(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】表示制御装置、表示装置、表示システム、及び画像表示制御方法
(51)【国際特許分類】
G09G 5/00 20060101AFI20250212BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20250212BHJP
B60K 35/40 20240101ALI20250212BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20250212BHJP
G09G 5/37 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
G09G5/00 530H
B60K35/23
B60K35/40
G02B27/01
G09G5/00 510B
G09G5/00 510V
G09G5/00 530T
G09G5/00 550B
G09G5/00 550C
G09G5/00 550D
G09G5/37 300
(21)【出願番号】P 2021010948
(22)【出願日】2021-01-27
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】村澤 透
【審査官】武田 悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-226001(JP,A)
【文献】特開2019-139009(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0158172(US,A1)
【文献】国際公開第2017/033566(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/130864(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 5/00 - 5/42
G02B 27/01
B60K 35/00 - 35/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、画像を、前記車両の運転者及び前記運転者以外の乗員に視認させる表示装
置であって、
前記運転者、又は前記乗員から見た前記画像の歪を抑制するように、前記画像の画像データを補正する際に使用する補正パラメータを変更する機能をもつ制御部
と、
前記補正パラメータを用いて前記画像データを補正する画像データ補正部と、
前記乗員に対応する位置に配置され、補正された前記画像データに基く前記画像を表示する表示部と、を有し、
前記制御部は、
前記乗員の有無情報、及び前記乗員の配置情報の少なくとも一方に基づく判定の結果として、前記乗員が存在する場合には、前記補正パラメータの値を、その乗員に適した第1の値に設定し、
前記乗員が不在の場合には、前記補正パラメータの値を、前記運転者に適した、前記第1の値とは異なる第2の値に設定する、
表示装置。
【請求項2】
前記乗員は、
前記車両の前列の助手席に着座する乗員である、
又は、
前記車両の後列の座席に着座する乗員である、
請求項1に記載の
表示装置。
【請求項3】
前記補正パラメータは、
前記画像の表示に際して生じる歪みとは逆の特性の歪を、前記画像データに対して事前に与える事前歪み補正用のワーピングパラメータ、
及び、
前記画像の表示領域の輪郭を、長方形及び正方形を含む矩形とするとき、視認者が前記画像を見る角度に対応して、前記矩形が、台形又は平行四辺形に変形されて見える場合に、その台形又は平行四辺形を矩形に変換する、変形抑制補正用の変換パラメータ、
及び、
3次元(3D)表示の場合の、3次元画像の歪みを補正する3D画像の補正パラメータ、
の少なくとも1つを含む、
請求項1又は2に記載の
表示装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記表示装置の動作が開始されると、前記補正パラメータの値が決定される前は前記画像を非表示とし、前記補正パラメータの値が決定された後に前記画像を表示させる、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の
表示装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記表示装置の動作が開始されると、
前記乗員が存在する場合には、前記補正パラメータの値が決定された後に前記画像を表示させる、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の
表示装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記表示装置の動作が開始されると、
前記補正パラメータを前記第1の値に設定して表示を行わせながら、前記補正パラメータの変更の要否を判定し、変更要であれば前記補正パラメータの値を変更する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の
表示装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記画像の表示中において、前記補正パラメータの値を変更するとき、変更前の値から変更後の値へと徐々に変化させる、
請求項1乃至6の何れか1項に記載の
表示装置。
【請求項8】
前記表示装置は、
前記表示部に表示される前記画像の表示光を、前記車両に設けられる被投影部材に投影する光学系をさらに有し、前記運転者及び前記乗員の少なくとも一方に虚像を視認させる機能をもつヘッドアップディスプレイ装置である、
又は、
表示パネルとしての前記表示部に実像の前記画像を表示し、前記運転者及び前記乗員の少なくとも一方に、その実像の前記画像を視認させる表示器装置である、
請求項7に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示制御装置、表示装置、表示システム、及び画像表示制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される表示装置(車両用表示装置)が表示する画像を、運転者以外の乗員が視認する場合も想定され得る。
【0003】
