(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】車両側ユニット及び位置関係特定システム
(51)【国際特許分類】
G01S 5/14 20060101AFI20250212BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20250212BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20250212BHJP
G01S 11/06 20060101ALI20250212BHJP
H01Q 1/32 20060101ALI20250212BHJP
H01Q 21/24 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
G01S5/14
B60R25/24
E05B49/00 K
G01S11/06
H01Q1/32 Z
H01Q21/24
(21)【出願番号】P 2020211523
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】関谷 洋平
(72)【発明者】
【氏名】三治 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】角谷 祐次
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-083403(JP,A)
【文献】特開2020-182158(JP,A)
【文献】特開2017-040552(JP,A)
【文献】国際公開第2010/038468(WO,A1)
【文献】特開2009-250661(JP,A)
【文献】特開2011-257162(JP,A)
【文献】特開2018-179773(JP,A)
【文献】特開平07-170464(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0023283(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 - 5/14
19/00 - 19/55
E05B 1/00 - 85/28
H01Q 1/32
3/00 - 3/46
21/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けて用いることが可能な、高周波電波にのせた信号である高周波信号を送受信す
るアンテナ部(31,31b)を備える車両側ユニットであって、
前記アンテナ部は、
前記車両の所定の一部の金属面である対象面に対して垂直な偏波を送受信可能に設けられる垂直偏波アンテナ(311)と、
前記対象面に対して水平な、お互いに直交する偏波をそれぞれ送受信可能に設けられる1つ若しくは2つの水平偏波用アンテナ(312,312b)とを少なくとも有
し、
前記アンテナ部で受信した前記高周波信号を用いて前記車両に対する、前記高周波信号を送信する携帯機の位置関係の特定を行う位置関係特定部(331)と、
前記アンテナ部が有するアンテナのうち、同一の前記高周波信号の受信強度が最も強いアンテナを判定する受信強度判定部(334)とを備え、
前記位置関係特定部は、前記アンテナ部が有するアンテナのうち、前記受信強度判定部で受信強度が最も強いと判定したアンテナで受信した前記高周波信号のみを用いて前記車両に対する前記携帯機の位置関係の特定を行う車両側ユニット。
【請求項2】
請求項1において、
前記アンテナ部を複数備え、
それらの複数の前記アンテナ部は、同一の前記車両のそれぞれ異なる前記対象面別に設けられる車両側ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記アンテナ部は、前記水平偏波用アンテナとして、前記対象面に対して水平な偏波を送受信可能に設けられる第1の水平偏波アンテナ(313)と、前記対象面に対して水平且つその偏波と直交する偏波を送受信可能に設けられる第2の水平偏波アンテナ(314)とを有する車両側ユニット。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記アンテナ部は、前記水平偏波用アンテナとして、前記対象面に対して水平な、お互いに直交する偏波をいずれも送受信可能な1つの円偏波アンテナ(315)を有する車両側ユニット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項において、
