(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】無線通信システム、コントローラ、無線基地局、及びデータパケット転送方法
(51)【国際特許分類】
H04W 48/18 20090101AFI20250212BHJP
H04W 28/06 20090101ALI20250212BHJP
H04W 88/02 20090101ALI20250212BHJP
【FI】
H04W48/18 113
H04W28/06 110
H04W88/02
(21)【出願番号】P 2021050331
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】谷本 好史
(72)【発明者】
【氏名】上田 泰毅
【審査官】岡本 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-029994(JP,A)
【文献】国際公開第03/100652(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線通信端末と、
当該無線通信端末と無線接続する無線基地局と、
当該無線基地局を介して前記無線通信端末と通信すると共に、所定のネットワークを介して他の通信システムと通信可能に接続されるコントローラと、を備えた無線通信システムであって、
前記他の通信システムから送信されるデータパケットの宛先が前記複数の無線通信端末のうち特定の無線通信端末であった場合には、前記データパケットを所定のデータフレームに変換して当該無線通信端末に転送する一方、前記他の通信システムから送信されるデータパケットの宛先が前記複数の無線通信端末のうち前記特定の無線通信端末以外の無線通信端末であった場合には、前記データパケットを前記所定のデータフレームに変換することなく当該無線通信端末に転送する転送手段を備
え、
前記特定の無線通信端末は複数存在し、
前記転送手段は、前記特定の無線通信端末から送信される所定のデータフレームの宛先が他の前記特定の無線通信端末であった場合には、前記所定のデータフレームを前記データパケットに変換することなく当該無線通信端末に転送する、
無線通信システム。
【請求項2】
前記転送手段は、特定の無線通信端末から送信される所定のデータフレームの宛先が他の通信システムであった場合は、前記所定のデータフレームを前記データパケットに変換して前記他の通信システムに転送する、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記転送手段は、前記コントローラに備えられている、請求項1
又は2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記転送手段は、前記無線基地局に備えられている、請求項1
又は2に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記データフレームは、宛先と、送信するデータ部と、を少なくとも含むデータフレームであり、
前記データパケットは、イーサネット上で転送される汎用的な通信プロトコルフォーマットの通信パケットである、請求項1~
4のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記無線通信端末は、移動体に搭載されたものである、請求項1~
5のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項7】
複数の無線通信端末と、前記無線通信端末と無線接続する無線基地局とを備えた無線通信システムにおいて用いられるコントローラであって、
前記無線基地局を介して前記無線通信端末と通信すると共に、所定のネットワークを介して他の通信システムと通信可能に接続され、
前記他の通信システムから送信されるデータパケットの宛先が前記複数の無線通信端末のうち特定の無線通信端末であった場合には、前記データパケットを所定のデータフレームに変換して当該無線通信端末に無線接続された無線基地局に転送する一方、前記他の通信システムから送信されるデータパケットの宛先が前記複数の無線通信端末のうち特定の無線通信端末以外の無線通信端末であった場合には、前記データパケットを前記所定のデータフレームに変換することなく当該無線通信端末に無線接続された無線基地局に転送する転送手段を有し、
