(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】紙幣収納装置及び現金処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/12 20190101AFI20250212BHJP
G07D 11/23 20190101ALI20250212BHJP
G07G 1/00 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
G07D11/12
G07D11/23
G07G1/00 321Z
(21)【出願番号】P 2021068371
(22)【出願日】2021-04-14
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】佐渡 真治
(72)【発明者】
【氏名】松浦 信光
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-238588(JP,A)
【文献】特開2010-072742(JP,A)
【文献】特開平11-126271(JP,A)
【文献】特開2016-091396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07G 1/00
G07D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の紙幣束を立位状態でほぼ水平方向に沿い、かつ収納方向に沿
い前後に隣接して並ぶように収納す
る紙幣収納装置であって、
前記紙幣束を収納する保管部を備え、
前記保管部は、
前記紙幣束の下側の端面を載置させる受け部と、鉛直方向に対し傾斜して前記受け部から立設し、鉛直方向に対し傾斜した立位状態で前記紙幣束を仕切る仕切部とを備え
、
前記受け部のそれぞれに前記紙幣束が載置されると、前記紙幣束は鉛直方向に対し傾斜した立位状態で、前記紙幣束の紙面が対向して隣接するように並べられ、
前記紙面が対向して隣接する前記紙幣束同士において、
前記収納方向から見て、前記紙幣束の上下の端面の位置が前記収納方向に交差する方向に異なり、
前記紙幣束の前記紙面に直交する方向から見て、前側に隣接する前記紙幣束越しの後側の前記紙幣束の前記紙面の前面の一部が、前側に隣接する前記紙幣束に遮られず露出する
ことを特徴とする紙幣収納装置。
【請求項2】
前記仕切部は、鉛直方向に対し鋭角に傾斜する
ことを特徴とする請求項
1に記載の紙幣収納装置。
【請求項3】
複数の紙幣束を立位状態でほぼ水平方向に沿い、かつ収納方向に沿って並ぶように収納する紙幣収納装置であって、
隣接する前記紙幣束同士の端面の位置が前記収納方向に交差する
上下方向に異なるように前記紙幣束を収納する保管部
を備え
、
前記保管部は、
前記紙幣束の下側の端面を載置させる受け部と、ほぼ鉛直方向に沿って前記受け部から立設し、ほぼ鉛直方向に沿う直立状態で前記紙幣束を仕切る仕切部とを有し、前記紙幣束を一束ずつ収納する紙幣束収納空間が形成された仕切板を備え、
前記仕切板の前記受け部は、隣接する前記受け部同士の高さが異なる
ことを特徴とする紙幣収納装置。
【請求項4】
前記仕切板は、
前記収納方向のうち一方向側である前側から前記収納方向のうち他方向側である後側に向かって複数の前記紙幣束の収納位置が高くなるように前記紙幣束を並べて収納する
ことを特徴とする請求項
3に記載の紙幣収納装置。
【請求項5】
前記保管部は、
収納された最も後側の前記紙幣束の後側に配置された背板と、前記収納方向に沿って移動可能であり、収納された最も前側の前記紙幣束に当接し前記背板との間に前記紙幣束を保持する押板と
をさらに備え、
前記押板は、それぞれの前記紙幣束収納空間に収納された前記紙幣束を検出するセンサを備え、
前記仕切板は、前記押板の移動経路から退避するように配置されている
ことを特徴とする請求項
4に記載の紙幣収納装置。
【請求項6】
前記保管部は、前記紙幣束の長手方向を水平方向に沿わせた状態で収納し、
前記押板は、収納される前記紙幣束の長手方向の中央部の位置に設けられている
ことを特徴とする請求項
5に記載の紙幣収納装置。
【請求項7】
前記保管部は、前記紙幣束の長手方向を水平方向に沿わせた状態で収納し、
前記押板は、収納される前記紙幣束の長手方向の両端部の位置に設けられている
ことを特徴とする請求項
5に記載の紙幣収納装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項
7の何れかに記載の前記紙幣収納装置を備える現金処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙幣収納装置及び現金処理装置に関し、複数枚の紙幣が帯封で束ねられた紙幣束を保管する保管庫に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、銀行等の金融機関に設置され紙幣を取り扱う現金処理装置が普及している。この現金処理装置には、複数枚の紙幣が帯封で束ねられた紙幣束を立位状態で保管する紙幣束保管庫を有するものがある(例えば、特許文献1参照)。この紙幣束保管庫は、筐体から引き出し可能な引出に、紙幣の長手方向を水平方向に向け、隣り合う紙幣束の互いの表面と裏面とを対向させた状態で並ぶように紙幣束を収納する。また紙幣束保管庫は、紙幣束が外部から補充される際、筐体から引出が引き出され、該引出に、例えば奥側から手前側へ向かって互いの紙幣束の上側の端面の高さを揃えて位置を揃えながら紙幣束が装填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、流通する紙幣は全ての金種に対して金種毎の高さ(短手方向の長さ)に差をつけていない場合があるため、金種が異なっていても高さ(短手方向の長さ)が共通であるものがある。国によっては、高さ(短手方向の長さ)だけでなく幅(長手方向の長さ)も共通であったりする。このため、装填されるべき金種以外の異金種の紙幣束が収納されても、使用者は、紙幣束の端面しか目視できないため、例えば、端面の汚れ具合によっては端面の色から金種を特定できず、紙幣束を誤って装填してしまったことに気が付かないおそれがある。また、異金種の紙幣束を装填してしまったことに使用者が気付いたとしても、紙幣束の端面だけでは外観から金種を見分けることが困難であり、装填した紙幣束を一束ずつ確認する必要があるため多くの時間を要してしまった。
【0005】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、利便性を向上させ得る紙幣収納装置及び現金処理装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため本発明の紙幣収納装置においては、複数の紙幣束を立位状態でほぼ水平方向に沿い、かつ収納方向に沿って並ぶように収納する紙幣収納装置であって、隣接する紙幣束同士の端面の位置が収納方向に交差する上下方向に異なるように紙幣束を収納する保管部を有し、保管部は、紙幣束の下側の端面を載置させる受け部と、ほぼ鉛直方向に沿って受け部から立設し、ほぼ鉛直方向に沿う直立状態で紙幣束を仕切る仕切部とを有し、紙幣束を一束ずつ収納する紙幣束収納空間が形成された仕切板を有し、仕切板の受け部は、隣接する受け部同士の高さが異なるようにした。
【0007】
また本発明の紙幣収納装置においては、複数の紙幣束を立位状態でほぼ水平方向に沿い、かつ収納方向に沿い前後に隣接して並ぶように収納する紙幣収納装置であって、紙幣束を収納する保管部を有し、保管部は、紙幣束の下側の端面を載置させる受け部と、鉛直方向に対し傾斜して受け部から立設し、鉛直方向に対し傾斜した立位状態で紙幣束を仕切る仕切部とを備え、受け部のそれぞれに紙幣束が載置されると、紙幣束は鉛直方向に対し傾斜した立位状態で、紙幣束の紙面が対向して隣接するように並べられ、紙面が対向して隣接する紙幣束同士において、収納方向から見て、紙幣束の上下の端面の位置が収納方向に交差する方向に異なり、紙幣束の紙面に直交する方向から見て、前側に隣接する紙幣束越しの後側の紙幣束の紙面の前面の一部が、前側に隣接する紙幣束に遮られず露出するようにした。
【0008】
また本発明の現金処理装置においては、上述した紙幣収納装置を設けるようにした。
【0009】
これにより本発明は、隣接する紙幣束同士の端面の間に段差を形成し、それぞれの紙幣束の表面又は裏面の少なくとも一部分を露出させ視認させやすくすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、利便性を向上させ得る紙幣収納装置及び現金処理装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】第1の実施の形態による紙幣束保管庫の構成を示す斜視図である。
【
図3】第1の実施の形態による保管部の構成を示す斜視図である。
【
図7】正常な装填状態における保管部の構成を示す正面図である。
【
図8】装填間違い状態における保管部の構成を示す正面図である。
【
図9】第2の実施の形態による保管部の構成(1)を示す斜視図である。
【
図10】第2の実施の形態による保管部の構成(2)を示し、(A)は平面図、(B)は左側面図、(C)は正面図である。
【
図11】第3の実施の形態による保管部の構成(1)を示す斜視図である。
【
