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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】ノズル部品およびワイヤ巻回装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/069 20160101AFI20250212BHJP
   H01F 41/07 20160101ALI20250212BHJP
   H01F 41/088 20160101ALI20250212BHJP
【FI】
H01F41/069
H01F41/07
H01F41/088
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021080961
(22)【出願日】2021-05-12
(65)【公開番号】P2022174916
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2024-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】伊谷 寧浩
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-157945(JP,A)
【文献】特開2017-011132(JP,A)
【文献】特開2006-261572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/00-41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤを挿入可能なワイヤ挿入孔を有する複数のノズルと、
前記複数のノズルが貫通する支持体を備え、前記複数のノズルを第1方向に沿って支持する調整機構と
を備え
前記調整機構は、前記複数のノズルが、前記第1方向に直交する方向に互いに間隔を空けて、前記第1方向に沿って前記支持体を貫通するように、前記複数のノズルを支持し、
前記調整機構は、前記複数のノズルの前記間隔を調整可能である、ノズル部品。
【請求項2】
前記支持体は、前記第1方向に沿って延在する貫通孔を有
前記調整機構は、
前記貫通孔に離脱可能に挿入され、前記複数のノズルをそれぞれ前記第1方向に沿って支持する複数のノズル支持部と、
前記貫通孔に離脱可能に挿入され、前記複数のノズル支持部を前記支持体に対して位置決めする少なくとも一つのブロック部と
さらに備える、請求項1に記載のノズル部品。
【請求項3】
前記第1方向からみて、前記貫通孔の内面の形状は、長方形であり、前記ノズル支持部の外面の形状、および、前記ブロック部の外面の形状は、四角形である、請求項2に記載のノズル部品。
【請求項4】
前記支持体は、前記第1方向に沿って延在する貫通孔と、前記第1方向に直交する第2方向に沿って延在し前記貫通孔に連通するネジ孔とを有
前記調整機構は、
前記貫通孔に前記第2方向に移動可能に挿入され、前記ノズルを前記第1方向に沿って支持する複数のノズル支持部と、
前記ネジ孔に螺合し、前記ノズル支持部に先端が回転可能に接続されるネジ部と
さらに備え、
前記ネジ部のネジ孔への進退により、前記ノズル支持部が前記貫通孔を前記第2方向に沿って往復移動する、請求項1に記載のノズル部品。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一つに記載のノズル部品と、
前記ノズル部品をコアの周囲に公転させて、前記複数のノズルに挿入された複数のワイヤを撚り合わせながらコアに巻回するノズル駆動部と
を備え
