(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20250212BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
G09F9/00 304B
G09F9/00 350Z
H05K7/20 B
H05K7/20 G
(21)【出願番号】P 2021029537
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-12-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長坂 友貴
(72)【発明者】
【氏名】小熊 悠嗣
【審査官】武田 悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-53356(JP,A)
【文献】特開2011-119424(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0065873(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00 - 9/46
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
前記表示部を制御し、熱を発する回路基板と、
空気の入口及び出口を有し前記回路基板から隔離しながら前記空気を流す流路を有し、前記流路を流れる前記空気で前記回路基板を冷却するヒートシンクと、
前記流路を覆う流路用カバーと、
前方に開口し後方に面する背面を有し、前記表示部を収容するケースと、を備え、
前記回路基板及び前記ヒートシンクは、前記ケースの前記背面に配置され、
前記流路用カバーは、前記流路と共に前記回路基板を後方から覆う、表示装置。
【請求項2】
前記流路用カバーは、前記回路基板と熱的に接続される、請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記回路基板は、前記ケースの前記背面に略平行に配置され、
前記ヒートシンクは、前記回路基板が配置される領域以外の前記背面から略垂直に立ち上がり、前記回路基板の外縁に沿って前記流路を形成する複数のフィンを有する、請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
前記流路の最も外側に面する一対のフィンの間にあるフィンの少なくとも一部は、前記流路の最も外側に面する一対のフィンよりも高さが小さい、請求項3記載の表示装置。
【請求項5】
前記流路の最も外側に面する一対のフィンの間にあるフィンの少なくとも一部は、前記入口から前記出口にかけて大きくなる高さを有する、請求項3記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両等に搭載される表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発熱量の大きいIC(Integrated Circuit)チップを搭載する表示装置には、放熱対策が施される。例えば、回路基板を収容するケースが通気孔を有し、ケース内部と外部との空気交換を行う表示装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷却効率を上げるため、ケース内部に強制的に空気を流す強制冷却を行うことが考えられる。しかしながら、回路基板に実装されるICチップ等が、空気中に含まれる水分によって接点障害を引き起こす虞がある。強制冷却を行うためには、回路基板の湿気対策を行う必要があり、製造工程を複雑化させてしまう。
【0005】
本開示はこのような事情を考慮してなされたもので、冷却効率及び製造効率を両立できる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の表示装置は、上述した課題を解決するために、表示部と、前記表示部を制御し、熱を発する回路基板と、空気の入口及び出口を有し前記回路基板から隔離しながら前記空気を流す流路を有し、前記流路を流れる空気で前記回路基板を冷却するヒートシンクと、前記流路を覆う流路用カバーと、前方に開口し後方に面する背面を有し、前記表示部を収容するケースと、を備え、前記回路基板及び前記ヒートシンクは、前記ケースの前記背面に配置され、前記流路用カバーは、前記流路と共に前記回路基板を後方から覆う。
【発明の効果】
【0007】
本開示の表示装置においては、冷却効率及び製造効率を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の表示装置の実施形態である表示装置を前方から示す斜視図。
【
