(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/16 20060101AFI20250212BHJP
【FI】
B60N2/16
(21)【出願番号】P 2021153483
(22)【出願日】2021-09-21
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】豊島 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隼平
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 亜紀子
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-278509(JP,A)
【文献】特開2019-156390(JP,A)
【文献】特開2008-087554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、
前記シートクッションを支持するクッションフレームと、
前記シートクッションの少なくとも一部を昇降させるように構成された昇降装置と、
を備え、
前記昇降装置は、
動力源と、
前記動力源によって回転されるピニオンギアと、
前記ピニオンギアと噛み合ったセクタギアと、
前記クッションフレームに連結され、前記セクタギアと共に前記クッションフレームに対して回転するリンクと、
前記クッションフレームに取り付けられたゴム部材と、
を有し、
前記リンクは、前記セクタギアの回転によって、前記シートクッションの位置が最も低くなる第1位置と、前記シートクッションの位置が最も高くなる第2位置との間で変位するように構成され、
前記ゴム部材は、前記リンクが前記第1位置、前記第2位置、及び前記第1位置と前記第2位置との間の領域のいずれかに存在するときに、前記セクタギアに対し、前記セクタギアの回転軸と交差する方向に圧接され
るとともに、前記セクタギアの回転軸と一致しない揺動軸を中心とする円弧に沿って、前記セクタギアに対して相対的に移動する、乗物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物用シートであって、
前記ゴム部材は、少なくとも前記リンクが前記第2位置に存在するときに、前記セクタギアに圧接される、乗物用シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の乗物用シートであって、
前記ゴム部材は、前記リンクが前記第1位置に存在するときに、前記セクタギアから離れる、乗物用シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の乗物用シートであって、
前記セクタギアは、前記ゴム部材が内部に配置された開口を有し、
前記ゴム部材は、前記開口の内面に圧接される、乗物用シート。
【請求項5】
請求項4に記載の乗物用シートであって、
前記ゴム部材は、前記開口の内面のうち、前記ゴム部材よりも前記セクタギアの回転軸から離れた領域に圧接される、乗物用シート。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の乗物用シートであって、
前記昇降装置は、
前記クッションフレームと共に前記セクタギアを挟むブラケットと、
前記ブラケットを前記クッションフレームに固定するボルトと、
をさらに有し、
前記ボルトは、前記開口内に配置され、
前記ゴム部材は、前記ボルトに支持される、乗物用シート。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の乗物用シートであって、
前記ゴム部材は、円筒形状であり、前記セクタギアとの摺動によって回転するように構成される、乗物用シート。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の乗物用シートであって、
前記昇降装置は、前記ゴム部材を支持する支持部材を更に有し、
前記ゴム部材は、前記支持部材を介して前記クッションフレームに取り付けられる、乗物用シート。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の乗物用シートであって、
前記ゴム部材は、前記リンクが前記第2位置に近づくに連れて、前記ゴム部材から前記セクタギアへ加わる圧力が大きくなるように構成される、乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に設置されるシートには、例えばリフタ装置のようなクッションフレームを上下に移動させる昇降装置が設けられる。昇降装置は、アクチュエータ等の動力源によって回転されるピニオンギアと、ピニオンギアと噛み合ったセクタギアと、セクタギアと共に回転するリンクとを有する。このリンクの回転によって、リンクが連結されたクッションフレームが昇降する。
