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特許7632024電池モジュール管理システム、および電池モジュール管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】電池モジュール管理システム、および電池モジュール管理方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20250212BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20250212BHJP
   H01M 10/6557 20140101ALI20250212BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20250212BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20250212BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20250212BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20250212BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20250212BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
H01M10/48 Z
H01M10/613
H01M10/6557
H01M10/625
H01M10/6568
H01M10/633
H01M10/651
H01M10/48 301
H01M10/42 P
H02J7/00 Y
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021071170
(22)【出願日】2021-04-20
(65)【公開番号】P2022165709
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】樋口 宗隆
(72)【発明者】
【氏名】花岡 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 敏貴
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-36397(JP,A)
【文献】特開2012-114030(JP,A)
【文献】特開2020-24808(JP,A)
【文献】特開2015-198085(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0017502(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H01M 10/613
H01M 10/6557
H01M 10/625
H01M 10/6568
H01M 10/633
H01M 10/651
H01M 10/42
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルが所定方向に並んで配置された電池モジュールを管理する管理システムであって、
隣接する2つの前記電池セルの間を通るように配策され、当該電池セルの間に冷媒を循環させる冷媒配管であって、前記電池セルの膨張により前記冷媒の流路が小さくなる方向に変形可能な弾性を有する冷媒配管と、
前記冷媒に混入されて前記冷媒とともに前記冷媒配管を循環する複数の粒子と、
前記粒子を含む前記冷媒または前記冷媒の流れに関する物理的なパラメータを検出する検出部と、
前記物理的なパラメータに基づいて、前記複数の電池セルの中に劣化により膨張した電池セルが存在していることを判定する判定部と
を備える、
ことを特徴とする電池モジュール管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電池モジュール管理システムにおいて、
前記検出部は、所定の位置を通過する前記粒子の数を検出し、
前記判定部は、前記粒子の数の減少に基づいて、前記複数の電池セルの中に劣化により膨張した電池セルが存在していることを判定する
ことを特徴とする電池モジュール管理システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電池モジュール管理システムにおいて、
前記複数の電池セルのそれぞれに設けられ、各電池セルの温度を検出する温度センサと、
前記電池セルの温度に基づいて膨張した電池セルを特定する特定部と
をさらに備える、
ことを特徴とする電池モジュール管理システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電池モジュール管理システムにおいて、
前記粒子は、所定温度以上で溶融する性質を有する、
ことを特徴とする電池モジュール管理システム。
【請求項5】
請求項1に記載の電池モジュール管理システムにおいて、
前記冷媒配管は、透明または半透明であり、
前記粒子は、前記電池セルの膨張に伴って前記冷媒配管の内部に当該粒子が詰まった場合に前記粒子同士の接触により破壊可能な強度を有する中空の外殻体と、前記外殻体内に封入された着色材料とから構成され、
前記検出部は、前記冷媒の色を検出し、
前記判定部は、前記冷媒の色に基づいて、前記複数の電池セルの中に劣化により膨張した電池セルが存在していることを判定する、
ことを特徴とする電池モジュール管理システム。
【請求項6】
請求項5に記載の電池モジュール管理システムにおいて、
前記検出部は、前記冷媒配管の全体における前記冷媒の色を監視し、
前記管理システムは、前記冷媒の色が変化した位置を特定する特定部をさらに備える、
ことを特徴とする電池モジュール管理システム。
【請求項7】
複数の電池セルが所定方向に並んで配置された電池モジュールを管理する管理システムであって、
前記複数の電池セルのそれぞれの外面に個別に沿うように並列に配策され、各電池セルに冷媒を循環させる冷媒配管であって、前記電池セルの膨張により前記冷媒の流路が小さくなる方向に変形可能な弾性を有する冷媒配管と、
