(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】吸気管構造
(51)【国際特許分類】
F02M 35/10 20060101AFI20250212BHJP
【FI】
F02M35/10 301Q
F02M35/10 101E
(21)【出願番号】P 2021069121
(22)【出願日】2021-04-15
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 保秀
(72)【発明者】
【氏名】吉川 高史
(72)【発明者】
【氏名】山内 武俊
(72)【発明者】
【氏名】濱詰 嘉浩
(72)【発明者】
【氏名】加藤 二郎
(72)【発明者】
【氏名】東尾 理克
(72)【発明者】
【氏名】砂流 雄剛
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 賢一
(72)【発明者】
【氏名】藤山 智彰
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-141784(JP,A)
【文献】特開2002-309948(JP,A)
【文献】特開2010-024861(JP,A)
【文献】特開2021-021343(JP,A)
【文献】特開2013-227961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 29/00-29/08、33/00-41/10
F02M 35/00-35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ過給機のコンプレッサと、該コンプレッサよりも吸気下流側に配置されたインタークーラとを有するエンジンの吸気管構造であって、
吸気管における、前記コンプレッサよりも吸気下流側でかつ前記インタークーラよりも吸気上流側の位置に配置され
たスロットル弁と、
前記吸気管における前記コンプレッサと前記スロットル弁との間の部分である中間吸気管に沿うようにかつ該中間吸気管から膨出するように設けられ、中間吸気管の容積を拡張させる拡張部と、を備え、
前記中間吸気管は曲部を有し、
前記拡張部は前記曲部の内弧側に形成されており、
前記中間吸気管における、吸気流が壁面から剥離する剥離領域には、前記拡張部に連通する第1の連通孔が設けられて
おり、
前記第1の連通孔は、前記曲部に形成されていることを特徴とする吸気管構造。
【請求項2】
ターボ過給機のコンプレッサと、該コンプレッサよりも吸気下流側に配置されたインタークーラとを有するエンジンの吸気管構造であって、
吸気管における、前記コンプレッサよりも吸気下流側でかつ前記インタークーラよりも吸気上流側の位置に配置されたスロットル弁と、
前記吸気管における前記コンプレッサと前記スロットル弁との間の部分である中間吸気管に沿うようにかつ該中間吸気管から膨出するように設けられ、中間吸気管の容積を拡張させる拡張部と、を備え、
前記中間吸気管は、曲部と、前記曲部の下流端から直線的に延びる直線部と、を有し、
前記拡張部は、前記曲部の内弧側でかつ前記曲部及び前記直線部に沿うように形成されており、
前記中間吸気管における、吸気流が壁面から剥離する剥離領域には、前記拡張部に連通する第1の連通孔が設けられ、
前記第1の連通孔は、前記直線部における、前記曲部の近傍部分に形成されていることを特徴とする吸気管構造。
【請求項3】
請求項2に記載の吸気管構造において、
前記直線部における前記第1の連通孔に対して吸気下流側に離れた位置には、前記拡張部に連通する第2の連通孔が設けられていることを特徴とする吸気管構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の吸気管構造において、
前記拡張部内には、該拡張部の長手方向と交差する方向に延びる複数のリブが設けられていることを特徴とする吸気管構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の吸気管構造において、
前記拡張部は、前記中間吸気管と一体に形成されかつ該中間吸気管とは反対側の部分が開口する本体部と、該本体部とは別体で構成されかつ該本体部の開口を塞ぐ蓋部とにより構成されていることを特徴とする吸気管構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の吸気管構造において、
