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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】低反射部材、低反射部材付き表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20250212BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
G09F9/00 313
G02B5/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021136572
(22)【出願日】2021-08-24
(65)【公開番号】P2023031083
(43)【公開日】2023-03-08
【審査請求日】2024-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【弁理士】
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】小山 慶祐
(72)【発明者】
【氏名】與田 晋也
【審査官】武田 知晋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-45230(JP,A)
【文献】特開2014-188733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00
G02B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
平面視において前記第1基板と隣り合う第2基板と、
前記第1基板及び前記第2基板に積層された加飾層と、
前記加飾層と前記第1基板及び前記第2基板とに積層された低反射層と、を備える低反射部材であって、
前記低反射層は、当該低反射部材の表面に設けられ、
前記第1基板の屈折率は、前記第2基板の屈折率より小さい、低反射部材。
【請求項2】
前記低反射層は、前記加飾層の前記第1基板及び前記第2基板とは反対側に積層されている、請求項1に記載の低反射部材。
【請求項3】
前記加飾層の可視光透過率は、70%以下である、請求項1または2に記載の低反射部材。
【請求項4】
前記加飾層は、前記第1基板に接する第1部分と、前記第2基板に接する第2部分と、を有し、
前記第1部分の屈折率は、前記第2部分の屈折率と異なる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の低反射部材。
【請求項5】
前記加飾層は、前記第1部分及び前記第2部分を支持する基材をさらに有し、
前記第1部分の屈折率は、前記第1基板の屈折率と前記基材の屈折率との間であり、
前記第2部分の屈折率は、前記第2基板の屈折率と前記基材の屈折率との間である、請求項4に記載の低反射部材。
【請求項6】
前記加飾層は、各位置において入射した光の一部を吸収しながら他の一部を透過させる暗色層を含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の低反射部材。
【請求項7】
前記加飾層は、各位置において入射した光の少なくとも一部を透過させる絵柄層を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の低反射部材。
【請求項8】
前記加飾層は、意匠を形成する絵柄部と、前記絵柄部の非形成部である透過部と、を含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の低反射部材。
【請求項9】
当該低反射部材の可視光透過率は、10%以上70%以下である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の低反射部材。
【請求項10】
当該低反射部材のYxy表色系におけるYの値は、3%未満である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の低反射部材。
【請求項11】
当該低反射部材の各位置において、L表色系におけるaの絶対値が4未満であり且つbの絶対値が4未満である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の低反射部材。
【請求項12】
前記第2基板の一部は、前記第1基板の一部を覆うように延びている、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の低反射部材。
【請求項13】
前記第1基板と前記第2基板の間に設けられた透明接着層をさらに備え、
前記透明接着層の屈折率は、前記第1基板の屈折率と前記第2基板の屈折率との間である、請求項12に記載の低反射部材。
【請求項14】
表示面を有する表示装置と、
前記表示面に前記第1基板が対面するように配置された請求項1乃至13のいずれか一項に記載の低反射部材と、を備える、低反射部材付き表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低反射部材及び低反射部材を有する低反射部材付き表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているような低反射部材が知られている。このような低反射部材は、表示装置の表示面に対面して配置される。これにより、表示面における外部からの光の反射が外部から観察されることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-015223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表示装置の表示面を表示装置の周辺と一体的な外観とするために、低反射部材は、表示面に対面するだけでなく、表示装置の周辺も覆う。表示装置の周辺においては、他の部材の配置のために、低反射部材が複雑な形状となることがある。この場合、表示面に対面する部分と、表示装置の周辺の部分とで、低反射部材の基板を異なる材料から作製することがある。材料が異なると、屈折率も異なり得る。この屈折率の違いに起因して、低反射部材において見た目の違いが生じ得る。
