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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】変圧器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/26 20060101AFI20250212BHJP
   H01F 27/06 20060101ALI20250212BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20250212BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
H01F27/26 130C
H01F27/06
H01F30/10 T
H01F41/12 A
H01F41/12 E
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021034399
(22)【出願日】2021-03-04
(65)【公開番号】P2022134911
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今 元
(72)【発明者】
【氏名】高山 吉幸
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-062279(JP,A)
【文献】特開2019-036570(JP,A)
【文献】特開2003-197440(JP,A)
【文献】特開平10-340815(JP,A)
【文献】実開平4-96824(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/00-27/06
H01F 27/24-27/26
H01F 27/28
H01F 27/32
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 41/00-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10-41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主脚および帰路脚を含む鉄心と、
前記主脚を包囲する樹脂モールドコイルと、
前記樹脂モールドコイルの外周面と前記帰路脚の内面との間に設置され、前記帰路脚の内面に沿う平板状の絶縁板と
前記帰路脚の外面に接触した状態で前記鉄心を支持する支持体と、
前記樹脂モールドコイルの外周面と前記絶縁板との間に設置され、前記絶縁板と比較して柔軟な絶縁性の変形シートと
を具備し、
前記絶縁板は、前記樹脂モールドコイルの軸方向において当該樹脂モールドコイルの上面と下面とにわたり、
前記帰路脚の内面に平行で前記樹脂モールドコイルの軸方向に直交する第1方向における前記絶縁板の側面は、前記帰路脚の内面よりも前記第1方向において外側に位置し、
前記変形シートは、前記絶縁板の全体に重なる
変圧器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気回路を構成する鉄心と電気回路を構成するコイルとを具備する各種の変圧器が、従来から提案されている。例えば特許文献1には、絶縁性の樹脂材料によりコイルをモールドした樹脂モールドコイルが鉄心の各脚部を包囲する構造の変圧器が開示されている。また、特許文献2には、鉄心を構成する複数の脚部のうちコイルが巻回された3個の主脚の両側に、磁気回路の帰路に相当する2個の帰路脚が設置された変圧器が開示されている。変圧器の鉄心は、例えば電磁鋼板等の金属層を多層に積層または巻回することで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-029505号公報
【文献】特開2002-025834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鉄心が帰路脚を含む従来の変圧器においては、帰路脚の変形が問題となる。例えば、鉄心の自重により帰路脚の内面が局所的に波打つ場合がある。帰路脚が樹脂モールドコイル側に変形した状態では、帰路脚の内面と樹脂モールドコイルの外周面との距離が充分に確保されない可能性がある。また、鉄心を構成する金属層の層間に隙間が発生し、結果的に帰路脚の厚さが局所的に設計値を上回る状況も想定される。以上の事情を考慮して、本発明のひとつの態様は、変圧器を構成する鉄心の帰路脚の変形を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の好適な態様に係る変圧器は、主脚および帰路脚を含む鉄心と、前記主脚を包囲する樹脂モールドコイルと、前記樹脂モールドコイルの外周面と前記帰路脚の内面との間に設置され、前記帰路脚の内面に沿う平板状の絶縁板とを具備する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、変圧器を構成する鉄心の帰路脚の変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る変圧器の正面図である。
