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  • 特許-乗員監視装置及び車両用表示装置 図1
  • 特許-乗員監視装置及び車両用表示装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】乗員監視装置及び車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/23 20240101AFI20250212BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
B60K35/23
G02B27/01
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021025778
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022127664
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】秦 誠
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-017064(JP,A)
【文献】特開2020-134633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00 - 37/20
B60R 16/00 - 17/02
G01C 21/00 - 21/36
G02B 27/00 - 30/60
G09F 9/00
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられて実景が透過する反射透光部材に対して赤外光を照射する赤外光照射手段と、
前記反射透光部材に反射された赤外光により前記車両の乗員を撮像する撮像手段と、
前記赤外光照射手段及び前記撮像手段を収容する筐体とを備え、
前記赤外光照射手段は、前記乗員又は前記車両の他の乗員の視点位置から見て、前記反射透光部材における前記赤外光の反射位置が前記車両のボンネットと重畳するように、前記筐体に設けられていることを特徴とする乗員監視装置。
【請求項2】
車両に設けられて実景が透過する反射透光部材に対して表示光を投影し、前記反射透光部材に反射された表示光により虚像を生成して前記実景に重ねて表示する表示光投影手段と、
前記反射透光部材に対して赤外光を照射する赤外光照射手段と、
前記反射透光部材に反射された赤外光により前記車両の乗員を撮像する撮像手段と、
前記表示光投影手段、前記赤外光照射手段及び前記撮像手段を収容する筐体とを備え、
前記赤外光照射手段は、前記乗員又は前記車両の他の乗員の視点位置から見て、前記反射透光部材における前記赤外光の反射位置が前記車両のボンネットと重畳するように、前記筐体に設けられていることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項3】
前記視点位置は、前記車両の運転席に着座する運転者のアイボックス内にあることを特徴とする請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記筐体が、カバーガラスを備え、前記カバーガラスが、可視光を遮光する遮光部を備え、前記遮光部が、赤外光透過部を備えることを特徴とする請求項1に記載の乗員監視装置又は請求項2若しくは3に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員に赤外光を照射して乗員の挙動を撮像する乗員監視装置及び車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントウインドシールドやコンバイナ等の反射透光部材を透過する実景(車両前方の風景)に重ねて、その反射透光部材に反射された表示光により虚像を生成して表示するヘッドアップディスプレイ装置(車両用表示装置)は、車両の運転者等の乗員の視線移動を極力抑えつつ、乗員が所望する情報を虚像により提供することによって、安全で快適な車両運行に寄与する。
【0003】
また、ヘッドアップディスプレイ装置には、反射透光部材に反射された赤外光を乗員に照射して撮像を行い、その撮像画像に基づいて乗員のよそ見、居眠り等の挙動の把握に供するモニタリングシステム(乗員監視装置)を搭載するものがある。
【0004】
例えば特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置は、表示手段から発せられる可視光をコンバイナ部材にて運転者に向けて反射して表示像を結像するものであるが、さらに、運転者に向けて赤外線を照射する赤外線照射手段と、表示手段から発せられる可視光をコンバイナ部材に向けて反射し、運転者及びコンバイナ部材にて反射される赤外線を透過するミラー部材と、ミラー部材を透過する赤外線を感受して運転者をそれぞれ異なる方向から撮像する複数の撮像手段と、撮像手段によって撮像された画像に基づいて運転者の目の位置を算出する画像処理手段とを備え、運転者の目の位置を精度良く算出することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-126984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、乗員監視装置が赤外光により乗員を撮像する場合、夜間等の車外が暗い環境下において反射透光部材に赤外光の光源が写り、赤い玉(点光源)として乗員に視認されることがある。このいわゆる玉見えによって、乗員が煩わしさを感じるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、反射透光部材で反射する赤外光による乗員の煩わしさを低減させることができる乗員監視装置及び車両用表示装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る乗員監視装置は、車両に設けられて実景が透過する反射透光部材に対して赤外光を照射する赤外光照射手段と、前記反射透光部材に反射された赤外光により前記車両の乗員を撮像する撮像手段と、前記赤外光照射手段及び前記撮像手段を収容する筐体とを備え、前記赤外光照射手段は、前記乗員又は前記車両の他の乗員の視点位置から見て、前記反射透光部材における前記赤外光の反射位置が前記車両のボンネットと重畳するように、前記筐体に設けられていることを特徴とする。
