(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】脱気モジュール及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/19 20060101AFI20250212BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
B41J2/19
B05C5/00 101
(21)【出願番号】P 2021007012
(22)【出願日】2021-01-20
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 圭一郎
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/190200(WO,A1)
【文献】特開2019-130724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B05C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が選択的に透過する中空糸と、
前記中空糸の周囲にインクを供給する供給口と、
前記供給口から供給されたインクを排出する排出口と、
前記中空糸が位置する範囲を挟んで両側にそれぞれ位置する1組の加熱部と、
前記加熱部間で熱を伝導させる熱伝導部と、
を備え
、
前記熱伝導部は板ばね材を含む
ことを特徴とする脱気モジュール。
【請求項2】
前記1組の加熱部のうち、熱容量がより大きい方に熱源が接していることを特徴とする請求項1記載の脱気モジュール。
【請求項3】
前記1組の加熱部の一方は、前記1組の加熱部の他方により囲まれる範囲内に位置している
ことを特徴とする請求項1又は2記載の脱気モジュール。
【請求項4】
前記1組の加熱部は、同心円筒上にそれぞれ位置することを特徴とする請求項3記載の脱気モジュール。
【請求項5】
前記1組の加熱部の一方は、前記供給口を有するインクの流路管であり、
前記流路管は、前記同心円筒の中心に位置する
ことを特徴とする請求項4記載の脱気モジュール。
【請求項6】
前記1組の加熱部は、第1加熱部と第2加熱部とを含み、
前記第2加熱部は、前記第1加熱部よりも前記同心円筒の外側に位置しており、熱源に接している
ことを特徴とする請求項4又は5記載の脱気モジュール。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の脱気モジュールを有するインク流路と、
前記インク流路から供給されたインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記加熱部に熱を供給する熱源と、
前記脱気モジュールの前記中空糸内の空気を吸引する吸引動作部と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱気モジュール及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクなどの液滴を吐出して画像、被膜又は構造などを形成するインクジェット記録装置がある。このインクジェット記録装置では、インクに圧力変動を生じさせてインクジェットヘッドのノズルからインクを吐出させる。インク中に空気が含まれると、空気の圧縮膨張がインクの圧力変動を緩和して、所望のインク量やインクの吐出速度が得られなくなるという問題がある。これに対し、従来、気体透過性の膜を介してインクから空気を選択的に除去する脱気装置を備えるインクジェット記録装置がある。
【0003】
吐出されるインクは、粘性などの特性に温度依存性がある場合が多い。そこで、気体透過性の膜を加熱することで、インクを加温して温度を保ち、脱気能力を向上させる技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、脱気モジュールで用いられる気体透過性の樹脂などの熱伝導度は低く、全体を速やかに加熱、昇温させるのが難しいという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、より速やかにインクを昇温させることのできる脱気モジュール及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
気体が選択的に透過する中空糸と、
前記中空糸の周囲にインクを供給する供給口と、
前記供給口から供給されたインクを排出する排出口と、
前記中空糸が位置する範囲を挟んで両側にそれぞれ位置する1組の加熱部と、
前記加熱部間で熱を伝導させる熱伝導部と、
を備え、
前記熱伝導部は板ばね材を含む
ことを特徴とする脱気モジュールである。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の脱気モジュールにおいて、
前記1組の加熱部のうち、熱容量がより大きい方に熱源が接していることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の脱気モジュールにおいて、
