(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】無人搬送車
(51)【国際特許分類】
B65G 1/00 20060101AFI20250212BHJP
B66F 9/24 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
B65G1/00 501C
B66F9/24 A
(21)【出願番号】P 2021162491
(22)【出願日】2021-10-01
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】江坂 絵美華
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-013430(JP,A)
【文献】特開2020-140490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00
B66F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に設けられ、荷を収容する棚
の荷収容部に対して荷を出入させる荷役装置と、
前記車体に設けられ、前記車体の周囲の所定範囲にレーザ光を走査するレーザセンサと、
前記レーザセンサにより検出されるレーザ点に基づいて自己位置を推定する制御装置と、を備えたに無人搬送車において、
前記レーザセンサは、前記レーザ光が前記
荷収容部の収容空間の荷
スペースの上方に設定される
荷を前記棚から持ち上げるために必要なデッドスペースを通過する高さに設けられ、
前記レーザセンサの高さは前記棚と別に設けた複数の高輝度部材が設置される高さと同じ高さであり、
前記荷役装置により出入される荷が前記デッドスペースを通過して前記複数の高輝度部材のうち特定の前記高輝度部材を検出するレーザ光を遮蔽するとき、前記制御装置は、前記特定の高輝度部材を除く、検出可能な複数の高輝度部材に基づいて前記自己位置を推定することを特徴とする無人搬送車。
【請求項2】
前記制御装置は、前記特定の高輝度部材を検出するレーザ光が遮断されたときに、前記レーザセンサにより検出可能とする少なくとも3個の前記高輝度部材のレーザ点に基づいて自己位置を推定することを特徴とする請求項1記載の無人搬送車。
【請求項3】
前記車体に設けられた駆動輪と、
前記駆動輪の回転量を検出するエンコーダと、を備え、
前記制御装置は、前記特定の高輝度部材を検出するレーザ光が遮断され、前記自己位置の推定のために検出可能な複数の高輝度部材が不足するとき、前記エンコーダから出力された回転量をオドメトリ情報とし、前記オドメトリ情報に基づいて前記自己位置の推定することを特徴とする請求項1記載の無人搬送車。
【請求項4】
前記レーザセンサは、
前記車体の全周囲にレーザ光を走査可能とするセンサ回転部を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の無人搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無人搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
無人搬送車に関係する従来技術として、例えば、特許文献1に開示されたレーザ式無人搬送車用棚及びそれを用いた無人搬送システムが知られている。
【0003】
特許文献1に開示されたレーザ式無人搬送車用棚は、レーザ式無人搬送車に対して使用されるレーザ式無人搬送車用棚である。レーザ式無人搬送車は、倉庫内に設置された反射板を認識するレーザースキャナを備え、レーザースキャナは、レーザを水平に360度回転しながら反射板に送受信する。反射板及び前記レーザースキャナは、所定の設定高さに設置されている。レーザ式無人搬送車用棚は、左右方向及び上下方向に設けられ、荷物を保管する複数の荷物用空間と、左右方向に設けられ、荷物を保管せずレーザを遮らない複数のレーザ用空間と、荷物用空間及びレーザ用空間を規定するフレームと、を備える。荷物用空間は、所定の第1空間高さを有する。レーザ用空間は、設定高さに配置されると共に、第1空間高さより小さい第2空間高さを有し、レーザ用空間は、上下方向に荷物用空間の間に配置されている。
【0004】
