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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】エネルギーマネジメントシステム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20250212BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20250212BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20250212BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
H02J3/00 170
G06Q50/06
H02J3/00 130
H02J3/00 180
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J3/38 160
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021043252
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022142957
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 翔大
(72)【発明者】
【氏名】谷 賢治
(72)【発明者】
【氏名】石田 純
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-004529(JP,A)
【文献】特開2017-099198(JP,A)
【文献】特開2012-175791(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0046387(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
G06Q 50/06
H02J 3/32
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統(3)からの系統電力と発電装置(4)の発電電力とを蓄電することができる蓄電装置(2,20)を有し、上記系統電力の買電を制御するエネルギーマネジメントシステム(1)であって、
所定期間における、上記発電装置による発電量の時間推移、及び、需要家(5)における電力需要量の時間推移を予測する予測部(11)と、
上記予測部において予測された電力需給予測データと、上記電力系統からの買電単価に関する電力売買価格データと、に基づいて、上記所定期間における上記系統電力の買電の量及びタイミングを計画する計画部(12)と、
上記計画部が計画した買電計画に基づいて、上記系統電力の買電の量及びタイミングを制御する制御部(13)と、を有し、
上記予測部は、上記所定期間内において上記電力需給予測データを逐次更新するよう構成され、
上記所定期間は、上記買電単価が比較的安い買電低価格時間帯と、該買電低価格時間帯よりも上記買電単価が高い買電高価格時間帯とを有し、
上記計画部は、上記予測部において予測された、上記発電装置による発電量の時間推移と需要家における電力需要量の時間推移とに基づいて、上記買電高価格時間帯における不足電力量を算出し、該不足電力量を、上記買電低価格時間帯に、上記電力系統から買電して上記蓄電装置に充電するような上記買電計画を計画し、
上記計画部は、上記買電低価格時間帯から上記買電高価格時間帯へ切り替わる買価切替時刻よりも前に、上記買電計画を変更することが可能であり、
かつ、上記計画部は、上記不足電力量と最適充電電力とから、上記蓄電装置への上記不足電力量の充電時間を導き、上記買価切替時刻から上記充電時間を引いた時刻を、上記蓄電装置に充電するための上記系統電力の買電の開始時刻として計画するよう構成されている、エネルギーマネジメントシステム。
【請求項2】
電力系統(3)からの系統電力と発電装置(4)の発電電力とを蓄電することができる蓄電装置(2,20)を有し、上記系統電力の売電を制御するエネルギーマネジメントシステム(1)であって、
所定期間における、上記発電装置による発電量の時間推移、及び、需要家(5)における電力需要量の時間推移を予測する予測部(11)と、
上記予測部において予測された電力需給予測データと、上記電力系統への売電単価に関する電力売買価格データと、に基づいて、上記所定期間における上記系統電力の売電の量及びタイミングを計画する計画部(12)と、
上記計画部が計画した売電計画に基づいて、上記系統電力の売電の量及びタイミングを制御する制御部(13)と、を有し、
上記予測部は、上記所定期間内において上記電力需給予測データを逐次更新するよう構成され、
上記所定期間は、上記売電単価が比較的安い売電低価格時間帯と、該売電低価格時間帯よりも上記売電単価が高い売電高価格時間帯とを有し、
上記計画部は、上記予測部において予測された、上記発電装置による発電量の時間推移と需要家における電力需要量の時間推移とに基づいて、余剰電力量を算出し、該余剰電力量から売電予定量を算出し、該売電予定量を、上記売電高価格時間帯に、上記蓄電装置から放電して上記電力系統へ売電するような上記売電計画を計画し、
上記計画部は、上記売電低価格時間帯から上記売電高価格時間帯へ切り替わる売価切替時刻よりも前に、上記売電買計画を変更することが可能であり、
かつ、上記計画部は、上記売電予定量と最適放電電力とから、上記蓄電装置からの上記売電予定量の放電時間を導き、上記売価切替時刻から上記放電時間を引いた時刻を、上記蓄電装置から放電して上記電力系統へ売電する開始時刻として計画するよう構成されている、エネルギーマネジメントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーマネジメントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