【0009】
ここで、乗員の視点位置とは、車両のいずれかの乗員の視点(目の位置)として想定される位置で、乗員のシートポジションや体格を想定して定まる一定の空間領域に含まれる位置とすることができる。
【0010】
また、本発明に係る車両用表示装置は、車両に設けられて実景が透過する反射透光部材に対して表示光を投影し、前記反射透光部材に反射された表示光により虚像を生成して前記実景に重ねて表示する表示光投影手段と、前記反射透光部材に対して赤外光を照射する赤外光照射手段と、前記反射透光部材に反射された赤外光により前記車両の乗員を撮像する撮像手段と、前記表示光投影手段、前記赤外光照射手段及び前記撮像手段を収容する筐体とを備え、前記赤外光照射手段は、前記乗員又は前記車両の他の乗員の視点位置から見て、前記反射透光部材における前記赤外光の反射位置が前記車両のボンネットと重畳するように、前記筐体に設けられていることを特徴とする。
【0011】
前記視点位置は、前記車両の運転席に着座する運転者のアイボックス内にあってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、反射透光部材で反射する赤外光による乗員の煩わしさを低減させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】発明を実施するための形態に係るヘッドアップディスプレイ装置が設けられた車両を示す説明図である。
図2図1のヘッドアップディスプレイ装置の構成を示す説明図である。
図3図1のヘッドアップディスプレイ装置の外観を示す斜視図である。
図4図1のヘッドアップディスプレイ装置の外観を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
【0015】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置(HUD)1は、車両2のフロントウインドシールド3の下方にあるインストルメントパネル4の内部に設けられ、フロントウインドシールド3の一部に可視光である表示光Lを投影する。表示光Lは、フロントウインドシールド3に反射されて虚像Vを生成し、ステアリングホイール5の後方の図示を略す運転席に着座する運転者Dにフロントウインドシールド3を透過する実景に重ねて虚像Vを視認させる。
【0016】
また、HUD1は、運転者Dの状態をモニターする乗員監視装置としても機能し、運転者Dに赤外光Lを照射して運転者Dを撮像する。
【0017】
詳細には、HUD1は、黒色のABS樹脂等により成形されて外光の侵入が防止されたハウジング6に覆われて外部と区画され、ハウジング6にはポリカーボネート等からなる透明なカバーガラス7が取り付けられた開口部8が形成されている。ハウジング6の内部には、表示器ユニット9と、平面鏡10と、凹面鏡11と、赤外光照射ユニット12と、カメラ13とが保持・収容されている。
【0018】
カバーガラス7は、図2に示すように、下方に凸に湾曲した四辺形板状を呈し、その周縁部(四辺の周辺部)には全周にわたって可視光を遮光する遮光部14が設けられている。遮光部14は、ポリカーボネート等の透明な基材に対し、黒色の印刷層が形成されてなる。
【0019】
表示器ユニット9は、光源及び液晶パネル等からなる表示器15が設けられ、表示器15から可視光である映像光(表示光L)を投影表示する。平面鏡10は、平面部分を有するように成形されたガラスにアルミニウム等の金属や誘電体多層膜を蒸着してなり、可視光を単純に反射する。凹面鏡11は、凹面部分を有するように成形されたポリカーボネート等の樹脂にアルミニウム等の金属を蒸着してなり、可視光を拡大して反射する。
【0020】
赤外光照射ユニット12は、図3に示すように、ハウジング6においてカバーガラス7の下方で遮光部14に対向するように、車両2の車幅方向中央側に設けられている。遮光部14の赤外光照射ユニット12が対向する部分には、赤外光を透過させる赤外光透過部16が設けられ(遮光部14のうち、赤外光透過部16の部分は、可視光を遮蔽して赤外光を透過させる黒色の印刷層からなり、それ以外の部分は、可視光及び赤外光を遮蔽する黒色の印刷層からなる。)、赤外光照射ユニット12は、発光ダイオード(LED)からなる光源(点光源)が発する赤外光(近赤外線)Lを赤外光透過部16を通してフロントウインドシールド3に向けて照射する。
【0021】
その際、運転者Dの視点位置から見て、フロントウインドシールド3における赤外光Lの反射位置(赤外光照射ユニット12の光源の光軸がフロントウインドシールド3と交わる位置)Rが車両2のボンネット17と重畳するように、赤外光照射ユニット12はハウジング6に設けられている。すなわち、運転者Dがボンネット17の視認可能な領域の前縁(運転者Dは、ボンネット17の上方に凸な曲面形状によって、前縁より後方のボンネット17の領域を視認することはできるが、前縁より前方のボンネット17の領域を視認することはできない。)を見たとき、運転者Dの見下ろし角(俯角)がθであるとすると、運転者Dが反射位置Rを見下ろしたときの見下ろし角がθ以上となるように、赤外光照射ユニット12のLED光源が配置されている。ボンネット17は、フロントウインドシールド3の前方に設置される車両2の一部(特定部位)として構成される。