前記1組の加熱部の一方は、前記1組の加熱部の他方により囲まれる範囲内に位置している
ことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載の脱気モジュールにおいて、
前記1組の加熱部は、同心円筒上にそれぞれ位置することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の脱気モジュールにおいて、
前記1組の加熱部の一方は、前記供給口を有するインクの流路管であり、
前記流路管は、前記同心円筒の中心に位置する
ことを特徴とする。
【0012】
また、請求項6記載の発明は、請求項4又は5記載の脱気モジュールにおいて、
前記1組の加熱部は、第1加熱部と第2加熱部とを含み、
前記第2加熱部は、前記第1加熱部よりも前記同心円筒の外側に位置しており、熱源に接している
ことを特徴とする。
【0014】
また、請求項7記載の発明は、
請求項1~6のいずれか一項に記載の脱気モジュールを有するインク流路と、
前記インク流路から供給されたインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記加熱部に熱を供給する熱源と、
前記脱気モジュールの前記中空糸内の空気を吸引する吸引動作部と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に従うと、脱気モジュールにおいてより速やかにインクを昇温させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態のインクジェット記録装置におけるインクの流路構成を説明する図である。
【
図2】脱気モジュールの中心を通る断面を示す図である。
【
図3】変形例1の脱気モジュールを示す断面図である。
【
図4】変形例2の脱気モジュールを示す断面図である。
【
図5】変形例3の脱気モジュールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態のインクジェット記録装置1におけるインクの流路構成を説明する図である。
【0018】
インクジェット記録装置1は、インク供給部10と、インク流路部20(インク流路)と、インクジェットヘッド30と、吸引動作部40と、加熱部50などを備える。
【0019】
インク供給部10は、インクタンク11と、供給ポンプ12などを有する。供給ポンプ12は、インクタンク11からインク流路部20へインクを供給する。供給ポンプ12は、図示略の制御部の制御に基づいて間欠的に動作されてよい。
【0020】
インク流路部20は、インク供給部10から供給されたインクを適切な温度でインクジェットヘッド30へ供給する。インク流路部20は、配管201の間に、サブタンク21と、脱気モジュール22と、送液ポンプ23などを有する。配管201は、特には限られないが、例えば、中空の円環状のチューブ構造である。
【0021】
また、インク流路部20は、脱気モジュール22の両端の間をつなぐ循環流路203を有し、この循環流路203の途中には、脱気モジュール22と並列に循環ポンプ25が含まれる。循環ポンプ25にインクの送液を行わせることで、脱気モジュール22から流出したインクを脱気モジュール22の上流側、ここでは、脱気モジュール22の流入口手前に戻す循環動作が可能となっている。
【0022】
また、インク流路部20は、回収流路202と、バルブ26とを有する。バルブ26が開放されている場合に、インクジェットヘッド30の内部に貯留されているインクは、回収流路202を介してサブタンク21に戻される。バルブ26は、例えば、インクジェットヘッド30のメンテナンスなどで内部からインクを排出する必要がある場合などに開放され得る。
【0023】
加熱部50は、ヒーターなどの熱源60(
図2参照)からの熱を伝える熱伝導部材225(
図2参照)などを有し、インク流路部20を加熱、保温することにより、インクの温度が適切な温度に保たれるようになっている。所望のインクの温度は、インクの種別、主に、インクの粘度の温度依存性に応じて各々定まる。例えば、ゾル状態とゲル状態との間で相変化するインクの場合には、確実にゾル状態となる温度に加熱維持されればよい。熱源60は、例えば、電熱線であり、通電されることによりジュール熱を生じる。熱源60の発熱動作(通電動作など)の有無などは、制御部の制御に基づいて行われる。なお、ここでいう熱源60は、直接熱を発するものに限られず、外部で発生した熱を最終的に加熱部50へと熱伝導により伝える部材をいう。熱伝導部材としては、例えば、各種金属(合金)の熱伝導板が用いられ、配管201を外側から覆ったり、サブタンク21の側壁に接触したりして位置している。脱気モジュール22を加熱する熱伝導部材については後述する。
【0024】
インクジェットヘッド30は、複数のノズルと、ノズル内のインクに圧力変動を付与する駆動素子と、流入管31と、排出管32などを有する。インクジェットヘッド30は、インク流路部20から流入管31を介して供給されたインクを駆動素子の動作に応じて吐出させる。インクジェットヘッド30は、インクジェットヘッド30内でノズルから吐出されずに貯留されているインクを排出管32から排出させることができる。