前記特定の無線通信端末は複数存在し、
前記転送手段は、前記特定の無線通信端末から送信される所定のデータフレームの宛先が他の前記特定の無線通信端末であった場合には、前記所定のデータフレームを前記データパケットに変換することなく当該無線通信端末に転送する、
コントローラ。
【請求項8】
複数の無線通信端末と、所定のネットワークを介して他の通信システムと通信可能に接続されたコントローラとを備えた無線通信システムにおいて用いられる無線基地局であって、
前記無線通信端末と無線接続しており、前記コントローラに接続されており、
前記コントローラ経由で前記他の通信システムから送信されるデータパケットの宛先が前記複数の無線通信端末のうち特定の無線通信端末であった場合には、前記データパケットを所定のデータフレームに変換して当該無線通信端末に転送する一方、前記コントローラ経由で前記他の通信システムから送信されるデータパケットの宛先が前記複数の無線通信端末のうち特定の無線通信端末以外の無線通信端末であった場合には、前記データパケットを所定のデータフレームに変換することなく当該無線通信端末に転送する転送手段を有する、
前記特定の無線通信端末は複数存在し、
前記転送手段は、前記特定の無線通信端末から送信される所定のデータフレームの宛先が他の前記特定の無線通信端末であった場合には、前記所定のデータフレームを前記データパケットに変換することなく当該無線通信端末に転送する、
無線基地局。
【請求項9】
複数の無線通信端末と、当該無線通信端末と無線接続する無線基地局と、当該無線基地局を介して前記無線通信端末と通信すると共に、所定のネットワークを介して他の通信システムと通信可能に接続されるコントローラと、を備えた無線通信システムにおけるデータパケット転送方法であって、
前記他の通信システムから送信されるデータパケットの宛先が前記複数の無線通信端末のうち特定の無線通信端末であるか否かを判断するステップと、
前記特定の無線通信端末であった場合には前記データパケットを所定のデータフレームに変換し、前記特定の無線通信端末以外の無線通信端末であった場合には前記データパケットを変換しないステップと、
前記所定のデータフレーム又は前記データパケットを当該無線通信端末に転送するステップと、
を含み、
前記特定の無線通信端末は複数存在し、
前記特定の無線通信端末から送信される所定のデータフレームの宛先が他の前記特定の無線通信端末であった場合には、前記所定のデータフレームを前記データパケットに変換することなく当該無線通信端末に転送するステップを含む、
データパケット転送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関し、特に、複数の無線通信端末と、当該無線通信端末と無線接続する無線基地局と、当該無線基地局を介して無線通信端末と通信すると共に、所定のネットワークを介して他の通信システムと通信可能に接続されるコントローラと、を備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
通常の無線通信システムでは、汎用的な無線通信機器が通信できるように、イーサネット(登録商標)上で転送される汎用的な通信プロトコルフォーマットの通信パケットが送受信される。
特許文献1には、外部ネットワークに含まれる移動IP端末との間では、宛先及び送信元アドレスのみをパケットのヘッダに設定して通信を行い、相手ノードとの間では、Mobile IPv6の通信に必要な情報をパケットのヘッダに設定して通信を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような従来の発明は、外部ネットワークに含まれる移動IP端末全てに対して一律にデータパケットの変換を行うものであり、その変換のための処理負荷が問題となる。
【0005】
本発明の目的は、無線通信システムにおいて、処理負荷を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0007】
本発明の一見地に係る無線通信システムは、複数の無線通信端末と、当該無線通信端末と無線接続する無線基地局と、当該無線基地局を介して無線通信端末と通信すると共に、所定のネットワークを介して他の通信システムと通信可能に接続されるコントローラと、を備えている。
