(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20250212BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20250212BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20250212BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
H05K3/46 U
H05K3/46 Q
H05K7/20 C
H05K7/20 A
H01F17/00 B
H01F17/00 D
H01F17/00 Z
H01F30/10 D
H01F30/10 S
H01F30/10 A
H01F30/10 M
(21)【出願番号】P 2021120694
(22)【出願日】2021-07-21
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2021042664
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土田 正裕
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】小島 領太
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-079778(JP,A)
【文献】特開2015-018857(JP,A)
【文献】特開2015-126100(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221476(WO,A1)
【文献】特開2014-199908(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105465(WO,A1)
【文献】特開2013-168401(JP,A)
【文献】特開2020-205714(JP,A)
【文献】特開2010-003926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 7/20
H01F 17/00
H01F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号配線(100)を有する電子装置であって、
一面(1a)および前記一面と反対側の他面(1b)を有し、絶縁層(101)上に前記信号配線が形成された基板(1)を備え、
前記基板には、前記絶縁層上であって前記信号配線と同一平面上に、前記信号配線と熱的に接続される放熱配線(150)が形成されており、
前記基板には、厚さ方向に貫通する貫通孔(101a、101b)が形成され、
前記貫通孔を含む位置に、閉磁路を構成するコア(20)が配置されており、
前記基板は、複数の構成層(110、120、130、140)が積層された多層基板であり、
前記信号配線は、2つ以上の前記構成層において、前記貫通孔の周りに巻き回された巻線(111、121、131、141)と、前記巻線と接続される引出配線(112、122、123、132、133、142)とをそれぞれ有し、
前記巻線は、前記基板の面方向において、前記コアを挟んで両側に位置する部分を有し、
前記放熱配線は、前記面方向において、前記コアを挟んで両側に位置する巻線の周囲を含む箇所に形成され、かつ、前記巻線を通り、前記基板の面方向における一方向に沿って延びる仮想線(K)を基準とし、前記コアに対して一方側に位置する領域と、前記コアに対して他方側に位置する領域とが分割されており、
前記放熱配線は、前記基板の面方向に対する法線方向において前記コアと重なる部分にて、前記コアに対して一方側に位置する領域と、前記コアに対して他方側に位置する領域とが分割されて
おり、
前記2つ以上の構成層における少なくとも1つの構成層において、前記巻線は、一方の端部が第1端部用引出配線(122、132)と接続されると共に他方の端部が第2端部用引出配線(123、133)と接続されており、
前記第2端部用引出配線は、締結部材(60)を介して導電性材料で構成される筐体(2)に電気的に接続され、かつ前記放熱配線と繋がっている電子装置。
【請求項2】
信号配線(100)を有する電子装置であって、
一面(1a)および前記一面と反対側の他面(1b)を有し、絶縁層(101)上に前記信号配線が形成された基板(1)を備え、
前記基板には、前記絶縁層上であって前記信号配線と同一平面上に、前記信号配線と熱的に接続される放熱配線(150)が形成されており、
前記基板には、厚さ方向に貫通する貫通孔(101a、101b)が形成され、
前記貫通孔を含む位置に、閉磁路を構成するコア(20)が配置されており、
前記基板は、複数の構成層(110、120、130、140)が積層された多層基板であり、
前記信号配線は、2つ以上の前記構成層において、前記貫通孔の周りに巻き回された巻線(111、121、131、141)と、前記巻線と接続される引出配線(112、122、123、132、133、142)とをそれぞれ有し、
前記2つ以上の構成層における少なくとも1つの構成層において、前記巻線は、一方の端部が第1端部用引出配線(122、132)と接続されると共に他方の端部が第2端部用引出配線(123、133)と接続されており、
前記第2端部用引出配線は、締結部材(60)を介して導電性材料で構成される筐体(2)に電気的に接続され、かつ前記放熱配線と繋がっている電子装置。
【請求項3】
前記巻線は、前記基板の面方向において、前記コアを挟んで両側に位置する部分を有し、
前記放熱配線は、前記面方向において、前記コアを挟んで両側に位置する巻線の周囲を含む箇所に形成され、かつ、前記巻線を通り、前記基板の面方向における一方向に沿って延びる仮想線(K)を基準とし、前記コアに対して一方側に位置する領域と、前記コアに対して他方側に位置する領域とが分割されている請求項
2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記巻線と前記第2端部用引出配線との接続領域(R1、R3)は、前記巻線と前記第1端部用引出配線との接続領域(R2、R4)より大きくされている請求項
1ないし
3のいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項5】
前記基板は、他面が導電性材料で構成される筐体(2)と対向する状態で配置され、
前記基板の一面および他面のうちの少なくとも一方には、前記信号配線と熱的に接続される放熱部材(81、82)が配置されている請求項1ないし
4のいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項6】
前記基板の一面上には、前記放熱部材が配置され、
前記放熱部材上には、押さえ部材(90)が配置されており、
前記基板には、厚さ方向に貫通する貫通孔(101a、101b)が形成され、
前記貫通孔を含む位置に、閉磁路を構成するコア(20)が配置されており、
前記押さえ部材は、前記放熱部材上に配置される支持部(90b)と、前記支持部と一体化されて前記コアを押圧する押圧部(90c)とを有している請求項
