(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】インバータの制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20250212BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M7/48 E
(21)【出願番号】P 2021048060
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠幸
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/145993(WO,A1)
【文献】特開平04-193025(JP,A)
【文献】特開2017-073898(JP,A)
【文献】特開2011-188581(JP,A)
【文献】特開2014-095881(JP,A)
【文献】特開2008-245447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動するインバータの制御装置であって、
前記インバータの運転時に、前記モータの電流値が、設定された基準値を超過したらカウント値を増加させ、設定された基準値以下のときカウント値を減少させる過負荷累積カウンタと、
前記過負荷累積カウンタのカウント値と、前記インバータの電源が遮断してから再起動するまでの経過時間を取得するための経過時間取得用パラメータ
と、が記録される不揮発性メモリと、
前記インバータの電源遮断時に前記不揮発性メモリに記録された経過時間取得用パラメータと、インバータの、前記電源遮断後の再起動時に取得した経過時間取得用パラメータとに基づいて、インバータの電源が遮断してから再起動するまでの経過時間を求める経過時間取得部と、
前記経過時間取得部により求められた経過時間内に減少した前記過負荷累積カウンタのカウント減少量を求めるカウント減少量演算部と、
前記カウント減少量演算部により求められたカウント減少量からインバータの再起動時の過負荷累積カウンタのカウント値を求めて設定するカウント値設定部と、を備え、
前記経過時間取得用パラメータは、モータの駆動周波数又は回転数
を含んでいることを特徴とするインバータの制御装置。
【請求項2】
モータを駆動するインバータの運転時に、前記モータの電流値が、設定された基準値を超過したらカウント値を増加させ、設定された基準値以下のときカウント値を減少させる過負荷累積カウンタと、
前記過負荷累積カウンタのカウント値と、前記インバータの電源が遮断してから再起動するまでの経過時間を取得するための経過時間取得用パラメータ
と、が記録される不揮発性メモリと、を備えたインバータの制御方法であって、
前記インバータの電源遮断時に、経過時間取得用パラメータを前記不揮発性メモリに記録するステップと、
インバータの、前記電源遮断後の再起動時に経過時間取得用パラメータを取得するステップと、
前記インバータの電源遮断時に前記不揮発性メモリに記録された経過時間取得用パラメータと、前記インバータの、前記電源遮断後の再起動時に取得された経過時間取得用パラメータとに基づいて、インバータの電源が遮断してから再起動するまでの経過時間を求める経過時間取得ステップと、
前記経過時間取得ステップにより求められた経過時間内に減少した前記過負荷累積カウンタのカウント減少量を求めるカウント減少量演算ステップと、
前記カウント減少量演算ステップにより求められたカウント減少量からインバータの再起動時の過負荷累積カウンタのカウント値を求めて設定するカウント値設定ステップと、を備え、
前記経過時間取得用パラメータは、モータの駆動周波数又は回転数
を含んでいることを特徴とするインバータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用インバータにおけるモータの過負荷動作の異常判定の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータとモータの組み合わせで運転、停止動作を行うインバータ機器において、過負荷動作に対しては、例えばインバータ制御機構の内部に用意した過負荷累積カウンタのカウント値(負荷累積値)を基に異常判定を行っていた。
【0003】
図7に、モータ過負荷動作における、異常判定時のモータの速度、電流値の推移、過負荷累積カウンタの挙動等の一例を示す。
【0004】
図7の(a)はモータ速度、(b)はインバータの制御装置のシーケンス出力「運転状態」信号、(c)はモータ電流値、(d)はインバータの制御装置のシーケンス出力「異常出力」信号、(e)は過負荷累積カウンタのカウント値、(f)はインバータの制御装置のシーケンス入力「リセット動作」信号を各々示している。
【0005】
インバータによるモータの運転時に、時刻t1に示すように、モータ電流値(
図7(c))がインバータ内で定めたモータ過負荷発生基準値を超過すると、過負荷累積カウンタは負荷累積値として時間当たり一定数を加算し、モータ電流値の前記基準値に対する過負荷が継続すれば、過負荷累積カウンタのカウント値(
図7(e))は時刻t1~t2において増加する。
【0006】
尚、モータ電流値の状況の変化(負荷減少や停止)でモータ過負荷発生基準値を下回ったとき、過負荷累積カウント値は減少する。減少した過負荷累積カウンタのカウント値が0を下回るときは0でリミットする。