【0005】
本開示は、屈折率の異なる基板を有する低反射部材において見た目の違いを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の低反射部材は、
第1基板と、
平面視において前記第1基板と隣り合う第2基板と、
前記第1基板及び前記第2基板に積層された加飾層と、
前記加飾層と前記第1基板及び前記第2基板とに積層された低反射層と、を備える低反射部材であって、
前記低反射層は、当該低反射部材の表面に設けられ、
前記第1基板の屈折率は、前記第2基板の屈折率より小さい。
【0007】
本開示の低反射部材において、前記低反射層は、前記加飾層の前記第1基板及び前記第2基板とは反対側に積層されていてもよい。
【0008】
本開示の低反射部材において、前記加飾層の可視光透過率は、70%以下であってもよい。
【0009】
本開示の低反射部材において、
前記加飾層は、前記第1基板に接する第1部分と、前記第2基板に接する第2部分と、を有し、
前記第1部分の屈折率は、前記第2部分の屈折率と異なってもよい。
【0010】
本開示の低反射部材において、
前記加飾層は、前記第1部分及び前記第2部分を支持する基材をさらに有し、
前記第1部分の屈折率は、前記第1基板の屈折率と前記基材の屈折率との間であり、
前記第2部分の屈折率は、前記第2基板の屈折率と前記基材の屈折率との間であってもよい。
【0011】
本開示の低反射部材において、前記加飾層は、各位置において入射した光の一部を吸収しながら他の一部を透過させる暗色層を含んでもよい。
【0012】
本開示の低反射部材において、前記加飾層は、各位置において入射した光の少なくとも一部を透過させる絵柄層を含んでもよい。
【0013】
本開示の低反射部材において、前記加飾層は、意匠を形成する絵柄部と、前記絵柄部の非形成部である透過部と、を含んでもよい。
【0014】
本開示の低反射部材の可視光透過率は、10%以上70%以下であってもよい。
【0015】
本開示の低反射部材のYxy表色系におけるYの値は、3%未満であってもよい。
【0016】
本開示の低反射部材の各位置において、L表色系におけるaの絶対値が4未満であり且つbの絶対値が4未満であってもよい。
【0017】
本開示の低反射部材において、前記第2基板の一部は、前記第1基板の一部を覆うように延びていてもよい。
【0018】
本開示の低反射部材は、
前記第1基板と前記第2基板の間に設けられた透明接着層をさらに備え、
前記透明接着層の屈折率は、前記第1基板の屈折率と前記第2基板の屈折率との間であってもよい。
【0019】
本開示の低反射部材付き表示装置は、
表示面を有する表示装置と、
前記表示面に前記第1基板が対面するように配置された上述したいずれかの低反射部材と、を備える。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、屈折率の異なる基板を有する低反射部材において見た目の違いを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、低反射部材付き表示装置の全体を概略的に示す分解斜視図である。
図2図2は、表示装置の一例を示す断面図である。
図3図3は、表示装置の一例を示す正面図である。
図4図4は、低反射部材付き表示装置の断面図である。
図5図5は、低反射部材付き表示装置において表示装置が画像光を出射している状態を示す図である。
図6図6は、低反射部材付き表示装置において表示装置が画像光を出射していない状態を示す図である。
図7図7は、低反射部材の一変形例を示す断面図である。
図8図8は、図7の低反射部材の拡大正面図である。
図9図9は、第1基板及び第2基板の一変形例を示す断面図である。
図10図10は、別の変形例に係る低反射部材の断面図である。
図11図11は、参考例に係る低反射部材の断面図である。
図12図12は、比較例に係る低反射部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0023】
本明細書において、「層」、「シート」及び「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されるものではない。例えば「層」という用語は、シート或いはフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0024】
本明細書において、「シート面(板面、フィルム面)」とは、対象となるシート状(板状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材(板状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
【0025】
本明細書において、「平面視」とは、対象となる部材のシート面(板面、フィルム面)の法線方向からの観察を意味する。
【0026】
本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈されるよう意図されている。
【0027】
図1は、本実施の形態の低反射部材付き表示装置1を概略的に示す分解斜視図である。図1に示されるように、低反射部材付き表示装置1は、表示装置5と、低反射部材10と、を有している。表示装置5は、画像を表示する表示面6を有している。低反射部材10は、表示装置5の表示面6に対面して配置されている。
