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特許7631991流路部材、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、および流路部材の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】流路部材、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、および流路部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20250212BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20250212BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/14 613
B41J2/16 503
B41J2/16 513
B41J2/18
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021059664
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022000338
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2020104682
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 大記
(72)【発明者】
【氏名】冨松 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】大久保 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】松澤 陽
(72)【発明者】
【氏名】森山 恵多
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-083927(JP,A)
【文献】特開2015-168064(JP,A)
【文献】特開2017-149008(JP,A)
【文献】特開2014-019097(JP,A)
【文献】特開2006-212984(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0182775(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104325793(CN,A)
【文献】西独国特許出願公開第03047586(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流れる供給流路と、
前記供給流路の途中に配置され、液体が通過するフィルターと、
前記供給流路の一部を構成し、前記フィルターが固定される固定部材と、
前記供給流路の一部を構成し、前記固定部材が固定される第1部材と、を有し、
前記固定部材は、熱可塑性樹脂で構成され、
前記第1部材は、熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成され
前記固定部材と前記フィルターとは、溶着により互いに固定され、
前記固定部材と前記第1部材とは、第1接着剤により互いに固定される、
流路部材。
【請求項2】
液体が流れる供給流路と、
前記供給流路の途中に配置され、液体が通過するフィルターと、
前記供給流路の一部を構成し、前記フィルターが固定される固定部材と、
前記供給流路の一部を構成し、前記固定部材が固定される第1部材と、を有し、
前記固定部材は、熱可塑性樹脂で構成され、
前記第1部材は、熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成され、
平面視で、前記固定部材の面積は、前記第1部材の面積よりも小さい、
路部材。
【請求項3】
前記固定部材と前記フィルターとは、溶着により互いに固定され、
前記固定部材と前記第1部材とは、第1接着剤により互いに固定される、
請求項に記載の流路部材。
【請求項4】
前記固定部材は、透光性を有する部材であり、
前記第1接着剤は、光硬化型の接着剤である、
請求項3に記載の流路部材。
【請求項5】
前記フィルターには、接着剤が付着しない、
請求項1から4のいずれか1項に記載の流路部材。
【請求項6】
液体が流れる供給流路と、
前記供給流路の途中に配置され、液体が通過するフィルターと、
前記供給流路の一部を構成し、前記フィルターが固定される固定部材と、
前記供給流路の一部を構成し、前記固定部材が固定される第1部材と、
前記供給流路の一部を構成し、熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成される第2部材と、を有し、
前記固定部材は、熱可塑性樹脂で構成され、
前記第1部材は、熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成され、
前記第1部材および前記第2部材は、前記固定部材を介在させた状態で互いに積層される、
流路部材。
【請求項7】
前記供給流路の一部を構成し、熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成される第2部材を有し、
前記第1部材および前記第2部材は、前記固定部材を介在させた状態で互いに積層される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の流路部材。
【請求項8】
平面視で、前記固定部材の面積は、前記第2部材の面積よりも小さい、
請求項6または7に記載の流路部材。
【請求項9】
前記固定部材と前記第2部材とは、第2接着剤により互いに固定される、
請求項6から8のいずれか1項に記載の流路部材。
【請求項10】
前記固定部材および前記フィルターは、溶着により互いに固定され、
前記第1部材および前記第2部材のそれぞれは、熱硬化性樹脂と、無機フィラーおよび無機繊維基材のうちの少なくとも一方と、を含み、
前記固定部材は、無機フィラーおよび無機繊維基材を含まないか、または、前記第1部材および前記第2部材のそれぞれに比べて少ない含有率で無機フィラーまたは無機繊維基材を含む、
請求項6からのいずれか1項に記載の流路部材。
【請求項11】
前記固定部材は、枠状の部材である、
請求項1から10のいずれか1項に記載の流路部材。
【請求項12】
前記固定部材は、前記フィルターが固定される面に対して凹んだ凹部を有し、
前記凹部の底面は、前記供給流路の一部を構成し、かつ、貫通孔を有する、
請求項1から11のいずれか1項に記載の流路部材。
【請求項13】
前記供給流路は、前記第1部材と前記フィルターとが積層される方向に対して交差する方向に延びる流路を有し、
前記第1部材には、当該流路が設けられる、
請求項1から12のいずれか1項に記載の流路部材。
【請求項14】
液体が流れる供給流路と、
前記供給流路の途中に配置され、液体が通過するフィルターと、
前記供給流路の一部を構成し、前記フィルターが固定される固定部材と、
前記供給流路の一部を構成し、前記固定部材が固定される第1部材と、を有し、
前記固定部材は、熱可塑性樹脂で構成され、
前記第1部材は、熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成され、
前記供給流路は、分岐する分岐流路を有し、
前記第1部材には、前記分岐流路が設けられる、
流路部材。
【請求項15】
前記供給流路は、分岐する分岐流路を有し、
前記第1部材には、前記分岐流路が設けられる、
請求項1から13のいずれか1項に記載の流路部材。
【請求項16】
液体が流れる供給流路と、
前記供給流路の途中に配置され、液体が通過するフィルターと、
前記供給流路の一部を構成し、熱硬化性樹脂で構成される固定部材と、
前記供給流路の一部を構成し、熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成される第1部材と、を有し、
前記固定部材と前記フィルターとは、インサート成形により一体に成形されており、
前記第1部材と前記固定部材とは、接着剤により互いに固定される、
流路部材。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の流路部材と、
前記供給流路を通過した液体を噴射するノズルと、を有する、
液体噴射ヘッド。
【請求項18】
前記供給流路に流れる液体は、紫外線硬化型インクまたは溶剤インクである、
請求項17に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項19】
液体が流れる供給流路と、前記供給流路の途中に配置され、液体が通過するフィルターと、前記供給流路の一部を構成し、前記フィルターが固定される固定部材と、前記供給流路の一部を構成し、前記固定部材が固定される第1部材と、を有する流路部材と、
前記供給流路を通過した液体を噴射するノズルと、
前記供給流路を通過した後に前記ノズルから噴射されなかった液体が流れる循環流路と、を有し、
前記第1部材は、前記循環流路の一部を構成し、
前記固定部材は、熱可塑性樹脂で構成され、
前記第1部材は、熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成される、
液体噴射ヘッド。
【請求項20】
前記供給流路を通過した後に前記ノズルから噴射されなかった液体が流れる循環流路を有し、
前記第1部材は、前記循環流路の一部を構成する、
請求項17または18に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項21】
請求項17から20のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドへ供給する液体を貯留する液体容器と、を有する、
液体噴射装置。
【請求項22】
液体が流れる供給流路と、前記供給流路の途中に配置されるとともに液体が通過するフィルターと、前記供給流路の一部を構成するとともに熱可塑性樹脂で構成される固定部材と、前記供給流路の一部を構成するとともに熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成される第1部材と、を有する流路部材の製造方法であって、
前記フィルターと前記固定部材とを溶着した後に、前記固定部材と前記第1部材とを接着剤により接着する、
流路部材の製造方法。
【請求項23】
液体が流れる供給流路と、前記供給流路の途中に配置されるとともに液体が通過するフィルターと、前記供給流路の一部を構成するとともに熱可塑性樹脂で構成される固定部材と、前記供給流路の一部を構成するとともに熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成される第1部材と、を有する流路部材の製造方法であって、
前記フィルターをインサート品とするインサート成形により前記固定部材を形成した後に、前記固定部材と前記第1部材とを接着剤により接着する、
流路部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路部材、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、および流路部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式のプリンターに代表されるように、インク等の液体を噴射する液体噴射ヘッドを有する液体噴射装置が知られている。例えば、液体噴射ヘッドとして特許文献1に記載される記録ヘッドは、ノズルからインク滴を噴射するヘッド本体と、ヘッド本体にインクを供給する流路ユニットと、を有する。ここで、流路ユニットは、内部にフィルターが配置されるフィルター室を含む上流流路が設けられた上流流路部材を有する。また、上流流路部材は、熱可塑性樹脂で構成されており、フィルターは、上流流路部材に溶着により固定される。
【0003】
特許文献2には、流路を形成する部材とフィルター部材とが接着剤により互いに固定される流路部材が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-49725号公報
【0005】
【文献】特開2014-193556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の流路部材では、流路を構成する部材に対してフィルター部材が接着剤により直接固定されるため、当該接着剤が毛細管力によりフィルター部材の目に流れ込んで塞いでしまうという第1の課題がある。
【0007】
一方、特許文献1に記載の記録ヘッドでは、接着剤を用いずにフィルターが上流流路部材に溶着により固定されるため、前述の第1の課題が生じない。ここで、流路を構成する構造体のさらなる信頼性の向上を図るため、当該構造体を構成する材料として、熱可塑性樹脂に比べて一般に高剛性な熱硬化性樹脂等を用いることが考えられる。しかし、特許文献1に記載の記録ヘッドでは、当該溶着のために上流流路部材を熱可塑性樹脂で構成する必要があるため、上流流路部材を構成する材料として熱硬化性樹脂等を用いることができない。このため、特許文献1に記載の記録ヘッドでは、さらなる信頼性の向上を図ることができないという第2の課題がある。以上から、前述の第1の課題および第2の課題の両方を解決することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、本発明の好適な態様に係る流路部材は、液体が流れる供給流路と、前記供給流路の途中に配置され、液体が通過するフィルターと、前記供給流路の一部を構成し、前記フィルターが固定される固定部材と、前記供給流路の一部を構成し、前記固定部材が固定される第1部材と、を有し、前記固定部材は、熱可塑性樹脂で構成され、前記第1部材は、熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成される。
