(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】チッピング試験方法及びチッピング試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 3/30 20060101AFI20250212BHJP
G01M 7/08 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
G01N3/30 Z
G01M7/08 A
(21)【出願番号】P 2021161075
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2024-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【氏名又は名称】大森 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】都 健
【審査官】寺田 祥子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020ー169869(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110608899(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109855989(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0056473(US,A1)
【文献】特開昭56-067735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00-3/62
G01M 7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有し、基端部と先端部との間で延在する弾性筒体を備え、前記弾性筒体の前記先端部から発射体を発射するチッピング試験装置を用いたチッピング試験方法であって、
前記基端部と前記先端部との間の加速開始位置まで前記発射体を第1速度で移動させるステップと、
前記加速開始位置に配置された前記発射体を前記第1速度よりも速い第2速度まで加速して前記弾性筒体の前記先端部から前記発射体を発射するステップと、
を含む、チッピング試験方法。
【請求項2】
前記チッピング試験装置は、
圧縮空気を供給する圧縮空気供給源と、
前記圧縮空気供給源と前記弾性筒体との間に配置され、前記弾性筒体側の二次側圧力を調整可能な圧力調整部と、
を更に備え、
前記チッピング試験方法は、
前記圧力調整部と前記弾性筒体の間の初期位置に前記発射体を配置するステップと、
前記初期位置に配置された前記発射体を前記加速開始位置まで移動させるために、前記圧力調整部の前記二次側圧力を第1圧力に設定するステップと、
前記加速開始位置に配置された前記発射体を前記弾性筒体内で加速させるために、前記圧力調整部の前記二次側圧力を前記第1圧力よりも高い第2圧力に設定するステップと、
を更に含む、請求項1に記載のチッピング試験方法。
【請求項3】
前記チッピング試験装置は、
弾性を有し、基端部と先端部との間で延在する別の弾性筒体と、
前記別の弾性筒体の前記先端部と前記弾性筒体の前記基端部とを連結する継手部であり、発射体を投入するための投入口を有する、該継手部と、
圧縮空気を供給する圧縮空気供給源と、
前記圧縮空気供給源と前記別の弾性筒体との間に配置され、前記別の弾性筒体側の二次側圧力を調整可能な圧力調整部と、
を更に備え、
前記チッピング試験方法は、
前記投入口に前記発射体を投入するステップと、
重力によって前記発射体を前記弾性筒体内の前記加速開始位置まで移動させるステップと、
前記加速開始位置に配置された前記発射体を前記弾性筒体内で加速させるために、前記圧力調整部の二次側圧力を上昇させるステップと、
を更に含む、請求項1に記載のチッピング試験方法。
【請求項4】
前記チッピング試験装置は、
圧縮空気を供給する圧縮空気供給源と、
前記圧縮空気供給源と前記弾性筒体との間に配置され、前記弾性筒体側の二次側圧力を調整可能な圧力調整部と、
を更に備え、
前記チッピング試験方法は、前記発射体の発射速度を補正する補正ステップを更に含み、
前記補正ステップは、
所望の発射速度を取得するステップと、
前記圧力調整部の前記二次側圧力と前記発射体の発射速度との関係を表す相関データを使用して、前記発射体を前記所望の発射速度に加速するための前記二次側圧力を決定するステップと、
前記圧力調整部の前記二次側圧力を決定された前記二次側圧力に設定して、前記弾性筒体の前記先端部から前記発射体を発射するステップと、
前記発射体の発射速度を計測するステップと、
計測された前記発射速度と所望の速度との差が小さくなるように、前記圧力調整部の前記二次側圧力を補正するステップと、
を含み、
前記補正ステップは、発射体を第1速度で移動させるステップの前に行われる、請求項1に記載のチッピング試験方法。
【請求項5】
前記相関データが、前記圧力調整部の前記二次側圧力と前記発射体の発射速度の最小値との関係を表すデータである、請求項4に記載のチッピング試験方法。
【請求項6】
弾性を有し、基端部と先端部との間で延在する弾性筒体と、
圧縮空気を供給する圧縮空気供給源と、
前記圧縮空気供給源と前記弾性筒体との間に配置され、前記弾性筒体側の二次側圧力を調整可能な圧力調整部と、
前記圧力調整部と前記弾性筒体の間の初期位置に発射体を配置する発射体投入部と、
前記圧力調整部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記発射体が前記初期位置から前記弾性筒体の前記基端部と前記先端部との間の加速開始位置まで第1速度で移動するように、前記圧力調整部の前記二次側圧力を第1圧力に設定し、
前記加速開始位置に配置された前記発射体を前記第1速度よりも速い第2速度まで加速して前記弾性筒体の前記先端部から発射するために、前記圧力調整部の前記二次側圧力を前記第1圧力よりも高い第2圧力に設定する、
チッピング試験装置。
【請求項7】