前記垂直偏波アンテナは、0次共振アンテナである車両側ユニット。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項において、
前記アンテナ部は、前記対象面上に設けられるものであって、前記水平偏波用アンテナが設けられる層よりも前記対象面側に位置する層である下層のうちの前記水平偏波用アンテナの直下にグランドの層が形成されている車両側ユニット。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項において、
前記アンテナ部は、前記対象面からλ/4離して設けられる車両側ユニット。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の車両側ユニット(3,3a,3b)と、
ユーザに携帯されて高周波電波にのせた信号である高周波信号を送受信する携帯機(2)とを含む位置関係特定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両側ユニット及び位置関係特定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ユーザに携帯される携帯機と、車両側に設けられたアンテナを含む車両側ユニットとの間で送受信される電波を利用して、車両に対する携帯機の位置関係を特定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、車両の複数箇所に配置されたアンテナからLF帯の電波として送信されるリクエスト信号のRSSIに基づいて携帯機の位置を判定する技術が開示されている。特許文献1では、RSSIが携帯機とアンテナとの距離に相関することを利用し、三角測量の原理によって携帯機の位置を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
携帯機として多機能携帯電話機等を利用しようとする場合、Bluetooth(登録商標) Low Energy(以下、BLE)等の高周波電波を用いる通信規格に沿った通信を、携帯機と車両側ユニットとの間での通信用いることが考えられる。LF帯の電波は125kHzであって、周波数が低い。よって、電波伝搬における減衰が小さく、強度が不足する問題が生じにくい。一方、高周波電波を用いる場合、電波伝搬における減衰が大きく、強度が不足するおそれがある。特に、携帯機のアンテナが1軸のアンテナである場合、アンテナの向きが任意に変化してしまうため、単に車両側にアンテナを複数設置するだけでは、携帯機の位置関係の推定に十分な強度の電波を受信できないおそれがある。
【0005】
この開示のひとつの目的は、車両に対する携帯機の位置関係の特定のために高周波電波を用いる場合であっても、所望の強度の電力をより受信しやすくすることを可能にする車両側ユニット及び位置関係特定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は、開示の更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の車両側ユニットは、車両に設けて用いることが可能な、高周波電波にのせた信号である高周波信号を送受信するアンテナ部(31,31b)を備える車両側ユニットであって、アンテナ部は、車両の所定の一部の金属面である対象面に対して垂直な偏波を送受信可能に設けられる垂直偏波アンテナ(311)と、対象面に対して水平な、お互いに直交する偏波をそれぞれ送受信可能に設けられる1つ若しくは2つの水平偏波用アンテナ(312,312b)とを少なくとも有し、アンテナ部で受信した高周波信号を用いて車両に対する、高周波信号を送信する携帯機の位置関係の特定を行う位置関係特定部(331)と、アンテナ部が有するアンテナのうち、同一の高周波信号の受信強度が最も強いアンテナを判定する受信強度判定部(334)とを備え、位置関係特定部は、アンテナ部が有するアンテナのうち、受信強度判定部で受信強度が最も強いと判定したアンテナで受信した高周波信号のみを用いて車両に対する携帯機の位置関係の特定を行う。
【0008】
これによれば、高周波電波にのせた信号である高周波信号を送受信するアンテナ部が偏波を受信しやすい方向を、お互いに直交する3軸の方向以上に増やすことが可能になる。お互いに直交する3軸の方向の偏波を少なくとも受信しやすくなると、高周波信号の送信元からの偏波の方向が変化する場合であっても、受信強度を高く受信しやすくなる。よって、高周波信号が減衰しても所望の強度の電力をより受信しやすくなる。その結果、車両に対する携帯機の位置関係の特定のために高周波電波を用いる場合であっても、所望の強度の電力をより受信しやすくすることが可能になる。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本開示の位置関係特定システムは、前述の車両側ユニット(3,3a,3b)と、ユーザに携帯されて高周波電波にのせた信号である高周波信号を送受信する携帯機(2)とを含む。
