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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】床用の臭気封止材及び床材
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/16 20060101AFI20250212BHJP
   E04F 15/02 20060101ALI20250212BHJP
   B32B 5/00 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
E04F15/16 H
E04F15/02 A
B32B5/00 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021133563
(22)【出願日】2021-08-18
(65)【公開番号】P2023028083
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2024-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】氏居 真弓
(72)【発明者】
【氏名】山村 菜月
(72)【発明者】
【氏名】古沢 伸夫
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-131593(JP,A)
【文献】特開2017-154363(JP,A)
【文献】特開2008-156876(JP,A)
【文献】登録実用新案第3058964(JP,U)
【文献】特開平09-085924(JP,A)
【文献】特開2020-138445(JP,A)
【文献】登録実用新案第3166602(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/16
E04F 15/02
B32B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、
ポリビニルアルコール系樹脂を含む層と、
蒸着層と、
カルボキシル基と、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有するポリオレフィンを含む層と、
プライマー層と、
接着層と、
をこの順で備える床用の臭気封止材。
【請求項2】
カルボキシル基と、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有するポリオレフィンを含む層と、
蒸着層と、
ポリビニルアルコール系樹脂を含む層と、
紙基材と、
プライマー層と、
接着層と、
をこの順で備える床用の臭気封止材。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコール系樹脂を含む層の厚さは、1μm以上5μm以下である
請求項1又は2に記載の床用の臭気封止材。
【請求項4】
前記蒸着層の厚さは、30nm以上100nm以下である
請求項1から3のいずれか一項に記載の床用の臭気封止材。
【請求項5】
前記ポリオレフィンを含む層の厚さは、2μm以上10μm以下である
請求項1から4のいずれか一項に記載の床用の臭気封止材。
【請求項6】
前記紙基材の厚さは30μm以上100μm以下であり、且つ前記紙基材の厚さが臭気封止材全体の厚さの70%以上である
請求項1から5のいずれか一項に記載の床用の臭気封止材。
【請求項7】
前記紙基材に含まれる紙の質量は、臭気封止材全体を基準として、50質量%以上である
請求項1から6のいずれか一項に記載の床用の臭気封止材。
【請求項8】
前記接着層は、接着基材層と、前記接着基材層に設けられた粘着層と、を備え、
前記接着基材層は、ラミネートクロスシートであり、
前記粘着層は、前記ラミネートクロスシート上に設けられたアクリル系樹脂である
請求項1から7のいずれか一項に記載の床用の臭気封止材。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の床用の臭気封止材と、
前記床用の臭気封止材の表面に積層された表面基材と、
を備える床材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば屋内や屋外の建造物床面に敷設して用いる床材とともに用いられる床用の臭気封止材、又は床用の臭気封止材を備える床材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の老朽化や居住者の生活状況によって室内に強い臭いや異臭が発生することがある。このような臭いは、例えば、建物の床に敷設された建材に含まれる各種化学物質や建材に染み込んだ室内の臭いが室内に拡散することにより生じる。このような場合、住宅の居住性や快適性が低下してしまう。
そこで、床表面に炭化層を設けて形成された、炭化物の表面活性を利用して室内の消臭を行う床材が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-159941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高い意匠性を有する一般的な床材に付着した臭気は、一般的なクリーニングや修繕で消すことが難しい場合がある。しかしながら、一般的な床材に代えてこのような床材を用いる場合、多種多様の意匠性を付与することが困難となる。
また近年では、環境面に配慮して、合成樹脂フィルム等を使用せずに、紙を基材としたガスバリア性材料の開発が進められてきている。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、環境面に配慮しつつ、建物への臭気の付着や、臭気が付着した建材からの臭気の拡散を抑制することが可能な床用の臭気封止材及び床材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る床用の臭気封止材は、紙基材と、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層と、蒸着層と、カルボキシル基と、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有するポリオレフィンを含む層と、プライマー層と、接着層と、をこの順で備えることを特徴とする。