この点に関して、例えば、特許文献1の[0004]には、「・・・運転者の他に同乗者が助手席に同乗(着座)しており、助手席に着座している同乗者にも車両情報等からなる前記表示像を視認させたい場合には、前述したヘッドアップディスプレイ装置(つまり運転席用のヘッドアップディスプレイ装置)の他に、助手席に着座する同乗者の前方となるインパネ内部に助手席用の他のヘッドアップディスプレイ装置を別途、配設することが考えられる」と記載されている。
【0004】
また、表示する画像の歪を補正する処理の一例として、例えば、特許文献2には、HUD装置におけるワーピング処理(光学系等による歪みとは逆特性の歪を事前に画像データに付与する補正処理)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-108470号公報
【文献】特開2015-87619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者の検討によって、以下の課題が明らかとなった。表示装置が、例えば、乗員に視認させるべく画像を表示したが、その乗員は不在であった、という場合があり得る。
【0007】
その表示画像は、乗員が見ることを想定しているため、その画像データには、例えば、乗員が正面から見た場合の画像の歪を補正する補正処理等がなされている場合が多い。
【0008】
乗員が不在のときに、運転者が、例えば情報を得るために、その表示画像を斜めから見た場合、その画像は、乗員が正面から見た場合を想定した画像となっているため、運転者には、かなり歪みが大きい画像であると感じられ、違和感が生じるおそれがある。
【0009】
上記特許文献1、2には、この課題については言及がなく、その対策についても記載がない。
【0010】
本発明の目的の1つは、運転者以外の乗員が不在のときに、その乗員に適した歪み補正が施された画像を運転者が見ることで違和感が生じることを抑制することである。
【0011】
本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。
【0013】
第1の態様において、表示装置は、
車両に搭載され、画像を、前記車両の運転者及び前記運転者以外の乗員に視認させる表示装置であって、
前記運転者、又は前記乗員から見た前記画像の歪を抑制するように、前記画像の画像データを補正する際に使用する補正パラメータを変更する機能をもつ制御部と、
前記補正パラメータを用いて前記画像データを補正する画像データ補正部と、
前記乗員に対応する位置に配置され、補正された前記画像データに基く前記画像を表示する表示部と、を有し、
前記制御部は、
前記乗員の有無情報、及び前記乗員の配置情報の少なくとも一方に基づく判定の結果として、前記乗員が存在する場合には、前記補正パラメータの値を、その乗員に適した第1の値に設定し、
前記乗員が不在の場合には、前記補正パラメータの値を、前記運転者に適した、前記第1の値とは異なる第2の値に設定する。
【0014】
第1の態様では、表示装置が表示する画像の、主たる視認者である乗員が不在であるときは、従たる視認者である運転者に適した画像となるように、補正パラメータが変更される。
【0015】
表示される画像が、例えば乗員が正面から見た場合の画像の歪を補正する補正処理等がされたままであると、運転者が、その表示画像を斜めから見た場合には、違和感が生じるおそれがあったが、本態様では、補正パラメータが、斜めから見ている運転者に適したものに変更され、運転者から見た歪みが低減されるように補正された画像が表示される。よって、運転者の違和感が抑制される。
【0016】
第1の態様に従属する第2の態様において、
前記乗員は、
前記車両の前列の助手席に着座する乗員である、
又は、
前記車両の後列の座席に着座する乗員であってもよい。
【0017】
第2の態様では、第1の態様にて説明した「表示装置が表示する画像の、主たる視認者である乗員」には、車両の前列の助手席の乗員が含まれ得ること、また、車両の後列の座席の乗員が含まれ得ること、を明確化している。
【0018】
例えば、助手席に着座する同乗者の前方(好ましくは正面)となるダッシュボード内部に、あるいはダッシュボードの表面等に助手席用の表示装置が設置される場合が有り得る。言い換えれば、この場合の表示装置は、助手席に着座する乗員に正対する位置(但し、正対という用語は広く解釈し、厳密な正面以外の位置も含む)に配置される表示装置ということができ、この場合には、その助手席に着座する乗員が、「その表示装置についての主たる視認者」となる。
【0019】
また、後部座席に着座する乗員についても、例えばナビゲーション用情報や娯楽情報等を提供するべく、その乗員の前方において、好ましくは、その乗員に正対する位置(但し、正対という用語は広く解釈し、厳密な正面以外の位置も含む)において、ダッシュボード内部やダッシュボードの表面等に表示装置が設置される場合が有り得る。この場合には、その後部座席に着座する乗員が、「その表示装置についての主たる視認者」となる。
【0020】
上記のような場合において、「その表示装置の主たる視認者である乗員」が不在であるときは、その表示装置が表示する画像は、運転者が斜めに見る必要があり、何の対策もしなければ歪みが大きくなる。本発明を適用することで、画像の歪みが低減され、違和感が抑制される。
【0021】
第1又は第2の態様に従属する第3の態様において、
前記補正パラメータは、
前記画像の表示に際して生じる歪みとは逆の特性の歪を、前記画像データに対して事前に与える事前歪み補正用のワーピングパラメータ、
及び、
前記画像の表示領域の輪郭を、長方形及び正方形を含む矩形とするとき、視認者が前記画像を見る角度に対応して、前記矩形が、台形又は平行四辺形に変形されて見える場合に、その台形又は平行四辺形を矩形に変換する、変形抑制補正用の変換パラメータ、
及び、
3次元(3D)表示の場合の、3次元画像の歪みを補正する3D画像の補正パラメータ、の少なくとも1つを含んでもよい。
【0022】
第3の態様では、補正パラメータは、ワーピングパラメータであってよく、また、変形抑制補正用の変換パラメータであってもよく、3D画像の補正パラメータであってもよいことを明確化している。
【0023】
適正な補正パラメータを用いて上記の補正が実施されることで、画像の歪が効果的に低減され、違和感を抑制することができる。
【0024】
第1乃至第3の何れか1つの態様に従属する第4の態様において、
前記制御部は、
前記表示装置の動作が開始されると、前記補正パラメータの値が決定される前は前記画像を非表示とし、前記補正パラメータの値が決定された後に前記画像を表示させてもよい。