【0022】
なお、運転者Dの視点位置は、運転者Dの設計上のアイボックス18内の任意の点とすることができる。運転者Dがボンネット17の視認可能な領域の前縁を見下ろす際に、アイボックス18内において最も見下ろし角が浅く(小さく)なる点は、アイボックス18内の最下部、かつ、最後部にある点Pであるから、点Pの位置からボンネット17の視認可能な領域の前縁を見たときの見下ろし角がθであれば、反射位置Rの見下ろし角がθ以上となるように赤外光照射ユニット12のLED光源が配置されることによって、運転者Dの視点位置がアイボックス18内のどこにあっても反射位置Rがボンネット17の領域と重畳する。
【0023】
一方、カメラ13は、ハウジング6においてカバーガラス7の下方で赤外光透過部16に対向するように、車両2の車幅方向中央側、かつ、赤外光照射ユニット12の前方に設けられ、赤外照射ユニット12から照射される波長帯の赤外光Lに感度を有する撮像素子、及び、赤外光Lを透過してその撮像素子に結像させ得るレンズを備えて近赤外線画像を撮影する。
【0024】
また、本実施形態の場合、ここでの詳細図示は省略するが、ハウジング6は、車幅方向と略直交(交差)する一対の周壁部を有しており、これら一対の周壁部のうち車両を左右に2等分する仮想中心ラインに近い側に位置する一周壁部(一方の周壁部)のやや内側となるハウジング6の空所に赤外光照射ユニット12及びカメラ13を設けた構成としている。なお、ここでのハウジング6は、4つの周壁部を備え、図2で図示された概ね車幅方向に沿う2つの周壁部は、前記一対の周壁部の各々の端部同士を繋ぐ立壁として構成される。
【0025】
HUD1において、表示器ユニット9からの表示光Lは、平面鏡10で反射され、次いで、凹面鏡11で拡大して反射され、カバーガラス7の遮光部14に囲まれた透明な中央部17を通過してフロントウインドシールド3に投影される。フロントウインドシールド3に投影された表示光Lは、運転者Dの側に拡大して反射され、虚像Vを生成してフロントウインドシールド3を透過する実景に重ねて運転者Dに表示する。
【0026】
これに対し、赤外光照射ユニット12からの赤外光Lは、カバーガラス7の遮光部14の赤外光透過部16を通過してフロントウインドシールド3に投影され、フロントウインドシールド3で運転者Dの側に反射されて運転者Dを照射する。そして、運転者Dに反射されると赤外光Lの一部は逆の経路を辿り、赤外光透過部16を通過してカメラ13に入射した赤外光Lにより運転者Dが撮像される。この撮像は、虚像Vの表示中、定期的又は不定期的に行われ、その撮像画像に基づいて運転者Dのモニタリングが行われる。
【0027】
本実施の形態に係るHUD1は、車両2に設けられて実景が透過するフロントウインドシールド3に対して赤外光Lを照射する赤外光照射ユニット12と、フロントウインドシールド3に反射された赤外光Lにより車両2の運転者Dを撮像するカメラ13と、赤外光照射ユニット12及びカメラ13を収容するハウジング6とを備え、赤外光照射ユニット12は、運転者Dの視点位置から見て、フロントウインドシールド3における赤外光Lの反射位置Rが車両2のボンネット17と重畳するように、ハウジング6に設けられている(収容されている)ので、車外が暗い環境下においてフロントウインドシールド3に赤外光照射ユニット12の光源が写り、背景が暗ければ赤い玉として運転者Dに視認されるような場合でも、その赤い玉がボンネット17と重畳し、運転者Dが注視する車両2の前方の風景、外景(自車のボンネット17以外の景色)とは重なり合わないことにより、フロントウインドシールド3で反射する赤外光Lによる運転者Dの煩わしさを低減させることができる。
【0028】
特に、運転者Dの視点位置がアイボックス18内の任意の点にあるとして、アイボックス18内の最下部、かつ、最後部にある点Pの位置からボンネット17の視認可能な領域の前縁を見たときの見下ろし角がθである場合に、反射位置Rの見下ろし角がθ以上となるように赤外光照射ユニット12のLED光源が配置されていれば、運転者Dの視点位置がアイボックス18内のどこにあっても反射位置Rがボンネット17の領域と重畳し、フロントウインドシールド3で反射する赤外光Lによる運転者Dの煩わしさを低減させることができる。
【0029】
以上、本発明を実施するための形態について例示したが、本発明の実施形態は上述したものに限られず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更等してもよい。
【0030】
例えば、上記実施の形態では、車両のフロントウインドシールドを反射透光部材としたが、反射透光部材としてフロントウインドシールドに代えてコンバイナ等を用いてもよい。
【0031】
また、赤外光照射ユニット12は、車両2の運転席に着座する運転者Dではなく、カメラ13の撮像対象ではない助手席や後部座席等に着座する他の乗員の視点位置から見て、フロントウインドシールド3における赤外光Lの反射位置Rが車両2のボンネット17と重畳するようにハウジング6に設けられ、他の乗員の煩わしさを低減させるものであってもよい。
【0032】
さらに、反射位置Rがボンネット17と重畳するかどうかの基準となる乗員の視点位置は、必ずしもアイボックス18の内部に設定される必要はなく、アイボックス18の外部に設定されてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 ヘッドアップディスプレイ装置(乗員監視装置、車両用表示装置)
2 車両
3 フロントウインドシールド(反射透光部材)
6 ハウジング(筐体)
9 表示器ユニット(表示光投影手段)
12 赤外光照射ユニット(赤外光照射手段)
13 カメラ(撮像手段)
17 ボンネット
18 アイボックス
D 運転者(乗員)
表示光
赤外光
R 反射位置
V 虚像
図1
図2
図3
図4