(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】硬貨識別装置及び貨幣取扱装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/10 20190101AFI20250212BHJP
G07D 5/02 20060101ALI20250212BHJP
G07D 5/08 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
G07D11/10
G07D5/02 101
G07D5/08
(21)【出願番号】P 2021097576
(22)【出願日】2021-06-10
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】西濃 信晴
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-086454(JP,A)
【文献】特開2019-061463(JP,A)
【文献】特開2010-182163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/00-11/60
G07D 5/00- 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨が搬送方向に沿って搬送される搬送路を形成し、当該硬貨を案内する案内面と、当該案内面上で前記搬送方向と直交する幅方向に関して当該硬貨の移動範囲を規制する基準面とを有する搬送ガイドと、
前記硬貨の情報を検出するセンサと、
前記硬貨を前記基準面に向けて前記幅方向に付勢する第1付勢部と、
前記搬送方向に関して前記第1付勢部の下流側又は上流側に設けられ、前記硬貨を少なくとも前記基準面に向けて付勢する第2付勢部と
を具え
、
前記第2付勢部は、
一端及び他端の間で可撓性を有する可撓性部材と、
前記可撓性部材のうち前記案内面から遠方に位置する前記他端を保持する保持部と
を具え、
前記可撓性部材の前記一端と前記案内面との間隔が、前記硬貨のうち厚さが最も小さい最小厚硬貨の厚さよりも小さい
ことを特徴とする硬貨識別装置。
【請求項2】
前記第2付勢部は、前記可撓性部材の前記一端側が前記搬送路内を搬送される前記硬貨と当接すると、前記基準面から遠ざかる方向成分を含む方向へ撓むと共に、当該硬貨を少なくとも前記基準面に向けて付勢する
ことを特徴とする請求項
1に記載の硬貨識別装置。
【請求項3】
前記第2付勢部は、
前記可撓性部材の前記基準面側に設けられ、当該可撓性部材の前記一端側が前記基準面側に撓むことを規制する規制部
をさらに具えることを特徴とする請求項
2に記載の硬貨識別装置。
【請求項4】
前記可撓性部材は、線状に形成された複数の毛体が束ねられている
ことを特徴とする請求項
1に記載の硬貨識別装置。
【請求項5】
前記第2付勢部は、前記搬送方向に沿って延在する略直線状に形成されている
ことを特徴とする請求項
1に記載の硬貨識別装置。
【請求項6】
前記第2付勢部は、前記硬貨を前記基準面及び前記案内面に向けて付勢する
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨識別装置。
【請求項7】
前記第1付勢部は、前記硬貨と当接する当接部を有し、前記基準面に対して近接又は離隔することにより当該当接部と当該基準面との間隔を変更可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨識別装置。
【請求項8】
前記第1付勢部の前記当接部は、前記案内面から離れるに連れて前記基準面側に近付くように傾斜する当接部側傾斜面を有する
ことを特徴とする請求項
7に記載の硬貨識別装置。
【請求項9】
前記基準面は、前記案内面から離れるに連れて前記第1付勢部の前記当接部に近付くように傾斜する基準面側傾斜面を有する
ことを特徴とする請求項
7に記載の硬貨識別装置。
【請求項10】
前記搬送ガイドは、前記案内面における前記幅方向の長さが、前記硬貨のうち直径が最も大きい最大径硬貨の当該直径よりも大きく、
前記第2付勢部は、前記幅方向に関する前記基準面との間隔が、当該基準面と当接した状態の前記最大径硬貨の半径よりも大きくなる位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨識別装置。
【請求項11】
前記搬送方向に沿って走行し、前記硬貨に対し前記搬送方向に向かう力を作用させる搬送作用部
をさらに具え、
前記第2付勢部は、前記搬送作用部が走行する箇所を挟んで前記基準面と反対側に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨識別装置。
【請求項12】
前記センサには、前記硬貨の外径を検出する外径センサが含まれ、
前記第2付勢部は、前記搬送方向に関する上流側の端部が、前記外径センサが設けられる位置よりも上流側に位置している
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨識別装置。
【請求項13】
前記センサには、前記硬貨を撮像して画像を取得する光学センサが含まれ、
前記光学センサは、前記第1付勢部により前記硬貨が前記基準面に付勢される位置よりも上流側に配置されている
ことを特徴とする請求項
12に記載の硬貨識別装置。
【請求項14】
前記搬送路を挟んで前記案内面と対向する箇所に配置された搬送対向部
をさらに具え、
前記センサは、前記搬送方向に沿って複数箇所に設けられ、該センサにおける少なくとも一部分は、前記搬送対向部に設けられ、
前記第1付勢部は、前記案内面及び前記搬送対向部に挟まれる範囲の外側において前記硬貨を少なくとも前記基準面に向けて付勢し、
前記第2付勢部は、前記搬送対向部に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨識別装置。
【請求項15】
硬貨が入金される硬貨入金口と、前記硬貨を識別する硬貨識別装置とを有する貨幣取扱装置であって、
前記硬貨識別装置は、
前記硬貨が搬送方向に沿って搬送される搬送路を形成し、当該硬貨を案内する案内面と、当該案内面上で前記搬送方向と直交する幅方向に関して当該硬貨の移動範囲を規制する基準面とを有する搬送ガイドと、
前記硬貨の情報を検出するセンサと、
前記硬貨を前記基準面に向けて前記幅方向に付勢する第1付勢部と、
前記搬送方向に関して前記第1付勢部の下流側又は上流側に設けられ、前記硬貨を少なくとも前記基準面に向けて付勢する第2付勢部と
を具え
、
前記第2付勢部は、
一端及び他端の間で可撓性を有する可撓性部材と、
前記可撓性部材のうち前記案内面から遠方に位置する前記他端を保持する保持部と
を具え、
前記可撓性部材の前記一端と前記案内面との間隔が、前記硬貨のうち厚さが最も小さい最小厚硬貨の厚さよりも小さい
ことを特徴とする貨幣取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬貨識別装置及び貨幣取扱装置に関し、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストア等のような小売店舗の精算所において使用されるレジ釣銭システムに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レジ釣銭システムにおいては、POS(Point Of Sales)システム等に接続されたPOSレジに、紙幣や硬貨の入出金処理を行う釣銭機が組み合わされたものが普及しつつある。この釣銭機のうち硬貨を処理する硬貨処理装置は、例えばレジ係員に硬貨を入金させる硬貨入金口、ベルト等を用いて硬貨を搬送路に沿って搬送する搬送部、投入された硬貨の種類や真偽等を鑑別する認識部、硬貨を金種別に収納する収納庫、及び該収納庫から繰り出された硬貨を貯留してレジ係員に取り出させる出金口等を有したものがある。
【0003】
この硬貨入出金部は、認識部において、搬送部の搬送ベルトにより硬貨を搬送しつつ、搬送路に沿って配置された各種センサにより、当該硬貨から種々の情報を検出するものがある。この認識部では、例えば搬送路に沿って形成された基準面に硬貨の周側面を当接させることにより、硬貨の大きさ(直径)等を検出する際の精度を高めることが考えられる。
【0004】
そこで硬貨処理装置の認識部として、例えば回動可能な幅寄せアームと、当該幅寄せアームを基準面に付勢する幅寄せスプリングとを有する幅寄せ機構を設け、搬送される硬貨を基準面に押し付けることにより、一定の検出精度を得るものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで近年では、偽造防止等の観点から、一部の国や地域では、中央付近と外周部分とで異なる種類の金属を用いた、バイカラークラッド硬貨が発行されている。このため認識部では、バイカラークラッド硬貨の中心部分及び外周部分それぞれに対応するセンサにより、当該硬貨の情報を検出することが考えられる。
【0007】
しかしながら、上述した幅寄せアームを用いた認識部では、幅寄せアームにより基準面に押し付けられた状態で硬貨が搬送されると、搬送中にその姿勢が不安定となる可能性が高く、各センサにおいて一定の検出精度を維持することが難しい、という問題があった。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、センサにより硬貨の特徴を検出する場合の精度を高め得る硬貨識別装置及び貨幣取扱装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明の硬貨識別装置においては、硬貨が搬送方向に沿って搬送される搬送路を形成し、当該硬貨を案内する案内面と、当該案内面上で搬送方向と直交する幅方向に関して当該硬貨の移動範囲を規制する基準面とを有する搬送ガイドと、硬貨の情報を検出するセンサと、硬貨を基準面に向けて幅方向に付勢する第1付勢部と、搬送方向に関して第1付勢部の下流側又は上流側に設けられ、硬貨を少なくとも基準面に向けて付勢する第2付勢部とを設け、第2付勢部は、一端及び他端の間で可撓性を有する可撓性部材と、可撓性部材のうち案内面から遠方に位置する他端を保持する保持部とを設け、可撓性部材の一端と案内面との間隔が、硬貨のうち厚さが最も小さい最小厚硬貨の厚さよりも小さいようにした。
【0010】