系統電力を充電するための蓄電池の充放電を制御する充放電制御装置が、特許文献1に開示されている。この充放電制御装置においては、系統電力の買電単価と売電単価との間の大小関係、並びに、需要家における電力需要の予測値及び発電装置の発電量の予測値に応じて、蓄電池の充放電の量とタイミングを制御する。そして、買電単価が高い高価格時間帯において見込まれる不足電力を賄うべく、買電単価の低い低価格時間帯に、系統電力を購入して蓄電池に充電するような制御が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-4529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、需要家における電力需要の予測値及び発電装置の発電量の予測値は、状況の変化に伴い、変動しうる。したがって、実際の不足電力と予測した不足電力とが大きく乖離することも考えられる。このような場合、無駄な買電を招いたり、買電が不足したりすることが懸念される。その結果、電力コストの充分な低減という観点で、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、電力コストの低減を図ることができるエネルギーマネジメントシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、電力系統(3)からの系統電力と発電装置(4)の発電電力とを蓄電することができる蓄電装置(2,20)を有し、上記系統電力の買電を制御するエネルギーマネジメントシステム(1)であって、
所定期間における、上記発電装置による発電量の時間推移、及び、需要家(5)における電力需要量の時間推移を予測する予測部(11)と、
上記予測部において予測された電力需給予測データと、上記電力系統からの買電単価に関する電力売買価格データと、に基づいて、上記所定期間における上記系統電力の買電の量及びタイミングを計画する計画部(12)と、
上記計画部が計画した買電計画に基づいて、上記系統電力の買電の量及びタイミングを制御する制御部(13)と、を有し、
上記予測部は、上記所定期間内において上記電力需給予測データを逐次更新するよう構成され、
上記所定期間は、上記買電単価が比較的安い買電低価格時間帯と、該買電低価格時間帯よりも上記買電単価が高い買電高価格時間帯とを有し、
上記計画部は、上記予測部において予測された、上記発電装置による発電量の時間推移と需要家における電力需要量の時間推移とに基づいて、上記買電高価格時間帯における不足電力量を算出し、該不足電力量を、上記買電低価格時間帯に、上記電力系統から買電して上記蓄電装置に充電するような上記買電計画を計画し、
上記計画部は、上記買電低価格時間帯から上記買電高価格時間帯へ切り替わる買価切替時刻よりも前に、上記買電計画を変更することが可能であり、
かつ、上記計画部は、上記不足電力量と最適充電電力とから、上記蓄電装置への上記不足電力量の充電時間を導き、上記買価切替時刻から上記充電時間を引いた時刻を、上記蓄電装置に充電するための上記系統電力の買電の開始時刻として計画するよう構成されている、エネルギーマネジメントシステムにある。
本発明の他の態様は、電力系統(3)からの系統電力と発電装置(4)の発電電力とを蓄電することができる蓄電装置(2,20)を有し、上記系統電力の売電を制御するエネルギーマネジメントシステム(1)であって、
所定期間における、上記発電装置による発電量の時間推移、及び、需要家(5)における電力需要量の時間推移を予測する予測部(11)と、
上記予測部において予測された電力需給予測データと、上記電力系統への売電単価に関する電力売買価格データと、に基づいて、上記所定期間における上記系統電力の売電の量及びタイミングを計画する計画部(12)と、
上記計画部が計画した売電計画に基づいて、上記系統電力の売電の量及びタイミングを制御する制御部(13)と、を有し、
上記予測部は、上記所定期間内において上記電力需給予測データを逐次更新するよう構成され、
上記所定期間は、上記売電単価が比較的安い売電低価格時間帯と、該売電低価格時間帯よりも上記売電単価が高い売電高価格時間帯とを有し、
上記計画部は、上記予測部において予測された、上記発電装置による発電量の時間推移と需要家における電力需要量の時間推移とに基づいて、余剰電力量を算出し、該余剰電力量から売電予定量を算出し、該売電予定量を、上記売電高価格時間帯に、上記蓄電装置から放電して上記電力系統へ売電するような上記売電計画を計画し、
上記計画部は、上記売電低価格時間帯から上記売電高価格時間帯へ切り替わる売価切替時刻よりも前に、上記売電買計画を変更することが可能であり、
かつ、上記計画部は、上記売電予定量と最適放電電力とから、上記蓄電装置からの上記売電予定量の放電時間を導き、上記売価切替時刻から上記放電時間を引いた時刻を、上記蓄電装置から放電して上記電力系統へ売電する開始時刻として計画するよう構成されている、エネルギーマネジメントシステムにある。
【発明の効果】
【0007】
上記エネルギーマネジメントシステムにおいて、上記計画部は、上記系統電力の売買単価が切り替わる切替時刻に上記系統電力の売買が実質的に完了するように上記系統電力の売買の量及びタイミングを計画するよう構成されている。これにより、状況変化があったとき、実際に電力の売買を開始する前に電力売買計画を変更することができる可能性が高まる。そのため、結果的に不要であった電力の売買を抑制することができ、電力コストの低減を図ることができる。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、電力コストの低減を図ることができるエネルギーマネジメントシステムを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1における、エネルギーマネジメントシステムの概念説明図。
図2】実施形態1における、(a)買電単価及び売電単価の時間推移を示す線図、(b)電力需給予測データを示す線図。
図3】実施形態1における、計画部における処理のフロー図。
図4】実施形態1における、(a)買電単価及び売電単価の時間推移を示す線図、(b)電力需給予測データ及び買電計画を示す線図。
図5】実施形態1における、3時時点での電力需給予測データを示す線図。
図6】実施形態2における、(a)買電単価及び売電単価の時間推移を示す線図、(b)電力需給予測データ及び買電計画を示す線図。
図7】実施形態3における、(a)買電単価及び売電単価の時間推移を示す線図、(b)電力需給予測データ及び買電計画を示す線図。
図8】実施形態4における、エネルギーマネジメントシステムの概念説明図。
図9】実施形態4における、(a)買電単価及び売電単価の時間推移を示す線図、(b)電力需給予測データ及び買電計画を示す線図。
図10】実施形態5における、(a)買電単価及び売電単価の時間推移を示す線図、(b)電力需給予測データを示す線図。
図11】実施形態5における、計画部における処理のフロー図。
図12】実施形態5における、(a)買電単価及び売電単価の時間推移を示す線図、(b)電力需給予測データ及び売電計画を示す線図。
図13】実施形態5における、14時時点での電力需給予測データを示す線図。