なお、インクジェットヘッド30は、加熱部50とは別個に加熱部を有していてよい。
【0025】
また、吸引動作部40は、逆止弁41と、トラップ42と、真空ポンプ43などが、脱気モジュール22に対して直列に接続されている。真空ポンプ43は、脱気モジュール22の内部の空気エリアを真空に吸引するポンプである。トラップ42は、脱気モジュール22から流出したインクを蓄え、真空ポンプ43への流入を抑える。逆止弁41は、トラップ42の側からインクが脱気モジュール22へ逆流するのを防ぐ。
【0026】
次に、脱気モジュール22について詳しく説明する。
図2は、脱気モジュール22の中心を通る断面を示す図である。
【0027】
本実施形態の脱気モジュール22は、中空糸を用いた略円筒形状の外部灌流型のものである。脱気モジュール22は、インクが流入する配管201aと、流入したインクのインク室221と、円筒形状の中心軸に沿って(同心円筒(平面視で同心円)の中心に)位置する流路管222(第1加熱部、一方)と、流路管222を取り囲んで外側に当該流路管222と同心円筒状の範囲(位置範囲)に位置する中空糸224と、中空糸224の位置範囲の外側を覆う筐体220(第2加熱部、他方)と、筐体220に接続する配管201bと、熱伝導部材225(熱伝導部)などを有する。
【0028】
配管201aからインク室221へ流入したインクは、流路管222の一端付近へ流入する。流路管222は、略円筒形状であり、一端に位置する上記インクの流入口と、円筒側面に位置する複数の開口222a(供給口)とを有する。流路管222に流入したインクは、開口222aから流出して、多数の中空糸224の周囲(外面側)に供給される。多数の中空糸224は、
図2においてそれぞれ上下方向に略平行に伸びている。インクは、中空糸224の隙間を抜けたのち、開口220a(排出口)から配管201bへ排出される。なお、開口220aは、
図2では脱気モジュール22の上寄りに位置しているが、これに限られない。中央付近などに位置していてもよい。
【0029】
中空糸224は、特にその本数が限定されるものではないが、インクと中空糸膜との接触面積が大きくなり、中空糸膜に接触せずに中空糸224の位置範囲を通過するインクが少なくなるように、多数有しているとよい。中空糸224は、それぞれ一の端部が脱気管401につながり、当該端部とは反対側の端部が閉じている。脱気管401の先の真空ポンプ43の動作により、中空糸224の内部は真空状態となり、中空糸224を挟んで外側のインクと真空面とが接する。中空糸224をなす中空糸膜は、インク中の空気(気体)を選択的に透過させる。この透過した空気が脱気管401へ流れることで、インクが脱気される。なお、中空糸224は、両端が開放されて当該両端からそれぞれ真空吸引されてもよい。
【0030】
筐体220及び流路管222は、例えば、SUS(ステンレス鋼)、アルミニウムや銅など、熱伝導度が高い(通常、各種SUS(例えば、SUS304)以上の熱伝導率を有する)金属部材などである。筐体220の外周を熱源60が取り巻いて接しており、熱源60からの熱が筐体220に伝わって筐体220が加熱される。筐体220の内部のインクは、筐体220から内向きに加熱される。筐体220及び流路管222が1組となって加熱部50に含まれる。
【0031】
流路管222は、インク室221との間がOリング223といったシール材により隔てられている。Oリング223は、例えば、筐体220の流路管222との対向面に環状に伸びる溝に沿って位置していてもよい。これにより、インク室221のインクは、直接筐体220内に漏出しない。Oリング223は、例えば、樹脂部材(ゴム)などであり、導体金属などと比較して熱伝導度は非常に低い。したがって、筐体220の熱は、Oリング223を介して流路管222には伝わりにくい。
【0032】
筐体220と流路管222と(加熱部間)は、熱伝導部材225によりつながっており、熱が伝導される。例えば、熱伝導部材225は、円環状であり、外側面が筐体220に接し、内側面が流路管222に接している。熱伝導部材225は、熱伝導度の高い接着部材で接合又は溶接などがなされていてもよい。熱伝導部材225は、特には限られないが、例えば、SUS、アルミニウムや銅など(通常、各種SUS(例えば、SUS304)以上の熱伝導率を有する)であってもよい。また、熱伝導部材225は、筐体220及び流路管222と同一の材質であってもよい。熱伝導部材225の流路管222に沿った方向の長さ(高さ)は、特には限られないが、筐体220の温度変化に対する流路管222の温度変化の遅延量を適切に低減させるように適宜定められればよい。
【0033】
加熱された筐体220の熱の一部は、熱伝導部材225を介して速やかに流路管222へ伝わって、流路管222の温度が筐体220の温度に近くなる。これにより、流路管222の内部のインクが加熱されるとともに、筐体220の内部のインクも流路管222から外向きに加熱される。なお、ここでは、筐体220の方が流路管222よりも遥かに体積が大きいので、熱容量も大きい。したがって、筐体220から一部の熱が流路管222に流出しても筐体220の温度の低下は十分に小さい。
