(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
E04B 7/02 20060101AFI20250212BHJP
E04F 19/00 20060101ALI20250212BHJP
E04H 3/02 20060101ALN20250212BHJP
【FI】
E04B7/02 521Z
E04F19/00 D
E04H3/02 C
E04H3/02 B
(21)【出願番号】P 2021012252
(22)【出願日】2021-01-28
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187908
【氏名又は名称】山本 康平
(72)【発明者】
【氏名】仲野 成彦
(72)【発明者】
【氏名】市川 慎太郎
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-323666(JP,A)
【文献】特開平08-193403(JP,A)
【文献】特開2017-020209(JP,A)
【文献】特開2001-132101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/02,1/12
E04H 3/02
E04F 19/00
E04B 7/00-7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物であって、
屋内空間が形成された建物本体と、
前記建物本体の外周から外側に延び、外部空間を上方から覆う屋根と、
前記屋根を下方から支持する複数の柱と、を備え、
前記複数の柱は、第1柱と、前記第1柱よりも短い第2柱と、を含み、
前記第1柱は、前記屋根を支持する第1本体柱と、前記第1本体柱を取り囲む第1化粧材と、を有し、
前記第2柱は、前記屋根を支持すると共に前記第1本体柱よりも断面積が小さい第2本体柱と、前記第2本体柱を取り囲むと共に前記第1化粧材と同じ外形サイズを有する第2化粧材と、を有し、
前記屋根は、屋根面に沿って高さが変化する傾斜屋根であり、
前記第1柱は、前記屋根のうち第1高さ部分を支持し、
前記第2柱は、前記屋根のうち前記第1高さ部分よりも低い第2高さ部分を支持し、
前記第1柱及び前記第2柱は、平面視において前記傾斜屋根の傾斜方向に沿った方向の寸法よりも前記傾斜方向と直交する方向の寸法が大きな扁平の断面形状を有する、建物。
【請求項2】
前記傾斜屋根は、前記第1本体柱の上端及び前記第2本体柱の上端に取り付けられた傾斜梁と、前記傾斜梁と直交する方向に延びる複数の母屋と、を有する、請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記第1柱は、前記第1本体柱に対して前記傾斜方向と直交する方向に並ぶとともに前記第1化粧材に取り囲まれた第1化粧柱を有し、
前記第2柱は、前記第2本体柱に対して前記傾斜方向と直交する方向に並ぶとともに前記第2化粧材に取り囲まれた第2化粧柱を有し、
前記第1化粧柱の上端及び前記第2化粧柱の上端は、前記複数の母屋のうちの異なる母屋にそれぞれ取り付けられている、請求項2に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、ガレージや玄関ポーチ等の屋外空間を上方から覆う屋根が設けられた建物が知られている。
【0003】
特許文献1には、玄関ポーチと、当該玄関ポーチに隣接する玄関ピロティ及びガレージとが設けられた住宅建物が記載されている。この建物には、玄関ポーチ、玄関ピロティ及びガレージを上方から覆う下屋根が設けられており、当該下屋根は水平方向に対して傾斜している。この下屋根は、玄関ポーチと玄関ピロティ前半部とガレージ前半部との各境界部分に設けられた柱壁により下方から支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の下屋根(傾斜屋根)を支持する柱には、相対的に高い位置で屋根を支持する長柱と、相対的に低い位置で屋根を支持する短柱とがある。本発明者らは、短柱に加わる負荷が長柱に加わる負荷に比べて小さいため、要求される耐久性が長柱に比べて低いことに着目した。長柱と短柱の断面積を同じにすると、短柱の耐久性が過剰になり、柱材の無駄が生じることになる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、柱材の無駄を抑えつつ屋根を支持することが可能な建物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る建物は、屋内空間が形成された建物本体と、前記建物本体の外周から外側に延び、外部空間を上方から覆う屋根と、前記屋根を下方から支持する複数の柱と、を備える。