無線通信システムは、転送手段を備えている。
転送手段は、他の通信システムから送信されるデータパケットの宛先が複数の無線通信端末のうち特定の無線通信端末であった場合には、データパケットを所定のデータフレームに変換して当該無線通信端末に転送する。一方、転送手段は、他の通信システムから送信されるデータパケットの宛先が複数の無線通信端末のうち特定の無線通信端末以外の無線通信端末であった場合には、データパケットを前記所定のデータフレームに変換することなく当該無線通信端末に転送する。
この無線通信システムでは、他の通信システムから送信されるデータパケットの宛先が複数の無線通信端末のうち特定の無線通信端末以外の無線通信端末であった場合にはデータパケットを変換しないので、データパケットの変換のための処理負荷が軽減される。また、特定の無線通信端末に対しては変換によってデータパケットの容量を小さくすることで、無線通信システムの通信負荷を軽減できる。
【0008】
転送手段は、特定の無線通信端末から送信される所定のデータフレームの宛先が他の通信システムであった場合は、所定のデータフレームをデータパケットに変換して他の通信システムに転送してもよい。
この無線通信システムでは、上りの通信においては、転送手段が所定のデータフレームをデータパケットに変換することで、他の通信システムに合わせた通信プロトコルによる無線通信を実現できる。
【0009】
無線通信システムは、複数の特定の無線通信端末を備えていてもよい。
転送手段は、特定の無線通信端末から送信される所定のデータフレームの宛先が他の特定の無線通信端末であった場合には、所定のデータフレームをデータパケットに変換することなく当該無線通信端末に転送してもよい。
この無線通信システムでは、特定の無線通信端末相互間の通信に係る通信負荷を軽減できる。
【0010】
転送手段は、コントローラに備えられていてもよい。
この無線通信システムでは、コントローラの転送手段が、所定のデータパケットの宛先を判断し、データパケットを所定のデータフレームに変換して転送する。コントローラがデータ変換を集中管理できるので、例えば無線通信の設定を変更する場合等、各種変更に対応することが容易である。
【0011】
転送手段は、無線基地局に備えられていてもよい。
この無線通信システムでは、無線基地局の転送手段が、データパケットの宛先を判断し、データパケットを所定のデータフレームに変換して転送する。複数の無線基地局がデータ変換を行うことができるので、処理負荷を分散できる。
【0012】
データフレームは、宛先と、送信するデータ部と、を少なくとも含むデータフレームであってもよい。
データパケットは、イーサネット上で転送される汎用的な通信プロトコルフォーマットの通信パケットであってもよい。
【0013】
無線通信端末は、移動体に搭載されたものであってもよい。
この無線通信システムでは、移動する無線通信端末の通信負荷が軽減される。
【0014】
本発明の他の見地に係るコントローラは、複数の無線通信端末と、当該無線通信端末と無線接続する無線基地局とを備えた無線通信システムにおいて用いられる。
コントローラは、当該無線基地局を介して無線通信端末と通信すると共に、所定のネットワークを介して他の通信システムと通信可能に接続される。
コントローラは、転送手段を有している。
転送手段は、他の通信システムから送信されるデータパケットの宛先が複数の無線通信端末のうち特定の無線通信端末であった場合には、データパケットを所定のデータフレームに変換して当該無線通信端末に無線接続された無線基地局に転送する。一方、転送手段は、他の通信システムから送信されるデータパケットの宛先が複数の無線通信端末のうち特定の無線通信端末以外の無線通信端末であった場合には、データパケットを前記所定のデータフレームに変換することなく当該無線通信端末に無線接続された無線基地局に転送する。
【0015】
本発明のさらに他の見地に係る無線基地局は、複数の無線通信端末と、所定のネットワークを介して他の通信システムと通信可能に接続されたコントローラとを備えた無線通信システムにおいて用いられる。
無線基地局は、無線通信端末と無線接続しており、コントローラに接続されている。
無線基地局は、転送手段を有している。