図14】実施形態6における、(a)買電単価及び売電単価の時間推移を示す線図、(b)電力需給予測データ及び売電計画を示す線図。
図15】実施形態7における、(a)買電単価及び売電単価の時間推移を示す線図、(b)電力需給予測データ及び売電計画を示す線図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
エネルギーマネジメントシステムに係る実施形態について、図1図5を参照して説明する。
本形態のエネルギーマネジメントシステム1は、図1図2に示すごとく、蓄電装置2の充放電に伴う、系統電力の売買を制御するシステムである。蓄電装置2は、電力系統3からの系統電力と発電装置4の発電電力とを蓄電することができる。
【0011】
図1に示すごとく、エネルギーマネジメントシステム1は、予測部11と、計画部12と、制御部13と、を有する。
予測部11は、所定期間における、発電装置4による発電量の時間推移(図2(b)における破線曲線参照)、及び、需要家5における電力需要量の時間推移(図2(b)における実線曲線参照)を予測する。
【0012】
計画部12は、電力需給予測データと電力売買価格データとに基づいて、所定期間における系統電力の売買の量及びタイミングを計画する。電力需給予測データは、予測部11において予測された電力需給のデータである(図2(b)参照)。電力売買価格データは、電力系統3からの買電単価及び電力系統3への売電単価の少なくとも一方に関するデータである(図2(a)参照)。
制御部13は、計画部12が計画した電力売買計画に基づいて、系統電力の売買の量及びタイミングを制御する。
【0013】
計画部12は、図2に示すごとく、系統電力の売買単価が切り替わる切替時刻に系統電力の売買が実質的に完了するように、系統電力の売買の量及びタイミングを計画するよう構成されている。なお、系統電力の売買とは、電力系統3からの買電と、電力系統3への売電との一方又は双方を意味するものとする。
【0014】
本形態において、蓄電装置2は、例えばリチウムイオン電池等の蓄電池とすることができる。
発電装置4は、例えば、太陽光発電装置、風力発電装置、水力発電装置等とすることができる。本形態においては、発電装置4として太陽光発電装置を用いた場合について説明する。
【0015】
予測部11、計画部12、及び制御部13は、それぞれ、例えば、エネルギーマネジメントシステム1内に記憶された制御プログラムを実行するプロセッサであって、マイクロコンピュータ又は専用回路等により構成することができる。
【0016】
予測部11は、発電装置4における発電実績、需要家5における電力需要実績等に基づいて、電力需給予測データを算出する。すなわち、例えば、季節、気温、時刻、曜日、天気予報等、種々の要因と、過去の発電実績、過去の電力使用実績等との関係から、予測すべき所定期間における電力需給の予測を行う。予測部11は、インターネットやLAN等のネットワークに接続された通信部を介して、外部データを取得する。この通信部による通信は、有線通信及び無線通信のいずれか一方又は双方とすることができる。
【0017】
予測部11が算出した電力需給予測データは、計画部12に入力される。計画部12は、さらに外部から、電力売買価格データを取得する。計画部12も、ネットワークに接続された通信部を介して、外部データを取得する。この通信部も、有線通信及び無線通信のいずれか一方又は双方とすることができる。
【0018】
また、計画部12は、蓄電装置2の特性、状態等、蓄電装置2に関する情報を取得する。ここで、蓄電装置2に関する情報としては、例えば、蓄電装置2の充放電速度、充放電電力、機器温度や、現在充電されている電力量等が、考えられる。計画部12は、有線通信及び無線通信のいずれか一方又は双方によって、直接または間接的に、蓄電装置2と接続されている。蓄電装置2に関する情報も、系統電力の売買の量及びタイミングの計画に用いられる。
【0019】
そして、上述のように、計画部12は、系統電力の売買単価が切り替わる切替時刻に系統電力の売買が実質的に完了するように、系統電力の売買の量及びタイミングを計画する。ここで、「切替時刻に系統電力の売買が実質的に完了する」とは、例えば、系統電力の売買の完了時刻が、切替時刻と一致する場合のみならず、切替時刻に対して多少前後する場合も含む。例えば、系統電力の売買の完了時刻が、切替時刻の前後1時間以内である場合も、「切替時刻に系統電力の売買が実質的に完了する」場合に含まれるものとすることができる。
あるいは、「切替時刻に系統電力の売買が実質的に完了する」には、例えば、電力売買の予定量の9割以上が切替時刻に完了している場合も含めるものとすることができる。
【0020】
また、計画部12は、計画した系統電力の売買の量と、最適充放電電力とから、充放電時間を導く。そして、切替時刻から充放電時間を引いた時刻を、系統電力の売買の開始時刻として計画する。ここで、最適充放電電力は、例えば、蓄電装置2の最大充放電電力、蓄電装置2の損失が最小となる充放電電力、又は、系統電力の最大契約電力とすることができる。なお、充放電時間とは、充電時間又は放電時間を意味する。
【0021】
計画部12が計画した電力売買計画は、制御部13に送信される。この電力売買計画に基づいて、制御部13は、系統電力の売買の量及びタイミングを制御する。制御部13による、系統電力の売買の量及びタイミングの制御は、具体的には、制御部13が蓄電装置2に対して送信する充放電信号によって、行うことができる。充放電信号は、例えば、どの時刻にどれほどの時間、充放電を行うかを、蓄電装置2に指令する信号である。充放電信号は、例えば、有線通信及び無線通信のいずれか一方又は双方によって送信することができる。
【0022】
次に、本形態のエネルギーマネジメントシステム1による制御方法の一例を、図2図5を参照して、説明する。本形態においては、図2(a)に示すごとく、系統電力の買電単価が変動し、売電単価は変動しない場合の例を示す。また、ここでは、買電単価が常に売電単価よりも高い場合を想定する。また、計画部12が計画する電力売買計画は、ここでは、買電の量及びタイミングの計画、すなわち買電計画となる。予測部11によって電力需給を予測する所定期間は、現時点から24時間とする。ただし、当該所定期間は、これに限定されるものではない。
【0023】
図2(a)に示すごとく、所定期間は、買電単価が比較的安い買電低価格時間帯(本形態においては、0時~9時、及び、21時~24時)と、買電低価格時間帯よりも買電単価が高い買電高価格時間帯(本形態においては、9時~21時)とを有する。
【0024】
まず、図3を用いて、計画部12における処理フローの概略を説明する。