【0010】
これによれば、前述の車両側ユニットを含むので、車両に対する携帯機の位置関係の特定のために高周波電波を用いる場合であっても、所望の強度の電力をより受信しやすくすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】車両用システム1の概略的な構成の一例を示す図である。
【
図2】携帯機2の概略的な構成の一例を示す図である。
【
図3】車両側ユニット3の概略的な構成の一例を示す図である。
【
図4】水平偏波用アンテナ312が設けられる領域を部分的に示す上面図である。
【
図6】制御部33での位置関係特定関連処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】車両側ユニット3aの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図8】車両側ユニット3bの概略的な構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照しながら、開示のための複数の実施形態を説明する。なお、説明の便宜上、複数の実施形態の間において、それまでの説明に用いた図に示した部分と同一の機能を有する部分については、同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。同一の符号を付した部分については、他の実施形態における説明を参照することができる。
【0013】
<車両用システム1の概略構成>
図1に示すように車両用システム1は、ユーザに携帯される携帯機2と、車両で用いられる車両側ユニット3とを含む。なお、「ユーザに携帯される」とは、ユーザに携帯されている状態に限るものではなく、置き忘れといったユーザに携帯されていない状態も含むものとする。「車両で用いられる」とは、車両に搭載されている状態に限るものでなく、車両に搭載される前の状態も含むものとする。この車両用システム1が位置関係特定システムに相当する。
【0014】
携帯機2と車両側ユニット3とは、それぞれが無線通信によって信号を送受信可能となっている。また、携帯機2と車両側ユニット3とは、お互いの通信範囲内に存在する場合、無線通信によって一方が送信した信号をもう一方が受信する。携帯機2と車両側ユニット3との間での無線通信による信号の送受信は、高周波電波に信号をのせることで行うものとする。ここで言うところの高周波電波とは、例えば1GHz以上の電波とすればよい。また、高周波電波は、Bluetooth(登録商標) Low Energy(以下、BLE)等の近距離無線通信規格に沿った無線通信に用いられる高周波電波とすればよい。以降では、携帯機2と車両側ユニット3とは、BLEの近距離無線通信規格に沿った無線通信(以下、BLE通信)で信号を送受信する場合を例に挙げて説明を行う。この場合、高周波電波は、2.4GHz帯の電波とする。
【0015】
<携帯機2の概略構成>
続いて、
図2を用いて、携帯機2について説明する。携帯機2は、所謂Fobであってもよいし、多機能携帯電話機であってもよい。以降では、携帯機2が多機能携帯電話機である場合を例に挙げて説明する。
図2に示すように、携帯機2は、BLE通信に関して、携帯側アンテナ部21、及びBLE送受信機22を備えている。
【0016】
携帯側アンテナ部21は、車両側ユニット3から高周波電波にのせて送信されてくる信号を受信したり、高周波電波にのせて信号を送信したりする。携帯側アンテナ部21は、例えば1軸のアンテナを用いるものとする。BLE送受信機22は、携帯側アンテナ部21で受信した信号を復調したり、信号を変調して携帯側アンテナ部21に出力し、高周波電波として放射させたりする。
【0017】
<車両側ユニット3の概略構成>
続いて、
図3を用いて、車両側ユニット3の概略的な構成について説明する。
図3に示すように車両側ユニット3は、車両側アンテナ部31、BLE送受信機32、及び制御部33を備えている。
【0018】