前記冷媒に混入されて前記冷媒とともに前記冷媒配管を循環する複数の粒子と、
前記複数の電池セルのそれぞれに設けられ、各電池セルの温度を検出する温度センサと、
前記電池セルの温度に基づいて膨張した電池セルを特定する特定部と
を備える、
ことを特徴とする電池モジュール管理システム。
【請求項8】
複数の電池セルが所定方向に並んで配置された電池モジュールを管理する管理方法であって、
隣接する2つの前記電池セルの間を通るように配策され、当該電池セルの間に冷媒を循環させる冷媒配管であって、前記電池セルの膨張により前記冷媒の流路が小さくなる方向に変形可能な弾性を有する冷媒配管を準備する準備行程と、
前記冷媒に複数の粒子を混入し、当該粒子を前記冷媒とともに前記冷媒配管を循環させる粒子混入行程と、
前記粒子を含む前記冷媒または前記冷媒の流れに関する物理的なパラメータを検出するパラメータ検出行程と、
前記物理的なパラメータに基づいて、前記複数の電池セルの中に劣化により膨張した電池セルが存在していることを判定する判定行程と
を含む、
ことを特徴とする電池モジュール管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュール管理システム、および電池モジュール管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車などでは、充放電可能な二次電池である複数の電池セルを備えた電池モジュールが搭載されている。電池セルは、長期間にわたって充放電を繰り返して使用されると劣化して膨張する傾向がある。劣化により膨張した電池セルは、交換の必要があるために早期に検出する必要がある。
【0003】
そこで、特許文献1記載の電池モジュール管理システムでは、複数の電池セルのそれぞれの状態を検知するために、各電池セルの歪みを含む複数の動作パラメータを検出するための複数のセンサが取り付けられ、各センサからの信号に基づいて劣化して膨張した電池セルの有無を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-198085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の電池モジュール管理システムでは、電池セルが複数ある場合には、電池セルの数に比例して膨大な数のセンサが必要になり、システム全体が複雑かつ煩雑になるとともに、システムの製造コストが増大する。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、センサの数を抑えながら複数の電池セルの中に劣化で膨張した電池セルが存在していることを判定可能な電池モジュール管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係る電池モジュール管理システムは、複数の電池セルが所定方向に並んで配置された電池モジュールを管理する管理システムであって、隣接する2つの前記電池セルの間を通るように配策され、当該電池セルの間に冷媒を循環させる冷媒配管であって、前記電池セルの膨張により前記冷媒の流路が小さくなる方向に変形可能な弾性を有する冷媒配管と、前記冷媒に混入されて前記冷媒とともに前記冷媒配管を循環する複数の粒子と、前記粒子を含む前記冷媒または前記冷媒の流れに関する物理的なパラメータを検出する検出部と、前記物理的なパラメータに基づいて、前記複数の電池セルの中に劣化により膨張した電池セルが存在していることを判定する判定部とを備えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成では、電池モジュールの電池セル間に冷媒を循環させる冷媒配管を備えた構成において、当該冷媒配管を循環する冷媒に複数の粒子を混入しておくことにより、電池モジュールの複数の電池セルのいずれか1つが膨張した場合には、膨張した電池セルに隣接する位置では、電池セルの膨張に伴って冷媒配管が変形して冷媒の流路が小さくなり、流路が小さくなった部分に粒子が詰まり、冷媒の循環が滞る。冷媒の循環が滞ることにより、粒子を含む冷媒または冷媒の流れに関する物理的なパラメータ(例えば、冷媒の流量や圧力、冷媒に含まれる粒子の数、または冷媒の色(とくに濃淡)など)が変化する。そこで、上記の構成では、電池セルの膨張によって変化する上記の物理的なパラメータを検出部によって検出し、判定部は、検出された物理的なパラメータに基づいて、複数の電池セルの中に劣化により膨張した電池セルが存在していることを判定する。これにより、センサの数を抑えながら複数の電池セルの中に劣化により膨張した電池セルが存在していることを判定することが可能である。
【0009】
上記の電池モジュール管理システムにおいて、前記検出部は、所定の位置を通過する前記粒子の数を検出し、前記判定部は、前記粒子の数の減少に基づいて、前記複数の電池セルの中に劣化により膨張した電池セルが存在していることを判定するのが好ましい。
【0010】
かかる構成によれば、判定部は、検出部で検出された粒子の数の減少に基づいて、複数の電池セルの中に劣化により膨張した電池セルが存在していることを判定することが可能である。
【0011】
上記の電池モジュール管理システムにおいて、前記複数の電池セルのそれぞれに設けられ、各電池セルの温度を検出する温度センサと、前記電池セルの温度に基づいて膨張した電池セルを特定する特定部とをさらに備えるのが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、歪みセンサを用いることなく、温度センサのみで劣化により膨張した電池セルを複数の電池セルの中から特定することが可能である。すなわち、この構成では、上記のように、膨張した電池セルに隣接する位置では、冷媒配管が変形して冷媒の流路が小さくなり、流路が小さくなった部分に粒子が詰まり、冷媒の循環が滞る。したがって、膨張した電池セルは冷媒による冷却が順調にされなくなり、電池セルの温度が上昇する。特定部は、温度センセで検出された電池セルの温度に基づいて、膨張した電池セルを複数の電池セルの中から特定することが可能である。すなわち、この構成では、上記の判定部が物理的なパラメータに基づいて膨張した電池セルが存在していることを判定した場合に、さらに、特定部が電池セルの温度に基づいて、膨張した電池セルを複数の電池セルの中から特定することが可能になる。
