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特許7631818自動走行制御方法および自動走行制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】自動走行制御方法および自動走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20250212BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
G08G1/16 D
B60W30/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021004866
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109508
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】加賀美 光二
(72)【発明者】
【氏名】福庭 一志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 誠
(72)【発明者】
【氏名】松岡 悟
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-009913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定角度の検知範囲で物体を検知する検知部を備えた移動体の自動走行制御方法であって、
走行先の交差点を検出する検出ステップと、
前記検出ステップで検出した交差点を曲がる場合の内側であって前記交差点を曲がって進入する道路における走行車線の外側に、所定サイズの設定領域を設定する設定ステップと、
前記検知範囲と前記設定領域とを重複させるように走行経路を生成する生成ステップと、
前記生成ステップで生成した走行経路を走行するように前記移動体を制御する走行制御ステップとを備え、
前記生成ステップは、前記検知範囲が前記設定領域と最も広く重複するように走行経路を生成する、
自動走行制御方法。
【請求項2】
前記設定ステップは、予め記憶された地図情報に基づいて、前記設定領域を設定する、
請求項1に記載の自動走行制御方法。
【請求項3】
前記生成ステップは、前記検知範囲が前記設定領域の全体を含むように重複する走行経路を生成する、
請求項1または請求項に記載の自動走行制御方法。
【請求項4】
前記生成ステップは、複数の走行経路が生成された場合に、最短距離の走行経路を前記走行制御ステップで走行する走行経路として選択する、
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の自動走行制御方法。
【請求項5】
前記生成ステップは、複数の走行経路が生成された場合に、前記移動体が前記交差点に進入する前に道路中央側に膨らむ走行経路を除く走行経路であって、前記検知範囲が前記設定領域と最も広く重複する走行経路を、前記走行制御ステップで走行する走行経路として選択する、
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の自動走行制御方法。
【請求項6】
前記生成ステップは、前記検知範囲が前記設定領域の全体を含むように重複する場合における、前記移動体の進行方向と前記交差点を曲がって進入する道路の横断方向との交差角度を求め、前記求めた交差角度で前記交差点を曲がるように、前記走行経路を生成する、
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の自動走行制御方法。
【請求項7】
前記生成ステップは、最小の交差角度を求める、
請求項に記載の自動走行制御方法。
【請求項8】
所定角度の検知範囲で物体を検知する検知部を備えた移動体の自動走行制御装置であって、
走行先の交差点を検出する検出部と、
前記検出部で検出した交差点を曲がる場合の内側であって前記交差点を曲がって進入する道路における走行車線の外側に、所定サイズの設定領域を設定する設定部と、
前記検知範囲と前記設定領域とを重複させるように走行経路を生成する生成部と、
前記生成部で生成した走行経路を走行するように前記移動体を制御する走行制御部とを備え、
前記生成部は、前記検知範囲が前記設定領域と最も広く重複するように走行経路を生成する、
自動走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体を自動走行させる自動走行制御方法および自動走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば車両やロボット等の移動体を自動的に走行させる自動走行技術(自動運転技術)が研究、開発されている。特に、交差点を曲がる際には、前記交差点を曲がって進入する道路にかかわる、例えば歩行者、自転車、ベビーカーおよび車椅子等の、移動できる移動物体に注意する必要がある。例えば、特許文献1には、交差点の右折時または左折時に横断歩道を横断中の歩行者等の移動体を検知する車両用移動体検知装置が開示されている。
【0003】
より具体的には、前記特許文献1に開示された車両用移動体検知装置は、交差点側に設けられ且つ交差点付近の道路上の移動体を検出する移動体検出手段から送信された検出情報を受信する受信手段と、前記交差点における車両の進行方向を検出する進行方向検出手段と、前記車両の前方の検知範囲に存在する移動体を検知する検知手段と、前記検出情報と前記車両の進行方向とに基づいて、前記検知手段の検知範囲を制御する制御手段と、を備える。この車両用移動体検知装置は、前記検知手段のレーダ自体の向きを、自車両の曲がる方向に所定角度だけ曲げている。これにより、前記特許文献1の記載によれば、前記車両用移動体検知装置は、横断中の歩行者等の移動体を的確かつ効率的に検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-58326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示された車両用移動体検知装置は、横断中の歩行者等を検知できるが、交差点を安全に曲がるためには、横断前の歩行者等を検知することも必要である。横断前の歩行者等を検知するためのセンサを新たに設けることが考えられるが、新たなセンサの設置は、その分、コストが増大してしまう。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、横断前の歩行者等を検知するためのセンサを新たに設けることなく、横断前の歩行者等の検知を可能とする自動走行制御方法および自動走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる自動走行制御方法は、所定角度の検知範囲で物体を検知する検知部を備えた移動体の自動走行制御方法であって、走行先の交差点を検出する検出ステップと、前記検出ステップで検出した交差点を曲がる場合の内側であって前記交差点を曲がって進入する道路における走行車線の外側に、所定サイズの設定領域を設定する設定ステップと、前記検知範囲と前記設定領域とを重複させるように走行経路を生成する生成ステップと、前記生成ステップで生成した走行経路を走行するように前記移動体を制御する走行制御ステップとを備える。