前記複数のワイヤは、前記複数のノズルの1つに挿入されたワイヤと、前記複数のノズルの他の1つに挿入されたワイヤとを含む、ワイヤ巻回装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル部品およびワイヤ巻回装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤ巻回装置としては、特開2017-11132号公報(特許文献1)に記載されたものがある。このワイヤ巻回装置は、ワイヤを挿入可能な複数のワイヤ挿入孔を有するノズル部品を備え、ノズル部品をコアの周囲に公転させて、複数のワイヤを撚り合わせながらコアに巻回していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-11132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数のワイヤを撚り合わせた撚り線部をコアに巻回する際、コアの巻芯部の形状、例えば、巻芯部の断面積や巻芯部の周長に対応させて、撚り線部の撚りピッチを調整することが求められる。すなわち、異なる形状の巻芯部に撚り線部を巻回する際、撚りピッチを変更する必要がある。
【0005】
そこで、前記従来のようなワイヤ巻回装置において、撚り線部の撚りピッチを変更しようとすると、コアを中心としたノズル部品の回転半径を変更することが考えられる。しかしながら、この場合、ノズル部品の回転半径を大きく変更できるように設定する必要があるため、ワイヤ巻回装置が大型化する問題がある。
【0006】
または、巻芯部の形状に適合したワイヤ挿入孔の間隔が異なるノズル部品を複数用意することが考えられる。しかしながら、この場合、巻芯部の形状に合わせた複数のノズル部品を準備する必要があり、部品点数が多くなる問題がある。
【0007】
そこで、本開示は、装置を小型にでき、また、部品点数を減少できるノズル部品およびワイヤ巻回装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるノズル部品は、
ワイヤを挿入可能なワイヤ挿入孔を有する複数のノズルと、
前記複数のノズルの間隔を調整可能である調整機構と
を備える。
【0009】
前記態様によれば、調整機構は、複数のノズルの間隔を調整可能であるので、各ノズルにワイヤを通して、ノズル部品をコアの周囲に公転させて、複数のワイヤを撚り合わせながらコアに巻き付ける際、コアを中心としたノズル部品の回転半径を変更することなく、所望の撚りピッチのコイル部品を製造することができる。また、コアを中心としたノズル部品の回転半径を変更する必要がないので、回転半径を小さく一定にでき、これにより、ワイヤ巻回装置を小型にできる。また、複数のノズルの間隔を調整可能である調整機構を備えるので、ノズルの間隔が異なる複数のノズル部品を用意する必要がなく、部品点数を減少できる。
【0010】
好ましくは、ノズル部品の一実施形態では、
前記調整機構は、
第1方向に沿って延在する貫通孔を有する支持体と、
前記貫通孔に離脱可能に挿入され、前記ノズルを前記第1方向に沿って支持する複数のノズル支持部と、
前記貫通孔に離脱可能に挿入され、前記複数のノズル支持部を前記支持体に対して位置決めする少なくとも一つのブロック部と
を備える。
【0011】
前記実施形態によれば、ノズル支持部およびブロック部は、貫通孔に着脱可能であるので、ノズル支持部とブロック部との相対的な位置を変更することができる。これにより、単純な構成で、複数のノズルの間隔を調整することができる。
【0012】
好ましくは、ノズル部品の一実施形態では、前記第1方向からみて、前記貫通孔の内面の形状は、長方形であり、前記ノズル支持部の外面の形状、および、前記ブロック部の外面の形状は、四角形である。
【0013】
前記実施形態によれば、ノズル支持部が第1方向を中心として貫通孔内で自転することを防止し、ノズル支持部を貫通孔に対して確実に位置決めすることができる。
【0014】
好ましくは、ノズル部品の一実施形態では、
前記調整機構は、
第1方向に沿って延在する貫通孔と、前記第1方向に直交する第2方向に沿って延在し前記貫通孔に連通するネジ孔とを有する支持体と、
前記貫通孔に前記第2方向に移動可能に挿入され、前記ノズルを前記第1方向に沿って支持する複数のノズル支持部と、
前記ネジ孔に螺合し、前記ノズル支持部に先端が回転可能に接続されるネジ部と
を備え、
前記ネジ部のネジ孔への進退により、前記ノズル支持部が前記貫通孔を前記第2方向に沿って往復移動する。
【0015】
ここで、第1方向に直交する第2方向とは、第2方向が第1方向に完全に直交することのみならず、±5°程度の誤差をもって直交することを含む。