図2】変圧器における樹脂モールドコイルおよび鉄心の正面図および断面図である。
図3】変圧器のうち絶縁板の近傍を拡大した正面図である。
図4図3におけるB-B線の断面図である。
図5】第2実施形態に係る変圧器のうち絶縁板の近傍を拡大した正面図である。
図6図5におけるC-C線の断面図である。
図7】第3実施形態に係る変圧器の正面図である。
図8】変形例に係る変圧器の断面図である。
図9】変形例に係る変圧器の断面図である。
図10】変形例に係る変圧器の正面図である。
図11】変形例に係る変圧器の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、各図面においては、各要素の寸法および縮尺が実際の製品とは相違する場合がある。また、以下に説明する形態は、本発明を実施する場合に想定される具体例であるから、本発明の範囲は以下の形態には限定されない。
【0009】
A:第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る変圧器100の正面図である。図1に例示される通り、以下の説明においては、相互に直交するX軸とY軸とZ軸とを便宜的に想定する。X軸とY軸とを含む平面は水平面に相当し、Z軸の方向は鉛直方向に相当する。
【0010】
第1実施形態の変圧器100は、電磁誘導を利用して交流電圧を変換する電力機器である。図1に例示される通り、変圧器100は、3個の樹脂モールドコイル10と鉄心20と支持フレーム30と設置台40と2個の絶縁板50とを具備する。3個の樹脂モールドコイル10は、変圧器100の電気回路を構成し、鉄心20は、変圧器100の磁気回路を構成する。なお、図1においては絶縁板50に便宜的にハッチングが付されている。
【0011】
図2は、樹脂モールドコイル10と鉄心20と絶縁板50とに便宜的に着目した正面図および断面図である。図2の断面図は、図2の正面図におけるA-A線の断面図である。3個の樹脂モールドコイル10は、X軸の方向に配列される。3個の樹脂モールドコイル10の各々は、絶縁性の樹脂材料によりコイルをモールドした筒状の構造体であり、中心軸がZ軸に沿うように設置される。すなわち、Z軸の方向は、樹脂モールドコイル10の軸方向に相当する。各樹脂モールドコイル10のコイルは、配線(図示略)により相互に接続される。
【0012】
図2の断面図に例示される通り、第1実施形態の各樹脂モールドコイル10は、高圧モールドコイル11と低圧モールドコイル12とを含む。高圧モールドコイル11および低圧モールドコイル12の各々は、導電材料で筒状に形成されたコイルと、当該コイルを内包する樹脂モールドとを含む。高圧モールドコイル11は、低圧モールドコイル12を包囲する。具体的には、高圧モールドコイル11の内周面と低圧モールドコイル12の外周面とは、相互に間隔をあけて対向する。高圧モールドコイル11のコイルには、低圧モールドコイル12のコイルよりも高い電圧が印加される。なお、単体のコイルにより樹脂モールドコイル10を構成してもよい。
【0013】
鉄心20は、変圧器100の磁気回路を構成する。鉄心20は、例えば電磁鋼板またはアモルファス合金薄帯等の金属層が多層に積層または巻回された構造体であり、X軸の方向に相互に連結された4個の矩形環状の部分で構成される。第1実施形態の鉄心20は、第1ヨーク部21と第2ヨーク部22と5個の脚部23とを具備する。各脚部23は、Z軸の方向に延在する柱状の部分である。5個の脚部23は、X軸の方向に相互に間隔をあけて設置される。第1ヨーク部21および第2ヨーク部22は、X軸の方向に延在する。第1ヨーク部21は、5個の脚部23の上端を相互に連結する部分であり、第2ヨーク部22は、5個の脚部23の下端を相互に連結する部分である。以上の説明から理解される通り、第1実施形態の変圧器100は、3相5脚鉄心変圧器である。
【0014】