同図のステップS1に示すごとく、計画部12は、予測部11が予測した電力需給予測データ(図2(b)参照)に基づいて、買電高価格時間帯における不足電力量を算出する。次いで、ステップS2として、計画部12は、ステップS1にて算出した不足電力量と、最適充電速度とから、充電時間(例えば、6時間)を算出する。次いで、ステップS3として、買価切替時刻(例えば、9時)から充電時間(例えば6時間)を引いた時刻(例えば、3時)を、買電開始時刻として算出する。以下において、この計画部12による処理につき、説明する。
【0025】
計画部12は、予測部11において予測された発電装置4による発電量の時間推移(図2(b)の破線曲線参照)と需要家5における電力需要量の時間推移(図2(b)の実線曲線参照)とに基づいて、買電高価格時間帯における不足電力量を算出する。
【0026】
そして、計画部12は、不足電力量を、買電低価格時間帯に、電力系統3から蓄電装置2に充電するような買電計画を計画する。それと共に、買電低価格時間帯から買電高価格時間帯へ切り替わる買価切替時刻(本形態においては、9時)に買電が完了するように、買電計画を計画する。
【0027】
計画部12は、買価切替時刻に買電が完了するような、系統電力の買電開始時刻を、以下のように算出する。まず、算出した不足電力でもある系統電力の買電予定量と、最適充電電力とから、充電時間を導く。そして、買価切替時刻から充電時間を引いた時刻を、系統電力の買電の開始時刻として算出する。このように、計画部12が買電計画を計画する。
【0028】
予測部11による電力需給予測データは、逐次更新される。すなわち、電力需給予測データは、天気予報、気温等、変動しうる情報にも基づいて予測される。そのため、それらの情報の変化に伴って、電力需給予測データも変化しうる。図2(b)に示す電力需給予測データは、0時時点での電力需給予測データである。
【0029】
同図に示すように、電力需要量の予測値は、所定期間にわたり推移する。また、発電量の予測値も、所定期間にわたり推移する。発電装置4が太陽光発電装置である場合等には、日中の発電量の予測値が高くなり、夜間は発電量の予測値がゼロとなる。
【0030】
発電量が電力需要量を下回る時間帯は、蓄電装置2の電力を利用するか、電力系統3から買電することとなる。一方、発電量が電力需要量を上回る時間帯は、余剰電力が生まれるため、これを蓄電装置2に充電するか、電力系統に売電することとなる。ここでは、0時時点での蓄電装置2の充電量はゼロとする。また、余剰電力は蓄電装置2に充電し、売電は行わないものとする。
【0031】
0時の時点において、予測部11によって、図2(b)に示すような電力需給予測データを得たとする。この電力需給予測データによると、買電高価格時間帯の一部において、発電装置4による発電量にて、電力需要量を賄いきることができると共に余剰電力が生じる時間帯は、存在する。図2(b)における領域A1が、このときの余剰電力量を表す。また、同図の領域A2が、発電によって賄う電力需要量を表す。なお、同図の領域A5、A6は、系統電力の買電量を表す。
【0032】
その一方で、買電高価格時間帯の一部において、発電装置4による発電量にて、電力需要量を賄いきれない時間帯も、存在する。同図における領域A3、A4は、買電高価格時間帯において発電によって電力需要量を賄いきれない不足電力量を表す。ただし、この領域A4の少なくとも一部は、蓄電装置2に充電された余剰電力(領域A1参照)によって賄うことは可能である。
【0033】
つまり、余剰電力は、蓄電装置2に充電することができる。そして、余剰電力が充分に生じる場合には、余剰電力が生じた後の時間帯における不足電力量の少なくとも一部を、蓄電装置2に充電した電力によって賄うこともできる。ところが、余剰電力が生じる前の時間帯の不足電力量は、蓄電装置2に電力が溜まっていなければ、賄うことができない。また、買電高価格時間帯における不足電力量を、直接、系統電力にて賄おうとすると、電力コストが高くなってしまう。
【0034】
そこで、図4に示すごとく、9時以前の、買電低価格時間帯において、系統電力を購入して、蓄電装置2に蓄えておく。図4(b)における領域A7が、蓄電装置2への充電のための系統電力の買電量を表す。そして、この蓄電装置2に蓄えた電力によって、買電高価格時間帯における不足電力量を賄う。すなわち、買電高価格時間帯において、発電装置4による発電で賄うことができない分の電力需要を、蓄電装置2から放電して需要家5に供給する。このように、エネルギーマネジメントシステム1の計画部12は、買電高価格時間帯における不足電力量を予測して、買電低価格時間帯にその分の電力量を買電しておくように、計画する。
【0035】
図4(b)において、グラフの上に、蓄電装置2の充放電を、概念的に掲載している。蓄電装置2の中の矢印は、上向き矢印が充電、下向き矢印が放電をそれぞれ表す。
以上のように、0時時点における電力需給予測データに基づいて、買電計画が作成される。
【0036】
ところが、上述のように、電力需給予測データは、時間経過と共に変化しうる。すなわち、例えば、天気予報の変化、気温の変化等、種々の要因の変化に伴い、電力需給予測データは、変動する。例えば、3時の時点での電力需給予測データが、図5に示すような予測に変動することもあり得る。同図に示す電力需給予測データによると、買電高価格時間帯の全体にわたり、発電量が電力需要量を上回っている。
【0037】
このような電力需給予測データの変動は、例えば、天気予報が、0時時点では曇天との予報であったものが、3時時点では晴天との予報に変わった場合などが想定される。この場合、太陽光発電装置による発電量の予測は大幅に上昇する。また、例えば需要家5が一般家庭である場合など、晴天の予報に伴い、外出の確率が高くなり、家庭内電力需要量が少なくなるという予測になることも考えられる。
【0038】
このように、図5に示すような電力需給予測データでは、買電高価格時間帯(ここでは、9時~21時)において、発電量が電力需要量を上回っている。つまり、この電力需給予測データによると、買電高価格時間帯において、不足電力が生じないこととなる。そうすると、仮に、0時時点において計画した買電計画(図4(b)参照)をそのまま実行すると、余分な電力を購入することとなってしまう。
【0039】
そこで、3時の時点で、予測部11が予測した電力需給予測データに基づいて、計画部12は、買電計画を計画しなおす。ここで示す例の場合、買電は行わないという計画となる。また、その後の時刻において、予測部11が予測する電力需給予測データは、さらに変動する可能性もあり、その変動に応じて、計画部12は、買電計画を計画しなおす。
【0040】
