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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】車両用ドアハンドル装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 77/02 20140101AFI20250212BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20250212BHJP
   E05B 77/12 20140101ALI20250212BHJP
   E05B 81/82 20140101ALI20250212BHJP
   E05B 85/16 20140101ALI20250212BHJP
【FI】
E05B77/02
B60J5/04 H
E05B77/12
E05B81/82
E05B85/16 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021140540
(22)【出願日】2021-08-30
(65)【公開番号】P2023034348
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳留 尚希
(72)【発明者】
【氏名】金子 健一郎
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2122714(KR,B1)
【文献】特開平5-59855(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102018010031(DE,A1)
【文献】特開2004-116244(JP,A)
【文献】特開2003-269028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
B60J 5/00- 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアに配置され、前記車両用ドア内に格納される格納状態と前記車両用ドアの表面開口から露出する露出状態との間で移行可能であり、前記露出状態で前記車両用ドアのラッチを解除する開操作が許可されるドアハンドルと、
前記ドアハンドルを前記格納状態と前記露出状態との間で移行させるドアハンドルアクチュエータと、
前記ドアハンドルアクチュエータを駆動する駆動部と、
前記駆動部に接続され、前記ドアハンドルアクチュエータに駆動電力を供給するメイン電源と、
スイッチを介して前記駆動部に接続され、前記メイン電源とは異なり、前記ドアハンドルアクチュエータに駆動電力を供給可能な補助電源と、
車両の異常を検出する異常検出部と、
前記異常が検出された場合に、前記ドアハンドルが前記格納状態から前記露出状態へ移行するように前記ドアハンドルアクチュエータを制御する制御部と、
前記メイン電源が正常に前記ドアハンドルアクチュエータに駆動電力を供給できるか否かを判別するメイン電源判別部と、
前記異常が検出されかつ前記メイン電源が正常に前記ドアハンドルアクチュエータに駆動電力を供給できないと判別された場合、前記スイッチをオンすることにより、前記補助電源を前記ドアハンドルアクチュエータに接続させて前記補助電源から前記ドアハンドルアクチュエータに駆動電力を供給する補助電源起動部と、
を備える、車両用ドアハンドル装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記異常が検出されてから所定時間が経過したときに、前記ドアハンドルアクチュエータを駆動させて前記ドアハンドルを前記格納状態から前記露出状態へ移行させる、請求項1に記載された車両用ドアハンドル装置。
【請求項3】
前記異常が検出された場合に前記車両用ドアを施錠すると共に、前記所定時間が経過した場合に前記車両用ドアを解錠するロック装置を備える、請求項に記載された車両用ドアハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両用ドアハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の意匠性や空力性の向上のためのいわゆるポップアップ式の車両用のドアハンドルが普及し始めている。このドアハンドルは、車両用ドア内に格納される格納状態と車両用ドアの表面開口から露出して車外側に飛び出した露出状態との間で移行可能である。ドアハンドルは、露出状態で操作者により開操作されることにより、車両用ドアのラッチを解除することが可能である。