【0013】
上記の電池モジュール管理システムにおいて、前記粒子は、所定温度以上で溶融する性質を有するのが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、電池セルの膨張に伴って冷媒配管の内部に粒子が詰まって冷媒の循環が滞った場合でも、粒子が電池セルから生じる熱によって溶融するので、冷媒流れの長期の停滞を防止することが可能である。
【0015】
上記の電池モジュール管理システムにおいて、前記冷媒配管は、透明または半透明であり、 前記粒子は、前記電池セルの膨張に伴って前記冷媒配管の内部に当該粒子が詰まった場合に前記粒子同士の接触により破壊可能な強度を有する中空の外殻体と、前記外殻体内に封入された着色材料とから構成され、前記検出部は、前記冷媒の色を検出し、前記判定部は、前記冷媒の色に基づいて、前記複数の電池セルの中に劣化により膨張した電池セルが存在していることを判定するのが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、粒子は、電池セルの膨張に伴って冷媒配管の内部に当該粒子が詰まった場合に粒子同士の接触により破壊可能な強度を有する外殻体と、外殻体内に封入される着色材料とから構成されている。電池セルの膨張に伴って冷媒配管の内部に粒子が詰まった状態では、粒子同士の接触により外殻体が破壊されて外殻体に封入された着色材料が冷媒に混入し、冷媒を着色する。判定部は、検出部で検出された冷媒の色に基づいて、複数の電池セルの中に劣化により膨張した電池セルが存在していることを判定することが可能である。
【0017】
上記の電池モジュール管理システムにおいて、前記検出部は、前記冷媒配管の全体における前記冷媒の色を監視し、前記管理システムは、前記冷媒の色が変化した位置を特定する特定部をさらに備えるのが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、検出部が冷媒配管の全体における冷媒の色を監視し、特定部が冷媒配管の全体のうち冷媒の色が変化した位置を特定することにより、膨張した電池セルを特定することが可能である。
【0019】
本発明の請求項7に係る電池モジュール管理システムは、複数の電池セルが所定方向に並んで配置された電池モジュールを管理する管理システムであって、前記複数の電池セルのそれぞれの外面に個別に沿うように並列に配策され、各電池セルに冷媒を循環させる冷媒配管であって、前記電池セルの膨張により前記冷媒の流路が小さくなる方向に変形可能な弾性を有する冷媒配管と、前記冷媒に混入されて前記冷媒とともに前記冷媒配管を循環する複数の粒子と、前記複数の電池セルのそれぞれに設けられ、各電池セルの温度を検出する温度センサと、前記電池セルの温度に基づいて膨張した電池セルを特定する特定部とを備えることを特徴とする。
【0020】
かかる構成では、電池モジュールの各電池セルに並列に冷媒を循環させる冷媒配管を備えた構成において、当該冷媒配管を循環する冷媒に複数の粒子を混入しておくことにより、電池モジュールの複数の電池セルのいずれか1つが膨張した場合には、膨張した電池セルに隣接する位置では、電池セルの膨張に伴って冷媒配管が変形して冷媒の流路が小さくなり、流路が小さくなった部分に粒子が詰まり、冷媒の循環が滞る。したがって、膨張した電池セルは冷媒による冷却が順調にされなくなり、電池セルの温度が上昇する。特定部は、温度センセで検出された電池セルの温度に基づいて、膨張した電池セルを複数の電池セルの中から特定することが可能である。これにより、歪みセンサを用いることなく、温度センサのみで劣化により膨張した電池セルを複数の電池セルの中から特定することが可能である。
【0021】
本発明の電池モジュール管理方法は、複数の電池セルが所定方向に並んで配置された電池モジュールを管理する管理方法であって、隣接する2つの前記電池セルの間を通るように配策され、当該電池セルの間に冷媒を循環させる冷媒配管であって、前記電池セルの膨張により前記冷媒の流路が小さくなる方向に変形可能な弾性を有する冷媒配管を準備する準備行程と、前記冷媒に複数の粒子を混入し、当該粒子を前記冷媒とともに前記冷媒配管を循環させる粒子混入行程と、前記粒子を含む前記冷媒または前記冷媒の流れに関する物理的なパラメータを検出するパラメータ検出行程と、前記物理的なパラメータに基づいて、前記複数の電池セルの中に劣化により膨張した電池セルが存在していることを判定する判定行程とを含むことを特徴とする。
【0022】
かかる特徴によれば、準備行程において、電池セルの膨張により冷媒の流路が小さくなる方向に変形可能な弾性を有する冷媒配管を準備する。粒子混入行程において、電池モジュールが備えている冷媒配管を循環する冷媒に複数の粒子を混入する。これにより、電池モジュールの複数の電池セルのいずれか1つが膨張した場合には、膨張した電池セルに隣接する位置では、電池セルの膨張に伴って冷媒配管が変形して冷媒の流路が小さくなり、流路が小さくなった部分に粒子が詰まり、冷媒の循環が滞る。冷媒の循環が滞ることにより、粒子を含む冷媒または冷媒の流れに関する物理的なパラメータ(例えば、冷媒の流量や圧力、冷媒に含まれる粒子の数、または冷媒の色(とくに濃淡)など)が変化する。パラメータ検出行程では、電池セルの膨張によって変化する上記の物理的なパラメータを検出し、判定行程において、検出した物理的なパラメータに基づいて、複数の電池セルの中に劣化により膨張した電池セルが存在していることを判定する。これにより、センサの数を抑えながら複数の電池セルの中に劣化により膨張した電池セルが存在していることを判定することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の電池モジュール管理システムおよび電池モジュール管理方法によれば、センサの数を抑えながら複数の電池セルの中に劣化で膨張した電池セルが存在していることを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係る電池モジュール管理システムの全体構成を示すシステム構成図である。
図2図1の冷媒配管のうち通常時の電池セルの側面に沿って配置された複数の分岐管、および分岐管を流れる冷媒および粒子を示す説明図である。