【0009】
本発明の好適な他の態様に係る流路部材は、液体が流れる供給流路と、前記供給流路の途中に配置され、液体が通過するフィルターと、前記供給流路の一部を構成し、熱硬化性樹脂で構成される固定部材と、前記供給流路の一部を構成し、熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成される第1部材と、を有し、前記固定部材は、前記フィルターをインサート品とするインサート成形により成形されており、前記第1部材と前記固定部材とは、接着剤により互いに固定される。
【0010】
本発明の好適な態様に係る液体噴射ヘッドは、前述のいずれかの態様の流路部材と、前記供給流路からの液体を噴射するノズルと、を有する。
【0011】
本発明の好適な態様に係る液体噴射装置は、前述の態様の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドへ供給する液体を貯留する液体容器と、を有する。
【0012】
本発明の好適な態様に係る流路部材の製造方法は、液体が流れる供給流路と、前記供給流路の途中に配置されるとともに液体が通過するフィルターと、前記供給流路の一部を構成するとともに熱可塑性樹脂で構成される固定部材と、前記供給流路の一部を構成するとともに熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成される第1部材と、を有する流路部材の製造方法であって、前記フィルターと前記固定部材とを溶着した後に、前記固定部材と前記第1部材とを接着剤により接着する。
【0013】
本発明の好適な態様に係る流路部材の製造方法は、液体が流れる供給流路と、前記供給流路の途中に配置されるとともに液体が通過するフィルターと、前記供給流路の一部を構成するとともに熱可塑性樹脂で構成される固定部材と、前記供給流路の一部を構成するとともに熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成される第1部材と、を有する流路部材の製造方法であって、前記フィルターをインサート品とするインサート成形により前記固定部材を形成した後に、前記固定部材と前記第1部材とを接着剤により接着する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る液体噴射装置の構成例を示す概略図である。
図2】第1実施形態の液体噴射ヘッドを有する液体噴射モジュールの斜視図である。
図3図2に示す液体噴射ヘッドの分解斜視図である。
図4】液体噴射ヘッドのヘッド本体の平面図である。
図5】ホルダーの平面図である。
図6】流路構造体の平面図である。
図7図6中のA-A線断面図である。
図8】固定部材の平面図である。
図9】第1実施形態における固定部材およびフィルターの固定状態を説明するための拡大断面図である。
図10】第1実施形態に係る流路部材の製造工程を示す図である。
図11】第2実施形態に係る液体噴射ヘッドを有する液体噴射モジュールの斜視図である。
図12図11に示す液体噴射ヘッドの分解斜視図である。
図13】第2実施形態に係る流路部材の流路を示す図である。
図14】第2実施形態に係る流路部材の断面図である。
図15】第2実施形態における固定部材の平面図である。
図16】第2実施形態における固定部材およびフィルターの固定状態を説明するための拡大断面図である。
図17】第3実施形態に係る流路部材の断面図である。
図18】第4実施形態に係る流路部材の断面図である。
図19】第5実施形態に係る流路部材の断面図である。
図20】第6実施形態に係る流路部材の断面図である。
図21】第6実施形態に係る流路部材の製造工程を示す図である。
図22】変形例1に係る流路部材の断面図である。
図23】変形例2に係る流路部材の断面図である。
図24】変形例3に係る流路部材の断面図である。
図25】変形例4に係る流路部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法または縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0016】
以下の説明は、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。また、X軸に沿う一方向をX1方向といい、X1方向と反対の方向をX2方向という。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向をY1方向およびY2方向という。また、Z軸に沿って互いに反対の方向をZ1方向およびZ2方向という。
【0017】
ここで、典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。ただし、Z軸は、鉛直な軸でなくともよく、鉛直な軸に対して傾斜してもよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。
【0018】
1.第1実施形態
1-1.液体噴射装置100
【0019】
図1は、第1実施形態に係る液体噴射装置100の構成例を示す概略図である。液体噴射装置100は、「液体」の一例であるインクを液滴として媒体101に噴射するインクジェット方式の印刷装置である。本実施形態の液体噴射装置100は、インクを噴射する複数のノズルが媒体101の幅方向での全範囲にわたり分布する、いわゆるライン方式の印刷装置である。媒体101は、典型的には印刷用紙である。なお、媒体101は、印刷用紙に限定されず、例えば、樹脂フィルムまたは布帛等の任意の材質の印刷対象でもよい。
【0020】
図1に示すように、液体噴射装置100には、インクを貯留する液体容器102が装着される。液体容器102の具体的な態様としては、例えば、液体噴射装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、および、インクを補充可能なインクタンクが挙げられる。なお、液体容器102に貯留されるインクの種類は任意である。
【0021】
本実施形態の液体容器102は、図示しないが、第1液体容器と第2液体容器とを含む。液体容器102は、後述する液体噴射ヘッド10へ供給するインクを貯留する。第1液体容器には、第1インクが貯留される。第2液体容器には、第1インクと異なる種類の第2インクが貯留される。例えば、第1インクおよび第2インクは、互いに異なる色のインクである。なお、第1インクと第2インクとが同じ種類のインクであってもよい。インクの組成は、特に限定されず、例えば、水系溶媒に染料や顔料などの色材が溶解した水系インク、紫外線硬化型インクまたは溶剤系インクのいずれの組成でもよい。
【0022】
なお、溶剤系インクとは、溶媒の主成分が有機溶剤であるインクであり、溶剤インクや非水系インクとも呼ばれる。溶剤系インクは、グリコールエーテル類、グリコールエーテルエステル類、二塩基酸エステル類、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤の何れか1種以上を含有するインクである。
【0023】
グリコールエーテル系溶剤としては、アルキレングリコールモノエーテルや、アルキレングリコールジエーテル等が挙げられる。
【0024】
アルキレングリコールモノエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノメチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノエチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0025】
アルキレングリコールジエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
【0026】
また、グリコールエーテルエステル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジメチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジメチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジメチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリメチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリメチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリメチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、トリメチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート等が挙げられる。
【0027】
二塩基酸エステル類としては、ジカルボン酸(例えば、グルタル酸、アジピン酸、コハク酸等の脂肪族ジカルボン酸)のモノエステル、ジエステル等が挙げられる。具体的には、ジメチル-2-メチルグルタレート等が挙げられる。
【0028】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、酢酸sec-ブチル、酢酸アミル、酢酸メトキシブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、カプリル酸メチル、ラウリル酸メチル、ラウリル酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソオクチル、パルミチン酸イソステアリル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、リノール酸メチル、リノール酸イソブチル、リノール酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、モノカプリン酸プロピレングリコール、トリス(2-エチルヘキサン酸)トリメチロールプロパン、トリス(2-エチルヘキサン酸)グリセリル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0029】
炭化水素系溶剤としては、脂肪族炭化水素(例えば、パラフィン、イソパラフィン)、脂環式炭化水素(例えば、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン等)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、テトラリン等)等が挙げられる。このような炭化水素系溶剤としては、市販品を用いてもよく、IPソルベント1016、IPソルベント1620、IPクリーンLX(以上全て、出光興産株式会社製の商品名)、Isopar(アイソパー)G、Isopar L、Isopar H、Isopar M、Exxsol D40、Exxsol D80、Exxsol D100、Exxsol D130、Exxsol D140(以上全て、Exxon社製の商品名)、NSクリーン100、NSクリーン110、NSクリーン200、NSクリーン220(以上全て、JXTGエネルギー株式会社の商品名)、ナフテゾール160、ナフテゾール200、ナフテゾール220(以上全て、JXTGエネルギー株式会社の商品名)等の脂肪族炭化水素または脂環式炭化水素や、ソルベッソ200(Exxon社製の商品名)等の芳香族炭化水素が挙げられる。
【0030】
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、イソアミルアルコール、3-メチル-2-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、4-メチル-2-ペンタノール、アリルアルコール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0031】
ここで、紫外線硬化形インクとは、例えば、紫外線照射によって重合反応を起こして硬化するモノマーやオリゴマー等を含むUVインクである。紫外線硬化型インクの組成物は、例えば、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、N-ビニル化合物のいずれかを重合性化合物として含むインクが挙げられる。
【0032】
単官能(メタ)アクリレートとしては、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert-オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-n-ブチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-クロロエチル(メタ)アクリレート、4-ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2-テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5-テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4-クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイロキシエチルコハク酸、2-メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2-メタクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性-2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0033】
