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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】電池監視装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/3828 20190101AFI20250212BHJP
   G01R 31/388 20190101ALI20250212BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20250212BHJP
   G01R 31/396 20190101ALI20250212BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20250212BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20250212BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20250212BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250212BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20250212BHJP
【FI】
G01R31/3828
G01R31/388
G01R31/389
G01R31/396
H01M4/58
H01M10/0525
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 X
H02J7/02 H
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021122816
(22)【出願日】2021-07-27
(65)【公開番号】P2023018592
(43)【公開日】2023-02-08
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】内山 正規
(72)【発明者】
【氏名】久保 俊一
(72)【発明者】
【氏名】倉知 大祐
(72)【発明者】
【氏名】堀 裕基
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/012364(WO,A1)
【文献】特開2020-074258(JP,A)
【文献】特開2020-063983(JP,A)
【文献】特開2021-027031(JP,A)
【文献】国際公開第2020/021889(WO,A1)
【文献】特開2011-034784(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0049222(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0225325(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0305384(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/36-31/44、
19/00-19/32、
H02J 7/00-7/12、
7/34-7/36、
H01M 10/42-10/48、
B06L 1/00-3/12、
7/00-13/00、
15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続される複数の電池セル(12)を備える組電池(10)に適用される電池監視装置であって
コンピュータ(70)を備え、
前記各電池セルが充電中又は放電中の場合であって、前記各電池セルのうち第1電池セルの状態と、前記各電池セルのうち前記第1電池セル以外の第2電池セルの状態とがプラトー領域にある場合において、前記コンピュータに、
前記第1電池セル及び前記第2電池セルの端子電圧を取得する処理と、
取得した前記第1電池セルの端子電圧と、取得した前記第2電池セルの端子電圧との差(ΔVd)を算出し、算出した前記差が判定値(Vjde)を超えたか否かを判定する処理と、
前記判定値を超えたと判定した場合、前記電池セルのSOC又は残容量を規定値(Sα)として算出する処理と、
を所定の制御周期で繰り返し実行させる、電池監視装置。
【請求項2】
直列接続される複数の電池セル(12)を備える組電池(10)に適用される電池監視装置であって
コンピュータ(70)を備え、
前記各電池セルが充電中又は放電中の場合であって、前記各電池セルのうち第1電池セルの状態と、前記各電池セルのうち前記第1電池セル以外の第2電池セルの状態とがプラトー領域にある場合において、前記コンピュータに、
前記第1電池セル及び前記第2電池セルのインピーダンスを取得する処理と、
取得した前記第1電池セルのインピーダンスと、取得した前記第2電池セルのインピーダンスとの差(ΔZ)を算出し、算出した前記差が判定値(Zjde)を下回ったか否かを判定する処理と、
前記判定値を下回ったと判定した場合、前記電池セルのSOC又は残容量を規定値(Sα)として算出する処理と、
を所定の制御周期で繰り返し実行させる、電池監視装置。
【請求項3】
直列接続される複数の電池セル(12)を備える組電池(10)に適用され、
前記各電池セルの充電中又は放電中において、前記各電池セルのうち第1電池セル及び第2電池セルの端子電圧又はインピーダンスのいずれかである電池パラメータを取得する取得部と、
取得した前記第1電池セルの前記電池パラメータと、取得した前記第2電池セルの前記電池パラメータとの差(ΔVd,ΔZ)を算出し、算出した前記差に基づいて、前記電池セルの電池状態を算出する状態算出部と、
を備え、
前記電池セルの電池状態は、前記電池セルのSOC又は残容量であり、
前記状態算出部は、
算出した前記差の変化量(ΔAd)を算出し、
前記第1電池セル及び前記第2電池セルの状態がプラトー領域にある場合において、算出した前記変化量が所定値近傍になったことに基づいて、前記電池セルのSOC又は残容量を規定値(Sα)として算出する、電池監視装置。
【請求項4】
直列接続される複数の電池セル(12)を備える組電池(10)に適用され、
前記各電池セルの充電中又は放電中において、前記各電池セルのうち第1電池セル及び第2電池セルの端子電圧又はインピーダンスのいずれかである電池パラメータを取得する取得部と、
取得した前記第1電池セルの前記電池パラメータと、取得した前記第2電池セルの前記電池パラメータとの差(ΔVd,ΔZ)を算出し、算出した前記差に基づいて、前記電池セルの電池状態を算出する状態算出部と、
を備え、
前記電池セルの電池状態は、前記第1電池セル及び前記第2電池セルのSOCの差又は残容量の差であり、
前記状態算出部は、前記第1電池セル及び前記第2電池セルの状態がプラトー領域にある場合において、算出した前記差が第1方向に変化して第1判定値(Vjde1)を跨いてから、算出した前記差が前記第1方向とは逆の第2方向に変化して第2判定値(Vjde2)を跨ぐまでの期間において前記電池セルに流れる電流の時間積算値を算出し、算出した時間積算値に基づいて、前記第1電池セル及び前記第2電池セルのSOCの差又は残容量の差を算出する、電池監視装置。
【請求項5】
直列接続される複数の電池セル(12)を備える組電池(10)に適用され、
前記各電池セルの充電中又は放電中において、前記各電池セルのうち第1電池セル及び第2電池セルの端子電圧又はインピーダンスのいずれかである電池パラメータを取得する取得部と、
取得した前記第1電池セルの前記電池パラメータと、取得した前記第2電池セルの前記電池パラメータとの差(ΔVd,ΔZ)を算出し、算出した前記差に基づいて、前記電池セルの電池状態を算出する状態算出部と、