【0008】
交差点を曲がる場合の内側であって前記交差点を曲がって進入する道路における走行車線の外側である場所は、前記検知範囲から外れる虞がある。上記自動走行制御方法は、交差点を曲がる場合の内側であって前記交差点を曲がって進入する道路における走行車線の外側に、所定サイズの設定領域を設定し、前記検知範囲と前記設定領域とを重複させるように走行経路を生成し、この生成した走行経路を走行するように前記移動体を制御する。このため、前記検知範囲と前記設定領域とを重複させるように生成された走行経路を走行することで、上記自動走行制御方法は、新たにそれ用のセンサを設けること無く既設の検知部を利用でき、横断前の歩行者等の検知が可能となる。
【0009】
他の一態様では、上述の自動走行制御方法において、前記設定ステップは、予め記憶された地図情報に基づいて、前記設定領域を設定する。
【0010】
このような自動走行制御方法は、地図情報に基づくので、より適切な位置に、設定領域を設定できるから、的確に、横断前の歩行者等の検知が可能となる。
【0011】
他の一態様では、これら上述の自動走行制御方法において、前記生成ステップは、前記検知範囲が前記設定領域と最も広く重複するように走行経路を生成する。
【0012】
このような自動走行制御方法は、検知範囲が設定領域と最も広く重複するように走行経路を生成するので、より広い範囲で、横断前の歩行者等の検知が可能となる。
【0013】
他の一態様では、これら上述の自動走行制御方法において、前記生成ステップは、前記検知範囲が前記設定領域の全体を含むように重複する走行経路を生成する。
【0014】
このような自動走行制御方法は、検知範囲が設定領域の全体を含むように重複する走行経路を生成するので、さらにより広い範囲で、横断前の歩行者等の検知が可能となる。
【0015】
他の一態様では、これら上述の自動走行制御方法において、前記生成ステップは、複数の走行経路が生成された場合に、最短距離の走行経路を前記走行制御ステップで走行する走行経路として選択する。
【0016】
このような自動走行制御方法は、横断前の歩行者等の検知が可能となりつつ、最短距離の走行経路を選択するので、効率的に走行できる。
【0017】
他の一態様では、これら上述の自動走行制御方法において、前記生成ステップは、複数の走行経路が生成された場合に、前記移動体が前記交差点に進入する前に道路中央側に膨らむ走行経路を除く走行経路であって、前記検知範囲が前記設定領域と最も広く重複する走行経路を、前記走行制御ステップで走行する走行経路として選択する。
【0018】
このような自動走行制御方法は、前記移動体が前記交差点に進入する前に道路中央側に膨らむ走行経路を除くので、当該移動体に後続する他の移動体に対する進路の妨害を避けつつ、検知範囲が設定領域と最も広く重複する走行経路を選択するので、より広い範囲で、横断前の歩行者等の検知が可能となる。
【0019】
他の一態様では、これら上述の自動走行制御方法において、前記生成ステップは、前記検知範囲が前記設定領域の全体を含むように重複する場合における、前記移動体の進行方向と前記交差点を曲がって進入する道路の横断方向との交差角度を求め、前記求めた交差角度で前記交差点を曲がるように、前記走行経路を生成する。
【0020】
このような自動走行制御方法は、検知範囲が設定領域の全体を含むように重複する場合における交差角度の走行経路を生成するので、移動体の走行方向の調整だけで、さらにより広い範囲で、横断前の歩行者等の検知が可能となる。
【0021】
他の一態様では、上述の自動走行制御方法において、前記生成ステップは、最小の交差角度を求める。
【0022】
このような自動走行制御方法は、最小の効果角度の走行経路を生成するので、余計に回り込むことが無く、移動体に乗員が乗車している場合に前記乗員に違和感の少ない走行経路(自然な走行経路)で自動走行できる。
【0023】
本発明の他の一態様にかかる自動走行制御装置は、所定角度の検知範囲で物体を検知する検知部を備えた移動体の自動走行制御装置であって、走行先の交差点を検出する検出部と、前記検出部で検出した交差点を曲がる場合の内側であって前記交差点を曲がって進入する道路における走行車線の外側に、所定サイズの設定領域を設定する設定部と、前記検知範囲と前記設定領域とを重複させるように走行経路を生成する生成部と、前記生成部で生成した走行経路を走行するように前記移動体を制御する走行制御部とを備える。
【0024】
このような自動走行制御装置は、交差点を曲がる場合の内側であって前記交差点を曲がって進入する道路における走行車線の外側に、所定サイズの設定領域を設定し、前記検知範囲と前記設定領域とを重複させるように走行経路を生成し、この生成した走行経路を走行するように前記移動体を制御する。このため、前記検知範囲と前記設定領域とを重複させるように生成された走行経路を走行することで、上記自動走行制御装置は、横断前の歩行者等の検知が可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明にかかる自動走行制御方法および自動走行制御方法は、横断前の歩行者等の検知が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態における自動走行制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】交差点を曲がる場合における走行経路の生成を説明するための図である。
図3】交差点を曲がる場合における走行経路の生成に関し、前記自動走行制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0028】
実施形態における自動走行制御装置は、所定角度の検知範囲で物体を検知する検知部を備えた移動体を自動的に走行させる装置である。前記物体は、好ましくは、例えば建物、塀、電柱、信号機および標識等の大地に固定された固定物体を除く、例えば歩行者、自転車、ベビーカーおよび車椅子等の、移動できる移動物体である。前記移動体は、自機の位置を変えることができる装置であり、例えば車両やロボット等である。前記車両は、例えば自動車(乗用車、トラック、バス等)および工場内の部品搬送車等である。この自動走行制御装置は、走行先の交差点を検出する検出部と、前記検出部で検出した交差点を曲がる場合の内側であって前記交差点を曲がって進入する道路における走行車線の外側に、所定サイズの設定領域を設定する設定部と、前記検知範囲と前記設定領域とを重複させるように走行経路を生成する生成部と、前記生成部で生成した走行経路を走行するように前記移動体(自動走行制御の対象の移動体)を制御する走行制御部とを備える。一例として、車両(移動体の一例)に搭載された自動走行制御装置を例に、より具体的に説明する。
