(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】付着物質検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/02 20060101AFI20250212BHJP
【FI】
G01N1/02 A
(21)【出願番号】P 2021115264
(22)【出願日】2021-07-12
【審査請求日】2024-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】長尾 隆央
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和之
【審査官】川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-59268(JP,A)
【文献】特開2009-204545(JP,A)
【文献】実開昭53-9774(JP,U)
【文献】特開平4-347430(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0059033(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
G01N 27/60-27/70
G01N 27/92
B08B 5/00- 5/04
F24F 7/04- 7/06
F24F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準軸に沿って延伸すると共に互いに対向配置され、その間に検査対象の検査空間を形成する第1壁部及び第2壁部と、
前記検査空間に連通する吸入路を有する捕集部と、
前記捕集部を介して得られた前記検査空間の気体を含み且つ前記検査対象が進入する前記検査空間の入口面に沿った層状のジェットを、前記第1壁部から前記第2壁部に向けて連続的に噴射する噴射部と、
前記捕集部を介して得られた前記検査空間の前記気体から、前記検査対象の付着物質又は前記付着物質に由来する特定の物質を分析する分析部と
を備え、
前記第2壁部は、前記第1壁部に面すると共に前記基準軸に沿って延伸する凹部を含み、
前記噴射部は前記ジェットを発生するためのノズルを有し、
前記ノズルは、前記基準軸に沿った前記凹部の一対の縁部のうち、前記入口面に近い縁部に向けられている
付着物質検査装置。
【請求項2】
前記凹部は、前記一対の縁部を含み且つ前記第1壁部から離れるに連れて互いの距離が近づくと共に、前記基準軸に沿って延伸する一対の偏向面と、
前記一対の偏向面を接続する接続面と
を含む請求項1に記載の付着物質検査装置。
【請求項3】
前記凹部は、
前記一対の縁部のうちの一方から他方に連続する凹面によって構成される
請求項1に記載の付着物質検査装置。
【請求項4】
前記噴射部の前記ノズルは、前記基準軸に沿って延伸するスリットとして前記第1壁部に形成されている
請求項1~3のうちの何れか一項に記載の付着物質検査装置。
【請求項5】
前記第1壁部は、前記第2壁部に面すると共に前記基準軸に沿って延伸する凹部を含む
請求項1~4のうちの何れか一項に記載の付着物質検査装置。
【請求項6】
前記検査空間内の前記検査対象に対して気体を噴射する補助噴射部を更に備える請求項1~5のうちの何れか一項に記載の付着物質検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、付着物質検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、人に付着した物質の検査装置を開示している。この検査装置は捕集ゲートを備えている。捕集ゲートにはガス噴射部と吸引口が取り付けられ、捕通路等に設置される。被験者である人が捕集ゲートに進入すると、ガス噴射部は人に向けて圧縮気体を噴射する。人に付着していた物質は、圧縮気体の噴射によって分離され、吸引口から捕集される。捕集された物質は分析部によって分析される。
【0003】
吸引口は人体の側方の近傍、即ち、物質が付着しやすい手、腕及び肩に近い場所に設けられる。従って、付着物質の分離から捕集までの時間が短縮化される可能性が高まり、迅速な検査が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、付着物質を検出する際には、検査対象である人に圧縮ガス等の気体を直接噴射している。噴射時間が長ければ、その分だけ付着物質が検査対象から分離しやすくなるものの、付着物質が揮発性物質等の拡散しやすい物質であれば、拡散や希釈化が進行するため、付着物質の検出が困難となりやすい。また、検査対象が人である場合、圧縮気体に曝される時間が長くなると不快感等のストレスが増加しやすい。