を備え、
前記状態算出部は、前記第1電池セルのSOC、残容量又は端子電圧のいずれかである蓄電量パラメータと、前記第2電池セルの前記蓄電量パラメータとの差を算出し、算出した差が閾値(Sth)以下の場合、算出した差が前記閾値よりも大きくなるまで、前記第1電池セル及び前記第2電池セルの少なくとも一方の放電又は充電を行う、電池監視装置。
【請求項6】
直列接続される複数の電池セル(12)を備える組電池(10)に適用され、
前記各電池セルの充電中又は放電中において、前記各電池セルのうち第1電池セル及び第2電池セルの端子電圧又はインピーダンスのいずれかである電池パラメータを取得する取得部と、
取得した前記第1電池セルの前記電池パラメータと、取得した前記第2電池セルの前記電池パラメータとの差(ΔVd,ΔZ)を算出し、算出した前記差に基づいて、前記電池セルの電池状態を算出する状態算出部と、
を備え、
前記第1電池セル及び前記第2電池セルは、
前記各電池セルのうち端子電圧が最高及び最低の電池セル、
前記各電池セルのうちSOCが最高及び最低の電池セル、
前記各電池セルのうち隣り合う電池セル、
前記各電池セルのうち端子電圧の検出タイミングが近い電池セル、又は
前記各電池セルのうち温度が所定差以下の電池セル
のいずれかである、電池監視装置。
【請求項7】
直列接続される複数の電池セル(12)を備える組電池(10)に適用され、
前記各電池セルの充電中又は放電中において、前記各電池セルのうち第1電池セル及び第2電池セルの端子電圧又はインピーダンスのいずれかである電池パラメータを取得する取得部と、
取得した前記第1電池セルの前記電池パラメータと、取得した前記第2電池セルの前記電池パラメータとの差(ΔVd,ΔZ)を算出し、算出した前記差に基づいて、前記電池セルの電池状態を算出する状態算出部と、
を備え、
前記電池セルの電池状態は、前記電池セルのSOC又は残容量であり、
前記状態算出部は、前記第1電池セル及び前記第2電池セルの状態がプラトー領域にある場合において、算出した前記差が判定値(Vjde,Vjde1,Vjde2,Zjde)を跨いだと判定した場合、前記電池セルのSOC又は残容量を規定値(Sα)として算出し、
前記状態算出部は、前記第1電池セルのSOC、残容量又は端子電圧のいずれかである蓄電量パラメータと、前記第2電池セルの前記蓄電量パラメータとの差を算出し、算出した差が閾値(Sth)以下の場合、算出した差が前記閾値よりも大きくなるまで、前記第1電池セル及び前記第2電池セルの少なくとも一方の放電又は充電を行う、電池監視装置。
【請求項8】
直列接続される複数の電池セル(12)を備える組電池(10)に適用され、
前記各電池セルの充電中又は放電中において、前記各電池セルのうち第1電池セル及び第2電池セルの端子電圧又はインピーダンスのいずれかである電池パラメータを取得する取得部と、
取得した前記第1電池セルの前記電池パラメータと、取得した前記第2電池セルの前記電池パラメータとの差(ΔVd,ΔZ)を算出し、算出した前記差に基づいて、前記電池セルの電池状態を算出する状態算出部と、
を備え、
前記電池セルの電池状態は、前記電池セルのSOC又は残容量であり、
前記状態算出部は、前記第1電池セル及び前記第2電池セルの状態がプラトー領域にある場合において、算出した前記差が判定値(Vjde,Vjde1,Vjde2,Zjde)を跨いだと判定した場合、前記電池セルのSOC又は残容量を規定値(Sα)として算出し、
前記第1電池セル及び前記第2電池セルは、
前記各電池セルのうち端子電圧が最高及び最低の電池セル、
前記各電池セルのうちSOCが最高及び最低の電池セル、
前記各電池セルのうち隣り合う電池セル、
前記各電池セルのうち端子電圧の検出タイミングが近い電池セル、又は
前記各電池セルのうち温度が所定差以下の電池セル
のいずれかである、電池監視装置。
【請求項9】
前記各電池セルの負極は、黒鉛を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の電池監視装置。
【請求項10】
前記各電池セルの正極は、リン酸鉄リチウムを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の電池監視装置。
【請求項11】
直列接続される複数の電池セル(12)を備える組電池(10)と、
コンピュータ(70)と、を備えるシステムに適用されるプログラムであって、
前記各電池セルが充電中又は放電中であって、前記各電池セルのうち第1電池セルの状態と、前記各電池セルのうち前記第1電池セル以外の第2電池セルの状態とがプラトー領域にある場合において、前記コンピュータに、
前記第1電池セルの端子電圧と前記第2電池セルの端子電圧とを取得する処理と、
取得した前記第1電池セルの端子電圧と、取得した前記第2電池セルの端子電圧との差(ΔVd)を算出し、算出した前記差が判定値(Vjde)を超えたか否かを判定する処理と、
前記判定値を超えたと判定した場合、前記電池セルのSOC又は残容量を規定値(Sα)として算出する処理と、
を所定の制御周期で繰り返し実行させる、プログラム。
【請求項12】
直列接続される複数の電池セル(12)を備える組電池(10)と、
コンピュータ(70)と、を備えるシステムに適用されるプログラムであって、
前記各電池セルが充電中又は放電中であって、前記各電池セルのうち第1電池セルの状態と、前記各電池セルのうち前記第1電池セル以外の第2電池セルの状態とがプラトー領域にある場合において、前記コンピュータに、
前記第1電池セルのインピーダンスと前記第2電池セルのインピーダンスとを取得する処理と、
取得した前記第1電池セルのインピーダンスと、取得した前記第2電池セルのインピーダンスとの差(ΔZ)を算出し、算出した前記差が判定値(Zjde)を下回ったか否かを判定する処理と、
前記判定値を下回ったと判定した場合、前記電池セルのSOC又は残容量を規定値(Sα)として算出する処理と、
を所定の制御周期で繰り返し実行させる、プログラム。
【請求項13】
直列接続される複数の電池セル(12)を備える組電池(10)と、
コンピュータ(70)と、を備えるシステムに適用されるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記各電池セルの充電中又は放電中において、前記各電池セルのうち第1電池セルの端子電圧又はインピーダンスのいずれかである電池パラメータと、前記各電池セルのうち前記第1電池セル以外の第2電池セルの前記電池パラメータとを取得する処理と、
取得した前記第1電池セルの前記電池パラメータと、取得した前記第2電池セルの前記電池パラメータとの差(ΔVd,ΔZ)を算出し、算出した差に基づいて、前記電池セルの電池状態を算出する処理と、を実行させ、
前記電池セルの電池状態は、前記電池セルのSOC又は残容量であり、
前記電池状態を算出する処理は、
算出した前記差の変化量(ΔAd)を算出し、
前記第1電池セル及び前記第2電池セルの状態がプラトー領域にある場合において、算出した前記変化量が所定値近傍になったことに基づいて、前記電池セルのSOC又は残容量を規定値(Sα)として算出する処理である、プログラム。
【請求項14】
直列接続される複数の電池セル(12)を備える組電池(10)と、
コンピュータ(70)と、を備えるシステムに適用されるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記各電池セルの充電中又は放電中において、前記各電池セルのうち第1電池セルの端子電圧又はインピーダンスのいずれかである電池パラメータと、前記各電池セルのうち前記第1電池セル以外の第2電池セルの前記電池パラメータとを取得する処理と、