【0007】
次に時刻t2のように、過負荷累積カウンタのカウント値があらかじめ決めた過負荷異常判定レベル(例えば0~100として、100値)を超過したときは異常として、警報や異常出力信号等で異常を知らせるほか、モータを停止する。
【0008】
すなわち、時刻t2においてシーケンス出力「異常出力」信号がハイレベルとなり、シーケンス出力「運転状態」信号がローレベルとなり、モータ電流値は時刻t2~t3間で0になり、モータ速度は徐々に減少し、過負荷累積カウンタのカウント値は時刻t3以降減少する。
【0009】
次に時刻t4において、シーケンス入力「リセット動作」信号(
図7(f))が入力されると、
図7(d)のシーケンス出力「異常出力」信号はローレベルとなる。
【0010】
尚、従来、インバータの過負荷保護方法として例えば特許文献1に記載のものが提案されていた。この特許文献1では、過負荷運転時にカウントアップし、平常運転時にカウントを停止し、半導体温度が低下する条件ではカウントダウンすることで、過負荷運転と半導体温度の関係をカウンタで記憶して、カウンタが一定値を超えた場合に運転を停止することでインバータを故障から保護している。
【0011】
また、モータの過負荷状態を検出する方法として、例えば特許文献2のように、導通時間中にタイマーを動作させて、モータの負荷状態を監視することが提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2005-39882号公報
【文献】特開2004-23802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
モータの過負荷動作に対して過負荷累積カウンタのカウント値を基に異常判定を行う制御装置において、インバータ停止と再運転時のカウント動作のようすを
図8に示す。
【0014】
図8の(a)はモータ速度、(b)はインバータの制御装置のシーケンス出力「運転状態」信号、(c)はモータ電流値、(d)はインバータの制御装置のシーケンス出力「異常出力」信号、(e)は過負荷累積カウンタのカウント値、(f)はインバータ電源状態(オン、オフ)信号を各々示している。
【0015】
図8において、時刻t1に到達する前の期間では、シーケンス出力「運転状態」信号(
図8(b))およびインバータ電源状態信号(
図8(f))はともにハイレベルであり、モータ電流値がモータ過負荷発生基準値をすでに超過している(
図8(c))が、過負荷累積カウンタのカウント値は過負荷異常判定レベル以下で増加中である。
【0016】
次に時刻t1において、過負荷累積カウンタのカウント値が過負荷異常判定レベルを超過すると、シーケンス出力「異常出力」信号がハイレベルとなり、シーケンス出力「運転状態」信号がローレベルとなり、モータ電流値は時刻t1~t2間で0になり、モータ速度は徐々に減少し、過負荷累積カウンタのカウント値は時刻t2以降減少する。
【0017】
次に過負荷累積カウンタのカウント値が0以外の値である時刻t3においてインバータ電源が遮断した(又はCPUのリセット動作等が発生した)場合は、インバータ電源状態信号およびシーケンス出力「異常出力」信号がともにローレベルとなる。
【0018】
そして、過負荷累積カウンタのカウント値を、インバータ制御機構内部のRAM等の揮発性の記憶装置(記録装置)に格納している場合は、そのカウント値が消去されてしまう(
図8(e)のように0以外の値が0になってしまう)。
【0019】
次に時刻t4において、インバータの電源が復帰するとインバータ電源状態信号がハイレベルとなり、その直後の時刻t5にシーケンス出力「運転状態」信号がハイレベルとなり、モータ電流値が増加しはじめ、モータ速度が徐々に上昇する。
【0020】
次に、時刻t6においてモータ電流値がモータ過負荷発生基準値を超過すると、過負荷累積カウンタは実際のモータの状態にかかわらず
図8(e)のようにカウント値0からのカウント増加を行う。
【0021】
このため、モータの実際の状態と離れた負荷状態となり、モータ自体は異常とすべき状態でもインバータはまだその状況に達してないと判断して、異常出力が遅れ、結果モータの破損が懸念される。この問題を解決するためには改善案として例えば
図9のような動作としたい。
【0022】
すなわち、
図9の時刻t3~t4に示すインバータ電源遮断期間中の過負荷累積カウンタのカウント減少量を、
図9(e)の破線で示すカウント値のように補填し、インバータ電源復帰時のカウント値に反映させるものである。
【0023】
尚、
図9において、(e)の過負荷累積カウンタ以外の動作は
図8の動作と同様である。
【0024】
また、特許文献1、2の技術では、カウンタやタイマー動作時に停電が発生すると計測手段は時間計測ができない。計測不能な状態は、インバータやモータには通電されないため、半導体やモータの温度は低下するが、それらを補正する手段がない。
【0025】
このため、復電後に運転を継続した場合、カウンタやタイマと半導体温度の関係性を失っているため、過負荷状態に最大限インバータを運転継続することができない。
【0026】