金属によって構成され、前記圧力調整部と前記弾性筒体の前記基端部とを接続する剛性筒体を更に備える、請求項6に記載のチッピング試験装置。
【請求項8】
前記弾性筒体の前記先端部から発射された前記発射体の発射速度を計測する速度計測部を更に備え、
前記制御部は、予め定められた所望の発射速度と、前記速度計測部によって計測された前記発射体の発射速度との差が小さくなるように、前記発射体を加速するための前記二次側圧力を補正する、請求項6又は7に記載のチッピング試験装置。
【請求項9】
基端部と先端部との間で延在する第1筒体と、
弾性を有し、基端部と先端部との間で延在する第2筒体と、
圧縮空気を供給する圧縮空気供給源と、
前記圧縮空気供給源と前記第1筒体との間に配置され、前記第1筒体側の二次側圧力を調整可能な圧力調整部と、
前記第1筒体の前記先端部と前記第2筒体の前記基端部とを連結する継手部であり、発射体を投入するための投入口を有する、該継手部と、
前記圧力調整部を制御する制御部と、
を備え、
前記投入口から投入された前記発射体は、重力によって前記第2筒体の前記基端部と前記先端部との間の加速開始位置まで移動するように構成され、
前記制御部は、前記加速開始位置に配置された前記発射体を加速して前記第2筒体の前記先端部から発射するために、前記圧力調整部の前記二次側圧力を上昇させる、
チッピング試験装置。
【請求項10】
金属によって構成され、前記圧力調整部と前記第1筒体の前記基端部とを接続する剛性筒体を更に備える、請求項9に記載のチッピング試験装置。
【請求項11】
前記第2筒体の前記先端部から発射された前記発射体の発射速度を計測する速度計測部を更に備え、
前記制御部は、予め定められた所望の発射速度と、前記速度計測部によって計測された前記発射体の発射速度との差が小さくなるように、前記発射体を加速するための前記二次側圧力を補正する、請求項9又は10に記載のチッピング試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チッピング試験方法及びチッピング試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の移動体には飛石が衝突する可能性があるため、移動体に搭載される部品には高い耐久性が要求される。この種の部品の耐久性を試験する方法として、チッピング試験が知られている。チッピング試験は、飛石試験又はグラベロ試験とも呼ばれ、予め定められた試験条件で石、砂、金属片又はセラミック片等の発射体を発射して試験対象物に衝突させ、試験対象物の損傷具合を評価する。
【0003】
この種のチッピング試験を行うための技術として、例えば特許文献1及び2に記載の装置が知られている。特許文献1には、上下一対のタイヤと、上下一対のタイヤを回転させる回転駆動機構と、上下一対のタイヤの間に飛石体を供給する飛石体案内路とを備え、回転する上下一対のタイヤによって飛石体を加速して試験対象物に衝突させる飛石試験装置について記載されている。
【0004】
特許文献2には、噴射筒と、当該噴射筒の基端側から圧縮空気を噴射する噴射ノズルと、当該噴射筒に立設された供給管と、を備え、供給管を介して噴射筒の内部に飛石体を供給し、噴射ノズルから圧縮空気を供給して噴射筒の先端から飛石体を発射する飛石試験機について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-58042号公報
【文献】特許第6064013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、移動体の性能向上に伴って部品に要求される耐久性も高まっており、発射体を試験対象物に高速に衝突させることが求められている。ここで、特許文献2に記載された噴射筒は、継手を用いずに供給管に対して直接連結されていることから、金属等の剛体によって構成されていると考えられる。かかる噴射筒の内部で圧縮空気を噴射すると、内部圧力の上昇に伴って噴射筒内で発射体(飛石体)が加速され、噴射筒の内壁に発射体が衝突する。発射体を高速で発射するために噴射筒内で発射体を急激に加速させると、発射体が噴射筒の内壁に衝突する際の衝撃が大きくなり、チッピング試験装置内で発射体に割れ又は欠け等の損傷が発生することがある。発射体に損傷が生じると、試験対象物に衝突する発射体の運動エネルギーが減少し、予め定められたチッピング試験の試験条件を満たさなくなることがある。
【0007】
そこで、本開示は、発射体に損傷が生じることを抑制することができるチッピング試験方法及びチッピング試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係るチッピング試験方法は、弾性筒体(弾性を有し、基端部と先端部との間で延在する構成)の先端部から発射体を発射するチッピング試験装置を用いて行われる。このチッピング試験方法は、次の(1)(2)のステップを含む。
(1)基端部と先端部との間の加速開始位置まで発射体を第1速度で移動させるステップ。
(2)加速開始位置に配置された発射体を第1速度よりも速い第2速度まで加速して弾性筒体の先端部から発射体を発射するステップ。
【0009】
上記態様に係るチッピング試験方法では、発射体が弾性筒体の基端部と先端部との間の加速開始位置まで相対的に遅い第1速度で移動された後に、発射体が弾性筒体内で相対的に速い第2速度に加速されて弾性筒体の先端部から発射される。上記のように、発射体は弾性筒体の内部で加速されるので、加速された発射体が金属等の剛体に接触しない。したがって、この方法によれば、チッピング試験装置内で発射体に損傷が生じることを抑制することができる。
【0010】
一実施形態では、チッピング試験装置は、圧縮空気を供給する圧縮空気供給源と、圧縮空気供給源と弾性筒体との間に配置され、弾性筒体側の二次側圧力を調整可能な圧力調整部と、を更に備え、チッピング試験方法は、次の(3)~(5)のステップを更に含んでいてもよい。
(3)圧力調整部と弾性筒体の間の初期位置に発射体を配置するステップ。
(4)初期位置に配置された発射体を加速開始位置まで移動させるために、圧力調整部の二次側圧力を第1圧力に設定するステップ。