【0028】
図示されている例では、低反射部材付き表示装置1は平板状に示されている。しかしながら、低反射部材付き表示装置1の各構成要素が湾曲することで、低反射部材付き表示装置1は、湾曲していてもよい。例えば、低反射部材10のみが湾曲していてもよいし、表示装置5の表示面6及び低反射部材10が湾曲していてもよい。
【0029】
表示装置5は、表示面6に画像を表示できる。表示装置5は、表示面6から画像光を出射できる。表示装置5は、表示面6に画像を表示した状態と、表示面6に画像を表示しない状態と、をとることができる。表示装置5としては、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の任意の表示装置を用いることができる。このような表示装置5の表示面6は、典型的にはガラス面となっている。
【0030】
あるいは、表示装置5は、光の一部を遮光物によって遮光することで明暗による画像を表示するものであってもよい。この場合、表示装置5は、図2に示すように、光を発する光源5aと、光源5aからの光の一部を遮光することで画像を形成する遮光物5bと、を含んでいる。遮光物5bは、表示する画像に対応した形状となっている。図3に示す例では、遮光物5bは、「A」の形状に対応した形状となっている。光源5aからの光が遮光物5bの設けられていない部分を透過することで、「A」の形状を表示できる。遮光物5bの非形成部が表示面6となる。光源5aとしては、遮光物5bが形成されていない部分を透過する光の強度を均一にするために、例えば面状に光を発する面光源装置が用いられることが好ましい。遮光物5bは、低反射部材10と一体的に形成されていてもよい。
【0031】
図4には、低反射部材付き表示装置1の一例の断面図が示されている。低反射部材10は、表示装置5及び表示装置5の周辺を覆うように設けられる。低反射部材10は、表示装置5及び表示装置5の周辺を外部から保護し、且つ、表示装置5と表示装置5の周辺とを一体的な外観とする。一例として、低反射部材10が自動車等の移動体のインストルメントパネルに設けられる。この場合、インストルメントパネルには、計器等の表示装置やスイッチや空調の吹き出し口等の突出部や開口部が設けられている。低反射部材10は、突出部や開口部を除いて、表示装置に対面しながら、インストルメントパネルの全体に設けられる。突出部や開口部の近傍において、低反射部材10は、複雑な形状となっている。図1に示されている例では、低反射部材10には、複数の孔が設けられた部分が存在する。
【0032】
図4に示されているように、低反射部材10は、第1基板11と、第2基板12と、低反射層15と、加飾層20と、を有している。低反射層15は、加飾層20と第1基板11及び第2基板12とに積層されている。図4に示されている例では、低反射部材10において、低反射層15と第1基板11及び第2基板12との間に、加飾層20が配置されている。言い換えると、加飾層20は、第1基板11及び第2基板12に積層されており、低反射層15は、加飾層20の第1基板11及び第2基板12とは反対側に積層されている。低反射部材10は、表示装置5の表示面6に第1基板11が対面するように配置されている。
【0033】
第1基板11は、表示装置5及び表示装置5の周辺を外部から保護する。典型的には、第1基板11は、第2基板12より大きく、低反射部材10の大部分に設けられている。図1に示されている例では、第1基板11は、低反射部材10の複数の孔が設けられている部分の近傍を除く部分に設けられている。第1基板11は、低反射層15及び加飾層20を支持する。第1基板11は、透明な板状部材である。第1基板11の屈折率は、第2基板12の屈折率より小さい。具体的には、第1基板11の屈折率は、例えば1.55以下である。第1基板11の厚さは、例えば0.5mm以上10mm以下である。第1基板11は、例えばガラスからなる。
【0034】
第2基板12は、インストルメントパネルの突出部や開口部の近傍等、低反射部材10が複雑な形状となる部分に設けられている。図1に示されている例では、第2基板12は、低反射部材10の複数の孔が設けられている部分に設けられている。第2基板12は、ガラス等からなる第1基板11では保護しにくい表示装置5の周辺の部分を外部から保護する。第2基板12は、平面視において第1基板11と隣り合っている。好ましくは、第2基板12は、平面視において第1基板11と隙間無く隣り合っている。第2基板12は、低反射層15及び加飾層20を支持する。第2基板12は、透明な板状部材である。第2基板12の屈折率は、例えば1.56以上である。第2基板12の厚さは、例えば1mm以上10mm以下である。第2基板12は、例えばポリカーボネート、アクリル、ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)等からなる。
【0035】
透明とは、分光光度計(日本分光製「V-670」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、各波長における当該部材の透過率の平均値として特定される可視光透過率が、80%以上であることを意味する。
【0036】
屈折率の値は、例えばアッベ屈折率計(例えば株式会社アタゴ社製「RX-7000α」)で測定できる。屈折率の大小関係は、例えば屈折率を比較する部材間の界面に入射する光の屈折方向や全反射条件によって、確認できる。
【0037】