5に記載の電子装置。
【請求項7】
前記基板と前記コアとの間には、放熱部材(50)が配置されている請求項1ないし
6のいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項8】
信号配線(100)を有する電子装置であって、
一面(1a)および前記一面と反対側の他面(1b)を有し、絶縁層(101)上に前記信号配線が形成された基板(1)を備え、
前記基板には、前記絶縁層上であって前記信号配線と同一平面上に、前記信号配線と熱的に接続される放熱配線(150)が形成されており、
前記基板は、他面が導電性材料で構成される筐体(2)と対向する状態で配置され、
前記基板の一面および他面のうちの少なくとも一方には、前記信号配線と熱的に接続される放熱部材(81、82)が配置されており、
前記基板の一面上には、前記放熱部材が配置され、
前記放熱部材上には、押さえ部材(90)が配置されており、
前記基板には、厚さ方向に貫通する貫通孔(101a、101b)が形成され、
前記貫通孔を含む位置に、閉磁路を構成するコア(20)が配置されており、
前記押さえ部材は、前記放熱部材上に配置される支持部(90b)と、前記支持部と一体化されて前記コアを押圧する押圧部(90c)とを有している電子装置。
【請求項9】
前記基板は、導電性材料で構成される筐体(2)に、前記放熱配線と熱的に接続される締結部材(60)を介して固定される請求項1ないし
8のいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項10】
前記基板は、複数箇所が締結部材(60)を介して筐体(2)に固定され、
前記基板のうちの前記締結部材にて押圧される部分は、前記信号配線および前記放熱配線を含む配線(200)の厚さの合計が互いに同じとされている請求項1ないし
9のいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項11】
前記基板は、前記信号配線および前記放熱配線が形成されるトランス構成領域(10)を有し、
前記放熱配線は、導電性材料で構成される筐体(2)と電気的に接続されると共に、前記トランス構成領域外の配線と接続されている請求項1ないし1
0のいずれか1つに記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号配線を有する電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、信号配線を有する電子装置が提案されている。例えば、特許文献1には、電子装置としての電力変換装置が提案されている。具体的には、この電力変換装置は、信号配線としての1次巻線と2次巻線とを有し、1次巻線と2次巻線との間に絶縁プレートが配置されている。また、この電力変換装置は、1次巻線上に放熱プレートが配置されている。そして、この電力変換装置は、2次巻線、絶縁プレート、1次巻線、放熱プレートが積層され、これらが成形樹脂によって一体化されることで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような電子装置では、さらに放熱性の向上を図ることが望まれている。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、放熱性の向上を図ることができる電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1、2、8では、信号配線(100)を有する電子装置であって、一面(1a)および一面と反対側の他面(1b)を有し、絶縁層(101)上に信号配線が形成された基板(1)を備え、基板には、絶縁層上であって信号配線と同一平面上に、信号配線と熱的に接続される放熱配線(150)が形成されている。
そして、請求項1では、基板には、厚さ方向に貫通する貫通孔(101a、101b)が形成され、貫通孔を含む位置に、閉磁路を構成するコア(20)が配置されており、基板は、複数の構成層(110、120、130、140)が積層された多層基板であり、信号配線は、2つ以上の構成層において、貫通孔の周りに巻き回された巻線(111、121、131、141)と、巻線と接続される引出配線(112、122、123、132、133、142)とをそれぞれ有し、巻線は、基板の面方向において、コアを挟んで両側に位置する部分を有し、放熱配線は、面方向において、コアを挟んで両側に位置する巻線の周囲を含む箇所に形成され、かつ、巻線を通り、基板の面方向における一方向に沿って延びる仮想線(K)を基準とし、コアに対して一方側に位置する領域と、コアに対して他方側に位置する領域とが分割されており、放熱配線は、基板の面方向に対する法線方向においてコアと重なる部分にて、コアに対して一方側に位置する領域と、コアに対して他方側に位置する領域とが分割されており、2つ以上の構成層における少なくとも1つの構成層において、巻線は、一方の端部が第1端部用引出配線(122、132)と接続されると共に他方の端部が第2端部用引出配線(123、133)と接続されており、第2端部用引出配線は、締結部材(60)を介して導電性材料で構成される筐体(2)に電気的に接続され、かつ放熱配線と繋がっている。
請求項2では、基板には、厚さ方向に貫通する貫通孔(101a、101b)が形成され、貫通孔を含む位置に、閉磁路を構成するコア(20)が配置されており、基板は、複数の構成層(110、120、130、140)が積層された多層基板であり、信号配線は、2つ以上の構成層において、貫通孔の周りに巻き回された巻線(111、121、131、141)と、巻線と接続される引出配線(112、122、123、132、133、142)とをそれぞれ有し、2つ以上の構成層における少なくとも1つの構成層において、巻線は、一方の端部が第1端部用引出配線(122、132)と接続されると共に他方の端部が第2端部用引出配線(123、133)と接続されており、第2端部用引出配線は、締結部材(60)を介して導電性材料で構成される筐体(2)に電気的に接続され、かつ放熱配線と繋がっている。
請求項8では、基板は、他面が導電性材料で構成される筐体(2)と対向する状態で配置され、基板の一面および他面のうちの少なくとも一方には、信号配線と熱的に接続される放熱部材(81、82)が配置されており、基板の一面上には、放熱部材が配置され、放熱部材上には、押さえ部材(90)が配置されており、基板には、厚さ方向に貫通する貫通孔(101a、101b)が形成され、貫通孔を含む位置に、閉磁路を構成するコア(20)が配置されており、押さえ部材は、放熱部材上に配置される支持部(90b)と、支持部と一体化されてコアを押圧する押圧部(90c)とを有している。
【0007】
これによれば、信号配線と同一平面上に放熱配線が配置されており、信号配線と放熱配線とを近接して配置し易くなる。このため、信号配線から放熱配線を介して放熱し易くなり、放熱性の向上を図ることができる。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態における電力変換装置の斜視図である。
【
図5A】
図1中のVA-VA線に沿った断面図である。
【
図5B】
図1中のVB-VB線に沿った断面図である。