(5)加速開始位置に配置された発射体を弾性筒体内で加速させるために、圧力調整部の二次側圧力を第1圧力よりも高い第2圧力に設定するステップ。
この実施形態では、発射体が弾性筒体の内部に第1速度で移動された後に弾性筒体内で第2速度まで加速されるので、チッピング試験装置内で発射体に損傷が生じることを抑制することができる。
【0011】
一実施形態では、チッピング試験装置は、別の弾性筒体(弾性を有し、基端部と先端部との間で延在する構成)と、別の弾性筒体の先端部と弾性筒体の基端部とを連結する継手部(発射体を投入するための投入口を有する)と、圧縮空気を供給する圧縮空気供給源と、別の弾性筒体側の二次側圧力を調整可能な圧力調整部(圧縮空気供給源と別の弾性筒体との間に配置される)と、を更に備え、チッピング試験方法は、次の(6)~(8)のステップを更に含んでいてもよい。
(6)投入口に発射体を投入するステップ。
(7)重力によって発射体を弾性筒体内の加速開始位置まで移動させるステップ。
(8)加速開始位置に配置された発射体を弾性筒体内で加速させるために、圧力調整部の二次側圧力を第1圧力よりも高い第2圧力に設定するステップ。
この実施形態では、発射体が弾性筒体の内部に第1速度で移動された後に弾性筒体内で第2速度まで加速されるので、チッピング試験装置内で発射体に損傷が生じることを抑制することができる。
【0012】
一実施形態では、チッピング試験装置は、圧縮空気を供給する圧縮空気供給源と、弾性筒体側の二次側圧力を調整可能な圧力調整部(圧縮空気供給源と弾性筒体との間に配置される)と、を更に備え、チッピング試験方法は、次の(9)のステップを更に含む。
(9)発射体の発射速度を補正する補正ステップ。補正ステップは、発射体を第1速度で移動させるステップの前に行われてもよい。補正ステップは、次の(a)~(e)のステップを備える。
(a)所望の発射速度を取得するステップ。
(b)圧力調整部の二次側圧力と発射体の発射速度との関係を表す相関データを使用して、発射体を所望の発射速度に加速するための二次側圧力を決定するステップ。
(c)圧力調整部の二次側圧力を決定された二次側圧力に設定して、弾性筒体の先端部から発射体を発射するステップ。
(d)発射体の発射速度を計測するステップ。
(e)計測された発射速度と所望の速度との差が小さくなるように、圧力調整部の二次側圧力を補正するステップ。
この実施形態では、圧力調整部の二次側圧力を補正することにより、発射体の発射速度を所望の速度に近づけることができる。
【0013】
一実施形態では、相関データが、圧力調整部の二次側圧力と発射体の発射速度の最小値との関係を表すデータであってもよい。弾性筒体の内部圧力と発射体の発射速度の最小値との関係を表す相関データを使用して、圧力調整部の二次側圧力を決定することにより、発射体の発射速度が所望の発射速度を下回りにくくなる。
【0014】
一態様に係るチッピング試験装置は、弾性筒体、圧縮空気供給源、圧力調整部、発射体投入部及び制御部を備える。弾性筒体は、弾性を有し、基端部と先端部との間で延在する。圧縮空気供給源は、圧縮空気を供給する。圧力調整部は、圧縮空気供給源と弾性筒体との間に配置され、弾性筒体側の二次側圧力の調整を可能にする。発射体投入部は、圧力調整部と弾性筒体の間の初期位置に発射体を配置する。制御部は、圧力調整部の二次側圧力を制御する。制御部は、発射体が初期位置から弾性筒体の基端部と先端部との間の加速開始位置まで第1速度で移動するように、圧力調整部の二次側圧力を第1圧力に設定する。加速開始位置に配置された発射体を第1速度よりも速い第2速度まで加速して弾性筒体の先端部から発射するために、圧力調整部の二次側圧力を第1圧力よりも高い第2圧力に設定する。
【0015】
上記態様に係るチッピング試験装置では、発射体が弾性筒体の基端部と先端部との間の加速開始位置まで相対的に遅い第1速度で移動された後に、発射体が相対的に速い第2速度に加速され、弾性筒体の先端部から発射される。上記のように、発射体は弾性筒体の内部で加速されるので、加速された発射体が金属等の剛体に接触しない。したがって、本チッピング試験装置によれば、発射体に損傷が生じることを抑制することができる。
【0016】
一実施形態に係るチッピング試験装置は、金属によって構成され、圧力調整部と弾性筒体の基端部とを接続する剛性筒体を更に備えていてもよい。剛性筒体を備えることにより、弾性筒体、発射体投入部及び圧力調整部を容易に連結することができる。
【0017】
一実施形態に係るチッピング試験装置は、弾性筒体の先端部から発射された発射体の発射速度を計測する速度計測部を更に備える。そして、制御部は、2つの発射速度の差が小さくなるように、発射体を加速するための二次側圧力を補正してもよい。2つの発射速度は、予め定められた所望の発射速度、及び、速度計測部によって計測された発射体の発射速度である。この実施形態では、圧力調整部の二次側圧力を補正することにより、発射体の発射速度を所望の速度に近づけることができる。
【0018】
別の態様に係るチッピング試験装置は、第1筒体、第2筒体、圧縮空気供給源、圧力調整部、継手部及び制御部を備える。第1筒体は、基端部と先端部との間で延在する。第2筒体は、弾性を有し、基端部と先端部との間で延在している。圧縮空気供給源は、圧縮空気を供給する。圧力調整部は、圧縮空気供給源と第1筒体との間に配置され、第1筒体側の二次側圧力を調整可能である。継手部は、第1筒体の先端部と第2筒体の基端部とを連結し、且つ、発射体を投入するための投入口を有する。制御部は、圧力調整部の二次側圧力を制御する。投入口から投入された発射体は、重力によって第2筒体の基端部と先端部との間の加速開始位置まで移動するように構成され、制御部は、加速開始位置に配置された発射体を加速して第2筒体の先端部から発射するために、圧力調整部の二次側圧力を上昇させる。
【0019】
上記態様に係るチッピング試験装置では、投入口から投入された発射体が重力によって加速開始位置に移動され、当該加速開始位置に配置された発射体が弾性筒体内で加速されて弾性筒体の先端部から発射される。上記のように、発射体は弾性筒体の内部で加速されるので、加速された発射体が金属等の剛体に接触しない。したがって、本チッピング試験装置によれば、発射体に損傷が生じることを抑制することができる。