このように、予測部11が予測する電力需給予測データは、時々刻々と変動しうる。それゆえ、早い時間帯に予測された電力需給予測データに基づいて、系統電力を購入すると、実際には不要であった電力を購入することにもなりかねない。
【0041】
それゆえ、買電低価格時間帯に電力を購入するという前提の下、なるべく最新の電力需給予測データに基づいて、買電計画を計画し、それを実行することが、電力コストの低減の観点から望ましい。そこで、上述したように、計画部12が買電計画を計画する際には、図4に示すごとく、買電低価格時間帯における最後の時間帯に買電するよう計画する。すなわち、買電低価格時間帯から買電高価格時間帯に切り替わる買価切替時刻に、買電が完了するように買電計画を計画する。
【0042】
具体的には、上述したように、買価切替時刻から充電時間を引いた時刻を、系統電力の買電開始時刻として、計画する。充電時間は、蓄電装置2の最適充放電電力と、計画された買電予定量とを基に、算出する。最適充電電力は、本形態においては、蓄電装置2の最大充電電力とする。最大充電電力は、蓄電装置2の固有値であって、蓄電装置2に充電可能な最大電力である。
【0043】
なお、最適充電電力として、例えば、蓄電装置2の損失最小充電電力とすることもできる。損失最小充電電力は、蓄電装置2の固有値であって、充電の際に生じる損失が最も低くなる、充電電力である。通常、この損失最小充電電力は、最大充電電力よりも小さい値となる。
【0044】
このようにして、0時時点において、計画部12が、例えば、充電時間を6時間と算出したとする。この場合、買電計画としては、買電開始時刻が3時となる。したがって、本形態においては、図4(b)に示すごとく、電力需要量に最大充電電力を上乗せした電力量を、3時から9時にかけて買電するという計画となる。
【0045】
そして、図5に示すごとく、3時の時点で予測部11が予測した電力需給予測データにおいて、買電高価格時間帯における不足電力がなくなっていた場合は、買電計画も変わる。そして、当初計画されていた制御部13による系統電力の買電を、取りやめることができる。0時時点にて計画した買電開始時刻(ここでは、3時)が過ぎる前に、買電しないという計画に変わったためである。その結果、不要な買電を防ぐことができ、電力コストの低減を図ることができる。
【0046】
次に、本形態の作用効果につき説明する。
上記エネルギーマネジメントシステム1において、計画部12は、買価切替時刻に系統電力の買電が実質的に完了するように買電の量及びタイミングを計画するよう構成されている。これにより、状況変化があったとき、実際に買電を開始する前に買電計画を変更することができる可能性が高まる。
【0047】
つまり、上述の例において、仮に、買電のタイミングを0時~6時とするなど、早いタイミングとする計画を立てていたとする。そして、3時の時点で図5に示すような電力需給予測データに変化した場合にも、3時の時点で既に買電が進んでいるため、無駄な買電を行ったことになる。これに対して、買電のタイミングを3時~9時に計画していれば、上記の場合、無駄な買電を回避できることとなる。
そのため、結果的に不要であった買電を抑制することができ、電力コストの低減を図ることができる。
【0048】
計画部12は、切替時刻に系統電力の買電が実質的に完了するように買電の量及びタイミングを計画する。これにより、当該買電計画に基づく買電が実行される前に、状況の変化に応じて、買電計画を変更しやすくなる。そして、この場合、変更した買電計画に基づいて、制御部13が買電の量及びタイミングを制御することが可能となる。そのため、購入する系統電力の過剰を抑制することができ、電力コストの低減を図ることができる。
【0049】
また、計画部12は、計画した系統電力の購入の量と、最適充放電電力とから、充放電時間を導く。そして、切替時刻から充放電時間を引いた時刻を、系統電力の買電の開始時刻として計画する。これにより、買電低価格時間帯の中で、切替時刻の直前に買電が完了するように、正確に買電計画を計画しやすい。その結果、無駄な買電を効果的に抑制し、電力コストの低減をより図ることができる。
【0050】
また、本形態においては、図4(b)に示すごとく、買価切替時刻に買電が完了するように、買電計画を計画する。したがって、所定期間において買電単価が変動する場合に、電力コストを効果的に低減することができる。
【0051】
以上のごとく、本形態によれば、電力コストの低減を図ることができるエネルギーマネジメントシステムを提供することができる。
【0052】
(実施形態2)
本形態は、図6に示すごとく、蓄電装置2の最適充電電力が、充電途中で変化する場合の形態である。
本形態においても、実施形態1と同様に、買電高価格時間帯における不足電力量を賄うために、蓄電装置2へ充電する電力を、買電低価格時間帯に電力系統から購入する、という買電計画を立てる場合がある。このとき、蓄電装置2に充電するための電力を、需要家5における電力需要量に上乗せした電力量を、買電することとなる。
【0053】
ここで、実施形態1と同様に、蓄電装置2の最大充電電力を電力需要量に上乗せして買電するように計画すると、電力需要量が比較的大きくなった場合に、買電電力量が、電力系統(例えば電力会社)との最大契約電力を超えることも想定される。そこで、このような場合には、買電電力の上限値を最大契約電力に設定して、買電計画を計画する。この場合、最大契約電力に達した状態においては、蓄電装置2への充電電力が比較的小さくなる。その分、充電時間は長くなるため、買電開始時刻を早めて、不足電力量を蓄電装置2へ充電できるように、買電計画を計画する。
【0054】
なお、最大契約電力は、電力系統と契約した、最大の購入電力の他、例えば、所定買電単価にて購入できる最大の電力とすることも考えられる。
【0055】
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0056】
(実施形態3)
本形態は、図7に示すごとく、蓄電装置20として、水素貯蔵装置を用いた場合の、エネルギーマネジメントシステム1の形態である。
【0057】
水素貯蔵装置は、電力を水素に変換して貯蔵することができると共に、貯蔵した水素を電力に変換することができる装置である。例えば、水素貯蔵装置としては、電力を水素に変換する水素変換装置と、水素を電力に変換する燃料電池と、水素を貯蔵する水素タンクとを備えたものとすることができる。
【0058】
水素変換装置としては、例えば、SOEC(すなわち、固体酸化物型電解セル)を用いることができる。燃料電池としては、例えば、SOFC(すなわち、固体酸化物型燃料電池)を用いることができる。また、例えば、水素と電力とを相互に変換することができる、rSOFC(すなわち、可逆固体酸化物燃料電池)を、水素変換装置と燃料電池との双方の機能を備えたものとして、水素貯蔵装置が有するものとすることもできる。