図2】本開示の表示装置の実施形態である表示装置を後方から示す斜視図。
【
図4】背面カバーを取り外した状態の表示装置を後方から示す図。
【
図5】
図3に対応する第一変形例としての表示装置を示す断面図である。
【
図6】背面カバーを取り外した状態の、第二変形例としての表示装置を後方から示す図。
【
図10】背面カバーを取り外した状態の、第三変形例としての表示装置を後方から示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の表示装置の実施形態を添付図面に基づいて説明する。本開示の表示装置は、例えば自動車や二輪車等の車両や、船舶、農業機械、建設機械に搭載され得る。
【0010】
図1は、本開示の表示装置の実施形態である表示装置1を前方から示す斜視図である。
図2は、本開示の表示装置の実施形態である表示装置1を後方から示す斜視図である。
図3は、
図1のIII-III線に沿う断面図である。
図4は、背面カバー60を取り外した状態の表示装置1を後方から示す図である。
【0011】
以下の説明において、「前(前面)」、「後(背面)」、「上」、「下」、「右」、及び「左」は、
図1から
図10における定義「Fr.」、「Re.」、「To.」、「Bo.」、「R」、及び「L」に従う。
【0012】
表示装置1は、ケース10と、表示ユニット20(表示部)と、回路基板30と、保護カバー40と、ヒートシンク50と、背面カバー60(流路用カバー)と、を主に有する。
【0013】
ケース10は、例えば金属(例えばマグネシウム合金やアルミニウム)や高い熱伝導性を有する樹脂からなり、表示ユニット20及び回路基板30を支持する。また、ケース10は、固定先としての例えば車両のインストルメントパネルに固定されるための構造を有する(図示せず)。ケース10は、底面11と、側面12と、を有する。側面12は、底面11の周縁から前方に略垂直に立ち上がる。底面11及び側面12は表示ユニット20を収容する空間及び表示ユニット20を露出する開口15を有する。
【0014】
ケース10は、底面11の後方を向く面である背面11bに、回路基板収容壁17を有する。回路基板収容壁17は、背面11bから後方に略垂直に立ち上がり、回路基板30の略外縁に沿って回路基板30を囲う、閉じた立ち壁である。
【0015】
表示ユニット20は、液晶表示素子と、光源基板と、を有する。液晶表示素子は、例えば一対のガラス基板間に液晶分子を封入して形成されるTFT(Thin Film Transistor)型の液晶表示パネルである。光源基板は、例えば液晶表示素子を照明するLED(Light Emitting Diode)を搭載する基板であり、液晶表示素子のバックライトである。光源基板は、液晶表示素子の後方に配置される。また、表示ユニット20は、LEDの光を液晶表示素子の全面に行き渡らせるための導光板、導光板の後方に設けられた反射板、及び導光板の前方に設けられた拡散板等所要の部材を有する。表示ユニット20は、フレキシブルプリント基板(図示せず)により回路基板30と接続する。
【0016】
回路基板30は、ケース10の後方で背面11bに略平行になるように、回路基板収容壁17内に配置される。回路基板30は、ビス等により底面11に固定される。回路基板30は、表示ユニット20を制御するための制御部を主に有する。制御部は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有しており、例えば、ROMに書き込まれたプログラムに従って所定の演算処理を実行する。制御部は、例えば、車両のECU(Electronic Control Unit)から車速、エンジン回転数、各種車両情報、ナビゲーション情報等を、各種センサ等を介して取得する。制御部は、取得した情報に基づき、表示ユニット20に情報を表示させる。制御部は、表示ユニット20を制御するいわゆるGDC(Graphics Display Controller)といわれるICチップ31であり、相対的に高熱を発する発熱体である。このため、回路基板30は、熱を発し発熱手段を必要とする。ICチップ31は、回路基板30の後方に面する面に搭載される。
【0017】
保護カバー40は、透光性を有する板状部材(例えば無機ガラス、ポリカーボネート樹脂、PMMA樹脂)である。保護カバー40は、ケース10の開口15を覆うことにより、ケース10の内部の表示ユニット20を塵埃等から保護する。保護カバー40は、透光性接着剤により、表示ユニット20の前面とオプティカルボンディングにより接着される。
【0018】