そして、レーザ式無人搬送車用棚は、左右方向及び上下方向に設けられ、荷物を保管する複数の荷物用空間と、左右方向に設けられ、荷物を保管せずレーザを遮らない複数のレーザ用空間と、荷物用空間及びレーザ用空間を規定するフレームと、を備える。さらに、特許文献1に開示された無人搬送システムは、このレーザ式無人搬送車用棚と、レーザ式無人搬送車と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のレーザ式無人搬送車用棚では、レーザ用空間は、上下方向に荷物用空間の間に配置されているので、レーザ用空間の分だけ棚の高さが高くなるという問題がある。また、特許文献1のレーザ式無人搬送車用棚では、荷物用空間とレーザ用空間とは、荷物用空間及びレーザ用空間を規定するフレームを備えるので、荷物用空間及びレーザ用空間を規定するフレームを備えない場合と比較して、棚を構成する部材の数が増え、棚の製作コストが増大する。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、棚の高さを抑制するとともに棚の製作コストを抑制することが可能な無人搬送車の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、車体と、前記車体に設けられ、荷を収容する棚の荷収容部に対して荷を出入させる荷役装置と、前記車体に設けられ、前記車体の周囲の所定範囲にレーザ光を走査するレーザセンサと、前記レーザセンサにより検出されるレーザ点に基づいて自己位置を推定する制御装置と、を備えたに無人搬送車において、前記レーザセンサは、前記レーザ光が前記荷収容部の収容空間の荷スペースの上方に設定される荷を前記棚から持ち上げるために必要なデッドスペースを通過する高さに設けられ、前記レーザセンサの高さは前記棚と別に設けた複数の高輝度部材が設置される高さと同じ高さであり、前記荷役装置により出入される荷が前記デッドスペースを通過して前記複数の高輝度部材のうち特定の前記高輝度部材を検出するレーザ光を遮蔽するとき、前記制御装置は、前記特定の高輝度部材を除く、検出可能な複数の高輝度部材に基づいて前記自己位置を推定することを特徴とする。
【0009】
本発明では、荷役装置により出入される荷が複数の高輝度部材のうち特定の高輝度部材を検出するレーザ光を遮蔽しても、制御装置は、特定の高輝度部材を除く、検出可能な複数の高輝度部材に基づいて自己位置を推定する。したがって、棚にデッドスペースを含む収容空間のほかにレーザ光を通すための専用のレーザ用空間を設ける必要がなくなる。その結果、棚のスペース効率を向上し、棚の高さを抑制するとともに、棚の部材を削減でき、製作コストを抑制できる。
【0010】
上記の無人搬送車において、前記制御装置は、前記特定の高輝度部材を検出するレーザ光が遮断されたときに、前記レーザセンサにより検出可能とする少なくとも3個の前記高輝度部材のレーザ点に基づいて自己位置を推定する構成としてもよい。
この場合、制御装置は、特定の高輝度部材を検出するレーザ光が遮断されたときに、少なくとも3個の高輝度部材のレーザ点に基づいて自己位置を推定する。レーザセンサが検出する少なくとも3個の高輝度部材のレーザ点に基づいて自己位置を推定することで、自己位置を正確に推定することができる。
【0011】
また、上記の無人搬送車において、前記車体に設けられた駆動輪と、前記駆動輪の回転量を検出するエンコーダと、を備え、前記制御装置は、前記特定の高輝度部材を検出するレーザ光が遮断され、前記自己位置の推定のために検出可能な複数の高輝度部材が不足するとき、前記エンコーダから出力された回転量をオドメトリ情報とし、前記オドメトリ情報に基づいて前記自己位置の推定する構成としてもよい。
この場合、エンコーダにより検出される駆動輪の回転量をオドメトリ情報とするので、自己位置推定のための機器を別に追加する必要がない。
【0012】
また、上記の無人搬送車において、前記レーザセンサは、前記車体の全周囲にレーザ光を走査可能とするセンサ回転部を備えている構成としてもよい。
この場合、レーザセンサは、車体の全周囲にレーザ光を走査することができるので、自己位置の推定に必要な複数の高輝度部材を互いに異なる位置に設けても、自己位置の推定に必要な複数の高輝度部材をより確実に検出することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、棚の高さを抑制するとともに棚の製作コストを抑制することが可能な無人搬送車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係る無人フォークリフトおよび棚が配置された倉庫の平面図である。
【
図2】(a)は棚の一部を示す正面図であり、(b)は棚の側面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る無人フォークリフトの側面図である。
【