前記コンプレッサは、前記エンジンの上部における排気側に設けられ、
前記スロットル弁は、前記エンジンの上部における吸気側に設けられ、
前記中間吸気管は、エンジン本体の上側に、平面視で該エンジン本体を横断するように設けられており、
前記曲部は、前記エンジン本体の気筒列方向に曲がっており、
前記拡張部は、前記中間吸気管から前記気筒列方向に膨出するように、前記曲部の内弧側に設けられていることを特徴とする吸気管構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、吸気管構造に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、吸気管内の吸気の流れを円滑するために、吸気管にチャンバを取り付ける構造が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の吸気管構造では、吸気マニホルドに連通する吸気ダクト本体の中途に吸気チャンバを設け、吸気チャンバに挿通した吸気ダクト本体に屈曲部位を形成すると共に、吸気チャンバに臨まされている屈曲部位の外側部を除いた部位に上記吸気チャンバ内に開口する連通孔を複数穿設している。
【0004】
特許文献1の吸気管構造では、吸気流速の比較的緩やかな中低速域において、吸気を連通孔から吸気チャンバに吐出させることで吸気脈動を低減するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では、エンジンをコンパクトに構成しつつ、エンジンの出力を出来る限り高くするために、エンジンにターボ過給機を設けることがある。エンジンにターボ過給機を設ける場合には、吸気管におけるターボ過給機のコンプレッサよりも吸気下流側にインタークーラを設けるのが一般的である。このとき、スロットル弁をインタークーラよりも吸気下流側に設けるときには、コンプレッサからスロットル弁までの吸気管の容積をある程度大きくできるが、スロットル弁をインタークーラよりも吸気上流側に設けるときには、コンプレッサからスロットル弁までの吸気管の容積が小さくなる。
【0007】
コンプレッサからスロットル弁までの吸気管の容積が小さい場合、スロットル弁が閉じ気味であるときには、コンプレッサからスロットル弁までの吸気管内の圧力が高くなる。このため、エンジンの過渡時において、スロットル弁が空き状態になったときに、高圧の吸気が一気に気筒内に流れ込んでしまいハンチングが発生するおそれがある。ハンチングを抑制するために、コンプレッサよりも吸気下流側の吸気を抜く構成も検討されているが、その場合、コンプレッサからスロットル弁まで吸気管に存在する吸気が少なくなるため、エンジンの過渡時において、スムーズな吸気流動を発生させることが困難になる。
【0008】
特に、コンプレッサからスロットル弁まで吸気管に曲部が存在すると、曲部では吸気の剥離が発生して、吸気流が乱れてしまうため、過渡時での制御が困難になる。この結果、ハンチングが発生しやすくなってしまう。
【0009】
特許文献1では、吸気管におけるスロットル弁よりも上流側の部分にチャンバを設けているが、ターボ過給機やインタークーラとの位置関係については、全く考慮されていない。また、仮に、特許文献1に記載のようなチャンバを、吸気管におけるコンプレッサからスロットル弁までの部分に配置したとしても、特許文献1のチャンバは吸気管を覆う必要があり、エンジン全体の大型化が避けられず、コンパクトな構成を実現することが困難になる。
【0010】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エンジンの構成をコンパクトにしつつ、過渡時における吸気流動を安定させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、ここに開示された第1の技術では、ターボ過給機のコンプレッサと、該コンプレッサよりも吸気下流側に配置されたインタークーラとを有するエンジンの吸気管構造を対象として、吸気管における、前記コンプレッサよりも吸気下流側でかつ前記インタークーラよりも吸気上流側の位置に配置されたスロットル弁と、前記吸気管における前記コンプレッサと前記スロットル弁との間の部分である中間吸気管に沿うようにかつ該中間吸気管から膨出するように設けられ、中間吸気管の容積を拡張させる拡張部と、を備え、前記中間吸気管は曲部を有し、前記拡張部は前記曲部の内弧側に形成されており、前記中間吸気管における、吸気流が壁面から剥離する剥離領域には、前記拡張部に連通する第1の連通孔が設けられており、前記第1の連通孔は、前記曲部に形成されている、という構成とした。