【0006】
本開示は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、付着物質の検出感度を向上させることが可能な付着物質検査装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る付着物質検査装置は、基準軸に沿って延伸すると共に互いに対向配置され、その間に検査対象の検査空間を形成する第1壁部及び第2壁部と、前記検査空間に連通する吸入路を有する捕集部と、前記捕集部を介して得られた前記検査空間の気体を含み且つ前記検査対象が進入する前記検査空間の入口面に沿った層状のジェットを、前記第1壁部から前記第2壁部に向けて連続的に噴射する噴射部と、前記捕集部を介して得られた前記検査空間の前記気体から、前記検査対象の付着物質又は前記付着物質に由来する特定の物質を分析する分析部とを備える。前記第2壁部は、前記第1壁部に面すると共に前記基準軸に沿って延伸する凹部を含み、前記噴射部は前記ジェットを発生するためのノズルを有し、前記ノズルは、前記基準軸に沿った前記凹部の一対の縁部のうち、前記入口面に近い縁部に向けられている。
【0008】
前記凹部は、前記一対の縁部を含み且つ前記第1壁部から離れるに連れて互いの距離が近づくと共に、前記基準軸に沿って延伸する一対の偏向面と、前記一対の偏向面を接続する接続面とを含んでもよい。前記凹部は、前記一対の縁部のうちの一方から他方に連続する凹面によって構成されてもよい。前記噴射部の前記ノズルは、前記基準軸に延伸するスリットとして前記第1壁部に形成されていてもよい。前記第1壁部は、前記第2壁部に面すると共に前記基準軸に沿って延伸する凹部を含んでもよい。付着物質検査装置は、前記検査空間内の前記検査対象に対して気体を噴射する補助噴射部を更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、付着物質の検出感度を向上させることが可能な付着物質検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態に係る付着物質検査装置の斜視図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る第1壁部と第2壁部の断面図である。
【
図3】付着物質検査装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】付着物質検査装置の動作を説明するための図である。
【
図5】本開示の一実施形態の変形例に係る付着物質検査装置の上面図である。
【
図6】本開示の一実施形態の変形例に係る第2壁部の断面図である。
【
図7】本開示の一実施形態の変形例に係る第1壁部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の幾つかの実施形態について説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0012】
本実施形態に係る付着物質検査装置は、当該装置に進入した検査対象の付着物質を当該検査対象から分離して検査する。検査対象は例えば人である。ただし、検査対象はこれに限られず、荷物や人以外の生物、植物も適用可能である。また、付着物質検査装置の設置場所は例えば空港の搭乗口や、イベントホールの入場口など、特定の敷地との境界又はこれに続く通路である。ただし、設置場所もこれらに限られず、検査目的等に応じて適宜設定可能である。付着物質は、気化或いは微粒子への粉化が可能な物質である。例えば、付着物質検査装置を人等の通過を規制する保安装置として使用する場合、付着物質は、化学剤又は生物剤等の人体に悪影響を及ぼす毒性物質である。
【0013】
本実施形態に係る付着物質検査装置1について説明する。
図1は、付着物質検査装置1の斜視図である。
図2は、基準軸と直交する第1壁部10と第2壁部20の断面図である。
【0014】