【0003】
例えば特許文献1に記載された車両用ドアハンドル装置においては、ドアハンドルが格納状態で車内側へ押圧操作されると、ドアハンドルが車外側へ飛び出して露出状態まで移動する。かかる露出状態で例えばドアハンドルが車外側へ引っ張り操作されると、車両用ドアのラッチが解除され、車両用ドアが開放される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-66605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ドアハンドルの格納状態では、ドアハンドルが車両用ドア内に格納されたままになり車外側へ飛び出さないので、車両の構造を知らない立場の人は、ドアハンドルを即座に発見することができず、或いは、どのようにすればドアハンドルを操作できるようになるかすなわち車両用ドアを開放できるようになるかを認識することができないことがある。このため、例えば車両が事故を起こした場合などに、救助者が車両用ドアを開放させることに手間取り、車内の乗員の救助が遅れる可能性が高くなってしまう。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、車両用ドア内に格納されるドアハンドルを車両の異常発生時に開操作可能に車外に露出させることで、車両の異常発生時にドアハンドルを発見し易くして車両用ドアを開放させ易くした車両用ドアハンドル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、車両用ドアに配置され、前記車両用ドア内に格納される格納状態と前記車両用ドアの表面開口から露出する露出状態との間で移行可能であり、前記露出状態で前記車両用ドアのラッチを解除する開操作が許可されるドアハンドルと、前記ドアハンドルを前記格納状態と前記露出状態との間で移行させるドアハンドルアクチュエータと、車両の異常を検出する異常検出部と、前記異常が検出された場合に、前記ドアハンドルが前記格納状態から前記露出状態へ移行するように前記ドアハンドルアクチュエータを制御する制御部と、を備える、車両用ドアハンドル装置である。
【0008】
この構成によれば、車両の異常が検出された場合に、ドアハンドルが格納状態から露出状態へ移行する。従って、車両用ドア内に格納されるドアハンドルを車両の異常発生時に開操作可能に車外に露出させることができ、これにより、車両の異常発生時にドアハンドルを発見し易くして車両用ドアを開放させ易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用ドアハンドル装置のブロック構成図である。
図2】実施形態の車両用ドアハンドル装置が備えるドアハンドルの格納状態での斜視図である。
図3】実施形態の車両用ドアハンドル装置が備えるドアハンドルの露出状態での斜視図である。
図4】実施形態の車両用ドアハンドル装置において実行される制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る車両用ドアハンドル装置の具体的な実施形態について説明する。
本施形態の車両用ドアハンドル装置1は、車両に搭載されており、車両用ドア2に設けられたドアハンドルを作動させる装置である。
【0011】
車両用ドア2は、車両乗員が乗降する乗降ドアであって、車体に対して開閉可能である。車両用ドア2は、車体に対して閉じた状態でロック装置3により施錠(ロック)されることが可能である。また、車両用ドア2は、ロック装置3により解錠(アンロック)された状態で車体に対して開放されることが可能である。
【0012】
ロック装置3は、例えば、車外で正規の車両使用者が携帯する携帯キーとの無線通信が成立して所定の解錠操作が行われた場合、正規の車両使用者が車外でワイヤレス通信により解錠操作を行った場合、車内ドアノブが開放操作された場合、車両事故などの後述する異常の発生から所定時間(例えば数十秒や数分)が経過した場合などに、車両用ドア2を施錠状態から解錠状態へ移行させる。また、ロック装置3は、例えば、車内ロックノブが施錠操作された場合、車両が走行し始めて所定速度(例えば20km/h)に達した場合、車外で正規の車両使用者が携帯する携帯キーとの無線通信が成立して所定の施錠操作が行われた場合、正規の車両使用者が車外でワイヤレス通信により施錠操作を行った場合、後述する車両の異常が発生した場合などに、車両用ドア2を解錠状態から施錠状態へ移行させる。
