(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】薄膜トランジスタ、および薄膜トランジスタの製造方法
(51)【国際特許分類】
H10D 30/67 20250101AFI20250212BHJP
H10D 30/01 20250101ALI20250212BHJP
H01L 21/314 20060101ALN20250212BHJP
H01L 21/312 20060101ALN20250212BHJP
H01L 21/316 20060101ALN20250212BHJP
H01L 21/318 20060101ALN20250212BHJP
【FI】
H01L29/78 617U
H01L29/78 617T
H01L29/78 626C
H01L29/78 618B
H01L29/78 617V
H01L21/314 M
H01L21/312 N
H01L21/316 B
H01L21/318 B
(21)【出願番号】P 2021096350
(22)【出願日】2021-06-09
(62)【分割の表示】P 2021018151の分割
【原出願日】2021-02-08
【審査請求日】2024-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】今村 ちひろ
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 学
(72)【発明者】
【氏名】田中 幸一
【審査官】田内 幸治
(56)【参考文献】
【文献】特許第6897897(JP,B1)
【文献】特開2009-246342(JP,A)
【文献】特開平06-177382(JP,A)
【文献】特開2011-009619(JP,A)
【文献】国際公開第2014/196107(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0118244(US,A1)
【文献】特開2018-162210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
H01L 21/314
H01L 21/312
H01L 21/316
H01L 21/318
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持面を有した可撓性基板と、
前記支持面の第1部分に位置するゲート電極層と、
前記支持面の第2部分と前記ゲート電極層とを覆うゲート絶縁層と、
前記ゲート電極層と半導体層とによって前記ゲート絶縁層を挟む前記半導体層と、
前記半導体層の第1端部に接するソース電極層と、
前記半導体層の第2端部に接するドレイン電極層と、を備え、
前記半導体層の厚さが、10nm以上50nm以下であり、
前記半導体層の電気抵抗率が、1.0×10
-1
Ω・cm以上1.0×10
4
Ω・cm以下であり、
前記ゲート絶縁層は、
有機高分子化合物によって構成され、前記第2部分と前記ゲート電極層とを覆う第1ゲート絶縁膜と、
無機珪素化合物によって構成され、前記第1ゲート絶縁膜と前記半導体層とに挟まれた第2ゲート絶縁膜と、から構成され、
前記第2ゲート絶縁膜の厚さが、2nm以上30nm以下であり、
前記第2ゲート絶縁膜の水素含有量が、2at%以上15at%以下である
薄膜トランジスタ。
【請求項2】
支持面を有した可撓性基板と、
前記支持面の第1部分に位置するゲート電極層と、
前記支持面の第2部分と前記ゲート電極層とを覆うゲート絶縁層と、
前記ゲート電極層と半導体層とによって前記ゲート絶縁層を挟む前記半導体層と、
前記半導体層の第1端部に接するソース電極層と、
前記半導体層の第2端部に接するドレイン電極層と、を備え、
前記半導体層の厚さが、10nm以上50nm以下であり、
前記半導体層の電気抵抗率が、1.0×10
-1
Ω・cm以上1.0×10
4
Ω・cm以下であり、
前記ゲート絶縁層は、
有機高分子化合物によって構成され、前記第2部分と前記ゲート電極層とを覆う第1ゲート絶縁膜と、
酸化珪素によって構成され、前記第1ゲート絶縁膜と前記半導体層とに挟まれた第2ゲート絶縁膜と、から構成され、
前記第2ゲート絶縁膜の厚さが、2nm以上40nm以下であり、
前記第2ゲート絶縁膜の水素含有量が、2at%以上14at%以下である
薄膜トランジスタ。
【請求項3】
支持面を有した可撓性基板と、
前記支持面の第1部分に位置するゲート電極層と、
前記支持面の第2部分と前記ゲート電極層とを覆うゲート絶縁層と、
前記ゲート電極層と半導体層とによって前記ゲート絶縁層を挟む前記半導体層と、
前記半導体層の第1端部に接するソース電極層と、
前記半導体層の第2端部に接するドレイン電極層と、を備え、
前記半導体層の厚さが、10nm以上50nm以下であり、
前記半導体層の電気抵抗率が、1.0×10
-1
Ω・cm以上1.0×10
4
Ω・cm以下であり、
前記ゲート絶縁層は、
有機高分子化合物によって構成され、前記第2部分と前記ゲート電極層とを覆う第1ゲート絶縁膜と、
窒化珪素によって構成され、前記第1ゲート絶縁膜と前記半導体層とに挟まれた第2ゲート絶縁膜と、から構成され、
前記第2ゲート絶縁膜の厚さが、2nm以上30nm以下であり、
前記第2ゲート絶縁膜の水素含有量が、5at%以上18at%以下である
薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記第2ゲート絶縁膜の厚さが、5nm以上25nm以下であり、
前記第2ゲート絶縁膜の水素含有量が、6at%以上10at%以下である
請求項2に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記第1ゲート絶縁膜は、比誘電率ε
Aと厚さd
Aとを有し、
前記第2ゲート絶縁膜は、比誘電率ε
Bと厚さd
Bとを有し、
前記ゲート絶縁層が下記式(1)を満たす
0.001≦(ε
A/d
A)/(ε
B/d
B)<0.015 … 式(1)
請求項1から4のいずれか一項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項6】
前記第1ゲート絶縁膜の比誘電率は、前記第2ゲート絶縁膜の比誘電率よりも低く、
前記第1ゲート絶縁膜の厚さは、300nm以上2500nm以下である
請求項1から5のいずれか一項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記半導体層は、インジウムを含有する酸化物半導体層である
請求項1から6のいずれか一項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項8】
可撓性基板の支持面における第1部分にゲート電極層を形成すること、
前記支持面の第2部分と前記ゲート電極層とを覆うようにゲート絶縁層を形成すること、
前記ゲート電極層と半導体層とによって前記ゲート絶縁層を挟むように前記半導体層を
無加熱スパッタ法で形成すること、および、
前記半導体層の第1端部に接するソース電極層、および前記半導体層の第2端部に接するドレイン電極層を形成すること、を含み、
前記ゲート絶縁層を形成することは、
前記第2部分と前記ゲート電極層とを覆う有機高分子化合物によって構成された第1ゲート絶縁膜を塗布法で形成すること、および、前記第1ゲート絶縁膜と前記半導体層とに挟まれて無機珪素化合物によって構成された第2ゲート絶縁膜をプラズマCVD法で形成すること、を含み、
前記第2ゲート絶縁膜の厚さが、2nm以上30nm以下であり、
前記第2ゲート絶縁膜の水素含有量が、2at%以上15at%以下である
薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項9】
可撓性基板の支持面における第1部分にゲート電極層を形成すること、
前記支持面の第2部分と前記ゲート電極層とを覆うようにゲート絶縁層を形成すること、
前記ゲート電極層と半導体層とによって前記ゲート絶縁層を挟むように前記半導体層を
無加熱スパッタ法で形成すること、および、
前記半導体層の第1端部に接するソース電極層、および前記半導体層の第2端部に接するドレイン電極層を形成すること、を含み、
前記ゲート絶縁層を形成することは、
前記第2部分と前記ゲート電極層とを覆う有機高分子化合物によって構成された第1ゲート絶縁膜を塗布法で形成すること、および、前記第1ゲート絶縁膜と前記半導体層とに挟まれて酸化珪素によって構成された第2ゲート絶縁膜をプラズマCVD法で形成すること、を含み、
前記第2ゲート絶縁膜の厚さが、2nm以上40nm以下であり、
前記第2ゲート絶縁膜の水素含有量が、2at%以上14at%以下である
薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項10】
可撓性基板の支持面における第1部分にゲート電極層を形成すること、
前記支持面の第2部分と前記ゲート電極層とを覆うようにゲート絶縁層を形成すること、
前記ゲート電極層と半導体層とによって前記ゲート絶縁層を挟むように前記半導体層を
無加熱スパッタ法で形成すること、および、
前記半導体層の第1端部に接するソース電極層、および前記半導体層の第2端部に接するドレイン電極層を形成すること、を含み、
前記ゲート絶縁層を形成することは、
前記第2部分と前記ゲート電極層とを覆う有機高分子化合物によって構成された第1ゲート絶縁膜を塗布法で形成すること、および、前記第1ゲート絶縁膜と前記半導体層とに挟まれて窒化珪素によって構成された第2ゲート絶縁膜をプラズマCVD法で形成すること、を含み、
前記第2ゲート絶縁膜の厚さが、2nm以上30nm以下であり、
前記第2ゲート絶縁膜の水素含有量が、5at%以上18at%以下である
薄膜トランジスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機高分子化合物によって構成された第1ゲート絶縁膜と、無機珪素化合物によって構成された第2ゲート絶縁膜との積層体をゲート絶縁層として備える薄膜トランジスタ、および薄膜トランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機高分子化合物膜と無機珪素化合物膜とをゲート絶縁層に備えた薄膜トランジスタは、耐圧性と柔軟性とを兼ね備える。薄膜トランジスタの電気的な特性を高めること、および薄膜トランジスタにおける層間での密着性を高めることを目的として、ゲート絶縁層の誘電特性値(=(εA/dA)/(εB/dB))を0.015以上1.0以下とすることが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。なお、誘電特性値の算出に用いる比誘電率εAは、有機高分子化合物を含有する第1ゲート絶縁膜の比誘電率である。厚さdAは、第1ゲート絶縁膜の厚さである。また、誘電特性値の算出に用いる比誘電率εBは、無機珪素化合物を含有する第2ゲート絶縁膜の比誘電率である。厚さdBは、第2ゲート絶縁膜の厚さである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゲート絶縁層が有する比誘電率は、単位面積あたりに誘起される電荷量を確保できるか否かを示す指標値であり、また、ゲート絶縁層が有する比誘電率は、ゲート電極と他の電極との間の電流漏れを抑えるか否かを示す指標値でもある。一方、ゲート絶縁層が有する比誘電率は、可撓性基板の曲げに対する電気的な耐久性と密接に関連していない。同様に、誘電分極のしやすさを第1ゲート絶縁膜と第2ゲート絶縁膜との間で比較した上述の誘電特性値もまた、可撓性基板の曲げに対する電気的な耐久性と密接に関連していない。結果として、所定範囲の比誘電率を備えた構成、さらには所定範囲の誘電特性値を備えた構成であっても、可撓性基板の曲げに対する電気的な耐久性を高めるまでには至らない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための薄膜トランジスタは、支持面を有した可撓性基板と、前記支持面の第1部分に位置するゲート電極層と、前記支持面の第2部分と前記ゲート電極層とを覆うゲート絶縁層と、前記ゲート電極層と半導体層とによって前記ゲート絶縁層を挟む前記半導体層と、前記半導体層の第1端部に接するソース電極層と、前記半導体層の第2端部に接するドレイン電極層と、を備える。前記ゲート絶縁層は、有機高分子化合物によって構成され、前記第2部分と前記ゲート電極層とを覆う第1ゲート絶縁膜と、無機珪素化合物によって構成され、前記第1ゲート絶縁膜と前記半導体層とに挟まれた第2ゲート絶縁膜と、から構成される。前記第2ゲート絶縁膜の厚さが、2nm以上30nm以下であり、前記第2ゲート絶縁膜の水素含有量が、2at%以上15at%以下である。