【0034】
中空糸224の中空糸膜は、例えば、シリコーンなどであり、SUSなどと比較して熱伝導度は非常に小さい。したがって、筐体220からの内向きの熱が中空糸224の位置範囲を挟んで流路管222に届くには時間を要する。これに対し、流路管222からも同時に同程度の温度で外向きに中空糸224の位置範囲へ熱を伝えることで、筐体220内のインクをより迅速に安定した温度に加熱し、また、これを維持することが可能になる。特に、本実施形態では、中空糸224の位置範囲の各位置における加熱部(筐体220及び流路管222)からの最短距離は、理想的には同心円筒の中心軸からの距離のみに依存し、角度や中心軸に沿った方向についての位置に対しては依存しないので(中空糸224の位置範囲の端部付近などについて一部例外があってもよい)、むらなく均等にインクが加熱されやすい。
【0035】
筐体220の内部、中空糸224の位置範囲には、温度計測部61がある。温度計測部61は、例えば、サーミスターである。温度計測部61が計測した温度のデータは、制御部に出力されて、熱源60の発熱動作の制御に利用されてよい。
【0036】
図3は、変形例1の脱気モジュール22aを示す断面図である。
図3以下の各断面は、
図2に示したものと同一である。また、上記実施の形態で示したものと同一の構成には、同一の符号を付している。
【0037】
この変形例1の脱気モジュール22aでは、熱伝導部材225aは、流路管222の途中に接する代わりに、インク室221内で流路管222の一端に接触している。熱伝導部材225aは、ここでは、例えば、板ばねなどであり、流路管222の一端に押し付けられることで接触状態が維持される。
【0038】
このような変形例1の熱伝導部材225aは、従来の脱気モジュール22の構造を変更することなく単に板ばねをインク室221内に挿入すればよいので、容易に得られる。
【0039】
図4は、変形例2の脱気モジュール22bを示す断面図である。上記実施の形態で示したものと同一の構成には、同一の符号を付している。
【0040】
この変形例2の脱気モジュール22bは、熱伝導部材225に加えて、この熱伝導部材225とは異なる流路管222の位置に接触する熱伝導部材225bを有する。
【0041】
このように、流路管222の異なる複数の位置に筐体220から熱が伝わることで、より迅速にむらを小さく筐体220の内部のインクを加熱することが可能になる。
【0042】
図5は、変形例3の脱気モジュール22cを示す断面図である。上記実施の形態で示したものと同一の構成には、同一の符号を付している。
【0043】
この変形例3の脱気モジュール22cは、流路管222自身だけではなく、その周囲に熱伝導部材225cを有する。
【0044】
以上のように、本実施形態の脱気モジュール22は、中空糸224と、中空糸224の周囲にインクを供給する開口222aと、開口222aから供給されたインクを排出する排出口と、中空糸224が位置する範囲を挟んで両側にそれぞれ位置する1組の加熱部(筐体220及び流路管222)と、加熱部(筐体220及び流路管222)間で熱を伝導させる熱伝導部材225と、を備える。
このように、中空糸224が位置する範囲の両側から加熱を行うことを可能とすることで、熱伝導度の低い中空糸224の周囲のインクをこれまでよりも速く加熱することが可能となる。よって、この脱気モジュール22では、より速やかにインクを昇温させることができる。また、1組の加熱部を熱伝導部材225で接続するので、各加熱部を別個に温度管理及び制御する必要がなく、単一の制御動作で容易に温度制御がなされる。また、温度計測を複数か所で行ったり、複数の熱源の駆動系を備えたりする必要がないので、サイズや製造/動作コストも低減させることができる。また、常温ではゲル化するようなインクでは、ゾル化する温度まで上昇するまでは、循環させて温度上昇を早めることもできないが、この方法では脱気モジュール22の内部のインクを従来より速やかに加熱することができるので、より起動時などの待機時間も短縮することができる。
【0045】
また、1組の加熱部のうちより熱容量が大きい筐体220に対し、熱源60が接している。
これにより、筐体220から流路管222へ熱が伝わっても筐体220の温度低下を抑えることができ、より安定した温度でインクを加熱、昇温させることができる。
【0046】
また、流路管222(1組の加熱部の一方)は、筐体220(1組の加熱部の他方)により囲まれる範囲内に位置している。よって、内側の流路管222からの発熱を効率よくインクの加熱に利用することができる。特に、周囲全体(ここでは平面視での範囲)が中空糸224の位置範囲となることで、従来よりも効率よくインクの加熱が可能となる。
【0047】
また、1組の加熱部は、同心円筒上にそれぞれ位置する。このような円筒対称の位置関係でインクの加熱を行うことで、温度分布のむらを低減させてインクの温度をより一様にすることが可能になる。
【0048】