【0013】
尚、ドアハンドルが設けられる車両用ドア2は、上記の乗降ドアに代えて、リアドアであってもよいし、また、ボンネット又は給油口若しくは充電口を閉じるドア蓋などであってもよい。
【0014】
車両用ドアハンドル装置1は、図1に示す如く、ドアハンドル10と、ドアハンドルアクチュエータ20と、制御装置30と、メイン電源40と、補助電源50と、を備えている。
【0015】
ドアハンドル10は、人が車両用ドア2を開放させるときに開操作する操作部である。ドアハンドル10の開操作が行われると、車両用ドア2の車体に対するラッチ状態が解除されて車両用ドア2が開放される。ドアハンドル10は、図2及び図3に示す如く、水平方向に延びるようにハンドル状に形成されている。ドアハンドル10に対して人が行う開操作は、例えば、ドアハンドル10の後述の蓋部11を支持部12に対して車外側に所定以上の力で引っ張る操作であってもよいし、また、ドアハンドル10の蓋部11の裏側に配置されたタッチセンサなどで検知可能な接触操作や非接触操作であってもよい。
【0016】
車両用ドア2は、ドアハンドル10を収納可能な空間2aと、空間2aを車外に開口させる表面開口2bと、を有している。ドアハンドル10は、車両用ドア2に配置されている。ドアハンドル10は、車両用ドア2の表面開口2bに嵌るように取り付けられており、その表面開口2bにおいて車内側の空間2aと車外側との間で進退可能である。尚、ドアハンドル10の進退は、例えば、ドアハンドル10の全体が車内外方向に進退するものであってもよいし、或いは、ドアハンドル10の長手方向一端側を支点にしてその長手方向他端側が車内外方向に進退するものであってもよい。
【0017】
ドアハンドル10は、格納状態と露出状態との間で移行可能である。格納状態とは、ドアハンドル10が車両用ドア2内すなわち空間2aに格納される状態のことであって、具体的には、後述の蓋部11が車両用ドア2の表面開口2bを閉じて車両用ドア2の表面と面一になる状態のことである。また、露出状態とは、ドアハンドル10が車両用ドア2の表面開口2bから露出する状態のことであって、具体的には、蓋部11が車両用ドア2の表面から車外側に飛び出した状態のことである。
【0018】
ドアハンドル10の格納状態では、人は、ドアハンドル10を開操作することができず、車外から車両用ドア2を開放させることはできない。一方、ドアハンドル10の露出状態では、人は、ドアハンドル10を開操作することができ、車外から車両用ドア2を開放させることができる。
【0019】
ドアハンドル10は、蓋部11と、支持部12と、を有している。蓋部11は、ドアハンドル10の格納状態で車両用ドア2の表面開口2bを閉じる蓋である。蓋部11は、車両用ドア2の表面開口2bに合わせた形状に形成されている。支持部12は、蓋部11を支持する棒状の部位である。支持部12は、車両用ドア2に対して車内外方向に進退可能に支持されている。
【0020】
ドアハンドル10は、いわゆるポップアップ機構を有している。すなわち、ドアハンドル10は、格納状態で蓋部11が車外側から車内側へ押圧されることにより機械的に車外側へ前進して露出状態へ移行する。また、ドアハンドル10は、露出状態で蓋部11が車外側へ所定未満の力で引っ張られることにより機械的に車内側へ後退して格納状態へ移行する。
【0021】
ドアハンドルアクチュエータ20は、ドアハンドル10を上記の格納状態と上記の露出状態との間で移行させるアクチュエータである。ドアハンドルアクチュエータ20は、電力供給により作動するモータなどの電動アクチュエータである。ドアハンドルアクチュエータ20は、後に詳述する如く、制御装置30からの指令に従って電力供給されることにより、ドアハンドル10を格納状態と露出状態との間で移行させる。
【0022】
制御装置30は、ドアハンドル10が格納状態と露出状態との間で移行するのを制御する装置である。制御装置30は、マイクロコンピュータを主体に構成されている。制御装置30は、センサ類31と、異常検出部32と、制御部33と、駆動部34と、メイン電源判別部35と、補助電源起動部36と、人検出センサ37と、を有している。
【0023】