【0006】
上記課題を解決するための薄膜トランジスタは、支持面を有した可撓性基板と、前記支持面の第1部分に位置するゲート電極層と、前記支持面の第2部分と前記ゲート電極層とを覆うゲート絶縁層と、前記ゲート電極層と半導体層とによって前記ゲート絶縁層を挟む前記半導体層と、前記半導体層の第1端部に接するソース電極層と、前記半導体層の第2端部に接するドレイン電極層と、を備える。前記ゲート絶縁層は、有機高分子化合物によって構成され、前記第2部分と前記ゲート電極層とを覆う第1ゲート絶縁膜と、酸化珪素によって構成され、前記第1ゲート絶縁膜と前記半導体層とに挟まれた第2ゲート絶縁膜と、から構成される。前記第2ゲート絶縁膜の厚さが、2nm以上40nm以下であり、前記第2ゲート絶縁膜の水素含有量が、2at%以上14at%以下である。
【0007】
上記課題を解決するための薄膜トランジスタは、支持面を有した可撓性基板と、前記支持面の第1部分に位置するゲート電極層と、前記支持面の第2部分と前記ゲート電極層とを覆うゲート絶縁層と、前記ゲート電極層と半導体層とによって前記ゲート絶縁層を挟む前記半導体層と、前記半導体層の第1端部に接するソース電極層と、前記半導体層の第2端部に接するドレイン電極層と、を備える。前記ゲート絶縁層は、有機高分子化合物によって構成され、前記第2部分と前記ゲート電極層とを覆う第1ゲート絶縁膜と、窒化珪素によって構成され、前記第1ゲート絶縁膜と前記半導体層とに挟まれた第2ゲート絶縁膜と、から構成される。前記第2ゲート絶縁膜の厚さが、2nm以上30nm以下であり、前記第2ゲート絶縁膜の水素含有量が、5at%以上18at%以下である。
【0008】
上記各薄膜トランジスタによれば、しきい値電圧の変化量を低めること、かつ半導体層の電界効果移動度を高めることが可能となる。さらに、可撓性基板の曲げに対する電界効果移動度の変化を抑えることが可能となる。
【0009】
上記薄膜トランジスタにおいて、前記第2ゲート絶縁膜の厚さが、5nm以上25nm以下であり、前記第2ゲート絶縁膜の水素含有量が、6at%以上10at%以下であってもよい。この薄膜トランジスタによれば、可撓性基板の曲げに対する電界効果移動度の変化を抑えることが、より高い電界効果移動度を備える構成において実現可能となる。
【0010】
上記薄膜トランジスタにおいて、前記第1ゲート絶縁膜は、比誘電率εAと厚さdAとを有し、前記第2ゲート絶縁膜は、比誘電率εBと厚さdBとを有し、前記ゲート絶縁層が下記式(1)を満たしてもよい。この薄膜トランジスタによれば、可撓性基板の曲げに対する電界効果移動度の変化を高い電界効果移動度のもとで抑えることが実現可能となる。
【0011】
0.001≦(εA/dA)/(εB/dB)<0.015 … 式(1)
上記薄膜トランジスタにおいて、前記第1ゲート絶縁膜の比誘電率は、前記第2ゲート絶縁膜の比誘電率よりも低く、前記第1ゲート絶縁膜の厚さは、300nm以上2500nm以下であってもよい。
【0012】
上記薄膜トランジスタにおいて、前記半導体層は、インジウムを含有する酸化物半導体層であってもよい。
上記課題を解決するための薄膜トランジスタの製造方法は、可撓性基板の支持面における第1部分にゲート電極層を形成すること、前記支持面の第2部分と前記ゲート電極層とを覆うようにゲート絶縁層を形成すること、前記ゲート電極層と半導体層とによって前記ゲート絶縁層を挟むように前記半導体層を形成すること、および、前記半導体層の第1端部に接するソース電極層、および前記半導体層の第2端部に接するドレイン電極層を形成すること、を含む。前記ゲート絶縁層を形成することは、前記第2部分と前記ゲート電極層とを覆う有機高分子化合物によって構成された第1ゲート絶縁膜を塗布法で形成すること、および、前記第1ゲート絶縁膜と前記半導体層とに挟まれて無機珪素化合物によって構成された第2ゲート絶縁膜をプラズマCVD法で形成すること、を含む。前記第2ゲート絶縁膜の厚さが、2nm以上30nm以下であり、前記第2ゲート絶縁膜の水素含有量が、2at%以上15at%以下である。
【0013】
上記課題を解決するための薄膜トランジスタの製造方法は、可撓性基板の支持面における第1部分にゲート電極層を形成すること、前記支持面の第2部分と前記ゲート電極層とを覆うようにゲート絶縁層を形成すること、前記ゲート電極層と半導体層とによって前記ゲート絶縁層を挟むように前記半導体層を形成すること、および、前記半導体層の第1端部に接するソース電極層、および前記半導体層の第2端部に接するドレイン電極層を形成すること、を含む。前記ゲート絶縁層を形成することは、前記第2部分と前記ゲート電極層とを覆う有機高分子化合物によって構成された第1ゲート絶縁膜を塗布法で形成すること、および、前記第1ゲート絶縁膜と前記半導体層とに挟まれて酸化珪素によって構成された第2ゲート絶縁膜をプラズマCVD法で形成すること、を含む。前記第2ゲート絶縁膜の厚さが、2nm以上40nm以下であり、前記第2ゲート絶縁膜の水素含有量が、2at%以上14at%以下である。
【0014】
上記課題を解決するための薄膜トランジスタの製造方法は、可撓性基板の支持面における第1部分にゲート電極層を形成すること、前記支持面の第2部分と前記ゲート電極層とを覆うようにゲート絶縁層を形成すること、前記ゲート電極層と半導体層とによって前記ゲート絶縁層を挟むように前記半導体層を形成すること、および、前記半導体層の第1端部に接するソース電極層、および前記半導体層の第2端部に接するドレイン電極層を形成すること、を含む。前記ゲート絶縁層を形成することは、前記第2部分と前記ゲート電極層とを覆う有機高分子化合物によって構成された第1ゲート絶縁膜を塗布法で形成すること、および、前記第1ゲート絶縁膜と前記半導体層とに挟まれて窒化珪素によって構成された第2ゲート絶縁膜をプラズマCVD法で形成すること、を含む。前記第2ゲート絶縁膜の厚さが、2nm以上30nm以下であり、前記第2ゲート絶縁膜の水素含有量が、5at%以上18at%以下である。
【0015】
上記各薄膜トランジスタの製造方法によれば、しきい値電圧の変化量を低めること、かつ半導体層の電界効果移動度を高めることが可能となる。さらに、可撓性基板の曲げに対する電界効果移動度の変化を抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
上記構成によれば、可撓性基板の曲げに対する薄膜トランジスタの電気的な耐久性の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】薄膜トランジスタが有する多層構造の第1例を示す断面図。
【
図2】薄膜トランジスタが有する多層構造の第2例を示す断面図。
【
図3】比較例における薄膜トランジスタを示す断面図。
【
図4】厚さと水素含有率とに対する移動度の減少率の関係を示す散布図。
【
図5】厚さと誘電特性値とに対する移動度の減少率の関係を示す散布図。
【
図6】各実施例における層構成と移動度の減少率との関係を示す表。
【
図7】各比較例における層構成と移動度の減少率との関係を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0018】
薄膜トランジスタ、および薄膜トランジスタの製造方法の一実施形態を以下に示す。まず、薄膜トランジスタの多層構造を説明し、次に薄膜トランジスタの各層について構成材料と寸法とを説明し、次に薄膜トランジスタの製造方法を説明する。
【0019】
なお、
図1は、薄膜トランジスタが有する多層構造の第1例を示し、
図2は、薄膜トランジスタが有する多層構造の第2例を示す。以下では、
図1、
図2のそれぞれを視座として、薄膜トランジスタの各構成要素における上面、および下面を記載する。
【0020】
また、薄膜トランジスタにおけるソースとドレインとは、薄膜トランジスタの駆動回路の動作によって定まるため、1つの電極層がソースからドレインに機能を替えてもよく、かつ他の電極層がドレインからソースに機能を替えてもよい。
【0021】
[多層構造]
図1が示すように、薄膜トランジスタの第1例は、ボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタである。薄膜トランジスタは、可撓性基板11、ゲート電極層12、第1ゲート絶縁膜21、第2ゲート絶縁膜22、半導体層13、ソース電極層14、およびドレイン電極層15を備える。第1ゲート絶縁膜21、および第2ゲート絶縁膜22が、ゲート絶縁層を構成する。
【0022】
可撓性基板11とゲート電極層12とが、
図1の上方向であるチャンネル深さ方向Zに並ぶ。ソース電極層14とドレイン電極層15とが、
図1の右方向であるチャンネル長方向Xに並ぶ。チャンネル幅方向Yが、チャンネル長方向Xとチャンネル深さ方向Zとに直交する。
【0023】
可撓性基板11の上面は、チャンネル長方向Xとチャンネル幅方向Yとに広がる支持面11Sである。支持面11Sは、チャンネル長方向Xにおいて相互に接する第1部分11S1と第2部分11S2とを備える。第1部分11S1の面積は、第2部分11S2の面積よりも小さい。第1部分11S1は、ゲート電極層12の下面と接する。第2部分11S2は、第1ゲート絶縁膜21の下面の一部分と接する。
【0024】
第1ゲート絶縁膜21は、ゲート電極層12の上面に接する。第1ゲート絶縁膜21は、支持面11Sの全体を覆ってもよいし、支持面11Sの一部分を覆ってもよい。
第2ゲート絶縁膜22の下面は、第1ゲート絶縁膜21の上面に接する。第2ゲート絶縁膜22は、第1ゲート絶縁膜21の全体を覆ってもよいし、第1ゲート絶縁膜21の一部分を覆ってもよい。第2ゲート絶縁膜22は、第2ゲート絶縁膜22とゲート電極層12とが第1ゲート絶縁膜21を挟むように、ゲート電極層12の上面を覆う。
【0025】
半導体層13の下面は、第2ゲート絶縁膜22の上面に接する。半導体層13は、半導体層13とゲート電極層12とが第1ゲート絶縁膜21と第2ゲート絶縁膜22とを挟むように、ゲート電極層12の上面を覆う。チャンネル長方向Xにおいて、半導体層13の長さは、ゲート電極層12の長さよりも大きい。
【0026】
ソース電極層14の下面の一部分は、半導体層13の上面に接する。ソース電極層14の下面の他部分は、第2ゲート絶縁膜22の上面に接する。ソース電極層14は、チャンネル長方向Xの反対方向において、半導体層13の端部である第1端部に接続されるように、半導体層13の第1端部を覆う。
【0027】
ドレイン電極層15の下面の一部分は、半導体層13の上面に接する。ドレイン電極層15の下面の他部分は、第2ゲート絶縁膜22の上面に接する。ドレイン電極層15は、チャンネル長方向Xにおいて、半導体層13の端部である第2端部に接続されるように、半導体層13の第2端部を覆う。
【0028】
ソース電極層14とドレイン電極層15とは、相互に離間している。チャンネル長方向Xにおいて、ソース電極層14とドレイン電極層15との間の長さLは、ゲート電極層12の長さよりも小さい。この場合、半導体層13のなかのソース電極層14とドレイン電極層15との間の領域が、チャンネル領域Cである。チャンネル長方向Xにおけるチャンネル領域Cの長さ、すなわち、ソース電極層14とドレイン電極層15との間の長さLが、チャンネル長である。また、チャンネル幅方向Yにおけるチャンネル領域Cの長さが、チャンネル幅である。