【0020】
一実施形態に係るチッピング試験装置は、金属によって構成され、圧力調整部と第1筒体の基端部とを接続する剛性筒体を更に備えてもよい。剛性筒体を備えることにより、第1筒体、発射体投入部及び圧力調整部を容易に連結することができる。
【0021】
一実施形態に係るチッピング試験装置は、第2筒体の先端部から発射された発射体の発射速度を計測する速度計測部を更に備えていてもよい。制御部は、2つの発射速度の差が小さくなるように、発射体を加速するための二次側圧力を補正してもよい。2つの発射速度は、予め定められた所望の発射速度、及び、速度計測部によって計測された発射体の発射速度である。この実施形態では、圧力調整部の二次側圧力を補正することにより、発射体の発射速度を所望の速度に近づけることができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の種々の態様によれば、発射体に損傷が生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態に係るチッピング試験装置を概略的に示す図である。
【
図2】一実施形態に係るチッピング試験方法を示すフローチャートである。
【
図6】発射速度の補正方法を示すフローチャートである。
【
図7】圧力調整弁の二次側圧力と発射体の発射速度との関係を表す相関データの一例を示す図である。
【
図8】別の実施形態に係るチッピング試験装置を概略的に示す図である。
【
図9】比較実験例で使用されるチッピング試験装置を概略的に示す図得ある。
【
図10】比較実験例で取得された発射前後の発射体の質量比を示す図である。
【
図11】実験例で取得された発射前後の発射体の質量比を示す図である。
【
図12】チッピング試験装置の変形例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。以下の説明において、同一の要素又は同一の機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率及び角度等は図面に記載のものに限定されない。以下の説明において、「上流」及び「下流」の用語は、後述する圧縮空気供給源31からの圧縮空気の流れ方向を基準として使用される。
【0025】
図1は、一実施形態に係るチッピング試験装置を概略的に示す図である。
図1に示すチッピング試験装置1は、試験対象物の耐久性を試験するために当該試験対象物に対して発射体5を発射する。チッピング試験装置1から発射される発射体5としては、石、砂、金属片又はセラミック片等が例示される。
【0026】
図1に示すように、チッピング試験装置1は、剛性筒体10、弾性筒体20、圧縮空気供給部30、発射体投入部40及び制御部50を備える。剛性筒体10は、金属等の剛性を有する材料によって構成された中空の管体であり、発射体5を発射するための管路の一部を提供する。剛性筒体10の基端部10aは圧縮空気供給部30に接続され、剛性筒体10の先端部10bは弾性筒体20の基端部20aに接続されている。
【0027】
圧縮空気供給部30は、剛性筒体10及び弾性筒体20の内部に圧縮空気を供給する。一実施形態では、圧縮空気供給部30は、圧縮空気供給源31、圧力調整弁32及び開閉弁33を含む。圧縮空気供給源31は、例えば圧縮空気を供給するコンプレッサであり、剛性筒体10の基端部10aに接続されている。
【0028】
圧力調整弁32は、圧縮空気供給源31の下流側において剛性筒体10に接続されている。圧力調整弁32は、例えば減圧弁であり、圧力調整弁32の二次側圧力、すなわち下流側(弾性筒体20側)の圧力を、一次側圧力、すなわち上流側(圧縮空気供給源31側)の圧力よりも低い圧力に調整する。すなわち、圧力調整弁32は、圧縮空気供給部30と弾性筒体20との間に配置され、弾性筒体20側の二次側圧力を調整する機能を有する。圧力調整弁32の二次側圧力は、制御部50からの制御信号によって制御される。
【0029】
開閉弁33は、圧力調整弁32の下流側において剛性筒体10に接続されている。開閉弁33は、弁体を開閉することにより、弾性筒体20側への圧縮空気の供給及び供給停止を切り替え可能に構成されている。開閉弁33の開閉は、制御部50からの制御信号によって制御される。圧力調整弁32及び開閉弁33は、弾性筒体20側の二次側圧力を調整可能な圧力調整部35を構成する。
【0030】
剛性筒体10の基端部10aと先端部10bの間の位置には、発射体投入管43が接続されている。発射体投入管43は、剛性筒体10の途中位置から上方に延び、発射体投入部40に接続されている。発射体投入部40は、発射体タンク41及びゲート42を含む。発射体タンク41は、発射体投入管43に接続され、試験対象物6に投射されるべき発射体5をその内部に格納する。なお、発射体タンク41の上部は開放され、上部開口から発射体5を発射体タンク41の内部に投入することが可能となっていてもよい。
【0031】
ゲート42は、例えば開閉弁であり、発射体タンク41と剛性筒体10との間に設けられている。ゲート42は、剛性筒体10内への発射体5の供給又は供給停止を切り替え可能に構成されている。ゲート42の開閉は、制御部50からの制御信号によって制御される。ゲート42が開放されると、発射体タンク41に格納された発射体5は、ゲート42を通過し、発射体投入管43を通って剛性筒体10の内部に落下する。以下の説明では、発射体タンク41から供給された発射体5が配置される剛性筒体10内の位置を初期位置P1という。初期位置P1は、設計により予め定められた剛性筒体10内の位置であり、圧力調整弁32と弾性筒体20との間の位置である。
【0032】
弾性筒体20は、弾性を有する中空の管体であり、剛性筒体10と共に発射体5を発射するための管路を提供する。弾性筒体20を構成する弾性体としては、ゴム又は樹脂が例示される。例えば弾性筒体20は、高耐圧性のゴムホースである。弾性筒体20は、基端部20a及び先端部20bを有し、これら基端部20aと先端部20bとの間で延在している。弾性筒体20の基端部20aは、剛性筒体10の先端部10bに接続されている。一実施形態では、弾性筒体20の基端部20aには、弾性筒体20の外周面を囲む接続金具25が設けられていてもよい。この接続金具25と剛性筒体10の先端部10bとが嵌合することにより、異なる材料によって構成された剛性筒体10と弾性筒体20とが脱着可能に連結される。