また本発明の貨幣取扱装置においては、硬貨が入金される硬貨入金口と、硬貨を識別する硬貨識別装置とを有する貨幣取扱装置であって、硬貨識別装置は、硬貨が搬送方向に沿って搬送される搬送路を形成し、当該硬貨を案内する案内面と、当該案内面上で搬送方向と直交する幅方向に関して当該硬貨の移動範囲を規制する基準面とを有する搬送ガイドと、硬貨の情報を検出するセンサと、硬貨を基準面に向けて幅方向に付勢する第1付勢部と、搬送方向に関して第1付勢部の下流側又は上流側に設けられ、硬貨を少なくとも基準面に向けて付勢する第2付勢部とを設け、第2付勢部は、一端及び他端の間で可撓性を有する可撓性部材と、可撓性部材のうち案内面から遠方に位置する他端を保持する保持部とを設け、可撓性部材の一端と案内面との間隔が、硬貨のうち厚さが最も小さい最小厚硬貨の厚さよりも小さいようにした。
【0011】
本発明は、第1付勢部により硬貨を基準面に向けて付勢して当接させると共に、第2付勢部により当該硬貨を当該基準面に向けて付勢する。このとき第2付勢部は、可撓性部材の一端近傍が硬貨に当接して撓むため、復元力の作用により硬貨を案内面に付勢する。このため本発明は、当該硬貨を基準面及び案内面に当接させた状態を維持したまま、センサにより当該硬貨から情報を精度良く検出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、センサにより硬貨の特徴を検出する場合の精度を高め得る硬貨識別装置及び貨幣取扱装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】レジ釣銭システムの全体構成を示す略線的斜視図である。
【
図3】硬貨入出金部における硬貨の様子を示す略線図である。
【
図5】搬送部、硬貨認識部、リジェクト分岐部及びリジェクト搬送路の構成を示す略線図である。
【
図6】硬貨入出金部における硬貨の経路を示す略線図である。
【
図7】第1の実施の形態による硬貨認識部の構成を示す略線図である。
【
図8】第1の実施の形態による硬貨認識部の構成を示す略線的断面図である。
【
図9】第1の実施の形態による磁気情報取得部の構成を示す略線的断面図である。
【
図10】第1の実施の形態による硬貨の様子を示す略線図である。
【
図11】第1の実施の形態による硬貨の様子を示す略線図である。
【
図12】第1の実施の形態による硬貨の様子を示す略線的断面図である。
【
図13】第1の実施の形態による硬貨の様子を示す略線図である。
【
図14】第1の実施の形態による硬貨の様子を示す略線的断面図である。
【
図15】仮想第1硬貨認識部の構成を示す略線図である。
【
図16】仮想第1硬貨認識部の構成を示す略線的断面図である。
【
図17】仮想第1硬貨認識部による硬貨の様子を示す略線図である。
【
図18】仮想第1硬貨認識部による異物の付着の様子を示す略線図である。
【
図19】仮想第2硬貨認識部の構成を示す略線図である。
【
図20】仮想第2硬貨認識部による硬貨の様子を示す略線図である。
【
図21】仮想第2硬貨認識部において硬貨に作用する力を示す略線図である。
【
図22】第2の実施の形態による硬貨認識部の構成を示す略線図である。
【
図23】第2の実施の形態による硬貨認識部の構成を示す略線的断面図である。
【
図24】第2の実施の形態による硬貨の様子を示す略線的断面図である。
【
図25】第2の実施の形態による硬貨の様子を示す略線的断面図である。
【
図26】他の実施の形態による硬貨認識部の構成を示す略線図である。
【
図27】他の実施の形態による搬送ベルト部の構成を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0015】
[1.第1の実施の形態]
[1-1.レジ釣銭システムの構成]
図1に外観を示すように、第1の実施の形態によるレジ釣銭システム1は、それぞれ独立した装置である上側のPOSレジ2と下側の釣銭機3とにより構成されている。このレジ釣銭システム1は、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストアのような小売店舗の精算所(いわゆるレジ)において、顧客が購入したい商品を精算する際に、レジ係員により操作される。以下では、レジ係員が対峙する正面及びその反対面をそれぞれ前面及び後面とし、さらに該レジ係員から見て左右及び上下を定義して説明する。
【0016】
POSレジ2は、レジ制御部5、表示操作部6及びレシート処理部7を有している。レジ制御部5は、全体を統括制御する。またPOSレジ2には、図示しないバーコードリーダが接続されており、商品に付されたバーコードをこのバーコードリーダで読み取ることにより、該商品を認識する。
【0017】
表示操作部6は、液晶ディスプレイ等でなる表示部と、該液晶ディスプレイに重ねて配置されたタッチパネル等でなる操作部とにより構成されている。表示操作部6は、認識した商品の名称や金額等を液晶ディスプレイに表示する。また表示操作部6は、表示画面の一部に数字等の入力キーを表示しており、タッチパネル上の入力キーに対応する箇所が押下操作されると、該入力キーに対応した入力操作を受け付けてレジ制御部5へ送信する。これに応じてレジ制御部5は、商品の数量の増減や金額の修正等の各処理を行う。レシート処理部7は、認識した商品の名称や金額等をレシートに印字し、これをレシート排出口7Aから排出する。
【0018】
一方、釣銭機3は、大きく分けて、釣銭制御部10と、左側の紙幣入出金部11と、右側の硬貨入出金部12と、前側上部の表示操作部13とにより構成されている。釣銭制御部10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、フラッシュメモリ等でなるメモリから釣銭出金プログラム等の各種プログラムを読み出して実行することにより、釣銭機3を統括的に制御する。
【0019】
紙幣入出金部11は、レジ係員により紙幣入出金口14から入金された紙幣を取り込んで紙幣収納庫15に収納する。また紙幣入出金部11は、レジ制御部5から指示された紙幣を紙幣収納庫15から繰り出し、これを紙幣入出金口14から釣銭として出金する。
【0020】
硬貨入出金部12の前面には、上段に硬貨入金口16が設けられ、その下方にリジェクト口17及び硬貨出金口18が設けられている。硬貨入出金部12は、レジ係員により硬貨入金口16へ投入された硬貨を取り込んで内部の収納庫27(
図2)に収納する。また硬貨入出金部12は、レジ制御部5から指示された金額に応じた金種及び枚数の硬貨を硬貨出金口18から釣銭として出金する。
【0021】
硬貨入出金部12が取り扱う硬貨は、ニッケル、銅、アルミニウム等の金属又はこれらの合金でなり、円形や多角形の盤面を有する薄い板状に形成されている。また硬貨入出金部12は、中心部分と外周部分とが互いに異なる種類の金属により構成された、いわゆるバイカラークラッド硬貨も取り扱うようになっている。
【0022】
表示操作部13は、所定の表示パネル及び所定の操作ボタンの組み合わせにより構成されている。表示操作部13の表示パネルは、紙幣入出金部11及び硬貨入出金部12における稼働状況を表示し、例えば硬貨入出金部12において釣銭用の硬貨が不足していることや、所定のセンサにより異常を検出したこと、及びその箇所等を表示する。表示操作部13の操作ボタンは、レジ係員等による押下操作を介して、例えば硬貨の搬送等に関する指示を受け付ける。
【0023】
[1-2.硬貨入出金部の構成]
図2に模式的な平面図を示すように、硬貨入出金部12は、上述した硬貨入金口16、リジェクト口17及び硬貨出金口18の他に、硬貨制御部20、入金分離部21、搬送部22、硬貨認識部23、リジェクト分岐部24及びリジェクト搬送路25を有している。また硬貨入出金部12は、6個の収納庫分岐部26(26A~26F)、6個の収納庫27(27A~27F)及び6個の出金調整部28(28A~28F)等を有している。
【0024】
硬貨制御部20は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、フラッシュメモリ等でなるメモリから硬貨入出金プログラム等の各種プログラムを読み出して実行することにより、硬貨入出金部12を統括的に制御する。
【0025】
硬貨入金口16は、すり鉢状にえぐられたような形状に形成されると共に、分離ディスク16D、分離ゲート16G、アクチュエータ(図示せず)、センサ(図示せず)等が設けられている。分離ディスク16Dは、円盤状に形成されており、硬貨入金口16の底部に組み込まれ、上下方向に沿った回転軸16DXを中心に回転し得るように構成されている。アクチュエータは、硬貨制御部20の制御に基づき、分離ディスク16Dに駆動力を供給する。センサは、硬貨入金口16内における硬貨の有無を検出し、得られた検出結果を硬貨制御部20に通知する。
【0026】
分離ゲート16Gは、硬貨入金口16の左後側における外周近傍に配置されている。この分離ゲート16Gは、その下端部分が概ね水平に形成されており、分離ディスク16Dの上側において、該分離ディスク16Dの上面との間に隙間を形成している。この隙間の間隔は、硬貨1枚の厚さよりも大きく、且つ硬貨が2枚重なった際の厚さよりも小さくなっている。
【0027】
この硬貨入金口16は、
図3(A)に示すように硬貨CNが投入されると、センサによりこのことを検出し、硬貨制御部20の制御により分離ディスク16Dを回転させ、遠心力の作用により当該硬貨を分離ディスク16Dの外周側に寄せる。これにより硬貨入金口16は、
図3(B)に示すように、該分離ディスク16D及び分離ゲート16Gの隙間から硬貨CNを1枚ずつに分離しながら、左後側へ繰り出す。
【0028】
入金分離部21(
図2)は、分離ゲート16Gの後側に配置されており、左右方向に沿った回転軸21X、該回転軸21Xに挿通された円筒状の入金分離ローラ21R、図示しないセンサ、及び図示しないアクチュエータ等により構成されている。回転軸21Xは、回転可能に支持されており、入金分離ローラ21Rと一体に回転する。センサは、硬貨入金口16から繰り出された硬貨の有無を検知する。アクチュエータは、硬貨制御部20の制御に基づき、回転軸21Xに駆動力を供給し、入金分離ローラ21Rを間欠的に回転させる。
【0029】
この入金分離部21は、センサにより硬貨を検出すると、硬貨制御部20の制御に基づいて入金分離ローラ21Rを間欠的に回転させることにより、
図3(C)に示すように、各硬貨CNを一定の間隔で後方へ送り出す。
【0030】
搬送部22(
図2)は、硬貨の搬送路を形成する搬送ガイド部31と、当該搬送ガイド部31上で当該搬送路に沿って当該硬貨を進行させる搬送ベルト部32とにより構成されている。また搬送ガイド部31は、前後方向に沿った認識搬送ガイド部31Aと、左右方向に沿った振分搬送ガイド部31Bとにより構成されている。この搬送ガイド部31では、認識搬送ガイド部31Aの後端と振分搬送ガイド部31Bの左端とが接続されている。
【0031】
認識搬送ガイド部31Aは、入金分離部21の後側に配置されており、
