(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】電力変換装置および電力変換装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20250212BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M1/08 A
(21)【出願番号】P 2021105320
(22)【出願日】2021-06-25
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 勇
(72)【発明者】
【氏名】辻 弘兵
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-284562(JP,A)
【文献】特開昭58-062714(JP,A)
【文献】特開2021-078274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42- 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサと、
前記コンデンサの正負極間に直列接続された第1,第2半導体素子と、
前記コンデンサの正負極間に直列接続された第3,第4半導体素子と、
前記第1,第2半導体素子の接続点と前記第3,第4半導体素子の接続点との間に接続された1次巻線、および、前記1次巻線が貫通された複数のトロイダルコアを有するパルストランスと、
前記第1~第4半導体素子にゲート信号を出力する制御回路と、
を備えた電力変換装置であって、
前記制御回路は、
前記第1~第4半導体素子のうち何れか一つの前記ゲート信号のオン指令とオフ指令とクロックに基づいて前記ゲート信号の周期を検出し、スイッチング周波数を出力するカウンタと、
前記スイッチング周波数に基づいて電圧指令値を出力する電圧指令値演算器と、
前記クロックに基づいてキャリア信号を出力するキャリア生成部と、
前記キャリア信号に基づいて相補関係の第1方形波と第2方形波を出力する方形波生成部と、
前記第1方形波に前記電圧指令値を乗算して前記第3,第4半導体素子の電圧指令値を出力する第1乗算器と、
前記第2方形波に前記電圧指令値を乗算して前記第1,第2半導体素子の電圧指令値を出力する第2乗算器と、
前記第3,第4半導体素子の電圧指令値と前記キャリア信号を比較して前記第3,第4半導体素子のゲート信号を出力する第1比較器と、
前記第1,第2半導体素子の電圧指令値と前記キャリア信号を比較して前記第1,第2半導体素子のゲート信号を出力する第2比較器と、
を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記カウンタは、
前記オン指令と前記クロックを入力する第1AND素子と、
前記オフ指令と前記クロックを入力する第2AND素子と、
前記第1AND素子の出力に基づいて前記ゲート信号のオン時間を計測するオン側カウンタ回路と、
前記第2AND素子の出力に基づいて前記ゲート信号のオフ時間を計測するオフ側カウンタ回路と、
前記オン時間と前記オフ時間に基づいて前記スイッチング周波数を演算する周波数演算器と、を備え、
前記オン側カウンタ回路と前記オフ側カウンタ回路は、それぞれ、
クロック端子に前記第1AND素子または前記第2AND素子の出力が入力され、データ端子に負論理出力端子の出力が入力され、正論理出力端子の出力が前記周波数演算器に出力される第1D型フリップフロップ回路と、
前記第1D型フリップフロップ回路の正論理出力端子の出力と、第2D型フリップフロップ回路の負論理出力端子の出力が入力される第3AND素子と、
前記第1D型フリップフロップ回路の負論理出力端子の出力と、前記第2D型フリップフロップ回路の正論理出力端子の出力が入力される第4AND素子と、
前記第3AND素子の出力と前記第4AND素子の出力が入力される第1OR素子と、
データ端子に前記第1OR素子の出力が入力され、クロック端子に前記第1AND素子または前記第2AND素子の出力が入力され、正論理出力端子の出力が前記周波数演算器に出力される前記第2D型フリップフロップ回路と、
前記第1D型フリップフロップ回路の正論理出力端子の出力と、前記第2D型フリップフロップ回路の正論理出力端子の出力と、第3D型フリップフロップ回路の負論理出力端子の出力が入力される第5AND素子と、
前記第1D型フリップフロップ回路の負論理出力端子の出力と、前記第3D型フリップフロップ回路の正論理出力端子の出力が入力される第6AND素子と、