【0003】
このような昇降装置において、外部からの入力に対して、ピニオンギアとセクタギアとの噛み合いを維持する構造が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ピニオンギアとセクタギアとの間には、一定のバックラッシが存在する。上述の昇降装置では、ピニオンギアとセクタギアとの噛み合いは維持されるが、バックラッシは低減されない。そのため、ピニオンギアとセクタギアとの間のバックラッシによって、シートクッションにガタツキが生じるおそれがある。
【0006】
本開示の一局面は、昇降装置が設けられたシートクッションのガタツキを抑制できる乗物用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、シートクッション(2)と、シートクッション(2)を支持するクッションフレーム(4)と、シートクッション(2)の少なくとも一部を昇降させるように構成された昇降装置(5)と、を備える乗物用シート(1)である。
【0008】
昇降装置(5)は、動力源(53)と、動力源(53)によって回転されるピニオンギア(541)と、ピニオンギア(541)と噛み合ったセクタギア(542)と、クッションフレーム(4)に連結され、セクタギア(542)と共にクッションフレーム(4)に対して回転するリンク(543)と、クッションフレーム(4)に取り付けられたゴム部材(545)と、を有する。
【0009】
リンク(543)は、セクタギア(542)の回転によって、シートクッション(2)の位置が最も低くなる第1位置と、シートクッション(2)の位置が最も高くなる第2位置との間で変位するように構成される。ゴム部材(545)は、リンク(543)が第1位置、第2位置、及び第1位置と第2位置との間の領域のいずれかに存在するときに、セクタギア(542)に対しセクタギア(542)の回転軸と交差する方向に圧接される。
【0010】
このような構成によれば、ゴム部材(545)がセクタギア(542)に圧接されることで、セクタギア(542)及びリンク(543)における回転軸と交差する方向の変位が抑制される。その結果、シートクッション(2)のガタツキが抑制される。
【0011】
本開示の一態様では、ゴム部材(545)は、少なくともリンク(543)が第2位置に存在するときに、セクタギア(542)に圧接されてもよい。このような構成によれば、リンク(543)の振れ幅が最も大きくなる第2位置においてリンク(543)の変位を抑制できる。その結果、シートクッション(2)のガタツキを効果的に抑制できる。
【0012】
本開示の一態様では、ゴム部材(545)は、リンク(543)が第1位置に存在するときに、セクタギア(542)から離れてもよい。このような構成によれば、リンク(543)の振れ幅が小さい第1位置においてセクタギア(542)の回転抵抗を低減できる。その結果、シートクッション(2)の上昇が円滑に行える。また、セクタギア(542)と干渉することなくゴム部材(545)を組み付けることができる。
【0013】
本開示の一態様では、セクタギア(542)は、ゴム部材(545)が内部に配置された開口(542C)を有してもよい。ゴム部材(545)は、開口(542C)の内面に圧接されてもよい。このような構成によれば、クッションフレーム(4)におけるゴム部材(545)の配置場所の自由度を高めることができる。
【0014】
本開示の一態様では、ゴム部材(545)は、開口(542C)の内面のうち、ゴム部材(545)よりもセクタギア(542)の回転軸から離れた領域に圧接されてもよい。このような構成によれば、開口(542C)のうち発生するモーメントが大きい部分にゴム部材(545)が圧接されるため、ガタツキの抑制効果を促進できる。
【0015】
本開示の一態様では、昇降装置(5)は、クッションフレーム(4)と共にセクタギア(542)を挟むブラケット(547)と、ブラケット(547)をクッションフレーム(4)に固定するボルト(548A)と、をさらに有してもよい。ボルト(548A)は、開口(542C)内に配置されてもよい。ゴム部材(545)は、ボルト(548A)に支持されてもよい。このような構成によれば、ブラケット(547)により、セクタギア(542)を保護することができる。また、ボルト(548A)がゴム部材(545)を支持することで、昇降装置(5)の省スペース化を図ることができる。