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る床用の臭気封止材は、カルボキシル基と、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有するポリオレフィンを含む層と、蒸着層と、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層と、紙基材と、プライマー層と、接着層と、をこの順で備えることを特徴とする。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る床材は、上述した床用の臭気封止材と、床用の臭気封止材の表面に貼着された表面基材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、環境面に配慮しつつ、建物への臭気の付着を抑制することが可能な床用の臭気封止材及び床材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一実施形態に係る床用の臭気封止材の一構成例を示す断面図である。
図2】本発明の第二実施形態に係る床用の臭気封止材の一構成例を示す断面図である。
図3】本発明の第三実施形態に係る床材の一構成例を示す断面図である。
図4】本発明の第四実施形態に係る床材の一構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、図面は特許請求の範囲にかかる発明を模式的に示すものであり、各部の幅、厚さ等の寸法は現実のものとは異なり、これらの比率も現実のものとは異なる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態の各態様について説明する。
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る床用の臭気封止材及び床用の臭気封止材を有する床材について、図1から図4を用いて説明する。本発明の実施形態に係る床用の臭気封止材は、例えば、建造物床面に敷設する床材の下層に敷設される。なお、以下の説明では、床用の臭気封止材が床材と対向する側を床用の臭気封止材の「上」とし、床用の臭気封止材が床材と対向しない側(建造物の下側)を「下」として説明する場合がある。
【0012】
1.第一実施形態
図1は、本発明の第一実施形態に係る床用の臭気封止材(第一積層体100A)の一構成例を説明するための断面図である。なお、本実施形態に係る床用の臭気封止材は、第一積層体100Aとして説明する。本実施形態に係る第一積層体100Aは、例えば、建造物床面に敷設する床材の下層に敷設される建材用防臭シートである。
第一積層体100Aは、第一バリア層10Aと、第一バリア層10Aに形成された紙基材11の下側の面(他方の面の一例)側に設けられたプライマー層20と、プライマー層20の第一バリア層10Aと反対側の面に設けられた接着層30とを備えている。
【0013】
第一バリア層10Aは、室内の臭いや臭いの原因となる液体等が床材の下層となる建造物床面のコンクリートや板(以下、下地と記載する場合がある)に透過することや、下地から室内に各種化学物質が拡散することを防止する機能を有する層である。プライマー層20は、第一バリア層10Aと接着層30との接着性を向上させるために設けられた層である。接着層30は、第一積層体100Aを下地(建造物床面のコンクリートや板)に接着するために設けられた層である。すなわち、第一積層体100Aは、第一バリア層10Aが床材(図示せず)と対向し、接着層30が建造物の床面と対向するように敷設され、建造物の床面に固定される。
以下、第一バリア層10A、プライマー層20及び接着層30の各層について詳細に説明する。
【0014】
(1.1)床用の臭気封止材の基本構成
<第一バリア層>
第一バリア層10Aは、紙基材11と、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12と、蒸着層13と、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有するポリオレフィンを含む層14と、をこの順で備える積層構造を有している。
【0015】
(紙基材)
紙基材11としては、特に限定されず、第一積層体100Aが適用される床材の用途に応じて適宜選択すればよい。植物由来のパルプを主成分としている紙であれば特に制限はない。紙基材11の具体例として、上質紙、特殊上質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、模造紙及びクラフト紙、グラシン紙が挙げられる。
【0016】
紙基材11の厚さは、例えば、30μm以上100μm以下であれば好ましく、30μm以上70μm以下であればより好ましい。紙基材11の厚さが30μm以上であれば、ガスバリア性をより向上させることができる。また、紙基材11の厚さが100μm以下であれば、安定して臭気の拡散を抑制することができる。また、紙基材11の厚さは、積層体全体の厚さの70%以上であってよい。紙基材11の厚さが、積層体全体の厚さの70%以上であれば、環境適性に優れているといえる。
【0017】
紙基材11には、少なくとも後述するポリビニルアルコール系樹脂を含む層12と接する側にコート層を設けてあってもよい。コート層を設けることで、紙にポリビニルアルコール系樹脂を含む層12が染み込むことを防ぐことができるほか、紙の凹凸を埋める目止めの役割を果たすこともでき、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層を欠陥なく均一に製膜することができる。コート層には、バインダー樹脂として例えば、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、などの各種共重合体、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、パラフィン(WAX)等を用い、填料として例えば、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等が含まれていてもよい。
【0018】