取得した前記第1電池セルの前記電池パラメータと、取得した前記第2電池セルの前記電池パラメータとの差(ΔVd,ΔZ)を算出し、算出した差に基づいて、前記電池セルの電池状態を算出する処理と、を実行させ、
前記電池セルの電池状態は、前記第1電池セル及び前記第2電池セルのSOCの差又は残容量の差であり、
前記電池状態を算出する処理は、前記第1電池セル及び前記第2電池セルの状態がプラトー領域にある場合において、算出した前記差が第1方向に変化して第1判定値(Vjde1)を跨いてから、算出した前記差が前記第1方向とは逆の第2方向に変化して第2判定値(Vjde2)を跨ぐまでの期間において前記電池セルに流れる電流の時間積算値を算出し、算出した時間積算値に基づいて、前記第1電池セル及び前記第2電池セルのSOCの差又は残容量の差を算出する処理である、プログラム。
【請求項15】
直列接続される複数の電池セル(12)を備える組電池(10)と、
コンピュータ(70)と、を備えるシステムに適用されるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記各電池セルの充電中又は放電中において、前記各電池セルのうち第1電池セルの端子電圧又はインピーダンスのいずれかである電池パラメータと、前記各電池セルのうち前記第1電池セル以外の第2電池セルの前記電池パラメータとを取得する処理と、
取得した前記第1電池セルの前記電池パラメータと、取得した前記第2電池セルの前記電池パラメータとの差(ΔVd,ΔZ)を算出し、算出した差に基づいて、前記電池セルの電池状態を算出する処理と、を実行させ、
前記電池状態を算出する処理において、前記第1電池セルのSOC、残容量又は端子電圧のいずれかである蓄電量パラメータと、前記第2電池セルの前記蓄電量パラメータとの差を算出し、算出した差が閾値(Sth)以下の場合、算出した差が前記閾値よりも大きくなるまで、前記第1電池セル及び前記第2電池セルの少なくとも一方の放電又は充電を行う、プログラム。
【請求項16】
直列接続される複数の電池セル(12)を備える組電池(10)と、
コンピュータ(70)と、を備えるシステムに適用されるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記各電池セルの充電中又は放電中において、前記各電池セルのうち第1電池セルの端子電圧又はインピーダンスのいずれかである電池パラメータと、前記各電池セルのうち前記第1電池セル以外の第2電池セルの前記電池パラメータとを取得する処理と、
取得した前記第1電池セルの前記電池パラメータと、取得した前記第2電池セルの前記電池パラメータとの差(ΔVd,ΔZ)を算出し、算出した差に基づいて、前記電池セルの電池状態を算出する処理と、を実行させ、
前記第1電池セル及び前記第2電池セルは、
前記各電池セルのうち端子電圧が最高及び最低の電池セル、
前記各電池セルのうちSOCが最高及び最低の電池セル、
前記各電池セルのうち隣り合う電池セル、
前記各電池セルのうち端子電圧の検出タイミングが近い電池セル、又は
前記各電池セルのうち温度が所定差以下の電池セル
のいずれかである、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池監視装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン蓄電池等の蓄電池では、SOC(State Of Charge)の変化に伴う開放端電圧OCV(Open Circuit Voltage)の変化が小さい領域が存在する。この領域はプラトー領域と呼ばれる。プラトー領域では、SOCと開放端電圧OCVとの相関関係を示すSOC-OCV特性を用いて蓄電池のSOCを算出することが難しい。
【0003】
特許文献1には、プラトー領域のうち、一部の領域において蓄電池の容量変化に伴う電圧変化量が他の領域に対して相対的に大きく、上記他の領域において容量変化に伴う電圧変化量が略一定である電池特性があること、及び容量変化に伴う電圧変化量が大きくなる現象が特定のSOCで発生する電池特性があることが記載されている。特許文献1には、このような特性を利用して、蓄電池のSOCを推定する充電状態推定装置が記載されている。詳しくは、推定装置は、充電中又は放電中の蓄電池の状態がプラトー領域にある場合において、蓄電池の端子電圧検出値の時間変化率を算出する。推定装置は、算出した時間変化率が上に凸となる変曲点であると判定した場合、蓄電池の現在のSOCが、算出した時間変化率に予め紐づけられたSOCであると推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6351852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラトー領域のうち、一部の領域において容量変化に伴う電圧変化量が相対的に大きいとはいえ、その電圧変化量の絶対値は小さい。このため、蓄電池の端子電圧検出値にノイズが重畳してしまうと、SOCの算出精度が大きく低下してしまう懸念がある。
【0006】
なお、蓄電池のSOCに限らず、蓄電池の残容量等、蓄電池の電池状態を算出する場合において、ノイズに起因して電池状態の算出精度が大きく低下する懸念がある。
【0007】
本発明は、電池状態の算出精度の低下を抑制できる電機監視装置及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、直列接続される複数の電池セルを備える組電池に適用され、
前記各電池セルの充電中又は放電中において、前記各電池セルのうち第1電池セル及び第2電池セルの端子電圧又はインピーダンスのいずれかである電池パラメータを取得する取得部と、
取得した前記第1電池セルの前記電池パラメータと、取得した前記第2電池セルの前記電池パラメータとの差を算出し、算出した前記差に基づいて、前記電池セルの電池状態を算出する状態算出部と、を備える。
【0009】
組電池を構成する複数の電池セルは、直列接続される。このため、端子電圧又はインピーダンスのいずれかを電池パラメータとする場合、各電池セルの電池パラメータに対するノイズの影響は同程度であると考えられる。このため、組電池を構成する各電池セルのうち2つの電池セルの電池パラメータの差は、ノイズの影響が低減された値となる。
【0010】
この点に鑑み、本発明の状態算出部は、取得した第1電池セルの電池パラメータと、取得した第2電池セルの電池パラメータとの差を算出し、算出した差に基づいて、電池セルの電池状態を算出する。これにより、電池状態の算出精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るシステムの全体構成図。
図2】監視ICの構成を示す図。
図3】電池セルの電圧及び容量の関係を示す図。
図4】SOC算出処理の手順を示すフローチャート。
図5】充電中の電池セルの端子電圧、電圧差及びSOCの推移を示すタイムチャート。
図6】第1実施形態の変形例に係るマイコンの選択部を示す図。
図7】端子電圧が最高,最低の電池セルの端子電圧の推移を示すタイムチャート。
図8】第2実施形態に係るSOC算出処理の手順を示すフローチャート。
図9】充電中の電池セルの端子電圧及び電圧差の推移を示すタイムチャート。
図10】第3実施形態に係るSOC算出処理の手順を示すフローチャート。
図11】充電中の電池セルの端子電圧、電圧差及び電圧時間変化量の推移を示すタイムチャート。
図12】第4実施形態に係る容量差算出処理の手順を示すフローチャート。
図13】充電中の電池セルの端子電圧、電圧差及び電流積算値等の推移を示すタイムチャート。
図14】第5実施形態に係るSOC算出処理の手順を示すフローチャート。
図15】電池セルのSOC及び端子電圧等の推移を示すタイムチャート。
図16】第6実施形態に係る電池セルの残容量及び電圧変化量の関係を示す図。
図17】SOC算出処理の手順を示すフローチャート。