車両側アンテナ部31は、携帯機2から高周波電波にのせて送信されてくる信号を受信したり、高周波電波にのせて信号を送信したりする。この車両側アンテナ部31がアンテナ部に相当する。車両側アンテナ部31は、車両に設けて用いることが可能なものである。車両側アンテナ部31は、車両の一部の面上に設置される。車両側アンテナ部31は、車室内に設けられてもよいし、車両の外面に設けられてもよい。例えば、車両側アンテナ部31は、ピラー,バンパ,ドアハンドル,ルーフ,ドアミラー,バックドア等に設置される構成とすればよい。車両側アンテナ部31は、車両に対して1つ設けられる構成としてもよいし、複数設けられる構成としてもよい。本実施形態では、三角測量の原理によって携帯機の位置を特定可能とするように、車両に対して車両側アンテナ部31が3つ設けられる構成を例に挙げて説明する。
【0019】
図3に示すように、車両側アンテナ部31は、垂直偏波アンテナ311と水平偏波用アンテナ312とを有する。水平偏波用アンテナ312としては、第1水平偏波アンテナ313と第2水平偏波アンテナ314とを有する。垂直偏波アンテナ311と水平偏波用アンテナ312とは、同一の平面上に配置されていることが好ましい。これは、車両側アンテナ部31が有する各アンテナが互いの指向性を阻害しにくくするためである。垂直偏波アンテナ311と水平偏波用アンテナ312とは、車両の所定の一部の金属面(以下、対象面)上に配置される。つまり、車両側アンテナ部31は、対象面上に配置される。複数の車両側アンテナ部31は、それぞれ異なる対象面上に設けられる構成とすればよい。車両の所定の一部とは、前述したピラー,バンパ,ドアハンドル,ルーフ,ドアミラー,バックドア等とすればよい。
【0020】
垂直偏波アンテナ311及び水平偏波用アンテナ312は、対象面に接して設けられる構成としてもよいが、対象面からλ/4離して設けられることが好ましい。これは、対象面を反射板として利用してアンテナの利得を上げることが可能になるためである。
【0021】
垂直偏波アンテナ311は、対象面に対して垂直な偏波を送受信可能に設けられる。垂直偏波アンテナ311としては、0次共振アンテナを用いることが好ましい。これは、低背なアンテナ構成が可能となるためである。0次共振アンテナとは、メタマテリアルの応用技術である0次共振を利用した、平板構造を有するアンテナである。
【0022】
0次共振アンテナとしては、板状の導体部材である地板と、その地板と所定の間隔をおいて対向するように設置された板状の導体部材であるパッチ部と、そのパッチ部とその地板とを電気的に接続する導体部材である短絡部とを備えるアンテナを用いればよい。地板は、給電ケーブルの外部導体と接続されてグランドとして機能するものとすればよい。パッチ部には、任意の位置に給電点が設けられるものとすればよい。また、さらに、パッチ部にとって地板が配置されていない側に、パッチ部と所定の間隔をおいて対向するように設置された板状の導体部材である付加導体をさらに備え、短絡部が備えるインダクタンスと、地板とパッチ部とが形成する静電容量と、パッチ部と付加導体とが形成する静電容量とを用いて並列共振することがより好ましい。なお、垂直偏波アンテナ311としては、逆F型のアンテナを用いてもよい。
【0023】
水平偏波用アンテナ312は、対象面に対して水平な、お互いに直交する偏波をそれぞれ送受信可能に設けられる。第1水平偏波アンテナ313は、対象面に対して水平な偏波を送受信可能に設けられる。この第1水平偏波アンテナ313が第1の水平偏波アンテナに相当する。第2水平偏波アンテナ314は、対象面に対して水平、且つ、第1水平偏波アンテナ313で送受信可能なその偏波と直交する偏波を送受信可能に設けられる。この第2水平偏波アンテナ314が第2の水平偏波アンテナに相当する。垂直偏波アンテナ311と、第1水平偏波アンテナ313と、第2水平偏波アンテナ314とは、それぞれのアンテナ軸が互いに直交する。つまり、車両側アンテナ部31は、お互いに直交する3軸のアンテナを有する。本実施形態では、車両側アンテナ部31がこの3軸のアンテナを有する構成を例に挙げて説明を行うが、車両側アンテナ部31がさらに多くのアンテナを有していてもよい。
【0024】
水平偏波用アンテナ312は、例えば回路基板上に印刷又はエッチングによって形成されたパターンアンテナとすればよい。また、水平偏波用アンテナ312が設けられる層よりも対象面側に位置する層である下層のうちの水平偏波用アンテナ312の直下にグランドの層が形成されていることが好ましい。ここで、
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は、水平偏波用アンテナ312が設けられる領域を部分的に示す上面図である。
図5は、
図4のII-II線に沿う断面図である。
図5のGNDa,GNDbはそれぞれグランドである。