【0016】
前記実施形態によれば、ネジ部のネジ孔への進退により、ノズル支持部が貫通孔を第2方向に沿って往復移動するので、複数のノズル支持部の相対的な位置を変更することができる。これにより、単純な構成で、複数のノズルの間隔を調整することができる。
【0017】
好ましくは、ワイヤ巻回装置の一実施形態では、
前記ノズル部品と、
前記ノズル部品をコアの周囲に公転させて、前記複数のノズルに挿入された前記複数のワイヤを撚り合わせながらコアに巻回するノズル駆動部と
を備える。
【0018】
前記実施形態によれば、前記ノズル部品を備えるので、装置を小型にでき、また、部品点数を減少できる。
【発明の効果】
【0019】
本開示の一態様であるノズル部品およびワイヤ巻回装置によれば、装置を小型にでき、また、部品点数を減少できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ワイヤ巻回装置の第1実施形態を示す簡略斜視図である。
図2】ノズル部品の底面図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4A】第1ノズルと第2ノズルの間隔を変更した状態を示すノズル部品の底面図である。
図4B】第1ノズルと第2ノズルの間隔を変更した状態を示すノズル部品の底面図である。
図5】ワイヤ巻回装置を用いたワイヤ巻回方法を説明する説明図である。
図6】ワイヤ巻回方法を説明するXY平面図である。
図7】ワイヤ巻回方法を説明する説明図である。
図8】コイル部品を示す底面図である。
図9】ワイヤの撚り線部を説明する説明図である。
図10】ノズル部品の第2実施形態を示す底面図である。
図11図10のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の一態様であるノズル部品およびワイヤ巻回装置を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、ワイヤ巻回装置の第1実施形態を示す簡略斜視図である。図1に示すように、ワイヤ巻回装置は、コイル部品のコア10に第1ワイヤ21および第2ワイヤ22を巻き回す装置である。ワイヤ巻回装置は、第1、第2ワイヤ21,22をコア10に巻き回して、コイル部品が製造される。コイル部品は、例えば、コモンモードチョークコイルである。
【0023】
コア10は、巻芯部13と、巻芯部13の第1端に設けられた第1鍔部11と、巻芯部13の第2端に設けられた第2鍔部12とを有する。コア10の材料としては、例えば、アルミナ(非磁性体)や、Ni-Zn系フェライト(磁性体、絶縁体)や、樹脂などの材料を用いる。
【0024】
巻芯部13の形状は、例えば、直方体である。第1鍔部11の形状と第2鍔部12の形状は、例えば、矩形の平板である。第1鍔部11の底面および第2鍔部12の底面には、それぞれ、第1電極31および第2電極32が設けられている。第1、第2電極31,32の材料は、例えば、Ag等である。第1、第2電極31,32は、図示しない実装基板の電極に電気的に接続される。なお、以下の図面において、第1、第2電極31,32をハッチングにて示す。
【0025】
第1、第2ワイヤ21,22は、導線と導線を覆う被膜とを有する。第1ワイヤ21は、コア10に巻き回されることで、一次側コイルを構成する。第2ワイヤ22は、コア10に巻き回されることで、二次側コイルを構成する。
【0026】
図1に示すように、ワイヤ巻回装置は、第1、第2テンショナ51,52と、チャック70と、ノズル部品60と、ノズル駆動部75とを有する。
【0027】
第1テンショナ51は、第1ワイヤ21に張力を加え、第2テンショナ52は、第2ワイヤ22に張力を加える。ノズル部品60は、第1テンショナ51によって張力を加えられた第1ワイヤ21を挿入し、第2テンショナ52によって張力を加えられた第2ワイヤ22を挿入する。
【0028】
第1、第2テンショナ51,52とノズル部品60との間には、プーリ76が配置され、第1、第2ワイヤ21,22を誘導する。チャック70は、コア10の第1鍔部11を掴んで固定する。このとき、コア10は、コア10の長軸L方向が、ノズル部品60側を向くように、設置される。