図18】電池セルのインピーダンス及びインピーダンス差の推移を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る電池監視装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の電池監視装置を含むシステムは、ハイブリッド自動車、電気自動車及び燃料電池車等の車両に搭載される。車両には、乗用車、バス、建設作業車及び農業機械車両が含まれる。ただし、システムは、車両に搭載されるシステムに限らず、例えば定置式のシステムであってもよい。
【0013】
図1に示すように、システム100は、組電池10を備えている。組電池10は、複数の電池モジュール11の直列接続体を備えている。各電池モジュール11は、複数の電池セル12の直列接続体を備えている。本実施形態において、各電池モジュール11が備える電池セル12の数は同じである。ただし、各電池モジュール11が備える電池セル12の数は異なっていてもよい。
【0014】
各電池セル12は、充放電可能な蓄電池(2次電池)であり、具体的には、リチウムイオン蓄電池である。本実施形態のリチウムイオン蓄電池は、正極活物質にリン酸鉄リチウムが使用され、負極活物質に黒鉛が使用されたLFP蓄電池である。電池モジュール11を構成する各電池セル12の定格電圧は同じであり、各電池セル12の定格容量[Ah]は同じである。
【0015】
システム100は、第1充電経路LA、第2充電経路LB、第1外部充電端子TA、第2外部充電端子TB、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2を備えている。第1充電経路LAは、第1外部充電端子TAと、組電池10を構成する各電池セル12のうち最高電位側の電池セルの正極端子とを接続する。第2充電経路LBは、第2外部充電端子TBと、組電池10を構成する各電池セル12のうち最低電位側の電池セルの負極端子とを接続する。第1充電経路LAには第1スイッチSW1が設けられ、第2充電経路LBには第2スイッチSW2が設けられている。
【0016】
第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2がオンされると、組電池10は、第1,第2外部充電端子TA,TBを介して車外充電器200に接続される。車外充電器200は、例えばDC急速充電器である。組電池10は、第1,第2外部充電端子TA,TBに車外充電器200が接続されると、車外充電器200から入力される高圧の直流電力により定電流充電又は定電圧充電される。例えば、組電池10が満充電になる直前まで定電流充電され、その後定電圧充電に切り替えられる。なお、車外充電器200は、DCではなく、AC充電器であってもよい。
【0017】
システム100は、回転電機20、インバータ30、第1電気経路L1、第2電気経路L2、第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4を備えている。第1電気経路L1は、第1充電経路LAのうち第1スイッチSW1よりも組電池10側の第1接続点PAと、インバータ30の高電位側端子とを接続する。第2電気経路L2は、第2充電経路LBのうち第2スイッチSW2よりも組電池10側の第2接続点PBと、インバータ30の低電位側端子とを接続する。第1電気経路L1には第3スイッチSW3が設けられ、第2電気経路L2には第4スイッチSW4が設けられている。
【0018】
第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4がオンされると、回転電機20は、インバータ30を介して組電池10との間で電力の入出力を行う。回転電機20は、力行時において、組電池10から供給される電力により車両に推進力を付与し、回生時において、車両の減速エネルギを用いて発電を行い、組電池10に電力を供給する。
【0019】
システム100は、電流センサ40と、電池監視装置としてのBMU(Battery Management Unit)50とを備えている。電流センサ40は、組電池10に流れる電流を検出する。図1には、電流センサ40が第2充電経路LBに流れる電流を検出することが示されている。電流センサ40の検出値は、BMU50に入力される。
【0020】
なお、BMU50は、第1~第4スイッチSW1~SW4をオン又はオフする。また、BMU50は、車載ネットワークインタフェースを介して、走行制御ECU42と通信可能に接続されている。BMU50は、組電池10の残容量[Ah]に基づいて、回転電機20を制御する指令を走行制御ECU42に出力する。走行制御ECU42は、BMU50からの指令に基づいて、回転電機20の制御量(例えばトルク)を指令値に制御すべく、インバータ30のスイッチング制御を行う。
【0021】
BMU50は、各電池モジュール11に対応して個別に設けられた監視IC60と、マイコン70とを備えている。監視IC60は、電池モジュール11を構成する各電池セル12の端子電圧を検出する。各監視IC60は、マイコン70と情報のやり取りを行う。マイコン70は、各監視IC60により検出された端子電圧を、図示しない絶縁素子を介して取得する。
【0022】
マイコン70は、CPUを備えている。マイコン70が提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、マイコン70がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、マイコン70は、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、図4等に示す処理のプログラムが含まれる。プログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えば、インターネット等のネットワークを介して更新可能である。
【0023】
監視IC60は、図2に示すように、コマンド部61、A/Dコンバータ62、スイッチ部63及び均等化回路部64を備えている。コマンド部61は、マイコン70からのコマンドを解釈する機能を有する。スイッチ部63は、各電池セル12の電圧を任意に選択できる機能を有し、例えばマルチプレクサである。A/Dコンバータ62は、スイッチ部63から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。変換されたデジタル信号は、コマンド部61を介してマイコン70に送信される。これにより、マイコン70は、電池セル12の端子電圧を取得する。監視IC60は、これら各部の作動により、マイコン70からのコマンドに応じた処理を行う。例えば、監視IC60は、電池モジュール11を構成する各電池セル12の端子電圧を所定の順序で順次検出する。
【0024】
均等化回路部64は、マイコン70からの指令に基づいて、電池モジュール11を構成する各電池セル12における電圧ばらつきを低減するための均等化処理を行う。均等化回路部64は、各電池セル12に接続されている。均等化処理は、例えば、各電池セル12のうち、端子電圧が最も高い電池セルからの放電を実施する処理である。なお、マイコン70は、例えば、各電池セル12の端子電圧検出値のうち、最高電圧と最低電圧との差が所定電圧以上であると判定した場合、監視IC60に均等化処理の実行指令を送信すればよい。
【0025】
ところで、組電池10の残容量を算出する方法として、組電池10の蓄電状態を示すSOC(State Of Charge)と開放端電圧(OCV)との相関関係を示すSOC-OCV特性を用いる方法が知られている。しかし、本実施形態では、リチウムイオン蓄電池としてLFP蓄電池が用いられている。LFP蓄電池では、図3に示すように、残容量の広い範囲でOCVが安定しており、容量の変化に伴うOCVの変化が小さいプラトー領域SLを有している。プラトー領域SLの両端には、容量の変化に伴うOCVの変化がプラトー領域SLよりも大きい端部領域SHが存在する。プラトー領域SLでは、SOC-OCV特性を用いて蓄電池のSOCを算出し、残容量を算出することが難しい。