また、1組の加熱部の一方は、開口222aを有するインクの流路管222であり、流路管222は、同心円筒の中心に位置する。このように中心からインクが外向きに流れる形状で当該インクの流れ方向に沿って熱を伝えるように加熱を行うので、より少ないむらでインクの加熱を行うことができる。
【0049】
また、1組の加熱部は、流路管222(第1加熱部)と筐体220(第2加熱部)とを含み、筐体220は、流路管222よりも同心円筒の外側に位置しており、熱源60に接している。
このように、外側の加熱部に熱源60が接し、内側へは熱伝導部材225で熱を伝えるので、構造上簡便になりやすい。また、外周側の方が通常面積が大きくなり、熱容量も大きくしやすいので、加熱の制御も容易となりやすい。
【0050】
また、変形例1の脱気モジュール22aのように、熱伝導部材225aは、板ばね材を含んでいてもよい。この構造であれば、従来の脱気モジュールの構造を変形することなく、単に板ばねを挿入すればよいだけであるので、製造方法の変更が容易であり、また、コストや手間の増大も抑えやすい。また、熱伝導部材225を接着、接合しなくても適切に筐体220及び流路管222に接触して熱を伝えるので、熱伝導性やインクによる腐食などを考慮した接着部材などを選択、利用する必要がない。
【0051】
また、本実施形態のインクジェット記録装置1は、上記の脱気モジュール22、22a~22cを有するインク流路部20と、インク流路部20から供給されたインクを吐出するインクジェットヘッド30と、加熱部である筐体220及び流路管222に熱を供給する熱源60と、脱気モジュール22、22a~22cの中空糸224内の空気を吸引する吸引動作部40と、を備える。
このようなインクジェット記録装置1によれば、インクを速やかに加熱して昇温させることができる。したがって、このインクジェット記録装置1では、より短い待機時間で適切な温度のインクを脱気して吐出させることが可能になる。
【0052】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、同心円筒状に中心から外側へインクが中空糸の隙間を通って流れる形状を示したが、これに限られない。反対向きであってもよい。また、平行な2面間に中空糸が位置し、一の面から流出したインクが反対の面へ流入する構造などであってもよい。この場合、加熱部も平行する2面により中空糸を挟んで位置していてもよい。
【0053】
また、筐体220が流路管222の周囲を囲んで位置している場合でも、流路管222が筐体220と同心円筒上に位置していなくてもよい。
【0054】
また、上記実施の形態では、第2加熱部である筐体220が熱源60により加熱され、熱伝導部材225によって第1加熱部である流路管222へ筐体220から熱が伝えられるものとして説明したが、これに限られない。熱伝導部材225が熱源60により加熱され、当該熱伝導部材225から第1加熱部(流路管222)及び第2加熱部(筐体220)へ熱が伝わる構造であってもよい。
【0055】
また、上記実施の形態では、熱源60により加熱される側の加熱部の方が熱伝導部材225で熱が伝えられる側の加熱部よりも熱容量が大きいものとして説明したが、これに限られない。熱源60により加熱される側の加熱部の方が熱容量が小さくてもよい。この場合には、熱伝導部材225により熱が伝えられる側の加熱部の加熱むらが生じにくいように熱伝導部材225が位置していてもよい。また、熱伝導部材225により伝えられる熱量と、熱源60が供給する熱量との比などを適切に保つように熱源60の発熱動作が制御されてもよい。
【0056】
また、1組の加熱部は、合計2個の加熱部に限られない。3個以上、すなわち、中空糸224の位置範囲を挟んだ両側の一方に位置する加熱部が複数であったり、2方向から上記位置範囲を挟む構成であったりしてもよい。
【0057】
また、熱伝導部材225は、単一の構成によるものではなくてもよい。複数の構成、材質が組み合わされたものであってもよい。
【0058】
また、上記実施の形態では、インクジェット記録装置1のインク流路部20内に位置する脱気モジュール22について説明したが、インクジェット記録装置1の外部に位置して利用されるものであってもよい。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、構造、動作の内容及び手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0059】
1 インクジェット記録装置
10 インク供給部
11 インクタンク
12 供給ポンプ
20 インク流路部
201、201a、201b 配管
202 回収流路
203 循環流路
21 サブタンク
22、22a~22c 脱気モジュール
220 筐体
220a 開口
221 インク室
222 流路管
222a 開口
223 Oリング
224 中空糸
225、225a~225c 熱伝導部材
23 送液ポンプ
25 循環ポンプ
26 バルブ
30 インクジェットヘッド
31 流入管
32 排出管
40 吸引動作部
401 脱気管
41 逆止弁
42 トラップ
43 真空ポンプ
50 加熱部
60 熱源
61 温度計測部