【
図6】放熱配線を分割していない場合に発生し得る課題を説明するための図である。
【
図7】第1実施形態の変形例におけるトランス構成領域の分解斜視図である。
【
図8A】第2実施形態における第2構成層の平面図である。
【
図8B】第2実施形態における第3構成層の平面図である。
【
図9A】第3実施形態における第2構成層の平面図である。
【
図9B】第3実施形態における第3構成層の平面図である。
【
図10】第4実施形態における電力変換装置の斜視図である。
【
図11】押さえ部材、一面側放熱部材、トランス構成領域、および他面側放熱部材の分解斜視図である。
【
図13】第5実施形態における電力変換装置の斜視図である。
【
図14】第5実施形態の変形例における電力変換装置の斜視図である。
【
図15】プリント基板を筐体に固定する際に発生し得る課題を説明するための図である。
【
図16】第6実施形態における電力変換装置の断面模式図である。
【
図17】第6実施形態の変形例における電力変換装置の断面模式図である。
【
図18】第7実施形態における第1構成層の平面図である。
【
図19】第8実施形態におけるトランス構成領域の分解斜視図である。
【
図20】他の実施形態におけるトランスの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、電子装置として、トランスTを有する電力変換装置について説明する。
【0012】
本実施形態の電力変換装置は、
図1に示されるように、プリント基板1と、筐体2とを備えている。本実施形態のプリント基板1は、銅等で構成される信号配線100と、エポキシ樹脂等で構成される絶縁層101とが交互に積層された多層基板とされており、一面1aおよび他面1bを有している。
【0013】
そして、プリント基板1は、所定箇所がトランスTのコイルを構成するトランス構成領域10とされており、このトランス構成領域10にコア20が備えられることでトランスを構成する。また、
図1では、省略しているが、プリント基板1には、トランス構成領域10と異なる領域に、コンデンサ等の電子部品が適宜搭載されている。
【0014】
本実施形態のトランスTは、
図2に示されるように、第1~第3コイル31~33を有する構成とされている。そして、第1コイル31は、一方の端部に第1接続線41が接続されると共に他方の端部に第2接続線42が接続され、第1接続線41および第2接続線42を介して図示しない交流回路等に接続される。第2コイル32および第3コイル33は、直列に接続され、第2コイル32のうちの第3コイル33と反対側の端部に第3接続線43が接続されると共に第3コイル33のうちの第2コイル32と反対側の端部に第4接続線44が接続されている。そして、第2コイル32および第3コイル33は、第3接続線43および第4接続線44を介して図示しない整流回路等に接続される。また、本実施形態では、第2コイル32と第3コイル33との間に、第5接続線45が接続されている。第5接続線45は、後述するように、筐体2に接続されてグランド電位に維持される。
【0015】
そして、プリント基板1におけるトランス構成領域10には、上記第1~第3コイル31~33や第1~第5接続線41~45を構成するように、信号配線100が形成されている。以下、本実施形態のトランス構成領域10について、具体的に説明する。
【0016】
本実施形態のトランス構成領域10は、
図3、
図4A~
図4C、
図5A、および
図5Bに示されるように、第1~第4構成層110、120、130、140が積層されて構成されている。なお、トランス構成領域10は、プリント基板1の一部で構成されており、
図3で分解斜視図を示しているが、実際には一体化されている。そして、プリント基板1は、トランス構成領域10と同様に、第1~第4構成層140が積層されて構成されている。但し、以下では、単に第1~第4構成層110、120、130、140と記載する場合には、トランス構成領域10における第1~第4構成層110、120、130、140のことを意味している。
【0017】
第1~第3構成層110、120、130は、信号配線100および絶縁層101を有する構成とされている。第4構成層140は、信号配線100を有する構成とされている。そして、第1~第4構成層110、120、130、140における信号配線100は、第1~第3構成層110、120、130に形成される接続ビア102を介して適宜電気的に接続されている。なお、第4構成層140は、第3構成層130における絶縁層101のうちの第2構成層120側と反対側に形成される信号配線100にて構成される。このため、第3構成層130における絶縁層101は、第3構成層130と第4構成層140とで共用されているともいえる。
【0018】
第1~第3構成層110、120、130は、それぞれ、絶縁層101に、厚さ方向に貫通する1つの中央貫通孔101aと、2つの外縁貫通孔101bが形成されている。具体的には、中央貫通孔101aは、第1~第3構成層110、120、130において、略中央部に形成されている。2つの外縁貫通孔101bは、第1~第3構成層110、120、130において、中央貫通孔101aを挟むように配置されている。より詳しくは、中央貫通孔101aおよび外縁貫通孔101bは、後述する第1コア21または第2コア22の各脚部21b、21c、22b、22cが挿入可能な位置、大きさに形成されている。
【0019】
そして、第1構成層110には、絶縁層101上に、中央貫通孔101aを基準として巻き回され、上記のトランスTにおける第1コイル31の一部を構成する信号配線100としての上方1次巻線111が形成されている。本実施形態の上方1次巻線111は、巻数が4巻とされる共に、4巻が可能な線幅とされ、中央貫通孔101aと外縁貫通孔101bとの間を含むように巻き回されている。
【0020】
また、第1構成層110には、信号配線100として、上方1次巻線111における中央貫通孔101aと反対側の一端部から引き出され、第1接続線41を構成する第1引出配線112が形成されている。第1構成層110には、中央貫通孔101aを挟んで第1引出配線112が形成される側と反対側に、信号配線100として、第3接続線用配線113および第4接続線用配線114が形成されている。第3接続線用配線113は、後述の第2構成層120に形成される第3引出配線122と接続ビア102を介して接続される。第4接続線用配線114は、後述の第2構成層120に形成される第4接続線用配線124と接続ビア102を介して接続される。
【0021】
第2構成層120は、絶縁層101上に、中央貫通孔101aを基準として巻き回され、上記のトランスTにおける第2コイル32を構成する信号配線100としての2次巻線121が形成されている。本実施形態の2次巻線121は、巻数が1巻とされると共に、1巻に対応した線幅とされ、中央貫通孔101aと外縁貫通孔101bとの間を含むように巻き回されている。
【0022】