【0029】
ノズル駆動部75は、ノズル部品60をコア10の周囲に公転させて、ノズル部品60に挿入された第1、第2ワイヤ21,22を撚り合わせながらコア10に巻回する。つまり、ノズル駆動部75は、ノズル部品60を、コア10の長軸Lを中心として公転させ、かつ、コア10の長軸L方向に沿って移動させる。
【0030】
図2は、ノズル部品60の底面図であり、図3は、図2のA-A断面図である。図2図3に示すように、ノズル部品60は、第1ノズル61および第2ノズル62と、第1ノズル61と第2ノズル62の間隔を調整可能である調整機構80とを有する。
【0031】
第1ノズル61は、第1ワイヤ21を挿入可能なワイヤ挿入孔61aを有する。第2ノズル62は、第2ワイヤ22を挿入可能なワイヤ挿入孔62aを有する。第1ノズル61および第2ノズル62は、円筒状に形成されている。第1ノズル61および第2ノズル62の長さは、例えば、50mmである。第1ノズル61および第2ノズル62は、例えば、超硬合金から構成される。
【0032】
調整機構80は、支持体85と、第1ノズル支持部81および第2ノズル支持部82と、第1ブロック部86および第2ブロック部87とを有する。
【0033】
支持体85は、第1方向D1に沿って延在する貫通孔85aを有する。支持体85は、第1方向D1に沿って延在する円柱状に形成されている。第1方向D1は、円柱の中心線Cに平行である。貫通孔85aの内面の形状は、第1方向D1からみて、長方形である。第1方向D1からみて、長方形の重心は、中心線Cに一致する。つまり、貫通孔85aは、第1方向D1からみて、中心線Cを通過する方向、つまり、支持体85の円形の端面の径方向に延在している。支持体85の端面の円形の直径は、例えば、10mmであり、支持体85の第1方向D1の長さは、例えば、40mmである。支持体85は、例えば、ステンレスから構成される。
【0034】
第1ノズル支持部81は、貫通孔85aに離脱可能に挿入され、第1ノズル61を第1方向D1に沿って支持する。第1ノズル支持部81は、第1方向D1に沿って延在する角柱状に形成されている。第1ノズル支持部81の外面の形状は、第1方向D1からみて、四角形である。この四角形の一辺の長さは、貫通孔85aの内面形状の長方形の短辺の長さよりも僅かに小さい。第1ノズル支持部81は、第1方向D1に沿って延在し第1ノズル61を挿入可能なノズル挿入孔81aを有する。第1ノズル支持部81の第1方向D1の長さは、例えば、40mmである。第1ノズル支持部81は、例えば、ステンレスから構成される。
【0035】
第2ノズル支持部82は、貫通孔85aに離脱可能に挿入され、第2ノズル62を第1方向D1に沿って支持する。第2ノズル支持部82は、第1方向D1に沿って延在する角柱状に形成されている。第2ノズル支持部82の外面の形状は、第1方向D1からみて、四角形である。この四角形の一辺の長さは、貫通孔85aの内面形状の長方形の短辺の長さよりも僅かに小さい。第2ノズル支持部82は、第1方向D1に沿って延在し第2ノズル62を挿入可能なノズル挿入孔82aを有する。第2ノズル支持部82の第1方向D1の長さは、例えば、40mmである。第2ノズル支持部82は、例えば、ステンレスから構成される。
【0036】
第1ブロック部86は、貫通孔85aに離脱可能に挿入される。第1ブロック部86は、第1方向D1に沿って延在する角柱状に形成されている。第1ブロック部86の外面の形状は、第1方向D1からみて、四角形である。この四角形の一辺の長さは、貫通孔85aの内面形状の長方形の短辺の長さよりも僅かに小さい。第1ブロック部86の第1方向D1の長さは、例えば、40mmである。第1ブロック部86は、例えば、ステンレスから構成される。
【0037】
第2ブロック部87は、貫通孔85aに離脱可能に挿入される。第2ブロック部87は、第1方向D1に沿って延在する角柱状に形成されている。第2ブロック部87の外面の形状は、第1方向D1からみて、四角形である。この四角形の一辺の長さは、貫通孔85aの内面形状の長方形の短辺の長さよりも僅かに小さい。第2ブロック部87の第1方向D1の長さは、例えば、40mmである。第2ブロック部87は、例えば、ステンレスから構成される。