本発明は、上記課題に鑑み、産業用インバータのモータの過負荷動作にて、負荷の蓄積量の動作を改善し、現在の規格に対応できることを目指すものであり、その目的は、インバータの再起動時の過負荷累積カウンタのカウント値を、電源遮断期間中のカウント減少量を反映させた正しいカウント値に設定することができるインバータの制御装置および制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記課題を解決するためのインバータの制御装置は、
モータを駆動するインバータの制御装置であって、
前記インバータの運転時に、前記モータの電流値が、設定された基準値を超過したらカウント値を増加させ、設定された基準値以下のときカウント値を減少させる過負荷累積カウンタと、
前記インバータの電源が遮断してから再起動するまでの経過時間を取得するための経過時間取得用パラメータが記録される不揮発性メモリと、
前記インバータの電源遮断時に前記不揮発性メモリに記録された経過時間取得用パラメータと、インバータの、前記電源遮断後の再起動時に取得した経過時間取得用パラメータとに基づいて、インバータの電源が遮断してから再起動するまでの経過時間を求める経過時間取得部と、
前記経過時間取得部により求められた経過時間内に減少した前記過負荷累積カウンタのカウント減少量を求めるカウント減少量演算部と、
前記カウント減少量演算部により求められたカウント減少量からインバータの再起動時の過負荷累積カウンタのカウント値を求めて設定するカウント値設定部と、を備えたことを特徴とする。
【0028】
好ましい一つの態様では、
前記経過時間取得用パラメータは、モータの駆動周波数又は回転数と前記過負荷累積カウンタのカウント値を含んでおり、
前記経過時間取得部は、前記不揮発性メモリに記録されたインバータの電源遮断時のモータの駆動周波数又は回転数と、電源遮断後の再起動時に取得したモータの駆動周波数又は回転数との差分を、設定した周波数又は回転数の減少係数で除算することで前記経過時間を求める、ことを特徴とする。
【0029】
好ましい一つの態様では、
前記インバータの内部には、主電源が遮断してもカウント継続可能に構成された時計機能が設けられ、
前記経過時間取得用パラメータは、前記インバータ内部の時計機能によりカウントされた時計カウント値と、前記過負荷累積カウンタのカウント値を含んでおり、
前記経過時間取得部は、前記不揮発性メモリに記録されたインバータの電源遮断時の時計カウント値と、電源遮断後の再起動時に取得した時計カウント値の差分から前記経過時間を求めることを特徴とする。
【0030】
好ましい一つの態様では、
前記経過時間取得用パラメータは、測定又は推定演算により求めたインバータ内部のヒートシンク温度と前記過負荷累積カウンタのカウント値を含んでおり、
前記経過時間取得部は、前記不揮発性メモリに記録された、インバータの電源遮断時のインバータ内部のヒートシンク温度と、電源遮断後の再起動時に取得したインバータ内部のヒートシンク温度との差分を、設定した温度減少係数で除算することで前記経過時間を求めることを特徴とする。
【0031】
上記課題を解決するためのインバータの制御方法は、
モータを駆動するインバータの運転時に、前記モータの電流値が、設定された基準値を超過したらカウント値を増加させ、設定された基準値以下のときカウント値を減少させる過負荷累積カウンタと、
前記インバータの電源が遮断してから再起動するまでの経過時間を取得するための経過時間取得用パラメータが記録される不揮発性メモリと、を備えたインバータの制御方法であって、
前記インバータの電源遮断時に、経過時間取得用パラメータを前記不揮発性メモリに記録するステップと、
インバータの、前記電源遮断後の再起動時に経過時間取得用パラメータを取得するステップと、
前記インバータの電源遮断時に前記不揮発性メモリに記録された経過時間取得用パラメータと、前記インバータの、前記電源遮断後の再起動時に取得された経過時間取得用パラメータとに基づいて、インバータの電源が遮断してから再起動するまでの経過時間を求める経過時間取得ステップと、
前記経過時間取得ステップにより求められた経過時間内に減少した前記過負荷累積カウンタのカウント減少量を求めるカウント減少量演算ステップと、
前記カウント減少量演算ステップにより求められたカウント減少量からインバータの再起動時の過負荷累積カウンタのカウント値を求めて設定するカウント値設定ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0032】
好ましい一つの態様では、
前記経過時間取得用パラメータは、モータの駆動周波数又は回転数と前記過負荷累積カウンタのカウント値を含んでおり、
前記経過時間取得ステップは、前記不揮発性メモリに記録されたインバータの電源遮断時のモータの駆動周波数又は回転数と、電源遮断後の再起動時に取得したモータの駆動周波数又は回転数との差分を、設定した周波数又は回転数の減少係数で除算することで前記経過時間を求めるステップを有している、ことを特徴とする。
【0033】
好ましい一つの態様では、
前記インバータの内部には、主電源が遮断してもカウント継続可能に構成された時計機能が設けられ、
前記経過時間取得用パラメータは、前記インバータ内部の時計機能によりカウントされた時計カウント値と、前記過負荷累積カウンタのカウント値を含んでおり、
前記経過時間取得ステップは、前記不揮発性メモリに記録されたインバータの電源遮断時の時計カウント値と、電源遮断後の再起動時に取得した時計カウント値の差分から前記経過時間を求めるステップを有している、ことを特徴とする。