【0025】
第4の態様によれば、適用する補正パラメータを決定した後に画像を表示することで、例えば、画像を表示した後に補正パラメータを変更した場合と比べて、表示の歪みによる視認者の違和感を低減することができる。
【0026】
第1乃至第3の何れか1つの態様に従属する第5の態様において、
前記制御部は、
前記表示装置の動作が開始されると、
前記乗員が存在する場合には、前記補正パラメータの値が決定された後に前記画像を表示させもよい。
【0027】
第5の態様では、運転者が主たる視認者である表示装置については、直ちに画像の表示を開始して、例えば車両の運転に有用な情報を遅延なく提示すること等が可能である。一方、乗員が主たる視認者である表示装置については、その乗員の有無等が確認されて補正パラメータの値が決定された後に表示を開示することで、歪みの少ない画像の表示が可能である。
【0028】
第1乃至第3の何れか1つの態様に従属する第6の態様において、
前記制御部は、
前記表示装置の動作が開始されるとと、
前記補正パラメータを前記第1の値に設定して表示を行わせながら、前記補正パラメータの変更の要否を判定し、変要であれば前記補正パラメータの値を変更してもよい。
【0029】
第6の態様によれば、乗員を主たる視認者とする場合においても、補正パラメータの値の決定を待つことなく、素早く画像を表示させることができる。
【0030】
第1乃至第6の何れか1つの態様に従属する第7の態様において、
前記制御部は、
前記画像の表示中において、前記補正パラメータの値を変更するとき、変更前の値から変更後の値へと徐々に変化させてもよい。
【0031】
第7の態様によれば、補正パラメータの変更が必要となった場合に、徐々にその値を変更することで、画像の見え方が急峻に変化することが抑制され、よって、乗員等に与える違和感を低減することができる。
【0034】
第1の態様に従属する第8の態様において、
前記表示装置は、
前記表示部に表示される前記画像の表示光を、前記車両に設けられる被投影部材に投影する光学系をさらに有し、前記運転者及び前記乗員の少なくとも一方に虚像を視認させる機能をもつヘッドアップディスプレイ装置であってもよく、
又は、
表示パネルとしての前記表示部に実像の前記画像を表示し、前記運転者及び前記乗員の少なくとも一方に、その実像の画前記像を視認させる表示器装置であってもよい。
【0035】
第8の態様では、表示装置が、HUD装置でもよく、表示器装置であってもよいことを明確化している。運転者、乗員の双方に歪みの少ない画像を表示可能な、高性能なHUD装置あるいは表示器装置を実現することができる。
【0036】
なお、表示器装置としては、液晶装置(例えばTFT液晶装置)や、自発光の表示装置である、マイクロLED表示装置等を使用してもよい。
【0045】
当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1(A)は、前列2人掛けの車両に、運転者用及び助手席の乗員用の2台の表示装置(HUD装置)を配置したときの、乗員が存在する場合における各表示装置の表示光の進路の例を示す図、
図1(B)は、乗員が不在の場合における各表示装置の表示光の進路の例を示す図である。
【
図2】
図2(A)は、ワーピング補正機能を備えるHUD装置の構成例を示す図、
図2(B)は、ワーピング補正処理の効果を示す図である。
【
図3】
図3(A)は、画像表示領域の輪郭の形状としての台形又は平行四辺形を、矩形(長方形及び正方形を含む)に変換する変形抑制補正前の画像表示の例を示す図、
図3(B)は、変形抑制補正後の画像表示の例を示す図、
図3(C)は、変形抑制補正機能を有するHUD装置の要部構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、前列3人掛けの車両における表示システムの一例を示す図である。
【
図5】
図5(A)、(B)は、
図4の表示システムにおける、基本的な表示制御例を示す図である。
【
図6】
図6(A)、(B)は、表示装置が動作を開始した際における、表示制御の一例を示す図である。
【
図7】
図7(A)、(B)は、表示装置が動作を開始した際における、表示制御の他の例を示す図である。
【
図8】
図8(A)、(B)は、表示装置が動作を開始した際における、表示制御のさらに他の例を示す図である。
【
図9】
図9(A)は、3台の表示装置の内の1台が、後部座席に着座している乗員に画像を表示するために使用される例を示す図、
図9(B)は、3台の表示装置の内の、運転者に近い位置にある2台が、共に運転者に画像を表示するために使用される例を示す図である。
【
図10】
図10(A)は、表示器装置(液晶表示装置等)を用いた表示システムの一例を示す図、
図10(B)は、HUD装置と表示器装置とを混在させた表示システムの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、補正パラメータを変更する場合に、補正パラメータ値を徐々に変化させる例を示す図である。
【
図12】
図12は、表示装置の要部構成例、及び表示システムの例を示す図である。
【
図13】
図13は、表示制御の手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に説明する最良の実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0048】
(第1の実施形態)
図1(A)は、前列2人掛けの車両に、運転者用及び助手席の乗員用の2台の表示装置(HUD装置)を配置したときの、乗員が存在する場合における各表示装置の表示光の進路の例を示す図、
図1(B)は、乗員が不在の場合における各表示装置の表示光の進路の例を示す図である。
【0049】
図1において、X方向は車両1の左右方向、Y方向は車両1の高さ方向、Z方向は車両1の前方(前後方向)を示す。図示されるように、車両1は、ステアリングホイール8が右側にある、前列2人掛けの乗用車である。
【0050】
車両1のウインドシールド2側の部分である前方部分において、2台の表示装置(ここではHUD装置)100a、100bが、車両1の幅方向(X方向)に沿って配置されている。運転席6に対応する位置(正対する位置)にHUD装置100aが配置され、助手席9に対応する位置にHUD装置100bが配置されている。