センサ類31は、車両における各種状態を示す信号を出力するセンサである。センサ類31は、例えば、車両の前後加速度に応じた信号を出力する加速度センサ、エアバッグの展開有無に応じた信号を出力するエアバッグ制御装置、車両において火災が生じたか否かに応じた信号を出力するセンサ、車両が水没したか否かに応じた信号を出力するセンサ、車内(特に車両運転者の顔)を撮影した画像データを出力する車内カメラ、メイン電源40の両端電圧に応じた信号を出力する電圧センサなどである。尚、センサ類31は、一つのセンサに限らず、複数のセンサからなるものであってよい。センサ類31の出力信号は、異常検出部32に供給される。
【0024】
異常検出部32は、車両の異常を検出する部位である。異常検出部32は、センサ類31からの信号に基づいて車両に生じる異常を検出する。尚、この車両の異常とは、車両運転者を含む車両乗員が車内から降車することが困難となり得る車両事故などの緊急状態のことであって、例えば、車両が衝突したこと、車載エアバッグが展開したこと、車両運転者の意識が無くなったこと、メイン電源40の電源電圧が規定値より低下したことなどである。異常検出部32の検出結果は、制御部33に供給されると共に、補助電源起動部36に供給される。
【0025】
制御部33は、ドアハンドルアクチュエータ20を制御する部位である。制御部33は、ロック装置3による車両用ドア2の施錠や解錠及び異常検出部32の検出結果などに基づいてドアハンドルアクチュエータ20を制御する。特に、制御部33は、異常検出部32により車両の異常が検出された場合に、ドアハンドル10が格納状態から露出状態へ移行するようにドアハンドルアクチュエータ20を制御する。
【0026】
駆動部34は、ドアハンドルアクチュエータ20を駆動する部位である。制御部33は、ドアハンドルアクチュエータ20を制御するために駆動部34に対して駆動信号を供給する。駆動部34は、制御部33からの駆動信号に従ってドアハンドルアクチュエータ20を駆動する。
【0027】
メイン電源40は、ドアハンドルアクチュエータ20に駆動電力を供給する電源である。メイン電源40は、車両に搭載された主バッテリなどであって、ドアハンドルアクチュエータ20以外のランプ類などに電力供給することが可能である。メイン電源40は、駆動部34に接続されている。ドアハンドルアクチュエータ20は、駆動部34を通じてメイン電源40から供給される電力により駆動される。
【0028】
補助電源50は、ドアハンドルアクチュエータ20に駆動電力を供給する電源である。尚、補助電源50は、ドアハンドルアクチュエータ20によるドアハンドル10の格納状態から露出状態への移行を少なくとも一回行うことが可能な容量を有していればよい。補助電源50は、例えば、小型のリチウムイオン電池やニッケル水素電池,全固体電池,キャパシタ,マンガン電池などである。
【0029】
補助電源50は、スイッチ51を介して駆動部34に接続されている。スイッチ51は、補助電源50からドアハンドルアクチュエータ20への駆動電力の供給を実行すべき条件が成立するか否かに応じてオン/オフされる。補助電源50は、その条件成立によりスイッチ51がオンした場合に、ドアハンドルアクチュエータ20に駆動電力を供給する。ドアハンドルアクチュエータ20は、上記の条件成立下で補助電源50から供給される電力により駆動される。
【0030】
メイン電源判別部35は、メイン電源40が正常にドアハンドルアクチュエータ20に駆動電力を供給できるか否かを判別する部位である。メイン電源判別部35は、例えばメイン電源40の電源電圧が所定の規定値よりも低下しているか否かやメイン電源40の系統が断線しているか否かなどに基づいて、メイン電源40の正常如何を判別する。メイン電源判別部35の判別結果は、補助電源起動部36に供給される。
【0031】
補助電源起動部36は、補助電源50をドアハンドルアクチュエータ20に電気的に接続させて補助電源50からドアハンドルアクチュエータ20に駆動電力を供給する部位である。補助電源起動部36は、異常検出部32の検出結果及びメイン電源判別部35の判別結果に基づいてスイッチ51のオン/オフを制御する。具体的には、補助電源起動部36は、異常検出部32により車両の異常が検出されかつメイン電源判別部35によりメイン電源40が正常にドアハンドルアクチュエータ20に駆動電力を供給できないと判別された場合に、補助電源50からドアハンドルアクチュエータ20への通電が実行されるようにスイッチ51をオンする。