5個の脚部23は、3個の主脚23aと2個の帰路脚23bとを含む。2個の帰路脚23bの間に3個の主脚23aが位置する。3個の樹脂モールドコイル10の各々は、鉄心20の3個の主脚23aのうち当該樹脂モールドコイル10に対応する1個の主脚23aを包囲する。すなわち、各主脚23aは、複数の脚部23のうち樹脂モールドコイル10が包囲する脚部23である。他方、帰路脚23bは、鉄心20の複数の脚部23のうち磁気回路の帰路として機能する脚部23(すなわち側脚)である。以上の説明から理解される通り、第1実施形態の鉄心20は主脚23aおよび帰路脚23bを含む。図2に例示される通り、2個の帰路脚23bの間において3個の樹脂モールドコイル10がX軸の方向に配列する。
【0015】
図1の支持フレーム30は、3個の樹脂モールドコイル10と鉄心20と2個の絶縁板50とを支持する。第1実施形態の支持フレーム30は、第1支持体31と第2支持体32と2個の側部支持体33とを含む矩形枠状の構造体である。第1支持体31および第2支持体32は、X軸の方向に延在する部材である。第1支持体31は、鉄心20の第1ヨーク部21を支持する。第2支持体32は、鉄心20の第2ヨーク部22を支持する。2個の側部支持体33は、Z軸の方向に延在する構造体である。具体的には、各側部支持体33は、第1支持体31および第2支持体32の各々の端部を相互に連結する。設置台40は、支持フレーム30を支持する台座である。
【0016】
第1支持体31の下面と3個の樹脂モールドコイル10の上面10aとの間には複数のスペーサ35が介在する。樹脂モールドコイル10の上面10aは、樹脂モールドコイル10のうちZ軸の負方向に位置する端面である。他方、第2支持体32の上面と3個の樹脂モールドコイル10の下面10bとの間には複数のスペーサ36が介在する。樹脂モールドコイル10の下面10bは、樹脂モールドコイル10のうちZ軸の正方向に位置する端面である。以上の説明から理解される通り、3個の樹脂モールドコイル10は、第1支持体31と第2支持体32との間に支持される。なお、図1においてはスペーサ35およびスペーサ36に便宜的に網掛が付されている。
【0017】
図3は、2個の絶縁板50のうち図2における右側の絶縁板50の近傍を拡大した正面図であり、図4は、図3におけるB-B線の断面図である。図3には、3個の樹脂モールドコイル10のうち右側の樹脂モールドコイル10と、2個の帰路脚23bのうち右側の帰路脚23bと、2個の側部支持体33のうち右側の側部支持体33とが図示されている。側部支持体33の一部が図3では便宜的に破断されている。また、図3においてスペーサ35およびスペーサ36の図示は便宜的に省略されている。なお、変圧器100の左側に位置する要素(樹脂モールドコイル10,帰路脚23bおよび絶縁板50)の構造は、図3および図4における左右を反転させた構造であるから、以下では詳細な説明を省略する。
【0018】
図4に例示される通り、帰路脚23bは、内面61と外面62と前面63と背面64とを含む角柱状である。内面61は、鉄心20の内側を向く壁面であり、外面62は、内面61とは反対側の壁面である。帰路脚23bの内面61および外面62は、Y-Z平面に平行な平坦面である。Y軸の方向(第1方向の一例)は、帰路脚23bの内面61または外面62に平行で樹脂モールドコイル10の軸方向(Z軸の方向)に直交する方向である。前面63および背面64の各々は、内面61と外面62とを相互に連結する壁面である。具体的には、前面63および背面64は、X-Z平面に平行な平坦面である。
【0019】
側部支持体33は、基体部331と側面部332と側面部333とを含む構造体である。基体部331と側面部332と側面部333との各々は、Z軸の方向に延在する平板状の部分である。側面部332は、基体部331における一方の長辺に連続し、側面部333は、基体部331における他方の長辺に連続する。側面部332および側面部333は、基体部331の各縁辺からX軸の負方向に突出する。すなわち、側面部332および側面部333は、Y軸の方向に相互に間隔をあけて対向する。
【0020】
帰路脚23bは、側部支持体33により支持される。具体的には、帰路脚23bの外面62は、側部支持体33のうち基体部331の内面に接触する。すなわち、側部支持体33は、帰路脚23bの外面62に接触した状態で鉄心20を支持する。側部支持体33は、「支持体」の一例である。なお、支持フレーム30の全体を「支持体」と解釈してもよい。
【0021】
Y軸の方向における帰路脚23bの長さは、Y軸の方向における樹脂モールドコイル10の長さを下回る。図4に例示される通り、帰路脚23bの内面61は、高圧モールドコイル11の外周面に間隔をあけて対向する。高圧モールドコイル11のうち帰路脚23bの内面61に対向する領域(以下「対向面」という)13は、当該内面61に平行な平坦面である。以上の説明から理解される通り、高圧モールドコイル11の対向面13と帰路脚23bの内面61との間には、所定の間隔の空間が形成される。なお、高圧モールドコイル11の外周面は、樹脂モールドコイル10の外周面(対向面13)とも換言される。