転送手段は、コントローラ経由で他の通信システムから送信されるデータパケットの宛先が複数の無線通信端末のうち特定の無線通信端末であった場合には、データパケットを所定のデータフレームに変換して当該無線通信端末に転送する。一方、転送手段は、コントローラ経由で他の通信システムから送信されるデータパケットの宛先が複数の無線通信端末のうち特定の無線通信端末以外の無線通信端末であった場合には、データパケットを前記所定のデータフレームに変換することなく当該無線通信端末に転送する。
【0016】
本発明の他の見地に係るデータパケット転送方法は、複数の無線通信端末と、当該無線通信端末と無線接続する無線基地局と、当該無線基地局を介して無線通信端末と通信すると共に、所定のネットワークを介して他の通信システムと通信可能に接続されるコントローラと、を備えた無線通信システムにおいて用いられる。
データパケット転送方法は、下記のステップを含む。
◎他の通信システムから送信されるデータパケットの宛先が複数の無線通信端末のうち特定の無線通信端末であるか否かを判断するステップ。
◎特定の無線通信端末であった場合にはデータパケットを所定のデータフレームに変換し、特定の無線通信端末以外の無線通信端末であった場合にはデータパケットを変換しないステップ。
◎所定のデータフレーム又はデータパケットを当該無線通信端末に転送するステップ。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る無線通信システムでは、処理負荷が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る無線通信システムの全体構成を示す模式図(上り通信及び下り通信)。
【
図2】第1実施形態に係る無線通信システムの全体構成を示す模式図(無線通信端末同士の通信)。
【
図3】無線基地局及びコントローラの制御構成を示すブロック図。
【
図4】IPアドレスと無線通信端末識別子の変換テーブル。
【
図5】コントローラにおけるデータ変換を示す模式図(下り通信)。
【
図6】コントローラにおけるデータ変換を示す模式図(下り通信)。
【
図7】コントローラにおけるデータ変換を示す模式図(上り通信)。
【
図8】コントローラによるデータ変換制御動作を示すフローチャート。
【
図9】第2実施形態に係る無線通信システムの全体構成を示す模式図(上り通信及び下り通信)。
【
図10】無線基地局及びコントローラの制御構成を示すブロック図。
【
図11】無線基地局におけるデータ変換を示す模式図(下り通信)。
【
図12】無線基地局におけるデータ変換を示す模式図(下り通信)。
【
図13】無線基地局におけるデータ変換を示す模式図(上り通信)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.第1実施形態
(1)無線通信システムの基本構成
図1~
図2を用いて、本発明の第1実施形態に係る無線通信システム1を説明する。
図1~
図2は、本発明の第1実施形態に係る無線通信システムの全体構成を示す模式図である。
無線通信システム1は、複数の第1無線通信端末3Aと、複数の第2無線通信端末3Bと、複数の無線基地局5と、コントローラ7とを備えている。
【0020】
第1無線通信端末3A及び第2無線通信端末3Bは、例えば、ローカル5GやWI-FI(登録商標)の通信ユニットである。なお、第1無線通信端末3A及び第2無線通信端末3BのIPアドレスは固定アドレスである。ただし、第1無線通信端末3A及び第2無線通信端末3Bを特定する情報は、IPアドレスに限定されない。
第1無線通信端末3Aは、工場内に設けられた一群の無線通信端末であり、例えば、工場内の複数の搬送台車9(移動体の一例)に搭載されている。第1無線通信端末3Aは、搬送台車9が移動すると、無線基地局5の通信圏から出て行くことがあるが、その場合は別の無線基地局5の通信圏内に入って通信を継続する。
第2無線通信端末3Bは、工場内に設けられた、第1無線通信端末3Aとは異なる一群の無線通信端末であり、搬送台車9以外の作業用コンピュータ(デスクトップパソコン、タブレットコンピュータ、携帯電話など)に搭載されている。本実施形態において、第1無線通信端末3Aの数は、第2無線通信端末3Bの数よりも多い。
本実施形態では、第1無線通信端末3Aは「特定の無線通信端末」の例であり、第2無線通信端末3Bは「特定の無線通信端末以外の無線通信端末」の例である。