低反射層15は、低反射部材10で反射した光が外部から観察されることを抑制する。低反射層15は、低反射部材10の表面に設けられている。低反射層15は、屈折率の異なる複数の層を含んでいる。屈折率の異なる層の間の界面で反射した光が互いに弱め合うように干渉することで、低反射部材10の表面で反射した光が観察されることが抑制される。低反射層15は、透明である。低反射層15の厚さは、例えば0.8nm以上1μm以下である。低反射層15は、例えばアクリルやトリアセチルセルロース(TAC)の基材上にウレタンアクリレート等の紫外線硬化樹脂を配置して紫外線を照射して樹脂を硬化させた後、アクリル系紫外線硬化型樹脂を配置して紫外線を照射して樹脂を硬化させることで形成できる。
【0038】
加飾層20は、意匠を表示する。この意匠により、加飾層20を透過する光は、その一部が加飾層20に吸収される。言い換えると、加飾層20の可視光透過率は低くなっている。具体的には、加飾層20の可視光透過率は、70%以下、好ましくは50%以下となっている。
【0039】
加飾層20が意匠を表示することで、低反射部材10に意匠性を付与できる。図4に示されている例では、加飾層20は、基材21と、絵柄層22と、暗色層23と、粘着層30と、を有している。粘着層30は、第1部分31と、第2部分32と、を有している。加飾層20は、第1部分31において第1基板11に接しており、第2部分32において第2基板12に接している。
【0040】
図4に示されている例では、低反射層15、加飾層20の基材21、絵柄層22及び暗色層23は、それぞれ、シート面に沿って全体として一体となっている。しかしながら、低反射層15、加飾層20の基材21、絵柄層22及び暗色層23は、それぞれ、第1部分31及び第2部分32に重なる位置において、分離していてもよい。言い換えると、低反射部材10は、第1低反射部材と第2低反射部材とからなるようにしてもよい。この場合、第1低反射部材は、第1低反射層と、第1基材と第1絵柄層と第1暗色層と粘着層の第1部分とを有する第1加飾層と、第1基板と、を有する。第2低反射部材は、第2低反射層と、第2基材と第2絵柄層と第2暗色層と粘着層の第2部分とを有する第2加飾層と、第2基板と、を有する。
【0041】
図4に示されている例では、加飾層20は、絵柄層22に対して暗色層23が設けられた側が表示装置5に対面する側となるように配置されている。言い換えると、表示装置5は、加飾層20の暗色層23が絵柄層22を覆う側に設けられている。しかしながら、加飾層20は、暗色層23に対して絵柄層22が設けられた側が表示装置5に対面する側となるように配置されていてもよい。言い換えると、表示装置5は、加飾層20の暗色層23が絵柄層22を覆う側とは逆側に設けられていてもよい。
【0042】
基材21は、絵柄層22及び暗色層23を適切に支持する支持体である。基材21により、加飾層20を適切な厚さにできる。基材21は、透明なフィルム状の部材である。基材21は、透明性や、絵柄層22及び暗色層23の適切な支持性等を考慮すると、10μm以上500μm以下の厚みを有していることが好ましい。基材21の屈折率は、例えば1.4以上1.6以下である。基材21は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル、トリアセチルセルロース(TAC)等からなる。
【0043】
絵柄層22は、加飾層20が表示する意匠を形成する。より詳しくは、絵柄層22の各位置において外部から入射した光の一部を反射させることで、外部から観察可能な意匠が形成される。絵柄層22は、図形、パターン、デザイン、色彩、絵、写真、キャラクター、マーク、ピクトグラム、文字や数字などの絵柄を、意匠として形成できる。
【0044】
絵柄層22は、意匠を適切に形成できるよう、種々の色の顔料や有機フィラーを含んでいる。とりわけ、絵柄層22が含む顔料は、光干渉顔料であることが好ましい。光干渉顔料としては、鱗片形状のマイカ、アルミニウム、ガラス等の基盤粒子に顔料が被覆されたものを例示できる。基盤粒子を被覆する顔料としては、酸化チタンが好ましい。光干渉顔料は、光を多重反射することで、所定の色を表現できる。
【0045】
絵柄層22は、各位置において入射した光の少なくとも一部を透過させることができる。これにより、絵柄層22は、表示装置5からの画像光を各位置において透過させることができる。絵柄層22には、入射した光の全てを透過させる部分があってもよい。すなわち、絵柄層22の一部が、透明であってもよい。
【0046】
暗色層23は、表示装置5を外部から観察されにくくする。また、暗色層23は、絵柄層22を一方の側から覆っており、絵柄層22によって形成される意匠を濃く明確にする。暗色層23は、各位置において入射した光の一部を吸収しながら他の一部を透過させる。暗色層23は、典型的には黒色顔料を含んで黒色となっている。暗色層23は、黒色顔料に代えて黒色染料を含んでいてもよいし、顔料及び染料の両方を含んでもよい。暗色層23が含む黒色顔料としては、カーボンブラックやチタンブラック、複合金属酸化物を例示でき、黒色染料としては、アゾ系ブラック染料、ニグロシンブラック染料を例示できる。また、暗色層23は、黒色顔料、黒色染料だけでなく調色顔料、調色染料を含んでもよい。例えば黒色顔料を含む暗色層23が赤みがかっている場合、暗色層23は調色顔料として青色顔料をさらに含んでもよい。あるいは、暗色層23は、イエロー、シアン、マゼンタの各色の顔料、染料を含んで黒色となっていてもよい。暗色層23に含まれる顔料は、粒径が300nm以下であることが好ましい。顔料の粒径は、暗色層23を形成する後述の塗工液に対して、例えば濃厚系粒径アナライザー(大塚電子株式会社製「FPAR-1000」)を用いることで、レーザー回折法により測定できる。
【0047】
粘着層30は、加飾層20を第1基板11及び第2基板12と接着する。粘着層30は、第1部分31と、第2部分32と、を有している。粘着層30は、いわゆるOCA(Optical Clear Adhesive)である。粘着層30の材料としては、例えば、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ゴム弾ポリマー等を挙げることができる。粘着層30は、十分な粘着性を奏し、且つ加飾層20が厚くなりすぎない程度の厚さを有している。例えば、粘着層30の厚さは、5μm以上300μm以下である。