【0032】
人検出センサ37は、車両の周囲に人が居るか否かに応じた信号を出力するセンサである。人検出センサ37は、例えば、車外を撮影した画像データを出力する車外カメラなどである。人検出センサ37は、車両用ドア2の近傍に配置されており、特に車両用ドア2に近接している人を検出するために設けられている。人検出センサ37の出力信号は、制御部33に供給される。制御部33は、人検出センサ37からの信号に基づいて、後述の如く、ドアハンドルアクチュエータ20を制御する。
【0033】
以下、車両用ドアハンドル装置1の動作について説明する。
まず、車両用ドアハンドル装置1の通常動作について説明する。
車両用ドア2が車体に対して閉じられかつ施錠状態にあるときは、通常、ドアハンドル10は格納状態にある。車両用ドア2の施錠状態は、車内の乗車が居なければ、車外で正規の解錠操作が行われるまで維持される。この施錠状態では、人がドアハンドル10の蓋部11を車外側から車内側へ押圧すると、ドアハンドル10がポップアップ機構により露出状態へ移行する。しかし、正規の解錠操作が行われていないときは、車両用ドア2はロック装置3により施錠状態に維持されているので、ドアハンドル10が露出状態で開操作されても、車両用ドア2は開放されない。従って、正規の車両使用者以外の人によってドアハンドル10が露出状態へ移行しても、車両用ドア2が開放されるのは防止される。また、上記の施錠状態では、人がドアハンドル10の蓋部11を車外側へ引っ張ると、ドアハンドル10が格納状態へ戻る。
【0034】
一方、上記の施錠状態において、正規の車両使用者が携帯キーを所持して車外で解錠操作を行うと、ロック装置3が車両用ドア2を解錠すると共に、制御部33がドアハンドル10を格納状態から露出状態へ移行させるようにドアハンドルアクチュエータ20を制御する。かかる処理が行われると、ドアハンドル10が露出状態になる。そして、そのドアハンドル10が開操作されると、車両用ドア2のラッチ状態が解除されて車両用ドア2が開放される。尚、この場合におけるロック装置3による車両用ドア2の解錠は、ドアハンドル10が露出状態への移行後に開操作されたときに、ラッチ状態の解除実行前に実施されることとしてもよい。
【0035】
従って、車両用ドア2が車体に対して閉じられかつ施錠状態にあるときは、正規の車両使用者による解錠操作により車両用ドア2が解錠された際に、ドアハンドル10が格納状態から露出状態へ移行する。このため、正規の車両使用者は、車両に乗車する直前にドアハンドル10を開操作して車両用ドア2を開放することができる。
【0036】
次に、車両用ドアハンドル装置1の緊急動作について説明する。
ドアハンドル10の格納状態では、ドアハンドル10が車両用ドア2内に格納されて車両用ドア2の表面と面一になっており、車外側に飛び出していない。このため、例えば車両事故などの車両異常が生じた場合に、救助者がドアハンドル10を即座に発見することができず、或いは、どのようにすればドアハンドル10を開操作して車両用ドアを開放できるようになるかを認識することができないことがある。
【0037】
そこで、本実施形態では、車両の異常発生時に、ドアハンドル10を開操作可能に露出状態にすることで、ドアハンドル10を発見し易くして車両用ドア2を開放させ易くした。
【0038】
すなわち、制御装置30において、センサ類31は、車両における各種状態を示す信号を出力する。異常検出部32は、センサ類31からの信号に基づいて車両の異常を検出する。具体的には、制御装置30は、異常検出部32にて、エアバッグが展開したか否かを判別すると共に(図4に示すルーチン中のステップS100)、車両運転者が意識無しなどの危険な状態にあるか否かを判別する(ステップS110)。
【0039】
ステップS100においてエアバッグが展開したと判別された場合又はステップS110において車両運転者が危険な状態にあると判別された場合、次に、制御装置30は、メイン電源判別部35にてメイン電源40が正常にドアハンドルアクチュエータ20に駆動電力を供給することができるか否かを判別する(ステップS120)。
【0040】