図5のSubは基材である。
図5のUが上層側、Lが対象面側にあたる下層側である。
【0025】
図5に示すように、基材Subの上層側の表面にパターンアンテナとしての水平偏波用アンテナ312が形成される。水平偏波用アンテナ312が形成される層よりも下層に、GNDa,GNDbが位置する。GNDaは、
図4,
図5では省略した垂直偏波アンテナ311が接地するグランドである。GNDaは、水平偏波用アンテナ312の直下には設けられない。GNDbは、GNDaよりも下層に位置する。GNDbは、水平偏波用アンテナ312の直下に設けられている。水平偏波用アンテナ312の直下にGNDbが存在することで、回路基板の水平偏波用アンテナ312が設けられる側と反対側の面に対して指向性を向けないことが可能となる。よって、単一面方向の利得が向上する。また、GNDbと水平偏波用アンテナ312とは、λ/4離して設けられることが好ましい。これは、GNDbを反射板として利用して水平偏波用アンテナ312の利得を上げることが可能になるためである。なお、車両の対象面をGNDbとして利用してもよい。
【0026】
BLE送受信機32は、車両側アンテナ部31で受信した信号を復調したり、信号を変調して車両側アンテナ部31に出力し、高周波電波として放射させたりする。BLE送受信機32は、例えば車両側アンテナ部31で受信した信号の受信強度も測定すればよい。BLE送受信機32は、車両側アンテナ部31で受信した信号の受信強度が閾値以上である場合に、信号を受信できたものとすればよい。閾値は任意に設定可能であって、ノイズと信号とを区別するための値を設定すればよい。
【0027】
制御部33は、プロセッサ、メモリ、I/O、これらを接続するバスを備え、メモリに記憶された制御プログラムを実行することで車両での認証に関する各種の処理を実行する。ここで言うところのメモリは、コンピュータによって読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。また、非遷移的実体的記憶媒体は、半導体メモリ又は磁気ディスクなどによって実現される。制御部33は、BLE送受信機32での車両側アンテナ部31からの信号の送信を制御する。制御部33は、車両側アンテナ部31で受信した信号をもとに、車両に対する携帯機2の位置関係を特定する。
【0028】
制御部33は、車両に対する携帯機2の位置関係の特定に関して、位置測位部331、記憶部332、及び受信タイミング判定部333を機能ブロックとして備える。なお、制御部33が実行する機能の一部または全部を、1つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、制御部33が備える機能ブロックの一部又は全部を、プロセッサによるソフトウェアの実行とハードウェア部材の組み合わせによって実現してもよい。
【0029】
位置測位部331は、車両側アンテナ部31で受信した高周波信号を用いて車両に対する携帯機2の位置関係の特定を行う。この位置測位部331が位置関係特定部に相当する。位置測位部331は、車両に対する携帯機2の位置関係として、車両に設けられた車両側アンテナ部31と携帯機2の距離(以下、携帯機距離)を特定する。位置測位部331は、BLE送受信機32で測定した、車両側アンテナ部31で受信した信号の受信強度をもとに、携帯機距離を特定すればよい。この場合、位置測位部331は、受信強度と受信強度の距離減衰特性とから携帯機距離を特定すればよい。他にも、位置測位部331は、例えば車両側アンテナ部31から信号を送信させてからその信号に対する応答をBLE送受信機32で受信するまでの伝播時間をもとに、携帯機距離を特定してもよい。
【0030】
また、位置測位部331は、複数の車両側アンテナ部31のそれぞれについて特定した携帯機距離をもとに、三角測量の原理によって、車両に対する携帯機2の位置を特定してもよい。なお、車両に対して車両側アンテナ部31を複数でなく1つ設ける構成とする場合には、携帯機2の位置を特定しない構成としてもよい。また、位置測位部331は、携帯機距離を特定せず、複数の車両側アンテナ部31のそれぞれについてBLE送受信機32で測定した受信強度をもとに、三角測量の原理によって車両に対する携帯機2の位置を特定してもよい。位置測位部331は、2つの車両側アンテナ部31のそれぞれについて特定した携帯機距離をもとに車両に対する携帯機2の大まかな位置を特定してもよい。
【0031】
位置測位部331は、車両に対する携帯機2の位置関係の特定を行う際、車両側アンテナ部31が有する複数のアンテナのいずれで受信した信号を用いるか、受信タイミング判定部333での判定結果に従って決定する。