前記複数の柱は、第1柱と、前記第1柱よりも短い第2柱と、を含む。前記第1柱は、前記屋根を支持する第1本体柱と、前記第1本体柱を取り囲む第1化粧材と、を有する。前記第2柱は、前記屋根を支持すると共に前記第1本体柱よりも断面積が小さい第2本体柱と、前記第2本体柱を取り囲むと共に前記第1化粧材と同じ外形サイズを有する第2化粧材と、を有し、前記屋根は、屋根面に沿って高さが変化する傾斜屋根であり、前記第1柱は、前記屋根のうち第1高さ部分を支持し、前記第2柱は、前記屋根のうち前記第1高さ部分よりも低い第2高さ部分を支持し、前記第1柱及び前記第2柱は、平面視において前記傾斜屋根の傾斜方向に沿った方向の寸法よりも前記傾斜方向と直交する方向の寸法が大きな扁平の断面形状を有する。
【0008】
上記建物では、屋根を支持する複数の柱のうち、相対的に短い第2本体柱の断面積が相対的に長い第1本体柱の断面積に比べて小さくなっている。短い柱では、長い柱に比べて、屋根を支持するために必要な耐久力が小さく、必要な断面積も小さくなる。このため、上記建物によれば、第1本体柱及び第2本体柱の断面積が同じである建物に比べて、柱材の無駄を抑えつつ屋根を支持することが可能になる。しかも、第1化粧材と第2化粧材の外形サイズが同じであるため、第1本体柱及び第2本体柱の断面積が異なっていても柱の外観上の統一を図ることができる。
【0009】
上記建物において、前記屋根は、屋根面に沿って高さが変化する傾斜屋根であってもよい。前記第1柱は、前記屋根のうち第1高さ部分を支持していてもよい。前記第2柱は、前記屋根のうち前記第1高さ部分よりも低い第2高さ部分を支持していてもよい。
【0010】
上記建物において、前記複数の柱は、一方向に長い断面を有する扁平柱を含んでいてもよい。前記扁平柱は、長手方向が前記建物の内外方向を向くように設けられていてもよい。
【0011】
この構成によれば、短手方向が建物の内外方向を向くように扁平柱が設けられる場合に比べて柱間の開放面積が広くなり、また外部からの軒下空間の遮蔽効果も得られる。
【0012】
上記建物において、前記扁平柱は、前記建物の南側の外周部に設けられていてもよい。
【0013】
この構成によれば、建物本体への西日の差し込みを南側の扁平柱により防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、柱材の無駄を抑えつつ屋根を支持することが可能な建物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る建物の構造を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1中の矢印IIに示す方向から見た立面図である。
【
図3】
図1中の矢印IIIに示す方向から見た立面図である。
【
図4】
図1中の線分IV-IVに沿う断面図である。
【
図5】第1柱の内部構造を模式的に示す断面図である。
【
図6】第2柱の内部構造を模式的に示す断面図である。
【
図7】南側柱の内部構造を模式的に示す断面図である。
【
図8】第1柱と屋根との接合構造を模式的に示す図である。
【
図9】第1本体柱と基礎との接合構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
【0017】
本実施形態に係る建物1は、木造1階建で数十メートル規模の大型公共施設であり、屋内空間が形成された建物本体10を備える。
図1に示すように、当該屋内空間は、間仕切壁によって互いに仕切られた複数のエリア、例えば各種店舗エリアIS1~IS7,IS11、イートインエリアIS8、電気設備エリアIS9及び通路エリアIS10などを含む。なお、図示は省略するが、建物本体10と同じ敷地内に建てられた別の建物内には、宿泊エリアや入浴エリアなども設けられている。
【0018】
建物本体10は、東側を向く東側外壁11と、西側を向く西側外壁12と、南側を向く南側外壁13と、北側を向く北側外壁14とを含む。これらの外壁によって、建物本体10の外周部が構成されている。
【0019】
図1に示すように、店舗エリアIS1~IS3は南側外壁13に臨むように設けられており、店舗エリアIS4~IS6,IS11は西側外壁12に臨むように設けられている。
図2に示すように、西側外壁12には、店舗エリアIS4~IS6内を視認するための複数の窓部12Aが水平方向に並んで設けられている。同様に、
図3に示すように、南側外壁13には、店舗エリアIS1~IS3内を視認するための複数の窓部13Aが水平方向に並んで設けられている。