【0059】
本形態においても、買電高価格時間帯における不足電力量(図7の領域A3、A4参照)を賄うための電力を蓄えておくために、蓄電装置20を用いる。ただし、例えばリチウムイオン電池のような蓄電池に比べ、水素貯蔵装置は、充放電の応答が遅い。この応答性の違いを考慮して、エネルギーマネジメントシステム1の計画部12は、買電計画を計画する必要がある。
【0060】
本形態においても、エネルギーマネジメントシステム1の計画部12による買電計画の計画の仕方は、実施形態1と略同様である。ただし、蓄電装置20への充電時間の算出の仕方が、実施形態1とは異なり、その結果、買電開始時刻の算出の仕方が異なることとなる。
【0061】
すなわち、水素貯蔵装置である蓄電装置20への充電速度は、充電開始直後からすぐには大きくならず、徐々に大きくすることとなる。それゆえ、図7(b)に示すごとく、買電計画としては、蓄電装置20への充電のための買電を、その開始直後から徐々に大きくするように計画する。同図における領域A70が蓄電装置20への充電のための買電量を表す。また、充電終了時も、充電速度を急激に小さくすることはできないため、充電速度を徐々に小さくして実質的に買価切替時刻(図7に示す例では9時)に充電が完了するように、買電計画を計画することになる。
【0062】
そして、このような水素貯蔵装置への充電が最適に行われる最適充電電力は、種々の観点で決めることができる。すなわち、例えば、最短で充電完了できる充電プロファイルに沿った充電電力を最適充電電力とすることもできる。あるいは、例えば、最も損失が少ない状態で充電を行うことができる充電プロファイルに沿った充電電力を最適充電電力とすることもできる。これらの最適充電電力は、本形態のような水素貯蔵装置の場合には、通常、時間変動することとなる。
【0063】
計画部12は、このように時間変化する最適充電電力の積分値が、充電予定量(すなわち、買電高価格時間帯における不足電力量)となるようにすることができる時間を、充電時間として算出することが考えられる。そして、この充電時間を、買価切替時刻から引いた時刻を、買電開始時刻として計画することが考えられる。
【0064】
上記のような、水素貯蔵装置による蓄電特性を考慮して、図7(b)に示す買電計画では、充電時間を4時間と算出し、買電開始時刻を5時に設定している。ただし、これはあくまでも一例を示しているにすぎないことは、言うまでもない。
【0065】
図7(b)に示す買電計画に従って、買電、充電、放電を行う場合について、説明する。
まず、買電開始時刻である5時に、蓄電装置20への充電のための系統電力の買電を開始する。つまり、電力需要量に充電量を上乗せした分の買電が、5時に開始される。買電した電力のうち、需要家5による電力需要量を上回った分が、蓄電装置20へ充電される。この充電は、買電した電力の一部を、水素貯蔵装置における水素変換装置によって水素に変換し、水素タンクに貯蔵することにより行われる。
【0066】
この蓄電装置20への電力の充電は、買電低価格時間帯の間に完了する。すなわち、系統電力の買電は、買価切替時刻(ここでは、9時)に完了する。その後、9時から21時の間の買電高価格時間帯においては、発電量よりも電力需要量が多い時間帯が存在する(領域A3、A4参照)。この時間帯において、蓄電装置20から需要家5に電力を供給する。すなわち、不足電力量を蓄電装置20の放電によって賄う。このとき、水素タンクに貯蔵された水素を、燃料電池によって電力に変換し、需要家5へ電力を供給する。
【0067】
また、買電高価格時間帯において、発電量が電力需要量を上回る時間帯も存在し、このときの余剰電力量(領域A1参照)も、水素貯蔵装置からなる蓄電装置20に充電することができる。この余剰電力が生じた後においても、買電高価格時間帯において不足電力が生じる時間帯がある(領域A4参照)。この不足電力を、同様に、蓄電装置20における電力にて賄う。
【0068】
このように、本形態においても、0時時点の買電計画を計画することができるが、実施形態1と同様に、電力需給予測データは、時々刻々を変化しうる。そして、図5のように、電力需給予測データが変化した場合には、不足電力が存在しないため、蓄電装置20への充電、すなわち水素貯蔵装置への水素の貯蔵も必要なくなる。これに伴い、買電計画を変更し、買電を取りやめることとなる。
その他、実施形態1と同様である。
【0069】
本形態においては、蓄電装置20として水素貯蔵装置を用いた場合の買電計画を効果的に作成することができる。その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
なお、充放電の応答が遅い蓄電装置20としては、水素貯蔵装置の他にも、例えば、メタン貯蔵装置、揚水発電装置等が考えられる。これらの場合にも、本形態と同様の買電計画を作成することが考えられる。
【0070】
(実施形態4)
本形態は、図8図9に示すごとく、蓄電装置2、20として、蓄電池と水素貯蔵装置との双方を用いた場合の、エネルギーマネジメントシステム1の形態である。
例えば、買電高価格時間帯における不足電力量が、蓄電池に蓄電可能な電力量を超える場合に、補足の蓄電装置20として、水素貯蔵装置を用いる場合等が想定される。本形態においては、蓄電池2、水素貯蔵装置20とも表す。
【0071】
本形態においては、2つの蓄電装置2、20のそれぞれについて、買電低価格時間帯において、どれだけの電力量を充電するかを、計画部12において計画する。そして、その充電予定量と、各装置の装置特性等から、それぞれの蓄電装置2、20の充電時間を算出する。これに基づき、買価切替時刻から、それぞれの蓄電装置2、20の充電時間を引いた時刻を、それぞれの蓄電装置2、20の充電のための買電開始時刻として算出する。
【0072】
図9(b)において、領域A7が、蓄電池2への充電のために購入する系統電力の電力量を表す。また、同図において、領域A70が、水素貯蔵装置20への充電のために購入する系統電力の電力量を表す。
【0073】
同図に示すように、蓄電池2への充電のための買電開始時刻と、水素貯蔵装置20への充電のための買電開始時刻とは、互いにずれることがある。同図においては、前者は7時頃、後者は5時頃とする例を示している。
その他は、実施形態1、実施形態3と同様である。
本形態においても、実施形態1、実施形態3と同様の作用効果を有する。
【0074】
(実施形態5)