図3図2の分岐管の内部を冷媒および粒子が流れる状態を示す断面説明図である。
図4図1の電池モジュールの複数の電池セルのうちの1つが劣化して膨張することにより、流路が小さくなった冷媒配管内部に粒子が詰まっている状態を示す説明図である。
図5図4の膨張した電池セルの側面に生じる膨張部によって分岐管の内部に粒子が詰まっている状態を示す説明図である。
図6図5の分岐管の内部で粒子が詰まっている状態を示す断面説明図である。
図7図1の第1実施形態に係る電池モジュール管理システムを用いた電池モジュール管理方法の手順を示すフローチャートである。
図8】本発明の第2実施形態に係る電池モジュール管理システムの全体構成を示すシステム構成図である。
図9図8の第2実施形態に係る電池モジュール管理システムを用いた電池モジュール管理方法の手順を示すフローチャートである。
図10】本発明の第3実施形態に係る電池モジュール管理システムの全体構成を示すシステム構成図である。
図11図10の粒子の構成を示す一部切欠断面図である。
図12図10の膨張した電池セルの側面に生じる膨張部によって分岐管の内部に粒子が詰まるとともに粒子の外殻体内部から流出した着色材料によって冷媒が着色された状態を示す説明図である。
図13図11の第3実施形態に係る電池モジュール管理システムを用いた電池モジュール管理方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、図1~7を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る電池モジュール管理システム12(以下、管理システム12という)について説明する。
【0026】
(管理システム12の構成)
図1に示されるように、管理システム12によって管理される電池モジュール1は、充放電可能な二次電池である複数の電池セル2が所定方向Xに並んで配置された構成を有し、後述の冷媒配管3によって、各電池セル2が冷媒20によって冷却される。電池モジュール1は、電気自動車やハイブリッド車などに搭載された状態で使用される。
【0027】
第1実施形態の管理システム12は、電池セル2の冷却用の冷媒20に粒子4を混入しておき、電池セル2が劣化により膨張した場合に当該膨張した電池セル2A(図4参照)に隣接した位置で生じる冷媒20の粒子4の詰まりによって生じる冷媒20または冷媒20の流れに関する物理的なパラメータ(具体的には、冷媒20の圧力(水圧)、流量、冷媒20に含まれる粒子4の数など)の変化により、膨張した電池セル2Aの存在を判定するシステムである。
【0028】
第1実施形態の管理システム12は、主要な構成として、冷媒20を循環させる冷媒配管3と、冷媒20に混入されて冷媒20とともに冷媒配管3を循環する複数の粒子4と、粒子4を含む冷媒20または冷媒20の流れに関する物理的なパラメータを検出する検出部(具体的には、後述の液圧計6、流量計7、および粒子数計測部8)と、膨張した電池セル2Aが存在していることを判定する判定部9を備えた制御装置10と、膨張した電池セル2Aの存在を報知する報知部11とを備える。
【0029】
冷媒配管3は、図1に示されるように、隣接する2つの電池セル2の間を通るように配策され、当該電池セル2の間に冷媒20を循環させるループ状の配管である。第1実施形態の冷媒配管3は、複数の電池セル2の間を一続きに通るように直列に配策されている。冷媒配管3内部の冷媒20および粒子4は、ポンプなどの循環器5によって所定の流れ方向Aに送られ、冷媒配管3の内部を循環する。なお、隣接する電池セル2の間には、車両走行時に振動してもセル同士が接触しないように冷媒配管3配策用の隙間を確保するためのスペーサまたは仕切りを設けるのが好ましい。
【0030】
冷媒配管3は、具体的には、図2~3に示されるように、電池セル2の側面21に沿って配置された複数の分岐管3aを有する。複数の分岐管3aは、例えば水平方向に延び、互いに上下方向に離間している。複数の分岐管3aは、シート状の集合体3bを構成し、電池セル2の側面21に当接または近接している。
【0031】
冷媒配管3は、図4~6に示されるように、電池セル2が劣化により側面21の上下方向における中間付近の部分(膨張部22)で膨張したときに、電池セル2の膨張により冷媒20の流路が小さくなる方向に変形可能な弾性を有する。冷媒配管3は、例えば、樹脂またはゴムなどの弾性材料で構成されている。
【0032】
冷媒配管3を流れる冷媒20は、電池セル2を冷却する液体であればよく、例えば水などである。
【0033】
粒子4は、冷媒20に混入されて冷媒20とともに冷媒配管3の全体にわたって循環するように冷媒20に複数混入される。粒子4は、冷媒配管3の全体にわたって均等に分布するように多数混入されるのが好ましい。粒子4は、水などの冷媒20に溶けない材料、例えば、樹脂などから構成されている。なお、粒子4は、冷媒流れの長期の停滞を防止するために、所定温度以上で溶融する性質を有するのが好ましい。
【0034】
粒子4の大きさおよび数は、変形前の通常状態の冷媒配管3の内部に詰まらず、かつ、電池セル2の膨張によって流路が小さくなるように変形したときには冷媒配管3内部に詰まるような、大きさおよび数に設定される。なお、粒子4の形状は、通常状態の冷媒配管3の内部で引っかからないように、表面が滑らかな球状またはそれに近い形状が好ましい。
【0035】
管理システム12は、上記のように、粒子4を含む冷媒20または冷媒20の流れに関する物理的なパラメータ(第1実施形態では、冷媒20の圧力、流量、および冷媒20に含まれる粒子4の数)を検出する検出部として、液圧計6、流量計7、および粒子数計測部8を備えている。
【0036】
液圧計6は、冷媒配管3の内部の水などの冷媒20の圧力(具体的には、水圧)を測定する。液圧計6は、電池セルの異常判定のために、冷媒配管3における最上流の電池セル2よりも上流側の位置に配置されるのが好ましい。
【0037】
流量計7は、冷媒配管3の内部の冷媒20の流量を測定する。
【0038】
粒子数計測部8は、当該粒子数計測部8を通過する粒子4の数を計測する。粒子数計測部8は、例えば、粒子4の通過により回転するプロペラを備え、プロペラの回転数により粒子4の数を計測する。なお、粒子数計測部8は、光学的、磁気的、電気的に粒子4の数を計測する構成であってもよい。
【0039】