図4に模式的な断面図を示すように、案内部41、左規制部42L及び右規制部42Rを有している。左右方向に関する左規制部42L及び右規制部42Rの間隔は、硬貨入出金部12において取扱可能な硬貨のうち直径が最も大きいもの(以下これを最大径硬貨と呼ぶ)における当該直径よりも大きくなっている。案内部41は、その上面(以下これを案内面41Sと呼ぶ)が概ね水平な平面状に形成されており、硬貨の盤面を当該案内面41Sに当接させた姿勢で、当該硬貨を摺動させながら後方へ進行させることが想定されている。
【0032】
左規制部42Lは、案内部41の上側における左寄りに配置されており、案内面41S上における硬貨の左方向への移動範囲を規制する。以下では、左規制部42Lの右側面を基準面42Sと呼ぶ。右規制部42Rは、案内部41の上側における右寄りに配置されており、案内面41S上における硬貨の右方向への移動範囲を規制する。
【0033】
他の観点から見ると、認識搬送ガイド部31Aでは、案内部41の上側に、該案内部41の案内面41S、左規制部42Lの基準面42S、及び右規制部42Rの左側面とにより囲まれた空間を形成しており、この空間内で硬貨を後方向へ搬送させることになる。以下では、この空間を搬送空間31Sとも呼び、このとき硬貨が進行する経路を搬送路とも呼ぶ。
【0034】
振分搬送ガイド部31B(
図2)は、認識搬送ガイド部31Aを水平面上で時計回りに約90度回転させたような構成となっており、案内部41及び案内面41Sが左右方向に沿って延設され、その上側に左右方向に沿った搬送空間31Sが形成されている。
【0035】
搬送作用部としての搬送ベルト部32は、搬送ガイド部31の上側に配置されており、4個の搬送プーリ43A、43B、43C及び43Dと、ピンベルト44とにより構成されている。搬送プーリ43A、43B、43C及び43Dは、何れも上下方向に沿った軸を中心とした円筒状に形成されており、この軸を中心として回転可能に支持されている。また搬送プーリ43Aは、図示しないアクチュエータと接続されており、硬貨制御部20の制御に基づいてその回転が制御される。
【0036】
因みに搬送プーリ43Aは、認識搬送ガイド部31Aの前端近傍に配置されている。搬送プーリ43Bは、認識搬送ガイド部31Aの後端近傍であり、且つ振分搬送ガイド部31Bの左端近傍に配置されている。搬送プーリ43Cは、振分搬送ガイド部31Bの右端近傍に配置されている。また搬送プーリ43Dは、搬送プーリ43Bの右前側に配置されている。
【0037】
ピンベルト44は、可撓性を有する無端ベルトでなるベルト45と、当該ベルト45における所定間隔毎に設けられた複数のピン46とにより構成されている。ベルト45は、搬送プーリ43A、43B及び43Cの周囲を周回すると共に搬送プーリ43Dに当接するような経路に沿って張架されている。またベルト45は、認識搬送ガイド部31Aにおいて、左規制部42Lの右側面と右規制部42Rの左側面とのほぼ中間、すなわち搬送空間31Sにおける左右方向の中央付近の上側を走行している。因みにベルト45の下端は、案内面41Sとの間に、硬貨1枚の厚さと比較して十分に大きい間隔を形成している。
【0038】
ピン46は、中心軸を上下方向に沿わせた円筒状に構成されており、その上端がベルト45の上端近傍に位置する一方、その下端がベルト45の下端よりも下側に突出し、案内面41Sの近傍に到達している。
図4に示したように、ピン46の下端と案内面41Sとの間に形成される隙間は、硬貨1枚の厚さよりも十分に小さい微少な間隔となっている。また上述した搬送プーリ43Aには、ピン46の位置を検出して硬貨制御部20に通知するセンサが設けられている。
【0039】
かかる構成により搬送部22は、硬貨制御部20の制御に基づいてアクチュエータを駆動させることにより、搬送ベルト部32の搬送プーリ43Aを
図2における時計回りに回転させ、ピンベルト44を走行させる。硬貨制御部20は、ピン46のタイミングに合わせて入金分離部21を動作させることにより、
図3(D)に示すように、ピン46同士の間に硬貨CNをそれぞれ送り出す。
【0040】
これにより搬送部22は、認識搬送ガイド部31A(
図4)において、案内面41S上に硬貨を載せ、且つ左規制部42L及び右規制部42Rにより左右方向への移動範囲を規制しながら、各ピン46により各硬貨に後方向へ向かう力を作用させ、搬送路に沿って後方向へ搬送することができる。また搬送部22は、振分搬送ガイド部31Bにおいて、案内面41S上に硬貨を載せて各ピン46により各硬貨に右方向へ向かう力を作用させ、搬送路に沿って右方向へ搬送することができる。
【0041】
硬貨認識部23(
図2)は、搬送部22の認識搬送ガイド部31Aにおける中央付近に配置されており、複数のセンサにより硬貨の情報をそれぞれ検出し、得られた検出結果を基に当該硬貨の金種や真偽、或いは損傷や汚損の程度等を認識し、得られた認識結果を硬貨制御部20に通知する(詳しくは後述する)。これに応じて硬貨制御部20は、通知された認識結果を基に、当該硬貨の搬送先を決定するようになっている。
【0042】
リジェクト分岐部24は、
図5に模式的な側面図を示すように、硬貨認識部23の後側に配置されており、孔部24H、分岐板24V及びアクチュエータ(図示せず)等により構成されている。孔部24Hは、認識搬送ガイド部31Aにおける案内部41を上下方向に貫通する長方形状の孔であり、各辺の長さが硬貨の直径よりもやや大きくなっている。分岐板24Vは、孔部24Hを閉塞し得るような長方形状の板状部材であり、その後端近傍において、左右方向に沿った軸を中心として、案内部41に対し回動し得るように支持されている。
【0043】
アクチュエータは、分岐板24Vに対して駆動力を供給することにより回動させ、該分岐板24Vにより孔部24Hを閉塞した閉塞状態(
図5に実線で示す)と、該分岐板24Vの前端を案内部41(案内面41S)の上方に持ち上げて孔部24Hを開放した開放状態(
図5に破線で示す)とに遷移させることができる。因みに分岐板24Vには、
図2に示したように、左右方向の中央付近に、前端から後端近傍までの範囲に渡って大きく切り込まれた部分が形成されており、開放状態においてピンベルト44との干渉を回避し得るようになっている。
【0044】
またリジェクト搬送路25は、リジェクト分岐部24からリジェクト口17へ向けて徐々に下降するように形成されたスロープ状の搬送路であり、リジェクト分岐部24から硬貨が落下してきた場合、重力を利用して当該硬貨を滑降させ、リジェクト口17に到達させる。
【0045】
例えば硬貨制御部20は、硬貨認識部23から得られた認識結果において、該硬貨認識部23を通過した硬貨が硬貨入出金部12において取り扱い得ない硬貨(以下これをリジェクト硬貨と呼ぶ)と認識されていた場合、当該硬貨の搬送先をリジェクト口17(
図1及び
図2)と決定する。このときリジェクト分岐部24は、硬貨制御部20の制御に基づき、アクチュエータにより分岐板24Vを開放状態に遷移させる。これにより当該硬貨は、分岐板24Vの下面に当接して孔部24Hから下方へ落下し、
図6(A)に硬貨CN及び矢印U1として示すように、リジェクト搬送路25に沿って滑降しながら前方向へ進行し、やがてリジェクト口17に到達してレジ係員に取り出される。
【0046】
一方、硬貨制御部20は、硬貨認識部23から得られた認識結果において、該硬貨認識部23を通過した硬貨が硬貨入出金部12において取扱可能な何れかの金種と認識されていた場合、当該硬貨の搬送先を当該金種の収納庫27(詳しくは後述する)と決定する。このときリジェクト分岐部24は、硬貨制御部20の制御に基づき、アクチュエータにより分岐板24Vを閉塞状態に遷移させる。これにより当該硬貨は、
図6(B)に硬貨CN及び矢印U2として示すように、リジェクト分岐部24において分岐板24Vの上側を通過し、搬送部22により認識搬送ガイド部31Aに沿って後方向へ搬送され、さらに振分搬送ガイド部31Bに沿って右方向へ搬送される。
【0047】
図2に示した6個の収納庫分岐部26(26A~26F)は、振分搬送ガイド部31Bにおいて左右方向に沿って整列するように配置されている。各収納庫分岐部26は、リジェクト分岐部24と同様に構成されており、振分搬送ガイド部31Bにおいて案内部41Aに設けられた孔部26H、回動可能な分岐板26V及びアクチュエータ(図示せず)等を有している。各収納庫分岐部26は、互いに異なる金種(例えば1円、10円、100円、500円、50円及び5円)がそれぞれ割り当てられている。
【0048】
6個の収納庫27(27A~27F)は、左右方向に沿って互いに隣接するように配置されている。各収納庫27は、前後方向に長く、左右方向に短く、上下方向にある程度の深さを有する直方体状に形成されており、その内部に硬貨を収納し得るようになっている。各収納庫27は、各収納庫分岐部26と同様、互いに異なる金種がそれぞれ割り当てられている。
【0049】
各収納庫27の後端近傍は、振分搬送ガイド部31Bの下側、すなわち各収納庫分岐部26の下側にそれぞれ位置している。このため、各収納庫分岐部26から硬貨が落下した場合、当該硬貨はその下側に位置する収納庫27に収納される。また各収納庫27の前端は、硬貨出金口18の後側に隣接している。
【0050】
硬貨制御部20は、硬貨認識部23において認識された金種を基に、各収納庫分岐部26を適宜開閉させる。これにより硬貨制御部20は、
図6(B)に硬貨CN及び矢印U3として示したように、当該硬貨CNを搬送部22により振分搬送ガイド部31Bに沿って搬送し、その金種に対応した収納庫分岐部26から落下させて収納庫27に収納させることができる。
【0051】
また収納庫27(
図2)の底部は、後側から前側へ進むに連れて高くなるように傾斜すると共に、搬送ベルトが組み込まれている。この搬送ベルトは、図示しない複数の搬送プーリの周囲を周回するように張架されており、図示しないアクチュエータから駆動力が供給されると、搬送ベルトを走行させることにより、収納庫27の底面部分を前後方向に進行させることができる。
【0052】
6個の出金調整部28(28A~28F)は、各収納庫27(27A~27F)内における前端近傍に配置されており、回転軸28X、出金ローラ28R、並びに図示しないアクチュエータ及びセンサ等により構成されている。回転軸28Xは、左右方向に沿った細長い円柱状に形成されており、6個の収納庫27を貫通するように配置され、且つ回転可能に支持されている。各出金ローラ28Rは、それぞれ左右方向に沿った軸を中心とする円筒状に形成されており、回転軸28Xにそれぞれ挿通されている。アクチュエータは、硬貨制御部20の制御に基づき、回転軸28Xに駆動力を供給して回転させる。センサは、出金ローラ28Rの前側において硬貨を検出し、得られた検出結果を硬貨制御部20に通知する。
【0053】