本形態は、図10図13に示すごとく、計画部12が売電計画を計画する場合の形態である。
本形態の前提として、所定期間に、売電単価が変動する。すなわち、所定期間は、売電低価格時間帯と売電高価格時間帯とを有する。売電低価格時間帯は、売電単価が比較的安い時間帯であり、売電高価格時間帯は、売電低価格時間帯よりも売電単価が高い時間帯である。図10(a)に示す例では、12時から20時までが、売電高価格時間帯で、その他の時間が、売電低価格時間帯である。また、ここでは、買電単価が常に売電単価よりも高い場合を想定する。
【0075】
本形態においては、図10(b)に示すごとく、午前中に発電量が電力需要量を上回り、余剰電力が生じる。ただし、午前中は、売電低価格時間帯であるため、売電せずに、蓄電装置2に充電する。そして、売電高価格時間帯に、蓄電装置2の電力を放電して、売電する。この売電のタイミングを、後述するように、売電高価格時間帯におけるなるべく遅い時間とするように、売電計画を計画する。なお、図10(b)において、領域A11、A12が余剰電力量を表す。また、同図の領域A13が、発電によって賄う電力需要量を表す。また、同図の領域A14が、発電によって賄いきれない電力需要量を表す。
【0076】
図11を用いて、計画部12における処理フローの概略を説明する。
同図のステップS11に示すごとく、計画部12は、予測部11が予測した電力需給予測データ(図10(b)参照)に基づいて、余剰電力量を算出する。次いで、ステップS12として、計画部12は、ステップS11にて算出した余剰電力量から、売電予定量を算出する。次いで、ステップS13として、売電予定量と最適放電電力とから、放電時間(例えば、6時間)を算出する。次いで、ステップS14として、売価切替時刻(例えば、20時)から放電時間(例えば6時間)を引いた時刻(例えば、14時)を、売電開始時刻として算出する。以下において、この計画部12による処理につき、説明する。
【0077】
計画部12は、予測部11において予測された、発電装置2による発電量の時間推移と需要家5における電力需要量の時間推移とに基づいて、余剰電力量(図10(b)における領域A11参照)を算出する。計画部12は、余剰電力量から売電予定量を算出する。ここで考慮する余剰電力量は、図10(b)における領域A11の部分の余剰電力量であり、領域A12の部分の余剰電力量は考慮しない。また、この売電予定量の算出には、領域A14をも考慮する。領域A14の不足電力を、領域A11の余剰電力であって蓄電装置2に充電しておいた電力の一部によって賄うためである。さらに、これらに加えて、蓄電装置2の充電効率及び放電効率等を考慮して、売電予定量を算出する。
【0078】
そして、計画部12は、図12(b)に示すごとく、売電予定量(領域A17参照)を、売電高価格時間帯に、蓄電装置2から電力系統3へ売電するような売電計画を計画する。それと共に、計画部12は、売電高価格時間帯から売電低価格時間帯へ切り替わる売価切替時刻に売電が完了するように、売電計画を計画する。なお、図12(b)において、領域A17が、蓄電装置2から電力系統3への売電予定量を表す。
【0079】
計画部12は、売価切替時刻に売電が完了するような、電力系統3への売電開始時刻を、以下のように算出する。まず、ステップS12において算出した売電予定量と、最適放電電力とから、放電時間を導く。そして、売価切替時刻から放電時間を引いた時刻を、売電開始時刻として算出する。このように、計画部12が売電計画を計画する。
【0080】
例えば、予測部11が0時時点に予測した電力需給予測データとして、図10(b)に示す予測データを得たとする。この電力需給予測データによると、0時~12時の間に、発電量が電力需要量を大きく上回り、余剰電力が生じる。そして、12時~19時頃においては、発電量よりも電力需要量が上回る。
【0081】
0時~12時、及び20時~24時は、売電低価格時間帯である。それゆえ、0時~12時の間に生じた余剰電力は、一旦蓄電装置2に充電し、高価格時間帯である12時~20時の間に売電することが望ましい。また、蓄電装置2に充電した電力は、電力需要量が発電量を上回っている時間帯において、その不足電力量を賄うように、需要家5に供給することも、買電を控えるという観点で有効である。
【0082】
ところが、上述のように、電力需給予測データは、時間経過と共に変化しうる。すなわち、例えば、気温等、種々の要因の変化に伴い、電力需給予測データは、変動する。例えば、14時の時点での電力需給予測データが、図13に示すような予測に変動することもあり得る。同図に示す電力需給予測データによると、少なくとも売電高価格時間帯に含まれる14時~20時において、電力需要量が発電量を大きく上回っている。
【0083】
この電力需給予測データによると、売電高価格時間帯において、発電装置4の発電では賄いきれない電力需要の超過分が、0時時点の予測に対して増えていることとなる。この場合、売電計画を計画しなおし、蓄電装置2に溜めておいた電力を、需要家5に放電して、電力需要に対する不足分を補う。そうすれば、電力需要に対する不足分を、電力系統3から購入することを避ける、若しくは買電量を低減することができる。そして、この修正した売電計画では、例えば、需要家5に供給した後に余った分の電力のみを、電力系統3に売電することとすることもできる。
【0084】
上記のように、予測部11が予測する電力需給予測データは、時々刻々と変動しうる。それゆえ、早い時間帯に予測された電力需給予測データに基づいて売電すると、実際には需要家5に供給すべきであった電力を売電してしまうことにもなりかねない。
【0085】
それゆえ、売電高価格時間帯に売電するという前提の下、なるべく最新の電力需給予測データに基づいて、売電計画を計画し、それを実行することが、電力コストの低減の観点から望ましい。そこで、上述したように、計画部12が売電計画を計画する際には、図12に示すごとく、売電高価格時間帯における最後の時間帯に売電するよう計画する。すなわち、売電高価格時間帯から売電低価格時間帯に切り替わる売価切替時刻に、売電が完了するように売電計画を計画する。
【0086】
具体的には、上述したように、売価切替時刻から放電時間を引いた時刻を、系統電力の売電開始時刻として、計画する。放電時間は、蓄電装置2の最適放電電力と、計画された売電予定電力量とを基に、算出する。最適放電電力は、本形態においては、蓄電装置2の最大放電電力とする。最大放電電力は、蓄電装置2の固有値であって、放電可能な最大電力である。
【0087】
なお、最適放電電力として、例えば、蓄電装置2の損失最小放電電力とすることもできる。損失最小放電電力は、蓄電装置2の固有値であって、放電の際に生じる損失が最も低くなる、放電電力である。通常、この損失最小放電電力は、最大放電電力よりも小さい値となる。