流量計7および粒子数計測部8は、電池セル2の異常判定のために、冷媒配管3における最下流の電池セル2よりも下流側の位置に配置されるのが好ましい。
【0040】
制御装置10は、管理システム12の全体の制御を行う装置であり、CPUやメモリなどを備えたコンピュータによって構成されれる。制御装置10は、少なくとも判定部9を備える。
【0041】
判定部9は、上記の液圧計6、流量計7、および粒子数計測部8によって検出された物理的なパラメータ(冷媒20の圧力、流量、および冷媒20に含まれる粒子4の数)に基づいて、複数の電池セル2の中に劣化により膨張した電池セル2Aが存在していることを判定する。なお、第1実施形態の判定部9は、上記の液圧計6、流量計7、および粒子数計測部8によって検出された物理的なパラメータである冷媒20の圧力、流量、および冷媒20に含まれる粒子4の数のうちのいずれか1つに基づいて、複数の電池セル2の中に劣化により膨張した電池セル2Aが存在していることを判定すればよい。
【0042】
報知部11は、判定部9が膨張した電池セル2Aが存在していることを判定したときに、報知する構成を有する。報知部11は、例えば、電池モジュール1が搭載された車両の運転席付近に設けられたランプ、液晶パネル、またはスピーカーなどのように電池モジュール1近傍の人に光または音で報知可能な手段などによって構成される。
【0043】
(管理システム12を用いた管理方法)
上記のように構成された管理システム12を用いて、上記の電池モジュール1における膨張した電池セル2Aの存在を判定するための電池モジュール1の管理方法は、以下の手順で行われる。
【0044】
まず、隣接する2つの電池セル2の間を通るように配策され、当該電池セル2の間に冷媒20を循環させる冷媒配管3であって、電池セル2の膨張により冷媒20の流路が小さくなる方向に変形可能な弾性を有する冷媒配管3を準備する(準備行程)。
【0045】
ついで、冷媒20に複数の粒子4を混入し、当該粒子4を冷媒20とともに冷媒配管3を循環させる(粒子混入行程)。
【0046】
ついで、粒子4を含む冷媒20または冷媒20の流れに関する物理的なパラメータを検出する(パラメータ検出行程)。具体的には、図7のフローチャートのステップS1のように、上記の流量計7、液圧計6、および粒子数計測部8から、物理的なパラメータとして、冷媒20の流量、圧力(水圧)、および粒子4の数を制御装置10に読み込む。
【0047】
そして、制御装置10の判定部9は、上記の物理的なパラメータ(流量、水圧、粒子数)に基づいて、複数の電池セル2の中に劣化により膨張した電池セル2A(図4参照)が存在していることを判定する(判定行程)。具体的には、図7のフローチャートのステップS2のように、流量、水圧、および粒子数のいずれかが所定の値を下回った場合(すなわち、流量<Aまたは水圧<Bまたは粒子数<Cの場合)には、判定部9は、膨張した電池セル2Aが存在していることを判定する。
【0048】
判定部9が膨張した電池セル2Aが存在していることを判定した場合、図7のフローチャートのステップS3のように、報知部11が電池セル異常(膨張した電池セル2Aを検知したこと)を、電池モジュール1を搭載した車両の運転手などに光または音などで報知する。
【0049】
以上のように、上記の管理方法では、図4~6に示されるように、電池セル2が劣化により膨張する(膨張部22が発生する)ことによって冷媒配管3が圧迫され、膨張した電池セル2Aの周辺で粒子4が詰まってことによって生じる冷媒に関する物理的パラメータの変化、すなわち、水圧の上昇、冷媒流量の低下、または粒子数計測部8を通過する粒子数の減少のいずれかの変化に基づいて、電池モジュール1の複数の電池セル2のいずれかに膨張した電池セル2Aが存在していることを判定することが可能である。
【0050】
(第1実施形態の特徴)
(1)
第1実施形態の電池モジュール管理システム12は、複数の電池セル2が所定方向Xに並んで配置された電池モジュール1を管理する管理システム12である。管理システム12は、隣接する2つの電池セル2の間を通るように配策され、当該電池セル2の間に冷媒20を循環させる冷媒配管3であって、電池セル2の膨張により冷媒20の流路が小さくなる方向に変形可能な弾性を有する冷媒配管3と、冷媒20に混入されて冷媒20とともに冷媒配管3を循環する複数の粒子4と、粒子4を含む冷媒20または冷媒20の流れに関する物理的なパラメータ(冷媒20の圧力、流量、および粒子数)を検出する検出部としての液圧計6、流量計7、および粒子数計測部8と、上記の物理的なパラメータに基づいて、複数の電池セル2の中に劣化により膨張した電池セル2Aが存在していることを判定する判定部9とを備える。
【0051】
かかる構成では、電池モジュール1の電池セル2間に冷媒20を循環させる冷媒配管3を備えた構成において、当該冷媒配管3を循環する冷媒20に複数の粒子4を混入しておくことにより、電池モジュール1の複数の電池セル2のいずれか1つが膨張した場合には、膨張した電池セル2Aに隣接する位置では、電池セル2の膨張に伴って冷媒配管3が変形して冷媒20の流路が小さくなり、流路が小さくなった部分に粒子4が詰まり、冷媒20の循環が滞る。冷媒20の循環が滞ることにより、粒子4を含む冷媒20または冷媒20の流れに関する物理的なパラメータ(冷媒20の圧力、流量、および粒子数)が変化する。そこで、上記の構成では、電池セル2の膨張によって変化する上記の物理的なパラメータを検出部によって検出し、判定部9は、検出された物理的なパラメータに基づいて、複数の電池セル2の中に劣化により膨張した電池セル2Aが存在していることを判定する。これにより、センサの数を抑えながら複数の電池セル2の中に劣化により膨張した電池セル2Aが存在していることを判定することが可能である。
【0052】
また、上記の構成では、電池セル2の冷却機能と膨張劣化検出機能を一つの部品に統合することにより、管理システム12の構造を簡素化することが可能である。
【0053】
しかも、電池モジュール1および管理システム12全体の重量を削減でき、電池モジュール1を搭載したハイブリッド車または電気自動車の燃費または電費の向上が実現できる。
【0054】