前記第2D型フリップフロップ回路の負論理出力端子の出力と、前記第3D型フリップフロップ回路の正論理出力端子の出力が入力される第7AND素子と、
前記第5AND素子の出力と前記第6AND素子の出力と前記第7AND素子の出力を入力する第2OR素子と、
データ端子に前記第2OR素子の出力が入力され、クロック端子に前記第1AND素子または前記第2AND素子の出力が入力され、正論理出力端子の出力が前記周波数演算器に出力される前記第3D型フリップフロップ回路と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記電圧指令値演算器は、以下の(2)式により前記電圧指令値を演算することを特徴とする請求項1または2記載の電力変換装置。
【数2】
Vref:電圧指令値
f:スイッチング周波数
vref_i:スイッチング周波数f=0の時に整流後の直流電圧が定格電圧となるときの電圧指令値
fmax:最大スイッチング周波数
【請求項4】
コンデンサと、
前記コンデンサの正負極間に直列接続された第1,第2半導体素子と、
前記コンデンサの正負極間に直列接続された第3,第4半導体素子と、
前記第1,第2半導体素子の接続点と前記第3,第4半導体素子の接続点との間に接続された1次巻線、および、前記1次巻線が貫通された複数のトロイダルコアを有するパルストランスと、
前記第1~第4半導体素子にゲート信号を出力する制御回路と、
を備えた電力変換装置の制御方法であって、
前記制御回路は、
カウンタが、
前記第1~第4半導体素子のうち何れか一つの前記ゲート信号のオン指令とオフ指令とクロックに基づいて前記ゲート信号の周期を検出してスイッチング周波数を出力し、
電圧指令値演算器が、前記スイッチング周波数に基づいて電圧指令値を出力し、
キャリア生成部が、前記クロックに基づいてキャリア信号を出力し、
方形波生成部が、前記キャリア信号に基づいて相補関係の第1方形波と第2方形波を出力し、
第1乗算器が、前記第1方形波に前記電圧指令値を乗算して前記第3,第4半導体素子の電圧指令値を出力し、
第2乗算器が、前記第2方形波に前記電圧指令値を乗算して前記第1,第2半導体素子の電圧指令値を出力し、
第1比較器が、前記第3,第4半導体素子の電圧指令値と前記キャリア信号を比較して前記第3,第4半導体素子のゲート信号を出力し、
第2比較器が、前記第1,第2半導体素子の電圧指令値と前記キャリア信号を比較して前記第1,第2半導体素子のゲート信号を出力する
ことを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列接続された半導体素子を駆動するためのゲート駆動回路の制御方法および電源生成時の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に特許文献1に開示されたパルス電源の回路構成を示す。
図5に示すように、パルス電源は高耐圧化するために複数の半導体素子を直列に接続している。また、それぞれのゲート回路の電源もしくはゲート信号を生成するために、複数のトロイダルコアを直列に配置しコアの中央に1次巻線を貫通させている。そして、1次巻線に電流を流すことで電力及びゲート信号もしくは電力のみを供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の方法の場合、1本の1次巻線に複数のトランス(トロイダルコア)を貫通させる必要があるため1次巻線の線長が物理的に長くなってしまい、インダクタンス値が大きくなってしまう。
【0005】
インダクタンスが大きくなると負荷電力の状況に応じてパルストランスの2次側に出力される電圧が大きく変動する。負荷電力が低い条件時には過大な電圧が印加され、逆に負荷電力が大きい場合には電圧が不足してしまう。
【0006】
不足電圧が生じた場合、駆動対象の半導体素子に対しゲート電圧不足による損失増加などを引き起こす危険性がある。さらに、低電力時には大きな電圧が印加されてしまうためゲート駆動回路の高耐圧化が必要となり、高コスト化・信頼性の低下など様々な問題を引き起こす。
【0007】