図12】第3の実施の形態による保管部の構成(2)を示し、(A)は平面図、(B)は左側面図、(C)は正面図である。
【
図13】第4の実施の形態による保管部の構成を示し、(A)は平面図、(B)は左側面図、(C)は正面図である。
【
図14】他の実施の形態による紙幣束保管庫の構成(1)を示す斜視図である。
【
図15】他の実施の形態による紙幣束保管庫の構成(2)を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0013】
[1.第1の実施の形態]
[1-1.現金処理装置の構成]
図1に示すように、第1の実施の形態による現金処理装置1は、紙幣処理装置2及び紙幣束保管庫10により構成されている。この現金処理装置1は、例えば、銀行等の金融機関の店舗の担当者側スペースに設置され紙幣に関する処理を行う装置であり、担当者(以下では使用者とも呼ぶ)により取り扱われる。紙幣処理装置2は、制御部(図示せず)を有している。この制御部は、CPU(Central Processing Unit)によってROM(Read Only Memory)や記憶部(図示せず)等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、紙幣に関する種々の処理を制御すると共に、紙幣束保管庫10の制御を行う。
なお、
図1に示すように、紙幣処理装置2の制御部は、紙幣束保管庫10を有線を介して制御するが、有線でなく無線で制御しても良い。また、
図1に示すように、紙幣処理装置2は左右方向から見て紙幣束保管庫10の後側に配置されているが、例えば、前側に配置されても良く、紙幣処理装置2は上下方向から見て紙幣束保管庫10の下側に配置されても良い。
【0014】
[1-2.紙幣束の構成]
ここで、
図6に示すように、本実施の形態による紙幣束WBとは、単一金種の紙幣BLが所定枚数(例えば100枚)集積されて帯封STで束ねられたものである。この帯封STは、紙幣束WBの長手方向に沿う方向の幅が20[mm]であり、該長手方向の一方向側の端部の位置が、紙幣束WBの長手方向の一端部から他端部に向かって30[mm]離れた位置に設定されている。このため帯封STは、紙幣束WBの長手方向に沿う幅の中央部が、紙幣束WBの長手方向の一端部から他端部に向かって40[mm]離れた位置に設定されている。またこの帯封STにおける、紙幣束WBの長手方向の中央部には、紙幣束WBの短手方向の所定の範囲に亘って、該短手方向に沿って印字部Pが形成されている。印字部Pは、紙幣束WBが帯封STにより束ねられた日時や装置号機(図示せず)等を示している。この装置号機は、例えば日時の印字面の反対側に印字される。
【0015】
この紙幣束WBは、複数の紙幣BLの端部が紙幣束WBの厚さ方向に重なることにより形成された、該厚さ方向に沿う端面である4面分の紙幣束端面EFが形成されている。また紙幣束WBは、紙幣BLにおいて肖像が印刷された表面FSと、紙幣束WBにおける表面FSとは逆側の面である裏面RSとを有している。以下では、10000円の紙幣BL(すなわち一万円札)が100枚まとめて帯封STで束ねられた紙幣束を、紙幣束WBaとする。また、1000円の紙幣BL(すなわち一千円札)が100枚まとめて帯封STで束ねられた紙幣束を、紙幣束WBb(
図8)とする。また、日本国内で流通する紙幣の場合は、短手方向の長さが全金種でほぼ共通である。さらに、紙幣BLの長手方向を水平方向に沿わせた状態で正立状態の紙幣BLの表面FSに向かって左上部分及び右上部分には、該紙幣BLの金種を示す金種印刷部PKが設けられている。
【0016】
この紙幣束WBaと紙幣束WBbとは、互いの表面FSの模様、文字や色等のデザイン大きく異なっている。このため、使用者は、紙幣束WBaの表面FSと紙幣束WBbの表面FSとを見比べれば、ひと目で紙幣束WBaと紙幣束WBbとを区別することができる。しかしながら、紙幣束WBaと紙幣束WBbとは、互いの紙幣束端面EFには模様や文字は存在せず、色が僅かに異なっている程度である。また、一旦流通した紙幣BLを元に紙幣束WBが作成された場合、紙幣束WBの紙幣束端面EFが汚れていることもある。このため、使用者は、紙幣束WBaの紙幣束端面EFと紙幣束WBbの紙幣束端面EFとを見比べただけでは、ひと目で紙幣束WBaと紙幣束WBbとを区別できないことがある。
【0017】
さらに、特に一旦流通した紙幣BLを元に紙幣束WBが作成された場合、紙幣束WBにおいて帯封STで束ねられた箇所以外の箇所は、紙幣BLの癖によって膨らむ等、変形していることがある。
【0018】
[1-3.紙幣束保管庫の構成]
図2に示すように、第1の実施の形態による紙幣束保管庫10は、主に、筐体12及び引出14により構成されている。以下では、
図2に示すように、例えば、紙幣束保管庫10のうち使用者が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、前側に対峙した使用者から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明するが、
図2に示す使用者が対峙する側としての前側は、かかる例に限定されない。
【0019】
紙幣束保管庫10は、筐体12の内部に引出14を収納している。筐体12は、左面に開口部を有する中空の直方体状に構成されている。引出14は、内部に紙幣束WBを立位状態で収納する。引出14は、図示しない底部と該底部の外縁部から上方に延出する枠状の囲壁部16とからなる、上方が開口する箱型形状である。囲壁部16は、板状の右側板16R、左側板16L、前側板16F及び後側板16Bが形成されており、これら右側板16R、左側板16L、前側板16F及び後側板16Bによって囲まれた空間に引出内部空間16Sを形成している。また引出14は、前側板16F及び後側板16Bに設けられたスライドレール18を介して筐体12に対し左右方向へ往復移動可能に構成されている。
【0020】
紙幣束保管庫10は、例えば、保守作業員により、保守作業として、引出14に対し紙幣束WBの補充が行われる場合と、引出14から紙幣束WBを取り出される場合がある。上記保守作業が行われる場合、左側板16Lに設けられた把持部16Hが保守作業員により把持されて
図2に示すように引出14が左側である引出方向へ引き出されると、引出14の内部にアクセス可能な状態となる。以下ではこの状態を引出状態とも呼ぶ。一方、紙幣束保管庫10は、保守作業が完了し保守作業員により引出14が右側である押込方向へ押し込まれると、引出14が筐体12内部に収納された状態となる。以下ではこの状態を収納状態とも呼ぶ。
【0021】
ここで、保守作業員は、筐体12に対し引出14を
図2等に示す左右方向に沿って移動させることにより、引出状態と収納状態とを遷移させる。
【0022】
[1-4.引出の構成]
引出14の引出内部空間16Sには、それぞれ収納する金種が設定された保管部20L及び保管部20R(以下ではまとめて保管部20とも呼ぶ)が、保管部20Lが左側、保管部20Rが右側となるように、左右方向に並んで配置されている。保管部20Lは、紙幣束WBaを収納する。一方、保管部20Rは、紙幣束WBbを収納する。保管部20Lと保管部20Rとは互いにほぼ同様の構成であるため、以下では保管部20Lについて説明し、保管部20Rについての説明は省略する。
【0023】
[1-5.保管部の構成]
図3に示すように、保管部20Lは、主に、側壁22(側壁22L及び22R)、背板24並びに仕切板26により構成されている。保管部20Lは、前後方向である収納方向に沿って立位状態で並ぶように複数個の紙幣束WBaを収納する。このため、引出状態において保守作業員は、手前側(前側)から奥側(後側)に向かって表面FSが前方、すなわち保守作業員側を向いた紙幣束WBaを目視することとなる。
【0024】
[1-5-1.側壁の構成]
側壁22は、左側に配された側壁22Lと右側に配された側壁22Rとにより構成されている。これら側壁22L及び側壁22Rは、保管部20Lにおける左右方向の中心を軸として、左右対称に構成されている。以下では、側壁22L及び側壁22Rをまとめて側壁22とも呼ぶ。側壁22は、左右方向の厚さが薄く前後方向に沿って延びる板状部材であり、保管部20Lにおける左右両端部、すなわち、背板24及び仕切板26の長手方向(左右方向)両端部に設けられている。
【0025】
側壁22は、鉛直部22a及びガイド部22bにより構成されている。鉛直部22aは、鉛直方向に沿って延びる平板状の部材であり、例えば、紙幣束WBaの短手方向の長さの3分の1程度の上下方向の高さを有しているが、かかる例に限定されない。
【0026】
ガイド部22bは、鉛直部22aの上端部から、上方へ向かうに連れて左右方向の外側へ向かうように鉛直方向に対し傾斜する平板状の部材である。このように側壁22は、ガイド部22bにおいて左右方向の開口幅が広がるようにした。このため側壁22は、紙幣束収納空間28(後述する)に紙幣束WBaが上方から装填される際に、開口幅が広がる構成であるため、例えば、長手方向に不揃いの紙幣束WBa等の場合であっても、紙幣束WBaが側壁22の端部に引っ掛からないようにしつつ、紙幣束WBaを紙幣束収納空間28にガイドし容易に収納させることができる。
【0027】