【0034】
好ましい一つの態様では、
前記経過時間取得用パラメータは、測定又は推定演算により求めたインバータ内部のヒートシンク温度と前記過負荷累積カウンタのカウント値を含んでおり、
前記経過時間取得ステップは、前記不揮発性メモリに記録された、インバータの電源遮断時のインバータ内部のヒートシンク温度と、電源遮断後の再起動時に取得したインバータ内部のヒートシンク温度との差分を、設定した温度減少係数で除算することで前記経過時間を求めるステップを有している、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
上記の発明によれば、インバータの再起動時の過負荷累積カウンタのカウント値を、電源遮断期間中のカウント減少量を反映させた正しいカウント値に設定することができる。このため、実際のモータ過負荷の状態が保持され、実際の動作に即した過負荷機能の動作が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の実施例1による動作のタイムチャート。
【
図2】本発明の実施例1による動作のフローチャート。
【
図3】本発明の実施例2による動作のタイムチャート。
【
図4】本発明の実施例2による動作のフローチャート。
【
図5】本発明の実施例3による動作のタイムチャート。
【
図6】本発明の実施例3による動作のフローチャート。
【
図7】従来のモータ過負荷動作におけるタイムチャート。
【
図8】従来の、インバータ停止と再運転時のカウント動作におけるタイムチャート。
【
図9】本発明が改善しようとする動作案のタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。本実施形態例では、モータを駆動するインバータの制御装置において、インバータの電源が遮断してから再起動するまでの経過時間を取得するための経過時間取得用パラメータ、例えば、過負荷累積カウンタのカウント値、モータの駆動周波数又は回転数、インバータ内部の時計機能によりカウントされた時計カウント値、測定又は推定演算により求めたインバータ内部のヒートシンク温度を記録する不揮発性メモリと、インバータの電源遮断時に前記不揮発性メモリに記録された経過時間取得用パラメータと、インバータの、前記電源遮断後の再起動時に取得した経過時間取得用パラメータとに基づいて、インバータの電源が遮断してから再起動するまでの経過時間を求める経過時間取得部と、前記経過時間取得部により求められた経過時間内に減少した前記過負荷累積カウンタのカウント減少量を求めるカウント減少量演算部と、前記カウント減少量演算部により求められたカウント減少量からインバータの再起動時の過負荷累積カウンタのカウント値を求めて設定するカウント値設定部と、を設けた。
【実施例1】
【0038】
本実施例1では、経過時間取得用パラメータとして、過負荷累積カウンタのカウント値と、モータの駆動周波数又は回転数を用い、インバータ電源の遮断時間が比較的短く、再起動時点でまだモータが回っていれば拾い上げた周波数又は回転数(周波数/回転数)で差分から経過時間を推定し、そこから過負荷累積カウンタのカウント減少量を推定し、遮断前に記録したカウント量に展開するように構成した。
【0039】
図1は実施例1における拾い上げによる補填動作のタイムチャート、
図2は実施例1によるインバータの制御装置が行う処理の動作フローチャートである。
【0040】
図2(a)はインバータの電源遮断時のフローチャートであり、ステップS10において電源遮断時のモータの駆動周波数又は回転数と、過負荷累積カウンタのカウント値を不揮発性メモリ、EEPROM等に記憶(記録)する。
【0041】
図2(b)はインバータ電源の復帰拾い上げ時のフローチャートであり、ステップS21では拾い上げ動作にてモータの駆動周波数又は回転数を取得し、ステップS22では、前記ステップS10で不揮発性メモリに記録した電源遮断時のモータの駆動周波数又は回転数と、電源遮断後の再起動時に取得したモータの駆動周波数又は回転数との差分を、予め設定した周波数又は回転数の減少係数で除算して、電源遮断から再起動までの経過時間を推定する。
【0042】
次にステップS23では、前記推定された経過時間から過負荷累積カウンタのカウント減少量を計算し、ステップS24では前記計算されたカウント減少量で過負荷累積カウンタのカウント値を減算する。
【0043】
そして減算結果のカウント値が0より下であるか否かをステップS25で判定し、0より下である場合はステップS26でカウント値を0値でリミットした後、ステップS27においてインバータの再起動時(復帰拾い上げ時)の過負荷累積カウンタのカウント値に展開する(現カウント値として展開する)。
【0044】
ここで、前記ステップS22の経過時間推定演算で用いる周波数又は回転数の減少係数の設定方法の一例を述べる。ここでは、事前調整運転、自動調整運転(オートチューニング動作)等の試験運転時、故障発生でフリーラン停止動作を行う機会を設けているとする。この測定で測定開始から一定時間経過後:例えば10秒後か1分後等のモータ周波数/回転数から減少量をエンコーダ等を用いて測定し、下記<例1>の計算式を基に係数値(減少係数)を計算し、これを記録する。
【0045】