【0038】
第1ブロック部86および第2ブロック部87は、貫通孔85aに挿入されて、第1ノズル支持部81および第2ノズル支持部82を支持体85に対して位置決めする。具体的に述べると、第1ノズル支持部81の外面形状の四角形の他辺と、第2ノズル支持部82の外面形状の四角形の他辺と、第1ブロック部86の外面形状の四角形の他辺と、第2ブロック部87の外面形状の四角形の他辺との合計の長さは、貫通孔85aの内面形状の長方形の長辺の長さよりも僅かに小さい。つまり、貫通孔85aの全ては、第1、第2ノズル支持部81,82および第1、第2ブロック部86,87により埋められる。
【0039】
このとき、貫通孔85aの内面形状は、長方形であり、第1、第2ノズル支持部81,82の外面形状、および、第1、第2ブロック部86,87の外面形状は、四角形であるので、第1、第2ノズル支持部81,82が第1方向D1を中心として貫通孔85a内で自転することを防止し、第1、第2ノズル支持部81,82を貫通孔85aに対して確実に位置決めすることができる。なお、貫通孔85aの内面形状は、長円形または楕円形であってもよく、また、第1、第2ノズル支持部81,82の外面形状、および、第1、第2ブロック部86,87の外面形状は、長円形または楕円形であってもよい。
【0040】
図3に示すように、ノズル部品60の底面側において、支持体85、第1、第2ノズル支持部81,82および第1、第2ブロック部86,87のそれぞれの第1端面は、同一面に位置し、第1、第2ノズル61,62のそれぞれの第1端面は、支持体85の第1端面と同一面に位置する。一方、ノズル部品60の上面側において、支持体85、第1、第2ノズル支持部81,82および第1、第2ブロック部86,87のそれぞれの第2端面は、同一面に位置し、第1、第2ノズル61,62のそれぞれの第2端面は、支持体85の第2端面よりも上方に突出した位置にある。
【0041】
上記構成によれば、第1、第2ノズル支持部81,82および第1、第2ブロック部86,87は、貫通孔85aに着脱可能であるので、第1、第2ノズル支持部81,82および第1、第2ブロック部86,87の相対的な位置を変更することができる。
【0042】
例えば、図2に示すように、第1ノズル支持部81と第2ノズル支持部82の間に第1、第2ブロック部86,87を配置することで、第1ノズル支持部81と第2ノズル支持部82を離隔して、第1ノズル61と第2ノズル62の間隔を広くすることができる。一方、図4Aに示すように、第1ブロック部86と第2ブロック部87の間に第1、第2ノズル支持部81,82を配置することで、第1ノズル支持部81と第2ノズル支持部82を接近して、第1ノズル61と第2ノズル62の間隔を狭くすることができる。
【0043】
このように、第1方向D1からみて、第1ノズル61と第2ノズル62を支持体85の中心線Cを通過する径方向に沿って接近または離隔することができる。したがって、単純な構成で、第1ノズル61と第2ノズル62の間隔を調整することができる。
【0044】
また、図4Bに示すように、形状の異なる複数のブロック部86,88,89を用意することで、第1ノズル61と第2ノズル62の間隔の調整幅を広げることができる。具体的に述べると、第1ブロック部86と第3ブロック部88と第4ブロック部89を用意する。第3、第4ブロック部88,89は、互いに同じ大きさであり、第1ブロック部86よりも小さい。そして、第1ブロック部86と第3ブロック部88の間に第1ノズル支持部81を配置し、第1ブロック部86と第4ブロック部89の間に第2ノズル支持部82を配置することで、第1ノズル61と第2ノズル62の間隔を、図2のときの間隔よりも狭くし、図4Aのときの間隔よりも広くすることができる。
【0045】
なお、ブロック部の数量の増減は自由であり、少なくとも一つのブロック部を有していればよい。ブロック部が1つの場合であっても、第1、第2ノズル支持部とブロック部の相対的な位置を変更することで、第1ノズル61と第2ノズル62の間隔を変更することができる。