側壁22Lと側壁22Rとは、側壁22Lの鉛直部22aにおける右側面と、側壁22Rの鉛直部22aにおける左側面との左右方向の間隔が、保管部20Lに収納される紙幣束WBaの長手方向の長さよりも僅か(例えば1[mm])に広くなるように、左右方向に対向して配置されている。この側壁22は、保管部20Lに収納された紙幣束WBaの左右方向の外側に配されており、該紙幣束WBaの長手方向の位置規制を行う。また鉛直部22aには、仕切板26の側壁挿通突起26a3(後述する)を挿通させる孔部22cが、右側面から左側面までに亘って貫通している。
【0028】
このように側壁22は、該側壁22が配された保管部20L/20Rに設定された金種の紙幣束WBの長手方向の長さよりも僅かに広い間隔を空ける。ここで、例えば、側壁22の間隔が額面の小さな金種(例えば、保管部20Rの1000円)に対応する間隔の場合、額面の大きな金種(例えば、保管部20Lの10000円)の紙幣束WBaが、該紙幣束WBaよりも長手方向の長さが短い、額面の小さな金種の保管部20Rに間違って装填されないようにできる。また、額面の小さな金種の紙幣束WBbは、該紙幣束WBbよりも長手方向の長さが長い、額面の大きな金種の保管部20Lに物理的には装填可能ではあるものの、紙幣束WBbと側壁22との間に大きな隙間が現れる。このため紙幣束保管庫10は、保守作業員に対し、誤った紙幣束WBを装填したことを気付かせやすくさせることができる。
【0029】
[1-5-2.背板の構成]
図4に示すように、背板24は、厚さが薄く上下左右方向に沿って延びる横断面が英大文字の「L」のような形状の板状部材であり、保管部20Lにおける後端部、すなわち、側壁22Lの後端部と側壁22Rの後端部との間に設けられている。
【0030】
背板24は、底面受け部24a及び背面受け部24bにより構成されている。底面受け部24aは、水平方向に対し後方へ向かうに連れて後端部が下方へ所定の傾斜角度(例えば20[°])である紙幣束傾斜角度だけ傾斜する平板状の部材である。底面受け部24aは、前後方向の長さが紙幣束WBaの厚さとほぼ同一となっており、その上面に、紙幣束WBaの下側の紙幣束端面EFを当接させることにより、該紙幣束WBaを載置させる。
【0031】
背面受け部24bは、底面受け部24aの後端部から、底面受け部24aに対し直角に屈曲し上方向へ延びる平板状の部材である。このため背面受け部24bは、鉛直方向に対し上端部が後方へ紙幣束傾斜角度だけ傾斜している。この紙幣束傾斜角度は、鉛直方向に対し少なくとも鋭角(90[°]未満)となっている。このため紙幣束保管庫10は、背板24及び仕切板26の仕切部26b(後述する)を鉛直方向に対し傾斜させすぎないようにし、紙幣束保管庫10の前後方向の大きさを抑えている。背面受け部24bは、その前面が、背面受け部24bに載せられた紙幣束WBaの後面に当接することにより、該紙幣束WBaが後方へ倒れないように保持する。また背面受け部24bは、紙幣束WBaの長手方向の長さとほぼ同様の左右方向の長さを有し、紙幣束WBaのほぼ裏面RSのほぼ全面を保持可能とすることにより、背面受け部24bに当接する紙幣束WBaが保管中に変形しないようにできる。
【0032】
さらに背面受け部24bは、上下方向の高さが、紙幣束WBaの短手方向の長さよりも長くなっており、収納された紙幣束WBaよりも上側に露出した箇所に、保管部20Lに収納されるべき紙幣束WBaの金種(例えば1万円)を表示する、額面表示部24cが設けられている。このため背面受け部24bは、保管部20Lに装填すべき紙幣束WBaの金種を保守作業員に対しひと目で認識させることができる。
【0033】
[1-5-3.仕切板の構成]
仕切板26は、背板24の前側において、全体として水平方向に沿って収納方向(
図3に示す前後方向)に並ぶように複数個配されている。
図5に示すように、この仕切板26は、下側板部26a及び仕切部26bにより構成されている。
【0034】
下側板部26aは、上下方向の厚さが薄く左右方向に沿って延び、側壁22に設置されると、水平方向に対し後方へ向かうに連れて後端部が下方へ紙幣束傾斜角度だけ傾斜する平板状の部材である。下側板部26aは、紙幣束受け部26a1、入れ子部26a2及び側壁挿通突起26a3により構成されている。
【0035】
紙幣束受け部26a1は、前後方向に関し下側板部26aにおける仕切部26bよりも前側の領域であり、前後方向の長さが紙幣束WBaの厚さとほぼ同一となっており、その上面に、紙幣束WBaの下側の紙幣束端面EFを当接させることにより、該紙幣束WBaを載置させる。
【0036】
入れ子部26a2は、前後方向に関し下側板部26aにおける仕切部26bよりも後側の領域であり、前後方向の長さが紙幣束WBaの厚さとほぼ同一となっており、後方に隣接する仕切板26における紙幣束受け部26a1の下側に入り込む。また最も後側の仕切板26の入れ子部26a2は、背板24における底面受け部24aの下側に入り込む。これにより保管部20Lは、背板24から最も前側の仕切板26までに亘って、紙幣束WBaの下側に前後方向の隙間をなくし、紙幣束WBaが前後方向に隣接する仕切板26同士の隙間から落下しないようにしている。
【0037】
側壁挿通突起26a3は、下側板部26aにおける長手方向(左右方向)の端部から左右方向の外側に向かって延びた棒状の部材であり、側壁22における孔部22cを挿通している。また側壁挿通突起26a3は、側壁22の孔部22cに対し摺動可能に挿通している。このため側壁22は、収納される紙幣束WBaの長手方向の長さに合わせて、仕切板26に対し左右方向へ移動されることにより、側壁22Lと側壁22Rとの間隔が調整される。これにより紙幣束保管庫10は、側壁22の孔部22cから側壁挿通突起26a3が抜けない左右方向の範囲において、同一部品で複数金種の保管部20を構成することが可能となっている。
【0038】
仕切部26bは、下側板部26aの前後方向の中央部から、下側板部26aに対し直角に上方向へ延びる平板状の部材である。このため仕切部26bは、鉛直方向に対し上端部が後方へ紙幣束傾斜角度だけ傾斜している。仕切部26bは、その前面が、下側板部26aの紙幣束受け部26a1に載せられた紙幣束WBaの後面に当接することにより、該紙幣束WBaが後方へ倒れないように保持する。
【0039】
また、複数の仕切板26のうち最も後方に位置する仕切板26は、背板24に対し、仕切部26bが紙幣束WBaの一束分の間隔を空けるように、背板24の前側に配置されている。さらに収納方向に隣接する仕切板26は、互いに隣接する仕切部26bが紙幣束WBaの一束分の間隔を空けるように、収納方向に並んで配置されている。このため仕切部26bは、背板24との間に紙幣束収納空間28を形成すると共に、隣接する仕切部26b同士との間と、下側板部26aの上側との空間に、紙幣束収納空間28を形成する。これにより保管部20Lは、紙幣束収納空間28毎に紙幣束WBaを一束ずつ仕切った状態で、紙幣束WBaの長手方向を下側板部26aの水平方向に沿わせて、紙幣束保管庫10の前面に対向した保守作業員から上端部が後方へ離隔するように紙幣束WBaを後方へ紙幣束傾斜角度だけ傾斜させた立位状態で収納する。
【0040】
さらに仕切部26bは、正面視において、上端部が下側板部26aの水平方向にほぼ沿っており、該上端部から下端部に向かって左右方向の幅が仕切板26の長手方向の長さの3分の1程度の長さまで広がっていくような、山型の形状となっている。この仕切部26bは、左右方向の中央部が、収納される紙幣束WBaの左側の紙幣束端面EFから右側へ約40[mm]離れた位置に設定されている。また仕切部26bの上端部の左右方向の長さは、紙幣束WBaの帯封STと同様に約20[mm]となっている。このため仕切部26bは、紙幣束収納空間28に紙幣束WBaが上方から装填される際に、紙幣束WBaの帯封STの下端部に、仕切部26bの上端部がまず当接し、紙幣束WBaが下方へ移動されるに連れ、紙幣束WBaにおける帯封STよりも左右方向の外側における前後方向の膨らみを徐々に抑えるように紙幣束WBaをガイドする。これにより仕切部26bは、紙幣束WBaを構成する紙幣BL同士の間に仕切部26bが入り込んで紙幣束WBaが仕切部26bに引っ掛からないようにしつつ、紙幣束WBaを紙幣束収納空間28にガイドし、膨らみ等の変形の影響を受けないように容易に収納させることができる。
【0041】
また仕切部26bは、左右方向の中央部において、紙幣束WBaの帯封STの印字部Pの左右方向の幅よりも左右方向に広い間隔を空けて、上下方向に沿って仕切部26bの前面から前方へ突出する2本のリブ26b1が形成されている。このため仕切部26bは、紙幣束収納空間28に紙幣束WBaが上方から装填される際に、紙幣束WBaの帯封STの印字部Pよりも左右方向の外側にリブ26b1を当接させることにより、該印字部Pを仕切部26bの前面から浮かすように前方へ離隔させる。これにより仕切部26bは、紙幣束収納空間28に紙幣束WBaが押し込まれる際に、印字部Pが仕切部26bによって擦られないようにでき、印字部Pを汚しにくくできる。
【0042】
[1-5-4.センサの構成]
図7に示すように、側壁22Lの鉛直部22aにおける左側面と、側壁22Rの鉛直部22aにおける右側面とには、それぞれ、一対の束セット検知センサ30Lと束セット検知センサ30Rとが左右方向に対向するように設けられている。以下では、束セット検知センサ30L及び30Rをまとめて束セット検知センサ30とも呼ぶ。この束セット検知センサ30は、全ての紙幣束収納空間28に対し設けられている。なお、