コート層の厚さは、特に制限されないが、例えば、1μm以上10μm以下であれば好ましく、3μm以上8μm以下であればより好ましい。コート層の厚さが1μm以上であれば、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層をより均一に製膜することができる。コート層の厚さが10μm以下であれば、コストを抑えつつ各層を均一に製膜することができる。
【0019】
紙の質量は、積層体全体を基準として、50質量%以上95質量%以下であることが好ましく、70質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上95質量%以下であることが更に好ましい。紙の質量が積層体全体を基準として、50質量%以上であれば、プラスチック材料の使用量を十分に削減することができ、積層体全体として紙製であるということができるとともに、リサイクル性に優れる。
【0020】
(ポリビニルアルコール系樹脂を含む層)
ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12は、紙基材11の表面上に設けられ、紙基材11と後述する蒸着層13との間の密着性向上や、積層体のガスバリア性(特に酸素バリア性)の向上ために設けられる層である。ポリビニルアルコール系樹脂とは、例えば、完全けん化のポリビニルアルコール樹脂、部分けん化のポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂、エチレン?ビニルアルコール共重合樹脂等である。またポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、300以上1500以下が好ましい。重合度が300以上であれば、ガスバリア性積層体のバリア性や屈曲耐性が良好になり、重合度が1500以下であれば、後述するポリビニルアルコール系樹脂の塗液の粘度が低くなり、塗布性が良好になる。
【0021】
ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12を設ける方法としては、紙基材11上に上述したポリビニルアルコール系樹脂及び溶媒を含む塗液を塗布し、乾燥させることで得ることができる。塗液に含まれる溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられ、特に水と、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコールとの混合溶媒が好ましい。また前記塗液には、界面活性剤や防腐剤、保存安定剤、シランカップリング剤、有機チタネート等の添加剤を含んでいても構わない。
【0022】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を含む層12は、柔軟性に優れ、屈曲後(折り曲げ後)に後述する蒸着層13の割れを抑制してガスバリア性の劣化を抑えることができるとともに、蒸着層13とポリビニルアルコール系樹脂を含む層12との密着性を向上させることができる。
【0023】
ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12におけるポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、例えば、1質量%以上100質量%以下あり、20質量%以上70質量%以下であれば好ましく、30質量%以上50質量%以上であればより好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が50質量%以上であれば、ガスバリア性を向上させ、臭気の拡散を抑制することができる。
【0024】
ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12の厚さは、例えば、1μm以上であれば好ましく、2μm以上5μm以下であればより好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12の厚さが1μm以上であれば、上述した紙基材11の凹凸を効率的に埋めることができ、後述する蒸着層13を均一に積層させることができる。また、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12の厚さが5μm以下であれば、コストを抑えつつ蒸着層13を均一に積層させることができる。
【0025】
[蒸着層]
蒸着層13は、金属又は無機化合物を蒸着した層である。蒸着層13としては、アルミニウムを蒸着して得られた層であってもよく、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化ケイ素(SiOx)等を含んでもよい。
【0026】
蒸着層13の厚さは、使用用途によって適宜設定すればよいが、例えば30nm以上100nm以下であれば好ましく、50nm以上80nm以下であればより好ましい。蒸着層13の厚さを30nm以上とすることで、蒸着層13の連続性を十分なものとしやすくなる。また蒸着層13の厚さを100nm以下とすることで、カールやクラックの発生を十分に抑制でき、十分なガスバリア性能及び可撓性を達成しやすい。
【0027】
蒸着層13は、真空成膜手段によって成膜することが、酸素ガスバリア性能や膜均一性の観点から好ましい。成膜手段には、真空蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長法(CVD法)などの公知の方法があるが、成膜速度が速く生産性が高いことから真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法における加熱手段としては、電子線加熱方式、抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましく、成膜速度を照射面積や電子ビーム電流などで制御しやすいことや蒸着材料への昇温降温が短時間で行えることを考慮すると電子線加熱方式を用いることがより好ましい。また、蒸着層13と紙基材11との密着性及び蒸着層13の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いて蒸着することも可能である。また、蒸着層13を構成する蒸着膜の透明性を向上させるために、蒸着の際、酸素等の各種ガスなど吹き込む反応蒸着を用いてもよい。
【0028】
[ポリオレフィンを含む層]