また、第2構成層120には、信号配線100として、2次巻線121における一端部から引き出され、第3接続線43を構成する第3引出配線122が形成されている。第2構成層120には、信号配線100として、2次巻線121における他端部から引き出され、第5接続線45を構成する第5引出配線123が形成されている。第5引出配線123には、後述の締結部材60が挿通される締結孔123aが形成されている。なお、締結孔123aは、第5引出配線123および絶縁層101を貫通するように形成されている。また、本実施形態では、第3引出配線122が第1端部用引出配線に相当し、第5引出配線123が第2端部用引出配線に相当する。第2構成層120には、後述の第3構成層130に形成される第4引出配線132と接続ビア102を介して接続される第4接続線用配線124が形成されている。
【0023】
なお、本実施形態の第3引出配線122および第5引出配線123は、第1構成層110における第3接続線用配線113および第4接続線用配線114が形成される側と同じ側に形成されている。言い換えると、第3引出配線122および第5引出配線123は、第2構成層120のうちの第1構成層110における第1引出配線112と対向する部分と中央貫通孔101aを挟んで反対側に位置する部分に形成されている。
【0024】
第3構成層130は、絶縁層101上に、中央貫通孔101aを基準として巻き回され、上記のトランスTにおける第3コイル33を構成する信号配線100としての3次巻線131が形成されている。本実施形態の3次巻線131は、巻数が1巻とされると共に、1巻に対応した線幅とされ、中央貫通孔101aと外縁貫通孔101bとの間を含むように巻き回されている。
【0025】
また、第3構成層130には、信号配線100として、3次巻線131における一端部から引き出され、第4接続線44を構成する第4引出配線132が形成されている。第3構成層130には、信号配線100として、3次巻線131における他端部から引き出され、第5接続線45を構成する第5引出配線133が形成されている。第5引出配線133には、後述の締結部材60が挿通される締結孔133aが形成されている。なお、締結孔133aは、第5引出配線133および絶縁層101を貫通するように形成されている。また、本実施形態では、第4引出配線132が第1端部用引出配線に相当し、第5引出配線133が第2端部用引出配線に相当する。第3構成層130には、後述の第4構成層140が有する第3接続線用配線143と接続ビア102を介して接続される第3接続線用配線134が形成されている。
【0026】
なお、本実施形態の第4引出配線132および第5引出配線133は、第1構成層110における第3接続線用配線113および第4接続線用配線114が形成される側と同じ側に形成されている。言い換えると、第4引出配線132および第5引出配線133は、第3構成層120のうちの第1構成層110における第1引出配線112と対向する部分と中央貫通孔101aを挟んで反対側に位置する部分に形成されている。
【0027】
第4構成層140は、上記のように、第3構成層130の絶縁層101のうちの、3次巻線131等が形成される側の面と反対側に配置される。そして、第4構成層140は、第3構成層130の絶縁層101に形成される中央貫通孔101aを基準として巻き回された信号配線100としての下方1次巻線141を有している。本実施形態の下方1次巻線141は、巻数が4巻とされる共に、4巻が可能な線幅とされ、第3構成層130に形成された中央貫通孔101aと外縁貫通孔101bとの間を含むように巻き回されている。そして、下方1次巻線141における中央貫通孔101a側の他端部は、第1~第3構成層110、120、130に形成された接続ビア102を介して、上方1次巻線111における中央貫通孔101a側の他端部と電気的に接続されている。このため、本実施形態の第1コイル31は、上方1次巻線111および下方1次巻線141にて構成されている。
【0028】
また、第4構成層140は、信号配線100として、下方1次巻線141における中央貫通孔101aと反対側の一端部から引き出され、第2接続線42を構成する第2引出配線142を有している。第4構成層140は、信号配線100として、第3構成層130の第3接続線用配線134と接続ビア102を介して接続される第3接続線用配線143、および第4引出配線132と接続ビア102を介して接続される第4接続線用配線144を有している。
【0029】
なお、第2引出配線142は、第1構成層110における第1引出配線112と同じ側に形成されている。また、第3接続線用配線143および第4接続線用配線144は、中央貫通孔101aを挟んで第2引出配線142が形成される側と反対側に形成されている。
【0030】
本実施形態では、以上のように、第1、第4構成層110、140に形成される1次巻線111、141にて第1コイル31が構成される。第2構成層120に形成される2次巻線121にて第2コイル32が構成される。第3構成層130に形成される3次巻線131にて第3コイル33が構成される。また、第1構成層110に形成される第1引出配線112にて第1接続線41が構成される。第4構成層140に形成される第2引出配線142にて第2接続線42が構成される。第2構成層120に形成される第3引出配線122にて第3接続線43が構成され、第5引出配線123にて第5接続線45が構成される。第3構成層130に形成される第4引出配線132にて第4接続線44が構成され、第5引出配線133にて第5接続線45が構成される。
【0031】
また、第1~第4構成層140は、放熱配線150を有している。具体的には、第1構成層110は、絶縁層101上において、上方1次巻線111の周囲に配置され、上方1次巻線111と熱的に接続される放熱配線150を有している。第2構成層120は、2次巻線121の周囲に、2次巻線121と熱的に接続される放熱配線150を有している。第3構成層130は、3次巻線131の周囲に、3次巻線131と熱的に接続される放熱配線150を有している。第4構成層140は、下方1次巻線141の周囲に、下方1次巻線141と熱的に接続される放熱配線150を有している。つまり、第1~第4構成層140は、各巻線111、121、131、141と同一平面上に、それぞれ放熱配線150を有している。なお、放熱配線150は、例えば、信号配線100と同様に、銅等で構成される。
【0032】
各放熱配線150には、後述の締結部材60を挿通させるための締結孔151が形成されている。具体的には、各放熱配線150は、後述するように分割されているが、分割された各領域に締結孔151が形成されている。なお、締結孔151は、放熱配線150および絶縁層101を貫通するように形成されている。また、第1~第4構成層110、120、130、140の各放熱配線150における締結孔151は、プリント基板1の一面1aに対する法線方向において、同じ位置に形成されている。そして、第1~第4構成層110、120、130、140に形成される各放熱配線150は、後述するように分割されているが、それぞれ接続ビア102を介して熱的に接続されている。つまり、第2~第4構成層120、130、140に形成される各放熱配線150は、第1構成層110に形成される放熱配線150と熱的に接続されている。言い換えると、第1~第3構成層110~130に形成される各放熱配線150は、第4構成層140に形成される放熱配線150と熱的に接続されている。
【0033】