【0048】
第1部分31は、第1基板11に接しており、第2部分32は第2基板12に接している。第1部分31の屈折率は、第2部分32の屈折率と異なる。第1部分31の屈折率は、第1基板11の屈折率と基材21の屈折率との間である。言い換えると、低反射部材10の低反射層15の側から、基材21、第1部分31、第1基板11の順に屈折率が高くなっている、または低くなっている。第2部分32の屈折率は、第2基板12の屈折率と基材21の屈折率との間である。言い換えると、低反射部材10の低反射層15の側から、基材21、第2部分32、第2基板12の順に屈折率が高くなっている、または低くなっている。第1部分31の屈折率は、例えば1.45以上1.55以下である。第2部分32の屈折率は、例えば1.5以上1.6以下である。
【0049】
図示されている例に限らず、加飾層20において、絵柄層22または暗色層23は省略されていてもよい。絵柄層22が省略される場合、加飾層20が表示する意匠は、暗色層23によって形成される暗色の意匠となる。
【0050】
図示されている例に限らず、加飾層20において、粘着層30が省略されていてもよい。この場合、暗色層23が粘着性を有しており、加飾層20を第1基板11及び第2基板12と接着する。このような暗色層23は、例えば顔料または染料を含んで黒色となったOCAである。暗色層23は、上述した粘着層30と同様に、第1部分31と第2部分32とを有する。この場合でも、第1部分31は、第1基板11に接しており、第2部分32は第2基板12に接する。
【0051】
低反射部材10の可視光透過率が低すぎると、表示装置5からの画像光が低反射部材10を適切に透過できず、画像光が観察されにくくなる。表示装置5からの画像光が適切に観察されるよう、低反射部材10の可視光透過率は、2%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。とりわけ、表示装置5が液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等である場合、画像光を適切に透過させるために、低反射部材10の可視光透過率は、30%以上であることがさらに好ましく、50%以上であることがさらにより好ましい。
【0052】
一方、低反射部材10の可視光透過率が高すぎると、外部からの光が低反射部材10の絵柄層22で十分に反射せず、加飾層20が形成する意匠を低反射部材10が適切に表示できない。意匠が適切に表示されるよう、低反射部材10の可視光透過率は、70%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。
【0053】
可視光透過率は、分光光度計(日本分光製「V-670」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。
【0054】
低反射部材10の彩度が大きい場合、低反射部材10を透過する光が意図された色から変化してしまうことがある。すなわち、表示装置5からの画像光が適切に観察されなくなることがある。画像光の色がほとんど変化することなく低反射部材10を透過するよう、低反射部材10の彩度は小さくなっていることが好ましい。具体的には、L表色系におけるaの絶対値が4以下であり且つbの絶対値が4以下であることが好ましい。
【0055】
表色系におけるL、a、bの各値は、例えば分光測色計(コニカミノルタ製「CM-700d」)を用いて、対象における正反射を含む全反射の反射率(SCI)から測定できる。
【0056】
低反射部材10のYxy表色系における視感反射率Yの値は、十分に低くなっている。具体的には、低反射部材10の視感反射率Yの値は、3%未満であることが好ましく、1.5%未満であることがより好ましい。
【0057】
視感反射率Yの値は、JIS Z8722の規定による値であり、波長550nm近辺の光に対する正反射を含む全反射の反射率(SCI)を意味する。視感反射率Yの値を測定するための装置としては、例えば、分光測色計(コニカミノルタ製「CM-700d」)が用いられ得る。
【0058】
低反射部材10の製造方法の一例について説明する。
【0059】
製造される低反射部材10が配置される部材に対応した形状の第1基板11及び第2基板12を用意する。第1基板11は、例えばガラスからなり、低反射部材10が配置される部材に対応した形状の主たる部分に設けられる。第2基板12は、例えばポリカーボネートからなり、低反射部材10が複雑な形状となる部分に設けられる。第2基板12は、例えば射出成形により、所望の形状に作製できる。これにより、第2基板12を複雑な形状にできる。第1基板11上に、粘着層30の第1部分31が設けられる。第2基板12上に、粘着層30の第2部分32が設けられる。
【0060】
基材21上に、暗色層23を形成する塗工液を塗布する。塗工液には、カーボンブラックやチタンブラック、複合金属酸化物等の黒色顔料や、アゾ系ブラック染料、ニグロシンブラック染料等の黒色染料を含んでいる。塗工液は、調色顔料、調色染料を含んでもよい。あるいは、塗工液は、イエロー、シアン、マゼンタの各色の顔料、染料を含んで黒色となっていてもよい。塗工液に含まれる顔料の粒径は、300nm以下である。塗工液は、例えば紫外線硬化樹脂からなる。塗工液に紫外線を照射すると、塗工液が硬化して、暗色層23が形成される。
【0061】
暗色層23上に、例えば印刷によって絵柄層22を設ける。絵柄層22は、所望の意匠を形成するように設けられる。絵柄層22は、各位置において入射した光の少なくとも一部を透過させることができるよう、例えば十分に薄く設けられる。