【0029】
ここで、以下の説明において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」および「下」等の方向を表す用語は、車両の前進走行の際の進行方向を「前」とした場合における車両の各方向を指すものとする。
【0030】
図1は、実施形態における自動走行制御装置の構成を示すブロック図である。図2は、交差点を曲がる場合における走行経路の生成を説明するための図である。図2Aは、左側前方の検知範囲RLが設定領域ARの一部を含むように重複する場合を示す。図2Bは、自車両VCの先端が横断歩道CWの側辺LCにかかる状態で、左側前方の検知範囲RLが設定領域ARの全体を含むように重複する場合を示す。図2Cは、自車両VCの先端が、横断歩道CWの側辺LCから所定距離Wだけ前記横断歩道CWより離れた、前記側辺LCに平行な仮想線LS、にかかる状態で、左側前方の検知範囲RLが設定領域ARの全体を含むように重複する場合を示す。
【0031】
実施形態における自動走行制御装置DSは、例えば、図1に示すように、第1および第2レーダ2(2-1、2-2)、測位システム9、ナビゲーションシステム10、制御処理部11、記憶部17を備える。図1に示す例では、自動走行制御装置DSは、自車両VCの周囲に存在する物体(所定の範囲で前記自車両VCから視認可能な物体)を画像によって認識するために、カメラ1をさらに備え、運転状況や走行状況等を認識するために、車速センサ3、加速度センサ4、ヨーレートセンサ5、操舵角センサ6、アクセルセンサ7およびブレーキセンサ8をさらに備え、走行するために、動力部12、制動部13および操舵部14をさらに備え、所定の指示や情報を入力するために入力部15をさらに備え、所定の情報を表示するために、表示部16をさらに備える。
【0032】
カメラ1は、制御処理部11に接続され、制御処理部11の制御に従って所定の撮像範囲で車両VCの周囲を撮像してその画像を生成する装置である。カメラ1は、この生成した画像を制御処理部11へ出力する。例えば、カメラ1は、車両VC(以下、説明の都合上、他車両と区別するために、適宜、「自車両VC」と呼称する)内において、フロントガラス近傍の天井面(ルーフ内側面)に、路面を含むように、自車両VCの前方を所定の撮像範囲(画角)で撮像するように、その撮影方向(光軸方向)を斜め下方に向けて配設される。カメラ1は、例えば、被写体(対象物)の光学像を所定の結像面上に結像する結像光学系、前記結像面に受光面を一致させて配置され、前記被写体の光学像を電気的な信号に変換するエリアイメージセンサ、および、エリアイメージセンサの出力を画像処理することで前記被写体の画像を表すデータである画像データを生成する画像処理部等を備えるデジタルカメラである。前記デジタルカメラは、可視カメラであってよく、赤外カメラであってよい。
【0033】
第1レーダ2-1は、制御処理部11に接続され、制御処理部11の制御に従って、進行方向に対し一方側前方における所定角度の検知範囲(図2に示す例では左側前方における角度αの検知範囲RL)で、自機(当該自動走行制御装置DS)を搭載した自車両VCの周囲における物体を検知し、その検知結果(第1検知結果)を制御処理部11に出力する装置である。第2レーダ2-2は、制御処理部11に接続され、制御処理部11の制御に従って、前記進行方向に対し他方側前方における所定の検知範囲(図2に示す例では右側前方における角度αの検知範囲RR)で自車両VCの周囲における物体を検知し、その検知結果(第2検知結果)を制御処理部11に出力する装置である。左側前方の検知範囲RLと右側前方の検知範囲RRとは、前方部で各一部が重なっている。本実施形態では、自車両VCの前方における所定角度の検知範囲R(=検知範囲RL+検知範囲RR)を形成するために、2個の第1および第2レーダ2-1、2-2が用いられているが、より検知範囲の広いレーダを利用することで、1個のレーダが用いられてよく、あるいは、より検知範囲が狭い場合には、3個以上のレーダが用いられてもよい。
【0034】
これら第1および第2レーダ2-1、2-2は、それぞれ、例えば、所定の送信波を送信し、物体で反射した送信波の反射波を受信することにより、前記物体を検出し、前記物体の方向と前記物体までの距離を測定することにより、前記物体の位置(自車両VCに対する前記物体の相対位置(相対方向、相対距離))を測定する。前記送信波は、例えば、ミリ波帯の電磁波であってよく、あるいは、赤外のレーザ光であってよく、あるいは、超音波であってよい。これら第1および第2レーダ2-1、2-2は、それぞれ、例えば、ミリ波帯の送信波を検知範囲RL、RRで走査しながら送信する送信部と、前記送信波が物体で反射した反射波を受信する受信部と、前記送信波と前記反射波とに基づいて前記物体の方向と前記物体までの距離とを求めることで、前記物体の位置を求める信号処理部とを備える。前記信号処理部は、前記検出範囲の走査における前記送信波の送信方向から前記物体の方向を求め、前記送信波の送信タイミングと前記反射波の受信タイミングとの時間差に基づいて、前記物体までの距離を求める(TOF(Time-Of-Flight)方式)。なお、第1および第2レーダ2-1、2-2は、このような構成に限らず、適宜な構成、例えば、複数の受信アンテナを備え、前記複数の受信アンテナが受信した反射波の位相差から前記物体の方向を求める装置であってもよい。また、第1および第2レーダ2-1、2-2は、送信波に対する反射波のドップラーシフトに基づき、自車両VCに対する前記物体の相対速度も求め、制御処理部11へ出力してもよい。
【0035】
第1および第2レーダ2-1、2-2は、所定角度の検知範囲で物体を検知する検知部の一例に相当する。
【0036】
車速センサ3は、制御処理部11に接続され、制御処理部11の制御に従って自車両VCの絶対速度を検出するセンサであり、その検出結果(絶対速度)を制御処理部11へ出力する。加速度センサ4は、制御処理部11に接続され、制御処理部11の制御に従って自車両VCの加速度を検出するセンサであり、その検出結果(加速度)を制御処理部11へ出力する。ヨーレートセンサ5は、制御処理部11に接続され、制御処理部11の制御に従って自車両VCのヨーレートを検出するセンサであり、その検出結果(ヨーレート)を制御処理部11へ出力する。
【0037】
操舵角センサ6は、制御処理部11に接続され、制御処理部11の制御に従って車両VCのステアリングホイールの回転角度(操舵角)を検出するセンサであり、その検出結果(操舵角)を制御処理部11へ出力する。アクセルセンサ7は、制御処理部11に接続され、制御処理部11の制御に従ってアクセルペダルの踏込み量を検出するストロークセンサであり、その検出結果(アクセルペダルの踏込み量)を制御処理部11へ出力する。ブレーキセンサ8は、制御処理部11に接続され、制御処理部11の制御に従ってブレーキペダルの踏み込み量を検出するストロークセンサであり、その検出結果(ブレーキペダルの踏込み量)を制御処理部11へ出力する。