【0029】
なお、1つの薄膜トランジスタのなかでチャンネル幅方向Yの各位置でのチャンネル長が一定でない場合、全てのチャンネル長の平均値が、1つの薄膜トランジスタにおけるチャンネル長である。また、長さLがゲート電極層12の長さよりも大きい場合、チャンネル深さ方向Zにおいて、半導体層13のなかでゲート電極層12と重なる領域が、チャンネル領域Cである。
【0030】
図2が示すように、薄膜トランジスタは、ボトムゲート・ボトムコンタクト型トランジスタである。以下では、ボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタと異なる構成について主に説明する。
【0031】
ソース電極層14の下面は、第2ゲート絶縁膜22の上面に接する。ドレイン電極層15の下面は、第2ゲート絶縁膜22の上面に接する。
半導体層13の下面の一部分は、第2ゲート絶縁膜22に接する。半導体層13の下面の一部分は、チャンネル長方向Xにおいて、ソース電極層14とドレイン電極層15との間を埋めるチャンネル領域Cを構成する。
【0032】
半導体層13の下面におけるチャンネル長方向Xとは反対方向の端部である第1端部は、ソース電極層14の上面に接するように、ソース電極層14の上面を覆う。半導体層13の下面におけるチャンネル長方向Xの端部である第2端部は、ドレイン電極層15の上面に接するように、ドレイン電極層15の上面を覆う。
【0033】
[可撓性基板]
可撓性基板11は、上面に絶縁性を有する。可撓性基板11は、透明基板でもよいし、不透明基板でもよい。可撓性基板11は、絶縁性を有したフィルムでもよいし、支持面11Sに絶縁性を付与された金属箔でもよいし、支持面11Sに絶縁性を付与された合金箔でもよいし、可撓性を有した薄板ガラスでもよい。
【0034】
可撓性基板11を構成する材料は、有機高分子化合物、有機材料と無機材料との複合材料、金属、合金、および無機高分子化合物からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0035】
可撓性基板11は、単層構造体でもよいし、多層構造体でもよい。可撓性基板11が多層構造体である場合、可撓性基板11を構成する各層の構成材料は、それぞれ有機高分子化合物、複合材料、金属、合金、無機高分子化合物からなる群から選択されるいずれか一種である。
【0036】
可撓性基板11が多層構造体である場合、可撓性基板11は、下地基板と、下地基板から剥離可能に構成された剥離層とを備えてもよい。剥離層は、素子構造体と共に、下地基板から剥がされる。素子構造体を備える剥離層は、別の可撓性基材に貼り付けられてもよい。可撓性基材は、耐熱性が低い紙類、セロファン基材、布類、再生繊維類、皮革類、ナイロン基材、ポリウレタン基材を含む。この場合、剥離層と可撓性基材とは、別の可撓性基板11を構成する。
【0037】
有機高分子化合物は、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルサルフェン、トリアセチルセルロース、ポリビニルフルオライドフィルム、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリイミド、フッ素系ポリマー、環状ポリオレフィン系ポリマーからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0038】
複合材料は、ガラス繊維強化アクリルポリマー、あるいはガラス繊維強化ポリカーボネートである。金属は、アルミニウム、あるいは銅である。合金は、鉄クロム合金、鉄ニッケル合金、あるいは鉄ニッケルクロム合金である。無機高分子化合物は、酸化珪素、酸化硼素、および酸化アルミニウムを含む無アルカリガラス、あるいは、酸化珪素、酸化ナトリウム、および酸化カルシウムを含むアルカリガラスである。
【0039】
[電極層]
各電極層12,14,15は、それぞれ単層構造体でもよいし、多層構造体でもよい。各電極層12,14,15が多層構造体である場合、各電極層12,14,15は、それぞれ電極層の下層との密着性を高める最下層、および電極層の上層との密着性を高める最上層を有することが好ましい。
【0040】
各電極層12,14,15を構成する材料は、金属でもよいし、合金でもよいし、導電性を有する金属酸化物でもよい。各電極層12,14,15を構成する材料は、相互に異なってもよいし、同じであってもよい。
【0041】
金属は、それぞれ遷移金属、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属の少なくとも一種である。遷移金属は、インジウム、アルミニウム、金、銀、白金、チタン、銅、ニッケル、タングステンからなる群から選択される少なくとも一種である。アルカリ金属は、リチウム、あるいはセシウムである。アルカリ土類金属は、マグネシウム、およびカルシウムの少なくとも一種である。合金は、モリブデンニオブ(MoNb)、鉄クロム、アルミニウムリチウム、マグネシウム銀、アルミネオジウム合金、アルミネオジムジルコニア合金()からなる群から選択されるいずれか一種である。
【0042】
金属酸化物は、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化インジウムカドミウム、酸化カドミウム錫、酸化亜鉛錫からなる群から選択されるいずれか一種である。金属酸化物は、不純物を含有してもよい。不純物を含有する金属酸化物は、錫、亜鉛、チタン、セリウム、ハフニウム、ジルコニウム、モリブデンからなる群から選択される少なくとも一種の不純物を含有する酸化インジウムである。不純物を含有する金属酸化物は、アンチモン、またはフッ素を含有する酸化錫でもよい。不純物を含有する金属酸化物は、ガリウム、アルミニウム、硼素からなる群から選択される少なくとも一種の不純物を含有する酸化亜鉛でもよい。
【0043】
半導体層13を構成する材料が金属酸化物である場合、各電極層14,15は、半導体層13と同一の構成元素から構成され、かつ不純物の濃度を半導体層13よりも十分に高めた層であってもよい。
【0044】
各電極層12,14,15に適用できる材料の範囲を広げる場合、各電極層12,14,15の電気抵抗率は、それぞれ好ましくは5.0×10-5Ω・cm以上である。薄膜トランジスタの消費電力を抑える場合、各電極層12,14,15の電気抵抗率は、それぞれ好ましくは1.0×10-2Ω・cm以下である。
【0045】
各電極層12,14,15の電気抵抗値を抑える場合、各電極層12,14,15の厚さは、それぞれ好ましくは50nm以上である。薄膜トランジスタを構成する各層の平坦性を高める場合、各電極層12,14,15の厚さは、それぞれ好ましくは300nm以下である。
【0046】
[半導体層]
半導体層13を構成する材料は、無機半導体でもよいし、有機半導体でもよい。無機半導体は、酸化物半導体でもよいし、アモルファスシリコンでもよいし、化合物半導体でもよい。酸化物半導体は、インジウム、および亜鉛の少なくとも一方を含む。
【0047】
半導体層13の光透過率、および電界効果移動度(以下、移動度とも言う)を高める場合、半導体層13は、好ましくはインジウムを含む酸化物半導体層である。酸化物半導体は、より好ましくはIn-M-Zn系酸化物である。In-M-Zn系酸化物は、インジウム(In)および亜鉛(Zn)を含み、かつアルミニウム、チタン、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、セリウム、ハフニウム、および錫からなる群から選択される少なくとも一種の金属元素(M)を含む。
【0048】
半導体層13の厚さの均一性を高める場合、半導体層13の厚さは、好ましくは5nm以上である。半導体層13の材料使用量を抑える場合、半導体層13の厚さは、好ましくは100nm以下である。厚さの均一性の向上、および材料使用量の抑制の両立を図る場合、半導体層13の厚さは、好ましくは5nm以上100nm以下である。さらに、これらの効果を得る実効性を高める場合、半導体層13の厚さは、より好ましくは10nm以上50nm以下である。
【0049】
移動度を高める場合、半導体層13の電気抵抗率は、好ましくは1.0×104Ω・cm以下である。オン電流値とオフ電流値との比である電流オン/オフ比を高める場合、半導体層13の電気抵抗率は、好ましくは1.0×10-1Ω・cm以上である。移動度の向上、および電流オン/オフ比の向上の両立を図る場合、半導体層13の電気抵抗率は、好ましくは1.0×10-1Ω・cm以上1.0×104Ω・cm以下である。さらに、これらの効果を得る実効性を高める場合、半導体層13の電気抵抗率は、より好ましくは1.0×100Ω・cm以上1.0×103Ω・cm以下である。
【0050】
[絶縁膜]
第1ゲート絶縁膜21を構成する材料は、有機高分子化合物である。有機高分子化合物は、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリビニルアルコール、アクリルポリマー、エポキシポリマー、アモルファスフッ素ポリマーを含むフッ素系ポリマー、メラミンポリマー、フランポリマー、キシレンポリマー、ポリアミドイミドポリマー、シリコーンポリマーからなる群から選択される少なくとも一種である。第1ゲート絶縁膜21の耐熱性を高める場合、有機高分子化合物は、好ましくは、ポリイミド、アクリルポリマー、フッ素系ポリマーからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0051】
第1ゲート絶縁膜21は、単層膜でもよいし、多層膜でもよい。第1ゲート絶縁膜21が多層膜である場合、第1ゲート絶縁膜21を構成する各層の構成材料は、それぞれ有機高分子化合物である。
【0052】
第1ゲート絶縁膜21の比誘電率εAは、2.0以上5.0以下である。第1ゲート絶縁膜21の厚さを薄くし、移動度を高める場合、第1ゲート絶縁膜21の比誘電率は、好ましくは3.0以上4.0以下である。
【0053】
ゲート電極層12と他の電極層14,15との間の電流漏れを抑える場合、第1ゲート絶縁膜21の厚さは、好ましくは500nm以上である。薄膜トランジスタを駆動するためのゲート電圧の抑制を図る場合、第1ゲート絶縁膜21の厚さは、好ましくは10μm以下である。電流漏れの抑制、およびゲート電圧の抑制を図る場合、第1ゲート絶縁膜21の厚さは、好ましくは500nm以上10μm以下である。さらに、これらの効果を得る実効性を高めると共に、第1ゲート絶縁膜21の厚さの均一性を高め、かつ第1ゲート絶縁膜21の生産性の向上を図る場合、第1ゲート絶縁膜21の厚さは、より好ましくは1000nm以上5000nm以下である。第1ゲート絶縁膜21の厚さは、さらに好ましくは1000nm以上2500nm以下である。
【0054】
ゲート絶縁層の耐圧性の向上を図る場合、ゲート絶縁層の抵抗率は、好ましくは1×1011Ω・cm以上である。さらに、第1ゲート絶縁膜21の薄膜化を図る場合、ゲート絶縁層の抵抗率は、より好ましくは1×1013Ω・cm以上である。
【0055】
第2ゲート絶縁膜22を構成する材料は、長距離秩序を有しない無機珪素化合物である。無機珪素化合物は、酸化珪素、窒化珪素、および酸化窒化珪素からなる群から選択される少なくとも一種である。窒化珪素を構成する元素は、酸素、珪素、および水素を含む。窒化珪素を構成する元素は、窒素、珪素、および水素を含む。酸化窒化珪素を構成する元素は、酸素、窒素、珪素、および水素を含む。
【0056】
第2ゲート絶縁膜22の比誘電率εBは、第1ゲート絶縁膜21の比誘電率εA以上であって、3.5以上10以下である。無機珪素化合物を島状に点在させず連続膜にするため、第2ゲート絶縁膜22の厚さは、2nm以上である。