【0012】
この構成によると、スロットル弁が、コンプレッサよりも吸気下流側でかつインタークーラよりも吸気上流側に配置されているため、吸気管におけるコンプレッサからスロットル弁までの間の部分である中間吸気管自体は、比較的容積が小さくなっている。これに対して、拡張部を設けることで、拡張部の分だけ中間吸気管の容積を増大させることができる。これにより、スロットル弁が閉じ気味のときでも、中間吸気管内が高圧になるのを出来る限り抑制することができる。
【0013】
また、エンジンの過渡時においては、拡張部から空気を吸い出すことで吸気流の乱れを抑制して、スムーズな吸気流動を発生させることができる。特に、第1の連通孔は、吸気流が壁面から剥離する剥離領域に設けられているため、吸気の剥離により生じる負圧を利用して拡張部から吸気を効率良く吸い出すことができる。
【0014】
さらに、拡張部は中間吸気管における曲部の内弧側に設けられているため、拡張部によりエンジンが大型化するのを出来る限り抑制することができる。
【0015】
したがって、エンジンの構成をコンパクトにしつつ、過渡時における吸気流動を安定させることができる。
【0016】
前記課題を解決するために、ここに開示された第2の技術では、ターボ過給機のコンプレッサと、該コンプレッサよりも吸気下流側に配置されたインタークーラとを有するエンジンの吸気管構造を対象として、吸気管における、前記コンプレッサよりも吸気下流側でかつ前記インタークーラよりも吸気上流側の位置に配置されたスロットル弁と、前記吸気管における前記コンプレッサと前記スロットル弁との間の部分である中間吸気管に沿うようにかつ該中間吸気管から膨出するように設けられ、中間吸気管の容積を拡張させる拡張部と、を備え、前記中間吸気管は、曲部と、前記曲部の下流端から直線的に延びる直線部と、を有し、前記拡張部は、前記曲部の内弧側でかつ前記曲部及び前記直線部に沿うように形成されており、前記中間吸気管における、吸気流が壁面から剥離する剥離領域には、前記拡張部に連通する第1の連通孔が設けられ、前記第1の連通孔は、前記直線部における、前記曲部の近傍部分に形成されている、という構成とした。
【0017】
この構成によると、曲部の下流端から直線部が延びているため、曲部と直線部との境界付近において、吸気の剥離が特に生じ易い。これに対して、第1の連通孔が、直線部における曲部の近傍部分に形成されているため、吸気の剥離による負圧を利用して、拡張部から吸気を効率良く吸い出すことができる。これにより、過渡時における吸気流動をより安定させることができる。
【0018】
前記一実施形態において、前記直線部における前記第1の連通孔に対して吸気下流側に離れた位置には、前記拡張部に連通する第2の連通孔が設けられている、という構成でもよい。
【0019】
この構成によると、第2の連通孔からも吸気を吸い出すことができるため、過渡時における吸気流動をより安定させることができる。
【0020】
前記吸気管構造において、前記拡張部内には、該拡張部の長手方向と交差する方向に延びる複数のリブが設けられている、という構成でもよい。
【0021】
この構成によると、拡張部から空気を吸い出す際に生じる膜振動を抑制することができ、放射音の発生を抑制することができる。また、拡張部の剛性を高くすることができる。
【0022】
前記吸気管構造において、前記拡張部は、前記中間吸気管と一体に形成されかつ該中間吸気管とは反対側の部分が開口する本体部と、該本体部とは別体で構成されかつ該本体部の開口を塞ぐ蓋部とにより構成されている、という構成でもよい。
【0023】
この構成によると、エンジンの構成に合わせて、蓋部の容積を変更することで、拡張部の容積を容易に変更することができる。この結果、種々のエンジンの構成をコンパクトにしつつ、過渡時における吸気流動を安定させることができる。