【0038】
測位システム9は、制御処理部11に接続され、制御処理部11の制御に従って自車両VCの位置を測定する装置である。測位システム9は、例えば、地球上の現在位置を測定するための衛星測位システムによって、車両VCの位置を測定する装置、例えばGPS(Global Positioning System)受信装置であり、その測位結果(緯度X、経度Y、高度Z)を制御処理部11へ出力する。なお、GPS受信装置は、DGSP(Differential GSP)等の誤差を補正する補正機能を持ったGPS受信装置であってもよい。また、衛星測位システムの衛星は、準同期軌道を周回するいわゆるGPS衛星だけでなく、見かけ上一地域の上空に留まる準天頂衛星を含む。また、測位システム9は、ジャイロを備え、前記ジャイロの検出結果、加速度センサ4の検出結果および車速センサ3の検出結果に基づく自立航法と併用されてもよく、あるいは、自立航法のみで構成されてもよい。
【0039】
ナビゲーションシステム10は、制御処理部11に接続され、制御処理部11の制御に従って自車両VCの現在位置から目的地までのルート(経路)を案内する装置である。ナビゲーションシステム10は、地図情報を記憶する地図情報記憶部101を含む。前記地図情報は、建造物に関する情報(例えば建造物の位置や名称や住所や連絡先等)や道路に関する情報(例えば車道の布設位置、車道の車線数、車線の幅員(道幅)、交差点位置、道路標示(横断歩道を含む)、区画線(車道中央線、車線境界線、車線外側線)歩道(路側帯を含む)の布設位置、歩道の幅員(歩道幅)等)等を含む。前記地図情報には、例えば、ADAS(Advanced Driver-Assistance System、先進運転支援システム)に利用される高精度地図が利用できる。ナビゲーションシステム10は、後述のように入力部15で目的地の入力を受け付けると、測位システム9から現在位置を取得し、前記地図情報に基づき現在位置から目的地までのルートを検索して生成し、入力部15でルートの選択および設定を受け付けると、進むべき道を表示部16に表示することでルートを案内する。
【0040】
動力部12は、制御処理部11に接続され、制御処理部11の制御に従って自車両VCを駆動(移動)する動力を生成する装置である。動力部12が生成した動力は、動力を伝達する動力伝達機構(トランスミッション等)を介して駆動輪に伝達され、駆動輪を回転させる。動力部12は、例えば、エンジン、モータおよびこれらのハイブリッド装置等の原動機およびその付属機器を備えて構成される。
【0041】
制動部13は、制御処理部11に接続され、制御処理部11の制御に従って自車両VCに制動力を与え、自車両VCを減速する装置である。制動部13は、自車両VCを減速した結果、停止させることもでき、自車両VCの停止中に制動力を与え続けた結果、自車両VCの停止を維持することもできる。制動部13は、例えば、ディスクブレーキおよび回生ブレーキ等のブレーキ装置およびその付属機器を備えて構成される。
【0042】
操舵部14は、制御処理部11に接続され、制御処理部11の制御に従って自車両VCの操舵を行う装置である。操舵部14は、自車両VCの操舵輪の方向を変えるステアリング装置およびその付属機器を備えて構成される。
【0043】
動力部12および制動部13それぞれを制御することで、自車両VCの加速度が調整され、自車両VCの速度(車速)が調整される。操舵部14を制御することで、自車両VCの走行方向が調整される。
【0044】
入力部15は、制御処理部11に接続され、例えば、定速走行の開始やその解除を指示するコマンドや、運転支援の開始やその解除を指示するコマンドや、自動運転の開始やその解除を指示するコマンド等の各種コマンド、および、例えば定速走行の設定速度等の各種データを自動走行制御装置DSに入力する機器である。入力部15は、例えば、予め機能を割り付けた複数のスイッチ等である。入力部15は、本実施形態では、ナビゲーションシステム10の入力部と兼用されており、入力部15には、行き先(目的地)やルート設定条件等の各種データ、ならびに、ルートの選択および設定を指示するコマンドや、案内の開始やその解除を指示するコマンド等の各種コマンドも入力される。表示部16は、制御処理部11に接続され、制御処理部11の制御に従って、入力部15から入力されたコマンドやデータ等を表示する機器であり、例えば液晶ディスプレイ(LCD)および有機ELディスプレイ等の表示装置である。表示部16は、例えば、いわゆるセンターディスプレイやヘッドアップディスプレイ等である。表示部16は、本実施形態では、ナビゲーションシステム10の表示部と兼用されており、表示部16には、案内にかかる情報(例えば地図、ルート(経路)、走行上の注意や右左折の指示、および、現在位置等)も表示される。
【0045】
記憶部17は、制御処理部11に接続され、制御処理部11の制御に従って各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、自動走行制御装置DSの各部1~10、12~17を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御する制御プログラムや、走行先の交差点を検出する検出処理プログラムや、前記検出処理プログラムで検出した交差点を曲がる場合の内側であって前記交差点を曲がって進入する道路における走行車線の外側に、所定サイズの設定領域を設定する設定処理プログラムや、第1および第2レーダ2-1、2-2の検知範囲Rと前記設定領域とを重複させるように走行経路を生成する生成処理プログラムや、前記生成処理プログラムで生成した走行経路を走行するように自車両VCを制御する走行制御プログラム等が含まれる。前記各種の所定のデータには、例えば前記所定サイズの設定領域等の各プログラムを実行する上で必要なデータ等が含まれる。記憶部17は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。そして、記憶部17は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部11のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。
【0046】
制御処理部11は、自動走行制御装置DSの各部1~10、12~17を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、所定の走行経路に沿って自車両VCを自動的に走行させるための回路である。制御処理部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部11は、前記制御処理プログラムが実行されることによって、制御部111、検出処理部112、設定処理部113、生成処理部114および走行制御部115を機能的に備える。