図2及び
図3においては、束セット検知センサ30は図示せず省略している。
【0043】
束セット検知センサ30は、いわゆるマイクロスイッチであり、板状の検知レバー部を側壁22よりも紙幣束収納空間28側まで突出させており、検知部による検知結果は紙幣処理装置2の制御部から確認することができる。制御部は、取得した検知結果に基づき、紙幣束収納空間28に紙幣束WBが収納されたか否かを判定する。
【0044】
具体的に、束セット検知センサ30は、紙幣束WBaが紙幣束収納空間28に装填されていない場合、該紙幣束WBaが束セット検知センサ30L及び30Rの両方の検知レバー部に接触せず、束セット検知センサ30L及び30Rの両方がOFF状態を検知する。制御部は、束セット検知センサ30L及び30Rの両方がOFF状態を検知した場合、紙幣束WBaが紙幣束収納空間28に装填されていないと判定する。
【0045】
一方、束セット検知センサ30は、紙幣束WBaが紙幣束収納空間28に正常に装填されると、
図7に示すように該紙幣束WBaが束セット検知センサ30L及び30Rの両方の検知部に接触し、束セット検知センサ30L及び30Rの両方がON状態を検知する。制御部は、束セット検知センサ30L及び30Rの両方がON状態を検知した場合、保管部20Lに装填されるべき正しいサイズの紙幣束WBである紙幣束WBaが紙幣束収納空間28に正常に装填されたと判定する。
【0046】
また一方、
図8に示すように、紙幣束WBaよりもサイズの小さい紙幣束WBである紙幣束WBbが誤って紙幣束収納空間28に正常に装填されると、紙幣束WBbは、束セット検知センサ30L又は30Rの何れか一方の検知部のみに接触する可能性がある。その場合、束セット検知センサ30L及び30Rの何れか一方はON状態を検知し、他方はOFF状態を検知する。制御部は、束セット検知センサ30L及び30Rの何れか一方がON状態を検知し、他方がOFF状態を検知した場合、すなわち、束セット検知センサ30Lと束セット検知センサ30Rとで検知結果が一致しない場合、保管部20Lに装填されるべき正しいサイズの紙幣束WBaよりも小さいサイズである紙幣束WBbが紙幣束収納空間28に誤って装填されたと検出し、紙幣処理装置2における表示部や音声出力部(図示せず)により、間違った紙幣束WBが装填されたセット不良が発生したことを保守作業員に通知する。
【0047】
[1-6.紙幣束の装填]
かかる構成において、紙幣束保管庫10に紙幣束WBを装填する際、保守作業員は、紙幣束保管庫10の前面に対向した状態で、筐体12に対し引出14を左方向に向かって移動させることにより、引出14を引出状態とする。続いて保守作業員は、額面表示部24cを確認し、背板24に近い奥側の紙幣束収納空間28から手前側の紙幣束収納空間28に向かって順次紙幣束WBを装填する。紙幣束WBが装填された紙幣束収納空間28に設けられた束セット検知センサ30L及び30Rにより、制御部は束セット状態を検知する。
【0048】
[1-7.効果等]
以上の構成において紙幣束保管庫10は、直方体状の紙幣束WBを、全体として水平方向に沿って収納方向へ並べつつ、上端部が鉛直方向に対し後方へ紙幣束傾斜角度だけ傾斜させた立位状態で収納するようにした。よって紙幣束保管庫10は、それぞれの紙幣束WBにおける上側の紙幣束端面EFの後端部を、該紙幣束WBの後側に隣接する紙幣束WBにおける上側の紙幣束端面EFの前端部よりも下側に位置させることができる。これは、それぞれの紙幣束WBにおける上側の紙幣束端面EFに沿い後方へ向かう仮想的な線が、該紙幣束WBの後側に隣接する紙幣束WBにおける表面FSを通過するとも言える。またこれを換言すれば、例えば、
図2及び
図3に示すように、紙幣束保管庫10は、収納方向で前後する紙幣束WB同士の間で正面視で相対的な位置ずれが生じるように紙幣束Wを収納するとも言える。このため、収納方向に沿って並ぶ複数個の紙幣束WBaは、全体として上端部自体は水平方向に沿い収納位置の高さは一定であるものの、上側の紙幣束端面EFは、水平方向に沿っておらず、隣接する紙幣束WBの間で、上側の紙幣束端面EFに段差が形成された、段々形状となっている。
【0049】
このため紙幣束保管庫10は、それぞれの紙幣束WBにおける表面FSの上端部近傍を、該紙幣束WBの前側に隣接する紙幣束WBにおける上側の紙幣束端面EFの後端部よりも上側に露出させることができる。これにより紙幣束保管庫10は、引出状態において、引出14の前側に対向した保守作業員に対し、対向するようにそれぞれの紙幣束WBの表面FSの一部分を容易に目視させることができる。また、紙幣束保管庫10は、紙幣束WBの装填時において、背板24に近い奥側の紙幣束収納空間28から手前側の紙幣束収納空間28に向かって順次紙幣束WBを装填される際に、装填済みの紙幣束WBの表面FSの上端部を保守作業員に視認させることができる。かくして紙幣束保管庫10は、例えば保管部20Lに間違って紙幣束WBbが装填された際に、紙幣束WBaとは表面FSの色が明らかに異なり色に差異があることをひと目で保守作業員に対し認識させ、装填する紙幣束WBの金種を間違えたことを容易に気付かせることができる。またこのため、紙幣束保管庫10は、異金種の紙幣束WBを装填してしまったことに保守作業員が気付いた際に、装填した紙幣束WBを一束ずつ確認するという煩雑な作業を強いることがないようにできる。
【0050】
ところで、従来のクランプ方式の紙幣束保管庫においては、紙幣束を1束ずつ区切る仕切板が存在せず、紙幣束を直立の立位状態で収納方向に沿って並べ、背板に向かって付勢されたクランプ部材でそれら紙幣束を背板との間に挟み込むことにより、複数の紙幣束を収納するものがあった。
【0051】
このような紙幣束保管庫では、紙幣束を装填する際は、引出を引出状態とし、保守作業員がクランプ部材を手で持って背板から離すように退避させて紙幣束を装填可能なスペースを空けて紙幣束を並べ、装填した紙幣束が倒れないように紙幣束を手で押さえながらクランプ部材で紙幣束を挟み込ませる。一方、このような紙幣束保管庫では、紙幣束を取り出す際は、引出を引出状態とし、保守作業員がクランプ部材を手で持って背板から離すように退避させて必要な分の紙幣束を取り出し、残っている紙幣束が倒れないように紙幣束を手で押さえながらクランプ部材で紙幣束を挟み込ませる。
【0052】
しかしながら、クランプ部材を手で抑えながら紙幣束を装填したり取り出したりしようとすると、保守作業員の両手がふさがるために引出が移動してしまうため、紙幣束を装填したり取り出したりしにくかった。また、それを回避するためにクランプ部材を退避させた状態で移動しないようにロック可能にすると、紙幣束の収納量が少ないときにはクランプ部材が退避しすぎになってしまい、収納されている紙幣束との間に隙間が空き、紙幣束が倒れてしまい、操作性が悪かった。
【0053】
これに対し紙幣束保管庫10は、隣接する紙幣束WB同士の間に、上端部が鉛直方向に対し後方へ紙幣束傾斜角度だけ傾斜させた、仕切板26の仕切部26bを立設し、該仕切部26bに紙幣束WBを寄りかからせた立位状態で収納するようにした。このため紙幣束保管庫10は、背板24に向かって紙幣束WBを付勢するクランプ部材を省略しつつ、紙幣束WBが倒れないように収納できる。これにより紙幣束保管庫10は、保守作業員が紙幣束WBを装填したり取り出したりする際に、クランプ部材を持つ必要をなくし作業性を向上できる。
【0054】
一方、従来のクランプ方式に対し、クランプ部材を省略し、隣接する紙幣束同士の間に、紙幣束の長手方向の一端側から他端側までに亘って水平方向に沿うような上端部を有する、仕切板の仕切部を立設させることにより、紙幣束を立位状態で収納することも考えられる。しかしながらそのような紙幣束保管庫の場合、紙幣束における帯封以外の部分が前後方向に広がって仕切部に引っ掛かってしまうため装填しにくく、無理に入れると紙幣が破れてしまうことがあった。
【0055】
これに対し紙幣束保管庫10は、仕切部26bを、紙幣束WBの帯封STと左右方向の位置を合わせると共に、上端部から下端部に向かって左右方向の幅が広がっていくような、山型の形状とした。このため紙幣束保管庫10は、紙幣束WBが装填される際に、帯封STから左右方向の外側に向かって徐々に紙幣束WBの前後方向の膨らみを抑えることができる。これにより紙幣束保管庫10は、紙幣束WBにおける帯封ST以外の部分が前後方向に広がって仕切部26bに引っ掛かってしまうことを防止し、紙幣BLの破損を防ぎ、保守作業員に対し紙幣束WBを容易に装填させることができる。
【0056】
以上の構成によれば紙幣束保管庫10は、複数の紙幣束WBを立位状態でほぼ水平方向に沿い、かつ収納方向としての前後方向に沿って並ぶように収納する紙幣束保管庫10であって、紙幣束WBを鉛直方向に対し傾斜した立位状態で収納する保管部20を設けるようにした。このため紙幣束保管庫10は、隣接する紙幣束WB同士の紙幣束端面EFの間に段差を形成し、それぞれの紙幣束WBの表面FSの一部分を露出させ、表面FSを視認させやすくすることができる。
【0057】
[2.第2の実施の形態]
[2-1.現金処理装置の構成]
図1に示すように、第2の実施の形態による現金処理装置101は、第1の実施の形態による現金処理装置1と比較して、紙幣束保管庫10に代わる紙幣束保管庫110を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0058】