ヒートシンク50は、ケース10の後方に、ケース10と一体的に形成されて配置される。ヒートシンク50は、ケース同様、例えば金属(マグネシウム合金やアルミニウム)からなる。ヒートシンク50は、回路基板30が配置される領域以外の背面11bから略垂直に立ち上がる複数のフィン55を有する。各フィン55は、回路基板30の外縁から離れる方向に所定間隔を有しながら、例えば4本形成される。複数のフィン55は、回路基板30の三辺の外縁に沿って延びる。すなわち、
図4に示すように、各フィン55は、背面11bの左下方から上方に延びる第一辺51と、第一辺51から右に折れ曲がり更に延びる第二辺52と、第二辺52から下方に折れ曲がり更に延びる第三辺53と、を有する。
【0019】
各フィン55は、第一辺51の下端を空気の入口56、第三辺53の下端を空気の出口57とする、空気を流す流路である。このとき、第一辺51、第二辺52、第三辺53に平行な回路基板収容壁17の三辺は、最も回路基板30側に配置されるフィン55aと共に流路を形成する。入口56は、ダクト58と接続される。ダクト58は、表示装置1の取付先である車両から送風された空気を流路に強制的に送る。これにより、各フィン55の間及び最も回路基板30側に配置されるフィン55aと回路基板収容壁17との間は、回路基板30から隔離しながら空気を流す流路となる。
【0020】
背面カバー60は、例えば金属や樹脂(電気亜鉛メッキ鋼板、ABS樹脂、熱可塑性樹脂等)からなる。背面カバー60は、流路と共に回路基板30を覆う、一体成形品として形成された流路側カバー61と、回路基板側カバー62と、を有する。背面カバー60は、例えばフック等の固定構造により、回路基板収容壁17やフィン55、ケース10に着脱可能に固定される。
【0021】
流路側カバー61は、
図3に示すように、各フィン55の先端59(後方端部)と接することにより、流路を後方から覆い閉じる。これにより、流路側カバー61は、流路を流れる空気が後方から逃げないようにする。
【0022】
回路基板側カバー62は、回路基板30を後方から覆う。回路基板側カバー62は、回路基板収容壁17の形状と一致し、先端18と対面して接し、回路基板収容壁17と共に閉じた空間を形成する。回路基板30は、この閉じた空間に収容される。回路基板側カバー62は、熱伝導部材63により、回路基板30の発熱部材となるICチップ31と熱的に接続される。
【0023】
このように構成された表示装置1は、回路基板30(ICチップ31)の冷却に、車両から送風された空気を利用する強制冷却を利用し冷却効率を向上させる場合であっても、回路基板30に対する空気の湿気対策を不要とすることができる。すなわち、表示装置1は、空気の流路を回路基板30から隔離して形成したため、回路基板30に対する湿気対策を不要とすることができる。具体的には、表示装置1は、回路基板30に耐湿コーティングを施したり、空気は通すが水分は通さない多孔質膜等を配置したりすることを不要とすることができ、製造工程や製造コストを低減できる。
【0024】
また、表示装置1は、各流路を背面カバー60で覆うため、流路に送風される空気を漏らすことなく出口57まで導くことができる。
【0025】
更に、表示装置1は、流路側カバー61と回路基板側カバー62を一体成形品としたため、熱伝導部材63から伝わるICチップ31の熱を、流路側カバー61まで伝えることにより、流路を流れる空気で効率良く冷却できる。また、表示装置1は、回路基板側カバー62と流路側カバー61を一体成形品としたため、部品点数を削減できる。
【0026】
更にまた、表示ユニット20の光源基板がケース10の底面11と熱的に接することにより、回路基板30と同様に、光源基板も流路を流れる空気により効率良く冷却される。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0028】
例えば、背面カバー60は、流路側カバー61と回路基板側カバー62とが一体成形品である例を説明したが、複数に分割されていてもよい。背面カバー60が分割される場合には、回路基板側カバー62と流路側カバー61とで分割される場合に限らず、回路基板側カバー62と流路側カバー61の一部とが一体成形品であり、流路側カバー61の他部が別部品のように分割されてもよい。また、背面カバー60の一部は、樹脂等の部材に限らず、樹脂シート等の別部材で形成されてもよい。
【0029】
また、入口56側の空気は冷却しながら出口57側まで流れるため、加熱されながら流れる。このため、出口57側の冷却効率は入口56側に比べて低下する。そこで、入口56側と出口57側の冷却効率を、フィン55の高さを変化させることにより制御してもよい。
図5は、
図3に対応する第一変形例としての表示装置101を示す断面図である。
図5から
図10においては、表示装置1と対応する構成及び部分については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0030】