【0033】
弾性筒体20の先端部20bは、発射体5を発射する射出口として機能する。弾性筒体20の先端部20bは、キャビネット52内に配置される。キャビネット52の内部には、試験対象物6が配置される。試験対象物6は、発射体5を衝突させる試験サンプルであり、自動車部品、鉄道部品又は航空機部品等である。限定されるものではないが、試験対象物6としては、自動車用のラジエータ、ガラス又は防音材が例示される。
【0034】
弾性筒体20の先端部20bは、試験対象物6に対面する位置に固定されている。圧縮空気供給部30から圧縮空気が供給されると、発射体5は弾性筒体20内で加速され、先端部20bから発射される。発射された発射体5は、試験対象物6に衝突する。発射体5が衝突した試験対象物6は、例えばキャビネット52から取り出され損傷具合が評価される。
【0035】
なお、弾性筒体20の先端部20bには、補強金具26が設けられてもよい。補強金具26は、弾性筒体20の外周面を囲むことで弾性筒体20の先端部20bを補強し、発射体5の発射時の衝撃によって弾性筒体20の先端部20bに破損が生じることを抑制する。
【0036】
一実施形態では、チッピング試験装置1は、発射体5の発射速度を計測する速度計測部54を更に備えていてもよい。速度計測部54は、例えば高速度カメラ等の撮像装置であり、弾性筒体20の先端部20bに近接して配置される。例えば、速度計測部54は、弾性筒体20の先端部20bから発射される発射体5を上方又は側方から高速度撮影し、発射体5の移動距離及び時間に基づいて発射体5の発射速度を計測する。速度計測部54は、計測された発射速度を制御部50に出力する。
【0037】
制御部50は、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置、通信装置等を備えるコンピュータであり、チッピング試験装置1全体の動作を制御する。制御部50は、例えば、記憶部に記憶されているプログラムをロードし、ロードされたプログラムをプロセッサで実行することにより後述する各種機能を実現する。制御部50では、入力装置を用いてオペレータがチッピング試験装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができ、また、表示装置により、チッピング試験装置1の稼働状況を可視化して表示することができる。
【0038】
制御部50は、圧縮空気供給部30及び発射体投入部40と通信可能に接続され、圧縮空気供給部30及び発射体投入部40の動作を制御する。より具体的には、制御部50は、圧縮空気供給源31、圧力調整弁32、開閉弁33及びゲート42に制御信号を送出し、圧縮空気供給源31の作動又は作動停止、圧力調整弁32の二次側圧力、開閉弁33の開閉、及び、ゲート42の開閉を制御する。
【0039】
次に、制御部50の機能について詳細に説明すると共に、チッピング試験装置1を用いたチッピング試験方法について説明する。
図2は、一実施形態に係るチッピング試験方法を示すフローチャートである。
【0040】
この方法では、まず制御部50は、ゲート42を開放して、発射体タンク41内に格納された発射体5を剛性筒体10内に投入する(ステップST1)。このとき、
図3に示すように、発射体5は、発射体投入管43を通って落下し、剛性筒体10内の初期位置P1に配置される。
【0041】
次に、キャビネット52内に、試験対象物6が設置される(ステップST2)。試験対象物6は、例えば弾性筒体20の先端部20bに対面するステージ上に配置される。次に、制御部50は、圧縮空気供給源31から圧縮空気を供給して圧力調整弁32の一次側圧力を高めると共に、圧力調整弁32の二次側圧力を第1圧力に設定する(ステップST3)。
【0042】
次に、制御部50は、開閉弁33を開放する。これにより、剛性筒体10の内部圧力が第1圧力まで高められ、その圧力によって、
図4に示すように、初期位置P1に配置された発射体5が第1圧力に対応する第1速度で加速開始位置P2まで移動する(ステップST4)。加速開始位置P2は、弾性筒体20内の基端部20aと先端部20bとの間の位置である。第1速度は、後述する第2速度よりも遅い速度であり、例えば100km/h以下の速度、又は10km/h以下の速度である。発射体5が初期位置P1から加速開始位置P2まで比較的低速な第1速度で移動することにより、発射体5が剛性筒体10の内部を通過する際に発射体5が剛性筒体10の内壁に衝突して発射体5に損傷が発生することが抑制される。発射体5が加速開始位置P2に到達すると、開閉弁33は閉鎖される。
【0043】
発射体5が加速開始位置P2に配置された後、制御部50は、圧縮空気供給源31から圧縮空気を供給して圧力調整弁32の一次側圧力を高めると共に、圧力調整弁32の二次側圧力を第2圧力に設定する(ステップST5)。第2圧力は、第1圧力よりも高い圧力であり、発射体5の発射速度に応じて決定される。例えば、制御部50は、圧力調整弁32の二次側圧力と発射体5の発射速度との関係を表す相関データを記憶しており、当該相関データを使用して所望の発射速度に対応する第2圧力を決定してもよい。
【0044】
次に、制御部50は、開閉弁33を開放する。これにより、剛性筒体10及び弾性筒体20の内部圧力が第2圧力まで高められ、その圧力によって、加速開始位置P2に配置された発射体5が弾性筒体20内で第2圧力に対応する第2速度まで加速される。第2速度は、第1速度よりも高速であり、例えば120km/h以上である。
図5に示すように、弾性筒体20内で第2速度まで加速された発射体5は、弾性筒体20の先端部20bから発射され、試験対象物6に衝突する(ステップST6)。
【0045】
次に、試験対象物6の損傷具合が評価される(ステップST7)。試験対象物6の評価は、キャビネット52から試験対象物6を取り出して、試験対象物6の損傷具合を目視で評価してもよいし、高速度カメラ等で撮像された試験対象物6の画像を分析して評価してもよい。
【0046】