[2-2.紙幣束保管庫の構成]
図1に示すように、第2の実施の形態による紙幣束保管庫110は、第1の実施の形態による紙幣束保管庫10と比較して、保管部20に代わる保管部120を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0059】
[2-3.保管部の構成]
図9及び
図10に示すように、第2の実施の形態による保管部120は、主に、側壁(図示せず)及び仕切板34により構成されている。仕切板34は、前後方向である収納方向に沿って並ぶように複数個が配されている。この仕切板34は、左右方向に延び横断面が英大文字の「L」のような形状の板状部材であり、底面受け部34a及び仕切部34bにより構成されている。
【0060】
底面受け部34aは、上下方向の厚さが薄く左右方向に沿って延び、水平方向に沿う平板状の部材である。この底面受け部34aは、前後方向の長さが紙幣束WBの厚さとほぼ同一となっており、その上面に、紙幣束WBの下側の端面を当接させることにより、該紙幣束WBを載置させる。
【0061】
仕切部34bは、底面受け部34aの後端部から、底面受け部34aに対し直角に上方向へ延びる平板状の部材である。このため仕切部34bは、鉛直方向に沿っている。なお、仕切部34bは、底面受け部34aに対し直角に上方向へ延びる構成に限定されず、底面受け部34aに対しほぼ直角に上方向へ延びても良い。以降の実施の形態でも同様である。仕切部34bは、その前面が、底面受け部34aに載せられた紙幣束WBの後面に当接することにより、該紙幣束WBが後方へ倒れないように保持する。また仕切部34bは、その後面が、該仕切部34bが設けられた仕切板34の後側に隣接する仕切板34の底面受け部34aに載せられた紙幣束WBの前面に当接することにより、該紙幣束WBが前方へ倒れないように保持する。また最も前側の仕切板34における底面受け部34aの前端部からは、前端面受け部35が鉛直方向に沿って立設しており、該仕切板34の底面受け部34aに載せられた紙幣束WBの前面に当接することにより、該紙幣束WBが前方へ倒れないように保持する。なお、前端面受け部35は、鉛直方向に限定されず、ほぼ鉛直方向に立設しても良い。以降の実施の形態でも同様である。このため仕切部34bは、隣接する仕切部34b同士の間に紙幣束収納空間28を形成し、紙幣束収納空間28毎に紙幣束WBを一束ずつ仕切った状態で、紙幣束WBの長手方向を水平方向に沿わせて収納する。
【0062】
保管部120においては、最前部に位置する仕切板34から、最後部に位置する仕切板34まで、それぞれの仕切板34の底面受け部34aの位置が同じ高さずつ徐々に高くなるように、仕切板34が前後方向に並んで配置されている。このため複数の仕切板34は、前側から後側に向かって登る階段状に構成されている。
【0063】
また前後方向に隣接する仕切板34の互いの底面受け部34aによって生じる段差の長さである段差高さHSPは、例えば、正立状態の紙幣BLの上端部から、金種印刷部PKにおいて金種が印字された文字の下端部までの上下方向の長さである、金種印刷部高さHPKとほぼ同等となっている。このため保管部120は、所定の紙幣束WBの金種印刷部PKを該紙幣束WBの前側に隣接する紙幣束WBの上端部よりも上側に露出させ、保守作業員に認識させやすくできる。
【0064】
このように保管部120は、紙幣束WBを鉛直方向に対し傾斜しないように直立の立位状態とし、前側の紙幣束WBから後側の紙幣束WBに向かって階段状に収納位置の高さが高くなるように収納する。これをある仕切板34に着目して見ると、1つの仕切板34が紙幣束WBを収納する収納位置の高さは、該仕切板34の前側に隣接する仕切板34の収納位置よりも高く、該仕切板34の後側に隣接する仕切板34の収納位置よりも低いものとなる。
【0065】
[2-4.紙幣束の装填]
かかる構成において、紙幣束保管庫110に紙幣束WBを装填する際、保守作業員は、奥側の紙幣束収納空間28から手前側の紙幣束収納空間28に向かって順次紙幣束WBを装填する。
【0066】
[2-5.効果等]
以上の構成において紙幣束保管庫110は、紙幣束WBを、鉛直方向に沿う直立の立位状態で、前側の紙幣束WBから後側の紙幣束WBに向かって階段状に収納位置の高さが高くなるように収納するようにした。すなわち紙幣束保管庫110は、隣接する紙幣束WB同士の端面の位置が収納方向に交差する方向に異なるように紙幣束WBを収納するようにした。よって紙幣束保管庫110は、それぞれの紙幣束WBにおける上側の紙幣束端面EFを、該紙幣束WBの後側に隣接する紙幣束WBにおける上側の紙幣束端面EFの前端部よりも下側に位置させることができる。このため、収納方向に沿って並ぶ複数個の紙幣束WBの上側の紙幣束端面EFは、互いに同じ高さでなく、隣接する紙幣束WBの間で、後方に向かうに連れて段階的に高さが上がるように上側の紙幣束端面EFに段差が形成された、段々形状となっている。換言すると、上記隣接する紙幣束WBの間で、前方に向かうに連れて段階的に高さが下がるように上側の紙幣束端面EFに段差が形成された、段々形状となっている。
【0067】
このため紙幣束保管庫110は、それぞれの紙幣束WBの表面FSにおける少なくとも一部分である金種印刷部PKや模様を、該紙幣束WBの前側に隣接する紙幣束WBにおける上側の紙幣束端面EFの後端部よりも上側に露出させることができる。すなわち紙幣束保管庫110は、前側に隣り合う紙幣束WB越しに、該紙幣束WBの後側に隣り合う紙幣束WBの前面の少なくとも一部が露出するように紙幣束WBを収納する。これにより紙幣束保管庫110は、引出状態において、紙幣束保管庫110の前側に対向した保守作業員に対し、それぞれの紙幣束WBの表面FSの一部分を容易に目視させることができる。また、紙幣束保管庫110は、紙幣束WBの装填時において、奥側の紙幣束収納空間28から手前側の紙幣束収納空間28に向かって順次紙幣束WBを装填される際に、装填済みの紙幣束WBの表面FSの上端部を保守作業員に視認させることができる。かくして紙幣束保管庫110は、収納されるべき金種(例えば一万円)の紙幣束WBaとは異なる金種(例えば一千円)の紙幣束WBbが保管部120に間違って装填された際に、紙幣束WBaとは表面FSの色が異なり色に少なくとも多少差異があると共に、金種印刷部PKに表示された数字が10000ではなく1000であることの保守作業員による視認の可能性が向上される。
【0068】
その他、第2の実施の形態による現金処理装置101は、第1の実施の形態による現金処理装置1と同様の作用効果を奏し得る。
【0069】
[3.第3の実施の形態]
[3-1.現金処理装置の構成]
図1に示すように、第3の実施の形態による現金処理装置201は、第2の実施の形態による現金処理装置101と比較して、紙幣束保管庫110に代わる紙幣束保管庫210を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0070】
[3-2.紙幣束保管庫の構成]
図1に示すように、第3の実施の形態による紙幣束保管庫210は、第2の実施の形態による紙幣束保管庫110と比較して、保管部120に代わる保管部220を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0071】
[3-3.保管部の構成]
図9及び
図10と対応する部材に同一符号を付した
図11及び
図12に示すように、第3の実施の形態による保管部220は、第2の実施の形態による保管部120と比較して、仕切板34に代わる仕切板234を有すると共に、背板40及び押板42が追加されている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0072】
仕切板234は、左右方向の中央部に配置された押板通過部234aを挟んで左側に配置された仕切板234Lと右側に配置された仕切板234Rとに分割されている。以下では仕切板234L及び仕切板234Rをまとめて仕切板234とも呼ぶ。このため仕切板234は、左右方向の中央部において、押板42の左右方向の幅よりも僅かに広い空間である押板通過部234aが形成されている。これにより仕切板234Lと仕切板234Rとは、押板42の収納方向への移動経路から退避するように配置されている。この押板通過部234aは、最も後側の仕切板234と最も前側の仕切板234よりも前側との間を押板42に移動可能にさせる。
【0073】
背板40は、鉛直方向に沿って延びる直方体状の部材であり、押板42とほぼ同等の左右方向の幅を有し、紙幣束WBの左右方向の中央部に配されている。背板40は、その前面が、最も後側の仕切板234の仕切部34bの前面とほぼ面一となっており、最も後側の仕切板234に載せられた紙幣束WBの後面に当接することにより、該紙幣束WBが後方へ倒れないように保持する。
【0074】
押板42は、背板40と前後方向に対向して設けられ、鉛直方向に沿って延びる直方体状の部材であり、押板通過部234aの左右方向の幅よりも僅かに狭い左右方向の幅を有している。また押板42は、紙幣束WBの左右方向の中央部に配されている。この押板42は、押板通過部234aを、最も後側の仕切板234と最も前側の仕切板234よりも前側との間を前後方向に沿って移動可能に構成されている。押板42は、その後面が、仕切板234に収納された紙幣束WBのうち最も前方に収納された紙幣束WBの前面に当接することにより、収納された紙幣束WBを背板40との間で挟み込んで倒れないように保持する。