この係数値(減少係数)は事前調整運転、自動調整運転(オートチューニング動作)等の試験運転時に取得するほか、パラメータの手入力で設定できるものとする。この係数値(減少係数)はEEPROMに記録することで保護し、電源遮断等でも保持されるとする。
【0046】
<例1>
試験運転等で50Hzで運転していてフリーラン運転となり、10秒後に25Hzまで減少したとする。係数値(減少係数)は(測定開始値―時間経過後値)/時間と考え、今回の例では(50-25)/10=2.5(係数)となる。この2.5がEEPROMに保管される。
【0047】
次に本実施例1の拾い上げによる補填動作の詳細を説明する。
図1の(a)はモータ速度、(b)はインバータの制御装置のシーケンス出力「運転状態」信号、(c)はモータ電流値、(d)はインバータの制御装置のシーケンス出力「異常出力」信号、(e)は過負荷累積カウンタのカウント値、(f)はインバータ電源状態(オン、オフ)信号を各々示している。
【0048】
図1において、時刻t1に到達する前の期間では、シーケンス出力「運転状態」信号(
図1(b))およびインバータ電源状態信号(
図1(f))はともにハイレベルであり、モータ電流値がモータ過負荷発生基準値をすでに超過している(
図1(c))が、過負荷累積カウンタのカウント値は過負荷異常判定レベル以下で増加中である。
【0049】
次に時刻t1において、過負荷累積カウンタのカウント値が過負荷異常判定レベルを超過すると、シーケンス出力「異常出力」信号がハイレベルとなり、シーケンス出力「運転状態」信号がローレベルとなり、モータ電流値は時刻t1~t2間で0になり、モータ速度は徐々に減少し、過負荷累積カウンタのカウント値は時刻t2以降減少する。
【0050】
A-(1) 時刻t3ではインバータ電源状態信号およびシーケンス出力「異常出力」信号がローレベルとなる。制御装置ではこれを運転中または停止によるフリーラン、減速動作中に電源遮断か再起動が発生したと判断する。
【0051】
A-(2) 電源遮断によるCPUが停止する前に、モータの周波数/回転数値と過負荷累積カウンタのカウント値をEEPROM等の電源遮断でも保持される記録装置へ記録する(ステップS10)。
【0052】
これは、電源遮断等で電圧値が低下して一定レベル以下となったとき、その時点の周波数/回転数値をエンコーダ等を用いて測定し、測定値をEEPROM等の不揮発性メモリに保管するものである。また、その時点の過負荷累積カウンタのカウント値も同様に記録しEEPROM等の不揮発性メモリに保管する。
【0053】
電源遮断が継続し、制御回路の主電源がOFFとなって制御回路内部の過負荷累積カウンタのカウント値が
図1(e)の破線のように消去されても、EEPROM内の記録値は保持される。
【0054】
A-(3) 次に時刻t4において電源が再投入され、CPUが再起動する。この段階でモータは回転しているとする。
【0055】
A-(4) 電源が復旧して時刻t5において制御機能が再度立ち上がり完了したとき、拾い上げ再始動の機能が有効であれば、拾い上げ動作が行われ、回転中のモータ周波数/回転数に合わせて運転再開される(シーケンス出力「運転状態」信号がハイレベルとなる)。
【0056】
拾い上げ時点でその時点の周波数値/回転数値がエンコーダ等を用いて取得される(
図2(b)のステップS21)。
【0057】
A-(5) インバータ内部ではEEPROM内部に記録された電圧低下時点の周波数/回転数と、拾い上げ動作時点で取得された周波数/回転数の値を比較し、その差分から経過時間を推定する(
図2(b)のステップS22)。
【0058】
A-(6) 推定された経過時間から過負荷累積カウンタの減少量を計算し(
図2(b)のステップS23)、遮断直前に記録した過負荷累積カウンタのカウント値に対し、前記算出した経過時間分のカウント量の減少を行い現時点(時刻t5)のカウント値を演算し(
図2(b)のステップS24)、拾い上げ完了とともに現カウント値として展開する(
図2(b)のステップS25~S27)。
【0059】
A-(7) 運転により再度電流値が過負荷基準を超過しない段階では過負荷累積カウンタのカウント値は減少を続け、0値でリミットする。
【0060】
またこのときEEPROM記録カウント値<計算された過負荷累積カウンタの減少量となる場合は0値でリミットしたうえで展開される。
【0061】
前記推定する経過時間や演算により求める過負荷累積カウンタの減少量等の具体的数値例を以下に示す。減少係数については前述のとおり、試験運転等で50Hzで運転していてフリーラン運転となり、10秒後に25Hzまで減少したとする。係数値(減少係数)は(測定開始値―時間経過後値)/時間と考え、今回の例では(50-25)/10=2.5(係数)となる。
【0062】
過負荷累積カウンタのカウント値は1分で100→0に減少する計算とする。電源低下時(A-(2):時刻t3)の時点でモータ40Hz:過負荷累積カウンタのカウント値75を取得しEEPROMに記録される。
【0063】
その後A-(4):時刻t5まで進むと、電源復帰後のモータ周波数値は20Hz相当に落ち込んでいて、この時点で拾い上げ再始動が開始されたとする。
【0064】
インバータ内部では上記で取得した係数値(減少係数)を踏まえて計算し、経過時間を推定すると、今回の例では40-20/2.5=8(sec)とみなせる。
【0065】