【0032】
記憶部332は、車両側アンテナ部31が有するアンテナ別の、受信する信号の遅延特性を予め記憶していることが好ましい。車両側アンテナ部31が有するアンテナとは、本実施形態では、垂直偏波アンテナ311、第1水平偏波アンテナ313、及び第2水平偏波アンテナ314である。ここで言うところの遅延特性とは、アンテナの長さ,アンテナから給電部までの長さによって、アンテナで受信した信号がBLE送受信機32で受信されるまでに生じる遅延時間の違いを指す。記憶部332には、シミュレーション,実験等で求めた遅延特性の値が予め記憶されているものとすればよい。記憶部332は、複数の車両側アンテナ部31のそれぞれについて、アンテナ別の遅延特性を予め記憶しておけばよい。記憶部332としては、不揮発性メモリを用いればよい。
【0033】
受信タイミング判定部333は、車両側アンテナ部31が有するアンテナのうち、同一の高周波信号の受信タイミングが最も早いアンテナを判定する。車両に複数の車両側アンテナ部31が設けられる構成の場合には、それらの複数の車両側アンテナ部31ごとに、同一の高周波信号の受信タイミングが最も早いアンテナを判定する。受信タイミング判定部333は、制御部33で送信を指示した車両側アンテナ部31について、送信を指示してから受信した信号の出力の最も早かったアンテナを、同一の高周波信号の受信タイミングが最も早いアンテナと判定すればよい。
【0034】
受信タイミング判定部333は、記憶部332に記憶しているアンテナ別の遅延特性を用いて、アンテナ別の受信した信号の遅延分を補正し、同一の高周波信号の受信タイミングが最も早いアンテナを判定することが好ましい。遅延分の補正については、前述の伝播時間から、アンテナ別の遅延特性にあたる遅延時間を差し引くことで行えばよい。これによれば、より正確な伝播時間を特定して、同一の高周波信号の受信タイミングが最も早いアンテナをより精度良く判定することが可能になる。なお、伝播時間を補正した場合には、補正後の伝播時間を以降の処理の伝播時間として用いればよい。
【0035】
車載環境はマルチパスが複数存在する環境であるため、携帯機2から送信される高周波電波は、伝播時間が変化した複数の電波として到来する。その変化は、偏波によって異なってくる。しかしながら、携帯機2から最も早く到来する電波が、実際の距離に最も近い距離の経路で到来した電波といえる。よって、以上の構成によれば、実際の距離により近い携帯機距離を特定できる電波を受信したアンテナを判定することが可能になる。
【0036】
位置測位部331は、車両側アンテナ部31が有するアンテナで受信する高周波信号のうちの、受信タイミング判定部333で受信タイミングが最も早いと判定したアンテナで受信した高周波信号のみを用いて、車両に対する携帯機2の位置関係の特定を行うことが好ましい。これによれば、実際の距離により近い携帯機距離を特定できる電波を用いることが可能になるので、車両に対する携帯機2の位置関係をより精度良く特定することが可能になる。
【0037】
<制御部33での位置関係特定関連処理>
ここで、制御部33での車両に対する携帯機2の位置関係の特定に関連する処理(以下、位置関係特定関連処理)について、
図6のフローチャートを用いて説明を行う。
図6の例では、位置関係特定関連処理として、車両側アンテナ部31ごとの携帯機距離を特定するまでの処理を説明する。
図6のフローチャートは、制御部33が、BLE送受信機32に対して、車両側アンテナ部31からの高周波信号の送信を要求した場合に開始される構成とすればよい。車両に車両側アンテナ部31が複数設けられる場合には、例えばそれらの車両側アンテナ部31に対応するBLE送受信機32に順番の送信が要求されるものとすればよい。
【0038】
まず、ステップS1では、制御部33が、高周波信号の送信を要求したBLE送受信機32に受信待機させる。BLE送受信機32が受信待機となるのと、車両側アンテナ部31の各アンテナで受信した高周波信号がBLE送受信機32に出力され、受信強度が閾値以上のものが対象とする高周波信号として受信される。
【0039】
ステップS2では、高周波信号の送信を要求してから所定時間が経過した場合(S2でYES)には、ステップS3に移る。ここで言うところの所定時間とは、車両側アンテナ部31からの信号の送信に対して携帯機2からの返信が行われると予め想定している時間とすればよい。一方、高周波信号の送信を要求してから所定時間が経過していない場合(S2でNO)には、S2の処理を繰り返す。これにより、所定時間内に、車両側アンテナ部31の各アンテナのうち、閾値以上の高周波信号を受信できるアンテナについては、BLE送受信機32でそのアンテナについての信号が受信される。