【0075】
[3-4.センサの構成]
押板42における後側と、背板40における前側とには、それぞれ、一対の発光部44eと受光部44rとが前後方向に対向するように設けられている。この発光部44e及び受光部44rにより、束セット検知センサ44が構成されている。発光部44eは、上下方向に並ぶ複数の発光素子が基板に搭載されており、押板42に取り付けられている。受光部44rは、上下方向に並ぶ複数の受光素子が基板に搭載されており、背板40に取り付けられている。この束セット検知センサ44は、全ての紙幣束収納空間28それぞれの底面受け部34aよりも僅かに上側を検知光が通過するように発光素子及び受光素子が設けられている。
【0076】
また束セット検知センサ44は、光学センサであり、発光部44eから検知光を出射し、該検知光を受光部44rにおいて受光したか否かを示す検知結果を紙幣処理装置2の制御部に送出する。制御部は、取得した検出結果に基づき、紙幣束収納空間28に紙幣束WBが収納されたか否かを判定する。
【0077】
具体的に、束セット検知センサ44は、紙幣束WBが紙幣束収納空間28に装填されていない場合、該紙幣束WBが束セット検知センサ44の検知光を遮らないため、明状態を検知する。制御部は、束セット検知センサ44が明状態を検知した場合、その束セット検知センサ44の検知光が通過する紙幣束収納空間28には紙幣束WBが装填されていないと判定する。
【0078】
一方、束セット検知センサ44は、紙幣束WBが紙幣束収納空間28に装填されると、該紙幣束WBが束セット検知センサ44の検知光を遮るため、暗状態を検知する。制御部は、束セット検知センサ44が暗状態を検知した場合、その束セット検知センサ44の検知光が通過する紙幣束収納空間28に紙幣束WBが装填されたと判定する。
【0079】
また制御部は、上から何個目の発光素子から出射した検知光までが紙幣束WBによって遮られたかを検出することにより、何束分の紙幣束WBが現在装填されているかを判定する。
【0080】
[3-5.紙幣束の装填]
かかる構成において、紙幣束保管庫210に紙幣束WBを装填する際、保守作業員は、押板42を背板40から離すように手前側へ退避させ、奥側の紙幣束収納空間28から手前側の紙幣束収納空間28に向かって順次紙幣束WBを装填する。紙幣束WBを装填し終えると保守作業員は、押板42を背板40に近付けるように奥側へ移動させ、紙幣束WBに押し当てることにより、背板40と押板42とで紙幣束WBを挟み込ませる。このとき、制御部の制御に基づき、束セット検知センサ44は、発光部44eから検知光を出射し、制御部に検知結果を通知する。
【0081】
[3-6.効果等]
以上の構成において紙幣束保管庫210は、押板通過部234aを挟んで仕切板234を仕切板234Lと仕切板234Rとに分割し、押板42を押板通過部234aにおいて収納方向に沿って移動可能に構成し、装填された紙幣束WBを押板42と背板40との間で挟み込んで倒れないように保持するようにした。このため紙幣束保管庫210は、押板42及び背板40が存在しない場合と比較して、より一層安定的に紙幣束WBを立位状態で保持できる。
【0082】
また紙幣束保管庫210は、それぞれの紙幣束収納空間28における紙幣束WBの有無を検出する束セット検知センサ44を設けるようにした。このため紙幣束保管庫210は、収納された紙幣束WBの束数を検出することができる。また紙幣束保管庫210は、引出14の引出状態に限らず、筐体12の外部から紙幣束WBを目視不可能な収納状態においても、紙幣束WBの収納位置が階段状に異なる構成を利用して、収納された紙幣束WBの束数を検出することができる。
【0083】
さらに紙幣束保管庫210は、押板42と束セット検知センサ44の発光部44eとを一体に構成し、背板40と束セット検知センサ44の受光部44rとを一体に構成するようにした。このため紙幣束保管庫210は、押板42と束セット検知センサ44の発光部44eとを別体で、また、背板40と束セット検知センサ44の受光部44rとを別体で構成する場合と比較して、構成を簡素化することができる。
【0084】
その他、第3の実施の形態による現金処理装置201は、第2の実施の形態による現金処理装置101と同様の作用効果を奏し得る。
【0085】
[4.第4の実施の形態]
[4-1.現金処理装置の構成]
図1に示すように、第4の実施の形態による現金処理装置301は、第3の実施の形態による現金処理装置201と比較して、紙幣束保管庫210に代わる紙幣束保管庫310を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0086】
[4-2.紙幣束保管庫の構成]
図1に示すように、第4の実施の形態による紙幣束保管庫310は、第3の実施の形態による紙幣束保管庫210と比較して、保管部220に代わる保管部320を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0087】
[4-3.保管部の構成]
図12と対応する部材に同一符号を付した
図13に示すように、第4の実施の形態による保管部320は、第3の実施の形態による保管部220と比較して、仕切板234に代わる仕切板334と、背板40に代わる背板340(背板340L及び340R)と、押板42に代わる押板342(押板342L及び342R)とが追加されている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0088】
仕切板334は、左右方向の両端部に配置された押板通過部334aLと押板通過部334aRとの間に配置されている。この押板通過部334aL及び押板通過部334aRは、それぞれ押板342L及び342Rの左右方向の幅よりも僅かに広い空間となっている。この押板通過部334aL及び334aRは、最も後側の仕切板334と最も前側の仕切板334よりも前側との間を押板342に移動可能にさせる。
【0089】
背板340L及び340Rは、背板40と同様の部材であり、押板342L及び342Rとほぼ同等の左右方向の幅を有し、紙幣束WBの左右方向の両端部に配されている。背板340L及び340Rは、その前面が、最も後側の仕切板334の仕切部34bの前面とほぼ面一となっており、最も後側の仕切板334に載せられた紙幣束WBの後面に当接することにより、該紙幣束WBが後方へ倒れないように保持する。
【0090】
押板342L及び342Rは、背板340と前後方向に対向して設けられ、押板42と同様の部材であり、押板通過部334aL及び334aRの左右方向の幅よりも僅かに狭い左右方向の幅を有している。また押板342L及び342Rは、紙幣束WBの左右方向の両端部に配されている。この押板342L及び342Rは、押板通過部334aL及び334aRを、最も後側の仕切板334と最も前側の仕切板334よりも前側との間を前後方向に沿って移動可能に構成されている。押板342L及び342Rは、その後面が、仕切板334に収納された紙幣束WBのうち最も前方に収納された紙幣束WBの前面に当接することにより、収納された紙幣束WBを背板340L及び340Rとの間で挟み込んで倒れないように保持する。
【0091】
[4-4.センサの構成]
押板342Lと背板340Lとには、それぞれ、押板42及び背板40と同様の一対の発光部44eと受光部44rとが前後方向に対向するように設けられている。この発光部44e及び受光部44rにより、束セット検知センサ344Lが構成されている。一方、押板342Rと背板340Rとには、それぞれ、押板42及び背板40と同様の一対の発光部44eと受光部44rとが前後方向に対向するように設けられている。この発光部44e及び受光部44rにより、束セット検知センサ344Rが構成されている。以下では、束セット検知センサ344L及び344Rをまとめて束セット検知センサ344とも呼ぶ。
【0092】
ここで、
図13(C)に示すように、所定の仕切板334(以下では対象仕切板とも呼ぶ)に、紙幣束WBにおける例えば右側が仕切板334の底面受け部34aまで押し込まれ切らずに浮いてしまった場合について検討する。この場合、押板342Lの発光部44eから対象仕切板へ出射された検知光は紙幣束WBによって遮られる一方、押板342Rの発光部44eから対象仕切板へ出射された検知光は紙幣束WBによって遮られない。このため、束セット検知センサ344Lは対象仕切板において暗状態を検知する一方、束セット検知センサ344Rは対象仕切板において明状態を検知する。このように、紙幣束WBは、同一の仕切板334において束セット検知センサ344L又は344Rの何れか一方の検知光のみを遮る可能性がある。その場合、束セット検知センサ344L及び344Rの何れか一方は対象仕切板において明状態を検知し、他方は対象仕切板において暗状態を検知する。制御部は、束セット検知センサ344L及び344Rの何れか一方が明状態を検知し、他方が暗状態を検知した場合、すなわち、1つの紙幣束収納空間28において束セット検知センサ344Lと束セット検知センサ344Lとで検知結果が一致しない場合、保管部320に紙幣束WBが下側の紙幣束端面EFにおける左右方向何れかの端部が仕切板334の底面受け部34aから浮いてしまった状態で装填されたセット不良が発生したと検出し、紙幣処理装置2における表示部や音声出力部(図示せず)により、保守作業員に対し、セット不良の可能性がある通知又は紙幣束WBが正しい紙幣束であるか確認させる通知を出力する。