多官能(メタ)アクリレートとしては、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(DPGD(M)A)、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(TPGD(M)A)、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(TEGD(M)A)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-エチル-2-ブチル-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-エチル-2-ブチル-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の2官能の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
さらに、多官能の(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート:以上3官能、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート:以上4官能、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート:以上5官能、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート:以上6官能、等が挙げられる。
【0035】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
【0036】
N-ビニル化合物は、ビニル基が窒素に結合した構造(>N-CH=CH2)を有する。N-ビニル化合物の具体例としては、例えば、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロール、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、およびそれらの誘導体が挙げられ、これらの化合物の中でも特にN-ビニルカプロラクタムが好ましい。
【0037】
液体噴射装置100は、制御ユニット20と搬送機構30と液体噴射モジュール40と循環機構50とを有する。制御ユニット20は、液体噴射装置100の各要素の動作を制御する。制御ユニット20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と、半導体メモリー等の記憶回路とを含む。当該記憶回路には、各種プログラムおよび各種データが記憶される。当該処理回路は、当該プログラムを実行するとともに当該データを適宜使用することにより各種制御を実現する。
【0038】
搬送機構30は、制御ユニット20による制御のもとで、媒体101を方向DMに搬送する。本実施形態の方向DMは、Y2方向である。図1に示す例では、搬送機構30は、X軸に沿って長尺な搬送ローラーと、当該搬送ローラーを回転させるモーターと、を含む。なお、搬送機構30は、搬送ローラーを用いる構成に限定されず、例えば、媒体101を外周面に静電力等により吸着させた状態で搬送するドラムまたは無端ベルトを用いる構成でもよい。
【0039】
液体噴射モジュール40は、制御ユニット20による制御のもとで、液体容器102から循環機構50を介して供給されるインクを複数のノズルのそれぞれからZ2方向に媒体101に噴射する。液体噴射モジュール40は、X軸の方向における媒体101の全範囲にわたり複数のノズルが分布するように配置される複数の液体噴射ヘッド10を有するラインヘッドである。つまり、複数の液体噴射ヘッド10は、X軸の延びる方向に長尺なラインヘッドを構成する。複数の液体噴射ヘッド10からのインクの噴射が搬送機構30による媒体101の搬送に並行して行われることにより、媒体101の表面にインクによる画像が形成される。なお、液体噴射モジュール40は、X軸の延びる方向における媒体101の全範囲にわたり複数のノズルが分布するように配置される単体の液体噴射ヘッド10のみで構成されたX軸の延びる方向に長尺なラインヘッドであってもよい。
【0040】
図1に示す例では、液体容器102が循環機構50を介して液体噴射モジュール40に接続される。循環機構50は、液体噴射モジュール40にインクを供給するとともに、液体噴射モジュール40から排出されるインクを液体噴射モジュール40への再供給のために回収する機構である。循環機構50は、例えば、インクを貯留するサブタンクと、サブタンクから液体噴射モジュール40にインクを供給するための供給流路と、液体噴射モジュールからインクをサブタンクに回収するための回収流路と、インクを適宜に流動させるためのポンプと、を有する。これらは、前述の第1インクおよび第2インクのそれぞれについて設けられる。以上の循環機構50の動作により、インクの粘度上昇を抑えたり、インク内の気泡の滞留を低減したりすることができる。
【0041】
なお、液体噴射装置100は、液体噴射モジュール40の保守動作に利用される保守機構を有してもよい。保守動作は、例えばフラッシング動作とクリーニング動作とを含む。フラッシング動作は、画像の形成に直接的には寄与しないインクを複数のノズルから強制的に噴射する動作である。クリーニング動作は、液体噴射モジュール40の上流側からの加圧または下流側からの吸引により液体噴射モジュール40の内部のインクを複数のノズルから強制的に排出する動作である。保守機構は、フラッシング動作により各ノズルNから噴射されるインクを受容するフラッシングボックスと、クリーニング動作の実行時に複数のノズルNを封止するキャップとを有する。
【0042】
以上のように、液体噴射装置100は、液体噴射ヘッド10と、液体噴射ヘッド10へ供給するインクを貯留する液体容器102と、液体噴射ヘッド10からのインクを受ける媒体101を搬送する搬送機構30と、を有する。
【0043】
1-2.液体噴射モジュール40
【0044】
図2は、第1実施形態の液体噴射ヘッド10を有する液体噴射モジュール40の斜視図である。図2に示すように、液体噴射モジュール40は、支持体41と複数の液体噴射ヘッド10とを有する。支持体41は、複数の液体噴射ヘッド10を支持する部材である。図2に示す例では、支持体41は、金属等で構成される板状部材であり、複数の液体噴射ヘッド10を取り付けるための取付孔41aが設けられる。取付孔41aには、複数の液体噴射ヘッド10がX軸に沿う方向に並ぶ状態で挿入されており、各液体噴射ヘッド10は、支持体41に対してネジ止め等により固定される。図2では、2個の液体噴射ヘッド10が代表的に図示される。なお、液体噴射モジュール40における液体噴射ヘッド10の数は、任意である。また、支持体41の形状等も、図2に示す例に限定されず、任意である。
【0045】
1-3.液体噴射ヘッド10
図3は、図2に示す液体噴射ヘッド10の分解斜視図である。図3に示すように、液体噴射ヘッド10は、流路構造体11と配線基板12とホルダー13と複数のヘッド本体14_1、14_2、14_3、14_4、14_5および14_6と固定板15とベース16とを有する。これらは、Z2方向に向かって、ベース16、流路構造体11、配線基板12、ホルダー13、複数のヘッド本体14_1、14_2、14_3、14_4、14_5および14_6、固定板15の順に配置される。以下、液体噴射ヘッド10の各部を順次説明する。なお、以下では、ヘッド本体14_1、14_2、14_3、14_4、14_5および14_6のそれぞれをヘッド本体14という場合がある。
【0046】
流路構造体11は、循環機構50と複数のヘッド本体14との間でインクを流すための流路が内部に設けられる構造体である。流路構造体11は、図3に示すように、流路部材1と接続管11a、11b、11cおよび11dとを有する。図3では図示を省略するが、流路部材1には、第1インクを複数のヘッド本体14に供給するための供給流路と、第2インクを複数のヘッド本体14に供給するための供給流路と、複数のヘッド本体14から第1インクを排出するための排出流路と、複数のヘッド本体14から第2インクを排出するための排出流路とが設けられる。また、各供給流路の途中には、異物等を捕捉するためのフィルターが設置される。流路部材1の内部構成については、後に詳述する。
【0047】
流路部材1は、層21、22および23を有し、これらは、この順でZ2方向に積層される。これらの層に適宜に溝または孔等が設けられることにより、供給流路および排出流路等の流路が構成される。層21、22および23のそれぞれは、例えば、樹脂材料で構成されており、射出成形により形成される。層21、22および23は、例えば、接着剤により互いに接合される。なお、層21、22および23のZ軸に沿う厚さは、互いに同じでも異なってもよい。
【0048】
流路部材1は、Z軸に垂直な方向に拡がる板状をなす。図3に示す例では、流路部材1には、後述のコネクター12cが挿入される孔1aが設けられる。以上の流路部材1のZ1方向を向く面には、接続管11a、11b、11cおよび11dが突出する。
【0049】
接続管11aは、流路部材1に第1インクを供給するための流路を構成する管体である。また、接続管11bは、流路部材1に第2インクを供給するための流路を構成する管体である。一方、接続管11cは、流路部材1から第1インクを排出するための流路を構成する管体である。また、接続管11dは、流路部材1から第2インクを排出するための流路を構成する管体である。
【0050】
配線基板12は、複数のヘッド本体14と後述の集合基板16bとを電気的に接続するための実装部品である。配線基板12は、例えば、リジッド配線基板である。配線基板12は、流路構造体11とホルダー13との間に配置されており、配線基板12における流路構造体11と対向する面には、コネクター12cが設置される。コネクター12cは、後述の集合基板16bに接続される接続部品である。また、配線基板12には、複数の孔12aおよび複数の開口部12bが設けられる。各孔12aは、流路構造体11とホルダー13との接続を許容するための孔である。各開口部12bは、ヘッド本体14と配線基板12とを接続する配線部材14aが通される孔である。当該配線部材14aは、配線基板12のZ1方向を向く面に接続される。配線部材14aは、後述する駆動素子EaまたはEbと電気的に接続される配線を含む部材であり、例えば、FPC(Flexible Printed Circuits)やCOF(Chip On Film)等である。
【0051】
ホルダー13は、複数のヘッド本体14を収容および支持する構造体である。ホルダー13は、例えば、樹脂材料または金属材料等で構成される。ホルダー13は、Z軸に垂直な方向に拡がる板状をなす。ホルダー13には、複数のインク孔13aと複数の配線孔13bとが設けられる。各インク孔13aは、ヘッド本体14と流路構造体11との間でインクを流動させる流路における流路構造体11側の開口である。各配線孔13bは、ヘッド本体14と配線基板12とを接続する配線部材14aが通される孔である。ここで、ホルダー13の内部には、図示しないが、ヘッド本体14に第1インクを供給する供給流路と、ヘッド本体14に第2インクを供給する供給流路と、ヘッド本体14から流路構造体11の排出流路CMへ第1インクを流動させるための循環流路と、ヘッド本体14から流路構造体11の排出流路CMへ第2インクを流動させるための循環流路と、とを有する。また、図示しないが、ホルダー13の内部には、各インク孔13aと複数のヘッド本体14との間でインクを分配または集合させるための分岐流路が設けられる。また、図示しないが、ホルダー13のZ2方向を向く面には、複数のヘッド本体14を収容する複数の凹部が設けられる。
【0052】
各ヘッド本体14は、インクを噴射する。具体的には、図3では図示を省略するが、各ヘッド本体14は、第1インクを噴射する複数のノズルと、第2インクを噴射する複数のノズルと、を有する。これらのノズルは、各ヘッド本体14のZ2方向を向く面であるノズル面FNに設けられる。ヘッド本体14の構成については、後述する。
【0053】
固定板15は、複数のヘッド本体14をホルダー13に対して固定するための板部材である。具体的には、固定板15は、ホルダー13との間に複数のヘッド本体14を挟む状態で配置され、ホルダー13に対して接着剤により固定される。固定板15は、例えば、金属材料等で構成される。固定板15には、当該複数のヘッド本体14のノズルを露出させるための複数の開口部15aが設けられる。図3に示す例では、当該複数の開口部15aは、ヘッド本体14ごとに個別に設けられる。なお、開口部15aは、2以上のヘッド本体14で共用される態様でもよい。
【0054】
ベース16は、前述の支持体41に対して、流路構造体11、配線基板12、ホルダー13、複数のヘッド本体14、および固定板15を固定するための部材である。ベース16は、本体16aと集合基板16bとカバー16cとを有する。
【0055】
本体16aは、ホルダー13に対してネジ止め等により固定されることにより、ベース16とホルダー13との間に配置される流路構造体11および配線基板12を保持する。本体16aは、例えば、樹脂材料等で構成される。本体16aは、前述の流路部材1に対向する板状の部分を有しており、当該板状の部分には、前述の接続管11a、11b、11cおよび11dが挿入される複数の孔16dが設けられる。また、本体16aは、当該板状の部分からZ2方向に延びる部分を有しており、当該部分の先端には、前述の支持体41に固定するためのフランジ16eが設けられる。