硬貨制御部20は、収納庫27に収納されている硬貨を釣銭として出金する場合、搬送ベルトを走行させて底面部分を前方に進行させることにより、収納されている硬貨を前方へ搬送する。また硬貨制御部20は、出金調整部28の各センサから得られる検出結果を監視しながら、各出金ローラ28Rを適宜回転させることにより、各収納庫27から出金される硬貨の枚数を調整する。この結果、硬貨入出金部12では、所望の金種及び枚数の硬貨を収納庫27からそれぞれ繰り出して硬貨出金口18に収容でき、これらの硬貨をレジ係員に取り出させることができる。
【0054】
[1-3.硬貨認識部の構成]
次に、硬貨認識部23の構成について詳細に説明する。
図7に模式的な平面図を示すと共に、そのA1-A2線による模式的な断面図を
図8に示すように、硬貨認識部23は、認識搬送ガイド部31A(
図3)の途中に埋め込まれるように配置されている。具体的に硬貨認識部23は、認識制御部50、下センサフレーム51、左上センサフレーム52、右上センサフレーム53、光学情報取得部54、磁気情報取得部55、ブレード付勢部57及びブラシ付勢部58等が設けられている。
【0055】
因みに硬貨認識部23では、搬送部22の認識搬送ガイド部31Aと同様に、ピンベルト44により硬貨が前方から後方へ向けて搬送される。このため以下では、硬貨の進行に着目し、前側を上流側とも呼び、後側を下流側とも呼ぶ。また以下では、搬送部22により硬貨が搬送される方向である後方向を搬送方向とも呼び、案内面41S上でこの搬送方向と直交する左右方向を幅方向とも呼ぶ。
【0056】
認識制御部50は、図示しないCPUを中心に構成されており、フラッシュメモリ等でなる記憶部から認識プログラム等の各種プログラムを読み出して実行し、光学情報取得部54及び磁気情報取得部55から得られる各種情報を基に、硬貨の認識に関する種々の処理を行う。
【0057】
下センサフレーム51は、非磁性材料により比較的大きい直方体状に形成されており、案内部41の途中に埋め込まれるように配置されている。下センサフレーム51の上面である案内面51Sは、平坦に形成されており、且つ案内部41の案内面41Sと連続する平面を構成している。下センサフレーム51の上側には、左規制部42L及び右規制部42Rの一部が配置されている。また左規制部42Lの右側には、薄板状の基準当接板42Bが設けられており、該基準当接板42Bの右側面が基準面42Sとなっている。因みに基準面42Sは、案内面41Sに対してほぼ垂直な平面となっている。
【0058】
左上センサフレーム52は、非磁性材料により比較的小さい直方体状に形成されており、下センサフレーム51の上側における左後部分に、案内面51Sから左規制部42Lの厚さ(すなわち上下方向の長さ)と同等の間隔を隔てて固定されている。すなわち左上センサフレーム52は、搬送空間31Sを挟んで案内面41Sと対向する箇所に配置されている。
【0059】
右上センサフレーム53は、非磁性材料により、左上センサフレーム52よりも前後方向に短い直方体状に形成されており、下センサフレーム51の上側における右後部分に、案内面51Sから右規制部42Rの厚さと同等の間隔を隔てて固定されている。また右上センサフレーム53を前側から見た場合(
図8)における左下の端部(頂点)近傍は、斜めに切り落とされたような形状となっている。因みに、左上センサフレーム52及び右上センサフレーム53の間には、ピンベルト44を通過させるための隙間が形成されている。以下では、左上センサフレーム52及び右上センサフレーム53をまとめて搬送対向部とも呼ぶ。
【0060】
光学センサとしての光学情報取得部54は、案内部41の途中における、下センサフレーム51の前側に埋め込まれるように配置されており、光透過部材54T、並びに図示しない発光素子、レンズ及び撮像素子等により構成されている。光透過部材54Tは、例えば単結晶サファイアのような光透過性を有すると共に高い強度を有する板状の部材である。この光透過部材54Tの上面である案内面54TSは、平坦に形成されており、前側の案内面41S及び後側の案内面51Sと連続した平面を形成している。便宜上、以下では案内面54TS及び案内面51Sも含めて案内面41Sと呼ぶ。
【0061】
発光素子は、光透過部材54Tの下側に配置されており、例えば可視光や赤外光などの光を発光して上方へ進行させる。この光は、光透過部材54Tを透過し、その上側の搬送空間31S内に到達する。さらにこの光は、該搬送空間31S内に硬貨があった場合、当該硬貨の下面により反射されて反射光となり、光透過部材54Tを透過して下方へ進行する。
【0062】
レンズは、光透過部材54Tの下側における発光素子と異なる箇所に配置されており、反射光を集光する。撮像素子は、レンズの下側における焦点又はその近傍に配置されており、該レンズにより集光された反射光の像を撮像して電気信号に変換し、認識制御部50に供給する。認識制御部50は、得られた電気信号を基に画像データを形成し、この画像データを硬貨の認識処理に利用する。
【0063】
磁気情報取得部55は、下側材質センサ55A、全体材質センサ55B及び外径センサ55Cといった3組のセンサにより構成されている。下側材質センサ55Aは、
図7に示したように、左上センサフレーム52よりもやや右側に位置している。また下側材質センサ55Aは、
図7のB1-B2線による模式的な断面図を
図9(A)に示すように、搬送空間31Sの下側である下センサフレーム51内に埋め込まれている。
【0064】
この下側材質センサ55Aは、上側に向けて磁束を発信する磁束発信部と、上側から到来する磁束を受信する磁束受信部とを有しており、該磁束受信部による受信結果を表す情報として、下側材質受信信号を生成して認識制御部50に通知する。認識制御部50は、得られた下側材質受信信号を基に、硬貨の下面側の表面材質を判別する。
【0065】
全体材質センサ55Bは、
図7に示したように、下側材質センサ55Aよりも後側における左側に、すなわち基準面42Sに比較的近い箇所に配置されている。この全体材質センサ55Bは、
図7のC1-C2線による模式的な断面図を
図9(B)に示すように、搬送空間31Sの下側において下センサフレーム51内に埋め込まれた全体材質センサ発信部55BLと、搬送空間31Sの上側において左上センサフレーム52に埋め込まれた全体材質センサ受信部55BUとにより構成されている。
【0066】
全体材質センサ発信部55BLは、上側に向けて磁束を送信する磁束送信部を有している。搬送空間31Sに硬貨があった場合、この磁束のうち一部が該硬貨により遮られ、残りが該硬貨を透過する。全体材質センサ受信部55BUは、全体材質センサ発信部55BLから発信され、且つ硬貨を透過した磁束を受信して全体材質受信信号を生成して、認識制御部50に通知する。認識制御部50は、得られた全体材質受信信号を基に、硬貨の全体の材質を判別する。
【0067】
外径センサ55Cは、
図7に示したように、全体材質センサ55Bよりも後側であり、且つ下側材質センサ55A及び全体材質センサ55Bよりも右側に、すなわちピンベルト44が通過する部分の右側であり、基準面42Sから比較的遠い位置に配置されている。この外径センサ55Cは、
図7のD1-D2線による模式的な断面図を
図9(C)に示すように、搬送空間31Sの下側において下センサフレーム51内に埋め込まれた外径センサ発信部55CLと、搬送空間31Sの上側において右上センサフレーム53に埋め込まれた外径センサ受信部55CUとにより構成されている。
【0068】
外径センサ発信部55CLは、全体材質センサ発信部55BLと同様に、上側に向けて磁束を送信する磁束送信部を有している。搬送空間31Sに硬貨があった場合、この磁束のうち一部が該硬貨により遮られ、残りが該硬貨を透過する。外径センサ受信部55CUは、全体材質センサ受信部55BUと同様に、外径センサ発信部55CLから発信され、且つ硬貨を透過した磁束を受信して外径受信信号を生成して、認識制御部50に通知する。認識制御部50は、得られた外径受信信号を基に、硬貨の外径を判別する。
【0069】
ところで磁気情報取得部55の各センサは、搬送空間31Sにおいて硬貨がその左端を基準面42Sに当接した状態で搬送されることを前提に、左右方向に関する取付位置が調整されている。このため硬貨認識部23(
図7)では、ブレード付勢部57及びブラシ付勢部58により、搬送空間31Sにおいて硬貨を基準面42Sに向けて付勢するようになっている。
【0070】
ブレード付勢部57(
図7)は、軸体57X、ブレード57A、当接部57B、係止体57C及びスプリング57Dにより構成されている。軸体57Xは、中心軸を上下方向に沿わせた細長い円柱状でなり、案内部41の上面における光学情報取得部54の左側に位置する部分から、上方向に向けて立設されている。
【0071】
ブレード57Aは、所定の樹脂材料により構成されており、全体として前後方向に長く、左右方向に短く、上下方向に短い多面体のような形状となっている。ブレード57Aにおける上下方向の長さは、左規制部42L及び右規制部42Rにおける上下方向の長さ、すなわち搬送空間31Sにおける上下方向の長さよりも小さく(短く)、且つ硬貨1枚の厚さよりも大きく(長く)なっている。
【0072】
またブレード57Aは、前側の約半分に対して後側の約半分が左寄りに屈曲されたような形状となっている。ブレード57Aの左側面は、上方から見て、1本の直線を2箇所でクランク状に屈曲させたような形状となっており、前側部分及び後側部分が概ね前後方向に沿っている一方、中央部分が右前側と左後側とを結ぶ斜め方向に沿っている。因みにブレード57Aは、上側面及び下側面が案内面41Sに対してほぼ平行な平面状であり、前後左右の各側面が案内面41Sに対してほぼ垂直な平面状となっている。
【0073】
ブレード57Aの後端は、下側材質センサ55Aよりも後側であり、且つ全体材質センサ55B及び外径センサ55Cよりも前側であり、さらに右上センサフレーム53の前端よりも前側に位置している。さらにブレード57Aは、前端近傍に、上下方向に貫通する丸孔でなる軸孔57AHが穿設されている。ブレード57Aは、この軸孔57AHが軸体57Xに挿通されており、該軸体57Xを中心として、案内面41S上で回動することができる。
【0074】
当接部57Bは、例えばステンレスやセラミック等のような、非磁性体であり高い剛性を有する材料でなり、且つ他の部分から電気的に絶縁されている。この当接部57Bは、それぞれ薄板状に形成された中央当接部57BC及び後当接部57BEにより構成されている。中央当接部57BCは、ブレード57Aの左側面における中央部分を覆っている。また後当接部57BEは、ブレード57Aの左側面における後側部分を覆っている。
【0075】