以上示したようなことから、電力変換装置において、負荷の大きさによらずパルストランスが出力する電圧を一定化することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、コンデンサと、前記コンデンサの正負極間に直列接続された第1,第2半導体素子と、前記コンデンサの正負極間に直列接続された第3,第4半導体素子と、前記第1,第2半導体素子の接続点と前記第3,第4半導体素子の接続点との間に接続された1次巻線、および、前記1次巻線が貫通された複数のトロイダルコアを有するパルストランスと、前記第1~第4半導体素子にゲート信号を出力する制御回路と、を備えた電力変換装置であって、前記制御回路は、前記ゲート信号のオン指令とオフ指令とクロックに基づいて前記ゲート信号の周期を検出し、スイッチング周波数を出力するカウンタと、前記スイッチング周波数に基づいて電圧指令値を出力する電圧指令値演算器と、前記クロックに基づいてキャリア信号を出力するキャリア生成部と、前記キャリア信号に基づいて相補関係の第1方形波と第2方形波を出力する方形波生成部と、前記第1方形波に前記電圧指令値を乗算して前記第3,第4半導体素子の電圧指令値を出力する第1乗算器と、前記第2方形波に前記電圧指令値を乗算して前記第1,第2半導体素子の電圧指令値を出力する第2乗算器と、前記第3,第4半導体素子の電圧指令値と前記キャリア信号を比較して前記第3,第4半導体素子のゲート信号を出力する第1比較器と、前記第1,第2半導体素子の電圧指令値と前記キャリア信号を比較して前記第1,第2半導体素子のゲート信号を出力する第2比較器と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、その一態様として、前記カウンタは、前記オン指令と前記クロックを入力する第1AND素子と、前記オフ指令と前記クロックを入力する第2AND素子と、前記第1AND素子の出力に基づいて前記ゲート信号のオン時間を計測するオン側カウンタ回路と、前記第2AND素子の出力に基づいて前記ゲート信号のオフ時間を計測するオフ側カウンタ回路と、前記オン時間と前記オフ時間に基づいて前記スイッチング周波数を演算する周波数演算器と、を備え、前記オン側カウンタ回路と前記オフ側カウンタ回路は、それぞれ、クロック端子に前記第1AND素子または前記第2AND素子の出力が入力され、データ端子に負論理出力端子の出力が入力され、正論理出力端子の出力が前記周波数演算器に出力される第1D型フリップフロップ回路と、前記第1D型フリップフロップ回路の正論理出力端子の出力と、第2D型フリップフロップ回路の負論理出力端子の出力が入力される第3AND素子と、前記第1D型フリップフロップ回路の負論理出力端子の出力と、前記第2D型フリップフロップ回路の正論理出力端子の出力が入力される第4AND素子と、前記第3AND素子の出力と前記第4AND素子の出力が入力される第1OR素子と、データ端子に前記第1OR素子の出力が入力され、クロック端子に前記第1AND素子または前記第2AND素子の出力が入力され、正論理出力端子の出力が前記周波数演算器に出力される前記第2D型フリップフロップ回路と、前記第1D型フリップフロップ回路の正論理出力端子の出力と、前記第2D型フリップフロップ回路の正論理出力端子の出力と、第3D型フリップフロップ回路の負論理出力端子の出力が入力される第5AND素子と、前記第1D型フリップフロップ回路の負論理出力端子の出力と、前記第3D型フリップフロップ回路の正論理出力端子の出力が入力される第6AND素子と、前記第2D型フリップフロップ回路の負論理出力端子の出力と、前記第3D型フリップフロップ回路の正論理出力端子の出力が入力される第7AND素子と、前記第5AND素子の出力と前記第6AND素子の出力と前記第7AND素子の出力を入力する第2OR素子と、データ端子に前記第2OR素子の出力が入力され、クロック端子に前記第1AND素子または前記第2AND素子の出力が入力され、正論理出力端子の出力が前記周波数演算器に出力される前記第3D型フリップフロップ回路と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、その一態様として、前記電圧指令値演算器は、以下の(2)式により前記電圧指令値を演算することを特徴とする。
【0011】
【0012】
Vref:電圧指令値
f:スイッチング周波数
vref_i:スイッチング周波数f=0の時に整流後の直流電圧が定格電圧となるときの電圧指令値
fmax:最大スイッチング周波数。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電力変換装置において、負荷の大きさによらずパルストランスが出力する電圧を一定化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態における電力変換装置の主回路を示す回路構成図。
【
図2】実施形態における電力変換装置の制御回路を示すブロック図。
【
図3】実施形態におけるカウンタを示すブロック図。
【
図4】実施形態における生成波形例を示すタイムチャート。
【
図5】特許文献1におけるゲート用電源、ゲート回路、高電圧スイッチを示す回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願発明における電力変換装置の実施形態を