ポリオレフィンを含む層14は、蒸着層13の表面上に、蒸着層13に接するように設けられる層で、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有するポリオレフィンを含む。
第一実施形態において、ポリオレフィンを含む層14は、第一積層体100Aの最上部、すなわち積層体が床材と対向する側に設けられている。この構成により、第一積層体100Aは、水濡れ耐性が向上し、床側から水分が大量にしみ込んだ場合においてもシートの破損を防ぐことができる。
【0029】
このようなポリオレフィンを含む層14は、柔軟性に優れ、屈曲後(折り曲げ後)に蒸着層13の割れを抑制することができるとともに、蒸着層13に対する密着性に優れる。さらに、上述したポリオレフィンを含むことで、水蒸気バリア性に優れる積層体を得ることができる。また、ポリオレフィンを含む層を設けることで、ヒートシール層としての役割も兼ねることができるため、ヒートシール層を別途設けなくともよい。
【0030】
ポリオレフィンを含む層14は、上述したポリオレフィンのほかに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、シランカップリング剤、有機チタネート、ポリアクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリウレア、ポリアミド、ポリオレフィン系エマルジョン、ポリイミド、メラミン、フェノール等が挙げられる。
【0031】
ポリオレフィンを含む層14におけるポリオレフィンの含有量は、例えば、50質量%以上であれば好ましく、70質量%以上であればより好ましい。ポリオレフィンを含む層14のポリオレフィンの含有量が50質量%以上であれば、ガスバリア性を向上させ、臭気の拡散を抑制することができる。
【0032】
ポリオレフィンを含む層14の厚さは、例えば、2μm以上10μm以下であれば好ましく、3μm以上8μm以下であればより好ましい。ポリオレフィンを含む層14の厚さが2μm以上であれば、上述したヒートシール層としての役割を十分に発揮することができる。また、ポリオレフィンを含む層14の厚さが10μm以下であれば、コストを抑えつつ蒸着層に対する密着性やバリア性を十分に発揮することができる。
【0033】
ポリオレフィンを含む層14を設ける方法としては、蒸着層13上に上述したポリオレフィン及び溶媒を含む塗液を塗布し、乾燥させることで得ることができる。塗液に含まれる溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、特性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、水が好ましい。また環境の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、水がより好ましい。
【0034】
第一バリア層10Aは、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12及び蒸着層13により臭気を透過し、室内への臭気の拡散を防止することができる。また、ポリオレフィンを含む層14は、蒸着層13を保護しかつ蒸着層13のガスバリア性を向上させることができ、第一積層体100Aの敷設時や第一積層体100Aの使用時(第一積層体100Aの敷設した住居で賃借人が生活する際)においても第一バリア層10Aの防臭機能が維持されやすくなる。
【0035】
<プライマー層>
プライマー層20は、第一バリア層10Aの紙基材11側の面と密着して設けられ、第一バリア層10Aと接着層30との接着性を向上させるために設けられている。
プライマー層20を構成するプライマーとしては、例えばエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等の樹脂材料を単独又は混合して用いることができる。プライマー層20は、これらの樹脂材料をロールコート法やグラビア印刷法等の適宜の塗布手段を用いて第一バリア層10Aに塗布することにより形成される。
【0036】
プライマー層20を構成するプライマーとしては、アクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体とイソシアネートとを含む樹脂で形成するのが特に好ましい。アクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体は、末端に水酸基を有するアクリル重合体成分(成分A)、両末端に水酸基を有するポリエステルポリオール成分(成分B)、ジイソシアネート成分(成分C)を配合して反応させてプレポリマーとし、このプレポリマーにさらにジアミンなどの鎖延長剤(成分D)を添加して鎖延長することで得られる。この反応によりポリエステルウレタンが形成されると共に、アクリル重合体成分が分子中に導入され、末端に水酸基を有するアクリル-ポリエステルウレタン共重合体が形成される。プライマー層20を構成するプライマーは、このアクリル-ポリエステルウレタン共重合体の末端の水酸基をイソシアネートと反応させて硬化させることにより形成される。
【0037】
成分Aとしては、末端に水酸基を有する直鎖状のアクリル酸エステル重合体が用いられる。特に、成分Aとして、末端に水酸基を有する直鎖状のポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いることが、耐候性(特に光劣化に対する特性)に優れウレタンと共重合させて相溶化するのが容易である点から好ましい。成分Aは、共重合体においてアクリル樹脂成分となり、分子量5000~7000(重量平均分子量)であることが耐候性、接着性の観点からさらに好ましい。また、成分Aは、両末端に水酸基を有する重合体のみを用いてもよいが、片末端に共役二重結合が残っている重合体と、両末端に水酸基を有する重合体とを混合して用いてもよい。
【0038】