プリント基板1に備えられるコア20は、フェライト等の磁性材料によって構成されており、一対の第1コア21と第2コア22とが組み合わされることで構成される。本実施形態では、第1コア21および第2コア22は、基部21a、22aと、基部21a、22aから延設される内脚部21b、22bおよび一対の外脚部21c、22cとを有する構成とされている。
【0034】
各基部21a、22aは、一方向を長手方向とする平面板状とされている。内脚部21b、22bは、基部21a、22aの長手方向における中心部において、基部21a、22aの面方向に対する法線方向に突出して形成されている。一対の外脚部21c、22cは、基部21a、22aの長手方向における両端部において、基部21a、22aの面方向に対する法線方向に突出して形成されている。つまり、本実施形態の第1コア21および第2コア22は、それぞれ、いわゆるE型コアとされている。
【0035】
そして、第1コア21は、プリント基板1の一面1a側から、内脚部21bが中央貫通孔101aに挿入されると共に、各外脚部21cが各外縁貫通孔101bに挿入されて配置される。第2コア22は、プリント基板1の他面1b側から、内脚部22bが中央貫通孔101aに挿入されると共に、各外脚部22cが各外縁貫通孔101bに挿入されて配置される。つまり、第1コア21および第2コア22は、互いに対向して配置される。これにより、トランス構成領域10に閉磁路が構成される。なお、第1コア21および第2コア22における内脚部21b、22bおよび外脚部21c、22cは、プリント基板1に配置された際、互いの内脚部21b、22b同士および互いの外脚部21c、22c同士が当接するように、突出高さが調整されている。
【0036】
また、本実施形態では、コア20とプリント基板1との間には、絶縁材料であって、熱伝導率の高い材料で構成される放熱部材50が配置されている。なお、このような放熱部材50は、放熱グリス、放熱ギャッフィラー、放熱パテシート、または放熱ゲルシート等で構成される。
【0037】
ここで、本実施形態の放熱配線150は、各巻線111、121、131、141に形成されており、各引出配線112、122、123、132、133、142等が形成される部分で分割されている。また、本実施形態の放熱配線150は、さらに、プリント基板1の面方向に対する法線方向において、複数の領域に分割されている。具体的には、
図4Aに示されるように、第1構成層110の放熱配線150は、上方1次巻線111を通り、プリント基板1の面方向における一方向に沿って延びる仮想線Kを基準とし、コア20に対して一方側に位置する領域と、コア20に対して他方側に位置する領域とが分割されている。言い換えると、放熱配線150は、上方1次巻線111の周囲において、巻線を構成しないように分割されており、コイルとしての機能を発揮しないように配置されている。本実施形態では、放熱配線150は、コア20と重なる部分において、コア20に対して一方側に位置する領域と、コア20に対して他方側に位置する領域とが分割されている。
【0038】
同様に、第2、第3構成層120、130の放熱配線150は、第1構成層110の放熱配線150と同様に分割されている。すなわち、第2、第3構成層120、130の放熱配線150は、
図4Bまたは
図4Cに示されるように、プリント基板1の面方向における一方向に沿って延びる仮想線Kを基準とし、コア20に対して一方側に位置する領域と、コア20に対して他方側に位置する領域とが分割されている。また、第4構成層140の放熱配線150は、詳細は図示しないが、
図3に示されるように、プリント基板1の面方向における一方向に沿って延びる仮想線に対し、コア20に対して一方側に位置する領域と、コア20に対して他方側に位置する領域とが分割されている。
【0039】
筐体2は、導電性材料で構成され、所定形状とされている。そして、プリント基板1は、他面1bが筐体2と対向するように、ネジ等の締結部材60を介して筐体に固定されている。なお、本実施形態の筐体2は、プリント基板1の熱を放出するものでもあり、放熱体としての機能も発揮する。
【0040】
プリント基板1は、外縁部における所定箇所において、締結部材60を介して筐体2に固定されている。また、プリント基板1は、トランス構成領域10において、第2構成層120の第5引出配線123に形成された締結孔123aおよび第3構成層130の第5引出配線133に形成された締結孔133aを挿通して配置された締結部材60を介して筐体2に固定される。これにより、第5引出配線123、133は、筐体2と熱的、電気的に接続された状態となる。また、プリント基板1は、トランス構成領域10において、放熱配線150に形成された締結孔151を挿通して配置された締結部材60を介して筐体2に固定される。これにより、第1構成層110に形成された放熱配線150が締結部材60を介して筐体2と熱的に接続される。また、第2~第4構成層120、130、140に形成された各放熱配線150は、第1構成層110に形成された放熱配線150と熱的に接続されているため、第1構成層110に形成された放熱配線150および締結部材60を介して筐体2に熱的に接続される。すなわち、第1~第4構成層110、120、130、140に形成された全ての放熱配線150が締結部材60を介して筐体2と熱的に接続される。また、第4構成層140は、特に
図5Bに示されるように、当該第4構成層140の放熱配線150が筐体2と直接接触するように配置される。そして、第1~第3構成層110、120、130に形成された各放熱配線150は、第4構成層110に形成された放熱配線150と熱的に接続されている。このため、第4構成層140に形成された放熱配線150を介し、第1~第3構成層110、120、130に形成された放熱配線150が筐体2と熱的に接続される。
【0041】
なお、上記のように、放熱配線150は、複数の領域に分割されている。また、放熱配線150は、各構成層110、120、130、140における信号配線100の形状に合わせても分割されている。但し、各構成層110、120、130、140における放熱配線150は、接続ビア102を通じて適宜接続されている。そして、締結部材60の配置箇所、および各構成層110、120、130、140の放熱配線150を接続する接続ビア102の配置箇所は、全ての放熱配線150が筐体2と熱的に接続されるように調整されている。
【0042】
また、本実施形態の筐体2には、一端部が当該プリント基板1上に位置するように、他端部が固定された金属製のホルダ70が備えられている。そして、プリント基板1に配置されるコア20は、ホルダ70の一端部にて押圧されるように配置される。
【0043】
以上説明した本実施形態によれば、プリント基板1には、放熱配線150が巻線111、121、131、141と同一平面上に配置されている。このため、放熱配線150を巻線111、121、131、141に近接して配置し易くなり、放熱性の向上を図ることができる。
【0044】
(1)本実施形態では、トランスTは、多層基板としてのプリント基板1を用いて構成されている。このため、本実施形態における信号配線100、絶縁層101、放熱配線150等に相当する部材を別々に用意して積層する場合と比較して、小型化を図ることができる。