【0020】
本実施形態に係る建物1では、西側外壁12に沿って延びる西側軒下空間OS1(外部空間)と、南側外壁13に沿って延びる南側軒下空間OS2(外部空間)とが設けられている(
図1中の斜線部)。
図1に示すように、西側軒下空間OS1は南北方向に長い平面視長方形の空間であり、例えばテーブルや椅子などを設置してフードコートとして利用される。南側軒下空間OS2は、東西方向に長い平面視長方形の空間であり、西側軒下空間OS1と連続して設けられている。南側軒下空間OS2には、階段80Aが設けられている。西側軒下空間OS1及び南側軒下空間OS2は、いずれも建物本体10の外壁によって屋内空間に対して仕切られており、建物1の外部空間に開放されている。
【0021】
なお、西側軒下空間OS1及び南側軒下空間OS2のうち一方の空間が省略されてもよい。また建物1の北側及び東側にも軒下空間が設けられてもよい。
【0022】
建物1は、建物本体10の外周(西側外壁12及び南側外壁13の外面)から外側(
図2及び
図3における紙面手前方向)に延びる屋根20を備える。この屋根20によって、西側軒下空間OS1及び南側軒下空間OS2が上方から覆われている。本実施形態における屋根20は、
図1中の矢印IIの方向から見て、屋根面に沿って高さが変化する傾斜屋根であり、水平面に対して所定の角度で傾斜している(
図2)。一方、本実施形態における屋根20は、
図1中の矢印IIIの方向から見て、軒先母屋24が水平に延びている。すなわち、軒先母屋24の高さ位置は、水平方向において一定となっている。
【0023】
建物1は、屋根20を下方から支持する複数の西側柱30及び複数の南側柱90を備える。
図1に示すように、西側柱30は、建物1の西側(
図1中の左側)の外周部に配置されており、南側柱90は、建物1の南側(
図1中の南側)の外周部に配置されている。すなわち、屋根20の西側の縁部が西側柱30によって支持され、屋根20の南側の縁部(軒先母屋24)が南側柱90によって支持される。西側柱30及び南側柱90は、互いに等間隔を空けて一列に配置されている。
【0024】
図2に示すように、複数の西側柱30は、第1柱31と、当該第1柱31よりも短い第2柱32とを含む。第1柱31は、屋根20のうち第1高さ部分21A(本実施形態では屋根20の頂部)を支持する。一方、第2柱32は、屋根20のうち第1高さ部分21Aよりも低い第2高さ部分22Aを支持する。
【0025】
屋根20から西側柱30に加わる荷重は、西側柱30の長さに応じて増加する。第1柱31は、屋根20から受ける荷重が所定の閾値を超える長さとなっており、第2柱32は屋根20から受ける荷重が当該所定の閾値を超えない長さとなっている。
【0026】
図3に示すように、
図1中の矢印IIIの方向から見て、地面G1には段差ST1が形成されており、建物1は当該段差ST1に跨るように建てられている。階段80A(
図1)は、この段差ST1に対応して設けられている。
図1中の矢印IIIの方向から見て、屋根20の軒先母屋24は、水平方向において一定の高さを維持しつつ延びており、南側柱90により下方から支持されている。このため、段差ST1の一方側と他方側とで南側柱90の高さが異なっている。すなわち、低地側の地面G1には相対的に長い南側柱90が配置されており、一方で高地側の地面G1には相対的に短い南側柱90が配置されている。
【0027】
図4は、
図1中の線分IV-IVに沿った断面図である。
図4中、符号L1が付された一点鎖線は、段差ST1を境界として低地側の地面G1の高さ(グランドレベル)を示している。符号L2が付された一点鎖線は、段差ST1を境界として高地側の地面G1のグランドレベルを示している。符号L3が付された一点鎖線は、建物本体10(
図1)における床面のレベルを示している。
【0028】
図4に示すように、基礎80は、地中に埋設されたT字状の基礎スラブ81と、当該基礎スラブ81の上端同士を接続する水平な土間コンクリート82とを含む。符号L3が付された一点鎖線のように、床面のレベルは、基礎スラブ81の上端レベルと略一致している。床面上には、建物本体10(
図1)を構成する複数の柱30Aが水平方向に間隔を空けて配置されている。また床面のうち段差ST1に相当する部分には、間仕切壁30Bが設けられている。
【0029】
建物本体10の1階の天井梁25は、段差ST1に跨って水平方向に延びている。天井梁25は、段差ST1の両側において高さが一定に維持されるように、基礎80及び柱30Aによって下方から支持されている。すなわち、段差ST1の一方側と他方側とで天井梁25の高さは同じである。このため、段差ST1を基準として低地側(