説明の便宜上、互いに直交する3軸として、X軸、Y軸、及びZ軸を規定する。X軸及びY軸は例えば水平面に含まれる軸であり、X軸は左右方向に延伸し、Y軸は奥行き方向(前後方向)に延伸する。これに対して、Z軸は鉛直方向に延伸する。本実施形態では、検査対象として人を想定し、これを被験者Xと称する。また、各構成の配置の基準として基準軸を想定する。本実施形態において、基準軸はZ軸である。ただし、人の通行等を考慮しないのであれば、基準軸はX軸でもY軸でもよい。以下、説明の便宜上、付着物質検査装置を単に「検査装置」と称する。
【0015】
図1に示すように、検査装置1は、第1壁部10と、第2壁部20とを備える。第1壁部10と第2壁部20は、Z軸に沿って延伸する板状部材であり、X軸に沿った所定の間隔を置いて互いに対向配置される。後述の通り、第1壁部10には捕集部11と噴射部12が設けられ、第2壁部20には凹部21が設けられる。なお、検査装置1は、天井板(図示せず)を備えてもよい。天井板(図示せず)は、第1壁部10と第2壁部20の間の検査空間30を覆うように、各壁部の上部に取り付けられる。
【0016】
図1及び
図2に示すように、第1壁部10と第2壁部20は、その間に検査対象の検査空間30を形成する。また、第1壁部10と第2壁部20は、被験者Xの入口である検査空間30の入口面30aと、被験者Xの出口である検査空間30の出口面30bを規定する。検査空間30は、第1壁部10と第2壁部20によって挟まれた略矩形体の空間であり、入口面30aと出口面30bは、検査空間30を間に挟みつつY軸に沿った方向に互いに対向している。
【0017】
検査空間30は、被験者Xの通行が可能な寸法を有する。但し、後述のジェット50による気流が過剰に拡散しないような寸法に留められている。従って、X軸に沿った第1壁部10と第2壁部20の間隔は、検査対象の幅よりも若干広い値に設定される。本実施形態では、この間隔は、想定される被験者Xの肩幅よりも若干広い値に設定される。また、Z軸に沿った第1壁部10と第2壁部20の高さは、検査対象の高さより若干高い値に設定される。本実施形態では、この高さは、想定される被験者Xの身長よりも若干高い値に設定される。
【0018】
このように、第1壁部10と第2壁部20は、通路40の床面41に対し、垂直に立つゲートとして機能する。ただし、第1壁部10と第2壁部20のうちの少なくとも一方は、検査装置1が設置される通路40の壁として構成されてもよい。例えば、第1壁部10と第2壁部20のうちの少なくとも一方が、通路40の壁と一体と見えるように、当該に埋設されてもよい。
【0019】
検査装置1は、捕集部11と、噴射部12とを備える。
図1及び
図2に示すように、これらは第1壁部10に設けられている。
【0020】
捕集部11は、検査空間30に連通する吸入路13を有する。吸入路13は、第1壁部10の内部に設けられ、検査空間30に面する第1壁部10の内壁面10aに開口する。吸入路13は、噴射部12のファン14の入口側に接続しており、ファン14の回転によって吸気を開始する。また、吸入路13への吸引力を増加させるため、捕集部11は、吸入路13内に設置されるファン15(
図2参照)を有してもよい。
【0021】
捕集部11の位置(即ち、吸入路13の開口位置)は、後述する循環流52の流れを過剰に阻害しない限り、任意である。例えば、捕集部11は、第1壁部10のうち出口面30bの近傍に位置する。吸入路13の開口の形状及び個数も任意であり、例えば、Z軸に沿って延伸するスリット(溝)として開口していてもよく、これが所定の間隔を置いて複数に分割されていてもよい。なお、吸入路13には、分析部32(
図5参照)が接続している。
【0022】
噴射部12は、捕集部11を介して得られた検査空間30の気体を含む層状のジェット50を、第1壁部10から第2壁部20に向けて連続的に噴射する。層状のジェット50は、検査空間30の入口面30aに沿って進行する。換言すれば、層状のジェット50は入口面30aを覆うように、当該入口面30aを横切る。
【0023】
噴射部12はジェット50を発生するためのノズル16を有する。ノズル16の開口部は、Z軸に沿って延伸するスリット(溝)として形成されてもよく、Z軸に沿って間隔を置いて配列する複数の小径の開口によって構成されてもよい。層状のジェット50が得られる限り、ノズル16の開口部の形状は任意である。また、ノズル16は、Z軸に沿った凹部21の一対の縁部21a、21aのうち、入口面30aに近い縁部21aに向けられている。例えば、ノズル16の中心軸(所謂ノズル軸)16aは、第2壁部20の凹部21を形成する一対の偏向面22、22のうち、入口面30aに近い偏向面22と交差する。
【0024】