【0088】
このようにして、0時時点において、計画部12が、例えば、放電時間を6時間と算出したとする。この場合、売電計画としては、売電開始時刻が14時となる。したがって、本形態においては、図12(b)に示すごとく、最大放電電力にて、14時から20時にかけて売電するという計画となる。
【0089】
そして、図13に示すごとく、14時の時点で予測部11が予測した電力需給予測データにおいて、売電高価格時間帯における不足電力が増加していた場合は、売電計画も変わる。そして、当初計画されていた制御部13による電力系統3への売電を、取りやめる、或いは減らすことができる。0時時点にて計画した売電開始時刻(この例では14時)が過ぎる前に、売電しない、或いは売電を減らすという計画に変わったためである。その結果、不要な売電を防ぐことができ、電力コストの低減を図ることができる。
【0090】
上述の例において、仮に、売電のタイミングを12時~18時とするなど、早いタイミングとする計画を立てていたとする。そして、14時の時点で図13に示すような電力需給予測データに変化した場合にも、14時の時点で既に売電が進んでいるため、無駄な売電を行ったことになる。つまり、この場合は、売電する一方で、不足電力を買電する必要が生じてしまうこととなる。
【0091】
これに対して、売電のタイミングを14時~20時に計画していれば、上記の場合、無駄な売電及び買電を回避できることとなる。そのため、結果的に不要であった電力の売買を抑制することができ、電力コストの低減を図ることができる。
【0092】
その他は、実施形態1と同様である。
本形態によれば、所定期間において売電単価が変動する場合に、電力コストを効果的に低減することができる。その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0093】
(実施形態6)
本形態は、図14に示すごとく、蓄電装置20として水素貯蔵装置を用いた場合において、売電計画を計画する形態である。
すなわち、実施形態3と同様に、蓄電装置20として水素貯蔵装置を用いたうえで、実施形態5と同様に、系統電力の売電のタイミング等を計画する。
【0094】
本形態においても、エネルギーマネジメントシステム1の計画部12による売電計画の計画の仕方は、実施形態5と略同様である。ただし、蓄電装置20への放電時間の算出の仕方が、実施形態5とは異なり、その結果、売電開始時刻の算出の仕方が異なることとなる。
【0095】
すなわち、水素貯蔵装置である蓄電装置20の放電速度は、放電開始直後からすぐには大きくならず、徐々に大きくすることとなる。それゆえ、図14(b)に示すごとく、売電計画としては、蓄電装置20の放電に伴う売電を、その開始直後から徐々に大きくするように計画する。同図において、領域A170が蓄電装置20の放電に伴う売電量を表す。また、放電終了時も、放電速度を急激に小さくすることはできないため、放電速度を徐々に小さくし、実質的に売価切替時刻(図14に示す例では20時)に売電が完了するように、売電計画を計画することになる。
【0096】
そして、このような水素貯蔵装置の放電が最適に行われる最適放電電力は、種々の観点で決めることができる。すなわち、例えば、最短で放電完了できる放電プロファイルに沿った放電電力を最適放電電力とすることもできる。あるいは、例えば、最も損失が少ない状態で放電を行うことができる放電プロファイルに沿った放電電力を最適放電電力とすることもできる。これらの最適放電電力は、本形態のような水素貯蔵装置の場合には、通常、時間変動することとなる。
【0097】
計画部12は、このように時間変化する最適放電電力の積分値が、売電予定量となるようにすることができる時間を、放電時間として算出することが考えられる。そして、この放電時間を、売価切替時刻から引いた時刻を、売電開始時刻として計画することが考えられる。
【0098】
上記のような、水素貯蔵装置による蓄電特性を考慮して、図14(b)に示す売電計画では、放電時間を6時間と算出し、売電開始時刻を14時に設定している。ただし、これはあくまでも一例を示しているにすぎないことは、言うまでもない。
【0099】
図14に示す売電計画に従って売電を行う場合について、説明する。
売電開始時刻である14時に、蓄電装置20の放電に伴う電力系統への売電を開始する。この放電は、水素タンクに貯蔵されていた水素を、水素貯蔵装置における燃料電池によって電力に変換することにより行われる。この蓄電装置20の放電は、売電高価格時間帯の間に完了する。
その他、実施形態1と同様である。
【0100】
本形態においては、蓄電装置20として水素貯蔵装置を用いた場合の売電計画を効果的に作成することができる。その他、実施形態5と同様の作用効果を有する。
【0101】
(実施形態7)
本形態は、図15に示すごとく、蓄電装置2、20として、蓄電池と水素貯蔵装置との双方を用いた場合において、売電計画を計画する形態である。
すなわち、実施形態4と同様に、蓄電装置2、20として蓄電池と水素貯蔵装置とを用いたうえで、実施形態5と同様に、系統電力の売電のタイミング等を計画する。
【0102】
この場合は、2つの蓄電装置2、20のそれぞれについて、売電高価格時間帯において、どれだけの電力量を放電して電力系統へ売電するかを、計画部12において計画する。そして、その売電予定電力量と、各装置の装置特性等から、それぞれの蓄電装置2、20の放電時間を算出する。これに基づき、売価切替時刻から、それぞれの蓄電装置2、20の放電時間を引いた時刻を、それぞれの蓄電装置2、20の放電のための売電開始時刻として算出する。
【0103】
図15(b)において、領域A17が、蓄電池2の放電に伴う売電量を表す。また、同図において、領域A170が、水素貯蔵装置20の放電に伴う売電量を表す。
【0104】
同図に示すように、蓄電池2の放電に伴う売電開始時刻と、水素貯蔵装置20の放電に伴う売電開始時刻とは、互いにずれることがある。同図においては、前者は16時頃、後者は14時頃とする例を示している。
その他は、実施形態5、実施形態6と同様である。
本形態においても、実施形態5、実施形態6と同様の作用効果を有する。
【0105】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 エネルギーマネジメントシステム
11 予測部
12 計画部
13 制御部
2 蓄電装置
3 電力系統
4 発電装置
5 需要家
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15