なお、上記の第1実施形態の管理システム12は、粒子4を含む冷媒20または冷媒20の流れに関する物理的なパラメータを検出する検出部として、液圧計6、流量計7、および粒子数計測部8を備えているが、いずれか1つであっても上記の作用効果を奏することが可能である。
【0055】
(2)
第1実施形態の電池モジュール管理システム12では、検出部としての粒子数計測部8は、所定の位置を通過する粒子4の数を検出する。判定部9は、粒子4の数の減少に基づいて、複数の電池セル2の中に劣化により膨張した電池セル2Aが存在していることを判定する。
【0056】
かかる構成によれば、判定部9は、検出部で検出された粒子4の数の減少に基づいて、複数の電池セル2の中に劣化により膨張した電池セル2Aが存在していることを判定することが可能である。したがって、液圧や流量を測定しなくても、膨張した電池セル2Aが存在していることを正確に判定することが可能である。
【0057】
(3)
第1実施形態の電池モジュール管理システム12では、粒子4は、所定温度以上で溶融する性質を有する。この構成では、電池セル2の膨張に伴って冷媒配管3の内部に粒子4が詰まって冷媒20の循環が滞った場合でも、粒子4が電池セル2から生じる熱によって溶融するので、冷媒流れの長期の停滞を防止することが可能である。
【0058】
(4)
第1実施形態の電池モジュール管理方法は、複数の電池セル2が所定方向Xに並んで配置された電池モジュール1を管理する管理方法である。管理方法は、隣接する2つの電池セル2の間を通るように配策され、当該電池セル2の間に冷媒20を循環させる冷媒配管3であって、電池セル2の膨張により冷媒20の流路が小さくなる方向に変形可能な弾性を有する冷媒配管3を準備する準備行程と、冷媒20に複数の粒子4を混入し、当該粒子4を冷媒20とともに冷媒配管3を循環させる粒子混入行程と、粒子4を含む冷媒20または冷媒20の流れに関する物理的なパラメータを検出するパラメータ検出行程と、物理的なパラメータに基づいて、複数の電池セル2の中に劣化により膨張した電池セル2Aが存在していることを判定する判定行程とを含む。
【0059】
かかる特徴によれば、準備行程において、電池セル2の膨張により冷媒20の流路が小さくなる方向に変形可能な弾性を有する冷媒配管3を準備する。粒子混入行程において、電池モジュール1が備えている冷媒配管3を循環する冷媒20に複数の粒子4を混入する。これにより、電池モジュール1の複数の電池セル2のいずれか1つが膨張した場合には、膨張した電池セル2Aに隣接する位置では、電池セル2の膨張に伴って冷媒配管3が変形して冷媒20の流路が小さくなり、流路が小さくなった部分に粒子4が詰まり、冷媒20の循環が滞る。冷媒20の循環が滞ることにより、粒子4を含む冷媒20または冷媒20の流れに関する物理的なパラメータ(具体的には、冷媒20の圧力、流量、および粒子数)が変化する。パラメータ検出行程では、電池セル2の膨張によって変化する上記の物理的なパラメータを検出し、判定行程において、検出した物理的なパラメータに基づいて、複数の電池セル2の中に劣化により膨張した電池セル2Aが存在していることを判定する。これにより、センサの数を抑えながら複数の電池セル2の中に劣化により膨張した電池セル2Aが存在していることを判定することが可能である。
【0060】
(第2実施形態)
上記の第1実施形態の管理システム12は、上記の検出部6~8によって、粒子4を含む冷媒20または冷媒20の流れに関する物理的なパラメータ(具体的には、冷媒20の圧力、流量、および粒子数)を検出し、判定部9が、検出した物理的なパラメータに基づいて複数の電池セル2の中に劣化により膨張した電池セル2Aが存在していることを判定する構成を有しているが、複数の電池セル2のどれが膨張した電池セル2であるか特定していない。
【0061】
そこで、本発明の第2実施形態として、図8に示される管理システム12は、膨張した電池セル2を特定するために、複数の電池セル2のそれぞれに設けられ、各電池セル2の温度を検出する温度センサ13と、電池セル2の温度に基づいて膨張した電池セル2Aを特定する特定部14とをさらに備える。
【0062】
図8に示される管理システム12のその他の構成は、図1~3に示される第1実施形態の管理システム12の構成と共通する。
【0063】
温度センサ13は、各電池セル2の温度を検出するために各電池セル2の外面に取り付けられている。温度センサ13は、電池セル2の膨張の影響を受けないように、電池セル2の側面21(図2参照)を避けた位置、例えば、各電池セル2の上面に取り付けられるのが好ましい。
【0064】
特定部14は、温度センサ13で検出された各電池セル2の温度に基づいて膨張した電池セル2Aを特定する。特定部14は、膨張した電池セル2Aの存在を判定する判定部9とともに制御装置10に備えられている。
【0065】
上記のように構成された図8に示される第2実施形態の管理システム12を用いて、電池モジュール1における膨張した電池セル2Aの存在を判定し、膨張した電池セル2Aを特定するための電池モジュール1の管理方法は、以下の手順で行われる。
【0066】
まず、上記の第1実施形態の管理方法と同様に、上記の冷媒配管準備行程、および粒子混入行程を行う。
【0067】
ついで、第1実施形態の管理方法と同様に、上記の判定行程を行う。具体的には、図8のフローチャートのステップS11のように、流量計7、液圧計6、および粒子数計測部8、から、物理的なパラメータとして、冷媒20の流量、圧力(水圧)、および粒子4の数を制御装置10に読み込む。第2実施形態では、このとき、さらに、各電池セル2の温度センサ13から各電池セル2の温度を制御装置10に読み込む。
【0068】
そして、制御装置10の判定部9は、上記の物理的なパラメータ(流量、水圧、および粒子数)に基づいて、複数の電池セル2の中に劣化により膨張した電池セル2A(図4参照)が存在していることを判定する(判定行程)。具体的には、図8のフローチャートのステップS12のように、流量、水圧、粒子数のいずれかが所定の値を下回った場合(すなわち、流量<Aまたは水圧<Bまたは粒子数<Cの場合)には、判定部9は、膨張した電池セル2Aが存在していることを判定する。
【0069】
判定部9が膨張した電池セル2Aが存在していることを判定した場合、図8のフローチャートのステップS13のように、特定部14が各電池セル2の温度に基づいて電池セル2を特定し、制御装置10のメモリに記憶する。