成分Bとしては、成分C(ジイソシアネート成分)と反応してポリエステルウレタンを形成し、共重合体においてウレタン樹脂成分を構成する材料が用いられる。成分Bは、両末端に水酸基を有するポリエステルジオールが用いられる。ポリエステルジオールとしては、芳香族又はスピロ環骨格を有するジオール化合物とラクトン化合物もしくはその誘導体、又はエポキシ化合物との付加反応生成物、二塩基酸とジオールとの縮合生成物、および環状エステル化合物から誘導されるポリエステル化合物等を挙げることができる。ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、メチルペンテンジオール等の短鎖ジオール、1,4-シクロへキサンジメタノール等の脂環族短鎖ジオール等を挙げることができる。また、塩基酸としては、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を挙げることができる。ポリエステルポリオールとして好ましいのは、酸成分としてアジピン酸ないしアジピン酸とテレフタル酸の混合物を用い、ジオール成分として3-メチルペンテンジオールおよび1,4-シクロへキサンジメタノールを用いたアジペート系ポリエステルである。
【0039】
成分Bと成分Cとが反応して形成されるウレタン樹脂成分は、プライマー層20に柔軟性を与え、接着性向上に寄与する。また、アクリル重合体を含むアクリル樹脂成分は、プライマー層20の耐候性および耐ブロッキング性に寄与する。ウレタン樹脂における成分Bの分子量は、プライマー層20に柔軟性を十分に発揮可能なウレタン樹脂が得られる範囲であればよい。例えば、成分Bがアジピン酸又はアジピン酸とテレフタル酸の混合物と、3-メチルペンテンジオールおよび1,4-シクロへキサンジメタノールを含むポリエステルジオールの場合、成分Bの分子量が500以上5000以下(重量平均分子量)であることが好ましい。
【0040】
成分Cとしては、1分子中に2個のイソシアネート基を有する脂肪族又は脂環族のジイソシアネート化合物が用いられる。このジイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4(2,4,4)-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4’-シクロヘキシルジイソシアネート等を挙げることができる。ジイソシアネート成分としては、イソホロンジイソシアネートが物性およびコストが優れる点で好ましい。成分A~Cを反応させる場合のアクリル重合体、ポリエステルポリオールおよび後述する鎖延長剤の合計の水酸基(アミノ基の場合もある)と、イソシアネート基は、イソシアネート基が過剰となるように双方の当量比を調整する。
【0041】
三成分A、B、Cを60℃~120℃の環境下で2時間~10時間程度反応させる。ジイソシアネートのイソシアネート基がポリエステルポリオール末端の水酸基と反応してポリエステルウレタン樹脂成分が形成されると共に、アクリル重合体末端の水酸基にジイソシアネートが付加した化合物も混在する。これにより、過剰のイソシアネート基および水酸基が残存した状態のプレポリマーが形成される。形成されたプレポリマーに、鎖延長剤として例えばイソホロンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミンを加えてイソシアネート基を鎖延長剤と反応させ、鎖延長する。これにより、アクリル重合体成分がポリエステルウレタンの分子中に導入され、末端に水酸基を有するアクリル-ポリエステルウレタン共重合体を得ることができる。
【0042】
アクリル-ポリエステルウレタン共重合体にイソシアネートを加えると共に、塗布法、乾燥後の塗布量を考慮して必要な粘度に調節して塗布液を調整する。調整した塗布液を、グラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗布法で第一バリア層10Aに塗布することにより、プライマー層20が形成される。
イソシアネートとしては、アクリル-ポリエステルウレタン共重合体の水酸基と反応して架橋硬化させることが可能なものであればよく、例えば、2価以上の脂肪族又は芳香族イソシアネートが用いられる。特に、熱変色防止、耐候性の点から脂肪族イソシアネートを用いることが望ましい。脂肪族イソシアネートとしては、具体的に、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートの単量体、又はこれらの2量体、3量体などの多量体、あるいはこれらのイソシアネートをポリオールに付加した誘導体(アダクト体)のようなポリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0043】
プライマー層20の乾燥後の塗布量は、1g/m以上20g/m以下であることが好ましく、1g/m以上5g/m以下であることがより好ましい。また、プライマー層20は、必要に応じてシリカ粉末などの充填剤、光安定剤、着色剤等の添加剤が添加されていてもよい。
【0044】
<接着層>
接着層30は、例えば、接着基材31と、接着基材31に設けられた粘着層32と、を備えており、例えばシート状の接着層(すなわち接着シート)である。
接着基材31は、網状シート材等で構成された支持体が例えば樹脂フィルムで貼り合わされたラミネートクロス、又は支持体の表面が樹脂材料で覆われたコーティングクロスであることが好ましい。支持体としては、例えば、不織布、織布が用いられる。
【0045】
粘着層32は、従来公知の樹脂材料により形成することができる。粘着層32を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリα-メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエン-アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体を用いることが可能である。これらの樹脂は単独、あるいは2種以上を混合して使用しても良い。
【0046】
粘着層32の形成量(塗布液を塗布、乾燥した後に残った固形分量)は、0.1g/m以上2.0g/m以下であることが好ましい。
また、粘着層32には、上述した性能を損なわない範囲内で、樹脂以外の公知の添加剤を用いることが可能である。添加剤としては、例えば、無機顔料微粒子、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、粘度調整剤、離型剤、ワックス・樹脂フィラーに代表される滑り剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤等を用いることが可能である。
【0047】
接着層30を設けることにより、第一積層体100Aはいわゆるタック加工された建材用防臭シートとなる。このため、第一積層体100Aを敷設する際に、容易に下地へ貼り付け可能となり、第一積層体100Aの施工性を向上させることができる。