【0026】
プラトー領域SLのうち一部の領域は、容量変化に伴うOCVの変化が相対的に大きい特定領域SBである。特定領域SBは、電池セル12の負極構成に起因する領域である。電池セル12のSOCが特定のSOC又は残容量になる場合、電池セル12の状態が特定領域SBに移行する。このため、電池セル12の状態が特定領域SBに移行したことをもって、電池セル12の現在のSOC又は残容量が、特定のSOC又は残容量であることを把握できる。ただし、OCVの変化が相対的に大きいとはいえ、OCVの変化量は小さい。このため、電池セル12の端子電圧検出値にノイズが重畳してしまうと、SOCの算出精度が大きく低下してしまう懸念がある。本実施形態では、この問題に対処すべく、例えば車外充電器200による組電池10の充電中において、図4に示す処理が実行される。
【0027】
図4は、マイコン70により実行される電池セル12のSOC算出処理のフローチャートである。この処理は、例えば、電池セル12の状態がプラトー領域SLであると判定された場合、所定の制御周期で繰り返し実行される。プラトー領域SLであるか否かは、監視IC60から取得した電池セルの端子電圧に基づいて判定されればよい。
【0028】
ステップS10では、監視IC60により検出された第1電池セルの端子電圧(以下、第1検出電圧V1d)と、監視IC60により検出された第2電池セルの端子電圧(以下、第2検出電圧V2d)とを取得する。第1電池セル及び第2電池セルは、電池モジュール11を構成する各電池セル12の中から選択した2つの電池セルである。この選択方法については、後に詳述する。ステップS10の処理が「取得部」に相当する。
【0029】
ステップS11では、第1検出電圧V1dから第2検出電圧V2dを差し引くことにより、電圧差ΔVd(「電池パラメータ」に相当)を算出する。
【0030】
ステップS12では、算出した電圧差ΔVdが判定値Vjdeを超えているか否かを判定する。
【0031】
ステップS12において肯定判定した場合には、ステップS13に進み、第1電池セル及び第2電池セルのSOCを規定値Sαとして算出する。なお、電池モジュール11を構成する各電池セル12のうち第1,第2電池セルに限らず、例えば、各電池セル12のSOCを規定値Sαとして算出してもよい。また、ステップS13において、SOCに代えて、第1,第2電池セルの残容量を算出してもよい。ステップS11~S13の処理が「状態算出部」に相当する。
【0032】
図5を用いて、SOC算出処理について説明する。図5(a)は第1,第2検出電圧V1d,V2dの推移を示し、図5(b)は電圧差ΔVdの推移を示し、図5(c)は第1電池セルのSOCの推移を示す。図5に示す例では、車外充電器200により組電池10が充電(定電流充電又は定電圧充電)されている。
【0033】
時刻t1において、第1電池セルの状態が端部領域SHからプラトー領域SLに移行し、第1電池セルの充電に伴う端子電圧の上昇速度が低下する。時刻t2において、第2電池セルの状態が端部領域SHからプラトー領域SLに移行し、第2電池セルの充電に伴う端子電圧の上昇速度が低下する。時刻t2以降において、第1,第2検出電圧V1d,V2dが同等になるため、電圧差ΔVdが0に近い値となる。なお、時刻t1以降の第1,第2電池セルのSOCは、例えば、開放端電圧に基づく初期SOCと、第1,第2電池セルに流れる充電電流の時間積算値とに基づいてマイコン70により算出された値である。
【0034】
その後、時刻t3において、第1電池セルの状態が特定領域SBに移行し、時刻t3~t5において第1検出電圧V1dの上昇速度が一時的に高くなる。一方、第2電池セルの状態は未だプラトー領域SL内である。このため、時刻t3以降において、電圧差ΔVdが上昇し、時刻t4において、電圧差ΔVdが判定値Vjdeを超えたとマイコン70により判定される。このため、マイコン70は、第1,第2電池セルのSOCを規定値Sαとして算出する。判定値Vjdeは、現在の制御周期が、時刻t3と時刻t6との中間タイミングであることを判定できる値に設定されている。なお、時刻t4以降の第1,第2電池セルのSOCは、例えば、規定値Sαと、第1,第2電池セルに流れる充電電流の時間積算値とに基づいてマイコン70により算出されればよい。
【0035】
時刻t6において、第2電池セルの状態が特定領域SBに移行し、時刻t6~t7において第2検出電圧V2dの上昇速度が一時的に高くなる。時刻t7以降において、第1,第2検出電圧V1d,V2dが同等になるため、電圧差ΔVdが0に近い値となる。その結果、時刻t6から電圧差ΔVdの低下速度が大きくなり、時刻t7において、電圧差ΔVdが0に近い値となる。なお、時刻t8において、第1電池セルの状態が端部領域SHに移行する。
【0036】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0037】
組電池10に流れる電流の瞬間的な変化によりノイズが発生し、このノイズは、各電池セル12の端子電圧検出値に重畳し得る。ここで、組電池10を構成する各電池セル12は、直列接続されている。このため、各電池セル12の端子電圧検出値に対するノイズの影響は同程度であると考えられる。したがって、第1,第2電池セルの端子電圧検出値の差である電圧差ΔVdは、ノイズの影響が低減された値である。このため、SOCの推定に電圧差ΔVdが用いられることにより、ノイズが発生する場合であっても、SOCの算出精度の低下を抑制することができる。
【0038】
監視IC60として、電池セル12が取り得る全電圧範囲、又は全電圧範囲のうち一部の電圧範囲である限定電圧範囲のいずれかを電圧検出範囲に設定可能なICが用いられることがある。限定電圧範囲が電圧検出範囲として選択される場合、全電圧範囲が電圧検出範囲として選択される場合と比較して、電圧検出の分解能が向上する。限定電圧範囲は、例えば、プラトー領域SLに含まれる電池セル12の電圧範囲に設定されることが好ましい。この場合、SOCの算出精度をより高めることができる。マイコン70は、例えば、図4に示す処理で用いられる電池セル12の電圧を検出する場合、電圧検出範囲を限定電圧範囲に設定する。一方、限定電圧範囲が電圧検出範囲として選択される場合、検出電圧がノイズの影響を受けやすくなる。ここで、ノイズの影響を低減できる本実施形態によれば、プラトー領域SLにおける電池セル12の電圧検出を許可する条件として、ノイズの影響がない状態であるとの条件を設ける必要がない。これにより、電圧検出の制約を緩和することができる。
【0039】
<第1実施形態の変形例>
・マイコン70は、組電池10の充電開始時における各電池セル12のSOCのばらつきが大きいほど、判定値Vjdeを大きく設定してもよい。これは、SOCのばらつきが大きいほど、電圧差ΔVdのピーク値が大きくなることに基づく設定である。
【0040】
また、マイコン70は、第1,第2電池セルの温度が高かったり、電流センサ40により検出された充電電流が小さかったりするほど、判定値Vjdeを大きく設定してもよい。これは、温度が高かったり、電流が小さかったりするほど、特定領域SBにおける検出電圧の上昇量が大きくなることに基づく設定である。
【0041】
図6に示すように、マイコン70の選択部71は、各電池セル12のうち、端子電圧検出値が最高の電池セルを第1電池セルとして選択し、端子電圧検出値が最低の電池セルを第2電池セルとして選択してもよい。これは、図7に示すように、特定領域SBにおける電圧差ΔVdを大きくし、SOCの算出精度を高めるためである。