【0070】
その後、ステップS14において、報知部11が電池セル異常(膨張した電池セル2Aを検知したこと)を、電池モジュール1を搭載した車両の運転手などに光または音などで報知する。このとき、報知部11は、複数の電池セル2のうちどれが膨張した電池セル2Aであるかをランプまたは液晶パネルなどで表示するのが好ましい。
【0071】
(第2実施形態の特徴)
図8に示される第2実施形態の管理システム12は、図1に示される第1実施形態の管理システム12の構成に加えて、複数の電池セル2のそれぞれに設けられ、各電池セル2の温度を検出する温度センサ13と、電池セル2の温度に基づいて膨張した電池セル2Aを特定する特定部14とをさらに備えている。
【0072】
かかる構成によれば、歪みセンサを用いることなく、温度センサ13のみで劣化により膨張した電池セル2Aを複数の電池セル2の中から特定することが可能である。すなわち、この構成では、上記のように、膨張した電池セル2Aに隣接する位置では、冷媒配管3が変形して冷媒20の流路が小さくなり、流路が小さくなった部分に粒子4が詰まり、冷媒20の循環が滞る。したがって、膨張した電池セル2Aは冷媒20による冷却が順調にされなくなり、電池セル2Aの温度が上昇する。特定部14は、温度センサ13で検出された電池セル2の温度に基づいて、膨張した電池セル2Aを複数の電池セル2の中から特定することが可能である。
【0073】
すなわち、この構成では、上記の判定部9が物理的なパラメータに基づいて膨張した電池セル2Aが存在していることを判定した場合に、さらに、特定部14が電池セル2の温度に基づいて、膨張した電池セル2Aを複数の電池セル2の中から特定することが可能になる。
【0074】
(第2実施形態の変形例)
なお、上記の図8に示される管理システム12では、冷媒配管3が複数の電池セル2の間を一続きに通るように直列に配策されている構成をしているが、冷媒配管3が各電池セルのそれぞれの外面に個別に沿うように並列に配策されている場合には、電池セル2の温度に基づいて膨張した電池セル2Aを複数の電池セル2の中から特定することが可能になる。
【0075】
このような第2実施形態の変形例の管理システムは、以下のように構成される。
【0076】
すなわち、第2実施形態の変形例の管理システムは、複数の電池セル2が所定方向Xに並んで配置された電池モジュール1を管理する管理システムであって、複数の電池セル2のそれぞれの外面に個別に沿うように並列に配策され、各電池セル2に冷媒20を循環させる冷媒配管3であって、電池セル2の膨張により冷媒20の流路が小さくなる方向に変形可能な弾性を有する冷媒配管3と、冷媒20に混入されて冷媒20とともに冷媒配管3を循環する複数の粒子4と、複数の電池セルのそれぞれに設けられ、各電池セルの温度を検出する温度センサ13と、電池セル2の温度に基づいて膨張した電池セル2Aを特定する特定部14とを備えることを特徴とする。
【0077】
この変形例の構成では、電池モジュール1の各電池セル2に並列に冷媒20を循環させる冷媒配管3を備えた構成において、当該冷媒配管3を循環する冷媒20に複数の粒子4を混入しておくことにより、電池モジュール1の複数の電池セル2のいずれか1つが膨張した場合には、膨張した電池セル2Aに隣接する位置では、電池セル2の膨張に伴って冷媒配管3が変形して冷媒20の流路が小さくなり、流路が小さくなった部分に粒子4が詰まり、冷媒20の循環が滞る。したがって、膨張した電池セル2Aは冷媒20による冷却が順調にされなくなり、電池セル2Aの温度が上昇する。特定部14は、温度センサ13で検出された電池セル2の温度に基づいて、膨張した電池セル2Aを複数の電池セルの中から特定することが可能である。これにより、歪みセンサを用いることなく、温度センサ13のみで劣化により膨張した電池セル2Aを複数の電池セルの中から特定することが可能である。
【0078】
また、この変形例の構成では、上記の検出部および判定部、すなわち、粒子を含む前記冷媒または前記冷媒の流れに関する物理的なパラメータを検出する検出部(具体的には、液圧計6、流量計7、粒子数計測部8、および前記物理的なパラメータに基づいて、前記複数の電池セルの中に劣化により膨張した電池セル2Aが存在していることを判定する判定部9が不要になり、管理システムの構成をより簡素化することが可能である。
【0079】
(第3実施形態)
上記第1~2実施形態では、判定部9は、粒子4を含む冷媒20または冷媒20に関連する物理的なパラメータとして冷媒20の流量、液圧(水圧)、および粒子数に基づいて、膨張した電池セル2Aが存在していることを判定するが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の物理的なパラメータとして、冷媒20の色に基づいて、膨張した電池セル2Aが存在していることを判定してもよい。
【0080】
このような観点から、図10に示されるように、本発明の第3実施形態の管理システム12は、冷媒20の色に基づいて膨張した電池セル2Aが存在していることを判定するために、以下の構成を有する。
【0081】
冷媒配管3は、透明または半透明であり、冷媒20の色を冷媒配管3の外部から検出することが可能である。図10に示される冷媒配管3は、透明または半透明である点において、図1に示される第1実施形態の冷媒配管3と異なるが、その他の構成は共通する。
【0082】
粒子4は、図11に示されるように、電池セル2の膨張に伴って冷媒配管3の内部に当該粒子4が詰まった場合に粒子4同士の接触により破壊可能な強度を有する中空の外殻体4aと、外殻体4a内に封入される着色材料4bとから構成されている。したがって、図12に示されるように、電池セル2の膨張に伴って冷媒配管3の内部に粒子4が詰まった状態では、粒子4同士の接触により外殻体4aが破壊されて外殻体4aに封入された着色材料4bが冷媒20に混入し、冷媒20を着色する(図12の着色した冷媒23参照)。
【0083】
図11に示される粒子4としては、例えば、マイクロカプセルインキなどが適用される。すなわち、外殻体4aは、冷媒20とともに循環する時には破壊せず、電池セル2の膨張に伴う粒子4の詰まりによって加圧された時に破壊されるような強度を有するように、材料、膜厚、またはガラス転移点などが設定される。外殻体4aの材料は、例えば、アミノ・アルデヒド樹脂などで構成される。アミノ・アルデヒド樹脂のうち、特にメラミン・ホルムアルデヒド樹脂は、耐水性、耐薬品性、および耐老化性が良好であり、好ましい。