【0047】
制御部111は、自動走行制御装置DSの各部1~10、12~17を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、自動走行制御装置DSの全体制御を司るものである。
【0048】
検出処理部112は、走行先の交差点を検出するものである。より具体的には、本実施形態では、検出処理部112は、ナビゲーションシステム10の地図情報記憶部101に記憶された地図情報を参照することによって、走行先の交差点を検出する。より詳しくは、検出処理部112は、測位システム9で測位した自車両VCの現在位置から、ナビゲーションシステム10に設定されたルート(経路)上で前方の所定距離(例えば50mや70mm等)以内に、交差点があるか否かを、前記地図情報を参照することによって判定し、交差点がある場合には、前記地図情報から交差点の位置を取り出すことによって、走行先の交差点を検出する。なお、検出処理部112は、カメラ1で生成された画像に基づいて、走行先の交差点を検出してもよく、例えば、カメラの画像とレーダの検出結果とを統合するいわゆるセンサフュージョンによる対応付けによって、画像に基づき検出した交差点の位置がレーダの検出結果に基づき検出されてもよい。
【0049】
設定処理部113は、検出処理部112で検出した交差点を曲がる場合の内側であって前記交差点を曲がって進入する道路における走行車線の外側に、所定サイズの設定領域を設定するものである。本実施形態では、設定処理部113は、予め記憶された地図情報に基づいて、前記設定領域を設定する。前記検知範囲から外れる虞のある場所にいる横断前の歩行者等の検知を可能とするために、自車両VCが交差点を曲がる場合の内側であって前記交差点を曲がって進入する道路における走行車線の外側である場所に、設定領域が設定される。前記所定サイズは、予め適宜に設定され、例えば、横断前の移動物体を検知できるように設定される。前記設定領域の形状は、例えば四角形や円形や楕円形等で、予め適宜に設定される。図2に示す例では、設定領域ARは、所定サイズの矩形である。
【0050】
より具体的には、例えば、設定処理部113は、まず、検出処理部112で検出した交差点に関する地図情報(交差点地図情報、例えば車道の布設位置、車道の車線数、車線の幅員、交差点位置、道路標示、区画線、歩道の布設位置、歩道の幅員等)を、地図情報記憶部101に記憶されている地図情報から取得する。なお、カメラ1の画像から前記交差点地図情報が検出されてもよい。これにより、一例では、図2Aないし図2Cに示す、前記交差点辺りの道路状況が取得される(すなわち、前記交差点辺りの道路状況を示す平面図が仮想的に記憶部17に生成される)。これら図2Aないし図2Cに示す例では、検出処理部112で検出した交差点辺りには、現在、破線で示す自車両VCが走行する車線を含む第1道路DR1と、この第1道路DR1と直角に交差する第2道路DR2と、これら第1および第2道路DR1、DR2の交差によって形成される交差点DCと、これら第1および第2道路DR1、DR2の車線外側線LNと、第1道路DR1から見て交差点DCの進入前(第2道路DR2から見て交差点DCの進入後)における第1道路DR1の路面に書かれた第1横断歩道CW1と、第2道路DR2から見て交差点DCの進入前(第1道路DR1から見て交差点DCの進入後)における第2道路DR2の路面に書かれた第2横断歩道CW2と、車線外側線LNの外側に布設された第1および第2道路DR1、DR2の歩道FPとがある。第1道路DR1は、1または複数の車線と歩道FPとを含み、第2道路DR2は、1または複数の車線と歩道FPとを含み、図2Aないし図2Cに示す例では、第1道路DR1における1個の車線と、第2道路DR2における1個の車線とが図示されている。交差点DCは、図2Aないし図2Cに示す例では、第1道路DR1における1対の外側車線の各延長線(不図示)と、第2道路DR2における1対の外側車線の各延長線(不図示)とで区画される内側の領域である。このような場合では、続いて、設定処理部113は、検出処理部112で検出した交差点DCを自車両VCが曲がる場合の内側であって前記交差点DCを曲がって進入する第2道路DR2における走行車線の外側に、所定サイズの矩形で設定領域ARを設定する。より詳しくは、第1および第2道路DR1、DR2の交差する辺りにおける歩道FPに、矩形の設定領域ARにおける短辺(または長辺)を第2道路DR2の車線外側線LNに合わせるとともに、前記矩形の設定領域ARにおける長辺(または短辺)を第2横断歩道CW2の横断方向(第2道路DR2の車線を横断する横断方向)に沿わせるように、前記矩形の設定領域ARが設定される。
【0051】
なお、前記所定サイズは、歩道の幅員に応じて可変してもよい。例えば、横断前の移動物体をより適切に検知できるように、歩道の幅員が広いほど、デフォルト(初期値)の所定サイズから前記所定サイズが大きく(広く)なってもよい。
【0052】
生成処理部114は、前記検知範囲と前記設定領域とを重複させるように走行経路を生成するものである。例えば、図2Aに示すように、検知範囲Rにおける左側前方の検知範囲RLが設定領域ARの一部を含んで前記検知範囲Rと前記設定領域ARとを重複させるように走行経路が生成される。図2Aないし図2Cでは、検知範囲Rと設定領域ARとが重複する重複領域SP(SP1、SP2、SP3)は、斜線でハッチングされている。生成処理部114は、前記検知範囲が前記設定領域と最も広く重複するように走行経路を生成することが好ましい。すなわち、生成処理部114は、前記検知範囲と前記設定領域との重複領域SPが最も広い面積となるように走行経路を生成することが好ましい。より好ましくは、例えば図2B図2Cに示すように、生成処理部114は、前記検知範囲が前記設定領域の全体を含むように重複する走行経路を生成する。前記検知範囲が前記設定領域の全体を含むように重複する走行経路が複数ある場合では、好ましくは、図2Bに示すように、自車両VCの先端が横断歩道CW(この例では第2横断歩道CW2)の側辺LCにかかる状態で、検知範囲Rが設定領域ARの全体を含むように重複する走行経路よりも、図2Cに示すように、自車両VCの先端が、横断歩道CW(この例では第2横断歩道CW2)の側辺LCから所定距離Wだけ前記横断歩道CW(この例では第2横断歩道CW2)より離れた、前記側辺LCに平行な仮想線LS、にかかる状態で、検知範囲Rが設定領域ARの全体を含むように重複する走行経路が、走行制御部115で自車両VCの走行を制御する場合の走行経路(最終的な走行経路)として選択する。これにより、自車両VCが横断歩道CWに進入する直前では無く、横断歩道CWに進入する前に、所定時間(余裕時間)だけ余裕を持って横断前の歩行者等の検知が可能となる。前記所定距離Wは、予め適宜に設定される前記余裕時間および交差点DCに進入する際の車速等に応じて、予め適宜に設定される。
【0053】