【0042】
また、選択部71は、各電池セル12のうち、算出したSOCが最高の電池セルを第1電池セルとして選択し、算出したSOCが最低の電池セルを第2電池セルとして選択してもよい。
【0043】
また、選択部71は、各電池セル12のうち、直列接続されて隣接する2つの電池セルを第1電池セル及び第2電池セルとして選択してもよい。隣接する2つの電池セルの温度は近いため、電圧差ΔVdに基づくSOCの算出精度を高めることができる。
【0044】
ちなみに、第1,第2電池セルは、組電池10を構成する全ての電池セル12の中から選択されてもよいし、各電池モジュール11を構成する各電池セル12の中から選択されてもよいし、同一の監視IC60による監視対象となる各電池セル12の中から選択されてもよい。
【0045】
・選択部71は、同一のA/Dコンバータ62のAD変換対象となる各電池セル12の中から第1,第2電池セルを選択してもよい。この場合、AD変換対象となる電池セル12の電圧検出誤差が近い値となるため、SOCの算出精度を高めることができる。
【0046】
また、選択部71は、組電池10を構成する各電池セル12のうち、検出タイミングが近い2つの電池セルを第1,第2電池セルとして選択してもよい。この場合、第1,第2電池セルの端子電圧検出値に重畳するノイズが近い値となるため、SOCの算出精度を高めることができる。
【0047】
また、選択部71は、組電池10を構成する各電池セル12のうち、温度センサ(例えばサーミスタ)が設けられた電池セルの中から第1,第2電池セルを選択してもよい。また、選択部71は、組電池10を構成する各電池セル12のうち、温度が所定差以下の電池セルを第1,第2電池セルとして選択してもよい。
【0048】
・ステップS11において、第2検出電圧V2dから第1検出電圧V1dを差し引くことにより、電圧差ΔVdを算出してもよい。この場合、ステップS12の処理は、「|ΔVd|>Vjde?」、又は「ΔVd<Vjde?(ただし、Vjdeは負の値)」とされればよい。
【0049】
図4に示すSOC算出処理は、組電池10の充電中に限らず、組電池10の放電中に実行されてもよい。
【0050】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。図8に、本実施形態に係るSOC算出処理のフローチャートを示す。この処理は、マイコン70により、例えば、電池セル12の状態がプラトー領域SLであると判定された場合、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0051】
ステップS20では、第1検出電圧V1dと、第2検出電圧V2dとを取得する。ステップS21では、第1検出電圧V1dから第2検出電圧V2dを差し引くことにより、電圧差ΔVdを算出する。
【0052】
ステップS22では、判定フラグFjdeが0であるか否かを判定する。
【0053】
ステップS22において判定フラグFjdeが0であると判定した場合には、ステップS23に進み、算出した電圧差ΔVdが第1判定値Vjde1を超えているか否かを判定する。ステップS23において否定判定した場合には、ステップS26に進む。
【0054】
ステップS23において肯定判定した場合には、ステップS24に進み、第1電池セルのSOCを規定値Sαとして算出する。なお、ステップS24において、SOCに代えて、第1電池セルの残容量を算出してもよい。
【0055】
ステップS24の処理の完了後、ステップS25に進み、判定フラグFjdeを1にする。その後、ステップS26に進む。
【0056】
ステップS26では、判定フラグFjdeが1であるとの条件、及び算出した電圧差ΔVdが第2判定値Vjde2を下回っているとの条件の双方が成立しているか否かを判定する。本実施形態において、第2判定値Vjde2は、第1判定値Vjde1よりも小さい値に設定される。ただし、これに限らず、第2判定値Vjde2は、第1判定値Vjde1よりも大きい値又は第1判定値Vjde1と同じ値に設定されてもよい。
【0057】
ステップS26において肯定判定した場合には、ステップS27に進み、第2電池セルのSOCを規定値Sαとして算出する。なお、ステップS27において、SOCに代えて、第2電池セルの残容量を算出してもよい。
【0058】
図9を用いて、SOC算出処理について説明する。図9(a),(b)は、先の図5(a),(b)に対応している。図9に示す例では、車外充電器200により組電池10が充電(定電流充電又は定電圧充電)されている。
【0059】
時刻t1において、第1電池セルの状態が端部領域SHからプラトー領域SLに移行し、時刻t2において、第2電池セルの状態が端部領域SHからプラトー領域SLに移行する。時刻t2以降において、第1,第2検出電圧V1d,V2dが同等になるため、電圧差ΔVdが0に近い値となる。
【0060】
その後、時刻t3において、第1電池セルの状態が特定領域SBに移行し、時刻t3~t5において第1検出電圧V1dの上昇速度が一時的に高くなる。一方、第2電池セルの状態は未だプラトー領域SL内である。このため、時刻t3以降において、電圧差ΔVdが上昇し、時刻t4において、電圧差ΔVdが第1判定値Vjde1を超えたとマイコン70により判定される。このため、マイコン70は、第1電池セルのSOCを規定値Sαとして算出する。
【0061】
時刻t6において、第2電池セルの状態が特定領域SBに移行し、時刻t6~t8において第2検出電圧V2dの上昇速度が一時的に高くなる。その結果、時刻t7において、電圧差ΔVdが第2判定値Vjde2を下回ったとマイコン70により判定される。このため、マイコン70は、第2電池セルのSOCを規定値Sαとして算出する。なお、時刻t9において、第1電池セルの状態が端部領域SHに移行する。
【0062】
以上詳述した本実施形態によれば、第1,第2電池セルのSOCを個別に算出することができる。
【0063】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。図10に、本実施形態に係るSOC算出処理のフローチャートを示す。この処理は、マイコン70により、例えば、電池セル12の状態がプラトー領域SLであると判定された場合、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0064】
ステップS30では、第1検出電圧V1d(t)と、第2検出電圧V2d(t)とを取得する。
【0065】
ステップS31では、今回の制御周期で取得した第1検出電圧V1d(t)から、今回の制御周期で取得した第2検出電圧V2d(t)を差し引くことにより、今回の制御周期における電圧差ΔVd(t)を算出する。
【0066】
ステップS32では、今回の制御周期で算出した電圧差ΔVd(t)から、前回の制御周期で算出した電圧差ΔVd(t-1)を差し引くことにより、電圧時間変化量ΔAdを算出する。
【0067】
ステップS33では、電圧時間変化量ΔAdが0を跨いだか否かを判定する。
【0068】
ステップS33において肯定判定した場合には、ステップS34に進み、第1電池セル及び第2電池セルのSOCを規定値Sαとして算出する。なお、ステップS34において、SOCに代えて、第1,第2電池セルの残容量を算出してもよい。
【0069】
図11を用いて、SOC算出処理について説明する。図11(a),(b)は、先の図5(a),(b)に対応し、図11(c)は電圧時間変化量ΔAdの推移を示す。図11に示す例では、車外充電器200により組電池10が充電(定電流充電又は定電圧充電)されている。
【0070】
時刻t1において、第1電池セルの状態が端部領域SHからプラトー領域SLに移行し、時刻t2において、第2電池セルの状態が端部領域SHからプラトー領域SLに移行する。時刻t2以降において、第1,第2検出電圧V1d,V2dが同等になるため、電圧差ΔVdが0に近い値となり、電圧時間変化量ΔAdが0又は0に近い正の値となる。