上述したように、
図2に示すチッピング試験方法では、加速開始位置P2に配置された発射体5が、比較的高速な第2速度まで弾性筒体20の内部で加速される。弾性筒体20は、剛性の低い弾性体によって構成されているので、発射体5が弾性筒体20の内壁に高速で衝突した場合であっても、発射体5に欠けや割れ等の損傷が発生しにくい。したがって、予め定められた寸法又は重量の発射体5を試験対象物6に向けて高速に発射することができる。
【0047】
一実施形態に係るチッピング試験方法は、発射体5の発射速度が所望の速度に近づくように圧力調整弁32の二次側圧力を補正する補正ステップを更に含んでいてもよい。
図6は、発射体5の発射速度の補正ステップを示すフローチャートである。
図6に示す補正ステップは、試験対象物6に発射体5を発射する前、例えば、
図2に示すチッピング試験方法のステップST1よりも前に実行される。
【0048】
この補正方法では、まず所望の発射速度が取得される(ステップST11)。例えば、所望の発射速度は、オペレータが入力装置を操作することによって制御部50に入力される。所望の発射速度は、チッピング試験の試験条件に応じて予め定められる速度である。
【0049】
次に、制御部50は、ゲート42を開放して、発射体タンク41内に格納された発射体5を剛性筒体10内に投入する(ステップST12)。このとき、発射体5は、発射体投入管43を通って剛性筒体10内の初期位置P1に配置される。次に、制御部50は、圧縮空気供給源31から圧縮空気を供給して圧力調整弁32の一次側圧力を高めると共に、圧力調整弁32の二次側圧力を第1圧力に設定する(ステップST13)。
【0050】
次に、制御部50は、開閉弁33を開放する。これにより、剛性筒体10の内部圧力が第1圧力まで高められ、その圧力によって、初期位置P1に配置された発射体5が第1圧力に対応する第1速度で加速開始位置P2まで移動する(ステップST14)。発射体5が加速開始位置P2に到達すると、開閉弁33は閉鎖される。
【0051】
発射体5が加速開始位置P2に配置された後、制御部50は、圧縮空気供給源31から圧縮空気を供給して圧力調整弁32の一次側圧力を高めると共に、圧力調整弁32の二次側圧力を所望の発射速度に対応する第2圧力に設定する(ステップST15)。次に、制御部50は、開閉弁33を開放する。これにより、剛性筒体10及び弾性筒体20の内部圧力が第2圧力まで高められ、その圧力によって、加速開始位置P2に配置された発射体5が弾性筒体20内で第2圧力に対応する第2速度まで加速される。弾性筒体20内で第2速度まで加速された発射体5は、弾性筒体20の先端部20bから発射される(ステップST16)。このとき、キャビネット52内には試験対象物6は配置されておらず、発射体5は例えば緩衝材に向けて発射される。
【0052】
次に、速度計測部54は、弾性筒体20の基端部20aから発射された発射体5の発射速度を計測する(ステップST17)。例えば、速度計測部54は、発射された発射体5を高速度カメラで高速撮影し、シャッター速度あたりの発射体5の移動距離に基づいて発射体5の発射速度を計測する。
【0053】
次に、制御部50は、速度計測部54によって計測された発射体5の発射速度(以下、「計測発射速度」という)と、所望の発射速度とを比較し、2つの発射速度に乖離があるか否かを判定する(ステップST18)。例えば、制御部50は、計測発射速度と所望の発射速度との差が所定の閾値以上であるときに、乖離があると判定する。
【0054】
計測発射速度と所望の発射速度との間に乖離がある場合には、圧力調整弁32の二次側圧力を補正する(ステップST19)。例えば、計測発射速度が所望の発射速度よりも遅い場合には、第2圧力を高くすることにより、発射体5の発射速度を所望の発射速度に近づける。反対に、計測発射速度が所望の発射速度よりも速い場合には、第2圧力を低くすることにより、発射体5の発射速度を所望の発射速度に近づける。そして、制御部50は、圧力調整弁32の二次側圧力を補正された第2圧力に設定する。
【0055】
次に、制御部50は、ゲート42を開放して発射体タンク41内に格納された発射体5を剛性筒体10内に再び投入する(ステップST20)。次に、制御部50は、開閉弁33を開放し、弾性筒体20の基端部20aから再び発射体5を発射する(ステップST16)。そして、計測発射速度と所望の発射速度との間に乖離がないと判定されるまでステップST16~ST20が繰り返される。一方、計測発射速度と所望の発射速度との間に乖離がないと判定された場合には、補正ステップを終了する。その後、
図2に示すチッピング試験方法に従って試験対象物6に発射体5が投射される。このとき、
図2のステップST5において、圧力調整弁32の二次側圧力が補正された第2圧力に設定される。これにより、発射体5が所望の発射速度で発射される。
【0056】
一実施形態では、制御部50の記憶部には、圧力調整弁32の二次側圧力(すなわち、弾性筒体20の内部圧力)と発射体5の発射速度との関係を表す相関データが記憶されており、制御部50は、当該相関データを使用して所望の発射速度に対応する二次側圧力を決定してもよい。計測発射速度と所望の発射速度との間に乖離がある場合には、制御部50は、この相関データを補正することにより、発射体5の発射速度を所望の発射速度に近づけてもよい。
【0057】
図7に示す標準相関データF1は、圧力調整弁32の二次側圧力と発射体5の発射速度との標準的な関係を表したデータの一例である。
図7に示すように、標準相関データF1は、圧力調整弁32の二次側圧力と発射体5の発射速度との関係を一次関数として表すモデルである。
【0058】
制御部50は、圧力調整弁32の二次側圧力を変化させながら発射体5を複数回発射し、その際の発射体5の発射速度を速度計測部54によって計測して、発射速度と二次側圧力とを関連付けて記憶する。次に、制御部50は、複数回発射された発射速度の平均値を二次側圧力毎に算出する。そして、制御部50は、例えば最小二乗法によって二次側圧力毎の発射速度の平均値を結ぶ近似直線を算出し、近似直線に基づいて二次側圧力と発射体5の発射速度と関係を表す平均相関データF2を生成する。例えば、標準相関データF1を用いたときに計測された計測発射速度と所望の発射速度との間に乖離がある場合には、制御部50は、標準相関データF1に代えて、平均相関データF2を用いて所望の発射速度に対応する二次側圧力を決定してもよい。