8sec相当の過負荷累積カウンタのカウント値は8*100/60≒13と考えられる。電源低下時に取得した過負荷累積カウンタのカウント値75から引くことで、拾い上げ時点のカウント値が推測できる。すなわち75-13=62となる。
【0066】
62が拾い上げ時点(時刻t5)の過負荷累積カウンタのカウント値に展開される。その後は運転の状況により増加減される。
【実施例2】
【0067】
本実施例2では、経過時間取得用パラメータとして、インバータ内部の時計機能によりカウントされた時計カウント値と、過負荷累積カウンタのカウント値を用い、電源の遮断時間と再投入時間を比較し、差分値から過負荷累積カウンタの減少量を推定し、その減少量を遮断前に記録した過負荷累積カウンタのカウント値に展開するように構成した。
【0068】
図3は実施例2における内部時計機能を活用した補填動作のタイムチャート、
図4は実施例2によるインバータの制御装置が行う処理の動作フローチャートである。
【0069】
図4(a)はインバータの電源遮断時のフローチャートであり、ステップS30において電源遮断時の現時間と、過負荷累積カウンタのカウント値を不揮発性メモリ、EEPROM等に記憶(記録)する。
【0070】
図4(b)は再起動時のフローチャートであり、ステップS41では、前記不揮発性メモリに記録されたインバータの電源遮断時の時計カウント値と電源遮断後の再起動時に取得した時計カウント値の差分によって、電源遮断から再起動までの経過時間を推定する。
【0071】
次にステップS42では、前記推定された経過時間から過負荷累積カウンタのカウント減少量を計算し、ステップS43では前記計算されたカウント減少量で過負荷累積カウンタのカウント値を減算する。
【0072】
そして減算結果のカウント値が0より下であるか否かをステップS44で判定し、0より下である場合はステップS45でカウント値を0値でリミットした後、ステップS46においてインバータの再起動時の過負荷累積カウンタのカウント値に展開する(現カウント値として展開する)。
【0073】
次に本実施例2の動作の詳細を説明する。
図3の(a)はモータ速度、(b)はインバータの制御装置のシーケンス出力「運転状態」信号、(c)はモータ電流値、(d)はインバータの制御装置のシーケンス出力「異常出力」信号、(e)は過負荷累積カウンタのカウント値、(f)はインバータ電源状態(オン、オフ)信号を各々示している。
【0074】
図3において、時刻t1に到達する前の期間では、シーケンス出力「運転状態」信号(
図3(b))およびインバータ電源状態信号(
図3(f))はともにハイレベルであり、モータ電流値がモータ過負荷発生基準値をすでに超過している(
図3(c))が、過負荷累積カウンタのカウント値は過負荷異常判定レベル以下で増加中である。
【0075】
次に時刻t1において、過負荷累積カウンタのカウント値が過負荷異常判定レベルを超過すると、シーケンス出力「異常出力」信号がハイレベルとなり、シーケンス出力「運転状態」信号がローレベルとなり、モータ電流値は時刻t1~t2間で0になり、モータ速度は徐々に減少し、過負荷累積カウンタのカウント値は時刻t2以降減少する。
【0076】
B-(1) 時刻t3ではインバータ電源状態信号およびシーケンス出力「異常出力」信号がローレベルとなる。制御装置ではこれを運転中または停止によるフリーラン、減速動作中に電源遮断が発生したと判断する。
【0077】
B-(2) 電源遮断によるCPUが停止する前に、モータの周波数/回転数値と過負荷累積カウンタのカウント値と電源遮断時の時間とを、EEPROM等の電源遮断でも保持される記録装置へ記録する(ステップS30)。電源が遮断されることにより、制御回路内部のRAM等の各値が0となる。
【0078】
B-(3) 次に時刻t4において電源が再投入されてCPUが再起動する。
【0079】
B-(4) 再起動の時点で再起動時点の時間と電源遮断時の時間値を比較し、その差分から経過時間を推定する(ステップS41)。
【0080】
B-(5) 遮断直前に記録した過負荷累積カウンタのカウント値に対し、前記算出した経過時間分のカウント量の減少を行い現時点(時刻t4)のカウント値を演算し(ステップS43)、現カウント値として展開する(ステップS44~S46)。
【0081】
B-(6) 例えば時刻t5のように、停止中や再運転により再度モータ電流値が過負荷異常判定レベルを超過しない段階では過負荷累積カウンタのカウント値は減少を続け、0値でリミットする。
【0082】
B-(7) 時刻t6において再度モータ電流値が過負荷異常判定レベルを超過したときは過負荷累積カウンタの増加に転じる。
【0083】
次に、時間測定の方法、推定する経過時間や過負荷累積カウンタの減少量等の具体例を以下に示す。時間測定の方法として、リアルタイム機能IC(リアルタイムクロック:RTC)や同機能内蔵マイコンの利用を考える。カウント方法や取得方法は各ICやマイコンに依る。本実施例では、一般的な動作例として0.1sec経過で+1カウントしていると想定する。このカウント値を時計カウント値と呼称する。時計カウント値はICやCPUからのデータ値が随時送られRAM内に格納されていると考える。
【0084】
リアルタイム機能IC(RTC)や同機能内蔵マイコンは内蔵電池等、制御機器とは別系統で電源が確保されていて主電源遮断時でも時計カウントが継続できると考える。
【0085】