【0040】
ステップS3では、受信タイミング判定部333が、S2で受信できた信号をもとに、車両側アンテナ部31が有するアンテナのうち、同一の高周波信号の受信タイミングが最も早いアンテナを判定する。ステップS4では、位置測位部331が、車両側アンテナ部31が有するアンテナで受信した高周波信号のうち、S3で受信タイミングが最も早いと判定したアンテナで受信した高周波信号のみを用いて、携帯機距離を特定する。そして、位置関係特定関連処理を終了する。
【0041】
<実施形態1のまとめ>
実施形態1の構成によれば、高周波電波にのせた信号である高周波信号を送受信する車両側アンテナ部31が偏波を受信しやすい方向を、お互いに直交する3軸の方向に増やすことが可能になる。お互いに直交する3軸の方向の偏波を受信しやすくなると、携帯機2からの偏波の方向が変化する場合であっても、受信強度を高く受信しやすくなる。よって、高周波信号が減衰しても所望の強度の電力をより受信しやすくなる。その結果、車両に対する携帯機2の位置関係の特定のために高周波電波を用いる場合であっても、所望の強度の電力をより受信しやすくすることが可能になる。その結果、車両に対する携帯機2の位置関係をより精度良く特定することが可能になる。
【0042】
なお、実施形態1では、受信タイミング判定部333を制御部33が備える構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、受信タイミング判定部333をBLE送受信機32に備える構成としてもよい。
【0043】
また、実施形態1では、車両側アンテナ部31が有するアンテナで受信する高周波信号のうち、同一の高周波信号の受信タイミングが最も早いアンテナ以外のアンテナで受信した高周波信号も用いて、携帯機距離を特定してもよい。例えば、車両側アンテナ部31が有する各アンテナで受信した高周波信号の伝播時間,受信強度といった情報を平均化して用いればよい。この場合、同一の高周波信号の受信タイミングが最も早いアンテナの情報の重みづけを大きくしてもよい。
【0044】
(実施形態2)
実施形態1では、同一の高周波信号の受信タイミングが最も早いと判定したアンテナで受信した高周波信号を用いて、車両に対する携帯機2の位置関係を特定する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、同一の高周波信号の受信強度が最も強いと判定したアンテナで受信した高周波信号を用いて、車両に対する携帯機2の位置関係を特定する構成(以下、実施形態2)としてもよい。以下、実施形態2の構成について説明する。
【0045】
実施形態2の車両用システム1は、ユーザに携帯される携帯機2と、車両で用いられる車両側ユニット3aとを含む。実施形態2の車両用システム1は、車両側ユニット3の代わりに車両側ユニット3aを含む点を除けば、実施形態1の車両用システムと同様である。
【0046】
<車両側ユニット3aの概略構成>
続いて、
図7を用いて、車両側ユニット3aの概略的な構成について説明する。
図7に示すように車両側ユニット3aは、車両側アンテナ部31、BLE送受信機32、及び制御部33aを備えている。車両側ユニット3aは、制御部33の代わりに制御部33aを備える点を除けば、実施形態1の車両側ユニット3と同様である。
【0047】
制御部33aは、車両に対する携帯機2の位置関係の特定に関して、位置測位部331、記憶部332、及び受信強度判定部334を機能ブロックとして備える。制御部33aは、受信タイミング判定部333の代わりに受信強度判定部334を備える点を除けば、実施形態1の制御部33と同様である。
【0048】
受信強度判定部334は、車両側アンテナ部31が有するアンテナのうち、同一の高周波信号の受信強度が最も強いアンテナを判定する。車両に複数の車両側アンテナ部31が設けられる構成の場合には、それらの複数の車両側アンテナ部31ごとに、同一の高周波信号の受信強度が最も強いアンテナを判定する。受信強度判定部334は、制御部33aで送信を指示した車両側アンテナ部31の各アンテナについて、BLE送受信機32で計測した受信強度の最も高かったアンテナを、同一の高周波信号の受信強度が最も高いアンテナと判定すればよい。BLE送受信機32は、車両側アンテナ部31の各アンテナでの受信強度を測定すればよい。実施形態2では、
図6で説明した位置関係特定関連処理のうち、S3の処理の代わりに、この処理を行えばよい。
【0049】