係止体57Cは、ブレード57Aと比較して十分に小さい直方体状であり、案内面41S上において、軸体57Xの後側且つ左側に配置されている。この係止体57Cは、ブレード57Aが軸体57Xを中心として反時計回りに回動しようとする場合に、該ブレード57Aの左側面における前側部分と当接し、その回動範囲を制限するようになっている。スプリング57Dは、例えば左右方向に沿ったコイルばねであり、自然状態から圧縮された状態で、右端が案内部41に固定され、左端がブレード57Aの後端近傍に取り付けられている。
【0076】
かかる構成によりブレード付勢部57は、軸体57Xを中心としてブレード57Aが回動することにより、当接部57Bと基準面42Sとの間隔を拡大又は縮小する(すなわち変更する)こと、換言すれば当接部57Bを基準面42Sに対して近接又は離隔させることができる。またブレード付勢部57は、スプリング57Dの復元力が作用することにより、軸体57Xを中心としてブレード57Aを反時計回りに回動させ、係止体57Cと当接した段階で停止させる。このとき後当接部57BEは、下側材質センサ55Aよりも右側に位置しており、且つ左右方向に関して基準面42Sとの間に比較的小さい(短い)隙間を形成している。この隙間は、硬貨入出金部12が取り扱う硬貨のうち直径が最も小さいもの(以下これを最小径硬貨と呼ぶ)の当該直径よりも短くなっている。
【0077】
ブラシ付勢部58(
図7)は、全体として前後方向に細長い形状、すなわち上方から見て前後方向に沿って延在する略直線状となっており、右上センサフレーム53の左側面に取り付けられている。すなわちブラシ付勢部58は、左右方向に関して、ピンベルト44を挟んで基準面42Sと反対側に設けられている。ブラシ付勢部58の前端は、右上センサフレーム53の前端よりも後側(下流側)であり、且つ外径センサ55Cよりも前側(上流側)に位置している。またブラシ付勢部58の後端は、外径センサ55Cよりも後側(下流側)に位置している。
【0078】
前後方向に関して、ブレード付勢部57の後端からブラシ付勢部58の前端までの距離は、最小径硬貨の直径の0.5~1.0倍程度である。また、全体材質センサ55Bの中心からブラシ付勢部58の前端までの距離は、最小径硬貨の直径の0.3~0.5倍程度である。保持部58Aの前端から外径センサ55Cの中心までの距離は、最小径硬貨の直径の0.2~0.4倍程度である。外径センサ55Cの中心からブラシ付勢部58の後端までの距離は、最小径硬貨の直径の0.5倍以上となっている。
【0079】
さらに、左右方向に関する基準面42Sからブラシ付勢部58の前端までの距離は、最大径硬貨の半径よりも大きく、且つ最小径硬貨の直径よりも僅かに短くなっている。またブラシ付勢部58における前後方向の長さは、最小径硬貨の直径と概ね同等となっている。
【0080】
ブラシ付勢部58は、保持部58A、毛体部58B及び規制部58Cにより構成されている。保持部58Aは、右上センサフレーム53の左側面に取り付けられており、前後方向に長く、上下方向に短く、左右方向に極めて短い直方体状に形成されている。また
図8に示したように、保持部58Aの上端及び下端は、右上センサフレーム53の左側面における上端及び下端とほぼ同等の高さに位置している。
【0081】
毛体部58Bは、多数の毛体、すなわち細長い繊維状でなる多数の物体が束ねられたものであり、その上端近傍が保持部58Aの内部に埋め込まれて保持されている。すなわち毛体部58Bは、保持部58Aの下面におけるほぼ全範囲から、下方向に向けて生え揃った状態となっている。換言すれば、ブラシ付勢部58は、いわゆるブラシに似た形状に構成されている。毛体部58Bを構成する各毛体は、上下方向に沿った直線状の細長い形状であり、可撓性を有する可撓性部材となっている。説明の都合上、以下では、毛体部58B及び各毛体における下側の端部を一端とも呼び、上側の端部を他端とも呼ぶ。
【0082】
毛体部58Bにおける上下方向の長さは、右規制部42Rにおける上下方向の長さ、すなわち搬送空間31Sにおける上下方向の長さよりもやや長くなっており、例えば硬貨入出金部12が取り扱う硬貨のうち厚さが最も大きいもの(以下これを最大厚硬貨と呼ぶ)における当該厚さの5~6倍程度となっている。また毛体部58Bの下端は、案内面41Sから僅かな隙間を空けた上側に位置している。この隙間は、硬貨入出金部12が取り扱う硬貨のうち厚さが最も小さいもの(以下これを最小厚硬貨と呼ぶ)における当該厚さの1/3以下となっている。
【0083】
毛体部58Bは、仮に下端近傍に水平方向に向かう外力が加えられた場合、各毛体が有する可撓性により、この外力が向かう方向に撓んだ形状に変形すると共に、元の形状(上下方向に沿った直線状)に戻ろうとする復元力を作用させる。
【0084】
規制部58Cは、前後方向に長く、上下方向に短く、左右方向に薄い板状の部材として構成されている。規制部58Cの前後方向の長さは、保持部58Aにおける前後方向の長さと同等となっている。規制部58C上下方向の長さは、保持部58Aにおける上下方向の長さよりも長く、該保持部58Aにおける上下方向の長さに毛体部58Bにおける上下方向の長さの約半分を加算した程度の長さとなっている。
【0085】
規制部58Cは、上端、前端及び後端の位置を保持部58Aとほぼ揃えるようにして、該保持部58Aの左側に取り付けられている。すなわち規制部58Cは、その下側部分を、毛体部58Bの上側約半分における左側に隣接させている。これにより規制部58Cは、毛体部58Bの下端近傍が前側、後側及び右側に撓むことを許容しながら、左側に大きく撓むことを規制している。
【0086】
ところで硬貨認識部23では、
図7~
図9に示したように、磁気情報取得部55として下側材質センサ55A、全体材質センサ55B及び外径センサ55Cといった3種類のセンサが設けられている。このうち下側材質センサ55A、全体材質センサ55Bの全体材質センサ発信部55BL、及び外径センサ55Cの外径センサ発信部55CLは、搬送空間31Sの下側に配置されるため、下センサフレーム51内に設けられる。
【0087】
一方、磁気情報取得部55の一部分である全体材質センサ55Bの全体材質センサ受信部55BU及び外径センサ55Cの外径センサ受信部55CUは、搬送空間31Sの上側に配置される必要がある。すなわち全体材質センサ受信部55BU及び外径センサ受信部55CUは、磁束を受信する都合上、全体材質センサ発信部55BL及び外径センサ発信部55CLとそれぞれ対向する位置であって、且つ所定の距離以内に配置する必要がある。
【0088】
このため硬貨認識部23では、搬送空間31Sの上側における後側にのみ、左上センサフレーム52及び右上センサフレーム53がそれぞれ設けられ、その内部に全体材質センサ受信部55BU及び外径センサ受信部55CUがそれぞれ配置されている。
【0089】
このように硬貨認識部23は、硬貨から情報を取得する光学情報取得部54及び磁気情報取得部55(下側材質センサ55A、全体材質センサ55B及び外径センサ55C)に加えて、ブレード付勢部57及びブラシ付勢部58を有している。
【0090】
[1-4.硬貨認識部における硬貨の認識処理]
次に、硬貨認識部23における硬貨の認識処理、すなわち搬送ベルト部32のピンベルト44により当該硬貨を搬送しながら、光学情報取得部54及び磁気情報取得部55により当該硬貨から種々の情報を取得する処理について説明する。
【0091】
硬貨入出金部12では、
図3(A)~(D)に示したように、硬貨CNが硬貨入金口16に投入されると、分離ディスク16Dを回転させて分離ゲート16Gとの隙間から該硬貨CNを1枚ずつに分離して繰り出し、入金分離部21により一定の間隔ごとに後方へ送り出す。これにより各硬貨CNは、ピンベルト44の各ピン46により認識搬送ガイド部31Aに沿って後方へ搬送され、硬貨認識部23に到達する。このとき硬貨CNは、
図3(D)に示したように、必ずしも基準面42Sに当接しない状態で搬送されている。
【0092】
硬貨認識部23では、まず
図10(A)に示すように、硬貨CNがブレード付勢部57の中央当接部57BCに当接する。ここで中央当接部57BCは、上方から見て右前側と左後側とを結ぶ傾斜面となっており、搬送方向(すなわち後方向)に対して傾斜している。このため硬貨CNは、中央当接部57BCから左前方向に向かう力の作用を受ける。この力は、前方向へ向かう力と左方向へ向かう力の合力と見なすことができる。その一方で硬貨CNは、ピンベルト44のピン46から、後方向に向かう比較的大きい力を受けている。
【0093】
このため硬貨CNは、ブレード付勢部57から受けた力のうち、前方向に向かう成分が打ち消されて後方向へ向かうと共に、該ブレード付勢部57から受けた力のうち左方向に向かう成分により、
図10(B)に示すように、左端を基準面42Sに当接させる。
【0094】
続いて硬貨認識部23では、
図10(C)に示すように、硬貨CNがピンベルト44のピン46から後方向に向かう力を受けると、当該硬貨CNの左端を基準面42Sに当接させたまま後方向へ進行させていく。このとき硬貨認識部23では、ピン46から硬貨CNに加えられた力の一部を、当該硬貨CNの右端近傍からブレード付勢部57に伝達する。これによりブレード付勢部57は、スプリング57Dを圧縮させながらブレード57Aを時計回りに回動させ、後当接部57BEと基準面42Sとの間隔を広げていく。またこのとき硬貨認識部23では、硬貨CNの一部が下側材質センサ55Aの真上に差し掛かるため、当該下側材質センサ55Aにより当該硬貨CNから情報を検出する。
【0095】
やがて硬貨認識部23では、後当接部57BEと基準面42Sとの間隔が硬貨CNの直径と同等にまで広がると、
図10(D)に示すように、当該硬貨CNの左端を引き続き基準面42Sに当接させたまま、当該硬貨CNの右端近傍を当該後当接部57BEに当接させながら、当該硬貨CNを後方へ進行させていく。このときブレード付勢部57は、後当接部57BEから硬貨CNに対してほぼ左方向へ向かう力を作用させる。このため硬貨CNは、左端を基準面42Sに当接させたまま、引き続き後方向へ進行することができる。
【0096】
その後、硬貨認識部23では、
図11に示すように、硬貨CNの一部が全体材質センサ55Bの位置、すなわち全体材質センサ受信部55BU及び全体材質センサ発信部55BLの間に差し掛かるため、これらにより当該硬貨CNから情報を検出する。
【0097】
またこのとき硬貨認識部23では、当該硬貨CNの後右側部分がブラシ付勢部58の真下に到達するため、
図11におけるE1-E2線による断面図を
図12に示すように、毛体部58Bの下端近傍が右後上方向に付勢され撓んだ状態となる。これによりブラシ付勢部58は、毛体部58Bの復元力により、硬貨CNに対して左前下方向に向かう力を作用させる。この力は、前方向へ向かう力、左方向へ向かう力及び下方向へ向かう力の合力と見なすことができる。その一方で硬貨CNは、ピンベルト44のピン46から、後方向に向かう比較的大きい力を受けている。