図4中の右側)では、建物本体10内の1階屋内空間の階高さが相対的に大きくなっており、段差ST1を基準として高地側(
図4中の左側)では1階屋内空間の階高さが相対的に小さくなっている。
【0030】
図5は、第1柱31を長さ方向に対して垂直に切断して得られる断面図である。
図5に示すように、本実施形態における第1柱31は、一方向に長い断面(長方形の断面)を有する扁平柱である。第1柱31は、屋根20を下方から支持する第1本体柱41と、当該第1本体柱41の両側に各々配置された2本の第1化粧柱42,43と、これらの柱を取り囲む第1化粧材44とを含む。
【0031】
本実施形態における第1本体柱41及び第1化粧柱42,43は、いずれも正方形断面の木柱であり、第1本体柱41の断面積が第1化粧柱42,43の断面積よりも大きくなっている。第1本体柱41及び第1化粧柱42,43は、第1柱31の長さ方向において等間隔を空けて一列に並んでいる。
【0032】
第1化粧材44は、長方形状の外形を有するカバー材であり、本実施形態では複数の部材に分割されている。具体的には、第1化粧材44は、第1柱31の長辺部分を構成するメインカバー部と、L字形状の4つのコーナーカバー部とを含む。なお、第1本体柱41及び第1化粧柱42,43のうち、屋根20を支持する構造材として主に機能するのは第1本体柱41である。このため、第1化粧柱42,43は省略されてもよい。
【0033】
図6は、第2柱32を長さ方向に対して垂直に切断して得られる断面図であり、
図4に対応するものである。
図6に示すように、本実施形態における第2柱32は、第1柱31と同様に一方向に長い断面(長方形の断面)を有する扁平柱であり、断面サイズが第1柱31と同じである。
図6に示すように、第2柱32は、屋根20を下方から支持する第2本体柱51と、当該第2本体柱51の両側に各々配置された2本の第2化粧柱52,53と、これらの柱を取り囲む第2化粧材54とを含む。第2化粧材54は、第1化粧材44と同様に、複数の部材に分割されている。なお、第1柱31の場合と同様、第2本体柱51及び第2化粧柱52,53のうち、屋根20を支持する構造材として主に機能するのは第2本体柱51である。このため、第2化粧柱52,53は省略されてもよい。
【0034】
第2本体柱51及び第2化粧柱52,53は、いずれも正方形断面の木柱である。第2本体柱51及び第2化粧柱52,53は、第2柱32の長さ方向において等間隔を空けて一列に並んでいる。
図5及び
図6に示すように、第2本体柱51の断面積は第1本体柱41の断面積よりも小さくなっており、且つ第2化粧材54の外形サイズは第1化粧材44の外形サイズと同じになっている。このため、第1柱31と第2柱32は、内部に配置された本体柱の断面サイズが互いに異なるものの、外観上の統一性が図られている。
【0035】
図7は、南側柱90を長さ方向に対して垂直に切断して得られる断面図である。
図7に示すように、南側柱90は、西側柱30と同様に、一方向に長い断面(長方形の断面)を有する扁平柱である。南側柱90は、屋根20の軒先母屋24(
図3)を下方から支持する2本の内柱91,92と、当該内柱91,92を取り囲む化粧材93とを含む。
【0036】
内柱91,92は、いずれも正方形断面の木柱であり、断面積は同じである。内柱91,92は、南側柱90の長さ方向に間隔を空けて一列に並んでいる。
【0037】
化粧材93は、長方形状の外形を有するカバー材であり、複数の部材に分割されている。具体的には、化粧材93は、南側柱90の長辺部分を構成するメインカバー部と、L字形状の4つのコーナーカバー部とを含む。
【0038】
図1に示すように、本実施形態では、建物1の西側及び南側のいずれの外周部にも扁平柱(西側柱30及び南側柱90)が設けられている。ここで、各扁平柱は、長手方向が建物1の内外方向(建物本体10の外壁に対して直交する方向)を向くように設けられている。これにより、扁平柱に代えて耐力壁が用いられる場合に比べて、西側軒下空間OS1及び南側軒下空間OS2に出入りし易くなり、また店舗エリアIS1~IS6内の様子を視認し易くなっている。
【0039】
図8は、
図1中の領域VIIIにおける第1柱31と屋根20との接合構造を詳細に示している。
図8に示すように、屋根20は、水平面に対して所定の角度で傾斜する複数の傾斜梁21と、当該傾斜梁21に対して直交する方向に延びる複数の母屋22とを含む。母屋22は、屋根20の傾斜方向(
図2中の横方向)に等間隔を空けて複数配置されている。当該母屋22の上に、垂木や屋根板等の部材が配置されている。
【0040】