【0071】
その後、時刻t3において、第1電池セルの状態が特定領域SBに移行し、時刻t3~t5において第1検出電圧V1dの上昇速度が一時的に高くなる。その結果、電圧時間変化量ΔAdが正側に大きくなる。
【0072】
その後、時刻t4~t5において、電圧時間変化量ΔAdが0又は0に近い正の値となる。時刻t5において、第2電池セルの状態が特定領域SBに移行し、時刻t5~t6において第2検出電圧V2dの上昇速度が一時的に高くなる。その結果、電圧時間変化量ΔAdが負側に大きく変化する。これにより、時刻t5において、電圧時間変化量ΔAdが0を跨いだとマイコン70により判定される。このため、マイコン70は、第1,第2電池セルのSOCを規定値Sαとして算出する。
【0073】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
<第3実施形態の変形例>
図11を参照して、マイコン70は、例えば、電圧時間変化量ΔAdが0近傍の値まで大きく低下する時刻t4において、第1,第2電池セルのSOCを規定値Sαとして算出してもよい。
【0075】
・電圧時間変化量ΔAdに代えて、以下の(A),(B)のパラメータが用いられてもよい。
(A)(ΔVd(tm)-ΔVd(tm-1))/ΔCa
ΔCaは、時刻tm-1から時刻tmまでの規定期間における電池セルの容量変化量[Ah]を示す。規定期間は、例えば、マイコン70の1制御周期、又は1制御周期よりも長い期間である。規定期間は、例えば、容量変化量ΔCaが所定の容量変化量になるために要する期間として設定することもできる。ΔVd(tm-1)は、時刻tm-1で取得した第1検出電圧V1dから、時刻tm-1で取得した第2検出電圧V2dを差し引いた値である。ΔVd(tm)は、時刻tmで取得した第1検出電圧V1dから、時刻tmで取得した第2検出電圧V2dを差し引いた値である。
(B)(ΔVd(tm)-ΔVd(tm-1))/ΔSOC
ΔSOCは、時刻tm-1から時刻tmまでの規定期間における電池セルのSOC変化量を示す。この場合における規定期間は、例えば、上記と同様に、SOC変化量ΔSOCが所定のSOC変化量になるために要する期間として設定することができる。
【0076】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、SOCに代えて、第1,第2電池セルの残容量の差が算出される。図12に、残容量の差の算出処理のフローチャートを示す。この処理は、マイコン70により、例えば、電池セル12の状態がプラトー領域SLであると判定された場合、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0077】
ステップS40では、第1検出電圧V1dと、第2検出電圧V2dとを取得する。ステップS41では、第1検出電圧V1dから第2検出電圧V2dを差し引くことにより、電圧差ΔVdを算出する。
【0078】
ステップS42では、判定フラグFjdeが0であるか否かを判定する。ステップS42において判定フラグFjdeが0であると判定した場合には、ステップS43に進み、算出した電圧差ΔVdが第1判定値Vjde1を超えているか否かを判定する。ステップS43において肯定判定した場合、つまり電圧差ΔVdが正方向に変化して第1判定値Vjde1を跨いだと判定した場合には、ステップS44に進み、電流センサ40により検出された充電電流の時間積算値の算出を開始する。ステップS44の処理の完了後、ステップS45に進み、判定フラグFjdeを1にする。その後、ステップS46に進む。
【0079】
ステップS46では、判定フラグFjdeが1であるとの第1条件、及び算出した電圧差ΔVdが第2判定値Vjde2を下回っているとの第2条件の双方が成立しているか否かを判定する。第2条件は、換言すれば、電圧差ΔVdが負方向に変化して第2判定値Vjde2を跨いだとの条件である。
【0080】
ステップS46において肯定判定した場合には、ステップS47に進み、判定フラグFjdeを0にし、ステップS44で開始した電流積算処理を終了する。ステップS47では、電流積算処理により算出した充電電流の時間積算値を第1,第2電池セル間の残容量の差として算出する。なお、残容量の差に基づいて、第1,第2電池セル間のSOCの差を算出してもよい。
【0081】
図13を用いて、残容量の差の算出処理について説明する。図13(a),(b)は、先の図5(a),(b)に対応している。図13(c)は判定フラグFjdeの推移を示し、図13(d)は充電電流の時間積算値の推移を示し、図13(e)は第1,第2電池セル間における残容量の差の算出値の推移を示す。図13に示す例では、車外充電器200により組電池10が充電(定電流充電又は定電圧充電)されている。
【0082】
時刻t1において、第1電池セルの状態が端部領域SHからプラトー領域SLに移行し、時刻t2において、第2電池セルの状態が端部領域SHからプラトー領域SLに移行する。
【0083】
その後、時刻t3において、第1電池セルの状態が特定領域SBに移行し、時刻t3~t5において第1検出電圧V1dの上昇速度が一時的に高くなる。このため、時刻t4において、電圧差ΔVdが第1判定値Vjde1を超えたとマイコン70により判定される。このため、判定フラグFjdeが1にされるとともに、充電電流の積算処理が開始される。
【0084】
時刻t6において、第2電池セルの状態が特定領域SBに移行し、時刻t6~t8において第2検出電圧V2dの上昇速度が一時的に高くなる。このため、時刻t7において、電圧差ΔVdが第2判定値Vjde2を下回ったとマイコン70により判定される。このため、判定フラグFjdeが0にされるとともに、充電電流の積算処理が終了する。そして、時刻t4~t7までに積算された充電電流の値が第1,第2電池セル間における残容量の差として算出される。
【0085】
なお、マイコン70は、算出した残容量の差が所定容量以上であると判定した場合、第1,第2電池セルの少なくとも一方が故障していると判定してもよい。また、マイコン70は、算出した残容量の差に基づいて、均等化処理における電池セルの放電量を決定してもよい。
【0086】
<第5実施形態>
以下、第5実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図14に示すように、SOC算出処理に先立ち、第1,第2セル間のSOCの差が小さい場合、その差を大きくする処理が実行される。なお、図14において、先の図4に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0087】
ステップS14では、充電開始フラグFchrが0であるか否かを判定する。充電開始フラグFchrは、0によって組電池10の充電が未だ開始されていないことを示し、1によって充電が既に開始されていることを示す。ステップS14において充電開始フラグFchrが1であると判定した場合には、ステップS10に進む。
【0088】
一方、ステップS14において充電開始フラグFchrが0であると判定した場合には、ステップS15に進み、第1電池セルのSOC(以下、SOC1)と、第2電池セルのSOC(以下、SOC2)との差の絶対値が閾値Sthよりも大きいか否かを判定する。ステップS15において肯定判定した場合には、ステップS16に進み、充電開始フラグFchrを1にし、車外充電器200による組電池10の充電を開始する。本実施形態において、SOC1,SOC2が「蓄電量パラメータ」に相当する。なお、蓄電量パラメータは、SOC1,SOC2に限らず、例えば、第1,第2検出電圧V1d,V2d、又は第1,第2電池セルの残容量であってもよい。
【0089】