【0048】
(1.2)第一実施形態の効果
以上のような第一積層体100Aは、以下の効果を有する。
(1)第一積層体100Aは、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12、蒸着層13及びポリオレフィンを含む層14により臭気を透過し、室内への臭気の拡散を防止することができる。このため、第一積層体100Aは、高い防臭機能を発揮することができる。
(2)第一積層体100Aは、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12の厚さが1μm以上5μm以下である。この構成によれば、第一積層体100Aは、紙基材11の凹凸を効率的に埋めることができ、蒸着層13を均一に積層させることができる。
(3)第一積層体100Aは、蒸着層13の厚さが30nm以上100nm以下である。この構成によれば、第一積層体100Aは、カールやクラックの発生を抑制しつつ十分なガスバリア性能及び可撓性が向上する。
(4)第一積層体100Aは、ポリオレフィンを含む層14の厚さが2μm以上10μm以下である。この構成によれば、第一積層体100Aは、コストを抑えつつ蒸着層13に対する密着性を向上させつつ、バリア性を高めることができる。
(5)第一積層体100Aは、接着層30が設けられることにより、いわゆるタック加工された建材用防臭シートとなる。このため、第一積層体100Aは、容易に敷設可能となり、高い施工性を有する。
【0049】
2.第二実施形態
次に、本発明の第二実施形態に係る床用の臭気封止材について、図2を用いて説明する。
図2は、本発明の第二実施形態に係る床用の臭気封止材(第二積層体100B)の一構成例を説明するための断面図である。なお、本実施形態に係る床用の臭気封止材は、第二積層体100Bとして説明する。図2に示すように、第二積層体100Bは、第二バリア層10Bと、第二バリア層10Bに形成されたポリオレフィンを含む層14の下側の面(他方の面の一例)側に設けられたプライマー層20と、プライマー層20の第一バリア層10Aと反対側の面に設けられた接着層30とを備えている。
すなわち、第二積層体100Bは、第一バリア層10Aに代えて第二バリア層10Bを備え、紙基材11に代えてポリオレフィンを含む層14の下側の面にプライマー層20を形成する点で、第一実施形態に係る第一積層体100Aと相違する。
【0050】
以下、第二バリア層10Bについて説明する。なお、第二バリア層10B以外の各層(プライマー層20及び接着層30)については、第一積層体100Aの各層と同様の構成であるため説明を省略する。
【0051】
(2.1)床用の臭気封止材の基本構成
<第二バリア層>
第二バリア層10Bは、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有するポリオレフィンを含む層14と、蒸着層13と、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12と、紙基材11とをこの順で備える積層構造を有している。第一実施形態にかかる第一積層体100Aでは、積層体が床材と対向しない側(積層体の下側)に紙基材11を形成した。一方、第二実施形態にかかる第二積層体100Bでは、積層体が床材と対向する側(積層体の上側)に紙基材11を形成して第二バリア層10Bとすることで、高い柔軟性を備え、蒸着層13を保護しかつガスバリア性を向上させることができる。
【0052】
(2.2)第二実施形態の効果
以上のような第二積層体100Bは、第一実施形態の効果に加えて以下の効果を有する。
(6)第二積層体100Bは、積層体が床材と対向する側(積層体の上側)に紙基材11を形成する。この構成によれば、蒸着層13が紙基材11により保護され、第二バリア層10Bの防臭機能を維持しやすくなる。
【0053】
3.第三実施形態
次に、第三実施形態に係る第一積層体100Aである防臭シートを有する床材の構成例について、図3を用いて説明する。図3は、第一積層体100Aを有する第一床材200Aの構成を示す断面図である。
【0054】
第一床材200Aは、第一積層体100Aと、第一積層体100Aの表面上(すなわち第一バリア層10A)に積層された表面基材210とを備えている。第一積層体100Aは、前述した第一積層体100Aと同様の構成を有するため、説明を省略する。
表面基材210は、例えば、基材の表面に化粧シートが積層された化粧材であっても良く、また、床板もしくは畳であっても良い。第一積層体100Aと表面基材210とは貼り合わされることが好ましい。
【0055】
(3.1)床材の構成
<表面基材>
以下、表面基材210が化粧材210aである場合について説明する。
図3に示すように、化粧材210aは、第一積層体100Aの第一バリア層10A側の面上に設けられる。化粧材210aは、化粧材の基材となる化粧基材220と、化粧基材220の上面に積層された化粧シート230とを有している。化粧シート230は、絵柄模様を有する又は色彩が付与されたシート部材である。
【0056】
(化粧基材)
化粧基材220は、例えば木質系、金属系、合成樹脂系等、従来の床材における基材(層)と同様の材質を任意に採用可能である。
木質系の材質で構成された化粧基材220としては、例えば集成材が挙げられる。金属系の材質で構成された化粧基材220としては、例えばアルミニウム板が挙げられる。合成樹脂系の材質で構成された化粧基材220としては、例えば変形性、耐亀裂性、復元性等の所謂ヒンジ性に優れたポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂で形成された樹脂シートが挙げられる。
【0057】
(化粧シート)
化粧シート230は、例えば、ポリオレフィン系樹脂シートの表面側に絵柄模様層を印刷し、絵柄模様層の表面側に透明樹脂層と表面保護層とをこの順に積層する。
ポリオレフィン系樹脂シートは、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等により形成した、ポリオレフィン系樹脂のシート体である。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等が挙げられる。
【0058】