【0016】
本開示の一態様では、ゴム部材(545)は、円筒形状であり、セクタギア(542)との摺動によって回転するように構成されてもよい。このような構成によれば、ゴム部材(545)とセクタギア(542)との接触面が変化するため、ゴム部材(545)の耐久性を向上できる。
【0017】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態における乗物用シートの模式的な斜視図である。
【
図2】
図2A及び
図2Bは、
図1の乗物用シートにおけるクッションフレーム及び昇降装置の模式的な斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2Aの昇降装置における第1リンク機構の模式的な分解斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3の第1リンク機構におけるセクタギアに対するゴム部材の相対的な軌跡を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す乗物用シート1は、シートクッション2と、シートバック3と、クッションフレーム4と、昇降装置5とを備える。
【0020】
本実施形態の乗物用シート1は、乗用車の座席シートとして使用される。なお、以下の説明及び各図面における方向は、乗物用シート1を乗物(つまり乗用車)に組み付けた状態における方向を意味する。また、本実施形態では、シート幅方向は、乗物の左右方向に一致し、シート前方は、乗物の前方に一致する。
【0021】
シートクッション2は、着席者の臀部等を支持するための部位である。シートバック3は、着席者の背部を支持するための部位である。クッションフレーム4は、シートクッション2を支持している。
【0022】
<クッションフレーム>
クッションフレーム4は、第1サイドフレーム41と、第2サイドフレーム42と、フレームロッド43と、フロントパネル44とを有する。
【0023】
第1サイドフレーム41及び第2サイドフレーム42は、それぞれ、シート前後方向に延伸すると共に、シート幅方向に互いに離れて配置されたパネル状の部材である。第1サイドフレーム41は、第2サイドフレーム42の左側に配置されている。
【0024】
フレームロッド43は、第1サイドフレーム41の後端部と第2サイドフレーム42の後端部とをシート幅方向に連結している。フロントパネル44は、第1サイドフレーム41の前端部と第2サイドフレーム42の前端部とに跨るように配置されている。
【0025】
<昇降装置>
昇降装置5は、クッションフレーム4を上下に移動させることで、シートクッション2の全体を昇降させるように構成されたリフタである。
【0026】
昇降装置5は、シートクッション2及びクッションフレーム4を、
図2Aに示す最下位置と、
図2Bに示す最上位置との間で変位させる。昇降装置5は、第1レッグ51と、第2レッグ52と、動力源53(
図1参照)と、第1リンク機構54と、第2リンク機構55と、第3リンク機構56と、第4リンク機構57と、第1連結ロッド58と、第2連結ロッド59とを有する。
【0027】
(レッグ)
第1レッグ51及び第2レッグ52は、クッションフレーム4の下方に配置され、それぞれ車両に固定されている。第1レッグ51及び第2レッグ52は、シート幅方向に互いに離れて配置されている。第1レッグ51は、第2レッグ52の左側に配置されている。
【0028】
(動力源)
動力源53は、第1リンク機構54を駆動させる動力を発生する装置である。動力源53は、第1サイドフレーム41に取り付けられており、第1サイドフレーム41と共に上下に移動する。動力源53としては、電動式、油圧式又は空気圧式のアクチュエータが使用できる。
【0029】
(第1リンク機構)
第1リンク機構54は、第1サイドフレーム41と第1レッグ51とを連結している。
図3に示すように、第1リンク機構54は、ピニオンギア541と、セクタギア542と、リンク543と、連結部544と、ゴム部材545と、スポイラ546と、ブラケット547と、第1ボルト548Aと、第2ボルト548Bと、第3ボルト548Cと、第4ボルト548Dと、第1ナット549Aと、第2ナット549Bと、第3ナット549Cと、第4ナット549Dとを有する。
【0030】
(ピニオンギア)
ピニオンギア541は、動力源53に駆動連結されており、動力源53によって回転される。ピニオンギア541の回転軸は、シート幅方向と平行である。
【0031】