【0093】
[4-5.紙幣束の装填]
かかる構成において、紙幣束保管庫310に紙幣束WBを装填する際、保守作業員は、紙幣束保管庫210の場合とほぼ同様の作業を行う。このとき、制御部の制御に基づき、束セット検知センサ344は、発光部44eから検知光を出射する。受光部44rは、上記検知光の受光結果を束セット検知センサ344に出力し、束セット検知センサ344は、上記受光結果を基に、制御部に検知結果を通知する。
【0094】
[4-6.効果等]
以上の構成において紙幣束保管庫310は、仕切板334における左右両端部に押板通過部334aL及び334aRを設け、押板342L及び342Rを押板通過部334aL及び334aRにおいて収納方向に沿って移動可能に構成し、装填された紙幣束WBを押板342L及び342Rと背板340L及び340Rとの間で挟み込んで倒れないように保持するようにした。このため紙幣束保管庫310は、紙幣束保管庫210と比較して、紙幣束WBの長手方向の両端部を挟み込むことができ、より一層安定的に紙幣束WBを立位状態で保持できる。
【0095】
また紙幣束保管庫310は、それぞれの紙幣束収納空間28における紙幣束WBの有無を検出する束セット検知センサ344を、紙幣束WBの長手方向の両端部に設けるようにした。このため紙幣束保管庫310は、下側の紙幣束端面EFにおける長手方向何れかの端部が仕切板334の底面受け部34aから浮いてしまった状態で紙幣束WBが装填されたことを検出することができる。これにより現金処理装置301は、紙幣束WBを正しく再装填することを保守作業員に促すことができる。
【0096】
その他、第4の実施の形態による現金処理装置301は、第3の実施の形態による現金処理装置201と同様の作用効果を奏し得る。
【0097】
[5.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、鉛直方向に対する紙幣束WBの傾斜角度を20[°]とする場合について述べた。本発明はこれに限らず、鉛直方向に対する紙幣束WBの傾斜角度を他の種々の角度としても良い。なお、傾斜角度を鉛直方向に対し大きくするほど、紙幣束WBの表面FSが前方へ露出しやすくできる一方、傾斜角度を鉛直方向に対し小さくするほど、紙幣束保管庫10の前後方向の大きさを抑えることができる。
【0098】
上述した第2の実施の形態においては、前側の紙幣束WBから後側の紙幣束WBに向かって階段状に高さが高くなるように紙幣束WBを収納する場合について述べた。本発明はこれに限らず、全ての紙幣束WBの収納位置の高さは一定とし、前側の紙幣束WBから後側の紙幣束WBに向かって右方向又は左方向へ段階的に位置がずれるように紙幣束WBを収納しても良い。さらに、最前部の紙幣束WBを最前紙幣束と呼び、該最前紙幣束の後側に隣接する紙幣束WBを2番目紙幣束と呼び、該2番目紙幣束の後側に隣接する紙幣束WBを3番目紙幣束と呼ぶとき、2番目紙幣束を最前紙幣束に対し左右方向の一方向である例えば右側に位置をずらして配置し、3番目紙幣束を2番目紙幣束に対し左右方向の他方向である例えば左側に位置をずらして配置する、すなわち、複数の紙幣束WBの左側の紙幣束端面EFが収納方向に沿って左右方向に交互に凸凹になり、右側の紙幣束端面EFが収納方向に沿って左右方向に交互に凹凸になるように、紙幣束WBを収納しても良い。その場合、保守作業員は、前側の紙幣束WBに対し右側へ位置ずれしている紙幣束WBについては、その紙幣束WBの表面FSの右端部を目視でき、前側の紙幣束WBに対し左側へ位置ずれしている紙幣束WBについては、その紙幣束WBの表面FSの左端部を目視できる。第3及び第4の実施の形態においても同様である。
【0099】
上述した第2の実施の形態のように前側の紙幣束WBから後側の紙幣束WBに向かって階段状に高さが高くなるように紙幣束WBを収納する方法と、左右方向に収納位置をずらず方法とを組み合わせても良い。第3及び第4の実施の形態においても同様である。
【0100】
また、複数の紙幣束WBの上側の紙幣束端面EFが前後方向に沿って上下方向に交互に凸凹になるように紙幣束WBを収納することにより、紙幣束保管庫110の高さを抑えても良い。その場合、前側の紙幣束WBに対し下側へ位置ずれしている紙幣束WBについては、前側の紙幣束WBに対し右側又は左側へ位置ずれさせることにより、表面FSを前方へ露出させるようにしても良い。第3及び第4の実施の形態においても同様である。
【0101】
上述した第2の実施の形態において、最前紙幣束を右上がりに、2番目紙幣束を左上がりに、3番目紙幣束を右上がりになるよう、すなわち、複数の紙幣束WBの上側の紙幣束端面EFの左端部が前後方向に沿って上下方向に交互に凸凹になり、上側の紙幣束端面EFの右端部が前後方向に沿って上下方向に交互に凹凸になるように、紙幣束WBを収納しても良い。その場合、特に、日本国内で流通する紙幣BLの場合は、短手方向の長さが全金種でほぼ共通であるため、紙幣BLにおける表面FSの左上部分及び右上部分に設けられた金種印刷部PKを保守作業員に目視させやすくできる。第3及び第4の実施の形態においても同様である。
【0102】
上述した第2の実施の形態においては、紙幣束WBを鉛直方向に対し傾斜しないように直立の立位状態で収納する場合について述べた。本発明はこれに限らず、第1の実施の形態のように、例えば、紙幣束WBを鉛直方向に対し傾斜させた立位状態で収納しても良い。第3及び第4の実施の形態においても同様である。
【0103】
上述した第2の実施の形態においては、段差高さHSP(
図9)を紙幣束WBの金種印刷部高さHPKとほぼ同等とする場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、段差高さHSPを紙幣束WBの金種印刷部高さHPKよりも短くしても良い。その場合、紙幣束保管庫110の高さを抑えることができる。また、その場合、金種印刷部PKの全てを前方へ露出できなくとも、少なくとも紙幣束WBの表面FSの一部分を前方へ露出させることができるため、金種印刷部PKの一部分の露出でも、例えば、10000円と1000円とで0(ゼロ)の数が違うなど、保守作業員による視認は可能性である。また、金種印刷部PKの一部分の露出でも、例えば、紙幣束WBの表面FSの色を保守作業員に視認させる可能性はある。第3及び第4の実施の形態においても同様である。
【0104】
上述した第3の実施の形態においては、背板40(
図11及び
図12)の左右方向の幅を押板42とほぼ同等に短くする場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、背板40の左右方向の幅を紙幣束WBの長手方向の長さとほぼ同等程度に長くしても良い。第4の実施の形態においても同様である。
【0105】
上述した第3の実施の形態においては、押板42(
図11及び
図12)と束セット検知センサ44の発光部44eとを一体に構成し、背板40と束セット検知センサ44の受光部44rとを一体に構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、押板42と束セット検知センサ44の発光部44eとを別体で構成しても良く、背板40と束セット検知センサ44の受光部44rとを別体で構成しても良い。背板40と受光部44rとを別体で構成し、背板40の後側に受光部44rを配置する場合、背板40において検知光が貫通する孔部を穿設するか、又は、背板40を検知光が通過可能な透明部材で形成すれば良い。一方、押板42と発光部44eとを別体で構成し、押板42の前側に発光部44eを配置する場合、押板42において検知光が貫通する孔部を穿設するか、又は、押板42を検知光が通過可能な透明部材で形成すれば良い。第4の実施の形態においても同様である。
【0106】
上述した第3の実施の形態においては、光学センサである束セット検知センサ44(
図11及び
図12)により、紙幣束収納空間28に収納された紙幣束WBを検出する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、他の種々の方式のセンサにより、紙幣束収納空間28に収納された紙幣束WBを検出しても良い。第4の実施の形態においても同様である。
【0107】
上述した第1の実施の形態においては、複数個の仕切板26(
図3及び
図5)を、収納方向に並ぶように配置する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、複数個の仕切板26をまとめて1つの部材(例えば1枚の底板)としても良い。
【0108】
上述した第1の実施の形態においては、左右両側の側壁22(
図3)にガイド部22bを設ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、片側の側壁22にのみガイド部22bを設けて、保管部20の左右方向の幅を狭くしても良い。第2乃至第4の実施の形態においても同様である。
【0109】
上述した第1の実施の形態においては、側壁22L(