【0062】
基材21の暗色層23が設けられた側とは逆側に、粘着層30を設ける。また、絵柄層22上に、低反射層15を設ける。これにより、図4に示された低反射部材10が製造される。
【0063】
本実施の形態の低反射部材付き表示装置1及び低反射部材10の作用について説明する。
【0064】
表示装置5の表示面6に画像を表示しない状態では、図5に示すように、低反射部材付き表示装置1において、低反射部材10が意匠を表示する。表示装置5及び表示装置5の周辺に低反射部材10が表示する意匠が表示される。これにより、表示装置5と表示装置5の周辺とを一体的な外観にできる。
【0065】
一方、表示装置5が表示面6に画像を表示した状態では、図6に示すように、画像光は、低反射部材10を透過する。より詳しくは、加飾層20の絵柄層22及び暗色層23の各位置において、入射した画像光の一部を透過させる。これにより、観察者は画像を観察できる。すなわち、低反射部材付き表示装置1は、観察されることが意図された画像を表示することができ、外部の観察者は、画像を観察できる。特に、低反射部材10の各位置で画像光を透過させることができるため、低反射部材付き表示装置1は、画像を鮮明に表示できる。
【0066】
外部から低反射部材付き表示装置1に入射する光は、まず、低反射部材10の低反射層15に入射する。低反射層15の表面及び内部の界面で反射した光は、互いに弱め合う。このため、外部から低反射部材付き表示装置1に光が入射しても、低反射部材付き表示装置1で反射した光はほとんど観察されない。
【0067】
低反射部材において、ガラスからなる基板が用いられる。低反射部材は、複雑な形状の部分を含むことがある。複雑な形状に沿ってガラスからなる基板を作製することは困難である。複雑な形状の部分では、基板としてポリカーボネート等の樹脂が用いられる。樹脂からなる基板は、複雑な形状に沿って容易に作製できる。この場合、異なる材料からなる基板が平面視において隣り合う。材料が異なると、屈折率も異なり得る。この屈折率の違いに起因して、基材の材料が異なる部分の間で見た目の違いが生じ得る。
【0068】
本実施の形態の低反射部材10は、第1基板11及び第2基板12に積層された加飾層20と、加飾層20と第1基板11及び第2基板12とに積層された低反射層15と、を有している。低反射部材10の表面に設けられた低反射層15によって、低反射層15と他の部材との間の界面で反射する光が観察されにくくなる。低反射層15以外の部材に入射する光を少なくできる。このため、加飾層20と第1基板11または第2基板12との間の界面で反射する光が少なくなる。第1基板11と第2基板12との屈折率に違いがあっても、第1基板11と第2基板12との間の見た目の違いが観察されにくい。
【0069】
図4に示されている例では、低反射層15は、加飾層20の第1基板11及び第2基板12とは反対側に積層されている。低反射層15によって、低反射層15と加飾層20との間の界面で反射する光が観察されにくくなる。加飾層20に入射する光を少なくできる。このため、加飾層20と第1基板11または第2基板12との間の界面で反射する光が少なくなる。加飾層20を透過した後、加飾層20と第1基板11または第2基板12との間の界面で反射する光は、再度加飾層20を透過して、低反射部材10から出射する。すなわち、加飾層20と第1基板11または第2基板12との間の界面で反射する光は、加飾層20を2度透過する。加飾層20は、意匠を表示するために、可視光透過率が低くなっている。このため、加飾層20と第1基板11または第2基板12との間の界面で反射する光は、観察されにくい。以上のことから、第1基板11と第2基板12との屈折率に違いがあっても、第1基板11と第2基板12との間の見た目の違いが特に観察されにくい。
【0070】
加飾層20の可視光透過率は、70%以下である。図4に示されている例では、加飾層20と第1基板11または第2基板12との間の界面で反射する光は、加飾層20を2度透過することになるため、加飾層20により、50%以下にまで減少する。このため、加飾層20と第1基板11または第2基板12との間の界面で反射する光は、観察されにくい。したがって、第1基板11と第2基板12との間の見た目の違いがより観察されにくい。
【0071】
第1部分31の屈折率は、第2部分32の屈折率と異なる。加飾層20の第1基板11及び第2基板12に接する部分の屈折率が、第1基板11及び第2基板12に合わせてそれぞれ調節されている。これにより、加飾層20と第1基板11または第2基板12との間の界面での反射率を減少させることができる。特に、第1部分31の屈折率が第1基板11の屈折率と基材21の屈折率との間であり、第2部分32の屈折率が第2基板12の屈折率と基材21の屈折率との間であることで、加飾層20と第1基板11または第2基板12との間の界面での反射率を減少させることができる。この結果、加飾層20と第1基板11または第2基板12との間の界面で反射する光が、観察されにくくなる。
【0072】
低反射部材10の可視光透過率は、10%以上70%以下である。可視光透過率が十分に低いため、低反射部材10は、加飾層20による意匠を適切に表示できる。可視光透過率が十分に高いため、低反射部材10の各位置において十分に光を透過させることができるため、低反射部材10を透過する光が鮮明になる。
【0073】
低反射部材10のYxy表色系における視感反射率Yの値は、3%未満である。低反射部材10の全体での視感反射率が十分に小さいため、第1基板11に重なる位置での視感反射率と第2基板12に重なる位置での視感反射率との間に差があっても、その差が小さく、見た目の違いがほとんどない。したがって、第1基板11と第2基板12との間の見た目の違いがより観察されにくい。
【0074】