噴射部12は上述したファン14を有する。ファン14はノズル16と捕集部11の吸入路13との間に設けられ、吸入路13の気体を圧縮し、その圧縮気体をノズル16に供給する。
【0025】
上述の通り、ジェット50は入口面30aを横切るように噴射される。従って、入口面30aを通過した被験者Xは、このジェット50に必ず曝されることになる。ジェット50は、被験者Xに付着していた物質(付着物質)を被験者Xから分離する。例えば、付着物質が揮発性物質であれば、ジェット50は当該物質の揮発を促進させる。また、付着物質が粉体であれば、ジェット50は当該粉体を吹き飛ばす。
【0026】
図1及び
図2に示すように、第2壁部20は、第1壁部10(検査空間30)に面する凹部21を有している。凹部21は、検査空間30に面する第2壁部20の内壁面20aに形成され、内壁面20aから窪みつつZ軸に沿って延伸している。水平面における凹部21の断面形状は、Z軸に沿って一定である。
【0027】
図2に示すように、凹部21は、Z軸に沿って延伸する一対の偏向面22、22と、一対の偏向面22、22の間を接続する接続面23とを有する。一対の偏向面22、22は、一対の縁部21a、21aを含み且つ第1壁部10から離れるに連れて互いの距離が近づく一対のテーパ面である。各偏向面22は、検査装置1の外側に向けて窪むように湾曲している。一方、接続面23はY軸及びZ軸と平行な平面又は第1壁部10から離れる方向に窪んだ湾曲面である。
【0028】
図3は検査装置1の構成を示すブロック図である。この図に示すように、検査装置1は、分析部32と、通知部34と、制御部36とを備えている。
【0029】
分析部32は、ポンプ(図示せず)、センサ(図示せず)を少なくとも備え、捕集部11の吸入路13に接続されている。分析部32は、捕集部11から供給される付着物質又は付着物質に由来する特定の物質を分析し、付着物質の種類及び濃度等を特定する。センサは、特定すべき物質に応じて適宜選択される。なお、分析部32は、特定すべき物質に応じて、複数種のセンサを備えてもよい。分析部32による分析結果は、制御部36に送信される。
【0030】
通知部34は、制御部36から受け取った制御信号に基づいて、検査装置1の周囲に警報等を発する。通知部34は、スピーカ、ブザー、表示灯等によって構成される。
【0031】
制御部36は、キーボード等の入出力部、ディスプレイ、メモリ、中央演算部(CPU: Central Processing Unit)及び通信部等を備えるコンピュータであり、所定のプログラムの実行によって、噴射部12のファン14、分析部32及び通知部34等の、検査装置1を構成する電気機器を制御すると共に、所定の処理を実行する。
【0032】
例えば、制御部36は、ファン14の動作を制御する。また、制御部36は、分析部32から送られてきた分析結果に基づいて、付着物質の濃度を、予め記憶されたしきい値と比較し、この濃度がしきい値を超える場合には、通知部34を制御して警報等の通知を実行させる。
【0033】
次に、検査装置1の動作について、
図4を参照して説明する。
図4は、検査装置1の動作を説明するための図である。以下、説明の便宜上、一対の偏向面22、22のうち、入口面30aに近い偏向面22を偏向面22A、出口面30bに近い偏向面22を偏向面22Bと称する。
【0034】
図4(a)は、被験者Xが検査空間に進入する前の状態を示す図である。ファン14は既に動作しているものとする。従って、検査空間30の気体が持続的に吸入路13に流入する。流入した気体はファン14によって圧縮され、ノズル16に供給される。ノズル16に供給された圧縮気体は、ジェット50としてノズル16から噴射される。ジェット50は、第1壁部10から第2壁部20に向けて、検査空間30の入口面30aに沿って層状に流れる。従って、ジェット50は、入口面30aを略覆うように流れる。
【0035】
第2壁部20の凹部21は、噴射部12から噴射したジェット50を受ける。ジェット50は入口面30aに近い凹部21の縁部21aに向けて噴射される。従って、ジェット50の気流51は、偏向面22Aによって、入口面30aから出口面30bに向かう方向に偏向される。偏向された気流51は接続面23に沿って流れ、偏向面22Bによって第2壁部20から第1壁部10に向かう方向に偏向される。
【0036】