【0022】
絶縁板50は、全域にわたり一定の厚さに形成された矩形状の板状部材である。具体的には、絶縁板50は、例えばフェノール樹脂またはガラスエポキシ等の絶縁性の樹脂材料で形成された積層板である、絶縁板50は、第1面51と第2面52とを含む。第1面51は、絶縁板50の一方の板面であり、第2面52は、第1面51とは反対側の板面である。
【0023】
図3および図4に例示される通り、絶縁板50は、樹脂モールドコイル10の対向面13と帰路脚23bの内面61との間に設置される。具体的には、絶縁板50の第1面51は樹脂モールドコイル10の対向面13に密着し、絶縁板50の第2面52は帰路脚23bの内面61に密着する。すなわち、絶縁板50は、樹脂モールドコイル10の対向面13と帰路脚23bの内面61とに沿って設置される。側部支持体33は、帰路脚23bの外面62を絶縁板50側に押圧する。すなわち、側部支持体33は、絶縁板50の第2面52に帰路脚23bを押付けた状態で当該帰路脚23bを支持する。絶縁板50の第1面51は、例えば接着剤により樹脂モールドコイル10の対向面13に接着される。他方、絶縁板50の第2面52は、帰路脚23bの内面61に接着されない。以上の構成によれば、樹脂モールドコイル10と帰路脚23bとの一方が他方に対してY-Z平面に平行な方向に移動した場合に、絶縁板50が帰路脚23bに対して摺動する。したがって、絶縁板50が樹脂モールドコイル10から剥離する可能性が低減される。なお、絶縁板50の第2面52が帰路脚23bの内面61に接着され、第1面51は樹脂モールドコイル10の対向面13に接着されない構成、または、絶縁板50が樹脂モールドコイル10および帰路脚23bの双方に接着された構成も想定される。
【0024】
図3に例示される通り、絶縁板50の上面53と下面54とに着目してZ軸の方向における絶縁板50の位置および範囲を説明する。図3に例示される通り、絶縁板50の上面53は、絶縁板50のうちZ軸の負方向に位置する端面であり、X-Y平面に平行な平坦面である。絶縁板50の下面54は、絶縁板50のうちZ軸の正方向に位置する端面であり、X-Y平面に平行な平坦面である。
【0025】
絶縁板50は、Z軸の方向において樹脂モールドコイル10の上面10aと下面10bとにわたる。具体的には、絶縁板50の上面53と樹脂モールドコイル10の上面10aとは同一の平面内(いわゆる面一)に位置する。すなわち、絶縁板50の上面53と樹脂モールドコイル10の上面10aとは段差なく相互に連続する。同様に、絶縁板50の下面54と樹脂モールドコイル10の下面10bとは同一の平面内に位置する。すなわち、絶縁板50の下面54と樹脂モールドコイル10の下面10bとは段差なく相互に連続する。
【0026】
次に、図4に例示される通り、絶縁板50の側面55と側面56とに着目してY軸の方向における絶縁板50の位置および範囲を説明する。図4に例示される通り、絶縁板50の側面55は、絶縁板50のうちY軸の正方向に位置する側面であり、絶縁板50の側面56は、絶縁板50のうちY軸の負方向に位置する側面である。側面55および側面56は、X-Z平面に平行な平坦面である。
【0027】
絶縁板50の側面55および側面56は、Y軸の方向において帰路脚23bの内面61よりも外側に位置する。すなわち、側面55は、帰路脚23bの前面63よりもY軸の正方向に位置し、側面56は、帰路脚23bの背面64よりもY軸の負方向に位置する。帰路脚23bの前面63からY軸の正方向に絶縁板50が張出し、帰路脚23bの背面64からY軸の負方向に絶縁板50が張出すと表現してもよい。以上の説明から理解される通り、帰路脚23bのうち樹脂モールドコイル10側の角部Cと当該樹脂モールドコイル10の対向面13との間には絶縁板50が介在する。帰路脚23bの角部Cは、帰路脚23bの内面61と前面63または背面64とで形成される角状の隅部である。また、絶縁板50は、Y軸の方向において、側部支持体33の側面部332の外面と側面部333の外面との間の範囲内に位置する。
【0028】
以上の説明から理解される通り、第1実施形態においては、樹脂モールドコイル10の対向面13と帰路脚23bの内面61との間に平板状の絶縁板50が設置される。したがって、以下に例示される通り、帰路脚23bの内面61が絶縁板50の第2面52に接触することで、当該帰路脚23bの変形を抑制できる。