【0056】
集合基板16bは、制御ユニット20と前述の配線基板12とを電気的に接続するための実装部品である。集合基板16bは、例えば、リジット配線基板である。カバー16cは、集合基板16bを保護するとともに集合基板16bを本体16aに対して固定するための板状部材である。カバー16cは、例えば、樹脂材料等で構成されており、ネジ止め等により本体16aに固定される。
【0057】
1-4.ヘッド本体14
図4は、液体噴射ヘッド10のヘッド本体14の平面図である。図4には、Z1方向にみたヘッド本体14の内部の構造が模式的に図示される。図4に示すように、ヘッド本体14は、液体噴射部Qaと液体噴射部Qbとを有する。液体噴射部Qaは、前述の循環機構50から供給される第1インクを噴射する複数のノズルNで構成されるノズル列Laを有する。液体噴射部Qbは、循環機構50から供給される第2インクを噴射する複数のノズルNで構成されるノズル列Lbを有する。ノズル列Laおよびノズル列Lbのそれぞれにおける複数のノズルNは、方向DNに配列される。
【0058】
液体噴射部Qaは、液体貯留室Raと複数の圧力室Caと複数の駆動素子Eaとを有する。液体貯留室Raは、ノズル列Laの複数のノズルNにわたり連続する共通液室である。圧力室Caおよび駆動素子Eaのそれぞれは、ノズル列LaのノズルNごとに設けられる。圧力室Caは、ノズルNに連通する空間である。複数の圧力室Caのそれぞれには、液体貯留室Raから供給される第1インクが充填される。駆動素子Eaは、圧力室Ca内の第1インクの圧力を変動させる。駆動素子Eaは、例えば、圧力室Caの壁面を変形させることで当該圧力室Caの容積を変化させる圧電素子、または、圧力室Ca内の第1インクの加熱により圧力室Ca内に気泡を発生させる発熱素子である。駆動素子Eaが圧力室Ca内の第1インクの圧力を変動させることで、当該圧力室Ca内の第1インクがノズルNから噴射される。
【0059】
液体噴射部Qbは、液体噴射部Qaと同様に、液体貯留室Rbと複数の圧力室Cbと複数の駆動素子Ebとを有する。液体貯留室Rbは、ノズル列Lbの複数のノズルNにわたり連続する共通液室である。圧力室Cbおよび駆動素子Ebのそれぞれは、ノズル列LbのノズルNごとに設けられる。複数の圧力室Cbのそれぞれには、液体貯留室Rbから供給される第2インクが充填される。駆動素子Ebは、例えば、前述の圧電素子または発熱素子である。駆動素子Ebが圧力室Cb内の第2インクの圧力を変動させることで、当該圧力室Cb内の第2インクがノズルNから噴射される。
【0060】
図4に示すように、ヘッド本体14には、導入口Ra_inと排出口Ra_outと導入口Rb_inと排出口Rb_outとが設けられる。導入口Ra_inおよび排出口Ra_outのそれぞれは、液体貯留室Raに連通する。導入口Rb_inおよび排出口Rb_outのそれぞれは、液体貯留室Rbに連通する。
【0061】
以上のヘッド本体14では、ノズル列Laの各ノズルNから噴射されずに液体貯留室Raに貯留される第1インクが排出口Ra_out、ホルダー13における第1インクのための循環流路、流路構造体11における第1インクのための排出流路、循環機構50における第1インクのためのサブタンク、流路構造体11における第1インクのための供給流路、ホルダー13における第1インクのための供給流路、導入口Ra_in、液体貯留室Raをこの順で経由して循環する。同様に、ノズル列Lbの各ノズルNから噴射されずに液体貯留室Rbに貯留される第2インクが排出口Rb_out、ホルダー13における第2インクのための循環流路、流路構造体11における第2インクのための排出流路、循環機構50における第2インクのためのサブタンク、流路構造体11における第2インクのための供給流路、ホルダー13における第2インクのための供給流路、導入口Rb_in、液体貯留室Rbをこの順で経由して循環する。
【0062】
図5は、ホルダー13の平面図である。図5に示すように、ホルダー13には、6個のヘッド本体14_1~14_6が保持される。これらのヘッド本体は、ヘッド本体14_1、14_4、14_2、14_5、14_3、14_6の順に、X2方向に並ぶ。ここで、ヘッド本体14_1~14_3は、ヘッド本体14_4~14_6に対してY1方向にずれた位置に配置される。ただし、ヘッド本体14_1~14_6は、X1方向またはX2方向にみて互いに重なる部分を有する。また、ヘッド本体14_1~14_6は、ノズル列LaおよびLbの延びる方向DNが互いに平行となるように配置される。ただし、ヘッド本体14_1~14_6のそれぞれは、媒体101の搬送方向である方向DMに対して方向DNが傾斜するように配置される。
【0063】
以上のように、液体噴射ヘッド10は、流路部材1と、供給流路からのインクを噴射するノズルNと、を有する。
【0064】
1-5.流路部材1
図6は、流路構造体11の平面図である。図6では、Z2方向にみた流路部材1内の構造の一例が破線で示される。図6に示すように、流路部材1の内部には、2個の供給流路CCと2個の排出流路CMと2個のフィルター室RFとが設けられる。
【0065】
2個の供給流路CCのうち、一方の供給流路CCは、接続管11aから各ヘッド本体14の液体貯留室Raにインクを供給するための流路であり、他方の供給流路CCは、接続管11bから各ヘッド本体14の液体貯留室Rbにインクを供給するための流路である。各供給流路CCには、ヘッド本体14に向けてインクを排出する排出口CEが連通する。また、供給流路CCは、フィルター室RFを介して接続管11aまたは11bの内部空間に連通する。フィルター室RFは、後述のフィルター25が設置される空間であり、第1流路C1および第2流路C2を介して供給流路CCに連通する。なお、第1流路C1および第2流路C2のうちの一方が省略されてもよい。この場合、第1流路C1および第2流路C2のうちの他方をフィルター室RFの中心軸上に配置することが好ましい。
【0066】
2個の排出流路CMのうち、一方の排出流路CMは、各ヘッド本体14の液体貯留室Raから接続管11cにインクを排出するための流路であり、他方の排出流路CMは、各ヘッド本体14の液体貯留室Rbから接続管11dにインクを排出するための流路である。各排出流路CMには、ヘッド本体14からのインクが供給される導入口CIが連通する。
【0067】
図7は、図6中のA-A線断面図である。なお、図7では、流路部材1について、接続管11aに対応する構成が図示される。また、図7では、見やすさの便宜上、後述の図9に示す接着剤B1、B2およびBa等の接着剤の図示が省略される。
【0068】
以下では、接続管11aに対応する構成について代表的に説明を行う。接続管11bに対応する構成は、接続管11aに対応する構成と同様である。また、接続管11cおよび11dに対応する構成は、フィルター室RFに関する構成が省略されるとともに形状が異なる以外は、接続管11aに対応する構成と同様である。
【0069】
図7に示すように、流路部材1では、層21、22および23がこの順でZ2方向に積層される。層21、22および23のそれぞれは、熱硬化性樹脂、金属またはセラミックスで構成される。このため、層21、22および23が熱可塑性樹脂で構成される場合に比べて、層21、22および23の耐液性および剛性を高めることができる。ここで、層21、22および23の構成材料は、互いに同一でも異なってもよい。例えば、層21、22および23のうち、一の層が熱硬化性樹脂で構成され、他の層が金属またはセラミックスで構成されてもよい。
【0070】
層21、22または23を熱硬化性樹脂で構成する場合、当該熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を共重合体またはブレンド体等の態様で組み合わせて用いてもよい。
【0071】
また、当該熱硬化性樹脂には、無機フィラーおよび無機繊維基材のうちの一方または両方が含まれてもよい。特に、固定部材24の周囲を囲む層21および層22のそれぞれが無機フィラーおよび無機繊維基材のうちの一方または両方を含む場合、フィルター室RFのガスバリア性を高めることができる。このため、フィルター室RF内の気泡の成長を抑制することができ、この結果、フィルター25の目詰まりの可能性を低減することができる。また、この場合、インクの増粘を抑制することもできる。また、このような無機フィラーまたは無機繊維基材を用いることにより、熱硬化性樹脂のみを用いる構成に比べて、層21、22または23の剛性を向上させることもできる。
【0072】
当該無機フィラーとしては、例えば、アルミ等の金属;クレー、タルク、マイカ、カオリン、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト等のケイ酸塩;シリカ、ケイ藻土、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、バリウムフェライト、酸化バリウム、軽石等の酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム等の水酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、ドーソナイト等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩等の無機材料で構成される粒子、および、ガラス繊維等の無機材料で構成される繊維等が挙げられる。また、当該無機フィラーの平均粒径は、特に限定されないが、層21、層22または層23のガスバリア性を高める観点から、0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。また、層21、層22または層23を構成する材料中の無機フィラーの含有率は、20vol%以上50vol%以下であることが好ましい。この場合、層21、層22または層23の必要な機械的強度等を確保しつつ、層21、層22または層23のガスバリア性を好適に高めることができる。なお、無機フィラーの平均粒径は、フィラーの形状に応じて、公知の方法により測定される。
【0073】
また、当該無機繊維基材としては、例えば、ガラス織布、ガラス不繊布等のガラス繊維基材、金属繊維、鉱物繊維等の織布または不織布、あるいはこれらのマット類等が挙げらる。また、層21、層22または層23を構成する材料中の無機繊維基材の含有率は、20vol%以上50vol%以下であることが好ましい。この場合、層21、層22または層23の必要な機械的強度等を確保しつつ、層21、層22または層23のガスバリア性を好適に高めることができる。
【0074】
なお、層21、層22または層22に、無機フィラーおよび無機繊維基材の両方が含有される場合には、層21、層22または層23を構成する材料中の無機フィラーおよび無機繊維基材を合算した含有率は、20vol%以上50vol%以下であることが好ましい。
【0075】
また、当該熱硬化性樹脂には、染料または顔料等の着色剤が含まれてもよい。着色剤を用いることにより、当該熱硬化性樹脂の光透過率が低下するため、インクが光硬化性を有していたり、インクの耐光性が低かったりする場合でも、インクの劣化等を低減することができる。
【0076】
層21、22または23を金属で構成する場合、当該金属としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、鉄およびステンレス鋼等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、また、2種以上を積層等の態様で組み合わせて用いてもよい。層21、22または23をセラミックスで構成する場合、当該セラミックスとしては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア等の酸化物セラミックス、窒化珪素、窒化アルミ、窒化チタン等の窒化物セラミックス等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、また、2種以上を積層等の態様で組み合わせて用いてもよい。
【0077】
層21には、凹面21aと導入口21bと溝21cとが設けられる。凹面21aは、層21のZ2方向を向く面に設けられており、フィルター室RFの壁面の一部を構成する。図7に示す例では、凹面21aは、導入口21bに向けて連続的に深くなる形状をなす。導入口21bは、凹面21aに開口するとともに接続管11aの内部空間に連通する貫通孔である。図7に示す例では、接続管11aが層21と一体で構成される。したがって、接続管11aが層21と同様に樹脂材料で構成される。溝21cは、層21のZ2方向を向く面に凹面21aの外周に沿って設けられており、後述の固定部材24の一部を収容する空間を構成する。溝21cは、接着剤の逃げ部としても機能し得る。
【0078】
なお、接続管11aは、層21と別体で構成されてもよい。この場合、接続管11aは、接続管11aが金属材料等で構成されてもよく、層21に対して接着剤等により固定される。また、溝21cは、必要に応じて設ければよく、省略されてもよい。
【0079】
層22には、凹部22aと溝22bと孔22cと孔22dとが設けられる。凹部22aは、層22のZ1方向を向く面に設けられており、後述の固定部材24の一部を収容する空間を構成する。溝22bは、層22のZ2方向を向く面に設けられており、供給流路CCにおける流路C3の一部を構成する。図6および7に示す例では、流路C3は、Y軸に沿って延びており、Y2方向に向けてX-Z平面における面積が狭くなる部分を有する形状をなす。このため、溝22bは、Y軸に沿って延びる形状をなす。孔22cおよび孔22dのそれぞれは、凹部22aおよび溝22bに開口しており、層22を貫通する孔である。図7に示す例では、孔22cは、溝22bのY2方向での端に接続される。孔22dは、孔22cに対してY1方向の位置で溝22bに接続される。