絵柄模様層は、化粧シート230に所望の絵柄による意匠性を付与する層である。絵柄の種類等は特に限定的ではないが、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。また、絵柄模様層は、絵柄模様のない単色の化粧シート230であってもよい。また、化粧シート230として、公知の化粧シートを使用しても良い。
【0059】
以上のような第一床材200Aは、例えば化粧基材220の化粧シート230とは逆側の面に緩衝層を設けていても良い。
以上のような第一積層体100Aを有する第一床材200Aは、第一床材200Aの敷設と同時に第一積層体100Aを敷設することが可能となるため好ましい。
【0060】
(3.2)第三実施形態の効果
以上のような第一床材200Aは、第一実施形態の効果に加えて以下の効果を有する。
(7)第一積層体100Aを有する第一床材200Aは、第一床材200Aの敷設と同時に第一積層体100Aを敷設することが可能となる。このため、作業工程を増やすことなく第一積層体100Aを敷設することが可能となる。
【0061】
4.第四実施形態
次に、第四実施形態に係る第二積層体100Bである防臭シートを有する床材の構成例について、図4を用いて説明する。図4は、第二積層体100Bを有する第二床材200Bの構成を示す断面図である。
【0062】
(4.1)床材の基本構成
第二床材200Bは、第二積層体100Bと、第二積層体100Bの表面上(すなわち第二バリア層10B)に積層された表面基材210とを備えている。つまり、第二床材200Bは、第一積層体100Aに代えて第二積層体100Bを備える点で、第三実施形態に係る第一床材200Aと相違する。なお、第二積層体100Bは、前述した第二積層体100Bと同様の構成を有するため、説明を省略する。
【0063】
以上のような第二床材200Bは、第一床材200Aと同様に、例えば化粧基材220の化粧シート230とは逆側の面に緩衝層を設けていても良い。
以上のような第二積層体100Bを有する第二床材200Bは、第二床材200Bの敷設と同時に第二積層体100Bを敷設することが可能となるため好ましい。
【0064】
(4.2)第四実施形態の効果
以上のような第二床材200Bは、第一実施形態及び第二実施形態の効果に加えて以下の効果を有する。
(8)第二積層体100Bを有する第二床材200Bは、第二床材200Bの敷設と同時に第二積層体100Bを敷設することが可能となる。このため、作業工程を増やすことなく第二積層体100Bを敷設することが可能となる。
【実施例
【0065】
以下、本実施形態に係る積層体について、実施例を挙げて説明する
実施例では、本実施形態に係る積層体を用いて床材を敷設した室内と、本実施形態に係る積層体を用いずに床材を敷設した室内において、臭気の評価を行った。
【0066】
(実施例1)
紙基材(クレーコート紙、紙の厚さ:28μm、クレーコート層の厚さ:5μm)のクレーコート表面上に、けん化度98%、重合度500のポリビニルアルコール樹脂を水/IPA=8/2の溶液に固形分濃度10質量%で溶解した塗液をバーコーターで塗布し、オーブンで乾燥させ、ポリビニルアルコール樹脂を含む層を形成した。ポリビニルアルコール樹脂を含む層の厚さは0.8μmとした。続いて、ポリビニルアルコール樹脂を含む層上に真空蒸着法にてAL蒸着を施し、蒸着層を形成した。蒸着層の厚さは28nmとした。その後、蒸着層上にカルボキシル基の塩を含む塗液(三井化学株式会社製、ケミパールS500)をバーコーターで塗工し、オーブンで乾燥させ、ポリオレフィンを含む層を形成した。ポリオレフィンを含む層の厚さは1.8μmとした。以上により、バリア層を形成した。
次に、紙基材の他方の面に、主剤としてウレタン樹脂/ニトロセルロース系樹脂に硬化剤としてイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂を、固形分としての塗布量が1g/m2となるようにグラビア印刷法にて塗布した。次に、2液硬化型樹脂の表面に、接着層として接着基材であるラミネートクロスの表面にアクリル樹脂を塗布、乾燥させて粘着層とした接着シート(コニシ株式会社製、WF435)を貼り付けた。最後に、2液硬化型樹脂を乾燥させることにより、紙基材と接着層との間にプライマー層を形成した。
以上により、実施例1の積層体を形成した。なお、積層体全体における紙の質量は、79質量%であった。
【0067】
(実施例2)
実施例1で形成したバリア層において、ポリオレフィンを含む層の他方の面側に、実施例1と同様の接着層及びプライマー層を形成した。これ以外は、実施例1と同様にして実施例2の積層体を形成した。積層体全体における紙の質量は、79質量%であった。
【0068】
(実施例3)
ポリビニルアルコール樹脂を含む層の厚さを1μmとした以外は、実施例1と同様にして実施例3の積層体を形成した。積層体全体における紙の質量は、78質量%であった。
【0069】
(実施例4)
ポリビニルアルコール樹脂を含む層の厚さを5μmとした以外は、実施例1と同様にして実施例4の積層体を形成した。積層体全体における紙の質量は、70質量%であった。
【0070】
(実施例5)
蒸着層の厚さを30nmとした以外は、実施例1と同様にして実施例5の積層体を形成した。積層体全体における紙の質量は、79質量%であった。
【0071】
(実施例6)
蒸着層の厚さを100nmとした以外は、実施例1と同様にして実施例6の積層体を形成した。積層体全体における紙の質量は、78質量%であった。
【0072】
(実施例7)
ポリオレフィンを含む層の厚さを2μmとした以外は、実施例1と同様にして実施例7の積層体を形成した。積層体全体における紙の質量は、78質量%であった。
【0073】
(実施例8)
ポリオレフィンを含む層の厚さを10μmとした以外は、実施例1と同様にして実施例8の積層体を形成した。積層体全体における紙の質量は、64質量%であった。
【0074】
(実施例9)
紙基材として、紙の厚さ30μm、クレーコート層の厚さ5μmのクレーコート紙を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例9の積層体を形成した。積層体全体における紙の質量は、80質量%であった。
【0075】
(実施例10)
紙基材として、紙の厚さ100μm、クレーコート層の厚さ5μmのクレーコート紙を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例10の積層体を形成した。積層体全体における紙の質量は、93質量%であった。