【0024】
前記吸気管構造において、前記コンプレッサは、前記エンジンの上部における排気側に設けられ、前記スロットル弁は、前記エンジンの上部における吸気側に設けられ、前記中間吸気管は、エンジン本体の上側に、平面視で該エンジン本体を横断するように設けられており、前記曲部は、前記エンジン本体の気筒列方向に曲がっており、前記拡張部は、前記中間吸気管から前記気筒列方向に膨出するように、前記曲部の内弧側に設けられている、という構成でもよい。
【0025】
すなわち、コンプレッサとスロットル弁との両方がエンジンの上部に設けられ、中間吸気管がエンジン本体を横断するように配置されているため、中間吸気管の長さが短くなる。このため、エンジンの構成はよりコンパクトになるが、中間吸気管の容積は特に小さくなりやすい。したがって、拡張部を設けることにより、エンジンの過渡時における吸気流動を安定化させる効果を適切に発揮することができる。
【0026】
また、曲部は気筒列方向に曲がっており、拡張部は、中間吸気管から気筒列方向に膨出しているため、エンジンが高さ方向に拡大されるのを適切に抑制することができる。この結果、エンジンの構成をよりコンパクトにすることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、エンジンの構成をコンパクトにしつつ、過渡時における吸気流動を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、例示的な実施形態に係る吸気管構造を有するエンジンの概略図である。
【
図4】
図4は、拡張部を含む吸気管の平面図である。
【
図5】
図5は、拡張部を通る水平面で切断した断面図である。
【
図6】
図6は、吸気の流れを示す模式図であり、(a)は拡張部がない場合を示し、(b)は拡張部を設けた場合を示す。
【
図7】
図7は、変形例に係る吸気管構造の拡張部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明では、車両に対する前、後、左、右、上及び下を、それぞれ単に前、後、左、右、上及び下という。左右方向は、後側から前側を見たときの左側を左といい、右側を右という。
【0030】
図1は、例示的な実施形態に係る吸気管構造を有するエンジン1を概略的に示す。エンジン1は、エンジン本体2を有する。エンジン本体2は、例えば、直列に配置された6つの気筒(図示省略)を有する。エンジン本体2は、本実施形態では、車両前部のエンジンルームに気筒列方向が前後方向となるように縦置きされている。
【0031】
エンジン1は、エンジン本体2のシリンダヘッド2aに接続される吸気管10と排気管20とを有する。吸気管10は、
図2及び
図3に示すように、その下流端がシリンダヘッド2aの左側側面に接続されている。吸気管3は、
図1~
図3に示すように、その管内に、ターボ過給機4のコンプレッサ4aと、スロットル弁5と、インタークーラ6とを有する。また、吸気管10には、後述する拡張部30が設けられている。これらは、吸気管10内に配置されるデバイスの一部を例示するだけであり、これら以外のデバイスが吸気管10内に配置されるのを排除しない。また、本実施形態において、吸気管10は、吸気通路を構成する部分の全てを含むものであって、コンプレッサ4aやスロットル弁5を配置する部分が室状になっていたとしても、それらの部分も吸気管10に含まれる。
【0032】
コンプレッサ4aは、排気によりタービン4bが回転することにより回転され、吸気管10に導入された吸気を圧縮して吸気下流側に放出する。インタークーラ6は、コンプレッサ4aよりも吸気下流側に配置されており、コンプレッサ4aにより圧縮された吸気を冷却する。インタークーラ6は、空冷式であっても水冷式であってもよい。スロットル弁5は、吸気管10内における、コンプレッサ4aよりも吸気下流側でかつインタークーラ6よりも吸気上流側の位置に配置されている。スロットル弁5は、車室内に配置されたアクセルペダルを踏み込みに応じて開度を変更して、エンジン本体2に導入する吸気量を調整する。
【0033】