【0080】
層23には、溝23aが設けられる。溝23aは、層23のZ1方向を向く面に設けられており、流路C3の一部を構成する。図7に示す例では、溝23aは、Y軸に沿って延びる形状をなす。なお、図7に示す例では、層22の溝22bと層23の溝23aとで供給流路CCが構成されるが、溝22bおよび溝23aのうちの一方で流路C3が構成されてもよい。
【0081】
以上の層21、22および23のほか、流路部材1は、図7に示すように、層21と層22との間に介在する固定部材24およびフィルター25を有する。なお、以下では、層22と固定部材24とが重なる方向にみることを「平面視」という。
【0082】
図8は、固定部材24の平面図である。図9は、第1実施形態における固定部材24およびフィルター25の固定状態を説明するための拡大断面図である。以下、図7図9に基づいて、固定部材24およびフィルター25について説明する。
【0083】
図7に示すように、固定部材24は、フィルター25を層21および層22の少なくとも一方に固定するとともに、フィルター室RFの壁面の一部を構成する略板状の部材である。図7に示す例では、固定部材24は、前述の凹部22aに設置される。
【0084】
図9に示すように、固定部材24は、「第1接着剤」の一例である接着剤B1により層22に固定されるとともに、「第2接着剤」の一例である接着剤B2により層21に固定される。接着剤B1およびB2としては、インクに対する耐性を有し、かつ、固定部材24と層21または22とを接着することができればよく、特に限定されず、各種接着剤を用いることができるが、例えば、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤およびP-アミノフェノール系接着剤等が挙げられ、中でも、耐液性に優れるという観点から、エポキシ系接着剤が好適に用いられる。また、接着剤B1およびB2としては、ウレタン系接着剤等の各種光硬化型の接着剤を用いてもよく、この場合、可視光硬化型または紫外線硬化型のいずれでもよいが、硬化時の熱による悪影響を防止する観点から、紫外線硬化型を用いることが好ましい。
【0085】
接着剤B1およびB2は、互いに同一であっても異なってもよい。また、接着剤B1またはB2は、層21と層22とを接着する接着剤Baと同一であっても異なっていてもよい。なお、接着剤B1、B2およびBaのうちの2以上が一体であってもよい。また、接着剤B1およびB2のうちの一方が省略されてもよい。ただし、接着剤B1およびB2の両方を用いることにより、層21~23からなる積層体に対する固定部材24の固定を強固にすることができるとともに、当該積層体と固定部材24との間における不本意な隙間を低減することができる。
【0086】
このように、固定部材24を介してフィルター25を層21および層22の少なくとも一方に固定することにより、フィルター25を層21および層22の少なくとも一方に直接固定する構成に比べて、層21および層22の構成材料の選択の幅が広くなったり、接着剤B1またはB2がフィルター25に不本意に付着することを低減したりすることができる。
【0087】
固定部材24は、樹脂材料で構成されており、例えば、射出成形により形成される。なお、固定部材24の構成材料は、層21または層22の構成材料と同じでも異なってもよい。
【0088】
ここで、固定部材24を構成する樹脂材料は、熱硬化性樹脂でもよいし、熱可塑性樹脂でもよい。ただし、固定部材24を熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のうちのいずれで構成するかは、固定部材24の形状等に応じて適宜に決められる。また、固定部材24を構成する樹脂材料には、例えば、ガラス繊維等の無機繊維基材が含まれてもよいし、シリカ粉末等の無機フィラーが含まれてもよい。このような無機繊維基材または無機フィラーを用いることにより、樹脂のみを用いる構成に比べて、固定部材24の剛性を向上させることができる。
【0089】
ただし、固定部材24は、無機フィラーおよび無機繊維基材を含まないか、または、前述の層21および層22のそれぞれに比べて少ない含有率で無機フィラーまたは無機繊維基材を含むことが好ましい。このように固定部材24中での無機フィラーおよび無機繊維基材の含有率を低めることにより、固定部材24を熱可塑性樹脂で構成した場合、固定部材24とフィルター25との溶着時に異物の原因となるバリを発生させ難くすることができる。
【0090】
固定部材24が熱硬化性樹脂で構成される場合、熱可塑性樹脂で構成される場合に比べて、固定部材24の剛性および耐液性を高めることができる。
【0091】
当該熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、前述の層21、22または23と同様、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を共重合体またはブレンド体等の態様で組み合わせて用いてもよい。
【0092】
固定部材24が熱可塑性樹脂で構成される場合、固定部材24に対してフィルター25を溶着により固定することができる。したがって、固定部材24を熱可塑性樹脂で構成することは、フィルター25をインサート品とするインサート成形により固定部材24を形成することが固定部材24の形状等によって難しい場合に有用である。本実施形態では、フィルター25が固定部材24の外面に配置されているため、フィルター25をインサート品とするインサート成形により固定部材24を形成することが難しい。したがって、本実施形態では、固定部材24を熱可塑性樹脂で構成することが好ましい。
【0093】
当該熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(m-PPE)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリプロピレン(PP)、液晶ポリマー(LCP)およびアクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を共重合体またはブレンド体等の態様で組み合わせて用いてもよい。中でも、当該熱可塑性樹脂としては、射出成形が可能であり、かつ、耐薬品性等に優れることから、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
【0094】
固定部材24には、凹部24aと枠部24bと第1排出口24cと第2排出口24dとが設けられる。
【0095】
凹部24aは、固定部材のZ1方向を向く面に設けられており、フィルター室RFの壁面の一部を構成する。図7に示す例では、凹部24aは、第1排出口24cおよび第2排出口24dのそれぞれに向けて連続的に深くなる形状をなす。枠部24bは、凹部24aの外周縁に沿う環状の壁部であり、フィルター室RFの側壁を構成する。より具体的には枠部24bの内周面の一部は、下流室R2の側壁24iを構成する。また、枠部24bは、フィルター25を載置する載置面24pと、載置面24pからZ1方向へ突出する凸部24rと、切り欠き部24qと、を有する。載置面24pは、枠部24bのうちZ1方向を向く面であり、図8に示すように平面視で凹部24aを囲む環状の形状を有する。凸部24rは、図8に示すように、平面視で載置面24pを囲む環状の形状を有する。切り欠き部24qは、枠部24bのZ2方向を向く面に対してZ1方向へ凹んでおり、Z1方向に見て、枠部24bの最外周に配置された段差形状、かつ、環状の切り欠きである。
【0096】
図7に示す例では、枠部24bの凸部24rが前述の溝21cに挿入される。この挿入により、層21に対して固定部材24が位置決めされる。また、枠部24bの凸部24rは、溝21cの底に当接することで、接着剤B2および接着剤Baがフィルター25に付着するのを防止する壁部として機能する。また、枠部24bの外周面と凹部22aとの間には、隙間が形成される。この隙間は、切り欠き部24qと凹部22aの底面との間に塗布された接着剤B1や、凸部24rの外周面と溝21cとの間に塗布された接着剤B2、接着剤Baの逃げ部として機能し得る。第1排出口24cおよび第2排出口24dのそれぞれは、凹部24aに開口するとともに、固定部材24を貫通する孔である。また、第1排出口24cは、前述の孔22cに接続されており、孔22cとともに第1流路C1を構成する。第2排出口24dは、前述の孔22dに接続されており、孔22dとともに第2流路C2を構成する。
【0097】
なお、図9に示す例では、層21と層22とが接着剤Baにより接着されるが、接着剤Baは、これらの周方向での一部が欠損してもよいし、省略されてもよい。この場合、層21と層22との接着面に代えて、層21と層22との間には、ラビリンスシールのような蛇行した形状の隙間が設けられてもよい。当該隙間を設ける場合、接着領域を少なくすることができ、この結果、低コスト化を図ることができる。なお、当該隙間を設けても、ガスバリア性の高い層21および層22で固定部材24が覆われるので、インクの増粘または気泡成長の問題は生じ難い。
【0098】
また、図8に示すように、固定部材24には、枠部24bから中心線LCから離れる方向に突出するフランジ24gが設けられる。フランジ24gには、層22に対する位置決めのための孔24hが設けられる。図示しないが、層22のZ1方向を向く面には、孔24hに挿入される突起が設けられる。なお、中心線LCは、中心PCを通り、かつ、Z軸に平行な直線である。中心PCは、平面視における下流室R2の幾何学的な中心である。フランジ24gは、必要に応じて設ければよく、省略されてもよい。
【0099】
フィルター25は、インクの通過を許容しつつ、インクに混入する異物等を捕捉する板状またはシート状の部材である。フィルター25は、例えば、綾畳織または平畳織等の金属繊維で構成される。なお、フィルター25は、金属繊維を用いる構成に限定されず、例えば、不織布等の樹脂繊維で構成されてもよい。
【0100】
フィルター25は、前述の固定部材24の枠部24bに固定されており、図8中の二点鎖線で示すように、凹部24aの全域を包含する領域に設けられる。このため、図7に示すように、フィルター室RFは、フィルター25により上流室R1と下流室R2とに区分される。上流室R1は、フィルター25よりもZ1方向に位置しており、凹面21aを壁面の一部とする空間である。下流室R2は、フィルター25よりもZ2方向に位置しており、側壁24iおよび凹部24aを壁面の一部とする空間である。
【0101】
フィルター25は、固定部材24に対して接着剤を用いずに固定される。このため、接着剤がフィルター25に付着することが防止される。具体的に説明すると、固定部材24がフィルター25をインサート品とするインサート成形により形成される場合、フィルター25が固定部材24に一体的に固定される。この場合、固定部材24が熱硬化性樹脂で構成されてもよいし熱可塑性樹脂で構成されてもよい。固定部材24が熱可塑性樹脂で構成される場合、フィルター25が固定部材24に対して溶着により固定されてもよい。本実施形態では、前述のようにフィルター25をインサート品とするインサート成形により固定部材24を形成することが難しいので、固定部材24が熱可塑性樹脂で構成され、かつ、フィルター25が固定部材24に対して溶着により固定されることが好ましい。
【0102】
以上のように、流路部材1は、供給流路CCと、フィルター25と、固定部材24と、「第1部材」の一例である層22と、を有する。ここで、前述のように、供給流路CCには、「液体」の一例であるインクが流れる。フィルター25は、供給流路CCの途中に配置されており、フィルター25には、インクが通過する。固定部材24は、供給流路CCの一部を構成しており、固定部材24には、フィルター25が固定される。層22は、供給流路CCの一部を構成しており、層22には、固定部材24が固定される。
【0103】
このように、フィルター25が固定部材24を介して層22に固定されることにより、固定部材24に対するフィルター25の固定に接着剤を用いなければ、層22に対する固定部材24の固定に接着剤B1を用いても、フィルター25に対する接着剤の付着を低減することができる。
【0104】
そのうえ、固定部材24は、熱可塑性樹脂で構成される。一方、層22は、熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成される。
【0105】
一般に、熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのそれぞれのヤング率は、熱可塑性樹脂に比べて高い。このため、熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成される層22が流路部材1に含まれることにより、流路部材1が熱可塑性樹脂のみで構成される構成に比べて、流路部材1の剛性を高めることができる。
【0106】
また、一般に、熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのそれぞれは、熱可塑性樹脂に比べて優れた耐液性を有する。このため、熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成される層22が流路部材1に含まれることにより、流路部材1が熱可塑性樹脂のみで構成される構成に比べて、流路部材1の耐液性を高めることができる。また、一般に、熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのそれぞれの線膨張係数は、熱可塑性樹脂に比べて小さい。このため、熱可塑性樹脂を用いる場合に比べて、温度変化による流路部材1の反り等の変形を低減することができる。この結果、流路部材1における接着剤の剥がれ等を低減することができる。