【0029】
絶縁板50が設置されない構成(以下「対比例」という)においては、例えば鉄心20の自重により帰路脚23bの内面61に局所的な波打ちが発生する場合がある。帰路脚23bの内面61に発生した波打ちの山部分においては、樹脂モールドコイル10の対向面13と帰路脚23bの内面61との距離が設計値を下回る可能性がある。第1実施形態によれば、帰路脚23bの内面61が絶縁板50に接触することで当該内面61における波打ちが抑制されるから、樹脂モールドコイル10と帰路脚23bとの距離(絶縁距離)を充分に確保できる。また、変圧器100の製造工程のうち各樹脂モールドコイル10に鉄心20の各主脚23aを挿入する工程において、帰路脚23bの内面61は絶縁板50の第2面52に沿って摺動する。すなわち、絶縁板50は、帰路脚23bを案内するガイドとして機能する。したがって、樹脂モールドコイル10と帰路脚23bとを高精度に組立てることが可能である。
【0030】
また、対比例においては、鉄心20を構成する金属層の層間に隙間が発生することに起因して、帰路脚23bの厚さ(内面61と外面62との距離)が設計値よりも増加する可能性がある。第1実施形態によれば、側部支持体33と絶縁板50との間に挟持されることで帰路脚23bがX軸の方向に圧縮されるから、対比例で問題となる帰路脚23bの厚さの増加が抑制される。帰路脚23bの厚さの増加が抑制される結果、変圧器100が小型化されるという利点もある。
【0031】
第1実施形態においては、樹脂モールドコイル10と帰路脚23bとの間に絶縁板50が介在する。したがって、樹脂モールドコイル10の対向面13と帰路脚23bの内面61とが相互に離間する構成と比較して、樹脂モールドコイル10に発生した熱が絶縁板50を介して帰路脚23bに伝導し易い。帰路脚23bは樹脂モールドコイル10に包囲されていないから、絶縁板50を介して伝導する熱は帰路脚23bから効果的に放散される。以上の通り、第1実施形態によれば、変圧器100に発生する熱を効果的に放散できる。第1実施形態においては特に、高圧モールドコイル11の対向面13に絶縁板50が接触する。高圧モールドコイル11は低圧モールドコイル12と比較して発熱し易いから、絶縁板50を介した熱伝導が発生し易い第1実施形態は、特に有効である。
【0032】
また、第1実施形態においては、絶縁板50の側面55および側面56がY軸の方向において帰路脚23bの内面61よりも外側に位置する。すなわち、帰路脚23bにおける内面61の周縁に形成される角部Cと、樹脂モールドコイル10との間に絶縁板50が介在する。以上の構成によれば、帰路脚23bの角部Cと樹脂モールドコイル10の外周面との間において電気的な絶縁を確保する効果(以下「絶縁バリア効果」という)が絶縁板50により実現される。第1実施形態においては特に、樹脂モールドコイル10の上面10aと下面10bとにわたり(すなわち対向面13の全長にわたり)絶縁板50がZ軸の方向に延在する。したがって、Z軸の方向において絶縁板50が樹脂モールドコイル10の対向面13の一部のみに局所的に対向する構成(すなわち、絶縁板50の全長が樹脂モールドコイル10の全長を下回る構成)と比較して、絶縁板50の絶縁バリア効果を充分に確保できる。
【0033】
B:第2実施形態
第2実施形態を以下に説明する。なお、以下に例示する各構成において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0034】
図5は、第2実施形態の変圧器100のうち絶縁板50の近傍を拡大した正面図であり、図6は、図5におけるC-C線の断面図である。図5は、第1実施形態の図3に対応し、図6は、第1実施形態の図4に対応する。図5および図6に例示される通り、第2実施形態の変圧器100は、第1実施形態と同様の要素に加えて変形シート70を具備する。
【0035】
変形シート70は、絶縁板50と比較して柔軟なシート状または平板状の構造体である。すなわち、例えば外部からの押圧により変形シート70の表面は変形する。変形シート70は、第1面71と第2面72とを含む。第1面71は、変形シート70の一方の板面であり、第2面72は、第1面71とは反対側の板面である。変形シート70は、全域にわたり一定の厚さ(例えば2mm程度)に形成される。変形シート70の厚さは絶縁板50の厚さを下回る。変形シート70は、例えばゴム等の各種の絶縁材料で形成される。例えば弾性変形が可能なゴムシートが変形シート70として利用される。
【0036】