【0084】
着色材料4bは、水などの冷媒20を着色できるものであればよく、インキなどの液体であれば水に混合して冷媒20を迅速に着色できるので好ましい。なお、着色材料4bは、液体だけでなく、ゲル状や顆粒状であってもよい。着色材料4bを無色透明な水などの冷媒20に混入することにより、冷媒20の色の濃淡、具体的には、色の色相、明度、および彩度が変化する。
【0085】
さらに、図10に示される管理システム12は、検出部として、冷媒20の色を検出するレーザセンサ15およびカメラ16を備えている。
【0086】
レーザセンサ15は、冷媒配管3において最下流の電池セル2よりも下流側の位置に配置され、全ての電池セル2を通過した後の冷媒20の色を検出する。また、第3実施形態のカメラ16は、冷媒配管3の全体における冷媒20の色を監視するが、冷媒配管3の一部を監視してもよい。
【0087】
レーザセンサ15およびカメラ16は、冷媒20の色に関するデータとして、例えば、色の濃淡の度合い、具体的には、色の色相、明度、彩度のうちの少なくとも1つを検出すればよい。
【0088】
判定部9は、冷媒20の色に基づいて、複数の電池セル2の中に劣化により膨張した電池セル2Aが存在していることを判定する。
【0089】
さらに、図10に示される管理システム12は、上記図1の管理システム12と同様に判定部9を備える制御装置10および報知部11を備えるとともに、冷媒20の色が変化した位置を特定する特定部14をさらに備える。特定部14は、判定部9とともに制御装置10に備えられる。
【0090】
上記のように構成された図10に示される第3実施形態の管理システム12を用いて、電池モジュール1における膨張した電池セル2Aの存在を判定し、膨張した電池セル2Aを特定するための電池モジュール1の管理方法は、以下の手順で行われる。
【0091】
まず、上記の第1実施形態の管理方法と同様に、上記の冷媒配管準備行程、および粒子混入行程を行う。
【0092】
ついで、膨張した電池セル2Aが存在していることを判定する判定行程を行う。具体的には、図13のフローチャートのステップS21のように、レーザセンサ15およびカメラ16から冷媒20の色データ(例えば、色の濃淡の度合い、具体的には、色相、明度、彩度のうちの少なくとも1つのデータ)を物理的なパラメータとして制御装置10に読み込む。なお、レーザセンサ15およびカメラ16のうち少なくともカメラ16から色データを取得すれば、冷媒配管3の全体における冷媒20の色の変化を監視することが可能である。
【0093】
そして、同ステップS22において、制御装置10の判定部9は、上記色データを用いて冷媒20の色が変化したか判定することによって、複数の電池セル2の中に劣化により膨張した電池セル2Aが存在していることを判定する(判定行程)。
【0094】
判定部9が膨張した電池セル2Aが存在していることを判定した場合、同ステップS23において、特定部14が冷媒20の色が変化した最上流の位置(すなわち、膨張した電池セル2Aの位置)を特定し、制御装置10のメモリに記憶する。
【0095】
その後、ステップS24において、報知部11が電池セル異常(膨張した電池セル2Aを検知したこと)を、電池モジュール1を搭載した車両の運転手などに光または音などで報知する。このとき、報知部11は、複数の電池セル2のうちどれが膨張した電池セル2Aであるかをランプまたは液晶パネルなどで表示するのが好ましい。
【0096】
なお、図13のフローチャートのステップS23における冷媒20の色が変化した最上流の位置(すなわち、膨張した電池セル2Aの位置)を特定し、記憶する行程は省略してもよい。ステップS23を省略した場合も、膨張した電池セル2Aの存在を判定し、報知することが可能である。
【0097】
(第3実施形態の特徴)
(1)
第3実施形態の管理システム12では、冷媒配管3は、透明または半透明である。粒子4は、前記電池セルの膨張に伴って前記冷媒配管の内部に当該粒子が詰まった場合に粒子4同士の接触により破壊可能な強度を有する中空の外殻体4aと、外殻体4a内に封入される着色材料4bとから構成されている。検出部であるレーザセンサ15およびカメラ16は、冷媒20の色を検出する。判定部9は、冷媒20の色に基づいて、複数の電池セル2の中に劣化により膨張した電池セル2Aが存在していることを判定する。
【0098】
かかる構成によれば、粒子4は、前記電池セルの膨張に伴って前記冷媒配管の内部に当該粒子が詰まった場合に粒子4同士の接触により破壊可能な強度を有する外殻体4aと、外殻体4a内に封入される着色材料4bとから構成されている。電池セル2の膨張に伴って冷媒配管3の内部に粒子4が詰まった状態では、粒子4同士の接触により外殻体4aが破壊されて外殻体4aに封入された着色材料4bが冷媒20に混入し、冷媒20を着色する。判定部9は、検出部で検出された冷媒20の色に基づいて、複数の電池セル2の中に劣化により膨張した電池セル2Aが存在していることを判定することが可能である。
【0099】
(2)
第3実施形態の管理システム12では、検出部であるカメラ16は、冷媒配管3の全体における冷媒20の色を監視する。管理システム12は、冷媒20の色が変化した位置を特定する特定部14をさらに備える。
【0100】
かかる構成によれば、検出部が冷媒配管3の全体における冷媒20の色を監視し、特定部14が冷媒配管3の全体のうち冷媒20の色が変化した位置を特定することにより、膨張した電池セル2Aを特定することが可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 電池モジュール
2 電池セル
2A 膨張した電池セル
3 冷媒配管
4 粒子
4a 外殻体
4b 着色材料
6 液圧計(検出部)
7 流量計(検出部)
8 粒子数計測部(検出部)
9 判定部
10 制御装置
12 管理システム
13 温度センサ
14 特定部
15 レーザセンサ(検出部)
16 カメラ(検出部)
20 冷媒
22 膨張部
23 着色した冷媒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13