【0045】
(2)本実施形態では、プリント基板1とコア20との間に、放熱部材50が配置されている。このため、プリント基板1の熱を放熱部材50を介してコア20から放出することができる。特に、本実施形態では、コア20がホルダ70に押圧されている。このため、プリント基板1からコア20およびホルダ70を介して筐体2に放熱することもできる。
【0046】
(3)本実施形態では、放熱配線150は、プリント基板1の面方向における一方向に沿って延びる仮想線Kを基準とし、コア20に対して一方側に位置する領域と、コア20に対して他方側に位置する領域とが分割されている。つまり、放熱配線150は、コイルとして機能しないように配置されている。このため、放熱配線150がこのように分割されていない場合と比較すると、トランスTの損失を低減することができる。すなわち、放熱配線150が分割されていない場合には、放熱配線150が巻線111、121、131、141の周囲に形成されることにより、放熱配線150がコイルとして機能する可能性がある。この場合、
図6に示されるように、放熱配線150がコイルとして機能することにより、当該放熱配線150に短絡電流が流れることでトランスTに損失が発生する。これに対し、本実施形態の放熱配線150は、コイルとして機能しないように配置されている。したがって、放熱配線150に短絡電流が流れることでトランスTに損失が発生することを抑制できる。
【0047】
(第1実施形態の変形例)
上記第1実施形態の変形例について説明する。上記第1実施形態において、トランス構成領域10の構成は、適宜変更可能である。例えば、
図7に示されるように、トランス構成領域10は、1次巻線111が形成された第1構成層110と、2次巻線121が形成された第2構成層120とが積層されて構成されていてもよい。なお、
図7では、1次巻線111および2次巻線121が1巻とされた例を示している。また、特に図示しないが、第2コイル32は、第1コイル31と同様に、異なる構成層に形成された巻線が接続されることで構成されていてもよい。同様に、第3コイル33は、第1コイル31と同様に、異なる構成層に形成された巻線が接続されることで構成されていてもよい。
【0048】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、第2構成層120および第3構成層130の構成を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0049】
本実施形態の電力変換装置では、
図8Aに示されるように、第2構成層120は、第5引出配線123と放熱配線150とが繋がった構成とされている。また、
図8Bに示されるように、第3構成層130は、第5引出配線133と放熱配線150とが繋がった構成とされている。つまり、本実施形態の放熱配線150は、一部が信号配線100としても機能するようになっている。
【0050】
以上説明した本実施形態によれば、放熱配線150が巻線111、121、131、141と同一平面上に配置されているため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
(1)本実施形態では、第2構成層120において、第5引出配線123と放熱配線150とが繋がっている。第3構成層130において、第5引出配線133と放熱配線150とが繋がっている。このため、上記第1実施形態と比較すると、第2、第3構成層120、130における第5引出配線123、133の面積が増加する。したがって、第5引出配線123、133の配線抵抗を低減して第5引出配線123、133での発熱を抑制できる。
【0052】
(第2実施形態の変形例)
上記第2実施形態の変形例について説明する。上記第2実施形態において、第2構成層120の第5引出配線123および第3構成層130の第5引出配線133の一方のみが放熱配線150と繋がった状態とされていてもよい。
【0053】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態に対し、第2構成層120および第3構成層130の構成を変更したものである。その他に関しては、第2実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0054】
本実施形態の電力変換装置では、
図9Aに示されるように、第2構成層120において、2次巻線121と第5引出配線123との接続領域R1は、2次巻線121と第3引出配線122との接続領域R2よりも大きくされている。また、
図9Bに示されるように、第3構成層130において、3次巻線131と第5引出配線133との接続領域R3は、3次巻線131と第4引出配線132との接続領域R4よりも大きくされている。
【0055】
以上説明した本実施形態によれば、放熱配線150が巻線111、121、131、141と同一平面上に配置されているため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
(1)本実施形態では、2次巻線121と第5引出配線123との接続領域R1は、2次巻線121と第3引出配線122との接続領域R2よりも大きくされている。このため、2次巻線121と第5引出配線123との接続領域R1が2次巻線121と第3引出配線122との接続領域R2と等しくされている場合と比較して、さらに第5引出配線123の配線抵抗を低減して第5引出配線123での発熱を抑制できる。
【0057】
同様に、3次巻線131と第5引出配線133との接続領域R3は、3次巻線131と第4引出配線132との接続領域R4よりも大きくされている。このため、3次巻線131と第5引出配線133との接続領域R3が3次巻線131と第4引出配線132との接続領域R4と等しくされている場合と比較して、さらに第5引出配線133の配線抵抗を低減して第5引出配線133での発熱を抑制できる。
【0058】
(第3実施形態の変形例)
上記第3実施形態の変形例について説明する。上記第3実施形態では、第2構成層120および第3構成層130の一方のみにおいて、接続領域の大きさが異なるようにしてもよい。
【0059】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、一面側放熱部材および他面側放熱部材を配置したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0060】
本実施形態の電力変換装置では、
図10~
図12に示されるように、プリント基板1のうちのトランス構成領域10において、一面1a側に一面側放熱部材81が配置されていると共に、他面1b側に他面側放熱部材82が配置されている。
【0061】
一面側放熱部材81および他面側放熱部材82は、所定の厚みや熱伝導率を有し、絶縁材料で構成される放熱グリス、放熱ギャッフィラー、放熱パテシート、または放熱ゲルシート等で構成される。なお、
図11では、一面側放熱部材81および他面側放熱部材82としてシート状のものを図示している。そして、一面側放熱部材81および他面側放熱部材82には、締結部材60が挿通される挿通孔81a、82aが形成されている。また、一面側放熱部材81には、第1構成層110における信号配線100に対応した窪み部81bが形成されている。他面側放熱部材82には、第4構成層140における信号配線100に対応した窪み部82bが形成されている。なお、