排気管20は、その上流端がシリンダヘッド2aの右側側面に接続されている。排気管20は、その管内に、ターボ過給機4のタービン4bを有する。タービン4bは、排気管20内に配置されるデバイスの一部を例示するだけであり、タービン4b以外のデバイスが排気管20内に配置されるのを排除しない。
【0034】
図2及び
図3に示すように、吸気管10において、コンプレッサ4aからインタークーラ6までの部分は、エンジン本体2の周囲に沿って配置されている。具体的には、コンプレッサ4aは、エンジン1の上部における右側(排気側)に設けられ、スロットル弁5は、エンジン1の上部における左側(吸気側)に設けられ、インタークーラ6は、エンジン1の左側(吸気側)におけるスロットル弁5よりも下側の位置に設けられている。吸気管10は、コンプレッサ4aが設けられた位置からスロットル弁5が設けられた位置までを結ぶ第1中間吸気管11と、スロットル弁5が設けられた位置からインタークーラ6が設けられた位置までを結ぶ第2中間吸気管12とを有する。
【0035】
第1中間吸気管11は、エンジン本体2の上側、特にシリンダヘッド2aの上側に、平面視で該エンジン本体2を横断するように設けられている。コンプレッサ4a及びスロットル弁5がエンジン1の上部に設けられているため、第1中間吸気管11は比較的短くなっている。第1中間吸気管11は樹脂で構成されている。
【0036】
第2中間吸気管12は、スロットル弁5の位置から下側に向かってに延びた後、前側に向かって屈曲して延びている。第2中間吸気管12は樹脂で構成されている。
【0037】
図示は省略するが、吸気管10は、コンプレッサ4aの位置よりも吸気上流側の通路を形成する上流吸気管を有する。上流吸気管は、コンプレッサ4aの位置から後側に向かって延びた後、エンジン本体2を迂回するように左側及び前側に向かって延びている。
図2及び
図3では、上流吸気管の吸気下流側の端部のみを示している。
【0038】
本実施形態では、特に第1中間吸気管11の構成が工夫されている。以下、第1中間吸気管11について詳細に説明する。
【0039】
第1中間吸気管11は、
図3~
図5に示すように、エンジン本体2の気筒列方向に屈曲する屈曲部11aと、屈曲部11aの吸気下流側の端部から直線的に延びる直線部11bとを有する。屈曲部11aは、後側に向かって屈曲している。直線部11bは、屈曲部11aの吸気下流側の端部に連続するように、左側に向かって後側に傾斜して延びている。
【0040】
第1中間吸気管11における屈曲部11aの内弧側の部分、つまり、第1中間吸気管11の後側の部分には、第1中間吸気管11の容積を拡張させる拡張部30が設けられている。拡張部30は、第1中間吸気管11の屈曲部11a及び直線部11bに沿うようにかつ第1中間吸気管11から後側に膨出するように設けられている。拡張部30は、樹脂で構成されている。
【0041】
図4及び
図5に示すように、拡張部30は、第1中間吸気管と一体に形成されかつ第1中間吸気管11とは反対側(後側)の部分が開口する本体部31と、本体部31とは別体で構成されかつ本体部31の開口を後側から塞ぐ蓋部32とにより構成されている。
【0042】
本体部31の第1中間吸気管11側の端部は、全体に亘って、第1中間吸気管11と一体に形成されている。本体部31は、
図4及び
図5に示すように、直線部11bの管軸方向と略直交する方向に膨出している。本体部31の開口端は、平面視で右側から前記管軸方向と平行に延びる第1平行部31aと、平面視で第1平行部31aの左側端部から左側に向かって、第1中間吸気管11に近づくように傾斜して延びる傾斜部31bと、平面視で傾斜部31bの左側端部から前記管軸方向と平行に延びる第2平行部31cとを有する。本体部31の開口端には、フランジ31dが設けられている。本体部31の外周面全体には、複数の外側リブ31eが編み目状に形成されている(
図4では、上面部分の外側リブ31eのみを示す)。
【0043】
蓋部32は、
図5に示すように、本体部31側に開口を有する形状をなしている。
図3に示すように、蓋部32における開口とは反対側の部分(後側の部分)は、周囲に存在する部品を避けるように湾曲及び傾斜した形状をなしている。蓋部32の開口端には、本体部31のフランジ31dに対応するフランジ32aが形成されている。蓋部32の外周面には、複数の外側リブ32bが形成されている。
【0044】