【0021】
無線通信システム1は、複数の搬送台車9を有する搬送システムの一部を構成している。搬送システムにおいて、外部のサーバ11A、11Bは上位系のシステムであり、搬送台車9全体の情報を有している。無線通信システム1によって、例えばサーバ11A、11Bから荷物の搬送指示が複数の搬送台車9に送信され、搬送台車9からサーバ11A、11Bに当該搬送台車9の状態、変化、位置情報が送信される。なお、以下の説明では、サーバ11Aを代表例として説明する。
【0022】
無線通信システム1は、後述するように、データパケットDPやデータフレームDFを各装置間で送受信する。データパケットDPは、一例として、イーサネット(登録商標)上で転送される汎用的な通信プロトコルフォーマットの通信パケットである。
【0023】
(2)無線基地局及びコントローラの制御構成
図3を用いて、無線基地局5及びコントローラ7の制御構成を説明する。
図3は、無線基地局及びコントローラの制御構成を示すブロック図である。
無線基地局5は、通信部41、及び送信先判断部42を有している。送信先判断部42は、プログラムに従って作動するCPUの機能である。CPUは、単一のプロセッサで構成されていてもよいが、各制御のために独立した複数のプロセッサから構成されていてもよい。CPUの各要素の機能は、一部又は全てが、制御部を構成するコンピュータシステムにて実行可能なプログラムとして実現されてもよい。その他、制御部の各要素の機能の一部は、カスタムICにより構成されていてもよい。なお、上記の説明は他のCPUにも当てはまる。
【0024】
無線基地局5は、複数の第1無線通信端末3A及び第2無線通信端末3Bと無線接続する。無線基地局5は、自機の通信圏内に第1無線通信端末3A又は第2無線通信端末3Bが入ったこと又はそこから出て行ったことをコントローラ7に通知する。
【0025】
コンローラ7は、CPU、RAM、ROMなどからなるコンピュータシステムであり、無線通信システム1において全体の制御を行う。
コントローラ7は、無線基地局5を介して第1無線通信端末3A又は第2無線通信端末3Bと通信する。コントローラ7と複数の無線基地局5との間にはルータ13が設けられている。なお、この実施形態では、コントローラ7と無線基地局5は有線接続されている。
コントローラ7は、有線又は無線によるネットワーク15(所定のネットワークの一例)を介してサーバ11A、11B(他の通信システムの一例)と通信可能に接続される。
図3に示すように、コントローラ7は、通信部44、送信先判断部45、及びデータ変換部46(後述)を有している。
【0026】
コントローラ7は、第1無線通信端末3A及び第2無線通信端末3BのIPアドレスを把握すると共に、第1無線通信端末3A及び第2無線通信端末3Bそれぞれがいずれの無線基地局5に接続されているのかを把握している。具体的には、コントローラ7は、
図4に示すように、IPアドレスと無線通信端末識別子とを対応付けるテーブルを有しており、IPアドレスから無線通信端末識別子を判別する。
図4は、IPアドレスと無線通信端末識別子とを対応付けるテーブルの一例である。
【0027】
(3)転送手段
図3に示すように、通信部44、送信先判断部45及びデータ変換部46は、プログラムに従ってCPUが実行する機能として、転送手段61を実現している。送信先判断部45は、データパケットDPの宛先を判断する。通信部44は、送信先判断部45の判断結果に基づいて、データパケットDPをそのまま転送したり、データ変換部46によりデータパケットDPを所定のデータフレームDF(変換後のパケット)に変換してから転送したりする(後述)。このようにコントローラ7が転送及び変換を集中管理できるので、各種変更に対応することが容易である。
【0028】