【0059】
また、制御部50は、複数回発射された発射速度の最小値を二次側圧力毎に算出してもよい。制御部50は、例えば最小二乗法によって二次側圧力毎の発射速度の最小値を結ぶ近似直線を算出し、近似直線に基づいて二次側圧力と発射体5の発射速度と関係を表す最小相関データF3を生成する。例えば、圧力調整弁32の二次側圧力をある圧力に設定して複数回発射体5を発射したときに、発射体5の発射速度に大きなばらつきある場合(例えば、発射速度の最小値が発射速度の平均値の70%以下である場合)には、制御部50は、標準相関データF1に代えて、最小相関データF3を用いて所望の発射速度に対応する二次側圧力を決定してもよい。
【0060】
チッピング試験では、所望の発射速度を下回ることは許容されないものの、所望の発射速度を上回ることは許容されることがある。この場合には、最小相関データF3を用いて二次側圧力を決定することにより、発射体5の発射速度が所望の発射速度を下回りにくくすることができる。
【0061】
次に、別の実施形態に係るチッピング試験装置について説明する。
図8は、別の実施形態に係るチッピング試験装置101を概略的に示す図である。チッピング試験装置101は、投入された発射体5を重力で加速開始位置P2まで移動させる点でチッピング試験装置1と相違する。以下の説明では、主にチッピング試験装置1との相違点について説明し、重複する説明は省略する。
【0062】
図8に示すように、チッピング試験装置101は、弾性筒体20に代えて、第1筒体(別の弾性筒体)21、第2筒体22及び継手部60を備えている。第1筒体21及び第2筒体22は、弾性を有する中空の管体であり、剛性筒体10と共に発射体5を発射するための管路を提供する。第1筒体21の基端部21aは、剛性筒体10の先端部10bに接続されている。
【0063】
継手部60は、金属によって構成され、第1筒体21の先端部21bと第2筒体22の基端部22aとを連結する。継手部60は、例えば金属製の三方継手であり、第1ポート60a、第2ポート60b及び第3ポート60cを有する。第1ポート60aは、第1筒体21の先端部21bに接続され、第2ポート60bは、第2筒体22の基端部22aに接続されている。ここで、第3ポート60cは、第2ポート60bの上方に配置されていてもよい。
【0064】
チッピング試験装置101は、発射体投入部40に代えて、発射体投入部140を備えている。発射体投入部140は、発射体5を第2筒体22内に投入するための投入筒45を含む。投入筒45は、継手部60の第3ポート60cに連結されている。このチッピング試験装置101を用いて発射体5を発射する場合には、まず投入筒45内に発射体5が投入される。投入筒45内に投入された発射体5は、重力によって継手部60の第3ポート60c、第2ポート60b及び基端部22aを通って第2筒体22の内部に落下する。すなわち、継手部60の第3ポート60cは、発射体5を投入するための投入口として機能する。なお、投入筒45には、当該投入筒45内の管路の開閉を切り替え可能なハンドルが設けられていてもよい。
【0065】
投入筒45から投入され継手部60を通過した発射体5は、第2筒体22の内部に落下し、重力によって第2筒体22内の加速開始位置P2まで移動する。加速開始位置P2は、第2筒体22内の基端部22aと先端部22bとの間の位置である。
【0066】
制御部50は、圧力調整弁32の二次側圧力を第2圧力に上昇させて、開閉弁33を開放する。これにより、第2筒体22の内部圧力が第2圧力まで高められ、その圧力によって、加速開始位置P2に配置された発射体5が第2筒体22内で第2圧力に対応する第2速度まで加速される。弾性筒体20内で第2速度まで加速された発射体5は、弾性筒体20の先端部20bから発射され、試験対象物6に衝突する。発射体5が投射された試験対象物6は、キャビネット52から取り出され、発射体5の衝突による損傷具合が評価される。
【0067】
上述したように、チッピング試験装置101では、発射体5が発射される際に、発射体5は第2筒体22内で第2速度まで加速される。第2筒体22は、剛性の低い弾性体によって構成され、基端部22a及び先端部22bとの間に金属製の部品が介在していないので、発射体5が金属製の部品に高速で衝突することがない。したがって、発射体5に欠けや割れ等の損傷が発生することが抑制される。よって、予め定められた寸法又は重量の発射体5を試験対象物6に向けて高速に発射することができる。なお、上記実施形態では、第1筒体21が弾性体によって構成されているが、一実施形態では、第1筒体21は金属製の配管であってもよい。上記のように、チッピング試験装置101では、第2筒体22内で発射体5が第2速度まで加速されるので、第1筒体21として金属製の配管を用いた場合であっても、発射体5に欠けや割れ等の損傷が発生することを抑制することができる。
【0068】
次に、実験例及び比較実験例に基づいてチッピング試験装置1の作用効果について説明するが、本発明は後述する実験例に限定されるものではない。
【0069】
実験例では、チッピング試験装置から発射する前の発射体5の質量、及び、チッピング試験装置から発射した後の発射体5の質量を計測し、発射前後の発射体5の質量を比較することで、発射体5の損傷具合を評価した。発射体5としては、直径約9mm~11mm程度の花崗岩玉砂利を用いた。発射体5としては、他に大磯砂利や花崗岩砕石を用いることができる。
【0070】
実験例では、
図1に示すチッピング試験装置1を用いて発射体5を発射した。すなわち、圧力調整弁32の二次側圧力を第1圧力に設定して発射体5を初期位置P1から加速開始位置P2まで低速で移動させた後に、圧力調整弁32の二次側圧力を第2圧力に設定して発射体5を弾性筒体20内で発射速度まで加速させた。
【0071】
一方、比較実験例では、
図9に示すチッピング試験装置201を用いて発射体5を発射した。