本体部31と蓋部32とは、互いのフランジ31d,32aとを重ね合わせて、フランジ31d,32a同士を全周に亘って溶着させることで、拡張部30を形成している。これにより、拡張部30は、第1中間吸気管11以外には連通しないようになっている。
【0045】
図5に示すように、拡張部30の内部において、本体部31には、拡張部30の長手方向と交差する方向に向かって、詳しくは蓋部32側に向かって延びる複数(ここでは3つ)の内側リブ31fが設けられている。内側リブ31fは、拡張部30の長手方向において、第1平行部31aの位置に1つ、傾斜部31bの位置に1つ、第2平行部31cの位置に1つ設けられている、各内側リブ31fの蓋部32側の端部は、本体部31の開口までは到達せず、該開口よりも第1中間吸気管11側にそれぞれ位置している。各内側リブ31fの第1中間吸気管11側の端部は、第1中間吸気管11と一体になっている。拡張部30の内部において、蓋部32には、拡張部30の長手方向と交差する方向に向かって、詳しくは本体部31に向かって延びる複数(ここでは2つ)の内側リブ32cが設けられている。各内側リブ32cは、拡張部30の長手方向において、本体部31の内側リブ31fとは僅かに位置をずらして設けられている。各内側リブ32cの本体部31側の端部は、蓋部32の開口までは到達せず、該開口の手前にそれぞれ位置している。これにより、本体部31の内側リブ31fと蓋部32の内側リブ32cとの間には隙間が形成されるようになっている。
【0046】
第1中間吸気管11における、屈曲部11aの吸気下流側でかつ吸気流が壁面から剥離する剥離領域Rには、拡張部30内に連通する連通孔33が設けられている。具体的には、連通孔33は、直線部11bにおける屈曲部11aの近傍部分に形成されている。連通孔33が設けられていることで、吸気が第1中間吸気管11を通過するときには、拡張部30内から空気を吸い出して、吸気の流れをスムーズにすることができる。
【0047】
図6には、吸気が吸気管の曲部を通過するときの吸気の流れを示す。すなわち、
図6(a)に示すように、吸気が曲部を通過するときには、曲部の内弧側で吸気の剥離が生じる。仮に、連通孔33が設けられていない場合、吸気の剥離が生じた領域では、吸気の剥離により渦流が発生して、吸気の流れを乱してしまう。一方で、
図6(b)に示すように、剥離領域に連通孔33が設けられていれば、吸気の剥離が生じたときに、吸気の剥離により生じる負圧を利用して連通孔33から空気を吸い出すことができる。これにより、渦流が広範囲に形成されるのを抑制して、吸気流の乱れを小さくすることができる。これにより、吸気の流れをスムーズにすることができる。
【0048】
ここで、本実施形態のように、スロットル弁5がインタークーラ6よりも吸気上流側に配置されていると、吸気管10におけるコンプレッサ4aからスロットル弁5までの間の部分(ここでは、第1中間吸気管11に相当)の容量が小さくなる。特に、本実施形態のように、コンプレッサ4a及びスロットル弁5がエンジン1の上部に位置し、第1中間吸気管11がエンジン本体2の上側を横断するように配置されていると、第1中間吸気管11が短くなるため、第1中間吸気管11の容量が小さくなる。仮に、拡張部30が設けられておらず、第1中間吸気管11の容積が小さい場合、スロットル弁5が閉じ気味であるときには、第1中間吸気管11内の圧力が高くなる。特に、ターボ過給機4は、アクセルペダルの踏み込み量が0になったとしても、慣性により回転するため、第1中間吸気管11内は、コンプレッサ4aにより圧縮された吸気が押し込まれて高圧になる。これにより、エンジン1の過渡時において、スロットル弁5が空き状態になったときには、高圧の吸気が一気に気筒内に流れ込んでしまいハンチングが発生するおそれがある。ハンチングを抑制するために、第1中間吸気管11の吸気を抜いて第1中間吸気管11の圧力を下げる構成が考えられるが、その場合、第1中間吸気管11に存在する吸気量が少なくなるため、エンジン1の過渡時において、スムーズな吸気流動を発生させることが困難になる。特に、本実施形態のように、第1中間吸気管11に屈曲部11aが存在すると、屈曲部11aでは吸気の剥離が発生して、吸気流が乱れてやすいため、過渡時での制御が困難になる。この結果、ハンチングが発生しやすくなってしまう。
【0049】