第2壁部20から第1壁部10に向けて流れる気流51は、第1壁部10の内壁面10aに衝突し、その大部分は、それ以前に流れた気流による検査空間30内の旋回によって(即ち旋回流内の圧力低下によって)、出口面30bから入口面30aに向かう方向に流れる。そして、気流51はジェット50と合流又は並進し、再び、第1壁部10から第2壁部20に向けて流れる。このようにして、気流51は検査空間30内でZ軸を中心として旋回する循環流52を形成する。
【0037】
被験者Xは、循環流52が形成された状態で入口面30aから検査空間に進入する。
図4(b)は、被験者Xが検査空間30に進入した状態を示している。被験者Xが検査空間30に進入する際、被験者Xは層状のジェット50を横切ることになる。また、ジェット50を横切った後も、循環流52に曝される。これらの気流による衝撃又は揮発の促進によって、被験者Xの付着していた物質は被験者Xから分離し、気流51と合流する。付着物質を含む気流53は、吸入路13を介して分析部32に流入し、分析される。
【0038】
制御部36は、分析部32による付着物質の分析結果をモニター等に表示すると共に、付着物質の濃度に基づく判定を実行する。即ち、制御部36は、付着物質の濃度としきい値と比較し、濃度がしきい値を越えた場合には、通知部34を制御して警報等による周囲への通知を実行する。
【0039】
上述の通り、本実施形態では、入口近傍のジェット50と、検査空間30内の循環流52を用いて、被験者Xから付着物質を分離する。被験者Xから分離した付着物質は、この循環流52によって、検査空間30の中に留まりやすくなり、検査空間30外への拡散が抑制される。従って、付着物質の濃度の時間的な低下が抑えられるため、付着物質の検出感度を向上させることができる。検出感度が向上するので、検査時間の短縮化も可能となる。
【0040】
また、循環流52の流速はジェット50の流速(例えば10m/s~20m/s)よりも十分に小さい。一方、ジェット50の流速は、循環流52の流速よりも大きいものの、被験者Xがジェット50に曝される時間は、入口面30aを通過する期間だけである。従って、気流の曝露による被験者Xの不快感を抑制することができる。
【0041】
図5は、本実施形態の変形例に係る検査装置1の上面図である。この図に示すように、検査装置1は、検査対象(例えば被験者X)に対して気体を噴射する補助噴射部17を備えてもよい。補助噴射部17は、噴射部12と同様のノズルを備えており、圧縮ガスを短時間、検査対象に噴射し、付着物質の分離を促進させる。補助噴射部17の圧縮ガスは、検査対象である被験者Xに直接噴射される。しかしながら、循環流52によって付着物質が検査空間30に滞留しているので、循環流52を採用しない場合と比べ、圧縮ガスの量と流速を低減することができる。つまり、被験者Xの不快感の増大を抑制しつつ、検出感度を高めることができる。
【0042】
図6は、本実施形態の変形例に係る第2壁部の断面図、
図7は、本実施形態の変形例に係る第1壁部の断面図である。
図6(a)に示すように、一対の偏向面22、22はZ軸と平行な平面でもよい。また、
図6(b)に示すように、凹部21は、一対の縁部21a、21aのうちの一方から他方に連続する凹面によって構成されてもよい。例えば、Z軸と直交する断面において、凹面は長軸が第2壁部20の内壁面20aと一致する半楕円でもよい。偏向面22が平面である場合は、上述の循環流が得られつつ製造コストを下げることが可能である。一方、凹部が単一の凹面で構成されている場合、循環流52に対して攪乱を抑えた偏向が可能となるため、検査空間30内の付着物質の濃度低下を更に抑制できる。従って、検出感度を更に高めることができる。
【0043】
図7に示すように、第1壁部10の内壁面10aに、第2壁部20と同様の凹部18を設けてもよい。凹部18は、第2壁部20に面すると共にZ軸に沿って延伸する。凹部18の断面形状は、凹部21の断面形状を採用できる。第1壁部10に凹部18を設けることにより、循環流52の維持と、検査空間30からの付着物質の拡散の抑制を容易に図ることができる。
【0044】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0045】
1…付着物質検査装置(検査装置)、10…第1壁部、10a…内壁面、11…捕集部、12…噴射部、13…吸入路、14、15…ファン、16…ノズル、16a…中心軸(ノズル軸)、17…補助噴射部、18…凹部、20…第2壁部、20a…内壁面、21…凹部、21a…縁部、22、22A、22B…偏向面、23…接続面、30…検査空間、32…分析部、34…通知部、36…制御部、40…通路、41…床面、50…ジェット、51…気流、52…循環流、X…被験者