【0057】
第2ゲート絶縁膜22は、単層膜でもよいし、多層膜でもよい。第2ゲート絶縁膜22が多層膜である場合、第2ゲート絶縁膜22を構成する各層の構成材料は、それぞれ無機珪素化合物である。
【0058】
酸化珪素は、珪素と水素との結合、および酸素と水素との結合の少なくとも一種の状態で水素を含む。酸化珪素の珪素の含有量に対する酸化珪素の酸素の含有量の比率は、二酸化珪素の化学量論比である2以下である。
【0059】
窒化珪素は、珪素と水素との結合、および窒素と水素との結合の少なくとも一種の状態で水素を含む。窒化珪素の珪素の含有量に対する窒化珪素の窒素の含有量の比率は、四窒化三珪素の化学量論比である4/3以下である。
【0060】
酸化窒化珪素は、珪素と水素との結合、酸素と水素との結合、および窒素と水素との結合の少なくとも一種の状態で水素を含む。酸化窒化珪素の組成は、窒素の含有量が酸素の含有量よりも高くてもよいし、酸素の含有量が窒素の含有量よりも高くてもよい。
【0061】
無機珪素化合物に含有される水素は、短距離秩序を形成する無機珪素化合物の格子に欠陥を形成し、可撓性基板11の曲げによる短距離秩序の揺らぎを緩和する。なお、水素の含有量が上がるほど、無機珪素化合物に含まれる珪素の未結合手(ダングリングボンド)が減りやすい。また、無機珪素化合物に含まれる酸素や窒素の含有量が下がりやすいため、半導体層13が酸化物半導体である場合、酸化物半導体における好適な酸素欠損量を保ちやすい。一方で、水素の含有量が過大である場合、第2ゲート絶縁膜22のなかで水素が珪素から解離しやすく、解離した水素が拡散し、しきい値電圧を変化させるおそれがある。
【0062】
そこで、第2ゲート絶縁膜22を構成する材料が酸化珪素、窒化珪素、および酸化窒化珪素の少なくとも一種である場合、可撓性基板11の曲げに対する電気的な特性の耐久性を高めるため、第2ゲート絶縁膜22は、下記条件1、および条件2を満たす。
(条件1)水素含有量が2at%以上15at%以下である。
(条件2)厚さdBが30nm以下である。
【0063】
また、第2ゲート絶縁膜22を構成する材料が酸化珪素である場合、可撓性基板11の曲げに対する電気的な特性の耐久性を高めるため、第2ゲート絶縁膜22は、下記条件3、および条件4を満たす。
(条件3)水素含有量が2at%以上14at%以下である。
(条件4)厚さdBが40nm以下である。
【0064】
さらに、電気的な特性の耐久性を高める実効性を高める場合、酸化珪素の水素含有量は、好ましくは6at%以上10at%以下であり、かつ第2ゲート絶縁膜22の厚さは、好ましくは5nm以上25nm以下である。
【0065】
また、第2ゲート絶縁膜22を構成する材料が窒化珪素である場合、可撓性基板11の曲げに対する電気的な特性の耐久性を高めるため、第2ゲート絶縁膜22は、下記条件5、および条件6を満たす。
(条件5)水素含有量が5at%以上18at%以下である。
(条件6)厚さdBが30nm以下である。
【0066】
また、薄膜トランジスタの電気的な特性を高める場合、第1ゲート絶縁膜21と第2ゲート絶縁膜22との積層構造体であるゲート絶縁層は、好ましくは下記式(1)を満たす。第1ゲート絶縁膜21は、比誘電率εAと厚さdAとを有し、第2ゲート絶縁膜22は、比誘電率εBと厚さdBとを有する。
0.001≦(εA/dA)/(εB/dB)<0.015 … 式(1)
【0067】
ゲート絶縁層の耐圧性を高める場合、誘電特性値K(=(εA/dA)/(εB/dB))は、好ましくは0.015より小さい。移動度を高める場合、誘電特性値Kは、好ましくは0.001以上である。
【0068】
[薄膜トランジスタの製造方法]
ボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタの製造方法は、可撓性基板11にゲート電極層12を形成する第1工程、ゲート電極層12に第1ゲート絶縁膜21を積層する第2工程、および第1ゲート絶縁膜21に第2ゲート絶縁膜22を積層する第3工程を含む。また、ボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタの製造方法は、第2ゲート絶縁膜22に半導体層13を積層する第4工程、および半導体層13にソース電極層14とドレイン電極層15とを積層する第5工程を含む。
【0069】
なお、ボトムゲート・ボトムコンタクト型トランジスタの製造方法は、第4工程において、第2ゲート絶縁膜22にソース電極層14とドレイン電極層15とを積層する。また、第5工程において、ソース電極層14、ドレイン電極層15、および第2ゲート絶縁膜22に半導体層13を積層する。第4工程に用いる方法は、ボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタの製造方法における第5工程に用いる方法を用いる。第5工程に用いる方法は、ボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタの製造方法における第4工程に用いる方法を用いる。そのため、以下では、ボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタの製造方法を主に説明し、ボトムゲート・ボトムコンタクト型トランジスタの製造方法において重複した説明を割愛する。
【0070】
第1工程において、ゲート電極層12は、ゲート電極層12の形状に追従したマスクを用いる成膜方法によって形成されてもよい。あるいは、ゲート電極層12は、ゲート電極層12となる電極膜を成膜した後に、エッチング法を用いて電極膜をゲート電極層12の形状に加工する方法によって形成されてもよい。
【0071】
ゲート電極層12の形成に用いる成膜方法は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、レーザーアブレーション法、導電性ペーストを用いるスピンコート法、ディップコート法、スリットダイコート法からなる群から選択される少なくとも一種である。あるいは、ゲート電極層12の形成に用いる成膜方法は、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、平版印刷法、インクジェット法からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0072】
第2工程において、第1ゲート絶縁膜21は、第1ゲート絶縁膜21の形状に追従したマスクを用いる塗布法によって形成されてもよい。あるいは、第1ゲート絶縁膜21は、第1ゲート絶縁膜21となる塗布膜を形成した後に、塗布膜をフォトリソグラフィー法で第1ゲート絶縁膜21の形状に加工する方法によって形成されてもよい。
【0073】
第1ゲート絶縁膜21の形成に用いる塗布法は、有機高分子化合物を含む塗布液を用いるスピンコート法、ディップコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法からなる群から選択される少なくとも一種である。塗布法は、塗布液からなる液状膜を焼成することによって塗布膜を形成する。第1ゲート絶縁膜21の形成にフォトリソグラフィー法を用いる場合、塗布液は、感光性を有したポリマーを含む。
【0074】
第3工程において、第2ゲート絶縁膜22は、第2ゲート絶縁膜22の形状に追従したマスクを用いる成膜方法によって形成されてもよい。あるいは、第2ゲート絶縁膜22は、第2ゲート絶縁膜22となる絶縁膜を形成した後に、エッチング法を用いて絶縁膜を第2ゲート絶縁膜22の形状に加工する方法によって形成されてもよい。
【0075】
第2ゲート絶縁膜22の形成に用いる成膜方法は、レーザーアブレーション法、プラズマCVD法、光CVD法、熱CVD法、スパッタリング法、ゾルゲル法からなる群から選択される少なくとも一種である。あるいは、第2ゲート絶縁膜22の形成に用いる成膜方法は、無機高分子化合物の前駆体を含む塗布液を用いるスピンコート法、ディップコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法からなる群から選択される少なくとも一種の塗布法である。
【0076】
第4工程において、半導体層13は、半導体層13の形状に追従したマスクを用いる成膜方法によって形成されてもよい。あるいは、半導体層13は、半導体層13となる半導体膜を形成した後に、エッチング法を用いて半導体膜を半導体層13の形状に加工する方法によって形成されてもよい。
【0077】
半導体層13は、スパッタリング法、あるいはCVD法によって形成される。スパッタリング法は、可撓性基板11に直流電圧を印加したDCスパッタ法、あるいは成膜空間に高周波を印加したRFスパッタ法を含む。不純物の添加法は、プラズマ処理法、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法である。
【0078】
第5工程において、ソース電極層14、およびドレイン電極層15は、電極層の形状に追従したマスクを用いる成膜方法によって形成されてもよい。あるいは、ソース電極層14、およびドレイン電極層15は、電極層14,15となる電極膜を成膜した後に、エッチング法を用いて電極膜をソース電極層14、およびドレイン電極層15の形状に加工する方法によって形成されてもよい。
【0079】
ソース電極層14、およびドレイン電極層15の形成に用いる成膜方法は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、レーザーアブレーション法、導電性ペーストを用いるスピンコート法、ディップコート法、スリットダイコート法からなる群から選択される少なくとも一種である。あるいは、ゲート電極層12の形成に用いる成膜方法は、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、平版印刷法、インクジェット法からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0080】
[実施例1]
まず、可撓性基板11としてポリイミドフィルムを用い、ゲート電極層12として厚さが100nmのMoNb膜を用いた。ゲート電極層12は、可撓性基板11の上面にシャドウマスクを配置し、MoNb焼結体をターゲットとする無加熱スパッタ法を用いて形成した。無加熱スパッタ法によるMoNb膜の成膜条件を以下に示す。
【0081】
<MoNb膜の成膜条件>
・ターゲット組成比 :Mo(at%):Nb(at%)=9:1
・スパッタガス :アルゴン
・スパッタガス流量 :45sccm
・成膜圧力 :1.0Pa
・ターゲット電力 :200W(DC)
【0082】
次いで、第1ゲート絶縁膜21として厚さdAが1000nmのアクリルポリマー膜を用い、第2ゲート絶縁膜22として厚さdBが2nmの酸化珪素膜を用いた。
アクリルポリマー膜の形成は、まず、アクリルポリマーを有機高分子化合物とするスピンコート法を用いて、可撓性基板11およびゲート電極層12の上面に塗布膜を積層した。次いで、塗布膜を焼成して、アクリルポリマー膜を得た。
【0083】
なお、比誘電率εAを測定するための基板に実施例1の第1ゲート絶縁膜21を形成し、比誘電率εAを測定した結果、実施例1の第1ゲート絶縁膜21における比誘電率εAは3.5であった。スピンコート法による上記アクリルポリマー膜の成膜条件を以下に示す。
【0084】
<アクリルポリマー膜の成膜条件>
・基材回転速度 :730rpm/30秒
・仮焼成温度 :90℃
・仮焼成時間 :2分
・本焼成温度 :200℃
・本焼成時間 :1時間
【0085】
酸化珪素膜の形成では、平行平板のプラズマCVD法を用いて、アクリルポリマー膜の上面に酸化珪素膜を積層した。なお、比誘電率εBを測定するための基板に実施例1の酸化珪素膜を形成し、比誘電率εBを測定した結果、実施例1の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、4.7であった。平行平板のプラズマCVD法による上記酸化珪素膜の成膜条件を以下に示す。