ステップS120においてメイン電源40が正常にドアハンドルアクチュエータ20に駆動電力を供給することができると判別された場合は、次に、制御装置30は、人検出センサ37を用いて車両の周囲に人が居るか否かを判別する(ステップS130)。一方、ステップS120においてメイン電源40が正常にドアハンドルアクチュエータ20に駆動電力を供給することができないと判別された場合は、次に、制御装置30は、補助電源起動部36にて補助電源50からドアハンドルアクチュエータ20への通電が実行されるようにスイッチ51をオンする(ステップS140)。
【0041】
そして、ステップS130において車両周囲に人が居ることが検出された場合又はステップS140においてスイッチ51がオンされた場合は、次に、制御装置30は、異常検出部32による車両の異常が検出されてから所定時間が経過したか否かを判別する(ステップS150)。尚、上記の所定時間は、車両の異常発生直後にロック装置3が車両用ドア2を施錠状態から解錠状態へ移行させないため或いはドアハンドルアクチュエータ20がドアハンドル10を格納状態から露出状態へ移行させないための期間であり、例えば数十秒や数分などに設定されている。
【0042】
ステップS150において車両異常の発生から所定時間が経過したと判別された場合は、次に、ロック装置3が車両用ドア2を解錠する(ステップS160)と共に、制御部33がドアハンドル10を格納状態から露出状態へ移行させるようにドアハンドルアクチュエータ20を制御する(ステップS170)。
【0043】
このように、車両用ドアハンドル装置1においては、エアバッグ展開や車両運転者の意識無しなどの車両に異常が発生した場合に、車両用ドア2を解錠すると共に、ドアハンドル10を格納状態から露出状態へ移行させることができる。
【0044】
ドアハンドル10が露出状態にあれば、ドアハンドル10が格納状態にあるときに比べて、ドアハンドル10の構造を知らない人でも、ドアハンドル10を発見し易くなる。また、ドアハンドル10を格納状態から露出状態へ移行させるうえで、車外の人がドアハンドル10を車内側へ押圧操作することは不要である。このため、格納状態のドアハンドル10をどのように操作すれば露出状態に移行させることができるかを認識できない人でも、ドアハンドル10の車内側への押圧操作を伴うことなく露出状態になったドアハンドル10を視認することができる。
【0045】
そして、車両用ドア2が解錠されてドアハンドル10が露出状態にあれば、車外の人に車両用ドア2の開操作の仕方が判り易くなり、車外の人に車両用ドア2の表面から車外側に飛び出したドアハンドル10の開操作が促され、その開操作により車両用ドア2のラッチ状態が解除されて車両用ドア2が開放されることとなる。このため、車両用ドア2を開放させ易くすることができる。
【0046】
従って、車両用ドアハンドル装置1によれば、車両用ドア2内に格納されるドアハンドル10を車両の異常発生時に開操作可能に車外に露出させることができ、これにより、車両の異常発生時に人にドアハンドル10を発見させ易くして車両用ドア2を開放させ易くすることができる。この点、車両運転者を含む車両乗員が意識を無くして外部からの救助が必要なときに、救助者がドアハンドル10を発見し易くなり車両用ドア2を開放し易くなるので、救助者が車両に到達してから車両乗員を救助するまでの時間を短縮することができる。
【0047】
尚、上記の如くドアハンドル10が車両の異常発生時に開操作可能に車外に露出された際には、そのドアハンドル10の状態を人に認識させ易くするため、照明を点灯させてそのドアハンドル10を視覚的に目立たせ、或いは、スピーカなどから音声出力させてそのドアハンドル10の状態を聴覚的に認知させることとしてもよい。
【0048】
また、車両用ドアハンドル装置1においては、車両の異常が発生した際、メイン電源40が正常にドアハンドルアクチュエータ20に駆動電力を供給できるときは、そのメイン電源40からドアハンドルアクチュエータ20に駆動電力が供給されて、ドアハンドル10が格納状態から露出状態に移行する。一方、車両の異常が発生した際、メイン電源40が正常にドアハンドルアクチュエータ20に駆動電力を供給できないときは、補助電源50がドアハンドルアクチュエータ20に接続されてその補助電源50からドアハンドルアクチュエータ20に駆動電力が供給されて、ドアハンドル10が格納状態から露出状態に移行する。
【0049】
このため、例えば車両事故などでメイン電源40が故障し或いはメイン電源40の系統に断線が生じた場合にも、補助電源50を用いてドアハンドルアクチュエータ20を駆動することができ、これにより、ドアハンドル10の格納状態から露出状態への移行を確保して、車両用ドア2の開放を確保することができる。