変形シート70は、樹脂モールドコイル10の対向面13と絶縁板50の第1面51との間に設置される。具体的には、変形シート70の第1面71は樹脂モールドコイル10の対向面13に密着し、変形シート70の第2面72は絶縁板50の第1面51に密着する。すなわち、変形シート70は、樹脂モールドコイル10の対向面13と帰路脚23bの内面61とに沿って設置される。変形シート70の第1面71は、例えば接着剤により樹脂モールドコイル10の対向面13に接着される。また、変形シート70の第2面72は、例えば接着剤により絶縁板50の第1面51に接着される。他方、絶縁板50の第2面52は、第1実施形態と同様に、帰路脚23bの内面61に接着されない。以上の構成によれば、樹脂モールドコイル10と帰路脚23bとの一方が他方に対してY-Z平面に平行な方向に移動した場合に、絶縁板50が帰路脚23bに対して摺動するから、変形シート70の剥離の可能性が低減される。なお、変形シート70の第1面71が樹脂モールドコイル10の対向面13に接着されない構成、または、変形シート70の第2面72が絶縁板50に接着されない構成も想定される。例えば、絶縁板50の第2面52が帰路脚23bの内面61に接着され、変形シート70の第2面72が絶縁板50に接着され、かつ、変形シート70の第1面71は樹脂モールドコイル10の対向面13に接着されない構成も想定される。
【0037】
変形シート70は、絶縁板50の全域に重なるように平面視で絶縁板50と同等の形状(例えば矩形状)および寸法に形成される。したがって、変形シート70は、Z軸の方向において樹脂モールドコイル10の上面10aと下面10bとにわたり延在する。また、図6に例示される通り、変形シート70の側面は、Y軸の方向において帰路脚23bの内面61よりも外側に位置する。
【0038】
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。ところで、樹脂モールドコイル10の対向面13または絶縁板50の第1面51には、例えば製造誤差に起因した凹凸が存在する場合がある。変形シート70が設置されない第1実施形態においては、樹脂モールドコイル10の対向面13と絶縁板50の第1面51との相互間で作用する圧力が、対向面13または第1面51の凹凸に応じて不均一に分布する可能性がある。例えば、対向面13の凸部により第1面51に対して局所的な圧力が作用する場合、または、第1面51の凸部により対向面13に対して局所的な圧力が作用する場合がある。
【0039】
第2実施形態によれば、樹脂モールドコイル10の対向面13の凹凸に応じて変形シート70の第1面71が変形し、絶縁板50の第1面51の凹凸に応じて変形シート70の第2面72が変形する。したがって、樹脂モールドコイル10の対向面13と絶縁板50の第1面51との相互間で作用する圧力が、変形シート70の面内で均一化されるという利点がある。第2実施形態においては特に、変形シート70が絶縁板50の全体に重なるから、圧力の均一化という前述の効果は格別に顕著である。他方、第1実施形態によれば、変形シート70が設置されないから、第2実施形態と比較して変圧器100の製造コストが低減されるという利点がある。したがって、樹脂モールドコイル10と絶縁板50との間における圧力の不均一性が特段の問題とならない場合には、製造コストの観点から第1実施形態が有利である。
【0040】
C:第3実施形態
図7は、第3実施形態における変圧器100の構成を例示する正面図である。第1実施形態においては、3個の樹脂モールドコイル10を具備する3相5脚鉄心変圧器を例示した。第3実施形態の変圧器100は、1個の樹脂モールドコイル10を具備する単相3脚鉄心変圧器である。すなわち、第3実施形態の変圧器100における鉄心20は、1個の主脚23aと2個の帰路脚23bとを含む3個の脚部23を具備する。各帰路脚23bと樹脂モールドコイル10との間に絶縁板50が設置される構成は、第1実施形態と同様である。また、絶縁板50に関する構成も第1実施形態と同様である。したがって、第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。
【0041】
以上の例示から理解される通り、変圧器100の鉄心20に含まれる主脚23aおよび帰路脚23bの個数、または、樹脂モールドコイル10の個数は任意である。また、樹脂モールドコイル10と絶縁板50の間に変形シート70を設置した第2実施形態の構成は、第3実施形態の変圧器100にも同様に適用される。
【0042】
D:変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0043】