【0051】
各HUD装置100a、100bは、例えば、車両1の前方部分のダッシュボードの内部に設置することが可能である。なお、表示装置は、HUD装置に限定されるものではなく、液晶装置(例えばTFT液晶装置)や、自発光の表示装置である、マイクロLED表示装置等の表示器装置を使用してもよい(表示器装置を使用する例は、
図10を参照して後述する)。
【0052】
図1(A)では、運転席6には運転者7が着座しており、助手席9には乗員(同乗者)10が着座している。後部座席11には、乗員は不在である。
【0053】
また、運転者7が存在(着座)していること、及び、乗員10が存在(着座)していること、後部座席11には乗員が不在であることは、例えば、カメラ200による撮像画像を画像解析することで判定可能である。
【0054】
HUD装置100a、100bは、ウインドシールド2に画像の表示光を投影し、運転者7、乗員10に画像(虚像)を視認させる。HUD装置100aは、運転者7を主たる視認者とし、乗員10を従たる視認者とする表示装置である。
【0055】
車両1のイグニションスイッチがオンされたということは、運転者7が必ず存在するということであり、よって、HUD装置100aは、常に、運転者7が画像を見ることを想定して、画像の歪みを抑制する補正(歪み補正)を実施し、補正後の画像を運転者7に視認させる。
【0056】
運転者7は、HUD装置100aの表示画像を正面から見る。言い換えれば、運転者7は、運転者7を主たる視認者とするHUD装置(表示装置)に、あるいは、その表示画像に正対する位置にある視認者ということができる。なお、正面、あるいは、正対の意味は、広義に解釈するものとし、多少の変動幅を含めて、正面とみなすことができる範囲、正対とみなすことができる範囲を定めてもよい。
【0057】
HUD装置100bは、乗員10を主たる視認者とし、運転者7を従たる視認者とする表示装置である。言い換えれば、HUD装置100bは、基本的には、乗員10が画像を見ることを想定して、画像の歪みを抑制する補正(歪み補正)を実施し、補正後の画像を
乗員10に視認させる。但し、HUD装置100bは、乗員10が不在のときは、運転者7(従たる視認者)が画像を見ることを想定した画像の歪み補正を実施することができる(
図1(B)参照)。
【0058】
HUD装置100a、100bは、歪み補正用の補正パラメータの変更機能を有する表示制御装置(プロセッサ:
図12の符号159、
図1では不図示)を内蔵する。表示制御装置の表示制御の例については、後述する。
【0059】
また、画像の歪み補正は、例えば、画像の表示に際して生じる歪みとは逆の特性の歪を、画像データに対して事前に与える「事前歪み補正処理(ワーピング補正処理)」、及び、画像の表示領域の輪郭を、長方形及び正方形を含む矩形とするとき、視認者が画像を見る角度に対応して、矩形が、台形又は平行四辺形に変形されて見える場合に、その台形又は平行四辺形を矩形に変換する、「変形抑制補正処理」、及び、3次元(3D)表示の場合の、3次元画像の歪みを補正する「3D画像の補正処理」の少なくとも1つを含んでもよい。
【0060】
図1(B)では、乗員(同乗者)10は不在であり、車内には運転者7のみが存在する。この状態では、HUD装置100bが表示する画像を視認できるのは運転者7であり、運転者7は、画像を斜めから見ることになる。
【0061】
仮に、その画像が、乗員10が見ることを想定した歪み補正後の画像のままであったとすると、運転者7には、その画像がかなり歪んで見える可能性が高く、違和感が生じる可能性がある。
【0062】
そこで、本実施形態では、
図1(B)のような場合は、補正パラメータを変更して(例えば、補正パラメータを切り替えて)、従たる視認者である運転者7に適した歪み補正を画像データに実施し、歪み補正された画像を運転者7に表示する(詳細については後述する)。これによって、違和感を軽減(抑制)することができる。
【0063】
なお、
図1の例では、後部座席11には乗員が不在であるが、後部座席11に少なくとも1人の乗員が存在し、その乗員が、車両1の前方(あるいは前方部分)に表示される画像を視認できる位置に着座している場合には、その乗員を、主たる視認者として、画像表示の対象とすることも可能である(この点については、
図9及び
図10を参照して後述する)。
【0064】
また、
図1の例では、表示装置を2台使用しているが、使用する表示装置の個数については、特に限定しない。例えば、
図4の例のように、HUD装置を3台使用することもできる。
【0065】
表示制御装置を内蔵する表示装置を複数台、使用することで、使い勝手がよく、運転者及び乗員の双方に対して、歪みの少ない画像を表示することが可能な、高性能な表示システムを実現することができる。
【0066】
次に、
図2を参照する。
図2では、歪み補正として、ワーピングを実施する場合について説明する。
【0067】
図2(A)は、ワーピング補正機能を備えるHUD装置の構成例を示す図、
図2(B)は、ワーピング補正処理の効果を示す図である。
【0068】
HUD装置100は、車両(広義に解釈可能とする)1に搭載される。HUD装置100は、表示部(例えば、光透過型のスクリーンや液晶表示装置等)101と、反射鏡(平面鏡)103と、表示光を投影する光学部材としての曲面ミラー(例えば凹面鏡であり、反射面は自由曲面である場合もある)105と、画像生成部150と、制御部160と、補正パラメータとしてのワーピングパラメータWPが記憶されている画像変換テーブル212を有するROM(記憶装置)210と、を有する。
【0069】
なお、制御部160は、表示制御装置(プロセッサ:
図12の符号159)に含まれる機能ブロックとして構築することができる。制御部160は、ROM210からワーピングパラメータWPを選択的に取り出すことができる。言い換えれば、制御部160は、車両1内における乗員の有無の情報や、乗員の配置の情報に基づいて、使用するワーピングパラメータWPを、適宜、変更する機能を有する。
【0070】
表示部101に表示された画像は、反射鏡103、曲面ミラー105を経て、被投影部材としてのウインドシールド2の投影可能領域5に投影される。なお、符号4は、画像の投影領域を示す。
【0071】
なお、HUD装置100では、曲面ミラーを複数設けてもよい。また、本実施形態のミラー(反射光学素子)に加えて、又は本実施形態のミラー(反射光学素子)の一部(又は全部)に代えて、レンズなどの屈折光学素子、回折光学素子などの機能性光学素子を含む構成を採用してもよい。