図3)の鉛直部22aと側壁22Rの鉛直部22aとの間隔を紙幣束WBの長手方向の長さよりも1[mm]広くする場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、側壁22Lの鉛直部22aと側壁22Rの鉛直部22aとの間隔を紙幣束WBの長手方向の長さよりも他の任意の値だけ広くしても良い。第2乃至第4の実施の形態においても同様である。
【0110】
上述した第1の実施の形態においては、束セット検知センサ30が設けられた紙幣束保管庫10に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、束セット検知センサ30が省略された紙幣束保管庫10に本発明を適用しても良い。
【0111】
上述した第1の実施の形態においては、仕切板26の仕切部26bにリブ26b1が形成されている場合について述べた。本発明はこれに限らず、仕切板26の仕切部26bにはリブ26b1が形成されていなくても良い。
【0112】
上述した第1の実施の形態においては、仕切部26bの下端部の幅を仕切板26の長手方向の長さの3分の1程度とする場合について述べた。本発明はこれに限らず、仕切部26bの下端部の幅を仕切板26の長手方向の長さの3分の1程度よりも短くしたり又は長くしたりしても良い。また、仕切部26bの上端部及び/又は下端部の幅を、例えば仕切板26の長手方向の長さと同等又は左右の側壁22間の距離と同等に長くしても良い。
【0113】
上述した第1の実施の形態においては、複数枚の紙幣BLがまとめて帯封STで束ねられた紙幣束WBを収納する紙幣束保管庫10に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、複数枚の紙葉状の金券、小切手やフイルム等がまとめて束ねられた紙葉類束を収納する紙葉類束保管庫に本発明を適用しても良い。第2乃至第4の実施の形態においても同様である。
【0114】
上述した第1の実施の形態においては、2つの保管部20L及び保管部20Rを有する紙幣束保管庫10に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、1つ又は3つ以上の任意の個数の保管部20を有する紙幣束保管庫10に本発明を適用しても良い。第2乃至第4の実施の形態においても同様である。
【0115】
上述した第1の実施の形態においては、紙幣束WBaを収納する保管部20Lと紙幣束WBbを収納する保管部20Rとを有する紙幣束保管庫10に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、5千円札や弐千円札等他の金種がまとめて帯封STで束ねられた紙幣束WBを収納する保管部を含む紙幣束保管庫に本発明を適用しても良い。第2乃至第4の実施の形態においても同様である。
【0116】
上述した第1の実施の形態においては、筐体12に対する引出14の移動方向である左右方向に直交する前後方向である収納方向に沿って並ぶように紙幣束WBを収納する紙幣束保管庫10に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、紙幣束保管庫10の左面に保守作業員が対向し、筐体12に対する引出14の移動方向である左右方向に沿って並ぶように紙幣束WBを収納する紙幣束保管庫10に本発明を適用しても良い。第2乃至第4の実施の形態においても同様である。
【0117】
上述した第1の実施の形態においては、紙幣束WBの表面FSが前方を向く立位状態で紙幣束WBを収納する紙幣束保管庫10に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、紙幣束保管庫10を左右方向に沿う軸を中心として90[°]回転させて紙幣束WBの表面FSが上方を向く状態で紙幣束WBを収納する紙幣束保管庫10に本発明を適用しても良い。第2乃至第4の実施の形態においても同様である。
【0118】
上述した第1の実施の形態においては、紙幣処理装置2と紙幣束保管庫10とが別体で構成された現金処理装置1に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、紙幣処理装置2の内部に紙幣束保管庫10が組み込まれた現金処理装置1に本発明を適用しても良い。第2乃至第4の実施の形態においても同様である。
【0119】
上述した第1の実施の形態においては、紙幣処理装置2と共に設置される紙幣束保管庫10に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、単独で設置される紙幣束保管庫10に本発明を適用しても良い。第2乃至第4の実施の形態においても同様である。
【0120】
上述した実施の第1の形態においては、保管部としての保管部20によって、紙幣収納装置としての紙幣束保管庫10を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、その他種々の構成でなる保管部によって、紙幣収納装置を構成しても良い。
【0121】
図14に示すように、紙幣束保管庫410には、複数の仕切部434bが鉛直方向に沿って固設されている。仕切部434b間には1つの紙幣束WBが収納される。紙幣束WBの金種は、例えば引出14毎に1金種でも良く、複数金種混合でも良い。なお、各仕切部434b間の距離を広げて、例えば2束若しくは3束又は4束若しくは5束の紙幣束WBが収納されるように仕切部434bが設けられても良い。また、紙幣束WBの収納方向が、例えば、
図2に示すように、前後方向になるように仕切部434bが設けられても良い。また、
図14の仕切部434bの上端は引出14の底面と平行だが、例えば、斜めにしても良く、つまり、仕切部434bの左右端の一方の高さを低くしても良い。なお、上記各実施の形態に記載の全部又は一部の構成を
図14に示す紙幣束保管庫410に適用しても良い。
図14に示す紙幣束保管庫410の構成により、紙幣束WBの収納及び/又は取出が改善される。従来は、特許第5409420号の
図2に示すように、紙幣束を引出から取り出す場合、使用者が収納された紙幣束を挟むクランプ部材を退避し、使用者が引出から紙幣束を取り出し、その後、使用者は、クランプ部材で再度、収納されている残りの紙幣束が倒れないようにしながら紙幣束を挟む必要があった。
【0122】
第2、第3及び第4の実施の形態では、1つの紙幣束WB毎に段差を設けて紙幣束保管庫110、210及び310に収納する場合を例に挙げて説明したが、かかる例に限定されず、複数の紙幣束WB毎に段差を設けても良い。例えば、
図10(B)と対応する部材に同一符号を付した
図15に示す保管部520のように、3つの紙幣束WB毎に段差を設けても良い。この保管部520は、複数個の仕切板534を有している。仕切板534は、仕切板34(
図10(B))と比較して、底面受け部534aが底面受け部34aと異なっている。底面受け部534aは、前後方向の長さが紙幣束WBの3束分の厚さとほぼ同一となっている。この場合、3つの紙幣束WBに限定されず、複数束毎に段差を設けれても良い。また、
図11等に示す前端面受け部35、押板42又は束セット検知センサ44のうち少なくとも一つを保管部520に設けても良い。かかる構成により、保管部520における深さである上下方向の長さを、保管部120、220及び320(
図9~
図13)よりも短くできる。
【0123】
本発明は、上述した実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態にも本発明の適用範囲が及ぶ。また、本発明は、上述した実施の形態及び上述した他の実施の形態のうち任意の実施の形態に記載された構成の一部を抽出し、上述した実施の形態及び他の実施の形態のうちの任意の実施の形態の構成の一部と置換・転用する場合や、該抽出された構成の一部を任意の実施の形態に追加する場合にも本発明の適用範囲が及ぶものである。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、例えば使用者との間で硬貨に関する取引処理を行う硬貨入出金装置等で利用できる。
【符号の説明】
【0125】
1、101、201、301……現金処理装置、2……紙幣処理装置、10、110、210、310、410……紙幣束保管庫、12……筐体、14……引出、16……囲壁部、16R……右側板、16L……左側板、16F……前側板、16B……後側板、16S……引出内部空間、16H……把持部、18……スライドレール、20、20L、20R、120、220、320、520……保管部、22L、22R、22……側壁、22a……鉛直部、22b……ガイド部、22c……孔部、24……背板、24a……底面受け部、24b……背面受け部、24c……額面表示部、26……仕切板、26a……下側板部、26a1……紙幣束受け部、26a2……入れ子部、26a3……側壁挿通突起、26b……仕切部、26b1……リブ、28……紙幣束収納空間、30……束セット検知センサ、34、234L、234R、234、334……仕切板、234a、334aL、334aR……押板通過部、34a……底面受け部、34b、434b……仕切部、35……前端面受け部、40、340L、340R……背板、42、342L、342R……押板、44、344……束セット検知センサ、44e……発光部、44r……受光部、HSP……段差高さ、HPK……金種印刷部高さ、WBa、WBb、WB……紙幣束、EF…紙幣束端面、FS……表面、RS……裏面、BL……紙幣、PK……金種印刷部、ST……帯封、P……印字部。