傾斜梁21及び母屋22は、第1柱31の上端にそれぞれ取り付けられている。具体的には、
図8に示すように、第1本体柱41の上端には、金物60が取付ピンを介して取り付けられている。この金物60を、傾斜梁21の一端部に形成された溝(図示しない)内に挿入すると共に、複数のドリフトピン61を傾斜梁21の一端部及び金物60に挿入することにより、傾斜梁21の一端部が金物60を介して第1本体柱41の上端に固定されている。一方、母屋22は、長さ方向の一端部が一方の第1化粧柱42(建物1の内側の化粧柱)の上端に載置されて取り付けられている。
【0041】
図8に示すように、第1本体柱41の上端には、外向きに突出する木製の突出部63が金物(図示しない)を介して取り付けられている。他方の第1化粧柱43(建物1の外側の化粧柱)の上端は、パイプ状の取付具62を介して突出部63の前端に固定されている。なお、第2柱32も第1柱31と同様に屋根20に接合されているため、詳細な説明は省略する。
【0042】
図9は、第1本体柱41と基礎80との接合構造を詳細に示している。
【0043】
図9に示すように、第1本体柱41は、金物74を介して基礎80上に固定されている。具体的には、金物74は、H形鋼からなると共にボルト75Aによって基礎80の上面に固定されたベース部75と、当該ベース部75の上フランジから垂直上向きに延びる1枚のプレート部76とを含む。このプレート部76が第1本体柱41の下端に挿入されると共に、1本のピン72がプレート部76と第1本体柱41の下端部の孔に挿入されている。これにより、第1本体柱41の下端が金物74を介して基礎80に固定されている。
【0044】
なお、第1化粧柱42,43、第2本体柱51及び第2化粧柱52,53も、第1本体柱41と同様に、金物74により基礎80上に固定されている。各柱と基礎80との接合構造に関する説明は重複するため、記載を省略する。
【0045】
以上の通り、本実施形態に係る建物1では、西側柱30及び南側柱90により屋根20が支持されるため、耐力壁により屋根20を支持する建物に比べて西側軒下空間OS1及び南側軒下空間OS2がより開放的になり、これらの軒下空間に人が出入りし易くなる。また
図5及び
図6に基づいて説明した通り、屋根20の西側部分を支持する複数の西側柱30のうち、相対的に短い第2本体柱51の断面積が相対的に長い第1本体柱41の断面積に比べて小さくなっている。短柱では長柱に比べて屋根20を支持するために必要な耐久力が小さく、必要な断面積も小さくなる。このため、本実施形態に係る建物1によれば、第1本体柱41及び第2本体柱51の断面積が同じである建物に比べて、柱材の無駄を抑えつつ屋根20を支持することが可能になる。しかも、第1化粧材44と第2化粧材54の外形サイズが同じであるため、第1本体柱41及び第2本体柱51の断面積が異なっていても外観上の統一を図ることができる。
【0046】
ここで、本発明のその他実施形態を説明する。
【0047】
本発明において、建物構造は木造に限定されず、鉄骨造でもよい。この場合、第1本体柱41及び第2本体柱51としてH形鋼等が用いられると共に、第1本体柱41が第2本体柱51より厚く形成されていてもよい。また本発明の建物は、1階建ての建物に限定されず、2階以上の建物でもよい。1階建ての建物には、天井梁25を水平に維持することによりフラットな屋根を構成することができる。一方、2階以上の建物では、天井梁25を水平に維持することにより、2階の屋内空間の床をフラットにすることができる。
【0048】
第1柱31が屋根20の頂部を支持する場合に限定されず、頂部よりも低い部分を支持してもよい。また傾斜屋根を第1柱31及び第2柱32により支持する場合にも限定されない。例えば、地面G1の段差に跨るように陸屋根が水平に設けられ、低地側の地面G1に第1柱31が配置されると共に高地側の地面G1に第2柱32が配置され、第1柱31と第2柱32とにより陸屋根が下方から支持されていてもよい。
【0049】
西側柱30及び南側柱90として扁平柱が採用されず、全て又は一部の西側柱30及び南側柱90の断面形状が例えば正方形でもよい。
【0050】
屋根20を全て西側柱30及び南側柱90により支持する場合に限定されず、一部は耐力壁により支持してもよい。
【0051】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 建物
10 建物本体
20 屋根
21A 第1高さ部分
22A 第2高さ部分
30 西側柱(柱)
31 第1柱
32 第2柱
41 第1本体柱
44 第1化粧材
51 第2本体柱
54 第2化粧材
OS1 西側屋根下空間(外部空間)
OS2 南側屋根下空間(外部空間)