【0072】
画像の表示光の一部は、ウインドシールド2で反射されて、予め設定されたアイボックス(実際は立体であるが、説明の便宜上、
図2(A)では所定面積の矩形と描いている)EBの内部に(あるいはEB上に)位置する運転者等の視点(眼)Aに入射され、車両1の前方に結像することで、表示部101の表示面102に対応する仮想的な虚像表示面PS上に虚像Vが表示される。
【0073】
表示部101の画像は、曲面ミラー105の形状やウインドシールド2の形状等の影響を受けて歪む。言い換えれば、HUD装置100の光学系やウインドシールド2を含む光学部材によって歪みが生じる。その歪みを抑制するために、その歪みとは逆特性の歪みが事前に画像に与えられる(ワーピング処理、あるいはワーピング画像補正処理)。
【0074】
図2(B)には、ウインドシールド2を介して、運転者(
図1の符号7)が視認する虚像Vの一例が示されている。
図2(B)では、矩形の外形を有する虚像Vには、例えば縦に5個、横に5個、合計で25個の基準点(基準となる画素点あるいは座標点)GD(i,j)(ここで、i、jは共に1~5の値をとり得る変数)が設けられる。画像(原画像)における各基準点(各座標点)に対して、ワーピング処理による、虚像Vに生じる歪みとは逆特性の歪みが事前に与えられる。したがって、その事前に与えられる歪みと、現実に生じる歪みと、が相殺されて、理想的には、
図1(B)に示されるような湾曲のない虚像Vが表示される。なお、基準点GD(i,j)の数は、補間処理等によって適宜、増やすことができる。
【0075】
次に、
図3を参照する。
図3(A)は、画像表示領域の輪郭の形状としての台形又は平行四辺形を、矩形(長方形及び正方形を含む)に変換する変形抑制補正前の画像表示の例を示す図、
図3(B)は、変形抑制補正後の画像表示の例を示す図、
図3(C)は、変形抑制補正機能を有するHUD装置の要部構成例を示す図である。
【0076】
図3(A)、(B)では、運転者が、例えばフロント3人掛け(かつ右側にステアリングホイールがある)車両を運転する場合を想定する。また、
図3(A)、(B)では、
図2(A)の例と同様に、虚像表示面PSにおける虚像(画像)Vの表示領域の輪郭(外形)が、長方形及び正方形を含む矩形であるとする。なお、画像表示領域の輪郭を示す矩形は、
図3(A)、(B)では、太線の実線で示されている。
【0077】
図3(A)に示されるように、視認者としての運転者7が、運転席の正面位置(運転者に正対する位置)にある画像(図中、3つの白抜きの丸で示している)を見るときは、画像領域の輪郭G1は矩形(長方形)である。中央位置(中央の助手席の正面位置)の画像を見るときは、斜めからの視認になるため、画像表示領域の輪郭G2は、台形となる。なお、平行四辺形となる場合もあり得る。
【0078】
左端位置(左端の助手席の正面位置)の画像を見るときは、さらに斜めからの視認になるため、画像表示領域の輪郭G3は、より歪んだ台形となる。
【0079】
このように、画像を見る角度に対応して、矩形が、台形又は平行四辺形に変形されて見える。このままでは、視認者である運転者7が違和感をおぼえることになる。
【0080】
そこで、制御部160は、その台形(又は平行四辺形)を矩形に変換する、変形抑制補正を実施する。これによって、
図3(B)に示されるように、画像表示領域の輪郭G2、G3(点線で示される)は、各々、G2’、G3’(太線の実線で示される)に変換される。これによって、画像の歪みが低減され、運転者の違和感が抑制される。
【0081】
図3(C)の構成は、
図2(A)の右下に示した構成と同様である。但し、
図3(C)の場合、ROM(記憶装置)210の画像変換テーブル212には、変形抑制補正用の変換パラメータ(言い換えれば、台形や平行四辺形を矩形に変換する補正用の変換パラメータJMが記憶されている。
【0082】
変換パラメータJMは、例えば、台形を矩形に変換する射影変換行列の内容を定めるパラメータ、あるいは、平行四辺形を矩形に変換する射影変換(アフィン変換)行列の内容を定めるパラメータである。
【0083】
制御部160は、適宜、ROM210から変換パラメータを取り出して、変形抑制補正処理を実施することができる。言い換えれば、制御部160は、変換パラメータを、適宜、変更する機能を有している。
【0084】
また、
図2で説明したワーピング補正処理、及び
図3で説明した変形抑制補正処理は、両目視差を用いて3D(3次元)表示を行う場合にも適用可能である。この場合は、視認者(運転者)の、左右の各目用の画像の各々について、上記の歪み補正処理を実施することで、3D画像の歪みを低減することができる。
【0085】
なお、
図2で説明したワーピング補正処理、及び
図3で説明した変形抑制補正処理を併用することも可能である。この場合は、例えば、画像データに変形抑制補正処理を実施し、その後に、ワーピング補正処理を実施するのが好ましい。
【0086】
(第2の実施形態)
次に、
図4を参照する。
図4は、前列3人掛けの車両における表示システムの一例を示す図である。なお、
図4の例では、ステアリングホイール8は、車内の左側に位置している。
【0087】
図4において、車両1のウインドシールド2側の部分である前方部分において、3台の表示装置(ここではHUD装置)110a、110b、110cが、車両1の幅方向(X方向)に沿って配置されている。
【0088】
運転席16に対応する位置(正対する位置)にHUD装置110aが配置され、その隣りの助手席(中央の助手席)18に対応する位置にHUD装置110bが配置され、その隣りの助手席(右端の助手席)20に対応する位置にHUD装置110cが配置されている。
【0089】
運転席16には運転者15が着座しており、助手席18には乗員(同乗者)17が着座しており、助手席20には乗員(同乗者)19が着座している。後部座席21には、乗員は不在である。また、運転者15が存在(着座)していること、及び、乗員17、19が存在(着座)していること、後部座席21には乗員が不在であることは、例えば、カメラ200による撮像画像を画像解析することで判定可能である。
【0090】
HUD装置110a~110cの各々は、ウインドシールド2に画像の表示光を投影し、運転者15、乗員17、19に画像(虚像)を視認させる。
【0091】
HUD装置110aは、運転者15を主たる視認者とし、乗員17、19を従たる視認者とする表示装置である。但し、