図11では、他面側放熱部材82に形成される窪み部82bを省略して示している。
【0062】
プリント基板1の一面1aには、一面側放熱部材81を介して押さえ部材90が配置されている。本実施形態では、プリント基板1の面方向に対する法線方向において、コア20を挟んでコア20から露出する一面側放熱部材81の両側が押圧されるように、2枚の押さえ部材90が配置されている。また、押さえ部材90には、締結部材60が挿通される挿通孔90aが形成されている。なお、本実施形態の押さえ部材90は、銅等で構成される。
【0063】
そして、プリント基板1は、他面1bと筐体2との間に他面側放熱部材82が位置すると共に、他面側放熱部材82が筐体2に当接するように、筐体2に配置される。また、プリント基板1は、一面1a上に一面側放熱部材81、押さえ部材90が配置され、締結部材60が押さえ部材90と熱的に接続される状態で、締結部材60を介して筐体2に固定される。
【0064】
以上説明した本実施形態によれば、放熱配線150が巻線111、121、131、141と同一平面上に配置されているため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
(1)本実施形態では、筐体2とプリント基板1との間に他面側放熱部材82が配置されている。このため、第1~第3コイル31~33を構成する巻線111、121、131、141から他面側放熱部材82を介して筐体2に放熱でき、さらに放熱性を向上できる。
【0066】
(2)本実施形態では、プリント基板1の一面1a上に、一面側放熱部材81が配置されている。このため、第1~第3コイル31~33を構成する巻線111、121、131、141の熱が一面側放熱部材81を介して押さえ部材90にも伝達され、押さえ部材90が締結部材60と熱的に接続されることにより、さらに筐体2への放熱性を向上できる。
【0067】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。本実施形態は、第4実施形態に対し、押さえ部材90とホルダ70とを一体化したものである。その他に関しては、第4実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0068】
本実施形態の電力変換装置では、
図13に示されるように、押さえ部材90は、プリント基板1の一面1a上に位置して締結部材60で締結される2つの支持部90bと、コア20上に位置する1つの押圧部90cとを有している。そして、押圧部90cは、コア20を押圧できるように、形状が調整されている。なお、本実施形態の押さえ部材90は、2つの支持部90bが1つの押圧部90cで繋がるように構成されている。つまり、本実施形態の押さえ部材90は、1部材で構成されている。また、本実施形態の電力変換装置では、上記第1実施形態で説明したホルダ70は備えられていない。
【0069】
以上説明した本実施形態によれば、放熱配線150が巻線111、121、131、141と同一平面上に配置されているため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0070】
(1)本実施形態によれば、押さえ部材90によってコア20を押圧しているため、ホルダ70を備える必要がない。このため、上記第4実施形態と比較すると、部品点数の削減を図ることでもできる。また、押さえ部材90にてコア20が押圧されているため、コア20の熱を押さえ部材90および締結部材60を介して筐体2に放熱することもできる。
【0071】
(第5実施形態の変形例)
上記第5実施形態の変形例について説明する。上記第5実施形態において、
図14に示されるように、押さえ部材90は、2つの支持部90bにそれぞれ押圧部90cが備えられるようにしてもよい。つまり、上記第5実施形態と比較すると、押さえ部材90は、コア20上の所定箇所において、一方の支持部90bに備えられる押圧部90cと、他方の支持部90bに備えられる押圧部90cとが分離されていてもよく、2部材で構成されていてもよい。これによれば、上記第4実施形態と比較すると、押圧部20bのコア20に対する押圧力を調整し易くなり、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0072】
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、プリント基板1のうちの締結部材60が配置される部分の構成を調整したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0073】
まず、上記第1実施形態では、プリント基板1の外縁部が締結部材60を介して筐体2に固定されると共に、トランス構成領域10が締結部材60を介して筐体2に固定される。つまり、プリント基板1は、複数個所が締結部材60を介して筐体2に固定される。この場合、
図15に示されるように、締結部材60が配置される部分の配線200の厚さの合計が異なると、プリント基板1を筐体2に対して均一的に締結することができず、プリント基板1が筐体2の面方向に対して傾いてしまう可能性がある。そして、プリント基板1が筐体2の面方向に対して傾いてしまった場合には、プリント基板1から筐体2への放熱性が低下する可能性がある。なお、本実施形態では、信号配線100および放熱配線150を含む各種配線の総称を配線200としている。
【0074】
このため、本実施形態では、
図16に示されるように、締結部材60が配置される部分の配線200の厚さの合計が互いに同じとなるようにしている。これにより、本実施形態では、プリント基板1を筐体2に対して均一的に締結することができ、プリント基板1が筐体2の面方向に対して傾くことを抑制できる。なお、締結部材60が配置される部分の配線200は、信号配線100のみであってもよいし、放熱配線150のみであってもよいし、信号配線100と放熱配線150との組み合わせであってもよい。また、配線200は、厚さを確保するためのダミー配線であってもよく、用途は特に限定されるものではない。
【0075】
以上説明した本実施形態によれば、放熱配線150が巻線111、121、131、141と同一平面上に配置されているため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
(1)本実施形態では、締結部材60が配置される部分の配線200の厚さの合計が互いに同じとされている。このため、プリント基板1を筐体2に対して均一的に締結することができ、プリント基板1が筐体2の面方向に対して傾くことを抑制できる。したがって、プリント基板1から筐体2への放熱性が低下することを抑制できる。
【0077】
(第6実施形態の変形例)
上記第6実施形態の変形例について説明する。上記第6実施形態において、締結部材60が配置される部分の配線200の厚さが互いに同じとされるのであれば、