低反射部材10の各位置において、L表色系におけるaの絶対値が4以下であり且つbの絶対値が4以下である。すなわち、低反射部材10の彩度は小さくなっている。このため、低反射部材10を透過する光、特に表示装置5からの画像光が低反射部材10を介しても意図された色で観察されやすくなる。すなわち、画像光を適切に観察させることができる。
【0075】
以上のように、本実施の形態の低反射部材10は、第1基板11と、平面視において第1基板11と隣り合う第2基板12と、第1基板11及び第2基板12に積層された加飾層20と、加飾層20と第1基板11及び第2基板12とに積層された低反射層15と、を備え、低反射層15は、低反射部材10の表面に設けられ、第1基板11の屈折率は、第2基板12の屈折率より小さい。このような低反射部材10によれば、低反射層15以外の部材に入射する光を少なくなるため、加飾層20と第1基板11または第2基板12との間の界面で反射する光は、観察されにくい。このため、第1基板11と第2基板12との間の見た目の違いが観察されにくい。
【0076】
上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図を参照しながら、低反射部材10の変形例について説明する。
【0077】
図7及び図8には、加飾層20の一変形例が示されている。図7は、図4に対応する図であって、一変形例における加飾層20を有する低反射部材付き表示装置1の断面図を示している。図8は、図7の低反射部材付き表示装置1における低反射部材10の拡大正面図である。加飾層20以外の構成要素については、上述した実施の形態と同一であり、詳細な説明を省略する。
【0078】
図7に示す加飾層20は、基材21と、絵柄部26と、暗色部27と、透過部28と、粘着層30と、を有している。透過部28は、絵柄部26及び暗色部27の非形成部である。絵柄部26は、暗色部27に重なる位置に設けられている。図7に示す例では、加飾層20は、絵柄部26に対して暗色部27が設けられた側が表示装置5に対面する側となるように配置されている。しかしながら、加飾層20は、暗色部27に対して絵柄部26が設けられた側が表示装置5に対面する側となるように配置されていてもよい。図示された例に限らず、絵柄部26または暗色部27は、省略されていてもよい。基材21及び粘着層30は上述した実施の形態と同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0079】
絵柄部26は、上述した実施の形態の絵柄層22と同様に、加飾層20が表示する意匠を形成する。絵柄部26の厚さは、1μm以上20μm以下であることが好ましい。絵柄部26の厚さが十分に厚くなっていることで、絵柄部26によって形成される絵柄を濃く明確にできる。図7に示す例では、絵柄部26の断面形状は矩形となっているが、これに限らず、例えば台形形状等であってもよい。
【0080】
暗色部27は、表示装置5からの画像光が絵柄部26に入射しないよう、光を吸収する機能を有している。暗色部27は、例えば光吸収粒子をバインダー樹脂中に含み得る。光吸収粒子としては、カーボンブラックやチタンブラック等の黒色顔料を例示できる。表示装置5から出射された画像光が透過部28を透過することが暗色部27によって阻害されないよう、暗色部27は、絵柄部26に対面する位置にのみ設けられていることが好ましい。また、十分な厚さの暗色部27が絵柄部26を覆っていると、絵柄部26によって形成される絵柄を濃く明確になる。具体的な例として、暗色部27の厚さは、1μm以上20μm以下である。
【0081】
透過部28は、表示装置5からの画像光を低反射部材10に透過させるために設けられている。図8には、低反射部材10の正面図の一部が拡大して示されている。透過部28は、図7及び図8に示されているように、低反射部材10の正面からの観察における絵柄部26及び暗色部27の非形成部である。表示装置5からの画像光を十分に透過させるために、加飾層20における透過部28が占める面積の割合(開口率ともいう)は、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。一方、加飾層20が表示する意匠が観察されやすくなるよう、加飾層20における透過部28が占める面積の割合は、30%以下であることが好ましい。
【0082】
図8に示された例では、複数の透過部28が互いに離間して配置されている。各透過部28の間には、絵柄部26が形成されている。図示された例では、各透過部28は、正面視において円形となっており、複数の透過部28は、正方格子状に配置されている。各透過部28が円形となっている場合、透過部28を透過する画像光の拡散を抑制できる。また、透過部28が格子状、特に正方格子状に配置されている場合、表示装置5からの画像光を均一に透過させることができるため、画像光にムラが生じにくくなる。しかしながら、透過部28は、図示された例に限らず、任意の形状となっていてもよいし、任意の位置に配置されていてもよい。各透過部28の直径は、例えば30μm以上150μm以下である。
【0083】
透過部28は、図7に示された例のように、穴等の空隙であってもよいが、例えば透明な樹脂によって形成されてもよい。このような透明な樹脂は、透過部28に埃等の異物が混入することを効果的に防止できる。
【0084】
透過部28は、例えば、基材21上の全面に設けられた絵柄部26及び暗色部27に対して、透過部28が形成させるべき位置にレーザーを照射し、レーザーが照射された位置の絵柄部26及び暗色部27を除去することで設けることができる。
【0085】
図9には、加飾層20の第1基板11及び第2基板12の一変形例が示されている。この変形例では、第2基板12の一部は、第1基板11の一部を覆うように延びている。これにより、第2基板12の一部は、第1基板11と重なっている。第2基板12がこのような形状となっていることで、第1基板11を第2基板12に対して組み込んで、適切な位置に配置できる。
