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特許7631899レーキ付きバケット及びそれを備えた除塵装置
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  • 特許-レーキ付きバケット及びそれを備えた除塵装置 図1
  • 特許-レーキ付きバケット及びそれを備えた除塵装置 図2
  • 特許-レーキ付きバケット及びそれを備えた除塵装置 図3
  • 特許-レーキ付きバケット及びそれを備えた除塵装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】レーキ付きバケット及びそれを備えた除塵装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/08 20060101AFI20250212BHJP
【FI】
E02B5/08 101C
E02B5/08 104E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021033182
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134203
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】兼重 友典
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-044264(JP,A)
【文献】特開2014-152547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取水路を幅方向に横切るように設置されたバースクリーンの上流側の面に沿って、無端状のキャリングチェーンにより上昇移動可能なバケットに備えられたレーキにおいて、
前記レーキは複数のレーキ片が前記取水路の全幅に亘って前記バケットの長手方向に配置された構造であって、
前記レーキ片の正面形状が前記バケットの進行方向へ向かって角度10 ~ 60度の鋭角を形成し、
前記レーキ片の側面における前記鋭角の頂点を含む一辺は前記バケットより下流側へ向かって上方に傾いており、
前記取水路の幅方向の平面における断面形状を下流側へ向かって前記レーキ片を凸形状、前記レーキ片同士の間を凹形状とし、前記レーキ片によって前記取水路の下流側へ向かって凹凸形状を形成しており、
前記レーキ片により前記バースクリーンの隙間に付着した貝類を切断して除去することを特徴とするレーキ付きバケット。
【請求項2】
前記レーキ片の正面形状が前記バケットの進行方向へ向かって1又は2つの鋭角を形成することを特徴とする請求項1に記載のレーキ付きバケット。
【請求項3】
無端状のキャリングチェーンに請求項1又は2に記載のレーキ付きバケットが上下方向に複数備えられていることを特徴とする除塵装置。
【請求項4】
無端状のキャリングチェーンにレーキ片の正面形状が矩形状であるレーキ付きバケットが少なくとも1個と、
請求項1又は2に記載のレーキ付きバケットが少なくとも1個、上下交互に備えられていることを特徴とする除塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海や河川より取水する際や水の浄化処理の際に、水中の塵芥等の異物を除去する目的で設置されるバースクリーンに用いられるレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所などの発電プラントにおいて、河川や海からの冷却水として使用するために配置されている取水場より水を取水しているが、その水の中には、塵芥や水生生物が含まれていることがあり、そのまま使用することができない。そのため、取水場では水中の塵芥や水生生物などを捕捉する働きをする除塵装置としてバースクリーンが設置されている。
【0003】
バースクリーン(長方形の枠内に等間隔で複数本バーを並べて縦格子状に構成)は取水路を横切るように水流方向に対し垂直あるいは所定の傾斜角をもって立設されており、バースクリーンの上流側の面に付着した塵芥を無端状のキャリングチェーンに取り付けられたレーキが塵芥を掻き上げて除去している。
【0004】
つまり、バースクリーンに付着した塵芥を除去するために設けられた複数のレーキ付きバケットが、キャリングチェーンの回動に伴って連続的に上昇し塵芥を掻き上げて除去している。