【0107】
一方、熱可塑性樹脂は、他の部材に対して溶着により固定することができる。このため、接着剤を用いずに固定部材24に対してフィルター25を溶着により固定することができる。ここで、熱可塑性樹脂には、優れた耐液性を有する種類が存在する。このため、固定部材24を構成する熱可塑性樹脂の種類を適宜選択することにより、流路部材1に必要な耐液性を実現することもできる。なお、固定部材24を構成する熱可塑性樹脂自体に耐液性がなくてよく、この場合、例えば、耐液性を有するコーティング等の表面処理を固定部材24に適宜に施せばよい。
【0108】
以上から、フィルター25に対する接着剤の付着を防止しつつ、流路部材1の剛性および耐液性を高めることができ、この結果、従来に比べて優れた信頼性を有する流路部材1を提供することができる。
【0109】
本実施形態では、固定部材24の平面視での面積は、層22の平面視での面積よりも小さい。このため、固定部材24の剛性が流路部材1全体の剛性に与える影響は、層22の剛性が流路部材1全体の剛性に与える影響よりも小さい。言い換えると、層22の剛性が流路部材1全体の剛性に与える影響は、固定部材24の剛性が流路部材1全体の剛性に与える影響よりも大きい。このため、層22を熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのいずれかで構成することにより、流路部材1全体の剛性を好適に高めることができる。一方、固定部材24を熱可塑性樹脂で構成しても、流路部材1全体の剛性が低下し難いといえる。
【0110】
前述のように、固定部材24と層22とは、「第1接着剤」の一例である接着剤B1により互いに固定される。また、固定部材24とフィルター25とは、接着剤を用いずに、例えば、溶着により互いに固定される。このように、固定部材24とフィルターとの固定に接着剤を用いずに、フィルター25が固定部材24を介して層22に固定されることにより、接着剤B1がフィルター25の目を塞ぐことを抑制することができる。
【0111】
ここで、当該溶着としては、固定部材24とフィルター25とを互いに固定することができればよく、特に限定されないが、例えば、熱溶着、レーザー溶着および超音波溶着等が挙げられる。本実施形態では、熱溶着を用いて固定部材24とフィルター25とを互いに固定する。なお、超音波溶着を使用する場合には、固定部材24を、フィルター25を挟むようにして設けられた2つの熱可塑性樹脂で構成する必要がある。また、レーザー溶着を使用する場合には、固定部材24を、フィルター25を挟むようにして設けられた熱可塑性樹脂から成る光透過性樹脂および光吸収性樹脂で構成する必要がある。レーザー溶着に用いる光透過性樹脂は、レーザー光を100%透過するものに限らないし、レーザー溶着に用いる光吸収性樹脂は、レーザー光を100%吸収するものに限らない。光吸収性樹脂と光透過性樹脂とはレーザー光の少なくとも1の波長に対して光吸収率(または光透過率)が互いに異なっていて、且つ光透過性樹脂の方が光吸収性樹脂よりも透過し易ければよい。このため、光吸収性樹脂は、光吸収率が100%より小さいものであってもよいし、光透過性樹脂は、光透過率が100%より小さいものであってもよい。そして、レーザー溶着を安定して行うには、光透過性樹脂のレーザー光の透過率は、例えば、20%以上であることが好ましく、30%以上であればより好ましい。
【0112】
また、接着剤B1が光硬化型の接着剤である場合、固定部材24が透光性を有する部材であることが好ましい。この場合、接着剤B1が熱硬化型等の他の接着剤である場合に比べて、接着剤B1の接着時における硬化または固化に要する時間を短くすることができる。このため、接着剤B1が接着時にフィルター25に向けて流れることを低減することができる。また、固定部材24が透光性を有することにより、固定部材24を介して接着剤B1に光硬化のための光を照射することができる。このため、接着剤B1が固定部材24と層22との間に配置される部分を有していても、当該部分を光硬化させることができる。ここで、固定部材24は、固定部材24を介して光を接着剤B1に照射したときに接着剤B1が硬化可能な透光性を有していればよい。例えば、接着剤B1が紫外線硬化型である場合、固定部材24は、固定部材24を介して紫外線を接着剤B1に照射したときに接着剤B1が硬化可能な透光性を有していればよい。なお、接着剤B2が光硬化型の接着剤である場合でも、前述した同様の効果を奏する。
【0113】
接着剤B1は、フィルター25のフィルター機能を発揮すべき部分に付着しないことが好ましい。本実施形態において、フィルター25のフィルター機能を発揮すべき部分とは、フィルター25が平面視で凹部24aと重なる部分である。本実施形態では、固定部材24のZ2方向を向く面と層22とを接着剤B1が接着するのに対し、固定部材24のZ1方向を向く面にフィルター25が固定される。このため、フィルター25には、接着剤B1が付着しない。また、前述のように枠部24bが溝21cに挿入される部分を有するので、接着剤B2およびBaもフィルター25に付着しない。このように、フィルター25にいずれの接着剤も付着しないので、フィルター25の目が塞がれる可能性が極めて低い。
【0114】
前述のように、流路部材1は、「第2部材」の一例である層21を有する。層21は、供給流路CCの一部を構成しており、熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成される。層21および22は、固定部材24を介在させた状態で互いに積層される。このため、層21と層22との間に固定部材24を介在させない構成に比べて、流路部材1の剛性を高めることができる。
【0115】
前述の層22との対比と同様、平面視で、固定部材24の面積は、層21の面積よりも小さい。このため、層21を熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのいずれかで構成することにより、流路部材1全体の剛性を好適に高めることができる。一方、固定部材24を熱可塑性樹脂で構成しても、流路部材1全体の剛性が低下し難いといえる。
【0116】
前述のように、固定部材24と層21とは、「第2接着剤」の一例である接着剤B2により互いに固定される。本実施形態では、接着剤B1に加えて接着剤B2が用いられるので、接着剤B1およびB2のうちの一方のみを用いる構成に比べて、層21および22を含む積層体に対して固定部材24を強固に固定することができる。
【0117】
また、前述のように、固定部材24は、フィルター25が固定される面に対して凹んだ凹部24aを有する。凹部24aの底面は、供給流路CCの一部を構成し、かつ、貫通孔である第1排出口24cおよび第2排出口24dを有する。このため、下流室R2の底壁を固定部材24が構成する。この構成により、固定部材24が凹部24aを有さない構成に比べ、フィルター25と第1排出口24cおよび第2排出口24dとの間の距離を短くすることができる。この結果、下流室R2内の気泡を第1排出口24cおよび第2排出口24dへ好適に排出させることができる。
【0118】
前述のように、供給流路CCは、層22とフィルター25とが積層される方向に対して交差する方向に延びる流路C3を有する。流路C3は、層22に設けられる。このように流路C3が設けられる層22は、層22とフィルター25とが積層される方向に対して交差する方向に大型化するとともに層22における肉抜き部分の割合が高くなるので、仮に熱可塑性樹脂で構成されると、剛性不足を生じやすい。これに対し、層22を熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成することにより、層22に流路C3が設けられていても、層22の剛性不足を防止することができる。更に、層22が流路C3を有すると、層22のインクと接触する接液面積が増大するので、仮に層22が熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスよりも耐液性の低い熱可塑性樹脂で構成された場合、層22が劣化しやすいため、異物が発生したり、膨潤してしまったりする虞がある。これに対し、層22を熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成することにより、層22に流路C3が設けられていても、層22の劣化を防止することができる。
【0119】
一般に、熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのそれぞれは、水系インクに対してだけでなく、溶剤インクや紫外線硬化型インクに対しても優れた耐性を有する。供給流路CCに流れるインクが紫外線硬化型インクまたは溶剤インクである場合、当該インクに溶剤が含まれるので、仮に流路部材1が熱可塑性樹脂のみで構成されると、流路部材1が溶剤により劣化しやすい。これに対し、流路部材1の少なくとも一部が熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成されることにより、液体噴射ヘッド10から噴射させる液体として溶剤インクや紫外線硬化型インクを採用したとしても、流路部材1が溶剤インクや紫外線硬化型インクにより劣化することが低減される。
【0120】
前述のように、液体噴射ヘッド10は、供給流路CCを通過した後にノズルNから噴射されなかったインクが流れる循環流路を有する。ここで、層22には、当該循環流路の一部を構成する排出流路CMの少なくとも一部が設けられる。したがって、層22は、当該循環流路の一部を構成する。このように当該循環流路の一部が設けられる層22は、層22とフィルター25とが積層される方向に対して交差する方向に大型化するとともに層22における肉抜き部分の割合が高くなるので、仮に熱可塑性樹脂で構成されると、剛性不足を生じやすい。これに対し、層22を熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成することにより、層22に当該循環流路の一部が設けられていても、層22の剛性不足を防止することができる。更に、層22が循環流路の一部を有すると、層22のインクと接触する接液面積が増大するので、仮に層22が熱可塑性樹脂で構成された場合、層22が劣化しやすい。これに対し、層22を熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成することにより、層22に循環流路の一部が設けられていても、層22の劣化を防止することができる。
【0121】
なお、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属、セラミックス等の各材料の耐液性は、実験によって測定することができる。具体的には、試験片として一定質量のフィルム等の部材を、対象インク中に一定期間浸漬し、その際の質量変化から溶解比率を算出することによって、耐液性を定量的に評価できる。上記の方法によって、例えば、特定の溶剤系インク、紫外線硬化型インク、水系インクに対する、各材料の耐性を測定することができる。
【0122】
1-6.流路部材1の製造方法
図10は、第1実施形態に係る流路部材1の製造工程を示す図である。図10では、固定部材24とフィルター25とを溶着により固定する場合における流路部材1の製造工程が図示される。図10に示すように、流路部材1の製造方法は、準備工程S11と溶着工程S12と接着工程S13とを含み、これらがこの順で実行される。
【0123】
準備工程S11では、固定部材24およびフィルター25が準備される。固定部材24は、熱可塑性樹脂を射出成形することにより形成される。固定部材24は、載置面24pから突出するダイレクター24sを有する。ダイレクター24sは、図示はしないが、フィルター25と固定部材24とが積層される方向に見て、凹部24aを囲むようにして環状に設けられている。フィルター25は、綾畳織または平畳織等の金属繊維を適宜に切断することにより得られる。
【0124】
溶着工程S12では、固定部材24とフィルター25とが溶着により互いに固定される。具体的には、図12に示すように、固定部材24のダイレクター24s上にフィルター25を載置した後、その状態で、固定部材24に対してフィルター25の外周部に接する範囲にわたりエネルギーEGを与える、換言すればダイレクター24sにエネルギーEGを与えることにより、ダイレクター24sが溶融し、固定部材24とフィルター25とが互いに溶着される。本実施形態における溶着方法は、熱溶着であるため、エネルギーEGは熱である。
【0125】
接着工程S13では、固定部材24と層21とを接着剤B1により互いに固定する。
【0126】
以上のように、流路部材1の製造方法は、フィルター25と固定部材24とを溶着した後に、固定部材24と層22とを接着剤B1により接着する。以上の流路部材1の製造方法では、前述のように優れた信頼性を有する流路部材1を製造することができる。
【0127】
第1実施形態では、層22を「第1部材」の一例とし、層21を「第2部材」の一例とし、接着剤B1を「第1接着剤」の一例とし、接着剤B2を「第2接着剤」の一例としたが、層22を「第2部材」の一例とし、層21を「第1部材」の一例とし、接着剤B1を「第2接着剤」の一例とし、接着剤B2を「第1接着剤」の一例としてもよい。
【0128】
2.第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0129】