【0086】
低反射部材10は、第1基板11と第2基板12との間に設けられた透明接着層13を有している。透明接着層13は、第1基板11と第2基板12とを接着する。透明接着層13の屈折率は、第1基板11の屈折率と第2基板12の屈折率との間である。具体的には、透明接着層13の屈折率は、1.45以上1.55以下である。透明接着層13は、例えばアクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ゴム弾ポリマー等からなる。このような透明接着層13により、第2基板12が延びて第1基板11を覆っている部分において、光は、第2基板12と透明接着層13との界面と、透明接着層13と第1基板11との界面と、の2つの界面で反射される。この反射率の合計は、第1基板11と第2基板12との界面での反射率より低くなる。透明接着層13が設けられていることで、第2基板12が第1基板11を覆っている部分において、第1基板11の屈折率と第2基板12の屈折率との違いによる見た目の違いを低減できる。
【0087】
図10には、低反射部材10の別の変形例が示されている。図10に示されている例では、低反射部材10において、低反射層15と加飾層20との間に、第1基板11及び第2基板12が配置されている。言い換えると、第1基板11及び第2基板12は、加飾層20に積層されており、低反射層15は、第1基板11及び第2基板12の加飾層20とは反対側に積層されている。低反射部材10は、表示装置5の表示面6に第1基板11に積層した加飾層20が対面するように配置される。図10に示されている例では、加飾層20は、基材21と、暗色層23と、第1部分31及び第2部分32を有する粘着層30と、を有しているが、絵柄層22は省略されている。すなわち、加飾層20は、暗色層23による暗色の意匠を形成する。
【0088】
実施の形態及び各変形例を適宜組み合わせることも当然に可能である。
【実施例
【0089】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0090】
実施例1として、図4に示した上述した実施の形態の低反射部材10を用意した。実施例2として、図7に示した上述した一変形例の低反射部材10を用意した。実施例3として、図10に示した上述した一変形例の低反射部材10を用意した。参考例1として、図11に示すような第1基板111及び第2基板112に低反射層115を積層した部材110を用意した。比較例1として、図12に示すような第1基板111及び第2基板112に加飾層120を積層した部材110を用意した。各実施例、参考例及び比較例において、加飾層は、基材と、暗色層または暗色部と、第1部分及び第2部分を有する粘着層と、を有しているが、絵柄層または絵柄部は省略されている。すなわち、加飾層は、暗色の意匠を形成する。各実施例、参考例及び比較例において、加飾層の可視光透過率は50%である。
【0091】
各実施例、参考例及び比較例の部材について、第1基板に重なる位置及び第2基板に重なる位置において、Yxy表色系におけるYの値、L表色系におけるLの値、aの値及びbの値を測定した。測定は、分光測色計(コニカミノルタ製「CM-700d」を用いて正反射を含む全反射の反射率(SCI)から測定した。各実施例及び各比較例の部材について、第1基板に重なる位置と第2基板に重なる位置との間で見た目の違いが観察されるか、目視にて確認した。第1基板に重なる位置と第2基板に重なる位置との間で見た目の違いがほとんど観察されなかったものにはA、注意深く観察しなければ見た目の違いが観察されないものにはB、見た目の違いが明確に観察されたものにはCを付している。測定結果及び観察結果について、以下の表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
表1から理解されるように、実施例1,2,3及び参考例1では、第1基板に重なる位置と第2基板に重なる位置との間における、Yxy表色系におけるYの値、L表色系におけるLの値、aの値及びbの値の差がそれぞれ十分に小さくなっている。すなわち、第1基板に重なる位置と第2基板に重なる位置との間に見た目の違いが小さいことが理解される。一方、比較例1では、第1基板に重なる位置と第2基板に重なる位置との間における、Yxy表色系におけるYの値、L表色系におけるLの値、aの値及びbの値の差が比較的大きくなっている。すなわち、第1基板に重なる位置と第2基板に重なる位置との間に見た目の違いが生じてしまうと考えられる。観察結果でも、実施例1,2,3では第1基板に重なる位置と第2基板に重なる位置との間で見た目の違いが観察されなかったが、比較例1では第1基板に重なる位置と第2基板に重なる位置との間で見た目の違いが観察された。特に、比較例1の低反射部材10のYxy表色系における視感反射率Yの値が3%以上であるため、第1基板11に重なる位置での視感反射率と第2基板12に重なる位置での視感反射率との間の差に起因する見た目の違いが観察されやすいと考えられる。
【0094】
実施例1,2,3では、低反射部材が加飾層を有しており、加飾層が意匠を表示できる。この意匠により、見た目の違いを観察されにくくできる。低反射部材が設けられる部材に意匠性を付与できる。
【符号の説明】
【0095】
1 低反射部材付き表示装置
5 表示装置
6 表示面
10 低反射部材
11 第1基板
12 第2基板
13 透明接着層
15 低反射層
20 加飾層
21 基材
22 絵柄層
23 暗色層
26 絵柄部
27 暗色部
28 透過部
30 粘着層
31 第1部分
32 第2部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12