【0098】
このため硬貨CNは、ブラシ付勢部58から受けた力のうち、前方向に向かう成分が打ち消されて後方向へ向かうと共に、左方向に向かう成分により左端を基準面42Sに当接させ、さらに下方向に向かう成分により下面を案内面41Sに当接させた状態を維持する。
【0099】
続いて硬貨認識部23では、ピンベルト44の走行により硬貨CNがさらに後方へ搬送され、
図13に示すように、硬貨CNがブレード付勢部57の後当接部57BEから離れ、該ブレード付勢部57から力を受けない状態となる。
【0100】
ここで
図13におけるF1-F2線による断面図を
図14(A)に示すように、ブラシ付勢部58の前端近傍ないし中央付近では、毛体部58Bの下端近傍が硬貨CNに乗り上げる。このとき毛体部58Bは、硬貨CNが後方向へ進行することにより後方向に向かう力が作用しており、且つ規制部58Cにより左方向への撓みが規制されるため、下端近傍を右後上側に撓ませた状態となる。このため毛体部58Bは、復元力の作用により、硬貨CNに対して左前下方向に向かう力を作用させる。
【0101】
また、
図13におけるG1-G2線による断面図を
図14(B)に示すように、ブラシ付勢部58の後端近傍では、
図12に示した場合と同様に、硬貨CNの後右側部分により、毛体部58Bの下端近傍が右後上方向に付勢され撓んだ状態となる。これによりブラシ付勢部58は、毛体部58Bの復元力により、硬貨CNに対して左前下方向に向かう力を作用させる。
【0102】
ここでブラシ付勢部58の各部分から硬貨CNに作用する左前下方向へ向かう力は、上述した場合と同様に、前方向へ向かう力、左方向へ向かう力及び下方向へ向かう力の合力と見なすことができる。その一方で硬貨CNは、ピンベルト44のピン46から、後方向に向かう比較的大きい力を受けている。このため硬貨CNは、ブラシ付勢部58から受けた力のうち、前方向に向かう成分が打ち消されて後方向へ向かうと共に、左方向へ向かう成分により左端を基準面42Sに当接させ、且つ下方向へ向かう成分により下面を案内面41Sに当接させた状態を維持する。
【0103】
さらにこのとき硬貨認識部23では、硬貨CNの一部が外径センサ55Cの外径センサ発信部55CL及び外径センサ受信部55CUの間に差し掛かるため、これらにより当該硬貨CNから情報を検出する。すなわち硬貨認識部23では、硬貨CNの左端を基準面42Sに当接させ、且つ下面を案内面41Sに当接させた状態のまま、当該硬貨CNの外径に関する情報を検出することができる。
【0104】
[1-5.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態による硬貨入出金部12の硬貨認識部23は、硬貨の情報を検出する光学情報取得部54及び磁気情報取得部55等に加えて、当該硬貨を基準面42Sに付勢するブレード付勢部57及びブラシ付勢部58を設けた。
【0105】
硬貨認識部23は、搬送部22のピンベルト44により硬貨CNが前側から搬送されてくると、ブレード付勢部57により該硬貨CNを左方向に付勢してその左端を基準面42Sに当接させながら、後方向へ進行させる(
図10(A)~(D))。このときブレード付勢部57は、まず中央当接部57BCが搬送方向に対して傾斜していることにより、硬貨CNを左方向に進行させて基準面42Sに当接させる。その後、ブレード付勢部57は、ブレード57Aを適宜回動させながら、スプリング57Dの復元力を利用して当該硬貨CNの左端を基準面42Sに当接させた状態を維持し、当該硬貨CNを後方向へ進行させる。
【0106】
続いて硬貨認識部23は、ブラシ付勢部58により硬貨CNを基準面42Sに当接させた状態を維持しながら、後方向へ進行させる(
図11~
図14)。このときブラシ付勢部58は、硬貨CNが毛体部58Bの下端近傍に当接すると、該毛体部58Bが右後上方向へ撓むことにより、その復元力によって左前下方向へ向かう力を作用させる。これによりブラシ付勢部58は、この力のうち左方向成分により当該硬貨CNを基準面42Sに当接させると共に、下方向成分により当該硬貨CNを案内面41Sに押し付けた状態を維持する。
【0107】
硬貨認識部23は、このようにしてブレード付勢部57及びブラシ付勢部58により硬貨CNを基準面42Sに当接させ、且つ案内面41Sに押し付けながら後方向へ進行させていき、磁気情報取得部55の下側材質センサ55A、全体材質センサ55B及び外径センサ55Cにより、当該硬貨CNの情報をそれぞれ検出する。このため硬貨認識部23は、各センサから得られた情報を基に、認識制御部50において当該硬貨CNにおける表面の材質、全体の材質及び外径を精度良く判別でき、これらを基に当該硬貨CNの金種や真偽を高精度に認識できる。
【0108】
また硬貨認識部23では、ブラシ付勢部58をピンベルト44よりも右側に、すなわち該ピンベルト44を挟んで基準面42Sと反対側に配置した(
図7)。このため硬貨認識部23では、ピンベルト44の走行により硬貨CNがブラシ付勢部58の前端に到達する際(
図11)に、当該硬貨の前端部分における右側であり、上側から見て左前側と右後側とを結ぶように傾斜した部分を、毛体部58Bの下端近傍に当接させる。このとき硬貨認識部23では、硬貨CNが後方向へ進行するため、毛体部58Bの下端近傍に対して、積極的に右後上方向へ撓ませることができ、その復元力により左前下方向に向かう力を当該硬貨CNに作用させること、すなわち基準面42S及び案内面41Sに向かう力を作用させることができる。
【0109】
さらにブラシ付勢部58では、保持部58A及び毛体部58Bの右側に隣接する位置に規制部58Cを設けた(
図8)。このため硬貨認識部23では、毛体部58Bの下端近傍が硬貨CNと当接した際や該硬貨CNに乗り上げた際に、当該毛体部58Bが左側へ撓むことを良好に抑止できる。これにより硬貨認識部23では、毛体部58Bの復元力が硬貨CNに対して右方向成分を含む力を作用させること、すなわち基準面42Sから引き離すような力を作用させることを未然に防止でき、当該硬貨CNを安定的に基準面42Sに当接させることができる。
【0110】
ここで、第1の実施の形態による硬貨認識部23との比較用に、仮想的にブレード付勢部57及びブラシ付勢部58に関する構成を2通りに変更した仮想第1硬貨認識部123及び仮想第2硬貨認識部223をそれぞれ想定し、搬送される硬貨CNを認識する場合についてそれぞれ説明する。
【0111】
1番目の仮想第1硬貨認識部123は、
図7及び
図8とそれぞれ対応する
図15及び
図16に示すように、第1の実施の形態による硬貨認識部23と比較して、ブレード付勢部57に代わるブレード付勢部157が設けられる一方、ブラシ付勢部58が省略されている。ブレード付勢部157は、ブレード付勢部57と類似した構成であるものの、ブレード57A及び当接部57Bに代えてブレード157A及び当接部157Bが設けられている。
【0112】
ブレード157Aは、ブレード57Aの後側部分が後方に延長され、外径センサ55Cの後側にまで到達したような形状となっている。当接部157Bは、後当接部57BEに代わる後当接部157BEがブレード157Aに合わせて後方に延長されている。すなわちブレード157A及び後当接部157BEは、その一部が右上センサフレーム53の下側に入り込むようになっている。因みに仮想第1硬貨認識部123では、ブレード157Aとの干渉を回避する観点から、右規制部42Rの一部が省略されており、後側に設けられた支持部156により右上センサフレーム53が支持されている。
【0113】
この仮想第1硬貨認識部123は、ピンベルト44により前方から硬貨CNが搬送されてくると、
図10等と対応する
図17(A)~(D)に示すように、硬貨CNをブレード付勢部157に当接させてブレード157Aを適宜回動させ、当該硬貨CNを基準面42Sに当接させながら後方へ進行させることができる。
【0114】
しかしながら仮想第1硬貨認識部123では、ブレード付勢部157から硬貨CNに対して概ね左方向へ向かう力を作用させるものの、この力に下方向成分が殆ど含まれていないため、当該硬貨CNの搬送中に案内面41Sから浮き上がる可能性がある。また仮想第1硬貨認識部123では、
図16に示したように、ブレード157Aの後側部分と右上センサフレーム53との隙間が比較的狭いため、
図18に示すように、両者の間に異物OBJが挟まる恐れがある。この場合、仮想第1硬貨認識部123では、ブレード157Aが回動できなくなるため、硬貨CNを基準面42Sに付勢できなくなる可能性がある。これらの場合、仮想第1硬貨認識部123では、磁気情報取得部55の各センサにより当該硬貨CNから検出する情報の精度が著しく低下する恐れがある。
【0115】
またこの場合、仮想第1硬貨認識部123では、この異物OBJを除去する保守作業が必要となり、当該保守作業の効率を高める観点から、下センサフレーム51に対して右上センサフレーム53を着脱可能な構成とすることが考えられる。しかしこの場合、仮想第1硬貨認識部123では、下センサフレーム51内の外径センサ発信部55CLに対する右上センサフレーム53内の外径センサ受信部55CUの位置精度が低下するため、得られる外径受信信号の精度が低下し、硬貨CNの外径を判別する際の精度も低下する恐れがある。
【0116】
2番目の仮想第2硬貨認識部223は、
図7と対応する
図19に示すように、第1の実施の形態による硬貨認識部23と比較して、ブレード付勢部57が省略され、これに代わる仮想ブラシ付勢部258が設けられている。この仮想ブラシ付勢部258は、ブラシ付勢部58の前側に配置されており、該ブラシ付勢部58と同様に構成され、毛体部58Bと対応する毛体部258B等を有している。
【0117】
この仮想第2硬貨認識部223は、ピンベルト44により前方から硬貨CNが搬送されてくると、当該硬貨CNが仮想ブラシ付勢部258の前端部分に当接し、毛体部258Bの下端近傍を右前上方向に付勢して撓ませる。これにより仮想ブラシ付勢部258は、毛体部258Bの復元力により、硬貨CNに対して左前下方向に向かう力を作用させ、そのうち左方向成分により当該硬貨CNを左方向に付勢する。
【0118】
しかし仮想第2硬貨認識部223では、ブレード付勢部57(
図7)と比較して、毛体部258Bから硬貨CNに作用する左方向への力が小さい(弱い)。このため仮想第2硬貨認識部223では、例えば硬貨CNが搬送空間31S内で比較的右寄りの位置で搬送されていた場合等に、当該硬貨CNの左端が基準面42Sに当接するまでに比較的長い時間を要する可能性がある。そうすると仮想第2硬貨認識部223では、
図20(A)~(C)に示すように、磁気情報取得部55の各センサにより硬貨CNから情報を検出する際に、当該硬貨CNの左端が基準面42Sに当接していない恐れがあり、この場合に検出される情報の精度が大幅に悪化する可能性がある。