図1~
図4に基づいて詳述する。
【0016】
[実施形態]
図1に本実施形態における電力変換装置の主回路構成を示す。
図1に示すように、電力変換装置はコンデンサCを有する。コンデンサCの正負極間に第1,第2半導体素子U1,V1が直列接続される。また、コンデンサCの正負極間に第3,第4半導体素子X1,Y1が直列接続される。第1~第4半導体素子U1,V1,X1,Y1で電力変換器を構成する。
【0017】
第1,第2半導体素子U1,V1の接続点と第3,第4半導体素子X1,Y1の接続点との間にパルストランスTrの1次巻線が接続される。n個(n:2以上の自然数)のトロイダルコア1a~1nが直列に配置され、この複数のトロイダルコア1a~1nの中央に1次巻線を貫通させる。1次巻線とトロイダルコア1a~1nでパルストランスTrを構成する。トロイダルコア1a~1nには、例えば、それぞれ整流回路、ゲート回路を介して半導体デバイスが接続される。
【0018】
ここで、コンデンサ電圧(直流電圧)をE1とし、パルストランスTrの1次巻線の電圧をVとする。また、第3,第4半導体素子X1,Y1の接続点の電流をi1とする。
【0019】
図1の回路はパルストランスTrをドライブするための回路であり、一般的なフルブリッジインバータである。
【0020】
図2に本実施形態における電力変換装置の制御回路を示す。
図2の制御回路により第1~第4半導体素子U1,V1,X1,Y1のゲート信号を生成し、
図1の主回路を制御する。
【0021】
図2に示すように、ゲート信号のオン指令、ゲート信号を第1NOT素子2で反転したオフ指令、クロックCLKがカウンタ3に入力される。カウンタ3は、外部から入力される駆動対象の半導体素子のゲート信号の周期を検出し、スイッチング周波数fを推定する。
【0022】
電圧指令値演算器4は、スイッチング周波数fに基づいて電圧指令値Vrefを生成する。
【0023】
キャリア生成部5は、クロックCLKに基づいてキャリア信号を生成する。方形波生成部6は、キャリア信号に同期した相補関係の第1方形波と第2方形波を生成する。
【0024】
乗算器7aは、電圧指令値Vrefと第1方形波の振幅を掛け合わせて振幅を調整し、第3,第4半導体素子X1,Y1の電圧指令値を生成する。乗算器7bは、電圧指令値Vrefと第2方形波の振幅を掛け合わせて振幅を調整し、第1,第2半導体素子U1,V1の電圧指令値を生成する。
【0025】
比較器8aは、第3,第4半導体素子X1,Y1の電圧指令値とキャリア信号を比較することで第3,第4半導体素子X1,Y1のゲート信号を生成する。比較器8bは、第1,第2半導体素子U1,V1の電圧指令値とキャリア信号を比較することで第1,第2半導体素子U1,V1のゲート信号を生成する。
【0026】
図2の回路は、カウンタ3により外部から入力される駆動対象の半導体素子のゲート信号の周期を検出することでスイッチング周波数fを推定し、出力電圧を調整する。
【0027】
これはゲート駆動時の消費電力がスイッチング周波数に依存する特性を利用しており、ゲート駆動回路の消費電力pgはゲートの電荷量をQg,ゲート電圧の振幅をVg、スイッチング周波数をfとすると以下の(1)式で表すことができる。
【0028】
【0029】
以上よりスイッチング周波数fと負荷電力(消費電力)pgの間には比例関係が成り立つため、スイッチング周波数fに応じて出力電圧を調整することで、インダクタンスの影響によらずパルストランスTrの出力電圧を一定に制御することが可能となる。
【0030】
使用するカウンタの例を
図3に示す。
図3に示したカウンタ3により、ゲート信号のオン時間及びオフ時間を測定することでスイッチング周波数fを測定する。
【0031】
図3に示すように、カウンタ3は、第1,第2AND素子9a,9bと、オン側カウンタ回路10aと、オフ側カウンタ回路10bと、周波数演算器11と、を備える。オン側カウンタ回路10aはゲート信号のオン時間を計測し、オフ側カウンタ回路10bはゲート信号のオフ時間を計測する。
【0032】
パルス幅が長くなる(周波数が低くなる)場合は,カウンタの段数(ビット数)を増設することで対応可能である。
【0033】
第1AND素子9aはオン指令とクロックCLKを入力し、両方1のとき1を出力し、それ以外のとき0を出力する。第2AND素子9bはオフ指令とクロックCLKを入力し、両方1のとき1を出力し、それ以外のとき0を出力する。
【0034】
次に、オン側カウンタ回路10aについて説明する。第1AND素子9aの出力は、オン側カウンタ回路10aの第1D型フリップフロップ回路12,第2D型フリップフロップ回路13,第3D型フリップフロップ回路14のクロック端子に入力される。