図1の例と同様に、運転者15は必ず存在するため、HUD装置110aは、常に、運転者15が画像を見ることを想定して、画像の歪み補正を実施し、その補正後の画像を運転者15に表示する。
【0092】
HUD装置110bは、乗員17を主たる視認者とし、運転者15を従たる視認者とする表示装置である。HUD装置110cは、乗員19を主たる視認者とし、運転者15を従たる視認者とする表示装置である。
【0093】
各HUD装置110a~110c(の表示制御装置の制御部160)には、事前に、各HUD装置の主たる視認者を特定可能な情報が入力、設定されている。
【0094】
例えば、3台の表示装置110a~110cの内の、運転者15に対応する位置に設置される表示装置110aについては、初期設定画面で、例えば「1」を入力とすると、運転者15が主たる視認者であることが設定される。
【0095】
同様に、中央の助手席18に対応する位置に配置されている表示装置110bについては、初期設定画面で、例えば「2」を入力すると、前列の、運転席16の隣に位置する(言い換えれば、中央の助手席18に着座する)乗員17が主たる視認者であることが設定される。同様に、表示装置110cについては、初期設定画面で「3」を入力することで、主たる視認者が、前列の、右端の助手席20に着座する乗員19であることが設定される。
【0096】
このようにして、設定をすべての表示装置に行った後、各表示装置110a~110cに、乗員の有無情報、及び乗員の配置情報の少なくとも一方を並列的に入力すれば、各表示装置110a~110cの制御部160が、補正パラメータの変更の有無を判定し、自動的に、補正パラメータが最適化される。よって、使い勝手がよく、運転者及び乗員の双方に対して、歪みの少ない画像を表示することが可能な、高性能な表示システムを実現することができる。
【0097】
次に、
図5を参照する。
図5(A)、(B)は、
図4の表示システムにおける、基本的な表示制御例を示す図である。
図5は、
図4における表示装置、運転者及び乗員(同乗者)の各配置に対応して描かれている。また、
図5(A)、(B)の例では、画像の歪み補正として、ワーピング補正を行うことを想定している。以上の点は、
図6~
図8においても同様である。
【0098】
図5(A)、(B)では、手前側に運転者15用のアイボックスEB10、乗員17、19用のアイボックスEB20、EB30が設定されている。車両1の前方には、虚像表示面PSに設定される画像表示領域G10、G11、G12が示されている。なお、図中の矢印は、運転者15、及び乗員(同乗者)17、19の各々の視線方向を示している。
【0099】
図5(A)の例では、運転者15、及び乗員(同乗者)17、19は存在している。よって、各表示装置(HUD装置)110a~110cにおいて、画像の歪み補正に使用される補正パラメータは、各表示装置の主たる視認者(言い換えれば、各表示装置に正対して着座している運転者15、乗員(同乗者)17、19の各々に歪みの少ない画像を表示可能なものである。
【0100】
ここで、主たる視認者が画像を見ることを想定して特定される補正パラメータを、ここでは、主パラメータ(メインパラメータ:
図5(A)、(B)において、「M-wp」と表記)と称する。なお、本明細書では、「M-wp」を、「補正パラメータの第1の値」と称する場合がある。
【0101】
また、主たる視認者である乗員(同乗者)が不在のときに、従たる視認者としての運転者が画像を見ることを想定して特定される補正パラメータを副パラメータ(サブパラメータ:
図5(B)において、「S-wp」と表記)と称する。なお、本明細書では、「S-wp」を、「補正パラメータの第2の値」と称する場合がある。
【0102】
図5(B)では、中央の助手席には、乗員(同乗者)17が不在である。これに伴い、
図5(B)の例では、車両1の中央に配置されている表示装置(HUD装置)110bにおいては、画像の歪み補正の際に、副パラメータ(サブパラメータ:S-wp)を使用している。
【0103】
次に、
図6を参照する。
図6(A)、(B)は、表示装置が動作を開始した際における、表示制御の一例を示す図である。
【0104】
図6(A)では、車両1のイグニションスイッチ(IGN)がオンされ、各表示装置(HUD装置)110a~110cの動作が開始されると、各表示装置110a~110c(の表示制御装置の表示部160)は、補正パラメータの値が決定される前は画像を非表示としている。
【0105】
図6(B)では、乗員の有無や乗員の配置等が検出されて、その結果に基づいて補正パラメータの値が決定された後に、各表示装置110a~110c(の制御部160)は、画像を表示させている。
図6(B)の各画像の表示に使用される補正パラメータは、
図5(B)の例と同じである。
【0106】
このように、適用する補正パラメータが決定された後に画像を表示することで、例えば、画像を表示した後に補正パラメータを変更した場合と比べて、表示の歪みによる視認者の違和感を低減することができる。
【0107】
次に、
図7を参照する。
図7(A)、(B)は、表示装置が動作を開始した際における、表示制御の他の例を示す図である。
【0108】
図7(A)では、車両1のイグニションスイッチ(IGN)がオンされ、各表示装置(HUD装置)110a~110cの動作が開始されると、運転者15を主たる視認者としている表示装置(HUD装置)110aの制御部160は、運転者15に適した補正パラメータ(主パラメータM-wp)を用いて画像データを補正して画像表示を開始する。
【0109】
一方、乗員(同乗者)17、19を主たる視認者とする表示装置110b、110cの制御部160は、補正パラメータの決定がされるまで、画像を非表示としている。
【0110】
図7(B)では、表示装置110b、110cの制御部160は、乗員の有無や配置等が検出され、補正パラメータが決定された後、その決定された補正パラメータを用いて補正された画像を表示している。
図7(B)の各画像の表示に使用される補正パラメータは、
図5(B)、
図6(B)の例と同じである。
【0111】
このように、運転者が主たる視認者である表示装置については、直ちに画像の表示を開始することで、例えば車両の運転に有用な情報を遅延なく提示すること等が可能である。一方、乗員が主たる視認者である表示装置については、その乗員の有無等が確認されて補正パラメータの値が決定された後に表示を開示することで、歪みの少ない画像の表示が可能である。