<酸化珪素膜の成膜条件>
・基材温度 :200℃
・反応ガス :シラン/一酸化二窒素
・反応ガス流量 :65sccm(シラン)、500sccm(一酸化二窒素)
・成膜圧力 :200Pa
・高周波電力 :500W
・高周波電力周波数 :13.56MHz
【0086】
実施例1のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.00149であった。
水素含有率rHを測定するための基板に実施例1の酸化珪素膜を形成し、実施例1の第2ゲート絶縁膜22について、水素前方散乱分析法(Hydrogen Forward Scattering Spectrometry:HFS)を用い、水素含有率rH(原子濃度:at%)を測定した。実施例1の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、9.7at%であった。なお、ラザフォード後方散乱法(Rutherford Backscattering Spectrometry:RBS)を用いた実施例1の酸化珪素膜における珪素含有量は31.2at%であり、酸素含有量は58.0at%であり、窒素、および炭素は検出限界以下であることが認められた。
【0087】
次いで、半導体層13として厚さが35nmのInGaZnO膜を用いた。InGaZnO膜は、第2ゲート絶縁膜22の上面にシャドウマスクを配置し、InGaZnO焼結体をターゲットとする無加熱スパッタ法を用いて形成した。無加熱スパッタ法によるInGaZnO膜の成膜条件を以下に示す。
<InGaZnO膜の成膜条件>
・ターゲット組成比 :原子質量% In:Ga:Zn:O=1:1:1:4
・スパッタガス :アルゴン/酸素
・スパッタガス流量 :50sccm(アルゴン)、0.2sccm(酸素)
・成膜圧力 :1.0Pa
・ターゲット電力 :300W
・ターゲット周波数 :13.56MHz
【0088】
次いで、ソース電極層14として厚さが100nmのMoNb膜を用いた。また、ドレイン電極層15として厚さが100nmのMoNb膜を用いた。ソース電極層14、およびドレイン電極層15は、第2ゲート絶縁膜22、および半導体層13の上面にシャドウマスクを配置し、MoNb焼結体をターゲットとする無加熱スパッタ法を用いて形成した。無加熱スパッタ法によるMoNb膜の成膜条件を以下に示す。
<MoNb膜の成膜条件>
・ターゲット組成比 :原子質量% Mo:Nb=9:1
・スパッタガス :アルゴン
・スパッタガス流量 :45sccm
・成膜圧力 :1.0Pa
・ターゲット電力 :200W(DC)
【0089】
そして、可撓性基板11、ゲート電極層12、第1ゲート絶縁膜21、第2ゲート絶縁膜22、半導体層13、ソース電極層14、およびドレイン電極層15を150℃でアニールし、これにより、実施例1のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。実施例1の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
【0090】
[実施例2]
第2ゲート絶縁膜22として厚さdBが5nmの酸化珪素膜を用い、第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例1と同じくして、実施例2のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。第2ゲート絶縁膜22の形成では、実施例1の成膜条件における成膜時間を変更し、成膜時間以外の条件を実施例1と同じくして、実施例2の酸化珪素膜を得た。
【0091】
実施例2の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、9.7at%であった。実施例2の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、4.7であり、実施例2のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.00372であった。実施例2の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
【0092】
[実施例3]
第2ゲート絶縁膜22として厚さdBが20nmの酸化珪素膜を用い、第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例1と同じくして、実施例3のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。第2ゲート絶縁膜22の形成では、実施例1の成膜条件における成膜時間を変更し、成膜時間以外の条件を実施例1と同じくして、実施例3の酸化珪素膜を得た。
【0093】
実施例3の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、9.7at%であった。実施例3の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、4.7であり、実施例3のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.01489であった。実施例3の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
【0094】
[実施例4]
第2ゲート絶縁膜22として厚さが5nmの窒化珪素膜を用い、第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例1と同じくして、実施例4のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。窒化珪素膜は、平行平板プラズマCVD法を用いて、アクリルポリマー膜の上面に形成した。プラズマCVD法による窒化珪素膜の成膜条件を以下に示す。
<窒化珪素膜の成膜条件>
・基材温度 :200℃
・反応ガス :シラン/アンモニア/水素/窒素
・反応ガス流量 :10sccm(シラン)、70sccm(アンモニア)
3000sccm(水素)、2000sccm(窒素)
・成膜圧力 :300Pa
・高周波電力 :500W
・高周波電力周波数 :13.56MHz
【0095】
実施例4の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、14.1at%であった。実施例4の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、7.8であり、実施例4のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.00224であった。実施例4の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。なお、ラザフォード後方散乱法(Rutherford Backscattering Spectrometry:RBS)を用いた実施例4の窒化珪素膜における珪素含有量は40.1at%であり、窒素含有量は43.5at%であり、酸素含有量は1.9at%であり、炭素は検出限界以下であることが認められた。
【0096】
[実施例5]
第2ゲート絶縁膜22として厚さdBが15nmの窒化珪素膜を用い、第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例1と同じくして、実施例5のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。第2ゲート絶縁膜22の形成では、実施例4の成膜条件における成膜時間を変更し、成膜時間以外の条件を同じくして、窒化珪素膜を得た。
【0097】
実施例5の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、14.1at%であった。実施例5の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、7.8であり、実施例5のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.01346であった。実施例5の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
【0098】
[実施例6]
第2ゲート絶縁膜22として厚さdBが20nmの酸化窒化珪素膜を用い、第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例1と同じくして、実施例6のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。酸化窒化珪素膜は、平行平板プラズマCVD法を用いて、アクリルポリマー膜の上面に形成した。プラズマCVD法による酸化窒化珪素膜の成膜条件を以下に示す。
<酸化窒化珪素膜の成膜条件>
・基材温度 :200℃
・反応ガス :シラン/アンモニア/水素/一酸化二窒素
・反応ガス流量 :10sccm(シラン)、60sccm(アンモニア)
3000sccm(水素)、1500sccm(窒素)
・成膜圧力 :300Pa
・高周波電力 :500W
・高周波電力周波数 :13.56MHz
【0099】
実施例6の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、14.1at%であった。実施例6の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、6.1であり、実施例6のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.01147であった。実施例6の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
【0100】
[実施例7]
第2ゲート絶縁膜22として厚さdBが5nmの酸化珪素膜を用い、第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例1と同じくして、実施例7のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。酸化珪素膜の形成では、平行平板のプラズマCVD法を用いて、アクリルポリマー膜の上面に酸化珪素膜を積層した。平行平板のプラズマCVD法による酸化珪素膜の成膜条件を以下に示す。
<酸化珪素膜の成膜条件>
・基材温度 :200℃
・反応ガス :シラン/一酸化二窒素
・反応ガス流量 :65sccm(シラン)、600sccm(一酸化二窒素)
・成膜圧力 :200Pa
・高周波電力 :500W
・高周波電力周波数 :13.56MHz
【0101】
実施例7の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、3.0at%であった。実施例7の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、4.2であり、実施例7のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.00417であった。実施例7の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
【0102】
[実施例8]