図9に示すチッピング試験装置201は、第1筒体21、第2筒体22及び連結管62を備える。第1筒体21は、基端部21a及び先端部21bを有し、その基端部21aは剛性筒体10の先端部10bに接続されている。第2筒体22は、基端部22a及び先端部22bを有し、その先端部22bは発射体5を発射する射出口として機能する。連結管62は、金属製であり、第1筒体21の先端部21bと第2筒体22の基端部22aを連結する。すなわち、チッピング試験装置201では、第1筒体21と第2筒体22との間に金属製の部品が介在している。比較実験例では、発射体5が初期位置P1に配置された状態で圧力調整弁32の二次側圧力を第2圧力まで上昇させることで発射体5を発射速度まで加速させた。
【0072】
図10は、比較実験例で計測された発射前の発射体5の質量、発射後の発射体5の質量、発射前後の発射体5の質量比を示している。
図10に示すように、比較実験例では、発射後の発射体5の質量が発射前の発射体5の質量よりも大きく減少した。特に、200km/h以上の高速で発射体5が発射された場合には、発射体5の質量比が大きく減少することが確認された。比較実験例では、初期位置P1に配置した発射体5を発射速度まで一気に加速したので、発射体5が剛性筒体10及び連結管62の内壁に高速で衝突し、発射体5に割れ又は欠け等の損傷が発生し、その結果、発射体5の質量が減少したと考えられる。
【0073】
一方、
図11は、実験例で計測された発射前の発射体5の質量、発射後の発射体5の質量、発射前後の発射体5の質量比を示している。
図11に示すように、実験例では、200km/h以上の高速で発射体5を発射した場合であっても、発射前後の発射体5の質量比は100%に近くに維持された。すなわち、発射体5に割れ又は欠け等の損傷がほとんど発生しないことが確認された。実験例では、発射体5が加速開始位置P2まで移動された後に弾性筒体20内で発射速度まで加速されるので、発射体5が剛性筒体10及び連結管62の内壁に高速で衝突することが避けられたためであると考えられる。これらの結果から、チッピング試験装置1を用いて発射体5を発射することにより、チッピング試験装置1内で発射体5に損傷が生じることを抑制できることが確認された。
【0074】
以上、種々の実施形態に係るチッピング試験装置及びチッピング試験方法について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。
【0075】
例えば、
図1に示すチッピング試験装置1は一本の弾性筒体20を備えているが、チッピング試験装置1は、複数の弾性筒体を備え、これら複数の弾性筒体が金属製の継手によって互いに連結されていてもよい。この場合であっても、複数の弾性筒体のうち発射体5の射出口を提供する弾性筒体(最も下流側に配置された弾性筒体)の途中位置まで発射体5を低速で移動させてから、発射体5を発射速度まで加速することにより発射体5の損傷が生じることを抑制することができる。なお、上述した種々の実施形態は、矛盾のない範囲で組み合わせることが可能である。
【0076】
また、
図1に示すチッピング試験装置1では、制御部50からの制御信号によって圧力調整弁32の二次側圧力を制御しているが、圧力調整弁32は電動式制御弁でなくてもよい。
図12は、チッピング試験装置の変形例を概略的に示す図である。
図12に示すチッピング試験装置102は、手動式の圧力調整弁を有する点で
図1に示すチッピング試験装置1と相違する。
【0077】
図12に示すように、チッピング試験装置102の剛性筒体10の基端部10aと先端部10bとの間には、剛性筒体10から分岐する分岐配管12が設けられている。分岐配管12は、互いに並列に配置された第1配管12a及び第2配管12bを含んでいる。第1配管12aには、上流側から圧力調整弁32a及び開閉弁33aがこの順に設けられている。第2配管12bには、上流側から圧力調整弁32b及び開閉弁33bがこの順に設けられている。圧力調整弁32a,32bは、手動式の圧力調整弁であり、圧力調整弁32aの二次側圧力は第1圧力に設定され、圧力調整弁32bの二次側圧力は第1の圧力より高い第2圧力に設定されている。第1配管12a及び第2配管12bは、開閉弁33a,33bの下流側で剛性筒体10に合流している。
【0078】
チッピング試験装置102を使用してチッピング試験を行う場合には、制御部50は、開閉弁33aを開放し、開閉弁33bを閉鎖して、圧縮空気供給源31から圧縮空気を供給する。これにより、圧縮空気供給源31から供給された圧縮空気が分岐配管12の第1配管12aを流れ、分岐配管12の下流側の圧力が第1圧力まで高められる。それに伴って、初期位置P1に配置された発射体5が第1圧力に対応する第1速度で加速開始位置P2まで移動する。次に、制御部50は、開閉弁33aを閉鎖し、開閉弁33bを開放して、圧縮空気供給源31から圧縮空気を供給する。これにより、圧縮空気供給源31から供給された圧縮空気が分岐配管12の第2配管12bを流れ、分岐配管12の下流側の圧力が第2圧力まで高められる。それに伴って、加速開始位置P2に配置された発射体5が弾性筒体20内で第2圧力に対応する第2速度まで加速される。そして、弾性筒体20内で第2速度まで加速された発射体5は、弾性筒体20の先端部20bから発射され、試験対象物6に衝突する。これら分岐配管12、圧力調整弁32a,32b及び開閉弁33a,33bは、弾性筒体20側の二次側圧力を調整可能な圧力調整部35を構成する。
【0079】
上記のように、チッピング試験装置102によれば、手動式の圧力調整弁32a,32bを使用して発射体5を発射することができる。手動式の圧力調整弁は、電動式の圧力調整弁と比較して安価且つ高寿命であるため、チッピング試験装置102の製造コストを抑えつつ信頼性を向上させることが可能となる。このようなチッピング試験装置102は、特に作業環境が過酷な場合に好適に使用される。
【符号の説明】
【0080】
1,101…チッピング試験装置、5…発射体、10…剛性筒体、20…弾性筒体、21…第1筒体(別の弾性筒体)、22…第2筒体(弾性筒体)、31…圧縮空気供給源、32…圧力調整弁、35…圧力調整部、40,140…発射体投入部、50…制御部、54…速度計測部、60…継手部、P1…初期位置、P2…加速開始位置。