【0046】
次に、ワイヤ巻回装置を用いたワイヤ巻回方法について説明する。
【0047】
まず、図5に示すように、第1、第2ワイヤ21,22を第1、第2テンショナ51,52とノズル部品60とに順に通して、第1、第2ワイヤ21,22の先端をコア10側に固定する。
【0048】
第1、第2ワイヤ21,22は、図示しないコイルボビンから引き出される。第1テンショナ51は、第1ワイヤ21に張力を加える。第2テンショナ52は、第2ワイヤ22に張力を加える。
【0049】
第1ノズル61には、第1テンショナ51によって張力を加えられた第1ワイヤ21が通される。第2ノズル62には、第2テンショナ52によって張力を加えられた第2ワイヤ22が通される。
【0050】
第1ワイヤ21は、第1ノズル61が突出していないノズル部品60の底面側からコア10に向かって引き出され、第1ワイヤ21の先端は、コア10の第1鍔部11の第1電極31に接続される。第2ワイヤ22は、第2ノズル62が突出していないノズル部品60の底面側からコア10に向かって引き出され、第2ワイヤ22の先端は、コア10の第1鍔部11の第2電極32に接続される。
【0051】
そして、第1、第2ワイヤ21,22は、第1、第2テンショナ51,52とコア10との間で、第1、第2テンショナ51,52により、張力を加えられる。コア10は、第1鍔部11と第2鍔部12を結ぶ長軸L方向がZ方向に一致するように、XY面上に設置される。
【0052】
その後、図6のXY平面図に示すように、ノズル部品60の第1、第2ノズル61,62の相互の位置関係が第1、第2テンショナ51,52に対して一定となるように、ノズル部品60をコア10の周囲に公転させて、第1、第2ワイヤ21,22を撚り合わせながらコア10に巻回する。つまり、ノズル部品60は、長軸Lを中心として、コア10の周囲を公転する。このとき、第1、第2ノズル61,62の左右の位置関係は、長軸Lおよび第1、第2テンショナ51,52に対して変わらない。
【0053】
このようにノズル部品60を公転させることで、図7に示すように、第1、第2テンショナ51,52とノズル部品60の間の第1、第2ワイヤ21,22を撚り合わせずに、ノズル部品60とコア10の間の第1、第2ワイヤ21,22のみを撚り合わせることができる。また、ノズル部品60をZ方向に沿って第1鍔部11から第2鍔部12に向かって移動させることで、第1、第2ワイヤ21,22を第1鍔部11から第2鍔部12に向かって巻回することができる。このようにして、第1、第2ワイヤ21,22を撚り合わせた撚り線部を巻芯部13に巻回することができ(ツイスト巻きとでき)、コイル特性を安定化できる。なお、コア10をノズル部品60に対してコア10の長軸L方向に沿って移動させるようにしてもよい。
【0054】
その後、図8に示すように、第1ワイヤ21の巻き終わりの端部を、コア10の第2鍔部12の第1電極31に接続し、第2ワイヤ22の巻き終わりの端部を、コア10の第2鍔部12の第2電極32に接続する。これにより、コイル部品1を製造する。
【0055】
上記ワイヤ巻回装置を用いているので、ノズル部品60をコア10の周囲に公転させて、第1、第2ワイヤ21,22を撚り合わせた撚り線部を巻芯部13に巻回する際、第1ノズル61と第2ノズル62の間隔を変更することで、撚り線部の撚りピッチを変更することができる。
【0056】
ここで、図9に示すように、撚りピッチPとは、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22が互いに撚り合わされた状態において、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の特定の相対位置から次の同じ相対位置に最初に戻るまでの長さをいう。つまり、互いに撚り合わされた第1、第2ワイヤ21,22の位置関係が0°から360°まで回転したときの長さをいう。第1ノズル61と第2ノズル62の間隔が狭いほど、撚りピッチPは小さくなる。
【0057】