【0005】
このようにして、バースクリーンの上流側の面に付着した塵芥はレーキによって大部分を取り除くことができるが、バースクリーンの隙間に付着して成長したムラサキガイなどの貝類を取り除くことは、従来のレーキ付きバケットの構造では非常に困難である。
【0006】
そのため、取り除くことのできなかった貝類を放置すると、貝類がレーキ付きバケットと接触して変形させてしまう危険性がある。
そこで、発電プラントの点検時など定期的に、バースクリーンの隙間に付着した貝類を取り除くために、バースクリーンよりも上流側の取水路を角落し(止水ゲート)で堰き止めて水のないドライな空間にした後、足場を組み立てて手作業によって除去をしている。
または、クレーンによってバースクリーンを取水路から地上に引き上げて、貝類を取り除いている。
【0007】
また、バースクリーンの隙間に付着した貝類によって通水面積が低下した場合は、バースクリーンを境に上流側と下流側で水位差が生じてしまうため、発電プラントを運転停止しなければならなくなる。
そこで、応急処置として取水路に潜水夫が潜り手作業で除去を行なっている。
【0008】
しかしながら、上記のような方法では、取水路を閉塞して水を抜き取った後に足場を組み立てたり、クレーンを設置したりする大掛かりな作業を行なったうえで、除去作業を行なうため、作業は長時間におよび、その作業の間は取水路からの冷却水を確保できなくなることから発電プラントは運転を休止しなければならない。さらに、バースクリーンに付着した貝類からは臭気が発生しているため、除去作業の環境は悪い。
【0009】
また、潜水夫による除去作業においては、流水によって流された潜水夫がスクリーンに挟まれる危険性があるため、流速が早い場合は除去作業を行なうことができないとともに、水の透明度の問題で水面下2mまでが作業可能な範囲の限界となるため、バースクリーンから貝類を完全に除去することはできない。
【0010】
仮に、これらの除去作業によって発電プラントの運転休止や発電量を抑制しなければならない状況が電力供給量の多い夏場に起こったとしたら、私たちの生活に大きな支障をきたすことになる。
【0011】
そこで、特許文献1に開示のように、バケットにノズルヘッダーを取り付け、このノズルヘッダーから高圧水をバースクリーンに吹き付けて洗浄を行なう装置が提案されており、取水口を閉塞して水を抜き取る作業や潜水夫による作業の必要がなくなるため、短時間で安全かつ効率的にバースクリーンを清掃することができる。
しかしながら、高圧水を利用するためには、コンプレッサなどの貝類を除去できるだけの圧力を加える装置を設けなければならず、設備コストがかかる。また使用するノズルの向きの調整は、かなりの正確さが求められるため非常に難しい。
【0012】
また、特許文献2に開示のように、レーキの断面形状を波形にすることにより、レーキ掻き上げ面の表面に設けた凹凸によって塵芥が掻き上げられて確実に回収される。
しかしながら、バースクリーン上に付着している貝類は特許文献2のレーキの凹凸によって取り除くことは難しいため、貝類を完全に除去することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開平2-56208号公報
【文献】特開2014-152547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、連続的かつ効果的にバースクリーンへ付着した貝類を除去できるレーキ付きバケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、取水路を幅方向に横切るように設置されたバースクリーンの上流側の面に沿って、無端状のキャリングチェーンにより上昇移動可能なバケットに備えられたレーキにおいて、
前記レーキは複数のレーキ片が前記取水路の全幅に亘って前記バケットの長手方向に配置された構造であって、
前記レーキ片の正面形状が前記バケットの進行方向へ向かって角度10 ~ 60度の鋭角を形成し、
前記レーキ片の側面における前記鋭角の頂点を含む一辺は前記バケットより下流側へ向かって上方に傾いており、
前記取水路の幅方向の平面における断面形状を下流側へ向かって前記レーキ片を凸形状、前記レーキ片同士の間を凹形状とし、前記レーキ片によって前記取水路の下流側へ向かって凹凸形状を形成しており、
前記レーキ片により前記バースクリーンの隙間に付着した貝類を切断して除去することを特徴とするレーキ付きバケットを提供することにある。