【0112】
次に、
図8を参照する。
図8(A)、(B)は、表示装置が動作を開始した際における、表示制御のさらに他の例を示す図である。
【0113】
図8(A)では、車両1のイグニションスイッチ(IGN)がオンされ、各表示装置(HUD装置)110a~110cの動作が開始されると、運転者15を主たる視認者とする表示装置110aの制御部160は、運転者15に適した補正パラメータ(主パラメータMーwp:補正パラメータの第1の値)を用いて画像データを補正して画像表示を開始する。
【0114】
また、乗員17、19を主たる視認者とする表示装置110b、110cの制御部160も、まず、乗員(同乗者)17、19に適した補正パラメータ(主パラメータMーwp:補正パラメータの第1の値)を用いて画像データを補正して画像表示を開始する。
【0115】
図8(B)では、乗員17、19を主たる視認者とする表示装置110b、110cの制御部160は、上記の表示を行わせながら、乗員の有無や乗員の配置情報等に基づいて補正パラメータの変更の要否を判定し、変更要であれば補正パラメータの値を変更し、その変更後の補正パラメータを用いて画像データの補正を実行して画像を表示する。
【0116】
図8(B)では、中央の助手席の乗員(同乗者)17は不在であるため、表示装置110bについては、補正パラメータが、M-wp(補正パラメータの第1の値)から、S-wp(補正パラメータの第2の値)に変更される。
図8(B)の各画像の表示に使用される補正パラメータは、
図5(B)、
図6(B)、
図7(B)の例と同じである。
【0117】
図8の表示制御を採用する場合には、乗員を主たる視認者とする場合においても、補正パラメータの値の決定を待つことなく、素早く画像を表示させることができ、画像表示の遅延を抑制することができる。
【0118】
(第3の実施形態)
図9を参照する。
図9(A)は、3台の表示装置の内の1台が、後部座席に着座している乗員に画像を表示するために使用される例を示す図、
図9(B)は、3台の表示装置の内の、運転者に近い位置にある2台が、共に運転者に画像を表示するために使用される例を示す図である。
図9(A)、(B)において、
図1と共通する部分には同じ符号を付している。
【0119】
図1では、前列2人掛けの乗用車において、2台の表示装置(ここではHUD装置)100a、100bを配置していたが、
図9の例では、さらに、運転席6と補助席9との間において、表示装置100dを追加している。
【0120】
前掲の実施形態では、説明の便宜上、主たる視認者を、車両1の前列に着座する運転者、乗員(同乗者)としていたが、
図9(A)の例では、表示装置100dが、後部座席11の例えば中央位置(より広義には、表示装置100dによる表示を見ることができる位置)に着座している乗員(同乗者)22を主たる視認者として、画像を表示している。
【0121】
言い換えれば、乗員を主たる視認者とする場合において、その乗員は、車両1の前列の助手席に着座する乗員であってもよく、車両1の後列の座席(後部座席)に着座する乗員であってもよい。
【0122】
主たる視認者としての乗員に、後部座席に着座する乗員も含めるのは、その乗員に対しても、例えばナビゲーション用情報や、機器操作情報や娯楽情報等を提供する場合もあり得るからである。
【0123】
その乗員(
図9(A)の乗員22)の前方において、好ましくは、その乗員に正対する位置(但し、正対という用語は広く解釈し、厳密な正面以外の位置も含む)において、ダッシュボード内部やダッシュボードの表面等に表示装置100dが設置される。
【0124】
図9(B)では、後部座席に着座する乗員22が不在である。この場合には、表示装置100dが表示する画像は、運転者7が見るのに適するように、補正パラメータが変更される。これによって、画像の歪みが低減され、運転者7の違和感が抑制される。
【0125】
なお、
図9(B)において、前列の助手席9の乗員10も不在のときは、表示装置100bが表示する画像は、運転者7が見ることになる。よって、表示装置100bが表示する画像は、運転者7が見るのに適するように、補正パラメータが変更される。これによって、画像の歪みが低減され、運転者7の違和感が抑制される。
【0126】
(第4の実施形態)
図10を参照する。
図10(A)は、表示器装置(液晶表示装置等)を用いた表示システムの一例を示す図、
図10(B)は、HUD装置と表示器装置とを混在させた表示システムの一例を示す図である。
【0127】
先に説明したように、表示装置としては、HUD装置の他、表示パネルとしての表示部に実像の画像を表示し、運転者及び乗員の少なくとも一方に、その実像の画像を視認させる表示器装置を使用することができる。表示器装置としては、液晶装置(例えばTFT液晶装置)や、自発光の表示装置である、マイクロLED表示装置等を使用してもよい。本発明を表示器装置に適用することで、運転者、乗員の双方に歪みの少ない画像を表示可能な、高性能な表示器装置を実現することができる。
【0128】
図10(A)では、先に説明した
図9(A)の構成における、HUD装置100a、100d、100bを、表示器装置300a、300b、300cに置換している。
【0129】
図10(B)では、
図10(A)における表示器装置100aを、HUD装置100aに置換することで、ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置と表示器装置とが混在する表示システムを構築している。
【0130】
このように、本発明では、HUD装置のみ、表示器装置のみ、あるいは、HUD装置と表示器装置の組み合わせ、によって表示システムを自由に構築することができる。よって、使い勝手のよい表示システムを構築することができる。
【0131】
(第5の実施形態)
次に、
図11を参照する。
図11は、補正パラメータを変更する場合に、補正パラメータ値を徐々に変化させる例を示す図である。
【0132】
表示装置の制御部160は、画像の表示中において、補正パラメータの値を変更するとき、変更前の値から変更後の値へと徐々に変化させてもよい。補正パラメータの変更が必要となった場合に、徐々にその値を変更することで、画像の見え方が急峻に変化することが抑制され、よって、運転者や乗員に与える違和感を低減することができる。
【0133】