図5】(a)は無人フォークリフトが取り出す荷と向き合った状態を示す側面図であり、(b)は無人フォークリフトが棚の荷を取り出すときの状態を示す側面図であり、(c)は無人フォークリフトが棚の荷を取り出した後の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る無人搬送車について図面を参照して説明する。本実施形態の無人搬送車は、自律走行可能な無人リーチ式フォークリフトである。本実施形態では、棚が設置された倉庫に用いられる無人リーチ式フォークリフトを例示して説明する。
【0016】
まず、
図1に示す無人リーチ式フォークリフト(以後、単に「無人フォークリフト」と表記する)30が用いられる倉庫10について説明する。倉庫10には、複数(4台)の棚20が配設されている。倉庫10の壁11と棚20との間および棚20と棚20との間には、無人リーチ式フォークリフト30が走行可能な走行路12が形成されている。倉庫10の壁11は、出入口14を備える壁11Aと、壁11Aと相対する壁11Bと、壁11Aおよび壁11Bを接続する壁11C、11Dと、を有する。
【0017】
倉庫10の壁11には、複数の反射材13が取り付けられている。壁11Aには2個の反射材13A、13Bが間隔を空けて取り付けられている。壁11Bには2個の反射材13C、13Dが取り付けられている。壁11Cには4個の反射材13E、13F、13G、13Hが間隔を空けて取り付けられている。壁11Dには4個の反射材13J、13K、13L、13Mが取り付けられている。
【0018】
次に、棚20について説明する。
図1に示すように、棚20は2台1組として4台の棚20が設置されている。
図2(a)および
図2(b)に示すように、棚20は、所定間隔で配設された複数の支柱21と、支柱21を連結する複数の横架部材22、23と、支柱21および横架部材22、23により区画され、荷Wを収容する荷収容部24と、を有している。本実施形態の棚20は、走行路12に沿って7個の間口を有し、上下3段の荷収容部24を有する。つまり、1台の棚20は21個の荷収容部24を備えている。最下段の荷収容部24は床面に荷Wが載置されるが、2段目および3段目の荷収容部24には、荷Wを受承するための受承部材(図示せず)が設けられている。なお、最下段の荷収容部24に受承部材を設けて、床面ではなく受承部材に荷Wを載置させるようにしてもよい。また、本実施形態の棚20に収容される荷Wは同一寸法のものである。
【0019】
荷収容部24の収容空間は、荷Wの体積と同じスペースの荷スペースSwのほかに、荷Wを棚20に対して出入するとき、荷Wを床面又は受承部材から持ち上げるために必要なデッドスペースSdを含む。荷収容部24において、デッドスペースSdは、荷収容部24に荷Wが収容されている状態では、荷Wの上面と荷Wの上方の横架部材23との間のスペースに相当する。したがって、荷Wが荷収容部24に収容されていない状態では、デッドスペースSdは、荷スペースSwの上方に位置する。
【0020】
次に、無人フォークリフト30について説明する。
図3に示すように、無人フォークリフト30は、車体31の前部に設けた左右一対のリーチレグ32の間に進退自在の荷役装置33を有している。リーチレグ32には前輪34が設けられ、車体31の後部には、操舵輪および駆動輪としての後輪35と、車体31の姿勢をより安定させるためのキャスタ輪(図示せず)が備えられている。
【0021】
荷役装置33は荷役のための装置であり、左右のリーチレグ32に支持されたアウタマスト36と、アウタマスト36に昇降可能に支持されたインナマスト37とを備えている。インナマスト37には、左右一対のフォーク38が昇降可能に支持されている。アウタマスト36の後方にはインナマスト37を昇降させるリフトシリンダ39が固定されている。したがって、無人フォークリフト30は、荷役装置33によって棚20に対する荷Wの出入を可能としている。
【0022】
図4に示すように、無人フォークリフト30は、後輪35を駆動させる走行駆動装置40を備える。走行駆動装置40は、後輪35を回転させるための駆動モータ41と、駆動モータ41を駆動するモータドライバ42と、を備えている。モータドライバ42は、制御装置43からの指令に応じて駆動モータ41の回転数を制御する。制御装置43は、無人フォークリフト30の各部を制御する。制御装置43は、CPU44と、RAMおよびROM等からなる記憶部45と、を備えている。制御装置43は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)を備えていてもよい。制御装置43は、コンピュータプログラムにしたがって動作する1つ以上のプロセッサ、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、あるいは、それらの組み合わせを含む回路として構成し得る。