図11は、第2実施形態に係る液体噴射ヘッド10Aを有する液体噴射モジュール40Aの斜視図である。図11に示すように、液体噴射モジュール40Aは、支持体41Aと複数の液体噴射ヘッド10Aとを有する。支持体41Aは、複数の液体噴射ヘッド10Aを支持する部材である。図11に示す例では、支持体41Aは、金属等で構成される板状部材であり、複数の液体噴射ヘッド10Aを取り付けるための複数の取付孔41bが設けられる。各取付孔41bには、液体噴射ヘッド10Aが挿入されており、各液体噴射ヘッド10Aは、支持体41Aに対してネジ止め等により固定される。図11では、複数の液体噴射ヘッド10AがX軸およびY軸に沿って行列状に配列する。なお、液体噴射モジュール40Aにおける液体噴射ヘッド10Aの数は、図11に示す例に限定されず、任意である。また、支持体41Aの形状等も、図11に示す例に限定されず、任意である。
【0130】
図12は、図11に示す液体噴射ヘッド10Aの分解斜視図である。図12に示すように、液体噴射ヘッド10Aは、流路構造体11Aと配線基板12Aとホルダー13Aとヘッド本体14_1、14_2、14_3および14_4と固定板15Aと補強板17とカバー18とを有する。これらは、Z2方向に向かって、カバー18、配線基板12A、流路構造体11A、ホルダー13A、ヘッド本体14_1、14_2、14_3および14_4、補強板17、固定板15Aの順に配置される。以下、液体噴射ヘッド10Aの各部を順次説明する。
【0131】
流路構造体11Aは、層Su1~Su5の積層により構成されるとともに形状が異なる以外は、前述の第1実施形態の流路構造体11と同様に構成される。したがって、流路構造体11Aは、流路構造体11と同様、フィルターに関する構成を有する。当該構成については、後に詳述する。なお、層Su1~Su5は、熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成される。層Su1~Su5は、接着剤によって互いに固定されている。層Su3は、「第1部材」の一例である。層Su2は、「第2部材」の一例である。
【0132】
配線基板12Aは、ヘッド本体14_1、14_2、14_3および14_4を制御ユニット20に電気的に接続するための実装部品である。配線基板12Aは、例えば、フレキシブル配線基板またはリジッド配線基板等で構成される。配線基板12Aは、流路構造体11Aとカバー18との間に配置されており、配線基板12Aにおける流路構造体11Aと対向する面とは反対側の面には、コネクター12cが設置される。コネクター12cは、制御ユニット20に電気的に接続するための接続部品である。また、配線基板12Aは、図示しない配線を介して、複数のヘッド本体14に電気的に接続される。当該配線は、例えば、フレキシブル配線基板およびリジッド配線基板の組み合わせで構成される。なお、当該配線は、配線基板12Aと一体で構成されてもよい。
【0133】
ホルダー13Aは、形状が異なる以外は、前述の第1実施形態のホルダー13Aと同様である。ここで、ヘッド本体14_1、14_2、14_3および14_4は、ノズル列LaおよびLbにおけるノズルNの配列方向がY軸に平行となる状態で、ホルダー13Aに保持される。固定板15Aは、形状が異なる以外は、前述の第1実施形態の固定板15と同様である。ただし、ホルダー13Aと固定板15Aとの間には、補強板17が配置される。なお、図12では、ホルダー13Aが分岐流路を有しない構成が示される。
【0134】
補強板17は、固定板15Aを補強する板状部材である。補強板17は、固定板15A上に重ねて配置され、固定板15Aに対して接着剤により固定される。補強板17には、当該複数のヘッド本体14が配置される複数の開口部17aが設けられる。補強板17は、例えば、金属材料等で構成される。
【0135】
カバー18は、流路構造体11Aの流路部材1Aと配線基板12Aとを収容する箱状の部材である。カバー18は、例えば、樹脂材料等で構成される。カバー18には、4個の貫通孔18aと開口部18bとが設けられる。当該4個の貫通孔18aは、流路構造体11Aの4個の接続管11aに対応しており、各貫通孔18aには、対応する接続管11a、11b、11cまたは11dが通される。開口部18bには、カバー18内から外部にコネクター12cが通される。
【0136】
図13は、第2実施形態に係る流路部材1Aの流路を示す図である。図13に示すように、流路部材1Aの内部には、供給流路Saと排出流路Daと供給流路Sbと排出流路Dbとが設けられる。供給流路Saは、接続管11aから各ヘッド本体14の液体貯留室Raに至る流路である。排出流路Daは、各ヘッド本体14の液体貯留室Raから接続管11bに至る流路である。供給流路Sbは、接続管11cから各ヘッド本体14の液体貯留室Rbに至る流路である。排出流路Dbは、各ヘッド本体14の液体貯留室Rbから接続管11bに至る流路である。これらの流路は、前述の層Su1~Su5に適宜に設けられる溝および貫通孔により構成される。
【0137】
図13に示すように、供給流路Saには、4個のフィルター部Fa_1~Fa_4は設けられる。同様に、供給流路Sbには、4個のフィルター部Fb_1~Fb_4は設けられる。以下、フィルター部Fa_1について代表的に説明を行う。なお、フィルター部Fa_2~Fa_4は、フィルター部Fa_1と同様に構成される。
【0138】
図14は、第2実施形態に係る流路部材1Aの断面図である。図14では、フィルター部Fa_1が層Su2と層Su3との間に設けられる構成が図示される。図14に示すように、フィルター部Fa_1は、フィルター室RFと固定部材24Aとフィルター25Aとを有する。
【0139】
本実施形態では、フィルター室RFは、層Su2のZ2方向を向く面に設けられる凹部26aと、層Su3のZ1方向を向く面に設けられる凹部27aおよび27bと、により構成される。図14に示す例では、凹部27aは、平面視で凹部26aと一致する範囲にわたり設けられる。凹部27bは、凹部27aの底面に設けられており、平面視で凹部26aよりも内側の範囲にわたり設けられる。
【0140】
固定部材24Aおよびフィルター25Aは、フィルター室RF内に配置されており、フィルター室RFを上流室R1と下流室R2とに区分する。ここで、上流室R1は、流路Pa1を介して前述の接続管11aに連通する。図示しないが、流路Pa1は、層Su2のZ2方向を向く面と層Su3のZ1方向を向く面とのそれぞれに設けられる溝で構成される。一方、下流室R2は、流路Pa2を介してヘッド本体14に連通する。流路Pa2は、凹部27bの底面に開口するとともに層Su3を貫通する孔27cで構成される。
【0141】
固定部材24Aは、形状が異なる以外は、前述の第1実施形態の固定部材24と同様である。同様に、フィルター25Aは、形状が異なる以外は、前述の第1実施形態のフィルター25と同様である。以下、固定部材24Aおよびフィルター25Aについて、固定部材24およびフィルター25と異なる事項を中心に説明する。
【0142】
図15は、第2実施形態における固定部材24Aの平面図である。図16は、第2実施形態における固定部材24Aおよびフィルター25Aの固定状態を説明するための拡大断面図である。
【0143】
図15に示すように、固定部材24Aは、平面視で枠状をなす。図15に示す例では、固定部材24Aの外周縁および内周縁のそれぞれが略四角形をなす。また、フィルター25Aは、平面視で四角形をなす。そして、フィルター25Aの外周部は、固定部材24Aの一方の面に接着剤を用いずに溶着等により固定される。
【0144】
図16に示すように、固定部材24Aおよびフィルター25Aからなる構造体は、凹部27a内に配置される。ここで、固定部材24Aの両面のうち、フィルター25Aが固定される面が層Su3に接着剤B1により固定される。このため、固定部材24Aの内周面24jは、上流室R1の壁面の一部を構成する。また、固定部材24Aの両面のうち、フィルター25Aが固定される面が層Su3に接着剤B1により固定されることにより、フィルター25Aと流路Pa2との間の距離を短くすることができる。この結果、下流室R2内の気泡を流路Pa2へ好適に排出させることができる。
【0145】
ここで、接着剤B1は、固定部材24Aおよび層Su3に付着するだけでなく、フィルター25Aにおけるフィルター機能を有しない溶着部である外周部分にも付着する。図16に示すように、フィルター25Aの塗りつぶされた領域Tは、溶着によって固定部材24Aのダイレクターが溶融することでフィルター25Aの目を塞いでいる部分を示している。つまり、フィルター25Aの領域Tよりも内側であるフィルター機能を有する部分、且つ、フィルター25Aの領域Tよりも外周部分には、溶着時に溶融した固定部材24Aの樹脂が存在していない。このため、フィルター25Aの領域Tよりも外周部分と凹部27aとの間に接着剤B1を付着させることで、フィルター25Aの凹凸を利用したアンカー効果により、接着剤B1による接着力が高められる。さらに、接着剤B1は、平面視で領域Tよりもフィルター25Aの中心に近い部分には付着していない。そのため、接着剤B1が、毛細管力によってフィルター25Aのフィルター機能を有する部分まで流れ出すことで、フィルター25Aの目を塞ぐことを低減できる。図16では、接着剤B1は、フィルター25Aの領域Tと凹部27aの底面との間、且つ、フィルター25Aの領域Tよりも外周部分に付着しているが、接着剤B1は、フィルター25Aの領域Tと凹部27aの底面との間には付着しないでフィルター25Aの領域Tよりも外周部分に付着するようにしてもよい。
【0146】
以上の第2実施形態によっても、前述の第1実施形態と同様、優れた信頼性を有する流路部材1Aを提供することができる。また、本実施形態では、前述のように、固定部材24Aは、フィルター25Aの外周に沿う枠状の部材である。このため、固定部材24Aは、前述の第1実施形態の固定部材24に比べて、インクに接触する面積を小さくすることができる。そのため、溶着によって固定部材24Aとフィルター25とを固定するために熱可塑性樹脂で固定部材24Aを形成した場合であっても、溶剤系インクや紫外線硬化型インク等との接触による固定部材24Aの劣化や膨潤を抑制することができる。
【0147】
なお、固定部材24Aは、内周面24jによる1個の開口を有するが、複数の開口を有してもよい。言い換えると、固定部材24Aは、フィルター25Aの外周に沿う部分だけでなく、当該部分を架け渡す梁状の部分を有してよく、この場合も、枠状の部材であるといえる。また、この場合、開口ごとに複数のフィルターが設けられてもよい。
【0148】
また、前述の供給流路SaおよびSbのそれぞれは、図13に示すように、分岐する分岐流路を有する。当該分岐流路が層Su3に設けられる場合、層Su3は、大型化するとともに肉抜き部分の割合が高くなるので、仮に熱可塑性樹脂で構成されると、剛性不足を生じやすい。これに対し、層Su3を熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成することにより、層Su3に当該循環流路の一部が設けられていても、層Su3の剛性不足を防止することができる。更に、層Su3が分岐流路を有すると、層Su3のインクと接触する接液面積が増大するので、仮に層Su3が熱可塑性樹脂で構成された場合、層Su3が劣化しやすい。これに対し、層Su3を熱硬化性樹脂、金属およびセラミックスのうちのいずれかで構成することにより、層Su3に分岐流路が設けられていても、層Su3の劣化を防止することができる。
【0149】
以上の第2実施形態によっても、前述の第1実施形態と同様、流路部材1Aの信頼性を向上させることができる。
【0150】
3.第3実施形態
以下、本発明の第3実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0151】
図17は、第3実施形態に係る流路部材1Bの断面図である。流路部材1Bは、固定部材24Aおよびフィルター25Aからなる構造体の設置姿勢が表裏反転した以外は、前述の第2実施形態の流路部材1Aと同様である。すなわち、流路部材1Bでは、固定部材24Aの両面のうち、フィルター25Aが固定される面とは反対側の面が層Su3に接着剤B1により固定される。
【0152】
以上の第3実施形態によっても、前述の第1実施形態と同様、流路部材1Bの信頼性を向上させることができる。また、本実施形態では、固定部材24Aの両面のうち、フィルター25Aが固定される面とは反対側の面が層Su3に接着剤B1により固定されるので、第2実施形態に比べて、接着剤B1がフィルター25Aに付着し難いという利点がある。
【0153】
なお、図17においては、接着剤B1は、接着強度を向上させる目的で、固定部材24Aのフィルター25Aが固定される面とは反対側の面と凹部27aの底面との間、且つ、固定部材24Aの外周面と凹部27aの内周面との間に設けられているが、この態様には限られず、接着剤B1は、固定部材24Aのフィルター25Aが固定される面とは反対側の面と凹部27aの底面との間のみに設けられる構成でも構わない。このような構成であれば、第3実施形態と比較して、接着剤B1がフィルター25Aにより付着し難いという利点がある。
【0154】
4.第4実施形態
以下、本発明の第4実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
図18は、第4実施形態に係る流路部材1Cの断面図である。流路部材1Cは、層Su3に凹部27dが設けられる以外は、前述の第3実施形態の流路部材1Bと同様である。凹部27dは、凹部27bの内周に沿って凹部27aの底面に設けられる。凹部27dは、平面視で環状形状を有しており、底面27d-1と、第1内周面27d-2と、第2内周面27d-3とを有する。第1内周面27d-2は、第2内周面27d-3よりも凹部27aの中心に配置された凹部27dの内周面である。ここで、凹部27dには、固定部材24AのZ2方向での端が収容されており、固定部材24Aは、凹部27dの壁面に対して接着剤B1により固定される。具体的には、接着剤B1は、固定部材24Aのフィルター25Aが固定される面とは反対側の面と底面27d-1との間、固定部材24Aの外周面と第2内周面27d-3との間、且つ、固定部材24Aの内周面と第1内周面27d-2との間に亘って設けられている。