図11において、補正パラメータの値は、第1の値N1から、第2の値N2へと、時刻t1~時刻t2の期間にわたって徐々に変化する。特性線Q1は、線形の変化を示している。
【0134】
特性線Q2は、時刻t1付近では変化は緩やかであり、よって、画像の見た目の急峻な変化を抑制することができる。時刻t2に近づくにつれて変化が急になることから、補正パラメータ値の切り替えの遅延を抑制することができる。
【0135】
特性線Q3では、時刻t1付近、及び、時刻t2付近での変化が緩やかであり、画像の見た目の急峻な変化が抑制される。一方、時刻t1付近や時刻t2付近以外では、変化が急となっていて、これによって、補正パラメータ値の切り替えの遅延を抑制することができる。
【0136】
(第6の実施形態)
次に、
図12を参照する。
図12は、表示装置の要部構成例、及び表示システムの例を示す図である。表示装置の要部構成については、先に
図2、
図3においても示したが、
図12では、より詳細な構成を記載している。また、
図12の例では、表示装置として、3台のHUD装置を用いている。また、
図12の例では、ワーピング補正、変形抑制補正の何れにも対応できる構成を示している。
【0137】
図12において、表示システムは、通信部110と、ECU(電子制御ユニット)120と、車内撮像カメラ200と、乗員(あるいは運転者を含む搭乗者)を検出する乗員(搭乗者)検出部130と、第1~第3のHUD装置100a、100b、100cを有している。各HUD装置は、同じ構成を有する。以下、第3のHUD装置100cの要部構成について説明する。
【0138】
第3のHUD装置100cは、表示部101と、表示制御部145と、画像生成部150(画像データ補正部155を含む)と、少なくとも1つのプロセッサ(表示制御装置)159(制御部160を含み、この制御部160は、射影変換補正制御部161と、ワーピング補正制御部163を有する)と、ナビゲーションデータや表示画像データ等が格納されているデータベース170と、記憶装置としてのROM210と、を有する。
【0139】
ROM210は、画像変換テーブル212を有する。画像変換テーブル212は、射影変換行列JMを有する。射影変換行列JMには、主変換パラメータM-jm、副変換パラメータS-jmが含まれる。
【0140】
また、画像変換テーブル212は、ワーピングパラメータWPを有する。ワーピングパラメータWPには、主ワーピングパラメータ(第1の値)M-wp、副ワーピングパラメータ(第2の値)S-wpが含まれる。
【0141】
プロセッサ(表示制御装置)159(の制御部160)は、射影変換の変換パラメータ及びワーピングパラメータを、適宜、変更する機能をもつ。画像データ補正部155は、運転者、又は乗員から見た画像の歪を抑制するように、補正パラメータ(変換パラメータ、及びワーピングパラメータの少なくとも1つ)を用いて、表示画像の画像データを補正する。表示部101は、補正された画像データに基く画像を表示する。
【0142】
この構成によれば、乗員(同乗者)が不在の場合には、斜めから画像を見る運転者に適した歪み補正がなされた画像を表示部101に表示することができ、違和感を軽減することができる。これにより、運転者、乗員の双方に歪みの少ない画像を表示可能な、高性能な表示装置、及び表示システムを実現できる。
【0143】
(第7の実施形態)
次に、
図13を参照する。
図13は、表示制御の手順例を示すフローチャートである。
【0144】
ステップS1では、乗員(あるいは運転者を含む搭乗者)の有無や配置を検出する。
【0145】
ステップS2では、その検出結果(乗員の有無、及び配置の少なくとも一方)に基づいて、各表示コンテンツの画像補正パラメータ(射影変換パラメータ、ワーピングパラメータ等)を決定し、変更が必要である場合は、パラメータを変更する(パラメータ決定、変更処理)。
【0146】
ステップS3では、各表示コンテンツの画像データを、決定後(あるいは変更後)の画像補正パラメータを用いて補正する(画像データ補正処理)。
【0147】
ステップS4では、HUD装置による虚像の表示、及び、ディスプレイ(TFT液晶、マイクロLED等)による実像の表示の少なくとも一方を実行する(画像表示処理)。
【0148】
以上説明したように、本発明によれば、表示装置の主たる視認者である乗員が不在である場合においても、画像の歪みが低減され、例えば、その画像を見る運転者の違和感が抑制される。
【0149】
本発明は、左右の各眼に同じ画像の表示光を入射させる単眼式、左右の各眼に、視差をもつ画像を入射させる視差式のいずれのHUD装置においても使用可能である。
【0150】
また、表示器装置としては、液晶表示装置やマイクロLED装置、その他の種々のディスプレイ装置を使用することができる。
【0151】
また、本明細書において、車両という用語は、広義に、乗り物としても解釈し得るものである。また、ナビゲーションに関する用語(例えば標識等)についても、例えば、車両の運行に役立つ広義のナビゲーション情報という観点等も考慮し、広義に解釈するものとする。また、HUD装置には、シミュレータ(例えば、航空機のシミュレータやゲーム装置としてのシミュレータ等)として使用されるものも含まれるものとする。
【0152】
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0153】
1・・・車両(自車両)、2・・・被投影部材(反射透光部材、ウインドシールド等)、
6・・・運転席、7・・・運転者、8・・・ステアリングホイール、9・・・助手席、
10・・・乗員、11・・・後部座席、100・・・HUD装置(広義には表示装置)、101・・・表示部(液晶パネル等)、102・・・表示部の画像表示面、110・・・通信部、120・・・ECU(電子制御ユニット)、130・・・乗員(搭乗者)検出部、145・・・表示制御部、150・・・画像生成部、155・・・画像データ補正部、
159・・・プロセッサ(表示制御装置)、160・・・制御部、161・・・射影変換補正制御部、163・・・ワーピング補正制御部、170・・・データベース、210・・・記憶装置(ROM)、200・・・車内撮像カメラ、212・・・画像変換テーブル、300・・・表示器装置、JM・・・射影変換行列、M-jm・・・主変換パラメータ(第1の値)、S-jm・・・副変換パラメータ(第2の値)、WP・・・ワーピングパラメータ、M-wp・・・主ワーピングパラメータ(第1の値)、S-wp・・・副ワーピングパラメータ(第2の値)