生成処理部114は、複数の走行経路が生成された場合に、最短距離の走行経路を、走行制御部115で自車両VCの走行を制御する場合の走行経路(最終的な走行経路)として選択する。前記最短距離を求める始点および終点は、自車両VCが交差点に進入してから、前記交差点を曲がって進入した道路の延長方向に自車両VCの前後方向が沿うまでの走行経路を含むように、適宜に設定される。例えば、前記最短距離を求める始点は、自車両VCが交差点に進入する点(進入点)とされ、前記最短距離を求める終点は、前記交差点を曲がり終わって、前記交差点を曲がって進入した道路の延長方向に自車両VCの前後方向が初めて沿う点(旋回終了点)とされる。
【0054】
生成処理部114は、複数の走行経路が生成された場合に、自車両VCが前記交差点に進入する前に道路中央側に膨らむ走行経路を除く走行経路であって、前記検知範囲が前記設定領域と最も広く重複する走行経路を、走行制御部115で自車両VCの走行を制御する場合の走行経路(最終的な走行経路)として選択する。より具体的には、自車両VCが前記交差点に進入する前の、予め設定された所定距離(例えば20mや30m等)以内で道路中央側に膨らむ走行経路が除かれる。好ましくは、生成処理部114は、複数の走行経路が生成された場合に、自車両VCが、前記交差点を曲がる方の道路外側、例えば車線外側線に寄る走行経路を選択する。
【0055】
生成処理部114は、前記検知範囲が前記設定領域の全体を含むように重複する場合における、自車両VCの進行方向(前後方向)と前記交差点を曲がって進入する道路の横断方向との交差角度を求め、前記求めた交差角度で前記交差点を曲がるように、前記走行経路を生成する。好ましくは、この場合において、生成処理部114は、最小の交差角度を求める。例えば、図2Aに示す例では、自車両VCの進行方向AXと交差点DCを曲がって進入する第2道路DR2の横断方向(第2横断歩道CW2の側辺LC)との交差角度は、角度θ1であり、図2Bに示す例では、自車両VCの進行方向AXと交差点DCを曲がって進入する第2道路DR2の横断方向(第2横断歩道CW2の側辺LC)との交差角度は、角度θ2であり、図2Cに示す例では、自車両VCの進行方向AXと交差点DCを曲がって進入する第2道路DR2の横断方向(第2横断歩道CW2の側辺LCに平行な仮想線LS)との交差角度は、角度θ2である。
【0056】
より具体的には、走行経路の生成には、ポテンシャル法、スプライン補間関数、Aスター(A*)法、ダイクストラ法、RRT(Rapidly exploring Random Tree)およびステートラティス(state lattice)法等の公知のアルゴリズムが利用できる。一例では、生成処理部114は、前記ステートラティス法を用いて経路を生成する。前記ステートラティス法を用いた経路生成は、例えば、特開2020-111302号公報等に開示されている。より詳しくは、走行路に多数のグリッド点からなるグリッド領域が設定され、このグリッド点を順次に連結することによって走行経路の候補となる複数の走行経路候補が生成され、前記複数の走行経路候補の中の1つの走行経路候補が走行経路として選択される。この走行経路の選択では、一般に、前記複数の走行経路候補のそれぞれについて経路コスト(評価値)が求められ、前記経路コストに基づき、例えば、前記経路コストの最も小さい走行経路候補が走行経路として選択される。
【0057】
本実施形態では、生成処理部114は、まず、自車両VCの現在位置から所定距離(例えば50mや70m等)以内で走行路に多数のグリッド点からなるグリッド領域を設定する。前記グリッド領域には、例えば、自車両VCの中心位置を座標原点とし、前記走行路の延長方向に沿ってX軸を設定し、前記X軸に直交するように、例えば前記X軸に自車両VCの前後方向を一致させた場合の車幅方向に沿ってY軸を設定することで、XY直交座標系が設定され、複数のグリッド点の座標値が決定される。図2Aないし図2Cに示す例では、交差点DCを含む第1および第2道路DR1、DR2の車線に、複数のグリッド点が予め設定されたX軸方向およびY軸方向それぞれの所定の間隔(X軸方向間隔、Y軸方向間隔)で設定され、XY直交座標系が設定される。前記X軸方向間隔と前記Y軸方向間隔とは、互いに異なってよく、例えば、前記X軸方向間隔は、前記Y軸方向間隔より長く設定される((前記X軸方向間隔)<(前記Y軸方向間隔))。続いて、生成処理部114は、自車両VCの位置から、自車両の進行方向に存在するグリッド点に向かって枝分かれするように、前記複数の走行経路候補を生成する。続いて、生成処理部114は、これら求めた複数の走行経路候補それぞれについて、複数のグリッド点を連結した走行経路候補に最もフィットする高次多項式を求め、この求めた高次多項式で表される曲線を最終的な走行経路候補とする。これにより、例えば、図2Aないし図2Cに示す走行経路候補DP1、DP2、DP3が生成される。なお、交差点では、交差点進入前(第1道路DR1での走行経路候補)、交差点(交差点DCでの走行経路候補)および交差点後(第2道路での走行経路候補)それそれで3個の高次多項式が生成されてよく、各高次多項式は、連続点で滑らかに連続するように(微分値が略連続するように)生成されてよい。前記高次多項式は、例えば、4次多項式や5次多項式等である。続いて、生成処理部114は、これら複数の走行経路候補の中から、自車両VCが予め適宜に設定された所定位置に到達(位置)した場合に、前記検知範囲と、設定処理部113で設定した設定領域とが重複する走行経路候補を走行経路として選択する。前記所定位置は、自車両VCの先端が交差点に進入する位置から前記交差点を出る位置までの走行経路候補上の適宜な位置であり、例えば、図2Aおよび図2Bに示す、自車両VCの先端が横断歩道CWの側辺LCにかかる状態となる位置であってよいが、好ましくは、図2Cに示す、自車両VCの先端が、横断歩道CWの側辺LCから所定距離Wだけ前記横断歩道CWより離れた、前記側辺LCに平行な仮想線LS、にかかる状態となる位置である。走行経路として選択可能な走行経路候補が複数ある場合には、上述したように、選択される。
【0058】
すなわち、複数の走行経路候補の中から、前記検知範囲が前記設定領域の全体を含むように重複する走行経路候補が有る場合には、この走行経路候補が走行経路として選択され、前記検知範囲が前記設定領域の全体を含むように重複する走行経路候補が無い場合には、
前記検知範囲が前記設定領域と最も広く重複する走行経路候補が走行経路として選択される。前記検知範囲が前記設定領域の全体を含むように重複する走行経路候補が複数有る場合には、その中から、最短距離の走行経路候補が走行経路として選択される。なお、前記検知範囲が前記設定領域と最も広く重複する走行経路候補が複数有る場合には、その中から、最短距離の走行経路候補が走行経路として選択されてよい。この最短距離の走行経路候補から走行経路を選択する前に、自車両VCが前記交差点に進入する前に道路中央側に膨らむ走行経路候補は、除かれる。また、最短距離の走行経路候補から走行経路を選択する前に、最小の交差角度を持つ走行経路候補が選択され、最小の交差角度を持つ走行経路候補が複数ある場合に、最短距離の走行経路候補が走行経路として選択されてよく、あるいは、最短距離の走行経路候補が複数ある場合に、最小の交差角度を持つ走行経路候補が走行経路として選択されてよい。