データフレームDFは、一例として、宛先と、データ部と、を少なくとも含むデータフレームである。具体的には、データ部は、例えば、搬送台車9が搬送すべき物品の搬出元及び搬送先の情報を含む搬送指令や、搬送台車9が移動すべき移動先の情報を含む移動指令等、搬送台車9を制御するための制御用データから構成されている。なお、データフレームDFには、送信元に関する情報は含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。さらに具体的には、データフレームDFは、RU(無線ヘッダ)、SRC(IP/PORT)(送信元IPアドレス(4byte)・ポート番号)、DATAを有している。つまり、データフレームDFは、データパケットDPからMAC/IP/UDPが削除されている。DATAは例えば64バイトぐらいであり、それに対して削除された通信ヘッダは汎用的な通信プロトコルフォーマットの通信パケットにおいて数十バイトなので、削減効果は高い。
【0029】
(3-1)下り通信(
図1)
図5~
図6を用いて、コントローラ7におけるデータ変換を説明する。
図5~
図6は、コントローラにおけるデータ変換を示す模式図である。
下り通信では、従来は、サーバ11Aから送信されたデータパケットDPは、コントローラ7、ルータ13、及び無線基地局5を介して、第1無線通信端末3A及び第2無線通信端末3Bに送信される。本実施形態では、下記に説明するように、データパケットDPはデータフレームDFに変換される場合と、変換されない場合がある。
【0030】
変換される場合の説明として、コントローラ7のデータ変換部46は、サーバ11Aから送信されるデータパケットDPの宛先が複数の第1無線通信端末3Aのうちいずれかであった場合には、データパケットDPを所定のデータフレームDFに変換して宛先の第1無線通信端末3Aに転送する。具体的には、所定のデータフレームDFは、ルータ13及び無線基地局5を介して当該第1無線通信端末3Aに送信される。
【0031】
図5に示すように、データ変換部46は、データパケットDPをデータフレームDFに変換する。具体的には、データパケットDP(MAC/IP/UDP/DATA)がデータフレームDF(MAC/SRC(IP/PORT)/DATA)に変換される。さらに、コントローラ7での処理の後に、無線基地局5では、データフレームDFのMACヘッダがRUヘッダに置き換えられる。
【0032】
変換されない場合の説明として、コントローラ7のデータ変換部46は、サーバ11Aから送信されるデータパケットDPの宛先が複数の第2無線通信端末3Bのうちいずれかであった場合には、
図6に示すように、データパケットDPを変換しない。その結果、データパケットDPは、ルータ13及び無線基地局5を介して宛先の第2無線通信端末3Bに送信される。なお、コントローラ7での処理の後に、無線基地局5では、データパケットDPのMACヘッダがRUヘッダに置き換えられる。
【0033】
図6に示すように、本実施形態では、サーバ11Aから送信されるデータパケットDPの宛先が第2無線通信端末3Bであった場合にはデータパケットDPを変換しない。このため、データパケットDPの変換のための処理負荷が全体として極端に大きくならない。つまり、データ変換は一律に行われるものではなく、必要に応じて行われる。
図5に示すように、第1無線通信端末3Aを宛先とするデータパケットDPを、比較的容量の小さいデータフレームDFに変換して当該第1無線通信端末3Aに転送するように構成することで、無線通信システム1の通信負荷を軽減できる。
【0034】
一般に、産業機器などの制御通信ではリアルタイム性が必要であり、少量のデータを低遅延で頻繁に送受信することが求められる。特に、第1無線通信端末3Aは工場内では数百から数千台があるので、1台あたりわずかなデータの増加によっても全体の通信量が大きくなってしまう。本実施形態では、上記変換によって第1無線通信端末3Aとの通信に係る1台あたりのデータ量を少し下げるだけで、全体のデータ量を大きく下げることができる。
【0035】
(3-2)上り通信(
図1)
上り通信では、第1無線通信端末3Aから送信されたデータフレームDFは、無線基地局5にてデータパケットDPに変換されて、ルータ13、及びコントローラ7を介して、サーバ11Aに送信される。
【0036】
図7を用いて、第1無線通信端末3Aからの上り通信を説明する。
図7は、コントローラにおけるデータ変換を示す模式図である。
データ変換部46は、第1無線通信端末3Aから送信されるデータフレームDFの宛先がサーバ11Aであった場合は、データフレームDFをデータパケットDPに変換してサーバ11Aに転送する。このように、第1無線通信端末3Aを送信元とする上りの通信においては、転送手段61が所定のデータフレームDFをデータパケットDPに変換する。