そして、第1ノズル61と第2ノズル62の間隔を変更することで、例えば、コア10の巻芯部13の形状(巻芯部13の断面積や巻芯部の周長など)に対応させて、撚りピッチPを変更することができる。このように、巻芯部13の形状に合わせて撚りピッチPを変えることで、安定した特性を得ることができる。例えば、巻芯部13の断面が多角形の場合、撚り線部の腹部あるいは節部が巻芯部13の断面形状に規則的に並ぶようにすることで、安定した特性を得ることができる。
【0058】
具体的に述べると、図9に示すように、第1、第2ワイヤ21,22の撚り合わせによって、腹部41および節部42が形成される。そして、隣り合うターンにおいて、一方のターンの腹部41と他方のターンの腹部41とを揃えることができる。このように、腹部41および節部42の位置を揃えることで、特性のバラつきを抑制できる。
【0059】
上記構成によれば、ノズル部品60をコア10の周囲に公転させて、第1、第2ワイヤ21,22を撚り合わせながらコア10に巻き付ける際、第1ノズル61と第2ノズル62の間隔を変更することで、コア10を中心としたノズル部品60の回転半径を変更することなく、所望の撚りピッチPのコイル部品1を製造することができる。
【0060】
また、コア10を中心としたノズル部品60の回転半径を変更する必要がないので、回転半径を小さく一定にでき、これにより、ワイヤ巻回装置を小型にできる。また、第1ノズル61と第2ノズル62の間隔を調整可能である調整機構80を備えるので、ノズルの間隔が異なる複数のノズル部品を用意する必要がなく、部品点数を減少できる。
【0061】
上記構成によれば、ワイヤ巻回装置は、ノズル部品60を備えるので、装置を小型にでき、また、部品点数を減少できる。
【0062】
(第2実施形態)
図10は、ノズル部品の第2実施形態を示す底面図である。図11は、図10のA-A断面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、調整機構の構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、その説明を省略する。
【0063】
図10図11に示すように、第2実施形態のノズル部品60Aでは、調整機構80Aは、支持体85と、第1ノズル支持部81および第2ノズル支持部82と、第1ネジ部91および第2ネジ部92とを有する。
【0064】
支持体85は、第1貫通孔851aおよび第2貫通孔852aと、第1ネジ孔851bおよび第2ネジ孔852bとを有する。支持体85のそれ以外の構成は、第1実施形態の構成と同じであり、その説明を省略する。
【0065】
第1貫通孔851aおよび第2貫通孔852aは、それぞれ、第1方向D1に沿って延在している。第1貫通孔851aおよび第2貫通孔852aは、それぞれ、第1方向D1からみて、第1方向D1に直交する第2方向D2に延在している。第1貫通孔851aおよび第2貫通孔852aは、互いに間隔をあけて、第2方向D2に並んで配置されている。第2方向D2は、第1方向D1からみて、支持体85の中心線Cを通過する方向、つまり、支持体85の円形の端面の径方向である。
【0066】
第1ネジ孔851bは、第2方向D2に沿って延在し、支持体85の外面から第1貫通孔851aに連通する。第2ネジ孔852bは、第2方向D2に沿って延在し、支持体85の外面から第2貫通孔852aに連通する。
【0067】
第1ノズル支持部81と第2ノズル支持部82は、前記第1実施形態と同様の構成である。第1ノズル支持部81は、第1貫通孔851aに第2方向D2に移動可能に挿入され、第1ノズル61を第1方向D1に沿って支持する。第2ノズル支持部82は、第2貫通孔852aに第2方向D2に移動可能に挿入され、第2ノズル62を第1方向D1に沿って支持する。つまり、第1ノズル支持部81と第2ノズル支持部82は、第1方向D1からみて、支持体85の中心線Cを通過する径方向に沿って接近または離隔可能となる。
【0068】