【0059】
なお、上述では、上述のような選択条件を満たす走行経路候補が走行経路として選択されたが、経路コストによって走行経路が選択されてもよい。
【0060】
一般には、前記経路コストの演算では、自車両VCの車速、前後方向の加速度、経路変化率および障害物等に基づく、予め設定された関数式やテーブル等によって前記経路コストが求められる。より詳しくは、例えば、自車両の車速、前後方向の加速度、経路変化率および障害物それぞれについて、各経路コストを求めるための例えば各関数式が予め設定され、自車両の車速、前後方向の加速度、経路変化率および障害物それぞれの各経路コストが求められ、これら各経路コストの重み付き平均を求めることによって、走行経路候補の最終的な経路コストが求められる。各経路コストの各重みは、自車両の車速、前後方向の加速度、経路変化率および障害物の各重要度(各優先度)等に応じて予め適宜に設定される。
【0061】
このため、重複領域の広さを評価するための経路コスト、最短距離を評価するための経路コスト、自車両VCが前記交差点に進入する前に道路中央側への膨らみを評価するための経路コスト、および、最小の交差角度を評価するための経路コストが用意され、前記走行経路候補における最終的な経路コストを求める際に、これら4個の経路コストを含めて各経路コストの重み付き平均を求めることによって、前記走行経路候補の最終的な経路コストが求められてもよい。前記重複領域の広さを評価するための経路コストは、重複領域(重畳部分の領域)が広くなるほど、経路コストが小さくなるように、関数式やテーブル等によって予め用意される。前記最短距離を評価するための経路コストは、前記最短距離を求めるための始点から終点までの距離が短くなるほど、経路コストが小さくなるように、関数式やテーブル等によって予め用意される。前記自車両VCが前記交差点に進入する前に道路中央側への膨らみを評価するための経路コストは、前記膨らみがある場合には、走行経路候補として残らないような大きな値(走行経路候補から除外(除去)されるような大きな値)に設定され、前記膨らみがない場合には、走行経路候補として残るような小さな値、例えば0に設定される。前記最小の交差角度を評価するための経路コストは、交差角度が小さくなるほど、経路コストが小さくなるように、関数式やテーブル等によって予め用意される。そして、複数の走行経路候補それぞれについて、重複領域の面積が求められてその経路コストが求められ、前記最短距離を求めるための始点から終点までの距離が求められてその経路コストが求められ、前記膨らみの有無が求められてその経路コストが求められ、交差角度が求められその経路コストが求められる。各経路コストの各重みは、これら4個の経路コストを加味して予め適宜に設定される。
【0062】
走行制御部115は、生成処理部114で生成した走行経路を走行するように自車両VCを制御するものである。すなわち、走行制御部115は、自車両VCが生成処理部114で生成した走行経路をトレースするように、動力部12、制動部13および操舵部14を制御する。
【0063】
このような制御処理部11および記憶部17は、いわゆるECU(Electronic Control Unit)と呼称されるコンピュータによって構成可能である。
【0064】
次に、本実施形態の動作について説明する。図3は、交差点を曲がる場合における走行経路の生成に関し、前記自動走行制御装置の動作を示すフローチャートである。
【0065】
このような車両VCに搭載された自動走行制御装置DSは、前記車両VCが稼働を始めると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。その制御処理プログラムの実行によって、制御処理部11には、制御部111、検出処理部112、設定処理部113、生成処理部114および走行制御部115が機能的に構成される。そして、例えば、前記車両VCのイグニッションがオフされるまで、以下の図3に示す各処理S1~S14が予め適宜に設定された所定のサンプリング間隔で繰り返し実行され、走行経路が生成され、前記車両VCが自動的に走行される。ここで、ナビゲーションシステム10には、目的地が入力され、前記目的地までのルート(経路)が検索され、設定されているものとする。
【0066】
図3において、まず、自動走行制御装置DSは、測位システム9によって、自車両VCの現在位置を測位する(S1)。
【0067】
次に、自動走行制御装置DSは、制御処理部11の検出処理部112によって、前記処理S1で測位した現在位置から前方の前記所定距離以内における、ナビゲーションシステム10に設定されたルート(経路)を取得する(S2)。
【0068】
次に、自動走行制御装置DSは、検出処理部112によって、前記処理S2で取得した前記所定距離以内のルート上で前方に交差点が有るか否かを判定する(S3)。この判定の結果、前記交差点が有る場合には、自動走行制御装置DSは、次に、処理S4を実行し、前記交差点が無い場合には、自動走行制御装置DSは、次に、処理S10を実行する。
【0069】
この処理S4では、自動走行制御装置DSは、制御処理部11の設定処理部113によって、前記処理S3で検出した交差点に関する交差点地図情報を、地図情報記憶部101に記憶されている地図情報から取得する。
【0070】
次に、自動走行制御装置DSは、設定処理部113によって、前記処理S3で検出した交差点を自車両VCが曲がる場合の内側であって前記交差点を曲がって進入する道路における走行車線の外側に、所定サイズの設定領域を設定する(S5)。
【0071】
次に、自動走行制御装置DSは、制御処理部11の生成処理部114によって、前記検知範囲と前記設定領域とを重複させるように走行経路を生成する(S6)。より具体的には、本実施形態では、ステートラティス法に走行経路が生成されるため、生成処理部114は、前記処理S4で取得した交差点地図情報に基づきグリッド領域を設定し、自車両の現在位置から、自車両の進行方向に存在するグリッド点に向かって枝分かれするように、複数の走行経路候補を生成してそれにフィッティングする高次多項式を求め、最終的な複数の走行経路候補を生成する。
【0072】
次に、自動走行制御装置DSは、生成処理部114によって、これら複数の走行経路候補の中に、前記検知範囲が前記設定領域の全体を含むように重複する走行経路候補が有るか否かを判定する(S7)。この判定の結果、そのような走行経路候補が無い場合(No)には、自動走行制御装置DSは、次に、処理S11を実行する。一方、前記判定の結果、そのような走行経路候補が有る場合(Yes)には、自動走行制御装置DSは、次に、処理S8を実行する。
【0073】