【0035】
第1D型フリップフロップ回路12の負論理出力端子(以下、/Q端子と称する)の出力は第1D型フリップフロップ回路12のデータ端子(以下、D端子と称する)に入力される。第1D型フリップフロップ回路12の正論理出力端子(以下、Q端子と称する)の出力は周波数演算器11に入力される。
【0036】
第1D型フリップフロップ回路12のQ端子の出力と、第2D型フリップフロップ回路13の/Q端子の出力は、第3AND素子15に入力され、両方1のとき1を出力し、それ以外のとき0を出力する。
【0037】
第1D型フリップフロップ回路12の/Q端子の出力と、第2D型フリップフロップ回路13のQ端子の出力は、第4AND素子16に入力され、両方1のとき1を出力し、それ以外のとき0を出力する。
【0038】
第3AND素子15の出力と、第4AND素子16の出力は第1OR素子17に入力され、少なくとも何れか一方は1のとき1を出力し、両方0のとき0を出力する。第1OR素子17の出力は第2D型フリップフロップ回路13のD端子に入力される。第2D型フリップフロップ回路13のQ端子の出力は周波数演算器11に入力される。
【0039】
第1D型フリップフロップ回路12のQ端子の出力と、第2D型フリップフロップ回路13のQ端子の出力と、第3D型フリップフロップ回路14の/Q端子の出力は、第5AND素子18に入力され、全て1のとき1を出力し、それ以外のとき0を出力する。
【0040】
第1D型フリップフロップ回路12の/Q端子の出力と、第3D型フリップフロップ回路14のQ端子の出力は、第6AND素子19に入力され、両方1のとき1を出力し、それ以外のとき0を出力する。
【0041】
第2D型フリップフロップ回路13の/Q端子の出力と、第3D型フリップフロップ回路14のQ端子の出力は、第7AND素子20に入力され、両方1のとき1を出力し、それ以外のとき0を出力する。
【0042】
第5AND素子18の出力と第6AND素子19の出力と第7AND素子20の出力は第2OR素子21に入力され、少なくとも何れか一つが1のとき1を出力し、すべて0のとき0を出力する。第2OR素子21の出力は第3D型フリップフロップ回路14のD端子に入力される。第3D型フリップフロップ回路14のQ端子の出力は周波数演算器11に入力される。
【0043】
この第1~第3D型フリップフロップ回路12~14のQ端子の出力からゲート信号のオン時間が計測できる。
【0044】
オフ側カウンタ回路10bは、オン側カウンタ回路10aと同様の構成であるため説明を省略する。オフ側カウンタ回路10bは入力が第2AND素子9bの出力である以外はオン側カウンタ回路10aと同様である。第1~第3D型フリップフロップ回路12~14のQ端子の出力からゲート信号のオフ時間が計測できる。
【0045】
オン側カウンタ回路10a,オフ側カウンタ回路10bは、カウントした値に対してクロックの周波数をかけることで時間が算出できる。例えば、第1D型フリップフロップ回路12の出力が1、第2D型フリップフロップ回路13の出力が0、第3D型フリップフロップ回路14の出力が0の場合、カウント数は1であるため(2^0=1)×クロック周期がカウントした時間となり、これがオン時間、オフ時間となる。
【0046】
周波数演算器11は、オン側カウンタ回路10a,オフ側カウンタ回路10bの第1~第3D型フリップフロップ回路12~14の出力(オン時間、オフ時間)に基づいてスイッチング周波数fを出力する。
【0047】
次に電圧指令値Vrefの生成方法について述べる。
図2の電圧指令値演算器4は、カウンタ3により演算されたスイッチング周波数fに基づいて電圧指令値Vref生成する。電圧指令値Vrefは装置の最大スイッチング周波数をfmaxとすると以下の(2)式で与えられる。
【0048】
【0049】
ここで定数vref_iはスイッチング周波数f=0の時に整流後の直流電圧が定格電圧(連続運転可能な電圧のうち最大値)となるときの電圧指令値とする。vref_iに関しては上述した条件においてあらかじめ測定した値、もしくは設計により決定した値を使用するものとする。
【0050】
出力電圧は
図4に示すように電圧指令値Vrefを調整することで制御できる。
図4(a)は電圧指令値Vrefが0の時の各波形、
図4(b)は電圧指令値Vrefが0より大きい時の各波形である。
【0051】
第3,第4半導体素子X1,Y1の電圧指令値用の第1方形波と第1,第2半導体素子U1,V1の電圧指令値用の第2方形波をキャリア信号に基づいて生成する。さらに、第1方形波,第2方形波に(2)式で演算した電圧指令値Vrefを乗算する(