具体的には、データ変換部46は、データフレームDF(MAC/DST(IP/PORT)/DATA)をデータパケットDP(MAC/IP/UDP/DATA)に変換する。つまり、データパケットDPは、データフレームDFにMAC/IP/UDPが追加されている。なお、コントローラ7での処理の前に、無線基地局5では、データフレームDFのRUヘッダがMACヘッダに置き換えられている。
【0037】
(3-3)無線通信端末同士の通信(
図2)
転送手段61は、第1無線通信端末3Aから送信されるデータフレームDFの宛先が他の第1無線通信端末3Aであった場合には、データフレームDFを変換することなく第1無線通信端末3Aに転送する。具体的には、データフレームDFは、ルータ13、コントローラ7、ルータ13及び無線基地局5を介して他の第1無線通信端末3Aに送信される。
上記のように、第1無線通信端末3Aから受信したデータフレームDFの宛先が他の第1無線通信端末3Aであった場合は、コントローラ7はデータフレームDFを変換せずに転送する。これにより、コントローラ7の処理負荷を軽減できる。
【0038】
(4)コントローラのデータ変換制御動作
図8を用いて、コントローラ7によるデータ変換制御動作を説明する。
図8は、コントローラによるデータ変換制御動作を示すフローチャートである。
以下に説明する制御フローチャートは例示であって、各ステップは必要に応じて省略及び入れ替え可能である。また、複数のステップが同時に実行されたり、一部又は全てが重なって実行されたりしてもよい。
さらに、制御フローチャートの各ブロックは、単一の制御動作とは限らず、複数のブロックで表現される複数の制御動作に置き換えることができる。
なお、各装置の動作は、制御部から各装置への指令の結果であり、これらはソフトウェア・アプリケーションの各ステップによって表現される。
【0039】
ステップS1では、コントローラ7の通信部44にて、データパケットDPが受信されるのを待つ。
ステップS2では、データ変換が必要であるか否かが判断される。具体的には、送信先判断部45が上記判断を行う。データ変換が必要であればプロセスはステップS3に移行し、データ変換が必要でなければプロセスはステップS3をスキップしてステップS4に移行する。データ変換が必要な場合とは、宛先が第1無線通信端末3A、サーバ11Aの場合である。データ変換が必要でない場合とは、宛先が第2無線通信端末3Bの場合である。
【0040】
ステップS3では、データパケットDPが所定のデータフレームDFに変換される。具体的には、データ変換部46が上記動作を実行する。
ステップS4では、データパケットDP又はデータフレームDFの送信先が判断される。具体的には、送信先判断部45が上記判断を行う。送信先がサーバ11AであればプロセスはステップS5に移行し、送信先が第1無線通信端末3A又は第2無線通信端末3BであればプロセスはステップS6に移行する。
【0041】
ステップS5では、データパケットDPがサーバ11Aに送信される。具体的には、通信部44が上記動作を実行する。
ステップS6では、データフレームDF又はデータパケットDPが第1無線通信端末3A又は第2無線通信端末3Bにそれぞれ送信される。具体的には、通信部44が上記動作を実行する。
【0042】
2.第2実施形態
第1実施形態では、転送手段61はコントローラ7に備えられていたが、転送手段61は無線基地局5に備えられていてもよい。
図9及び
図10を用いて、そのような実施例を第2実施形態として説明する。
図9は、第2実施形態に係る無線通信システムの全体構成を示す模式図である。
図10は、無線基地局及びコントローラの制御構成を示すブロック図である。
なお、第2実施形態に係る無線通信システム1Aの基本的構成及び動作は第1実施形態と同じである。
【0043】
無線通信システム1Aは、複数の第1無線通信端末3Aと、複数の第2無線通信端末3Bと、複数の無線基地局5と、コントローラ7とを備えている。
【0044】
図10を用いて、無線基地局5及びコントローラ7の制御構成を説明する。
図10は、無線基地局及びコントローラの制御構成を示すブロック図である。