第2ゲート絶縁膜22として厚さdBが25nmの酸化珪素膜を用い、第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例1と同じくして、実施例8のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。酸化珪素膜の形成では、平行平板のプラズマCVD法を用いて、アクリルポリマー膜の上面に酸化珪素膜を積層した。酸化珪素膜の形成では、実施例1の成膜条件における成膜時間を変更し、成膜時間以外の条件を実施例1と同じくして、実施例8の酸化珪素膜を得た。
【0103】
実施例8の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、9.7at%であった。実施例8の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、4.7であり、実施例8のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.01861であった。実施例8の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
【0104】
[実施例9]
第1ゲート絶縁膜21として厚さdAが2500nmのアクリルポリマー膜を用いた。第2ゲート絶縁膜22として厚さdBが3nmの酸化珪素膜を用い、第1ゲート絶縁膜21、および第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例1と同じくして、実施例9のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。アクリル膜の形成では、実施例8の成膜条件における塗布量を変更し、塗布量以外の条件を実施例1と同じくして、実施例9のアクリルポリマー膜を得た。酸化珪素膜の形成では、実施例1の成膜条件における成膜時間を変更し、成膜時間以外の条件を実施例1と同じくして、実施例9の酸化珪素膜を得た。
【0105】
実施例9の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、9.7at%であった。実施例9の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、4.7であり、実施例9のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.00089であった。実施例9の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
【0106】
[実施例10]
第1ゲート絶縁膜21として厚さdAが2000nmのアクリルポリマー膜を用い、第2ゲート絶縁膜22として厚さdBが4nmの窒化珪素膜を用い、第1ゲート絶縁膜21、および第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例4と同じくして、実施例10のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。アクリル膜の形成では、実施例4の成膜条件における塗布量を変更し、塗布量以外の条件を実施例4と同じくして、実施例10のアクリルポリマー膜を得た。窒化珪素膜の形成では、実施例4の成膜条件における成膜時間を変更し、成膜時間以外の条件を実施例4と同じくして、実施例10の窒化珪素膜を得た。
【0107】
実施例10の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、14.1at%であった。実施例10の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、7.8であり、実施例10のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.00090であった。実施例10の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
【0108】
[実施例11]
第1ゲート絶縁膜21として厚さdAが600nmのアクリルポリマー膜を用い、第2ゲート絶縁膜22として厚さdBが7nmの酸化珪素膜を用い、第1ゲート絶縁膜21、および第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例1と同じくして、実施例11のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。アクリル膜の形成では、実施例1の成膜条件における塗布量を変更し、塗布量以外の条件を実施例1と同じくして、実施例11のアクリルポリマー膜を得た。酸化珪素膜の形成では、実施例1の成膜条件における成膜時間を変更し、成膜時間以外の条件を実施例1と同じくして、実施例11の酸化珪素膜を得た。
【0109】
実施例11の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、9.7at%であった。実施例11の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、4.7であり、実施例11のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.00869であった。実施例11の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
【0110】
[実施例12]
第1ゲート絶縁膜21として厚さdAが400nmのアクリルポリマー膜を用い、第2ゲート絶縁膜22として厚さdBが7nmの酸化珪素膜を用い、第1ゲート絶縁膜21、および第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例1と同じくして、実施例12のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。アクリル膜の形成では、実施例1の成膜条件における塗布量を変更し、塗布量以外の条件を実施例1と同じくして、実施例12のアクリルポリマー膜を得た。酸化珪素膜の形成では、実施例1の成膜条件における成膜時間を変更し、成膜時間以外の条件を実施例1と同じくして、実施例12の酸化珪素膜を得た。
【0111】
実施例12の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、9,7at%であった。実施例12の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、4.7であり、実施例12のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.01303であった。実施例12の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
[実施例13]
第1ゲート絶縁膜21として厚さdAが300nmのアクリルポリマー膜を用い、第2ゲート絶縁膜22として厚さdBが4nmの窒化珪素膜を用い、第1ゲート絶縁膜21、および第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例4と同じくして、実施例13のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。アクリル膜の形成では、実施例1の成膜条件における塗布量を変更し、塗布量以外の条件を実施例1と同じくして、実施例13のアクリルポリマー膜を得た。窒化珪素膜の形成では、実施例4の成膜条件における成膜時間を変更し、成膜時間以外の条件を実施例4と同じくして、実施例13の窒化珪素膜を得た。
実施例13の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、14.1at%であった。実施例13の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、7.8であり、実施例13のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.00598であった。実施例13の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
[実施例14]
第1ゲート絶縁膜21として厚さdAが600nmのアクリルポリマー膜を用い、第2ゲート絶縁膜22として厚さdBが4nmの窒化珪素膜を用い、第1ゲート絶縁膜21、および第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例4と同じくして、実施例14のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。アクリル膜の形成では、実施例4の成膜条件における塗布量を変更し、塗布量以外の条件を実施例4と同じくして、実施例14のアクリルポリマー膜を得た。窒化珪素膜の形成では、実施例4の成膜条件における成膜時間を変更し、成膜時間以外の条件を実施例4と同じくして、実施例14の窒化珪素膜を得た。
実施例14の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、14.1at%であった。実施例14の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、7.8であり、実施例14のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.00298であった。実施例14の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
[実施例15]
第2ゲート絶縁膜22として厚さdBが25nmの酸化珪素膜を用い、第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例1と同じくして、実施例15のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。酸化珪素膜の形成では、平行平板のプラズマCVD法を用いて、アクリルポリマー膜の上面に酸化珪素膜を積層した。平行平板のプラズマCVD法による酸化珪素膜の成膜条件を以下に示す。
<酸化珪素膜の成膜条件>
・基材温度 :200℃
・反応ガス :シラン/一酸化二窒素
・反応ガス流量 :65sccm(シラン)、400sccm(一酸化二窒素)
・成膜圧力 :200Pa
・高周波電力 :500W
・高周波電力周波数 :13.56MHz
実施例13の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、12.1at%であった。実施例13の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、4.7であり、実施例15のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.01861であった。実施例15の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
[実施例16]
第2ゲート絶縁膜22として厚さdBが25nmの窒化珪素膜を用い、第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例4と同じくして、実施例16のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。窒化珪素膜は、平行平板プラズマCVD法を用いて、アクリルポリマー膜の上面に形成した。プラズマCVD法による窒化珪素膜の成膜条件を以下に示す。
<窒化珪素膜の成膜条件>
・基材温度 :200℃
・反応ガス :シラン/アンモニア/水素/窒素
・反応ガス流量 :10sccm(シラン)、70sccm(アンモニア)
2500sccm(水素)、2000sccm(窒素)
・成膜圧力 :300Pa
・高周波電力 :500W
・高周波電力周波数 :13.56MHz