ピニオンギア541は、第1サイドフレーム41に回転可能に取り付けられている。具体的には、ピニオンギア541は、第1サイドフレーム41よりもシート幅方向内側(つまり右側)に配置されている。ピニオンギア541は、第1サイドフレーム41に対して移動しない。
【0032】
(セクタギア)
セクタギア542は、ピニオンギア541と噛み合っている。セクタギア542は、ピニオンギア541の回転(つまりピニオンギア541から伝達される動力)により、上下方向に回転(つまり揺動)する。ピニオンギア541とセクタギア542との間には、一定のバックラッシが設けられる。
【0033】
セクタギア542は、本体542Aと、ギア歯542Bと、開口542Cとを有する。本体542Aには、連結部544が挿通及び固定されている。ギア歯542Bは、本体542Aの外周面に設けられ、ピニオンギア541にシート後方から係合している。開口542Cは、本体542Aにおける連結部544の固定部分と、ギア歯542Bとの間に設けられている。
【0034】
セクタギア542は、連結部544を介して第1サイドフレーム41に回転可能に取り付けられている。セクタギア542は、第1サイドフレーム41よりもシート幅方向内側に位置する。セクタギア542の回転軸は、ピニオンギア541の回転軸と平行である。
【0035】
(リンク)
リンク543は、セクタギア542と共にクッションフレーム4(つまり第1サイドフレーム41)に対して回転する帯板状の部材である。
【0036】
リンク543の一方の端部には、連結部544が固定されている。リンク543は、連結部544を介して第1サイドフレーム41に連結されると共に、連結部544によりセクタギア542と一体化されている。リンク543は、第1サイドフレーム41よりもシート幅方向外側に位置する。
【0037】
リンク543の他方の端部は、第4ボルト548D及び第4ナット549Dによって、第1レッグ51に回転可能に取り付けられている。リンク543は、セクタギア542の回転に伴って、第4ボルト548Dを中心に回転する。リンク543の回転軸は、シート幅方向と平行である。
【0038】
具体的には、セクタギア542が上方に回転すると、リンク543は、連結部544を上方に移動させながら立ち上がるように回転する。これにより、クッションフレーム4が上昇する。一方、セクタギア542が下方に回転すると、リンク543は、連結部544を下方に移動させながら倒れるように回転する。これにより、クッションフレーム4が下降する。
【0039】
リンク543は、セクタギア542の回転によって、シートクッション2の位置が最も低くなる第1位置(
図1参照)と、シートクッション2の位置が最も高くなる第2位置(
図2B参照)との間で変位するように構成されている。第2位置にあるリンク543の中心軸の水平方向に対する角度は、第1位置にあるリンク543の中心軸の水平方向に対する角度よりも大きい。
【0040】
(連結部)
連結部544は、セクタギア542とリンク543とをシート幅方向に連結するパイプ状の部材である。連結部544は、第1サイドフレーム41をシート幅方向に貫通している。連結部544のシート幅方向内側の端部は、第1連結ロッド58(
図2A参照)に固定されている。
【0041】
(ゴム部材及びスポイラ)
ゴム部材545は、セクタギア542に回転抵抗を付すための部材である。ゴム部材545は、第1サイドフレーム41に取り付けられ、セクタギア542の開口542Cの内部に配置されている。ゴム部材545は、第1サイドフレーム41に対して移動しない。
【0042】
ゴム部材545は、円筒形状のローラである。ゴム部材545は、少なくとも径方向に弾性変形可能である。ゴム部材545は、セクタギア542の位置に応じて、開口542Cの内面に圧接される。
【0043】
スポイラ546は、ゴム部材545に挿通された軸受けである。スポイラ546の中心部には、第1ボルト548Aが挿通されている。スポイラ546は、第1ボルト548Aに対し回転可能である。つまり、ゴム部材545は、スポイラ546を介して第1ボルト548Aに支持されると共に、第1ボルト548Aを中心に回転する。
【0044】
図4に、セクタギア542の回転時におけるセクタギア542に対するゴム部材545の相対的な位置の変化を示す。
図4には、セクタギア542が回転する際に、ゴム部材545がセクタギア542に対して形成する軌跡Tが示されている。
【0045】
クッションフレーム4が最下位置にあるとき(つまりリンク543が第1位置にあるとき)、ゴム部材545は、軌跡Tにおける第1位置L1に位置する。第1位置L1は、軌跡Tのうち、開口542C内で最も上方の位置である。
【0046】