電源遮断等で電圧値が低下して一定レベル以下となったとき、時計カウント値を取得してEEPROMに記録する。例として取得値は300とする(
図3でのB-(2))。
【0086】
同時に過負荷累積カウンタのカウント値は75としてEEPROMに記録される。電源が復旧して制御機能が再度立ち上がり完了したとき、拾い上げ再始動の機能が有効であれば、拾い上げ動作が行われ、回転中のモータ周波数/回転数に合わせて運転再開される(
図3でのB-(6))。
【0087】
この時の時計カウント値は例として350であるとする。そして
図3のB-(2)でEEPROMに記録されていた時計カウント値との差をとる。本例では350-300=50が経過時間相当の時計カウント値となる。
【0088】
この時計カウント値から過負荷累積カウンタのカウント値の減少量に比例して減少量を推定する。過負荷累積カウンタのカウント値は1分で100→0に減少する計算とする。
【0089】
上記より、時計カウント値は0.1sec=1カウントと想定していたら、50カウント=5sec相当となる。5sec相当の過負荷累積カウンタのカウント値は(5*100)/60≒8となる。
【0090】
前記EEPROMに記録された過負荷累積カウンタのカウント値75から減少量を引き、75-8=67となる。
【0091】
この67が拾い上げ完了とともに現カウント値として展開される。このときEEPROM記録カウント値<減少量となる場合は0値でリミットしたうえで展開される。
【実施例3】
【0092】
本実施例3では、経過時間取得用パラメータとして、測定又は推定演算により求めたインバータ内部のヒートシンク温度と過負荷累積カウンタのカウント値を用い、電源遮断時と再投入時のヒートシンクの温度差から経過時間を推定し、そこから過負荷累積カウンタの減少量を推定し、その減少量を遮断前に記録したカウント値に展開するように構成した。
【0093】
すなわち、インバータ内部のヒートシンク温度からモータの温度上昇を推定する。モータの温度上昇は出力電流と通電時間から推定できる(通電時間は1回目の過負荷累積カウンタの値から逆算できる)。そして、電源遮断時と再投入時のヒートシンクの温度差から経過時間を推定し、そこからカウントの減少量を推定し、その減少量を遮断前に記録したカウント値に展開する。
【0094】
あらかじめパラメータ等で、モータの熱時定数を考慮した温度減少係数を測定するかを決めて設定する。
【0095】
図5は実施例3における温度取得による補填動作のタイムチャート、
図6は実施例3によるインバータの制御装置が行う処理の動作フローチャートである。
【0096】
図6(a)はインバータの電源遮断時のフローチャートであり、ステップS50において電源遮断時のインバータ内部のヒートシンク温度と、過負荷累積カウンタのカウント値を不揮発性メモリ、EEPROM等に記憶(記録)する。
【0097】
図6(b)は再起動時の復帰拾い上げ時のフローチャートであり、ステップS61では拾い上げ動作にてモータの駆動周波数又は回転数を取得し、ステップS62では、前記ステップS50で不揮発性メモリに記録した電源遮断時のヒートシンク温度値と、電源遮断後の再起動時に取得したヒートシンク温度との差分を、予め設定した温度減少係数で除算して、電源遮断から再起動までの経過時間を推定する。
【0098】
次にステップS63では、前記推定された経過時間から過負荷累積カウンタのカウント減少量を計算し、ステップS64では前記計算されたカウント減少量で過負荷累積カウンタのカウント値を減算する。
【0099】
そして減算結果のカウント値が0より下であるか否かをステップS65で判定し、0より下である場合はステップS66でカウント値を0値でリミットした後、ステップS67においてインバータの再起動時の過負荷累積カウンタのカウント値に展開する(現カウント値として展開する)。
【0100】
次に本実施例3の動作の詳細を説明する。
図5の(a)はモータ速度、(b)はインバータの制御装置のシーケンス出力「運転状態」信号、(c)はモータ電流値、(d)はインバータの制御装置のシーケンス出力「異常出力」信号、(e)は過負荷累積カウンタのカウント値、(f)はインバータ電源状態(オン、オフ)信号を各々示している。
【0101】
図5において、時刻t1に到達する前の期間では、シーケンス出力「運転状態」信号(
図5(b))およびインバータ電源状態信号(
図5(f))はともにハイレベルであり、モータ電流値がモータ過負荷発生基準値をすでに超過している(
図5(c))が、過負荷累積カウンタのカウント値は過負荷異常判定レベル以下で増加中である。
【0102】
次に時刻t1において、過負荷累積カウンタのカウント値が過負荷異常判定レベルを超過すると、シーケンス出力「異常出力」信号がハイレベルとなり、シーケンス出力「運転状態」信号がローレベルとなり、モータ電流値は時刻t1~t2間で0になり、モータ速度は徐々に減少し、過負荷累積カウンタのカウント値は時刻t2以降減少する。
【0103】
C-(1) 時刻t3では、インバータ電源状態信号およびシーケンス出力「異常出力」信号がローレベルとなる。制御装置ではこれを運転中または停止によるフリーラン、減速動作中に電源遮断が発生したと判断する。
【0104】
C-(2) 電源遮断によるCPUが停止する前に、インバータのヒートシンク温度の値と過負荷累積カウンタのカウント値をEEPROM等の電源遮断でも保持される記録装置へ記録する(ステップS50)。電源が遮断されることにより、制御回路内部の記録値が0となる。