実施例16の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、6.9at%であった。実施例16の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、7.8であり、実施例16のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.01122であった。実施例16の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
【0112】
[比較例1]
図3が示すように、比較例1の薄膜トランジスタは、
図2で説明したボトムゲート・ボトムコンタクト型トランジスタから第2ゲート絶縁膜22を省略した多層構造体である。すなわち、比較例1の薄膜トランジスタは、第1ゲート絶縁膜21の上面にソース電極層14とドレイン電極層15とを備える。また、比較例1の薄膜トランジスタは、ソース電極層14とドレイン電極層15とを接続するように、ソース電極層14の上面、ドレイン電極層15の上面、および第1ゲート絶縁膜21の上面に半導体層13を備える。
【0113】
比較例1の薄膜トランジスタの形成には、実施例1の薄膜トランジスタの形成と同じく、可撓性基板11としてポリイミドフィルムを用い、ゲート電極層12として厚さが100nmのMoNb膜を用い、そして、第1ゲート絶縁膜21として厚さが1000nmのアクリルポリマー膜を用いた。MoNb膜の成膜条件、およびアクリルポリマー膜の成膜条件は、実施例1と同じ条件を用いた。
【0114】
また、比較例1の薄膜トランジスタの形成では、第1ゲート絶縁膜21の上面にシャドウマスクを配置して、ソース電極層14として厚さが100nmのMoNb膜を形成し、ドレイン電極層15として厚さが100nmのMoNb膜を形成した。MoNb膜の成膜条件は、実施例1と同じ無加熱スパッタ法を用いた。次いで、ソース電極層14とドレイン電極層15とを接続するように、第1ゲート絶縁膜21の上面に半導体層13としてInGaZnO膜を形成した。InGaZnO膜の成膜条件は、実施例1と同じ無加熱スパッタ法を用いた。そして、実施例1と同じく、150℃のアニールを行うことによって、比較例1の薄膜トランジスタを得た。比較例1の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
【0115】
[比較例2]
第2ゲート絶縁膜22として厚さdBが50nmの酸化珪素膜を用い、第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例1と同じくして、比較例2のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。第2ゲート絶縁膜22の形成では、実施例1の成膜条件における成膜時間を変更し、成膜時間以外の条件を実施例1と同じくして、比較例2の酸化珪素膜を得た。
【0116】
比較例2の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、9.7at%であった。比較例2の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、4.7であり、比較例2のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.03723であった。比較例2の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
【0117】
[比較例3]
第2ゲート絶縁膜22として厚さdBが35nmの窒化珪素膜を用い、第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例4と同じくして、比較例3のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。第2ゲート絶縁膜22の形成では、実施例4の成膜条件における成膜時間を変更し、成膜時間以外の条件を実施例4と同じくして、比較例3の窒化珪素膜を得た。
【0118】
比較例3の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、14.1at%であった。比較例3の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、7.8であり、比較例4のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.01571であった。比較例4の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
【0119】
[比較例4]
第2ゲート絶縁膜22として厚さdBが5nmの酸化珪素膜を用い、第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例1と同じくして、比較例4のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。酸化珪素膜の形成では、平行平板のプラズマCVD法を用いて、アクリルポリマー膜の上面に酸化珪素膜を積層した。平行平板のプラズマCVD法による酸化珪素膜の成膜条件を以下に示す。
<酸化珪素膜の成膜条件>
・基材温度 :200℃
・反応ガス :シラン/一酸化二窒素
・反応ガス流量 :65sccm(シラン)、700sccm(一酸化二窒素)
・成膜圧力 :200Pa
・高周波電力 :500W
・高周波電力周波数 :13.56MHz
【0120】
比較例4の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、1.0at%であった。比較例4の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、3.9であり、比較例4のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.00449であった。比較例4の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
【0121】
[比較例5]
第2ゲート絶縁膜22として厚さが10nmの窒化珪素膜を用い、第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例4と同じくして、比較例5のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。窒化珪素膜は、平行平板プラズマCVD法を用いて、アクリルポリマー膜の上面に形成した。プラズマCVD法による窒化珪素膜の成膜条件を以下に示す。
<窒化珪素膜の成膜条件>
・基材温度 :200℃
・反応ガス :シラン/アンモニア/水素/窒素
・反応ガス流量 :10sccm(シラン)、70sccm(アンモニア)
2000sccm(水素)、2000sccm(窒素)
・成膜圧力 :300Pa
・高周波電力 :500W
・高周波電力周波数 :13.56MHz
【0122】
比較例5の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、1.2at%であった。比較例5の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、6.8であり、比較例5のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.00515であった。比較例5の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
【0123】
[比較例6]
第2ゲート絶縁膜22として厚さdBが25nmの酸化珪素膜を用い、第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例1と同じくして、比較例6のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。酸化珪素膜の形成では、平行平板のプラズマCVD法を用いて、アクリルポリマー膜の上面に酸化珪素膜を積層した。平行平板のプラズマCVD法による酸化珪素膜の成膜条件を以下に示す。
<酸化珪素膜の成膜条件>
・基材温度 :200℃
・反応ガス :シラン/一酸化二窒素
・反応ガス流量 :65sccm(シラン)、800sccm(一酸化二窒素)
・成膜圧力 :200Pa
・高周波電力 :500W
・高周波電力周波数 :13.56MHz
【0124】
比較例6の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、1.0at%未満であった。比較例6の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、3.9であり、比較例6のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.02244であった。比較例6の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
【0125】
[比較例7]
第2ゲート絶縁膜22として厚さdBが15nmの酸化珪素膜を用い、第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例1と同じくして、比較例7のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。酸化珪素膜の形成では、平行平板のプラズマCVD法を用いて、アクリルポリマー膜の上面に酸化珪素膜を積層した。平行平板のプラズマCVD法による酸化珪素膜の成膜条件を以下に示す。
<酸化珪素膜の成膜条件>
・基材温度 :200℃
・反応ガス :シラン/一酸化二窒素
・反応ガス流量 :65sccm(シラン)、300sccm(一酸化二窒素)
・成膜圧力 :200Pa
・高周波電力 :500W
・高周波電力周波数 :13.56MHz
【0126】
比較例7の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、16.2at%であった。比較例7の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、5.1であり、比較例7のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.01029であった。比較例7の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
【0127】
[比較例8]
第2ゲート絶縁膜22として厚さが15nmの窒化珪素膜を用い、第2ゲート絶縁膜22以外の構成を実施例4と同じくして、比較例8のボトムゲート・トップコンタクト型トランジスタを得た。窒化珪素膜は、平行平板プラズマCVD法を用いて、アクリルポリマー膜の上面に形成した。プラズマCVD法による窒化珪素膜の成膜条件を以下に示す。
<窒化珪素膜の成膜条件>
・基材温度 :200℃
・反応ガス :シラン/アンモニア/水素/窒素
・反応ガス流量 :10sccm(シラン)、70sccm(アンモニア)
5000sccm(水素)、2000sccm(窒素)
・成膜圧力 :300Pa
・高周波電力 :500W
・高周波電力周波数 :13.56MHz
【0128】
比較例8の第2ゲート絶縁膜22における水素含有率rHは、21.7at%であった。比較例8の第2ゲート絶縁膜22における比誘電率εBは、8.1であり、比較例8のゲート絶縁層における誘電特性値Kは、0.00648であった。比較例8の薄膜トランジスタにおけるチャンネル長は200μmであり、チャンネル幅は2000μmであった。
【0129】
[評価]