【0050】
また、車両の異常が発生した際、メイン電源40が正常にドアハンドルアクチュエータ20に駆動電力を供給できるときは、車両周囲に人が居ることが検出された後に、そのメイン電源40からドアハンドルアクチュエータ20に駆動電力が供給されて、ドアハンドル10が格納状態から露出状態に移行する。かかる構成においては、車両の異常が発生した際、メイン電源40が正常にドアハンドルアクチュエータ20に駆動電力を供給できても、車両周囲に人が居ることが検出されるまでは、ドアハンドル10が格納状態に維持される。
【0051】
従って、車両の異常発生後、メイン電源40が正常であれば、車両周囲に人が居ないときにドアハンドル10が露出状態に移行するのを防止することができるので、ドアハンドル10の格納状態から露出状態への移行を、車外の人が開操作できる必要なタイミングでのみ実現することができる。
【0052】
尚、メイン電源40が正常にドアハンドルアクチュエータ20に駆動電力を供給できないときは、そのメイン電源40の故障などに起因して人検出センサ37が正常に作動しないおそれがある。そこで、車両の異常が発生した際、メイン電源40が正常にドアハンドルアクチュエータ20に駆動電力を供給できないときは、車両周囲に人が居ることが検出されるか否かに関係なく、補助電源50からドアハンドルアクチュエータ20に駆動電力が供給されて、ドアハンドル10が格納状態から露出状態に移行する。
【0053】
従って、車両の異常が発生した際、メイン電源40が正常にドアハンドルアクチュエータ20に駆動電力を供給できないときは、直ちに補助電源50を用いてドアハンドル10が格納状態から露出状態に移行するので、人検出センサ37が正常に作動しないことに伴ってドアハンドル10を格納状態から露出状態へ移行させることができない事態が生じるのを回避することができる。
【0054】
また、車両の異常が発生しても、その異常発生から所定時間が経過するまでは、車両用ドア2がロックされかつドアハンドル10が格納状態に維持され、その経過後に車両用ドア2がアンロックされかつドアハンドル10が格納状態から露出状態へ移行する。従って、車両の異常発生直後に車両用ドア2がアンロックされかつドアハンドル10が露出状態になるのを回避することができるので、例えば走行中の車両が衝突した場合などの異常発生直後にその衝突に起因して車両用ドア2が不意に開放され易くなるのを防止することができる。
【0055】
尚、車両の異常が発生した後、所定時間が経過する前であっても、人が車両用ドア2をアンロックさせることができるように、ドアハンドル10などに、人が操作可能な車両用ドア2をアンロックさせるための緊急解除ボタンなどを設置することとしてもよい。
【0056】
ところで、上記の実施形態においては、ドアハンドル10の格納状態は、ドアハンドル10が車両用ドア2内に格納されつつそのドアハンドル10の蓋部11が車両用ドア2の表面開口2bを閉じて車両用ドア2の表面と面一になる状態のことである。また、ドアハンドル10の露出状態は、蓋部11が車両用ドア2の表面から車外側に飛び出してドアハンドル10が車両用ドア2の表面開口2bから露出する状態のことである。
【0057】
しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、ドアハンドル10の格納状態は、人が開操作できないようにドアハンドル10が車両用ドア2内に格納される状態であり、ドアハンドル10の露出状態は、人が開操作できるようにドアハンドル10が車両用ドア2の表面開口2bから露出する状態であればよい。例えば、車両用ドア2の表面開口2bよりも奥側にドアハンドル10を固定配置したうえで、その表面開口2bを開閉できるリッドを設け、リッドがその表面開口2bを閉じている状態をドアハンドル10の格納状態とし、リッドがその表面開口2bを開放している状態をドアハンドル10の露出状態とすることとしてもよい。
【0058】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1:車両用ドアハンドル装置、2:車両用ドア、3:ロック装置、10:ドアハンドル、20:ドアハンドルアクチュエータ、30:制御装置、31:センサ類、32:異常検出部、33:制御部、34:駆動部、35:メイン電源判別部、36:補助電源起動部、40:メイン電源、50:補助電源。
図1
図2
図3
図4