【0155】
以上の第4実施形態によっても、前述の第1実施形態と同様、流路部材1Cの信頼性を向上させることができる。また、本実施形態では、凹部27d内に固定部材24Aを設置することにより、フィルター25Aと流路Pa2との間の距離を短くすることができる。この結果、下流室R2内の気泡を流路Pa2へ好適に排出させることができる。さらに、本実施形態では、接着剤B1が設けられる面積が増加するため、固定部材24Aと層Su3との接着強度を向上させることができる。
【0156】
5.第5実施形態
以下、本発明の第5実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0157】
図19は、第5実施形態に係る流路部材1Dの断面図である。流路部材1Dは、固定部材24Aに代えて固定部材24Dを有する以外は、前述の第1実施形態の流路部材1Aと同様である。
【0158】
固定部材24Dは、フィルター25Aを設置するための凹部24kを有する以外は、前述の第1実施形態の固定部材24Aと同様である。凹部24kは、固定部材24DのZ1方向を向く面に設けられており、フィルター25Aを収容する。
【0159】
以上の第5実施形態によっても、前述の第1実施形態と同様、流路部材1Dの信頼性を向上させることができる。また、本実施形態では、凹部24k内にフィルター25Aを設置することにより、フィルター25Aと流路Pa2との間の距離を短くすることができる。この結果、下流室R2内の気泡を流路Pa2へ好適に排出させることができる。
【0160】
6.第6実施形態
以下、本発明の第6実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0161】
図20は、第6実施形態に係る流路部材1Eの断面図である。流路部材1Eは、固定部材24Aに代えて固定部材24Eを有する以外は、前述の第1実施形態の流路部材1Aと同様である。
【0162】
固定部材24Eは、固定部材24Eの厚さ方向での途中にフィルター25Aが固定される以外は、前述の第1実施形態の固定部材24Aと同様である。固定部材24Eは、フィルター25Aをインサート品とするインサート成形により形成されることによりフィルター25Aと一体化される。
【0163】
以上のように、流路部材1Eでは、固定部材24Eがフィルター25Aをインサート品とするインサート成形により成形される。すなわち、固定部材24Eとフィルター25Aとは、インサート成形により一体に成形される。このため、接着剤を用いずに固定部材24Eとフィルター25Aとを互いに固定することができる。なお、「第1部材」の一例である層Su3と固定部材24Eとは、接着剤B1により互いに固定される。
【0164】
図21は、第6実施形態に係る流路部材1Eの製造工程を示す図である。図21では、固定部材24Eとフィルター25Aとをインサート成形により固定する場合における流路部材1Eの製造工程が図示される。図21に示すように、流路部材1Eの製造方法は、インサート工程S21と成形工程S22と離型工程S23と接着工程S24とを含み、これらがこの順で実行される。
【0165】
インサート工程S21では、成形型301および302を開いた状態で、型内の所望位置にインサート品としてフィルター25Aが挿入される。
【0166】
成形工程S22では、成形型301および302を閉じた状態で型内に樹脂が充填される。当該樹脂は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれでもよいが、耐液性および剛性の観点から熱硬化性樹脂である方が好ましい。当該樹脂が熱可塑性樹脂である場合、加熱により軟化した熱可塑性樹脂を型内に充填し、その後、冷却により当該熱可塑性樹脂を固化させることにより、フィルター25Aが固定された固定部材24Eが得られる。また、当該樹脂が熱硬化性樹脂である場合、硬化前の流動性を有する熱硬化性樹脂を型内に充填し、その後、硬化反応により当該熱硬化性樹脂を硬化させることにより、フィルター25Aが固定された固定部材24Eが得られる。
【0167】
離型工程S23では、前述のように得られた固定部材24Eが成形型301および302から離型される。
【0168】
接着工程S24では、前述の第1実施形態の接着工程S13と同様、固定部材24Eと層Su3とを接着剤B1により互いに固定する。
【0169】
以上のように、流路部材1Eの製造方法は、フィルター25Aをインサート品とするインサート成形により固定部材24Eを形成した後に、固定部材24Eと層Su3とを接着剤B1により接着する。以上の流路部材1Eの製造方法では、前述のように優れた信頼性を有する流路部材1Eを製造することができる。また、固定部材24Eを熱硬化性樹脂で形成する場合には、固定部材24Eを熱可塑性樹脂で形成する場合に比べて、耐液性および剛性を向上させることができる。
【0170】
以上の第6実施形態によっても、前述の第1実施形態と同様、流路部材1Eの信頼性を向上させることができる。また、本実施形態では、固定部材24Eの厚さ方向での途中にフィルター25Aが固定されることにより、フィルター25Aと流路Pa2との間の距離を短くすることができる。この結果、下流室R2内の気泡を流路Pa2へ好適に排出させることができる。
【0171】
7.変形例
以上に例示した形態は多様に変形され得る。前述の形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0172】
7-1.変形例1
図22は、変形例1に係る流路部材1Fの断面図である。流路部材1Fは、「固定部材」の一例である層21Fと、「第1部材」の一例である層22Fと、フィルター25Fと、を有する。層21Fおよび22Fは、この順でZ2方向に積層されており、これらは接着剤により互いに固定される。ここで、平面視で、層21Fの面積は、層22Fの面積よりも小さい。また、層21Fは、熱可塑性樹脂で構成され、層22Fは、熱硬化性樹脂、金属またはセラミックスで構成される。
【0173】
層21Fと層22Fとの間に形成される空間には、フィルター25Fが配置される。層21FのZ2方向を向く面に設けられる凹部21dと、層22FのZ1方向を向く面に設けられる凹部22eと、でフィルター室RFが構成される。凹部21d内には、フィルター25Fが配置されており、フィルター25Fは、層21Fに接着剤を用いずに溶着等により固定される。
【0174】
ここで、フィルター25Fは、フィルター室RFを上流室R1と下流室R2とに区分する。層21Fには、接続管11aが設けられており、接続管11aが上流室R1に連通する。また、層22Fには、下流室R2に開口する排出口22fが設けられる。以上の変形例1によっても、前述の実施形態と同様の効果が得られる。なお、層22Fには、凹部22eが形成されず、排出口22fのみが形成されている構成でもよい。
【0175】
また、前述したように、平面視で、層21Fの面積は、層22Fの面積よりも小さいので、層21Fが熱可塑性樹脂で形成されていたとしても、流路部材1F全体の剛性の低下を低減させることができる。さらに、層22Fは、接続管11aが形成された層21Fだけでなく、接続管11b~接続管11dの夫々が形成された複数の層21Fが接着剤で積層される構成でもよい。このような構成でも、平面視での面積が各層21Fよりも大きい層22Fが熱硬化性樹脂で形成されていれば、流路部材1Fの剛性の低下を抑制することができる。なお、平面視で、層21Fの面積と、層22Fの面積とがほぼ同じでも構わない。層21Fの面積と層22Fの面積とがほぼ同じとは、層21Fの面積が層22Fの面積の90パーセント以上110パーセント未満である場合を含む。
【0176】
7-2.変形例2
図23は、変形例2に係る流路部材1Gの断面図である。流路部材1Gは、層22Fに代えて層22Gおよび層23Gを有するとともに、フィルター25Fの設置位置が異なる以外は、前述の変形例1の流路部材1Fと同様である。すなわち、流路部材1Gは、「第1部材」の一例である層21Fと、「固定部材」の一例である層22Gと、「第2部材」の一例である層23Gと、フィルター25Fと、を有する。なお、層21Fは、「第2部材」の一例でもあり、その場合、層23Gは、「第1部材」の一例である。層21F、22Gおよび23Gは、この順でZ2方向に積層されており、これらは接着剤により互いに固定される。層21Fおよび23Gのそれぞれは、熱硬化性樹脂、金属またはセラミックスで構成され、層22Gは、熱可塑性樹脂で構成される。
【0177】
層21Fと層22Gとの間に形成される空間には、フィルター25Fが配置される。層21FのZ2方向を向く面に設けられる凹部21dと、層22Gを貫通する開口22gと、層23GのZ1方向を向く面と、でフィルター室RFが構成される。開口22g内には、フィルター25Fが配置されており、フィルター25Fは、層22Gに接着剤を用いずに溶着等により固定される。
【0178】
ここで、フィルター25Fは、フィルター室RFを上流室R1と下流室R2とに区分する。層21Fには、接続管11aが設けられており、接続管11aが上流室R1に連通する。また、層23Gには、下流室R2に開口する排出口23bが設けられる。以上の変形例2によっても、前述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0179】
7-3.変形例3
図24は、変形例3に係る流路部材1Hの断面図である。流路部材1Hは、フィルター25Fが固定部材24Hを介して層21Fに固定される以外は、前述の変形例1の流路部材1Fと同様である。すなわち、流路部材1Hは、「第1部材」の一例である層21Fと、「第2部材」の一例である層22Fと、固定部材24Hと、フィルター25Fと、を有する。
【0180】
ここで、固定部材24Hは、熱可塑性樹脂で構成されており、枠状をなす。固定部材24Hは、図示しない接着剤により層21Fに固定される。また、フィルター25Fは、固定部材24Hに対して接着剤を用いずに溶着等により固定される。以上の変形例3によっても、前述の実施形態と同様の効果が得られる。なお、固定部材24Hは、前述の第6実施形態のように固定部材24Hがフィルター25Fを挟み込むようにして、フィルター25Fに対して一体的にインサート成形された場合には、熱硬化性樹脂で構成されていても構わない。
【0181】
7-4.変形例4
図25は、変形例4に係る流路部材1Iの断面図である。流路部材1Iは、「第2部材」の一例である層21Hと、「第1部材」の一例である層22Fと、固定部材24Hと、フィルター25Fと、を有する。層21Hおよび22Fは、この順でZ2方向に積層されており、これらは接着剤により互いに固定される。ここで、層21Hおよび22Fのそれぞれは、熱硬化性樹脂、金属またはセラミックスで構成される。
【0182】
層21Hと層22Fとの間に形成される空間には、フィルター25Fが配置される。層21HのZ2方向を向く面に設けられる凹部21dと、層22FのZ1方向を向く面に設けられる凹部22eと、でフィルター室RFが構成される。凹部22e内には、固定部材24Hおよびフィルター25Fが配置されており、フィルター25Fは、固定部材24Hを介して層21Fに固定される。
【0183】
本変形例では、固定部材24Hが2つの部材24mおよび24nの積層で構成される。ここで、部材24mおよび24nの双方が熱可塑性樹脂で構成される。部材24mおよび24nは、レーザー溶着または超音波溶着等により、互いに接合されるとともに、フィルター25Fに接合される。レーザー溶着の場合には、部材24mおよび24nのうち、一方を光透過性樹脂とし、他方を光吸収性樹脂とする。以上の変形例4によっても、前述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0184】
7-5.変形例5
前述の形態では、液体噴射ヘッド10がラインヘッドを構成する場合が例示されるが、当該構成に限定されず、液体噴射ヘッド10をX軸に沿って往復させるシリアル方式の構成でもよい。
【0185】
7-6.変形例6
前述の各形態で例示する液体噴射装置100は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体噴射装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体噴射装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体噴射装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。
【符号の説明】
【0186】
1…流路部材、1A…流路部材、1B…流路部材、1C…流路部材、1D…流路部材、1E…流路部材、1F…流路部材、1G…流路部材、1H…流路部材、10…液体噴射ヘッド、10A…液体噴射ヘッド、21…層、21F…層、21H…層、21d…凹部、22…層、22F…層、22G…層、22a…凹部、22e…凹部、23…層、23G…層、24…固定部材、24A…固定部材、24D…固定部材、24E…固定部材、24H…固定部材、24a…凹部、24k…凹部、25…フィルター、25A…フィルター、25F…フィルター、26a…凹部、27a…凹部、27b…凹部、27c…孔、27d…凹部、30…搬送機構、100…液体噴射装置、101…媒体、B1…接着剤、B2…接着剤、CC…供給流路、CM…排出流路(循環流路)、Da…排出流路(循環流路)、Db…排出流路(循環流路)、N…ノズル、Sa…供給流路、Sb…供給流路、Su1…層、Su2…層、Su3…層、Su4…層、Su5…層。
図1
図2
図3
図4
図5
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