この処理S11では、自動走行制御装置DSは、生成処理部114によって、前記処理S6で生成した複数の走行経路候補の中から、前記検知範囲が前記設定領域と最も広く重複する走行経路候補を走行経路として選択し、次に、処理S10を実行する。前記検知範囲が前記設定領域と最も広く重複する走行経路候補が複数ある場合には、最短距離の走行経路候補が走行経路として選択されてよく、さらに、最短距離の走行経路候補が複数ある場合に、最小の交差角度を持つ走行経路候補が走行経路として選択されてよく、あるいは、前記検知範囲が前記設定領域と最も広く重複する走行経路候補が複数ある場合には、最小の交差角度を持つ走行経路候補が走行経路として選択されてよく、さらに、最小の交差角度を持つ走行経路候補が複数ある場合に、最短距離の走行経路候補が走行経路として選択されてよい。なお、前記最も広く重複する走行経路候補を走行経路として選択する前に、生成処理部114は、前記処理S6で生成した複数の走行経路候補の中から、自車両VCが前記交差点に進入する前に道路中央側に膨らむ走行経路候補を除くことが好ましい。
【0074】
一方、前記処理S8では、自動走行制御装置DSは、生成処理部114によって、前記処理S6で生成した複数の走行経路候補に、自車両VCが前記交差点に進入する前に道路中央側に膨らむ走行経路候補が有るか否かを判定する。この判定の結果、前記道路中央側に膨らむ走行経路候補が無い場合(No)には、自動走行制御装置DSは、次に、処理S12を実行する。一方、前記判定の結果、前記道路中央側に膨らむ走行経路候補が有る場合(Yes)には、自動走行制御装置DSは、次に、処理S9を実行する。
【0075】
この処理S12では、自動走行制御装置DSは、生成処理部114によって、自車両VCが前記交差点に進入する前に道路中央側に膨らまない走行経路候補が複数か否かを判定する。この判定の結果、複数である場合(Yes)には、自動走行制御装置DSは、次に、処理S13を実行する。一方、前記判定の結果、複数ではない場合(No)には、自動走行制御装置DSは、生成処理部114によって、その自車両VCが前記交差点に進入する前に道路中央側に膨らまない走行経路候補を走行経路として選択し(S14)、次に、処理S10を実行する。
【0076】
この処理S13では、自動走行制御装置DSは、生成処理部114によって、その自車両VCが前記交差点に進入する前に道路中央側に膨らまない複数の走行経路候補の中から、最短距離の走行経路候補を走行経路として選択し、次に、処理S10を実行する。最短距離の走行経路候補が複数ある場合には、最小の交差角度を持つ走行経路候補が走行経路として選択されてよい。
【0077】
一方、前記処理S9では、自動走行制御装置DSは、生成処理部114によって、自車両VCが前記交差点に進入する前に道路中央側に膨らむ走行経路候補を除いた走行経路候補の中から、最小の交差角度を持つ走行経路候補が走行経路として選択し、次に、処理S10を実行する。これにより、前記検知範囲が前記設定領域の全体を含むように重複する場合における、自車両VC(移動体の一例)の進行方向と前記交差点を曲がって進入する道路の横断方向との交差角度を求め、この求めた交差角度で、ここでは、最小の交差角度で前記交差点を曲がるように、前記走行経路が生成される。最小の交差角度を持つ走行経路候補が複数ある場合には、最短距離の走行経路候補が走行経路として選択されてよい。
【0078】
前記処理S10では、自動走行制御装置DSは、制御処理部11の走行制御部115によって、上述のように生成した走行経路を走行するように自車両VCの走行を制御し、今回の本処理を終了する。より詳しくは、処理S9、処理S11、処理S13および処理S14のうちのいずれかの処理の後に処理S10が実行される場合では、当該処理で選択された走行経路を走行するように自車両VCの走行が制御され、前記処理S3の後に処理S10が実行される場合では、ナビゲーションシステム10に設定されたルートにステートラティス法で生成された走行経路を走行するように自車両VCの走行が制御される。
【0079】
以上説明したように、本実施形態における自動走行制御装置DSおよびこれに実装された自動走行制御方法は、交差点を曲がる場合の内側であって前記交差点を曲がって進入する道路における走行車線の外側に、所定サイズの設定領域を設定し、前記検知範囲と前記設定領域とを重複させるように走行経路を生成し、この生成した走行経路を走行するように前記移動体を制御する。このため、前記検知範囲と前記設定領域とを重複させるように生成された走行経路を走行することで、上記自動走行制御装置DSおよび自動走行制御方法は、新たにそれ用のセンサを設けること無く既設の検知部を利用でき、横断前の歩行者等の検知が可能となる。
【0080】
上記自動走行制御装置DSおよび自動走行制御方法は、地図情報に基づくので、より適切な位置に、設定領域を設定できるから、的確に、横断前の歩行者等の検知が可能となる。
【0081】
上記自動走行制御装置DSおよび自動走行制御方法は、検知範囲が設定領域と最も広く重複するように走行経路を生成するので、より広い範囲で、横断前の歩行者等の検知が可能となる。
【0082】
上記自動走行制御装置DSおよび自動走行制御方法は、検知範囲が設定領域の全体を含むように重複する走行経路を生成するので、さらにより広い範囲で、横断前の歩行者等の検知が可能となる。
【0083】
上記自動走行制御装置DSおよび自動走行制御方法は、横断前の歩行者等の検知が可能となりつつ、最短距離の走行経路を選択するので、効率的に走行できる。したがって、省燃料化に寄与できる。
【0084】
上記自動走行制御装置DSおよび自動走行制御方法は、自車両VCが前記交差点に進入する前に道路中央側に膨らむ走行経路を除くので、当該自車両VCに後続する他の移動体(例えば後続車等)に対する進路の妨害を避けつつ、検知範囲が設定領域と最も広く重複する走行経路を選択するので、より広い範囲で、横断前の歩行者等の検知が可能となる。
【0085】
上記自動走行制御装置DSおよび自動走行制御方法は、検知範囲が設定領域の全体を含むように重複する場合における交差角度の走行経路を生成するので、自車両VCの走行方向の調整だけで、さらにより広い範囲で、横断前の歩行者等の検知が可能となる。特に、最小の効果角度の走行経路を生成するので、上記自動走行制御装置DSおよび自動走行制御方法は、余計に回り込むことが無く、自車両VCの乗員に違和感の少ない走行経路(自然な走行経路)で自動走行できる。
【0086】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0087】
DS 自動走行制御装置
1 カメラ
2-1 第1レーダ
2-2 第2レーダ
9 測位システム
10 ナビゲーションシステム
11 制御処理部
12 動力部
13 制動部
14 操舵部
15 入力部
16 表示部
17 記憶部
111 制御部
112 検出処理部
113 設定処理部
114 生成処理部
115 走行制御部
図1
図2
図3