一方、ステップS15において否定判定した場合には、ステップS17に進み、第1,第2電池セルのうちいずれかから放電させる放電処理を行う。本実施形態では、第2電池セルから放電させる。この放電には、均等化回路部64が用いられればよい。この放電は、ステップS15において肯定判定するまで継続される。
【0090】
以上説明した処理について、図15を用いてさらに説明する。図15(a)はSOC1,SOC2の推移を示し、図15(b)は第2電池セルの放電処理の実行の有無を示す。図15(c),(d)は、先の図5(a),(b)に対応している。
【0091】
時刻t1において、SOC1とSOC2との差の絶対値が閾値Sth以下であるとマイコン70により判定される。このため、この絶対値が閾値Sthを超えると判定される時刻t2まで、マイコン70により放電処理が実行される。その後、組電池10の充電が開始され、SOC推定処理が実行される。なお、時刻t3において、マイコン70は、電圧差ΔVdが判定値Vjdeを超えたと判定し、第1電池セルのSOCを規定値Sαとして算出する。
【0092】
SOC1とSOC2との差が小さい場合には、SOC算出処理において算出される電圧差ΔVdが小さくなり、SOCの算出精度が低下する懸念がある。そこで、本実施形態では、SOC算出処理に先立ち、放電処理が実行される。これにより、SOC1とSOC2との差を大きくした状態でSOC算出処理を開始することができ、SOCの算出精度の低下を回避できる。
【0093】
ちなみに、SOC1とSOC2との差を大きくするための放電処理の実施時期は、組電池10の充電前に限らない。例えば、マイコン70は、組電池10の充電中において、SOC1とSOC2との差の絶対値を都度算出し、算出した絶対値が閾値Sth以下になったと判定した場合、組電池10を充電しながらステップS17の処理を行ってもよい。
【0094】
<第5実施形態の変形例>
・上記閾値Sthを第1閾値Sth1とし、第2閾値Sth2を第1閾値Sth1よりも大きい値とする。この場合において、マイコン70は、SOC1とSOC2との差の絶対値が第1閾値Sth1以下であると判定してから、上記絶対値が第2閾値Sth2以上になると判定するまでの期間にわたって放電処理を実行してもよい。
【0095】
図14のステップS17の処理を、放電処理に代えて、ステップS15で否定判定されてから、ステップS15で肯定判定されるまでの期間にわたって、第1,第2電池セルのうちいずれかを充電する充電処理に変更してもよい。
【0096】
また、第1,第2電池セルのうち、一方に放電処理を行い、他方に充電処理を行うことにより、第1電池セル及び第2電池セルのSOCの差を大きくしてもよい。
【0097】
<第6実施形態>
以下、第6実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、電池パラメータとして、電池セルの端子電圧に代えて、電池セルのインピーダンスが用いられる。以下、インピーダンスが用いられる理由について説明する。
【0098】
蓄電池では、通電に伴い残容量が変化する際に、反応熱量WRの変化が生じる。反応熱量WRとは、下記の式(1)に示すように、通電に伴う蓄電池の発熱量WBから蓄電池のインピーダンス成分によるジュール熱WJを除いたものである。反応熱量WRは、蓄電池の温度TM、充放電電流IS、及び単位温度当たりの開放端電圧OCVの変化量である電圧変化量ΔOCVを用いて、下記の式(2)のように表される。
WB=WJ+WR・・・(1)
WR=TM×IS×ΔOCV・・・(2)
式(2)によれば、反応熱量WRは電圧変化量ΔOCVに比例する。電圧変化量ΔOCVは、蓄電池の容量毎に値を持ち、蓄電池の中には、容量が変化した時に、電圧変化量ΔOCVが変化する蓄電池がある。このような蓄電池では、容量が変化すれば、反応熱量WRが変化するため、温度TMが変化する。また、蓄電池では、温度TMとインピーダンスとが相関関係を有する。そのため、蓄電池の温度TMが変化すると、蓄電池のインピーダンスが変化する。
【0099】
図16に、本実施形態の電池セル12における残容量と上記電圧変化量ΔOCVとの関係を示す。図16に示すように、電池セル12は、第1容量QAから第2容量QBまでの特定容量域を有し、特定容量域はプラトー領域SLに含まれる。残容量が低容量側から第1容量QAを跨ぐ場合、電圧変化量ΔOCVが急増し、残容量が低容量側から第2容量QBを跨ぐ場合、電圧変化量ΔOCVが急減する。第1,第2容量QA,QBでは、電圧変化量ΔOCVの変化が急峻であることから、第1,第2容量QA,QBを跨ぐことにより、通電中の電池セル12のインピーダンス推移の傾向が変化する。この点に着目したSOC算出処理を図17に示す。この処理は、マイコン70により、例えば、電池セル12の状態がプラトー領域SLであると判定された場合、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0100】
ステップS50では、第1電池セルのインピーダンスZ1と、第2電池セルのインピーダンスZ2とを算出する。第1電池セルを例にして説明すると、組電池10の充電中において、第1電池セルに流れる充電電流が変化した場合における第1検出電圧V1dの変化量ΔV1を充電電流の変化量ΔISで除算することにより、第1電池セルのインピーダンスZ1を算出する。
【0101】
ステップS51では、第2電池セルのインピーダンスZ2から第1電池セルのインピーダンスZ1を差し引くことにより、インピーダンス差ΔZを算出する。インピーダンス差ΔZは、ノイズの影響が低減された値である。ステップS52では、インピーダンス差ΔZが判定値Zjdeを下回っているか否かを判定する。ステップS52において肯定判定した場合には、ステップS53に進み、第1電池セル及び第2電池セルのSOCを規定値Sαとして算出する。なお、ステップS53において、SOCに代えて、第1,第2電池セルの残容量を算出してもよい。
【0102】
図18を用いて、SOC算出処理について説明する。図18(a)は第1,第2電池セルのインピーダンスZ1,Z2の推移を示し、図18(b)はインピーダンス差ΔZの推移を示す。図18に示す例では、車外充電器200により組電池10が充電されている。
【0103】
第1,第2電池セルの状態がプラトー領域SLにある場合において、時刻t1まではインピーダンス差ΔZが略一定である。時刻t1において、インピーダンス差ΔZが低下し始め、時刻t2において、インピーダンス差ΔZが判定値Zjdeを下回ったとマイコン70により判定される。このため、マイコン70は、第1,第2電池セルのSOCを規定値Sαとして算出する。時刻t3において、第2電池セルのインピーダンスの大きな低下が止まるため、その後インピーダンス差ΔZが略一定となる。
【0104】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0105】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0106】
図18を参照して、マイコン70は、時刻t1において第1電池セルのSOCを規定値Sαとして算出し、時刻t2において第2電池セルのSOCを規定値Sαとして算出してもよい。
【0107】
・第2~第5実施形態において、電圧差ΔVdに代えて、インピーダンス差ΔZが用いられてもよい。
【0108】
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0109】
10…組電池、11…電池セル、50…BMU。
図1
図2
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図5
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