ゴム部材545が第1位置L1にある状態から、セクタギア542がクッションフレーム4を上昇させる方向に回転すると、ゴム部材545は、軌跡Tにおける第2位置L2に向かって相対的に移動する。第2位置L2は、軌跡Tのうち、開口542C内で最も下方の位置である。
【0047】
逆に、ゴム部材545が第2位置L2にある状態から、セクタギア542がクッションフレーム4を下降させる方向に回転すると、ゴム部材545は、軌跡Tにおける第1位置L1に向かって相対的に移動する。
【0048】
ゴム部材545は、第1位置L1から離れた第3位置L3から第2位置L2までの範囲にわたって、セクタギア542に対し、セクタギア542の回転軸と直交する方向(つまりシート前後方向及び上下方向)に圧接される。
【0049】
つまり、ゴム部材545は、リンク543が第2位置及び第1位置と第2位置との間の領域に存在するときに、セクタギア542に圧接される。また、ゴム部材545は、リンク543が第1位置に存在するときに、セクタギア542から離れる。
【0050】
具体的には、ゴム部材545は、セクタギア542の開口542Cの内面のうち、ゴム部材545よりもセクタギア542の回転軸P1から離れた領域(つまり、セクタギア542の径方向外側の面)に圧接される。
【0051】
ゴム部材545のうち、開口542Cの内面に圧接された部位は、ゴム部材545の半径方向に圧縮される。そのため、圧接されたゴム部材545の外形は、真円の一部が凹んだ非対称形状となる。
【0052】
ゴム部材545は、セクタギア542の開口542Cの内面との摺動(つまり摩擦力)によって回転するように構成されている。つまり、ゴム部材545は、第3位置L3から第2位置L2までの範囲において、セクタギア542の回転に伴って自転する。そのため、ゴム部材545において開口542Cの内面に圧接される部位は、セクタギア542の回転に伴って変化する。
【0053】
また、ゴム部材545は、揺動軸P2を中心とする円弧に沿ってセクタギア542に対して相対的に移動する。ゴム部材545の揺動軸P2は、セクタギア542の回転軸P1と一致せず、セクタギア542の回転軸P1よりもセクタギア542の径方向外側(具体的にはシート前方)に位置する。
【0054】
これにより、ゴム部材545が第3位置L3から第2位置L2に向かうに連れて、ゴム部材545からセクタギア542へ加わる圧力(つまり、ゴム部材545の開口542Cの内面への押付量)が大きくなる。
【0055】
つまり、リンク543が第1位置から第2位置へ向かって立ち上がっていくのに伴い、ゴム部材545がセクタギア542に与える摩擦力が大きくなる。そのため、ガタツキの大きさに追従するように、セクタギア542の回転抵抗を大きくできる。
【0056】
(ブラケット)
図3に示すブラケット547は、第1サイドフレーム41と共にセクタギア542をシート幅方向に挟む板状の部材である。
【0057】
ブラケット547は、ピニオンギア541の全体と、セクタギア542のうちピニオンギア541との噛み合い部分とをシート幅方向内側から覆っている。ブラケット547は、第1ボルト548A、第2ボルト548B、第3ボルト548C、第1ナット549A、第2ナット549B、及び第3ナット549Cにより、第1サイドフレーム41に締結されている。
【0058】
第1ボルト548Aは、セクタギア542の開口542C内に配置されている。第1ボルト548Aは、上述したように、ゴム部材545の軸部を構成している。第1ボルト548Aには、シート幅方向内側から第1ナット549Aが螺合されている。
【0059】
第2ボルト548Bは、第1ボルト548Aよりも上方に配置されている。第2ボルト548Bには、シート幅方向内側から第2ナット549Bが螺合されている。第3ボルト548Cは、第1ボルト548Aよりも下方に配置されている。第3ボルト548Cには、シート幅方向内側から第3ナット549Cが螺合されている。
【0060】
(第2リンク機構)
図1に示す第2リンク機構55は、第1リンク機構54よりもシート前方の位置において、第1サイドフレーム41と第1レッグ51とを連結している。
【0061】
第2リンク機構55は、第1リンク機構54と同様に、動力源(図省略)によりリンクを回転させる。第2リンク機構55は、第1リンク機構54と協働して第1サイドフレーム41を上下に移動させる。
【0062】
(第3リンク機構及び第4リンク機構)
第3リンク機構56及び第4リンク機構57は、それぞれ、第2サイドフレーム42と第2レッグ52とを連結している。
【0063】
第3リンク機構56は、第1連結ロッド58により第1リンク機構54と連結されている。第3リンク機構56は、第1リンク機構54と同期して作動する。第4リンク機構57は、第2連結ロッド59により第2リンク機構55と連結されている。第4リンク機構57は、第2リンク機構55と同期して作動する。
