また、上記第1~第2実施形態では、半導体スイッチ回路10(410)がバイパス回路部5に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、半導体スイッチ回路10(410)は、バイパス回路部5以外の部分に設けられていてもよい。たとえば、図7に示す無停電電源装置システム300のように、互いに並列に接続された複数の無停電電源装置310と負荷210との間に、半導体スイッチ回路10(410)が設けられていてもよい。なお、図7では、半導体スイッチ回路410を図示せず、半導体スイッチ回路10のみを図示している。
【0078】
また、上記第1~第2実施形態では、半導体スイッチ回路10(410)が無停電電源装置100(400)に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、半導体スイッチ回路10(410)は、無停電電源装置100(400)以外の装置(データセンタなど)に設けられていてもよい。
【0079】
また、上記第2実施形態では、インダクタ413a(第1インダクタ)とインダクタ413b(第2インダクタ)のインダクタンスLが略等しい大きさである例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、インダクタ413a(第1インダクタ)およびインダクタ413b(第2インダクタ)のインダクタンスLを異なる値となるように構成してもよい。その場合には、インダクタ413a(第1インダクタ)およびインダクタ413b(第2インダクタ)のそれぞれの両端電圧の値が所定の範囲に含まれるか否かによって、サイリスタ12の失を検出する。
【0080】
また、上記第2実施形態では、変圧器415の1次側巻線415aの2つのコイルの各々に対して、インダクタ413a(第1インダクタ)およびインダクタ413b(第2インダクタ)のそれぞれが逆極性となるように接続される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、2つの変圧器(トランス)を用いて、2つのインダクタの各々の両端電圧を変圧(検出)した後に、両端電圧の差の大きさに基づく信号を取得(測定)するようにしてもよい。すなわち、逆極性に接続せずに両端電圧の差を検出してもよい。
【0081】
また、上記第2実施形態では、変圧器415の1次側巻線415aにおける極性の異なる2つのコイルに、インダクタ413aおよびインダクタ413bをそれぞれ接続することによって、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差を検出するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図8に示す変圧器515(電圧検出部)のように、1次側と2次側との極性が同じである2つのトランスの各々に、インダクタ413aおよびインダクタ413bをそれぞれ接続するとともに、2つのトランスの各々の2次側の出力を逆極性となるように接続することによって、インダクタ413aおよびインダクタ413bのそれぞれの両端電圧の差を検出するようにしてもよい。また、2つのトランスの各々の1次側に対して、インダクタ413aおよびインダクタ413bを逆極性となるように接続することによって、両端電圧の差を検出するようにしてもよい。また、変圧器(トランス)を用いずに、直接的に2つのインダクタ413を逆極性で接続した出力に対して、閾値を設けることによって失を検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 コンバータ部
3 インバータ部
5 バイパス回路部
10、410 半導体スイッチ回路
11、11a、11b、411 半導体スイッチ部
12 サイリスタ
13、13a、13b、413 インダクタ
15、415、515 変圧器(電圧検出部)
200a、200b 交流電源
210 負荷
100、310、400 無停電電源装置
411a 半導体スイッチ部(第1半導体スイッチ部)
411b 半導体スイッチ部(第2半導体スイッチ部)
413a インダクタ(第1インダクタ)
413b インダクタ(第2インダクタ)
415a 1次側巻線
415b 2次側巻線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8