上記第1の手段によれば、鋭角の凸形状のレーキ片によってバースクリーンに付着した貝類を切断し、掻き取りバケットへ回収することができる。


【0016】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、前記レーキ片の正面形状が前記バケットの進行方向へ向かって1又は2つの鋭角を形成することを特徴とする請求項1に記載のレーキ付きバケットを提供することにある。
上記第2の手段によれば、鋭角の凸形状のレーキ片によってバースクリーンに付着した貝類を切断し、掻き取りバケットへ回収することができる。
【0017】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、無端状のキャリングチェーンに第1又は2の手段に記載のレーキ付きバケットが上下方向に複数備えられていることを特徴とする除塵装置を提供することにある。
上記第3の手段によれば、連続的に鋭角の凸形状のレーキ片によってバースクリーンに付着した貝類を切断し、掻き取りバケットへ回収することができる。
【0018】
本発明は、上記課題を解決するための第4の手段として、無端状のキャリングチェーンにレーキ片の正面形状が矩形状であるレーキ付きバケットが少なくとも1個と、
第1又は2の手段に記載のレーキ付きバケットが少なくとも1個、上下交互に備えられていることを特徴とする除塵装置を提供することにある。
上記第4の手段によれば、レーキ片の正面形状が矩形状である従来のレーキ付きバケットと、レーキ片の正面形状が前記バケットの進行方向へ向かって鋭角の凸形状であるレーキ付きバケットを上下交互に備えることで、バースクリーンに付着した貝類を鋭角の凸形状のレーキ片によって切断した後に、矩形状のレーキ片によって確実に掻き取ることが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、レーキ付きバケットのレーキ片の正面形状をバケットの進行方向へ向かって鋭角の凸形状にすることで、連続的かつ効果的にバースクリーンに付着した貝類をバースクリーンから切断して除去することができる。
また、高圧水を使用する場合にあるようなコンプレッサなどの新たな設備の必要性も、高圧水を吹き付けるためのノズルの向きを微調整する手間もかからない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のレーキ付きバケットの上面図である。
図2】本発明のレーキ付きバケットの説明図であり、(a)は正面図を、(b)は側断面図を示している。
図3】従来のレーキ付きバケットの説明図であり、(a)は正面図を、(b)は側断面図を示している。
図4】バースクリーン装置の簡略化した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【0022】
[バースクリーン装置20]
図4は、バースクリーン装置20を示しており、上部スプロケットホイール21Aと下部スプロケットホイール21Bにより無端状に掛け回されたキャリングチェーン29が回動することにより、レーキ付きバケット22が上昇し、バースクリーンに捕捉された塵芥を掻き出している。掻き出された塵芥はバケットへ回収された後、ハウジング26内にある案内板27を伝ってトラフ28へと廃棄される。
【0023】
[従来のレーキ付きバケット12]
図3(a)、(b)は従来のレーキ付きバケット12を示す図であり、図4のレーキ付きバケット22に適用されるものである。図3(a)は正面図、図3(b)は側断面図である。図3(a)に示すように、従来のレーキ付きバケット12はキャリングチェーンが回動して、スプロケットに噛み込むときに、歯面との衝突によって生じる衝撃や摩耗を緩和するためにコロの働きをするローラ15が設けられている。また、キャリングチェーンの各リンクプレート17にはバケット13が取り付けてあり、バケット13には正面形状がくし形のバースクリーンの隙間に嵌合するように、取水路の幅方向に対して等間隔に矩形状のレーキ片14が複数設けられている。
【0024】
図3(b)に示すように、バケット13より下流側へ突出して備えられたレーキ片14の側面における断面形状は右肩上がりの矩形である。
このレーキ片14を備えた従来のレーキ付きバケット12によって、大部分を取り除くことができるが、バースクリーンの隙間で成長したムラサキガイなどの貝類は強固に付着しているため、取り除くことは非常に困難である。