表示装置1の各フィン55は、高さが同じであるのに対し、表示装置101においては、回路基板30に最も近いフィン155a(回路基板収容壁17であるが、説明の便宜上フィン155aとして説明する)及び回路基板30に最も遠いフィン155bであって、流路の最も外側に面する一対のフィン155a、155bの間にあるフィン155c、155d、155eは、流路の最も外側に面する一対のフィン155a、155bよりも高さが小さい。これにより、フィン155c、155d、155eの表面積が小さくなることから冷却効率は下がるが、空気は、高さ均一のフィン55を有する場合に比べて温度が低い状態で出口57側まで送られる。
【0031】
また、
図6は、背面カバー60を取り外した状態の、第二変形例としての表示装置201を後方から示す図である。
図7は、
図6のVII-VII線に沿う断面図である。
図8は、
図6のVIII-VIII線に沿う断面図である。
図9は、
図6のIX-IX線に沿う断面図である。
【0032】
表示装置201においては、流路の最も外側に面する一対のフィン255a(回路基板収容壁17であるが、説明の便宜上フィン255aとして説明する)、255bの間にあるフィン255c、255d、255eが、入口56から出口57にかけて徐々に大きくなる高さを有する。これにより、入口56側のフィン255c、255d、255eの表面積が小さく、出口57側のフィン255c、255d、255eの表面積が大きくなることから、表示装置101同様に、入口56側の冷却効率は下がるが、出口57側の空気は、高さ均一のフィン55を有する場合に比べて温度が低い状態で出口57側まで送られる上に、大きい表面積のフィン255c、255d、255eで冷却できるため、出口側の冷却効率を向上できる。
【0033】
なお、表示装置101における流路の最も外側に面する一対のフィン155a、155bよりも高さが小さいフィンは、フィン155c、155d、155eのうち少なくとも一部であってもよい。表示装置201における入口56から出口57にかけて徐々に大きくなる高さを有するフィンは、フィン255c、255d、255eのうち少なくとも一部であってもよい。
【0034】
また、冷却効率を更に向上する手段として、ヒートシンク50は、流路を流れる空気の一部を回路基板30へ導く流路を更に備えてもよい。
図10は、背面カバー60を取り外した状態の、第三変形例としての表示装置301を後方から示す図である。
【0035】
表示装置301においては、最も回路基板30に近いフィン355a(回路基板収容壁17であるが、説明の便宜上フィン355aとして説明する)と二番目に回路基板30に近いフィン355bとで形成される流路が、入口開口317a及び出口開口317bを有することにより、分岐流路を形成する。入口開口317aは、例えばICチップ31近傍に形成され、出口開口317bは、出口57近傍に形成される。また、背面カバー60は、回路基板側カバー62に回路基板30側へ突出する流路壁64を有する。流路壁64は、回路基板30側へ回路基板30及び回路基板30上に配置される部品とは干渉しないように隙間を設けて突出する。流路壁64は、入口開口317aから出口開口317bまでをICチップ31を経由するように一対の壁で形成される。
これにより、分岐流路は、ICチップ31近傍から出口57近傍まで回路基板30側へ空気を流し、空気で回路基板30を直接冷却する。回路基板30を冷却し出口開口317bまで到達した空気は、フィン355aとフィン355bとで形成される流路に戻り、他のフィン355で形成される流路を流れる空気と共に出口57から排出される。
【0036】
この場合、回路基板30に対して耐湿コーティング等が必要になるが、完全に別構造を追加することなく、流路の若干の変更や入口開口317a及び出口開口317bの形成により回路基板30の冷却性能を向上できる。また、入口開口317aの位置により、所望の箇所に空気を送ることができるため、冷却対象以外に湿気を必要以上に与えることも低減できる。
【符号の説明】
【0037】
1、101、201、301 表示装置
10 ケース
11 底面
11b 背面
12 側面
15 開口
17 回路基板収容壁
18 先端
20 表示ユニット(表示部)
30 回路基板
31 ICチップ
40 保護カバー
50 ヒートシンク
51 第一辺
52 第二辺
53 第三辺
55、55a フィン
56 入口
57 出口
58 ダクト
59 先端
60 背面カバー(流路用カバー)
61 流路側カバー
62 回路基板側カバー
63 熱伝導部材
64 流路壁
155a、155b、155c、155d、155e フィン
255a、255c、255d、255e フィン
317a 入口開口
317b 出口開口
355、355a、355b フィン