無線基地局5は、通信部41、送信先判断部42及びデータ変換部43を有している。通信部41、送信先判断部42及びデータ変換部43は、プログラムに従ってCPUが実行する機能として、転送手段61Aを実現している。送信先判断部42は、データパケットDPの宛先を判断する。通信部41は、送信先判断部42の判断結果に基づいて、データパケットDPをそのまま転送したり、データ変換部43によりデータパケットDPを所定のデータフレームDFに変換してから転送したりする(後述)。このように複数の無線基地局5がデータ変換を行うことができるので、処理負荷を分散できる。
【0045】
図11~
図12を用いて、無線基地局5におけるデータ変換を説明する。
図11~
図12は、無線基地局におけるデータ変換を示す模式図である。
下り通信では、従来は、サーバ11Aから送信されたデータパケットDPは、コントローラ7、ルータ13、無線基地局5を介して、第1無線通信端末3A又は第2無線通信端末3Bに送信される。本実施形態では、下記に説明するように、データパケットDPはデータフレームDFに変換される場合と、変換されない場合とがある。
【0046】
コントローラ7は、サーバ11Aから送信されるデータパケットDPの宛先である第1無線通信端末3A又は第2無線通信端末3Bがいずれの無線基地局5の通信圏にいるかを判断して、その無線基地局5にデータパケットDPを送る。
【0047】
変換される場合の説明として、無線基地局5のデータ変換部43は、
図11に示すように、データパケットDPの宛先が複数の第1無線通信端末3Aのうちいずれかであった場合には、データパケットDPをデータフレームDFに変換する。具体的には、無線基地局5では、データパケットDP(MAC/IP/UDP/DATA)が、データフレームDF(RU/SRC(IP/PORT)/DATA)に変換される。
変換されない場合の説明として、無線基地局5のデータ変換部43は、
図12に示すように、データパケットDPの宛先が複数の第2無線通信端末3Bのうちいずれかであった場合には、上記の変換を行わずにデータパケットDPを当該第2無線通信端末3Bに転送する。なお、無線基地局5では、データパケットDPのMACヘッダがRUヘッダに置き換えられる。
【0048】
図13を用いて、第1無線通信端末3Aからの上り通信を説明する。
図13は、無線基地局におけるデータ変換を示す模式図である。
無線基地局5のデータ変換部43が、データフレームDFをデータパケットDPに変換する。具体的には、データフレームDF(RU/DST(IP/PORT)/DATA)が、データパケットDP(MAC/IP/UDP/DATA)に変換される。
【0049】
図13に示すように、本実施形態では、サーバ11Aから送信されるデータパケットDPの宛先が第2無線通信端末3Bであった場合にはデータパケットDPを変換しない。このため、データパケットDPの変換のための処理負荷が全体として軽減される。つまり、データ変換は一律に行われるものではなく、必要に応じて行われる。データパケットDPは比較的容量の小さいデータフレームDFに変換されるので、無線通信システム1Aの通信負荷を軽減できる。
【0050】
3.他の実施形態
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
本発明は、搬送システム等の産業機器に最適であるが、他の装置やシステムにも適用できる。
データパケットのサイズを小さくするために、上記のヘッダの削除に加えて又は変えて、一つのパケットに含まれるデータ量を小さくしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、複数の無線通信端末と、当該無線通信端末と無線接続する無線基地局と、当該無線基地局を介して無線通信端末と通信すると共に、所定のネットワークを介して他の通信システムと通信可能に接続されるコントローラとを備えた無線ネットワークに広く適用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 :無線通信システム
3A :無線通信端末
3B :無線通信端末
5 :無線基地局
7 :コントローラ
9 :搬送台車
11A :サーバ
11B :サーバ
13 :ルータ
15 :ネットワーク
41 :通信部
42 :送信先判断部
43 :データ変換部
44 :通信部
45 :送信先判断部
46 :データ変換部
61 :転送手段
DF :データフレーム
DP :データパケット