【0025】
[本発明のレーキ付きバケット2]
図1図2(a)、(b)は本発明のレーキ付きバケット2を示す図であり、図4のレーキ付きバケット22に適用されるものである。図1は本発明のレーキ付きバケット2の上面図で、図2(a)は正面図、図2(b)は側断面図である。
図1図2(a)が示すように本発明のレーキ付きバケット2は、キャリングチェーンが回動して、スプロケットに噛み込むときに、歯面との衝突によって生じる衝撃や摩擦を緩和するためにコロの働きをするローラ5が設けられ、キャリングチェーンの各リンクプレート7にはバケット3が取り付けられている。バケット3には下流側へ突出したレーキ片4が等間隔に複数配置され、レーキ片4によって取水路の下流側へ向かって凹凸形状を形成している。
取水路の幅やバースクリーンの仕様に応じてバケット3のサイズとレーキ片4の個数、レーキ片4同士の間隔は変更可能である。
【0026】
図2(a)が示すように、レーキ片4の正面形状はバケット3の進行方向に向かって鋭角の凸形状を形成している。また、図2(b)が示すように、バケット3より下流側へ突出して備えられた前記レーキ片4の側面における断面形状が非直角の対角を有する右肩上がりの四角形である。
図2(a)において、レーキ片4の正面形状は頂角が鋭角の二等辺三角形若しくは直角三角形が好ましく、バケット3の進行方向に凸となる頂角の角度は10~60度の鋭角である。そのため、図2(b)に示すレーキ片4の刃幅は、レーキ片4の頂角の角度が小さくなるほど大きくなる。
【0027】
また、レーキ片4の正面形状が、2つの直角三角形の斜辺によってV字を作るように並べて形成した2つの鋭角を有する形状、つまり、矩形から二等辺三角形を切り欠いた形状であっても良い。
このとき、レーキ片4の切り欠き部分の二等辺三角形の底辺はレーキ片4の幅と等しく、高さは適宜変更することができる。切り欠き部分の二等辺三角形の高さを変更することで、レーキ片4に形成された2つの鋭角の角度を調整することができる。
具体的には、切り欠き部分の二等辺三角形の高さを低くするとレーキ片4に形成された2つの鋭角の角度は大きくなり、切り欠き二等辺三角形の高さを高くするとレーキ片4に形成された2つの鋭角の角度は小さくなる。
【0028】
レーキ片4の素材は、バースクリーンなどに用いられる同じ鋼材であることが望ましい。さらに、レーキ片4の下方において、レーキ片4で貝類などの塵芥を除去した後にバースクリーンの隙間を洗浄できる洗浄ブラシを配しても良い。
【0029】
このように本発明のレーキ付きバケット2によって、バースクリーンの隙間に強固に付着した貝類を切断することができ、除去が可能になる。
そのため、本発明のレーキ付きバケット2によるバースクリーンからの貝類の除去作業は、取水口を閉塞して水を抜き取ったり潜水夫が作業したりする必要がなく、取水運転をしながら連続的かつ効率的に行なうことができる。また、レーキ片4の形状を変えるだけで、コンプレッサなどを新設する必要はなく、設備の微調整をする手間がかからない。
【0030】
また、本発明のレーキ付きバケット2と従来のレーキ付きバケット12を組み合わせて構成しても良い。この構成によると、バースクリーンに付着した貝類を本発明のレーキ付きバケット2のレーキ片4によって切断した後、従来のレーキ付きバケット12のレーキ片14がバースクリーンの隙間に嵌合して上昇移動することができるため、切断した貝類をより効率良く除去することが可能になる。
【0031】
たとえば、バースクリーンに小さい貝類が多く付着しているときは、本発明のレーキ付きバケット2を2個と従来のレーキ付きバケット12を1個、上下交互に組み合わせると良い。この構造より、本発明のレーキ付きバケット2が複数個あることによって連続して貝類を切断した上で、従来のレーキ付きバケット12によって切断後の貝類を確実に掻き取ることができる。
【0032】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
2 本発明のレーキ付きバケット
3、13 バケット
4、14 レーキ片
5、15 ローラ
6 リブ
7、17 リンクプレート
12 従来のレーキ付きバケット
20 バースクリーン装置
21A 上部スプロケットホイール
21B 下部スプロケットホイール
22 レーキ付きバケット
26 ハウジング
27 案内板
28 トラフ
29 キャリングチェーン
図1
図2
図3
図4