受信強度の強い電波は信頼度が高い電波といえる。よって、以上の構成によっても、実際の距離により近い携帯機距離を特定できる電波を受信したアンテナを判定することが可能になる。
【0050】
位置測位部331は、車両側アンテナ部31が有するアンテナで受信した高周波電波のうち、受信強度判定部334で受信強度が最も強いと判定したアンテナで受信した高周波信号のみを用いて、車両に対する携帯機2の位置関係の特定を行うことが好ましい。実施形態2では、
図6で説明した位置関係特定関連処理のうち、S4の処理の代わりに、この処理を行えばよい。これによれば、実際の距離により近い携帯機距離を特定できる電波を用いることが可能になるので、車両に対する携帯機2の位置関係をより精度良く特定することが可能になる。
【0051】
なお、実施形態2では、受信強度判定部334を制御部33aが備える構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、受信強度判定部334をBLE送受信機32に備える構成としてもよい。
【0052】
また、実施形態2では、車両側アンテナ部31が有するアンテナで受信する高周波信号のうち、同一の高周波信号の受信強度が最も強いアンテナ以外のアンテナで受信した高周波信号も用いて、携帯機距離を特定してもよい。例えば、車両側アンテナ部31が有する各アンテナで受信した高周波信号の伝播時間,受信強度といった情報を平均化して用いればよい。この場合、同一の高周波信号の受信強度が最も強いアンテナの情報の重みづけを大きくしてもよい。
【0053】
(実施形態3)
前述の実施形態3では、水平偏波用アンテナ312が第1水平偏波アンテナ313と第2水平偏波アンテナ314とを有する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、第1水平偏波アンテナ313と第2水平偏波アンテナ314との代わりに円偏波アンテナを用いる構成(以下、実施形態3)としてもよい。以下、実施形態3の構成について説明する。
【0054】
実施形態3の車両用システム1は、ユーザに携帯される携帯機2と、車両で用いられる車両側ユニット3bとを含む。実施形態3の車両用システム1は、車両側ユニット3の代わりに車両側ユニット3bを含む点を除けば、実施形態1の車両用システムと同様である。
【0055】
<車両側ユニット3bの概略構成>
続いて、
図8を用いて、車両側ユニット3aの概略的な構成について説明する。
図7に示すように車両側ユニット3aは、車両側アンテナ部31b、BLE送受信機32、及び制御部33を備えている。車両側ユニット3bは、車両側アンテナ部31の代わりに車両側アンテナ部31bを備える点を除けば、実施形態1の車両側ユニット3と同様である。
【0056】
車両側アンテナ部31bは、垂直偏波アンテナ311と水平偏波用アンテナ312bとを有する。車両側アンテナ部31bは、水平偏波用アンテナ312の代わりに水平偏波用アンテナ312bを有する点を除けば、実施形態1の車両側アンテナ部31と同様である。水平偏波用アンテナ312bとしては、円偏波アンテナ315を有する。円偏波アンテナ315は、対象面に対して水平な、お互いに直交する偏波をいずれも送受信可能な1つのアンテナである。
【0057】
実施形態3の構成によれば、2つのアンテナを用いる代わりに、1つの円偏波アンテナ315で、対象面に対して水平な、お互いに直交する偏波をいずれも送受信可能となる。よって、RFスイッチ等の送受信アンテナに必要な構成を、この構成を用いるアンテナが少なくなる分だけ減らすことが可能になる。
【0058】
なお、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。また、本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと1つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された1つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 車両用システム(位置関係特定システム)、2 携帯機、3,3a,3b 車両側ユニット、31,31b 車両側アンテナ部(アンテナ部)、33,33a 制御部、311 垂直偏波アンテナ、312,312b 水平偏波用アンテナ、313 第1水平偏波アンテナ(第1の水平偏波アンテナ)、314 第2水平偏波アンテナ(第2の水平偏波アンテナ)、315 円偏波アンテナ、331 位置測位部(位置関係特定部)、332 記憶部、333 受信タイミング判定部、334 受信強度判定部