実施例1~16、および比較例1~8の薄膜トランジスタについて、半導体パラメータアナライザ(B1500A:アジレント・テクノロジー株式会社製)を用い、伝達特性を測定した。そして、伝達特性から、移動度、負荷試験前後におけるしきい値電圧の変化量ΔVth、および屈曲試験前後における移動度の減少率を算出した。
【0130】
しきい値電圧の測定、および移動度の算出は、まず、ソース電極層14の電圧を0V、ソース電極層14とドレイン電極層15との間の電圧であるソース-ドレイン電圧Vdsを10Vに設定し、ゲート電圧Vgsとドレイン電流Idとの関係である伝達特性を得た。ゲート電圧Vgsは、ソース電極層14とゲート電極層12との間の電圧である。ドレイン電流Idは、ドレイン電極層15に流れる電流である。この際、ゲート電極層12の電圧を-20Vから+20Vまで変化させることによって、ゲート電圧Vgsを変化させた。そして、ドレイン電流Idが1mAであるときのゲート電圧Vgsをしきい値電圧として測定した。
【0131】
次いで、ゲート電圧Vgsとドレイン電流Idとの伝達特性を用い、ゲート電圧Vgsの変化に対するドレイン電流Idの変化である相互コンダクタンスGm(A/V)を算出した。そして、線形領域における相互コンダクタンスGmとソース-ドレイン電圧Vdsとの関係式に、第1ゲート絶縁膜21の比誘電率εAと厚さdA、第2ゲート絶縁膜22の比誘電率εBと厚さdB、チャンネル長、チャンネル幅、およびソース-ドレイン電圧Vdsを適用して、移動度を算出した。なお、相互コンダクタンスGmとソース-ドレイン電圧Vdsとの関係式は、ソース-ドレイン電圧Vds、ゲート絶縁層の容量、移動度の積に相互コンダクタンスGmが比例すると見なす。相互コンダクタンスGmは、d(Id)/d(Vg)によって表される。
【0132】
しきい値電圧の変化量ΔVthの測定に用いた負荷試験(Negative Bias Temperature Stress: NBTS)は、ゲート電極層12の電圧を-20V、ソース-ドレイン電圧Vdsを0V、ストレス温度を60℃、ストレス印加時間を1時間に設定した。すなわち、薄膜トランジスタのソース電極層14とドレイン電極層15とを同電位に設定し、ソース電極層14およびドレイン電極層15よりも低い電位をゲート電極層12に一定時間印加した。そして、負荷試験前のしきい値電圧から負荷試験後のしきい値電圧を減算し、減算値をしきい値電圧の変化量ΔVthとして測定した。
【0133】
移動度の減少率測定に用いた屈曲試験は、曲率半径が1mmとなるように可撓性基板11を曲げて戻し、可撓性基板11の曲げを100000回にわたり繰り返した。そして、屈曲試験前の移動度に対する、屈曲試験前の移動度と屈曲試験後の移動度の差分値の割合を、移動度の減少率として算出した。
【0134】
図4は、実施例1~16、および比較例1~8について、第2ゲート絶縁膜22の厚さd
Bと水素含有率r
Hとに対する移動度の減少率を示す。
図4における白抜き丸印は、第2ゲート絶縁膜22が酸化珪素膜であり、移動度の減少率が20%未満である水準を示す。
図4における黒塗り丸印は、第2ゲート絶縁膜22が酸化珪素膜であり、移動度の減少率が20%以上である水準を示す。
図4における白抜き四角印は、第2ゲート絶縁膜22が窒化珪素膜であり、移動度の減少率が20%未満である水準を示す。
図4における黒塗り四角印は、第2ゲート絶縁膜22が窒化珪素膜であり、移動度の減少率が20%以上である水準を示す。
図4における白抜き三角印は、第2ゲート絶縁膜22が酸化窒化珪素膜であり、移動度の減少率が19%以下である水準を示す。
【0135】
図5は、実施例1~16、および比較例1~8について、第2ゲート絶縁膜22の厚さd
Bと誘電特性値Kとに対する移動度の減少率を示す。
図5における白抜き丸印は、第2ゲート絶縁膜22が酸化珪素膜であり、移動度の減少率が20%未満である水準を示す。
図5における黒塗り丸印は、第2ゲート絶縁膜22が酸化珪素膜であり、移動度の減少率が20%以上である水準を示す。
図5における白抜き四角印は、第2ゲート絶縁膜22が窒化珪素膜であり、移動度の減少率が20%未満である水準を示す。
図5における黒塗り四角印は、第2ゲート絶縁膜22が窒化珪素膜であり、移動度の減少率が20%以上である水準を示す。
図5における白抜き三角印は、第2ゲート絶縁膜22が酸化窒化珪素膜であり、移動度の減少率が19%以下である水準を示す。
【0136】
図6、
図7は、実施例1~16、および比較例1~8について、第1ゲート絶縁膜21の比誘電率ε
Aと厚さd
A、第2ゲート絶縁膜22の比誘電率ε
B、材料、厚さd
B、および水素含有率r
H、誘電特性値K、移動度、しきい値電圧の変化量ΔVth、および移動度の減少率を示す。
【0137】
図6が示すように、実施例1~16の移動度は、それぞれ8.0cm
2/V以上という高い値であった。一方、比較例1,4~8の移動度は、それぞれ5.1cm
2/V以下という低い値であった。
【0138】
実施例1~16のしきい値電圧の変化量ΔVthは、それぞれ-1.9V以上-0.2以下という小さい値であった。一方、比較例1,4~8のしきい値電圧の変化量ΔVthは、それぞれ-10.0V以下という大きい値であった。
【0139】
実施例1~16の移動度の減少率は、それぞれ19%以下という低い値であった。一方、比較例1,4,5,8の移動度の減少率は、それぞれ20%以上という高い値であった。
【0140】
他方、比較例2,3の薄膜トランジスタは、実施例1~16の移動度と同様に、11.4cm2/V以上という高い値を示し、かつしきい値電圧の変化量ΔVthが、-1.1V以上-0.2以下という小さい値であるが、屈曲試験後において割れ、あるいは剥がれが認められた。
【0141】
まず、実施例1~16と比較例1との比較から、第2ゲート絶縁膜22が存在することによって、しきい値電圧の変化量ΔVthを抑えられることが認められた。一方で、実施例1~16と比較例4~8との比較から、高い移動度を保ち、かつしきい値電圧の変化量ΔVthを抑制することに、第2ゲート絶縁膜22の水素含有率rHが大きく寄与し、適した範囲が存在することが認められた。
【0142】
例えば、実施例3,6,15および比較例4,7が示す、しきい値電圧の変化量ΔVthおよび移動度の減少率と水素含有率rHとの関係から、酸素を含む無機珪素化合物において、水素含有率rHが2at%以上であれば、しきい値電圧の変化量ΔVthを抑えられ、また20%未満のように、移動度の減少率を抑えられることが認められた。また、水素含有率rHが15at%以下であれば、しきい値電圧の変化量ΔVthを抑えられ、かつ高い移動度が得られることが認められた。特に、第2ゲート絶縁膜22が酸化珪素膜である場合、水素含有率rHが14at%(実施例15と比較例7との中間値)以下であれば、低い変化量ΔVth、高い移動度、およびその低い減少率が得られるという効果の実効性が高まることも認められた。
【0143】
例えば、実施例4,5,6,16および比較例5,8が示す、しきい値電圧の変化量ΔVthおよび移動度の減少率と水素含有率rHとの関係から、窒素を含む無機珪素化合物においても、水素含有率rHが2at%以上であれば、しきい値電圧の変化量ΔVthを抑えられ、また20%未満のように、移動度の減少率を抑えられることが認められた。また、水素含有率rHが15at%以下であれば、しきい値電圧の変化量ΔVthを抑えら、かつ高い移動度が得られることが認められた。特に、第2ゲート絶縁膜22が窒化珪素膜である場合、水素含有率rHが18at%(実施例4と比較例8との中間値)以下であれば、低い変化量ΔVth、高い移動度、およびその低い減少率が得られる効果の実効性が高まることが認められた。
【0144】
次に、実施例1~3,6,8および比較例2が示す厚さdBと移動度の減少率との関係から、酸素を含む無機珪素化合物の厚さdBが薄いほど、移動度の減少率が低いことが認められた。また実施例4~6および比較例3が示す厚さdBと移動度の減少率との関係からも、窒素を含む無機珪素化合物の厚さdBが薄いほど、移動度の減少率が低いことが認められた。
【0145】
これらにより、各実施例と比較例4~8との比較から、無機珪素化合物の水素含有量が条件1を満たし、かつ各実施例と比較例1~3との比較から、厚さdBが条件2を満たすことによって、8.0cm2/V以上の高い移動度が得られることが認められた。そして、可撓性基板11の曲げに起因した移動度の低下を抑制可能であることが認められた。なお、こうした可撓性基板11の曲げに対する移動度の耐久性は、誘電特性値Kが式1を満たす構成のなかで、条件1および条件2を満たす水準で得られることが認められた。
【0146】
特に、第2ゲート絶縁膜22が酸化珪素膜である場合、実施例2,3と比較例6,7との比較から、酸化珪素膜の水素含有量が条件3を満たし、かつ実施例1,8と比較例1,2との比較から、厚さdBが条件4を満たすことによって、移動度の低下抑制効果の実効性を高められることが認められた。すなわち、実施例8と比較例2との厚さdBの中間値に基づいて、条件4を満たすことによって、移動度の低下抑制効果について実効性を高められることが認められた。
【0147】
特に、第2ゲート絶縁膜22が窒化珪素膜である場合、実施例4,5と比較例5,8との比較から、窒化珪素膜の水素含有量が条件5を満たし、かつ実施例5,10と比較例1,3との比較から、厚さdBが条件6を満たすことによって、移動度の低下抑制効果の実行性を高められることが認められた。すなわち、実施例5と比較例3との厚さdBの中間値に基づいて、条件6を満たすことによって、移動度の低下抑制効果について実行性を高められることが認められた。
【0148】
さらに、実施例2,3,8の第2ゲート絶縁膜22を備える構成であれば、実施例1,7,9よりも高い移動度が得られることが認められた。そのため、酸化珪素膜の水素含有量が6at%以上10at%以下であり、かつ酸化珪素膜の厚さdBが5nm以上25nm以下である構成であれば、移動度を高めることが可能ともなる。
【0149】
そのうえ、実施例2,3の第2ゲート絶縁膜22を備える構成であれば、実施例1,7~9よりも高い移動度を得られ、かつ8%以下という低い移動度の減少率を得られることが認められた。そのため、酸化珪素膜の水素含有量が6at%以上10at%以下であり、かつ酸化珪素膜の厚さdBが5nm以上20nm以下である構成であれば、より高い移動度を屈曲試験後に得られることが可能ともなる。
【0150】
なお、実施例9,10と実施例11~14との比較によれば、第1ゲート絶縁膜21の厚さdAが300nmであれ、2500nmであれ、低い変化量ΔVth、高い移動度、およびその低い減少率が得られることも認められた。特に、第1ゲート絶縁膜21の厚さdAが薄いほど、変化量ΔVthは低く、移動度は高く、そして移動度の減少率が低いという傾向が認められた。そのため、移動度の減少率を低めることを要求される場合、第1ゲート絶縁膜21の厚さdAは1000nm以下であることが好ましく、600nm以下であることがより好ましく、400nm以下であることがさらに好ましい。
【0151】
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)上記条件1~6を満たす構成であれば、しきい値電圧の変化量を低めること、かつ半導体層13の移動度を高めることが可能になると共に、可撓性基板11の曲げに対する移動度の変化を抑えることが可能となる。
(2)誘電特性値Kが0.001以上であって0.015よりも小さい場合、上記(1)に準じた効果を高い移動度のもとで得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0152】
C…チャンネル領域
L…チャンネル長
11…可撓性基板
11S…支持面
11S1…第1部分
11S2…第2部分
12…ゲート電極層
13…半導体層
14…ソース電極層
15…ドレイン電極層
21…第1ゲート絶縁膜
22…第2ゲート絶縁膜