図2参照)。第1方形波に電圧指令値Vrefを乗算した値が第3,第4半導体素子X1,Y1の電圧指令値となり、第2方形波に電圧指令値Vrefを乗算した値が第1,第2半導体素子U1,V1の電圧指令値となる。
【0052】
この時、第1方形波,第2方形波はキャリア信号より生成され、キャリア信号と同期しているものとする。
図4(b)に示すように、キャリア信号と第1,第2半導体素子U1,V1の電圧指令値を比較することで第1,第2半導体素子U1,V1の導通状態(ゲート信号)を制御する。また、キャリア信号と第3,第4半導体素子X1,Y1の電圧指令値を比較することで第3,第4半導体素子X1,Y1の導通状態(ゲート信号)を制御する。
【0053】
キャリア信号より第3,第4半導体素子X1,Y1の電圧指令値の方が大きいとき、第3半導体素子X1のゲート信号はオン指令となり、第4半導体素子Y1のゲート信号がオフ指令となる。
【0054】
キャリア信号より第3,第4半導体素子X1,Y1の電圧指令値の方が小さいとき、第3半導体素子X1のゲート信号はオフ指令となり、第4半導体素子Y1のゲート信号がオン指令となる。
【0055】
キャリア信号より第1,第2半導体素子U1,V1の電圧指令値の方が大きいとき、第1半導体素子U1のゲート信号はオフ指令となり、第2半導体素子V1のゲート信号がオン指令となる。
【0056】
キャリア信号より第1,第2半導体素子U1,V1の電圧指令値の方が小さいとき、第1半導体素子U1のゲート信号はオン指令となり、第2半導体素子V1のゲート信号がオフ指令となる。
【0057】
また、第1,第2半導体素子U1,V1の電圧指令値と第3,第4半導体素子X1,Y1の電圧指令値の振幅を制御することで第1,第2半導体素子U1,V1のゲート信号と、第3,第4半導体素子X1,Y1のゲート信号の位相差を制御することができる。電圧指令値Vrefの振幅が0の時、第1,第2半導体素子U1,V1のゲート信号と、第3,第4半導体素子X1,Y1のゲート信号の位相差は0°となる。
【0058】
図4(a)の場合、第1,第2半導体素子U1,V1のゲート信号と、第3,第4半導体素子X1,Y1のゲート信号の位相差は0°のため、パルストランスTrに印加される電圧Vは矩形波となる。
【0059】
これに対して、本実施形態では、第1,第2半導体素子U1,V1のゲート信号と第3,第4半導体素子X1,Y1のゲート信号の位相差を0°よりも大きくすることで、パルストランスTrに印加される電圧Vは3段階の波形となる。これにより、印加される電圧の実効値を低減することができるため、励磁電流を低減し、且つ出力電圧の実効値を低減することが可能である。
【0060】
電圧指令値Vrefが0の場合、矩形波の出力電圧が出力されるため、直流電圧に応じた出力電圧が出力される。一方、電圧指令値Vrefが0以上の場合、出力電圧が0の期間を含んだ3段階の波形となるため、出力電圧を下げることができる。
【0061】
duty50%でスイッチングする第1,第2半導体素子U1,V1のレグと第3,第4半導体素子X1,Y1のレグの位相を、電圧指令値Vrefにより調整することで出力電圧Vの大きさを制御する。すなわち、第1,第2方形波に電圧指令値Vrefを乗算して第3,第4半導体素子X1,Y1の電圧指令値,第1,第2半導体素子U1,V1の電圧指令値とすることで、第3,第4半導体素子X1,Y1の導通状態(ゲート信号)と第1,第2半導体素子U1,V1の導通状態(ゲート信号)の位相を調整して出力電圧Vの大きさを制御する。電圧指令値Vref(第3,第4半導体素子X1,Y1の電圧指令値,第1,第2半導体素子U1,V1の電圧指令値)の振幅が0の時が最大電圧出力となる。
【0062】
本実施形態により、負荷電力に応じて出力電圧を調整することで、配線インダクタンスの影響を受けずにパルストランスTrの出力電圧を一定に保つことができる。その結果、ゲート駆動回路を構成する部品の耐圧低減による低コスト化、小型化、信頼性向上を図ることができる。
【0063】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0064】
1a~1n…トロイダルコア
2…第1NOT素子
3…カウンタ
4…電圧指令値演算器
5…キャリア生成部
6…方形波生成部
7a,7b…第1,第2乗算器
8a,8b…第1,第2比較器
9a,9b…第1,第2AND素子
10a,10b…オン側,オフ側カウンタ回路
11…周波数演算器
12~14…第1~第3D型フリップフロップ回路
15,16…第3,第4AND素子
17,21…第1,第2OR素子
18~20…第5~第7AND素子