【0119】
また仮想第2硬貨認識部223では、
図21に示すように、硬貨CNの一部がブラシ付勢部58の前端に当接する段階で、当該硬貨CNに対し、ピンベルト44のピン46、仮想ブラシ付勢部258の毛体部258B及びブラシ付勢部58の毛体部58Bから、それぞれ力が作用する状態となる。
【0120】
このときピン46は、硬貨CNの前端近傍に対し、後方向へ向かう比較的大きい力F46を作用させる。毛体部258Bの前端から後端に至る各部分は、硬貨CNの上面におけるやや右寄り、すなわちピン46よりも右側において、主に前下方向に向かう比較的小さい力F258を作用させる。さらに毛体部58Bは、その前端部分により、硬貨CNにおける後端近傍の右寄りに対し、左前下方向に向かう比較的小さい力F58を作用させる。
【0121】
すなわち硬貨CNでは、力F46と力F258が前後方向に関して互いに反対に作用しており、且つ力F46が力F258よりも左側で作用している。また、力F46には下方向へ向かう成分が含まれていないものの、力F258には下方向に向かう成分が含まれている。さらに力F58にも、力F258と同様に前方向へ向かう成分及び下方向へ向かう成分が含まれている。
【0122】
そうすると硬貨CNには、仮想ブラシ付勢部258の前端近傍に位置する点Qを中心とした、時計回りのモーメントが発生する。この力がブラシ付勢部58によるF58の左方向成分よりも大きくなる場合、仮想第2硬貨認識部223では、硬貨CNがこの点Qを中心に回転しようとし、左端を基準面42Sから引き離してしまう。この結果、仮想第2硬貨認識部223では、特に外径センサ55Cにより硬貨CNから情報を検出する際に、その精度が著しく低下する恐れがある。
【0123】
このように、ブラシ付勢部58を省略した仮想第1硬貨認識部123やブレード付勢部57を省略した仮想第2硬貨認識部223では、基準面42Sに対する硬貨CNの当接や当接した状態の維持が困難となる恐れがあり、当該硬貨CNから検出する情報の精度が低下する可能性があった。
【0124】
これらに対して、第1の実施の形態による硬貨認識部23(
図7~
図9)では、ブレード付勢部57及びブラシ付勢部58を組み合わせて設けたことにより、基準面42Sに対して硬貨CNを当接させ、且つ当接した状態を維持することが容易であり、当該硬貨CNから検出された情報を基に、高精度な認識結果を得ることができる。
【0125】
以上の構成によれば、第1の実施の形態による硬貨入出金部12の硬貨認識部23は、ピンベルト44により硬貨CNが搬送されてくると、ブレード付勢部57により当該硬貨CNを左方向に付勢して基準面42Sに当接させる。また硬貨認識部23は、ブラシ付勢部58の毛体部58Bを撓ませることにより、当該硬貨CNに左前下方向に向かう力を作用させ、当該硬貨CNを基準面42S及び案内面41Sに当接させた状態を維持しながら後方向へ進行させ、磁気情報取得部55の各センサにより情報を検出する。これにより硬貨認識部23は、得られた情報から当該硬貨CNにおける表面の材質、全体の材質及び外径を精度良く判別でき、当該硬貨CNの金種や真偽等を高精度に認識できる。
【0126】
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態によるレジ釣銭システム301(
図1)は、第1の実施の形態によるレジ釣銭システム1と比較して、釣銭機3に代わる釣銭機303を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。釣銭機303は、第1の実施の形態による釣銭機3と比較して、硬貨入出金部12に代わる硬貨入出金部312を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。硬貨入出金部312(
図2)は、第1の実施の形態による硬貨入出金部12と比較して、硬貨認識部23に代わる硬貨認識部323を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0127】
硬貨認識部323は、
図7及び
図8と対応する
図22及び
図23に示すように、左規制部42L及びブレード付勢部57に代わる左規制部342L及びブレード付勢部357を有し、搬送空間31Sに代わる搬送空間331Sを形成している点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0128】
左規制部342L(
図23)は、左規制部42L(
図8)と比較して、右側面が案内面41Sに対して垂直ではなく、左下側と右上側とを結ぶような、すなわち搬送空間331S側に傾れたような傾斜面となっている。また左規制部342Lの右側面には、第1の実施の形態における基準当接板42Bと対応する薄板状の基準当接板342Bが設けられており、該基準当接板342Bの右側面が左規制部342Lの右側面と同様に傾斜し、且つ基準面342Sとなっている。以下では、基準面342Sを基準面側傾斜面とも呼ぶ。
【0129】
ブレード付勢部357は、第1の実施の形態によるブレード付勢部57と比較して、ブレード57A及び当接部57Bに代わるブレード357A及び当接部357Bを有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0130】
ブレード357A(
図23)は、ブレード57A(
図7)と比較して、左側面が左上側と右下側とを結ぶような、すなわち搬送空間331S側に倒れたような傾斜面となっている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。当接部357Bは、第1の実施の形態による当接部57Bの中央当接部57BC及び後当接部57BEとそれぞれ対応する中央当接部357BC及び後当接部357BEにより構成されている。中央当接部357BC及び後当接部357BEは、ブレード357Aの左側面と同様にそれぞれ傾斜している。以下では、当接部357Bの左側面を当接部側傾斜面とも呼ぶ。
【0131】
かかる構成により硬貨認識部323は、ピンベルト44(
図2等)により前方から硬貨CNが搬送されてくると、第1の実施の形態において
図10(A)~(D)に示した場合と同様に、当該硬貨CNがブレード付勢部357に当接し、ブレード357Aの回動等を伴いながら、当該硬貨CNを基準面342Sに当接させる。
【0132】
このとき硬貨認識部323は、
図23と対応する
図24に示すように、硬貨CNにおける左側の上端部分が基準面342Sに当接し、当該基準面342Sから当該硬貨CNに対して右下方向に向かう力F342を作用させる。また硬貨認識部323は、硬貨CNにおける右側の上端部分において当接部357Bに当接し、当該当接部357Bから当該硬貨CNに対して左下方向に向かう力F357を作用させる。すなわち硬貨CNは、左方向に付勢されると共に下方向に押し付けられることになる。
【0133】
続いて硬貨認識部323は、ピンベルト44(
図2等)により硬貨CNが後方へ搬送されると、第1の実施の形態において
図11に示した場合と同様に、当該硬貨CNの一部がブラシ付勢部58の前端近傍に当接する。
【0134】
このとき硬貨認識部323は、
図23及び
図24と対応する
図25に示すように、ブラシ付勢部58の毛体部58Bから硬貨CNの右側上端近傍に対して、左前下方向に向かう力を作用させる。また硬貨認識部323は、引き続き基準面342Sから当該硬貨CNの左側の上端近傍に対して右下方向に向かう力F342を作用させる。すなわち硬貨CNは、引き続き左方向に付勢されると供に下方向に押し付けられることになる。
【0135】
このように硬貨認識部323は、第1の実施の形態と同様に硬貨CNを基準面342Sに当接させることに加えて、当該硬貨CNに対して左右両側から下方向に向かう力を作用させることができる。これにより硬貨認識部323は、硬貨CNを案内面41Sに押し付けてその姿勢を安定させた状態で、磁気情報取得部55の各センサにより当該硬貨CNの情報を良好に検出でき、これを基に認識制御部50において当該硬貨CNの金種や真偽等を精度良く認識することができる。
【0136】
その他の点においても、第2の実施の形態による硬貨入出金部312は、第1の実施の形態による硬貨入出金部12と同様の作用効果を奏し得る。
【0137】
以上の構成によれば、第2の実施の形態による硬貨入出金部312の硬貨認識部323は、ピンベルト44により硬貨CNが搬送されてくると、ブレード付勢部357により当該硬貨CNを左下方向に付勢して基準面342Sに当接させると共に下方向に付勢する。また硬貨認識部323は、ブラシ付勢部58の毛体部58Bが撓むことにより、当該硬貨CNに左前下方向に向かう力を作用させ、当該硬貨CNを基準面342S及び案内面41Sに当接させた状態を維持しながら後方向へ進行させ、磁気情報取得部55の各センサにより情報を検出する。これにより硬貨認識部323は、得られた情報から当該硬貨CNにおける表面の材質、全体の材質及び外径を精度良く判別でき、当該硬貨CNの金種や真偽等を高精度に認識できる。
【0138】
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、硬貨認識部23(
図7等)において前側(上流側)にブレード付勢部57を配置し、後側(下流側)にブラシ付勢部58を配置する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば磁気情報取得部55において上流側に硬貨CNを基準面42Sに当接させなくとも必要な情報を検出できるセンサが配置されている場合に、ブラシ付勢部58を上流側に配置し、ブレード付勢部57を下流側に配置しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0139】
また上述した第1の実施の形態においては、ブラシ付勢部58において、毛体部58Bを構成する毛体の上端近傍を保持部58Aの内部に埋め込んで保持する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば毛体部58Bを構成する各毛体の上端を保持部58Aの下面に固定する等、種々の構成としても良い。要は、保持部58Aにより毛体部58Bにおける各毛体の上端近傍を保持部58Aに固定することにより、該毛体部58Bの下端部分に外力が加えられた場合に該毛体部58Bを撓ませ得れば良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0140】