【0076】
(実施例11)
ポリビニルアルコール樹脂を含む層の厚さを3μm、蒸着層の厚さを50nmとした以外は、実施例1と同様にして実施例11の積層体を形成した。積層体全体における紙の質量は、74質量%であった。
【0077】
(実施例12)
ポリオレフィンを含む層の厚さを3μmとした以外は、実施例11と同様にして実施例12の積層体を形成した。積層体全体における紙の質量は、72質量%であった。
【0078】
(実施例13)
紙基材として、紙の厚さ50μm、クレーコート層の厚さ5μmのクレーコート紙を用いた。これ以外は、実施例12と同様にして実施例13の積層体を形成した。積層体全体における紙の質量は、82質量%であった。
【0079】
(実施例14)
実施例13で形成したバリア層において、ポリオレフィンを含む層の他方の面側に、実施例13と同様の接着層及びプライマー層を形成した。これ以外は、実施例13と同様にして実施例14の積層体を形成した。積層体全体における紙の質量は、82質量%であった。
【0080】
(比較例1)
基材として、厚さ50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。また、ポリビニルアルコール樹脂を含む層、蒸着層及びポリオレフィンを含む層を形成しなかった。これ以外は、実施例1と同様にして比較例1の積層体を形成した。
【0081】
(比較例2)
基材として、厚さ50μmの二軸延伸エチレン・ビニルアルコール(EVOH)フィルムを用いた。また、ポリビニルアルコール樹脂を含む層、蒸着層及びポリオレフィンを含む層を形成しなかった。これ以外は、実施例1と同様にして比較例2の積層体を形成した。
【0082】
<評価>
上述した実施例1~14、比較例1及び比較例2で得られた積層体を異なる室内において床材の下層に敷設し、それぞれの室内について次の評価を実施した。
【0083】
〔臭気抑制機能の評価〕
各室内において、複数の測定日において室内空気質の測定を行い、臭気の抑制効果を確認した。臭気抑制機能の評価では、それぞれの室内おいて、異なる測定日に第1回から第3回の室内空気質測定を行った。室内空気質測定は、各回で5時間程度行った。
室内空気質測定では、揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)、アルデヒド類、アンモニア、ギ酸及び酢酸の測定を行った。各物質は、以下の方法により分析した。
揮発性有機化合物:固相補集-加熱脱離-ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)法
アルデヒド類:DNPH捕集-溶媒抽出-高速液体クロマトグラフ(HPLC)法
アンモニア、ギ酸、酢酸:液相捕集-イオンクロマトグラフ(IC)法
上述の各分析において、以下の◎、○、△、×の4段階で評価した。
<評価基準>
◎:室内における各物質の濃度が厚生労働省室内濃度指針値以下であり、かつ各物質の濃度低減効果がより優れている場合
○:室内における各物質の濃度が厚生労働省室内濃度指針値以下であり、かつ各物質の濃度低減効果が確認できた場合
△:室内における各物質の濃度が厚生労働省室内濃度指針値以下である、又は各物質の濃度低減効果が確認できた場合
×:室内における各物質の濃度が厚生労働省室内濃度指針値を超え、かつ各物質の濃度低減効果が確認できなかった場合
【0084】
〔施工性の評価〕
各室内において実施例1~14、比較例1及び比較例2の積層体をそれぞれ床面に敷設した後、床材を敷設した。このときの実施例及び比較例の積層体の施工性を評価した。
上述の各分析において、以下の○、×の2段階で評価した。
<評価基準>
○:積層体の敷設時に、積層体を容易に敷設できた場合
×:積層体の敷設時に、積層体を容易に敷設できなかった場合
【0085】
〔環境適性の評価〕
実施例及び比較例の積層体全体における樹脂使用率の相対比較を行い、環境適性について評価した。
上述の各分析において、以下の◎、△の2段階で評価した。
<評価基準>
◎:積層体全体における樹脂使用率が低い場合
△:積層体全体における樹脂使用率が評価「◎」に対して高い場合
【0086】
〔製造コストの評価〕
実施例1~14、比較例1及び比較例2の積層体のそれぞれの製造コストを評価した。
上述の各分析において、以下の◎、○、×の3段階で評価した。
<評価基準>
◎:積層体の製造コストが評価「○」に対してより安価である場合
○:積層体の製造コストが安価な場合
×:積層体の製造コストが評価「○」に対して高価である場合
【0087】
(評価結果)
以下の表1に、臭気抑制機能、施工性、環境適性及び製造コストの評価結果を示す。
【0088】
【表1】
【0089】
表1に示すように、実施例1~14の積層体を用いた室内では、揮発性有機化合物、アルデヒド類、アンモニア、ギ酸及び酢酸の濃度が厚生労働省室内濃度指針値以下であるか、又は各物質の濃度低減効果が確認できた。一方、比較例1又は比較例2の積層体を用いた室内では、核物質の濃度が厚生労働省室内濃度指針値以下であるか、又は各物質の濃度低減効果を有することを確認することができなかった。
【0090】
また、表1に示すように、実施例1~14、比較例1及び比較例2のいずれの積層体を用いた場合でも、積層体の施工性は高いことが確認された。また、表1に示すように、実施例の積層体を用いた場合は、比較例の積層体を用いた場合よりも環境適性が高いことが確認された。さらに、実施例1~14の積層体は製造コストが安価であったのに対し、比較例2の積層体は製造コストが高価であった。
以上の評価結果から、本実施形態の積層体を床材の下層に敷設することにより、施工性を低下させることなく、臭気の拡散を抑制することが可能であり、また本実施形態の積層体は環境適性が高いことが確認された。
【0091】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0092】
10A:第一バリア層
10B:第二バリア層
11:紙基材
12:ポリビニルアルコール系樹脂を含む層
13:蒸着層
14:ポリオレフィンを含む層
20:プライマー層
30:接着層
31:接着基材
32:粘着層
100A:第一積層体
100B:第二積層体
200A:第一床材
200B:第二床材
220:化粧基材
230:化粧シート
図1
図2
図3
図4