これに対して、本実施形態では、拡張部30を設けるとともに、直線部11bにおける剥離領域Rに、拡張部30内に連通する連通孔33を設けている。これにより、拡張部30の分だけ第1中間吸気管11の容積を増大させることができる。これにより、スロットル弁5が閉じ気味のときでも、第1中間吸気管11内が高圧になるのを出来る限り抑制することができる。また、エンジン1の過渡時においては、屈曲部11aでの吸気の剥離により生じる負圧を利用して拡張部30から空気を吸い出すことで吸気流の乱れを抑制して、スムーズな吸気流動を発生させることができる。さらに、拡張部30は第1中間吸気管11における屈曲部11aの内弧側に設けられているため、拡張部30によりエンジン1が大型化するのを出来る限り抑制することができる。したがって、エンジン1の構成をコンパクトにしつつ、過渡時における吸気流動を安定させることができる。
【0050】
また、本実施形態では、拡張部30は、第1中間吸気管11と一体に形成されかつ第1中間吸気管11とは反対側の部分が開口する本体部31と、本体部31とは別体で構成されかつ本体部31の開口を塞ぐ蓋部32とにより構成されている。これにより、エンジン1の構成に合わせて、蓋部32の容積を変更することで、拡張部30の容積を容易に変更することができる。この結果、種々のエンジン1の構成をコンパクトにしつつ、過渡時における吸気流動を安定させることができる。
【0051】
また、本実施形態では、拡張部30内には、拡張部30の長手方向と交差する方向に延びる複数の内側リブ31f、32cが設けられている。この構成によると、拡張部30から空気を吸い出す際に生じる膜振動を抑制することができ、放射音の発生を抑制することができる。また、拡張部30の剛性を高くすることができる。
【0052】
(変形例)
図7は、本実施形態の変形例を示す。この変形例では、第1中間吸気管11の構成が前記実施形態とは異なる。具体的には、
図7に示すように、第1中間吸気管11の直線部11bおける連通孔33に対して吸気下流側に離れた位置に、拡張部30に連通する下流側連通孔234が設けられている点で前記実施形態とは異なる。下流側連通孔234は、拡張部30における吸気流れ方向の下流側端部と直線部11bとを連通している。下流側連通孔234を設けることにより、下流側連通孔234からも吸気を吸い出すことができる。これにより、エンジン1の過渡時における吸気流動をより安定させることができる。
【0053】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0054】
例えば、前述の実施形態において、連通孔33は、第1中間吸気管11における屈曲部11aの吸気下流側の剥離領域Rに1つだけ設けられていた。これに限らず、剥離領域Rに設けるのであれば、連通孔33を複数設けてもよい。
【0055】
また、前述の実施形態の変形例において、下流側連通孔234は1つだけ設けられていた。これに限らず、直線部11bにおける連通孔33に対して吸気下流側に離れた位置であれば、下流側連通孔234を複数設けてもよい。
【0056】
また、前述の実施形態において、第1中間吸気管11は、曲部として屈曲部11aを有していた。これに限らず、曲部は気筒列方向に湾曲する湾曲部であってもよい。また、第1中間吸気管11は、直線部11bを有さずに湾曲部のみから構成されていてもよい。この場合には、連通孔33は、第1中間吸気管11における湾曲部の吸気下流側の剥離領域に設けられる。
【0057】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
ここに開示された技術は、吸気管内に、ターボ過給機のコンプレッサと、コンプレッサよりも吸気下流側に配置されたインタークーラとを有するエンジンの吸気管構造として有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 エンジン
2 エンジン本体
4 ターボ過給機
4a コンプレッサ
5 スロットル弁
6 インタークーラ
10 吸気管
11 第1中間吸気管
11a 屈曲部
11b 直線部
30 拡張部
31 本体部
31f 内側リブ
32 蓋部
32c 内側リブ
33 連通孔(第1の連通孔)
234 下流側連通孔(第2の連通孔)