さらに上述した第1の実施の形態においては、ブラシ付勢部58の毛体部58Bを、複数の毛体を束ねた構成とする場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば保持部58Aの下面において離散した複数箇所に、下方向に向けて立設された複数の毛体をそれぞれ設け、互いに隙間を隔てたこれらの複数の毛体の集合を毛体部58Bとしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0141】
さらに上述した第1の実施の形態においては、ブラシ付勢部58における毛体部58Bの下端と案内面41Sとの間隔を、最小厚硬貨における厚さの1/3以下とする場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、当該間隔を、少なくとも最小厚硬貨における厚さ未満としても良い。要は、毛体部58Bの下端が硬貨と当接して撓むことにより、当該硬貨CNに対して左前下方向に向かう力を作用させ得れば良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0142】
さらに上述した第1の実施の形態においては、ブラシ付勢部58を、前後方向に沿った一直線状に構成する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば
図26(A)に示す硬貨認識部423のように、ブラシ付勢部58の他にブラシ付勢部458を設ける等、左右方向に離隔した2列以上となるように設けても良い。また、例えば
図26(B)に示す硬貨認識部523のように、上側から見て三角波状に形成されたブラシ付勢部558を設けても良い。或いは、
図26(C)に示す硬貨認識部623のように、上側から見て波状(正弦波状)に形成されたブラシ付勢部658を設けても良い。さらには、
図26(D)に示す硬貨認識部723のように、上側から見て円弧状に形成されたブラシ付勢部758を設けても良い。また、
図26(E)に示す硬貨認識部823のように、前後方向に比較的短く構成されたブラシ付勢部858を、前後方向に離散した複数箇所に配置しても良く、或いは
図26(F)に示す硬貨認識部923のように、前後方向に比較的短く構成されたブラシ付勢部958を、前後方向及び左右方向に離散した複数箇所に配置しても良い。さらに、硬貨認識部423(
図26(A))や硬貨認識部923(
図26(F))において、例えば右側へ近付くに連れて毛体剛性を高めるなど、左右方向の位置に応じて毛体部58Bの剛性(撓みやすさ)を相違させても良い。すなわちブラシ付勢部58は、
図26(A)~(E)に示したように、搬送方向(すなわち前後方向)に沿って延在する略直線状に形成することや、
図26(F)に示したように、案内面41Sと平行な平面上で複数箇所に離散して配置した状態に形成することができる。第2の実施の形態についても同様である。
【0143】
さらに上述した第1の実施の形態においては、ブラシ付勢部58に薄板状の規制部58Cを設ける場合について述べた(
図8)。しかし本発明はこれに限らず、例えば規制部58Cの外周部分のみに相当する枠状等、種々の形状でなる規制部を設けても良い。或いは、例えば毛体部58Bの下端近傍が左側へ撓む頻度が極めて低い場合等に、規制部58Cを省略しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0144】
さらに上述した第1の実施の形態においては、ブレード付勢部57のブレード57Aを、軸体57Xを中心として回動させることにより、当接部57Bと基準面42Sとの間隔を拡大又は縮小させる場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えばブレード57Aを案内部41や右規制部42Rに対して左右方向に平行移動し得るように構成し、該ブレード57Aの左右方向への移動により当接部57Bと基準面42Sとの間隔を拡大又は縮小させるようにしても良い。或いは、例えば可撓性を有する材料によりブレード57Aを形成すると共に前端近傍を案内部41又は右規制部42Rに固定し、該ブレード57Aを撓ませる(しならせる)ことにより、当接部57Bと基準面42Sとの間隔を拡大又は縮小させるようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0145】
さらに上述した第1の実施の形態においては、硬貨認識部23(
図7等)のブレード付勢部57におけるブレード57Aを、多面体のような形状とする場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えばブレード57Aの外形を形成する部分や強度を確保する部分を残しながら、上下方向に貫通する複数の孔を穿設することにより、いわゆる肉抜きを行い、軽量化を図っても良い。これにより、ブレード57Aをより高速で回動させることが可能となるため、硬貨の搬送速度を高めた場合にも当該硬貨の動きに対し良好に追従させること、すなわち基準面42Sに当接させ続けることが可能となる。第2の実施の形態についても同様である。
【0146】
さらに上述した第1の実施の形態においては、磁気情報取得部55に下側材質センサ55A、全体材質センサ55B及び外径センサ55Cといった3組のセンサを設ける場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、磁気を利用して硬貨CNから情報を検出する種々のセンサを設けても良く、またセンサの数を2組以下又は4組以上としても良い。これらの場合、ブレード付勢部57におけるブレード57Aの可動範囲外に右上センサフレーム53を配置することが望ましい。さらには、磁気を利用したセンサに限らず、光や電磁波等の種々の物理量を表す情報を硬貨CNから検出する種々のセンサを配置しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0147】
さらに上述した第1の実施の形態においては、硬貨認識部23(
図7及び
図8)に光学情報取得部54を設け、硬貨の下面を撮像した画像データを生成する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば光学情報取得部54を省略しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0148】
さらに上述した第1の実施の形態においては、ベルト45に複数のピン46を設けたピンベルト44を搬送空間31Sの上側に配置する場合について述べた(
図2及び
図3)。しかし本発明はこれに限らず、例えば搬送ガイド部31の案内部41における左右方向の中央に溝を形成し、溝の内部にピンベルト44のベルト45を配置すると共にピン46の上端を案内面41Sの上方に突出させ、搬送空間31Sの下側で該ピンベルト44を走行させることにより硬貨を搬送するようにしても良い。この場合、硬貨認識部23においてピンベルト44と干渉しない箇所に各種センサを配置すれば良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0149】
さらに上述した第1の実施の形態においては、ベルト45に複数のピン46を設けたピンベルト44を搬送方向に沿って走行させることにより、硬貨に該ピン46を当接させて搬送方向に搬送する場合について述べた(
図2及び
図3)。しかし本発明はこれに限らず、例えば
図27(A)及び(B)に示す搬送ベルト部1032のように、ベルト1045の下面における離散した複数箇所に突起1046を設けた突起付きベルト1044を搬送方向に沿って走行させ、当該突起1046を硬貨CNに当接させて搬送方向に搬送しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0150】
さらに上述した第1の実施の形態においては、釣銭機3に紙幣入出金部11及び硬貨入出金部12を設け、紙幣及び硬貨の双方を取り扱う場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば釣銭機3から紙幣入出金部11を省略し、硬貨のみを取り扱うようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0151】
さらに上述した第1の実施の形態においては、釣銭機3の硬貨入出金部12に設けられる硬貨認識部23に本発明を適用する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば現金自動預払機(ATM)や自動販売機、或いは精算機等、硬貨の入金処理を行う種々の電子機器に本発明を適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0152】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0153】
さらに上述した実施の形態においては、搬送ガイドとしての搬送ガイド部31と、センサとしての磁気情報取得部55と、第1付勢部としてのブレード付勢部57と、第2付勢部としてのブラシ付勢部58とによって硬貨識別装置としての硬貨認識部23を構成する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる搬送ガイドと、センサと、第1付勢部と、第2付勢部とによって硬貨識別装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明は、例えばレジ釣銭システムの釣銭機に組み込まれる硬貨入出金部の硬貨認識部で利用できる。
【符号の説明】
【0155】
1、301……レジ釣銭システム、3、303……釣銭機、12、312……硬貨入出金部、16……硬貨入金口、20……硬貨制御部、22……搬送部、23、323……硬貨認識部、31……搬送ガイド部、31A……認識搬送ガイド部、31B……振分搬送ガイド部、31S、331S……搬送空間、32……搬送ベルト部、41……案内部、41S、51S……案内面、42B、342B……基準当接板、42L、342L……左規制部、42R……右規制部、42S、342S……基準面、44……ピンベルト、45……ベルト、46……ピン、50……認識制御部、51……下センサフレーム、52……左上センサフレーム、53……右上センサフレーム、54……光学情報取得部、55……磁気情報取得部、55A……下側材質センサ、55B……全体材質センサ、55C……外径センサ、57、357……ブレード付勢部、57A、357A……ブレード、57B、357B……当接部、57BC、357BC……中央当接部、57BE、357BE……後当接部、57D……スプリング、58……ブラシ付勢部、58A……保持部、58B……毛体部、58C……規制部、123……仮想第1硬貨認識部、223……仮想第2硬貨認識部、CN……硬貨、OBJ……異物。