(1)前述の各形態においては、絶縁板50の側面55および側面56が、Y軸の方向において帰路脚23bの内面61よりも外側に位置する構成を例示したが、絶縁板50と帰路脚23bとの関係は以上の例示に限定されない。
【0044】
例えば、図8に例示される通り、絶縁板50の側面55および側面56が、Y軸の方向において帰路脚23bの内面61の内側に位置する構成も想定される。図8の構成においては、絶縁板50の側面55が帰路脚23bの前面63よりもY軸の負方向に位置し、絶縁板50の側面56が帰路脚23bの背面64よりもY軸の正方向に位置する。変形シート70は、絶縁板50の全域に重なるように平面視で絶縁板50と同等の形状および寸法に形成される。以上の構成によれば、第1実施形態と比較して絶縁板50のサイズが縮小される。したがって、変圧器100の製造コストが削減されるという利点がある。
【0045】
また、前述の各形態においては、絶縁板50が、Y軸の方向において、側部支持体33の側面部332の外面と側面部333の外面との間の範囲内に位置する形態を例示したが、図9に例示される通り、側部支持体33の側面部332の外面と側面部333の外面との間の範囲の外側まで、絶縁板50がY軸の方向に延在する構成も想定される。図9の構成においては、絶縁板50の側面55が側面部332の外面よりもY軸の正方向に位置し、絶縁板50の側面56が側面部333の外面よりもY軸の負方向に位置する。変形シート70は、絶縁板50の全域に重なるように平面視で絶縁板50と同等の形状および寸法に形成される。図9の構成によれば、第1実施形態において説明した絶縁板50の絶縁バリア効果を充分に確保できる。なお、図8および図9に例示した構成において変形シート70を省略してもよい。
【0046】
(2)前述の各形態においては、絶縁板50の上面53と樹脂モールドコイル10の上面10aとが同一の平面内に位置し、絶縁板50の下面54と樹脂モールドコイル10の下面10bとが同一の平面内に位置する形態を例示したが、絶縁板50の上面53と樹脂モールドコイル10の上面10aとの関係、および、絶縁板50の下面54と樹脂モールドコイル10の下面10bとの関係は、以上の例示に限定されない。
【0047】
例えば、図10に例示される通り、樹脂モールドコイル10の上面10aおよび下面10bから絶縁板50がZ軸の方向に張出す構成も想定される。図10の構成においては、絶縁板50の上面53が樹脂モールドコイル10の上面10aよりもZ軸の負方向に位置し、絶縁板50の下面54が樹脂モールドコイル10の下面10bよりもZ軸の正方向に位置する。変形シート70は、絶縁板50の全域に重なるように平面視で絶縁板50と同等の形状および寸法に形成される。第1実施形態から第3実施形態の構成(図3および図5)および図10の構成は、絶縁板50がZ軸の方向において樹脂モールドコイル10の上面10aと下面10bとにわたる構成として包括的に表現される。
【0048】
他方、図11に例示される通り、Z軸の方向において樹脂モールドコイル10の上面10aと下面10bとの間の範囲の一部に絶縁板50が位置する構成も想定される。図11の構成においては、絶縁板50の上面53が樹脂モールドコイル10の上面10aよりもZ軸の正方向に位置し、絶縁板50の下面54が樹脂モールドコイル10の下面10bよりもZ軸の負方向に位置する。変形シート70は、絶縁板50の全域に重なるように平面視で絶縁板50と同等の形状および寸法に形成される。以上の構成によれば、絶縁板50がZ軸の方向において樹脂モールドコイル10の上面10aと下面10bとにわたる構成(図3図5図10)と比較して絶縁板50のサイズが縮小される。したがって、変圧器100の製造コストが削減されるという利点がある。なお、図10および図11に例示した構成において変形シート70を省略してもよい。
【符号の説明】
【0049】
100…変圧器、10…樹脂モールドコイル、10a…上面、10b…下面、11…高圧モールドコイル、12…低圧モールドコイル、13…対向面、20…鉄心、21…第1ヨーク部、22…第2ヨーク部、23…脚部、23a…主脚、23b…帰路脚、30…支持フレーム、31…第1支持体、32…第2支持体、33…側部支持体、331…基体部、332…側面部、333…側面部、35,36…スペーサ、40…設置台、50…絶縁板、51…絶縁板の第1面、52…絶縁板の第2面、53…絶縁板の上面、54…絶縁板の下面、55,56…絶縁板の側面、61…帰路脚の内面、62…帰路脚の外面、63…帰路脚の前面、64…帰路脚の背面、70…変形シート、71…変形シートの第1面、72…変形シートの第2面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11