【0064】
第1リンク機構54、第2リンク機構55、第3リンク機構56及び第4リンク機構57が同時に作動することで、シートクッション2及びクッションフレーム4が昇降する。
【0065】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)ゴム部材545がセクタギア542に圧接されることで、セクタギア542及びリンク543における回転軸と交差する方向(つまりシート前後方向)の変位が抑制される。その結果、シートクッション2のガタツキが抑制される。
【0066】
(1b)リンク543が第2位置に存在するときにゴム部材545がセクタギア542に圧接されることにより、リンク543の振れ幅が最も大きくなる第2位置においてリンク543の変位を抑制できる。その結果、シートクッション2のガタツキを効果的に抑制できる。
【0067】
(1c)リンク543が第1位置に存在するときにゴム部材545がセクタギア542から離れることで、リンク543の振れ幅が小さい第1位置においてセクタギア542の回転抵抗を低減できる。その結果、シートクッション2の上昇が円滑に行える。また、セクタギア542と干渉することなくゴム部材545を組み付けることができる。
【0068】
(1d)ゴム部材545が開口542Cの内面のうち、ゴム部材545よりもセクタギア542の回転軸から離れた領域に圧接されることで、クッションフレーム4におけるゴム部材545の配置場所の自由度を高めることができる。また、開口542Cのうち発生するモーメントが大きい部分にゴム部材545が圧接されるため、ガタツキの抑制効果を促進できる。
【0069】
(1e)ブラケット547により、セクタギア542を保護することができる。また、第1ボルト548Aがゴム部材545を支持することで、昇降装置5の省スペース化を図ることができる。
【0070】
(1f)ゴム部材545がセクタギア542との摺動によって回転することで、ゴム部材545とセクタギア542との接触面が変化するため、ゴム部材545の耐久性を向上できる。
【0071】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0072】
(2a)上記実施形態の乗物用シートにおいて、ゴム部材は、リンクが第1位置から第2位置に変位する間、常にセクタギアに圧接されてもよい。また、ゴム部材は、第1位置以外にリンクが存在するときに、セクタギアから離れてもよい。
【0073】
(2b)上記実施形態の乗物用シートにおいて、ゴム部材は、セクタギアの開口の内面のうち、ゴム部材よりもセクタギアの回転軸から離れた領域以外の領域(例えば、セクタギアの径方向内側の領域)に圧接されてもよい。
【0074】
(2c)上記実施形態の乗物用シートにおいて、ゴム部材は、必ずしもセクタギアの開口内に配置されなくてもよい。例えば、ゴム部材は、セクタギアの外側に配置され、セクタギアの外周面に圧接されてもよい。
【0075】
(2d)上記実施形態の乗物用シートにおいて、ゴム部材は、必ずしもセクタギアとの摺動によって回転しなくてもよい。さらに、ゴム部材は、必ずしも円筒形状でなくてもよい。
【0076】
(2e)上記実施形態の乗物用シートにおける第1リンク機構の構成は、シートクッションの一部(例えば前端部)を上下方向に揺動させるチルト装置にも適用可能である。つまり、本開示は、チルト装置を備えた乗物用シートにも適用できる。
【0077】
(2f)上記実施形態の乗物用シートは、乗用車以外の自動車に用いられるシートや、自動車以外の例えば鉄道車両、船舶、航空機等の乗物に用いられるシートにも適用することができる。
【0078】
(2g)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0079】
1…乗物用シート、2…シートクッション、3…シートバック、
4…クッションフレーム、5…昇降装置、41…第1サイドフレーム、
42…第2サイドフレーム、51…第1レッグ、52…第2レッグ、53…動力源、
54…第1リンク機構、55…第2リンク機構、56…第3リンク機構、
57…第4リンク機構、58…第1連結ロッド、59…第2連結ロッド、
541…ピニオンギア、542…セクタギア、542A…本体、542B…ギア歯、
542C…開口、543…リンク、544…連結部、545…ゴム部材、
546…スポイラ、547…ブラケット、
548A,548B,548C,548D…ボルト、
549A,549B,549C,549D…ナット。