図17に示されるように、異なる層に配線200が形成されていてもよい。すなわち、締結部材60が配置される部分において、配線200の厚さの合計が互いに同じとされるのであれば、配線200が形成される層は適宜変更可能である。
【0078】
(第7実施形態)
第7実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、第1構成層110の構成を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0079】
本実施形態の電力変換装置では、
図18に示されるように、第1構成層110における放熱配線150は、一部がトランス構成領域10外まで引き出されている。なお、
図18中では、紙面右上の放熱配線150がトランス構成領域10外まで引き出されている。そして、この放熱配線150は、プリント基板1に配置される別の電子部品等のグランド配線として利用される。つまり、この放熱配線150は、トランス構成領域10外の信号配線100と接続される。
【0080】
以上説明した本実施形態によれば、放熱配線150が巻線111、121、131、141と同一平面上に配置されているため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
(1)本実施形態では、筐体2に接続される放熱配線150がトランス構成領域10外の信号配線100と接続される。つまり、筐体2に接続される放熱配線150は、トランス構成領域10外の信号配線100をグランド電位に維持するために用いられる。このため、放熱配線150をさらに有効利用できる。
【0082】
(第7実施形態の変形例)
上記第7実施形態の変形例について説明する。上記第7実施形態において、第2~第4構成層120、130、140における放熱配線150がトランス構成領域10外の信号配線100と接続されるようにしてもよい。
【0083】
(第8実施形態)
第8実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、トランス構成領域10の構成を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0084】
本実施形態の電力変換装置では、
図19に示されるように、トランス構成領域10は、絶縁層101上にコイル用配線として機能する信号配線100が形成された構成層160を有している。具体的には、本実施形態の構成層160は、一方向を長手方向とする矩形状とされている。そして、信号配線100は、構成層160の略中心を通り、長手方向に沿って直線状に形成されている。
【0085】
また、絶縁層101には、信号配線100を挟むように、2つの貫通孔101cが形成されている。貫通孔101cは、第1コア21または第2コア22の各脚部21c、22cが挿入可能な位置、大きさに形成されている。
【0086】
本実施形態の第1コア21および第2コア22は、基部21a、22aと、基部21a、22aから延設される一対の外脚部21c、22cとを有する構成とされている。基部21a、22aは、一方向を長手方向とする平面板状とされている。一対の外脚部21c、22cは、基部21a、22aの長手方向と直交する短手方向の両端部において、基部21a、22aの面方向に対する法線方向に突出するように形成されている。つまり、本実施形態の第1コア21および第2コア22は、それぞれ、いわゆるU型コアとされている。
【0087】
そして、第1、第2コア21、22は、対向するように、各外脚部21c、22cが各貫通孔101cに挿入されて配置されている。つまり、本実施形態の電力変換装置は、チョークコイルを有する構成とされている。
【0088】
また、絶縁層101上には、信号配線100の周囲に、信号配線100と熱的に接続される放熱配線150が形成されている。放熱配線150には、コア20から露出する部分において、締結孔151が形成されている。そして、特に図示しないが、放熱配線150は、締結部材60を介して筐体2に固定される。
【0089】
以上説明した本実施形態によれば、放熱配線150が信号配線100と同一平面上に配置されているため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0090】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0091】
例えば、上記各実施形態において、プリント基板1を構成する構成層の数は適宜変更可能である。この場合、トランス構成領域10は、巻線が形成されない構成層を含んで形成されていてもよい。
【0092】
また、上記各実施形態において、コア20とプリント基板1との間に放熱部材50が配置されていなくてもよい。
【0093】
そして、上記第1~第7実施形態において、トランスTは、
図20に示されるように、第2コイル32と第3コイル33とが直列に接続されていなくてもよい。すなわち、第2コイル32における第3接続線43と反対側の端部に第6接続線46が接続され、第3コイル33における第4接続線44と反対側の端部に第7接続線47が接続されるようにしてもよい。この場合、第2構成層120における第5引出配線123が第6接続線46を構成し、第3構成層130における第5引出配線133が第7接続線47を構成する。そして、特に図示しないが、締結部材60を配置する場所を変更し、第2構成層120の第5引出配線123と、第2構成層130における第5引出配線133とが電気的に接続されないようにすることにより、上記
図20のトランスTが構成される。
【0094】
さらに、上記第1~第7実施形態において、放熱配線150は、法線方向において、コア20と重なる部分ではなく、コア20から露出する部分で分割されていてもよい。また、放熱配線150は、さらに複数の仮想線Kによって分割されていてもよい。すなわち、放熱配線150がコイルとして機能しなくなるのであれば、分割される位置、分割の仕方は適宜変更可能である。
【0095】
また、上記各実施形態において、電子装置は、コア20を備えないものであってもよい。このような電子装置としても、信号配線100と同一平面上に、当該信号配線100と熱的に接続される放熱配線150を配置することにより、放熱性の向上を図ることができる。
【0096】
上記第4実施形態において、電子装置は、一面側放熱部材81および他面側放熱部材82の一方のみを備える構成としてもよい。なお、他面側放熱部材82のみを備える場合には、押さえ部材90が配置されていなくてもよい。
【0097】
そして、上記各実施形態を適宜組み合わせるようにしてもよい。例えば、上記第4実施形態を各実施形態に組み合わせ、一面側放熱部材81および他面側放熱部材82を備えるようにしてもよい。この場合、上記第5実施形態のように、押さえ部材90に押圧部90cを備えるようにしてもよい。また、上記第6実施形態を各実施形態に組み合わせ、締結部材60が配置される部分の配線200の厚さの合計が互いに同じとなるようにしてもよい。上記第7実施形態を各実施形態に組み合わせ、放熱配線150をトランス構成領域10外の信号配線100と接続するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 プリント基板
1a 一面
1b 他面
100 信号配線
150 放熱配線