第1ネジ部91は、第1ネジ孔851bに螺合する。第1ネジ部91の先端は、第1ノズル支持部81に回転可能に接続される。具体的に述べると、第1ネジ部91の先端の外周面には、埋没可能に突出されたボールが設けられている。第1ノズル支持部81の外周面には、第1ネジ部91の先端が嵌め込まれる孔部が設けられ、この孔部の内周面には、ボールが嵌め込まれる環状の溝部が設けられている。そして、第1ネジ部91の先端を第1ノズル支持部81の孔部に取り付ける際、第1ネジ部91の先端を第1ノズル支持部81の孔部に押し込むことで、ボールが第1ネジ部91の先端の外周面に埋没し、ボールが溝部に到達したときに第1ネジ部91の先端の外周面から突出する。これにより、ボールが溝部に嵌まり込み、第1ネジ部91は、第1ノズル支持部81に対して回転可能に接続される。
【0069】
第2ネジ部92は、第2ネジ孔852bに螺合する。第2ネジ部92の先端は、第2ノズル支持部82に回転可能に接続される。第2ネジ部92の先端の構造は、第1ネジ部91の先端の構造と同様であり、その詳細な説明を省略する。
【0070】
第1ネジ部91の第1ネジ孔851bへの進退により、第1ノズル支持部81が第1貫通孔851aを第2方向D2に沿って往復移動する。具体的に述べると、第1ネジ部91の第1貫通孔851a内への進入(螺進)により、第1ノズル支持部81が支持体85の中心線Cに接近し、第1ネジ部91の第1貫通孔851aからの退出(螺退)により、第1ノズル支持部81が支持体85の中心線Cから離隔する。
【0071】
第2ネジ部92の第2ネジ孔852bへの進退により、第2ノズル支持部82が第2貫通孔852aを第2方向D2に沿って往復移動する。具体的に述べると、第2ネジ部92の螺進により、第2ノズル支持部82が支持体85の中心線Cに接近し、第2ネジ部92の螺退により、第2ノズル支持部82が支持体85の中心線Cから離隔する。
【0072】
上記構成によれば、第1、第2ネジ部91,92の進退により、第1ノズル支持部81と第2ノズル支持部82が互いに接近または離隔するので、第1、第2ノズル支持部81,82の相対的な位置を変更することができる。これにより、単純な構成で、第1ノズル61と第2ノズル62の間隔を調整することができる。
【0073】
なお、第1貫通孔851aと第2貫通孔852aが連通してもよく、つまり、第1実施形態の1つの貫通孔85aとしてもよい。また、ネジ部の先端が、ノズル支持部に回転可能に連結されず、ノズル支持部の外周面に当接するだけであってもよい。このとき、第1方向からみて、ノズル支持部のネジ部と反対側に弾性部材を設け、ノズル支持部が、弾性部材により、ネジ部側に常時弾力を受けるようにしてもよい。これにより、ネジ部の進退により、ノズル支持部が貫通孔を往復移動する。
【0074】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1と第2実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0075】
前記実施形態では、2本のワイヤをコアに巻回しているが、3本以上のワイヤをコアに巻回するようにしてもよい。このとき、ノズルおよびノズル支持部は、それぞれ、3つ以上となる。
【0076】
前記実施形態では、ノズル部品をコアの周囲に公転している間コアを静止しているが、ノズル部品の公転方向と同じ方向または逆方向にコアを自転させるコア駆動部を有してもよい。これにより、撚りピッチの変更幅を広げることができる。
【符号の説明】
【0077】
1 コイル部品
10 コア
11 第1鍔部
12 第2鍔部
13 巻芯部
21 第1ワイヤ
22 第2ワイヤ
31 第1電極
32 第2電極
51 第1テンショナ
52 第2テンショナ
60,60A ノズル部品
61 第1ノズル
61a ワイヤ挿入孔
62 第2ノズル
62a ワイヤ挿入孔
70 チャック
75 ノズル駆動部
80,80A 調整機構
81 第1ノズル支持部
81a ノズル挿入孔
82 第2ノズル支持部
82a ノズル挿入孔
85 支持体
85a 貫通孔
851a 第1貫通孔
852a 第2貫通孔
851b 第1ネジ孔
852b 第2ネジ孔
86~89 第1から第4ブロック部
91 第1ネジ部
92 第2ネジ部
C 中心線
D1 第1方向
D2 第2方向
P 撚りピッチ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11