【0105】
C-(3) 次に時刻t4において、電源が再投入されてCPUが再起動する。
【0106】
C-(4) 再起動の時点で再起動時点のヒートシンク温度を取得し(ステップS61)、それと電源遮断時のヒートシンク温度値を比較し、その差分と温度減少係数から経過時間およびカウンタ減少量を推定する(ステップS62,S63)。
【0107】
C-(5) 電源遮断直前に記録した過負荷累積カウンタのカウント値に対し、前記算出した経過時間分のカウント減少量を引き、現時点の過負荷累積カウンタのカウント値を演算し(ステップS65)、現カウント値として展開する(ステップS65~ステップS67)。
【0108】
C-(6) 例えば時刻t5のように、停止中や再運転により再度モータ電流値が過負荷異常判定レベルを超過しない段階では過負荷累積カウンタのカウント値は減少を続け、0値でリミットする。
【0109】
C-(7) 時刻t6において、再度モータ電流値が過負荷異常判定レベルを超過したときは過負荷累積カウンタの増加に転じる。
【0110】
次に、ヒートシンク温度の取得方法、推定する経過時間や過負荷累積カウンタの減少量等の具体例を以下に示す。
【0111】
ヒートシンク温度はインバータのゲート出力指令により、インバータを構成する半導体スイッチング素子、例えばIGBTが動作することで発熱し連動して上昇する。電源遮断でゲート指令がOFFとなり、IGBTは停止し、発熱元がなくなり、ヒートシンク温度は下がる。
【0112】
ここでは、試験運転時や事前調整運転等で、故障発生でフリーラン、停止を行う機会を設けているとする。この測定で測定開始から一定時間経過後、例えば10秒後か1分後等のヒートシンク温度値をそれぞれ測定し温度カウント値を取得する。
【0113】
下記<例2>の計算式を基に温度減少係数値を計算し、これを記録する。この温度減少係数値は自動調整運転(オートチューニング動作)等の試験運転時に取得するほか、パラメータの手入力で設定できるものとする。温度減少係数値はEEPROMに記録することで保護し、電源遮断等でも保持されるとする。
【0114】
電源遮断等で電圧値が低下して一定レベル以下となったとき、その時点の温度カウント値を記録し、記録値をEEPROM等の不揮発性メモリに保管する(ステップS50)。また、その時点の過負荷累積カウンタのカウント値も同様に記録しEEPROM等の不揮発性メモリに保管する。
【0115】
電源遮断が継続し、制御回路の主電源がOFFとなってもEEPROM内の記録値は保持される(
図5におけるC-(2))。
【0116】
電源が復旧して制御機能が再度立ち上がり完了したとき、拾い上げ再始動の機能が有効であれば、拾い上げ動作が行われ、回転中のモータ周波数/回転数に合わせて運転再開される。
【0117】
拾い上げ時点でその時点のヒートシンク温度値を取得する(
図5におけるC-(4))。
【0118】
インバータ内部ではEEPROM内部に記録された電圧低下時点のヒートシンク温度値と、拾い上げ動作時点で取得されたヒートシンク温度値を比較し、その差分から経過時間を推定し、経過時間からカウント減少量を計算する(以下の<例2>を参照)。
【0119】
EEPROMに記録された過負荷累積カウンタのカウント値からカウント減少量を引き、拾い上げ完了とともに現カウント値として展開する。
【0120】
このときEEPROM記録カウント値<減少量となる場合は0値でリミットしたうえで展開される。
【0121】
<例2>
試験運転等で運転していてヒートシンク温度値が50℃で、フリーラン運転となり、10秒後に48℃まで減少したとする。温度減少係数値は(測定開始値―時間経過後値)/時間と考え、今回の例では(50-48)/10=0.2(係数)となる。この0.2がEEPROMに保管される。
【0122】
過負荷累積カウンタのカウント値は1分で100→0に減少する計算とする。電源低下時(C-(2))の時点でヒートシンク温度50℃:過負荷累積カウンタのカウント値60を取得しEEPROMに記録される。
【0123】
その後
図5のC-(4)まで進むと、電源復帰後のヒートシンク温度値は46℃相当に落ち込んでいて、この時点で拾い上げ再始動が開始されたとする。
【0124】
インバータ内部では上記で取得した温度減少係数値を踏まえて計算し、経過時間を推定する、今回の例では50-46/0.2=20(sec)とみなせる。20sec相当の過負荷累積カウンタのカウント値は20*100/60≒33と考えられる。
【0125】
電源低下時に取得した過負荷累積カウンタのカウント値と引くことで、拾い上げ時点のカウント値が推測でき、60-33=27となる。27が拾い上げ時点の過負荷累積カウンタのカウント値に展開される。その後は運転の状況により増加減される。
【0126】
以上のように、実施例1~3によれば、過負荷動作における過負荷異常の判定に用いる過負荷累積カウンタの動作で、電源遮断時~再投入後の過負荷累積カウンタ量を推測することで、実際のモータ過負荷の状態が保持され、実際の動作に即した過負荷機能の動作が図れる。
【符号の説明】
【0127】
S10,S21~S27…実施例1の処理ステップ
S30,S41~S46…実施例2の処理ステップ
S50,S61~S67…実施例3の処理ステップ