【0023】
記憶部45は、処理をCPU44に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部45には、無人フォークリフト30を制御するための種々のプログラムが記憶されているほか、無人フォークリフト30の移動を行なう移動空間に関する環境地図が記憶されている。自己位置推定と環境地図の構築を同時に行なう技術は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)と称される。記憶部45、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆるものを含む。
【0024】
本実施形態では、操舵輪および駆動輪としての後輪35の車軸(図示せず)の回転量を検出するエンコーダ46が備えられている。エンコーダ46により検出される車軸の回転量は制御装置43に伝達される。エンコーダ46から出力された後輪35の車軸の回転量は、無人フォークリフト30の自己位置の推定するオドメトリ情報である。
【0025】
図1に示すように、車体31にはヘッドガード47が備えられており、ヘッドガード47の上部にはレーザセンサ50が備えられている。本実施形態のレーザセンサ50は、レーザレンジファインダ(LRF)である。レーザレンジファインダは、レーザを周辺に照射し、レーザが当たった部分から反射された反射光を受信することで距離を測定する距離計である。
【0026】
レーザセンサ50は、ヘッドガード47に固定されるセンサ基部51と、センサ基部51に対して回転するセンサ回転部52を有している。センサ回転部52は、レーザ光を送受光する送受光体53を備えている。送受光体53は、路面が水平ではレーザ光を水平方向に照射し、センサ回転部52の回転により車体31の周囲の360°の所定範囲を走査する。つまり、
図1に示すように、レーザセンサ50は、センサ回転部52を中心に所定半径Rの円で示される探索範囲Eを走査する2次元のレーザセンサである。また、送受光体53は、レーザ光の探索範囲Eに障害物が存在する場合に、障害物から反射されたレーザ光を受光する。探索範囲Eに障害物が存在すると、レーザセンサ50は障害物をレーザ点群として検出し、制御装置43は、レーザ点群におけるレーザセンサ50から各レーザ点まで計測距離および方向のほか、各レーザ点の輝度を取得する。計測距離はレーザ点の座標データに基づいて算出される。
【0027】
送受光体53の地上からの高さ(地上高)は、棚20の位置に合わせて設定されている。具体的には、レーザセンサ50の送受光体53の地上高は、棚20における2段目の荷収容部24のデッドスペースSdにレーザ光が通るように設定されている。したがって、2段目の荷収容部24に荷Wが無い状態のほか、荷Wが荷収容部24に収容されている状態では、レーザセンサ50のレーザ光はデッドスペースSdを通過することになる。なお、送受光体53は、デッドスペースSdに基づく地上高の条件と合わせて、無人フォークリフト30の走行時(フォーク38が床面に近い位置にあるとき)に荷役装置33等によってレーザ光が遮られない位置に設けられることが好ましい。因みに、無人フォークリフト30の自律走行では、棚20に対する荷Wの出入時を除き、荷Wを上昇させた状態で走行することはない。
【0028】
本実施形態では、倉庫10の壁11には複数の反射材13が備えられているが、反射材13は、送受光体53の地上高に合わせた高さで壁11に取り付けられている。反射材13の反射面は円筒状に形成されている。したがって、反射材13は、他の障害物と比較して無人フォークリフト30のレーザセンサ50のレーザ光を高い反射率で反射する。反射材13は高輝度部材に相当する。本実施形態では、無人フォークリフト30が棚20のどの間口と対向しても、レーザセンサ50が少なくとも4個の反射材13を検出できるように、反射材13が壁11に取り付けられている(
図1を参照)。また、棚20の間口と対向しない位置では、3個以上の反射材13を検出できるように、反射材13が壁11に設けられている。
【0029】
レーザセンサ50が反射されたレーザ光を受光することで、制御装置43は、反射材13の複数のレーザ点を高輝度レーザ点群として検出する。そして、制御装置43は、無人フォークリフト30の自己位置を高い精度で推定するため、3個以上の反射材13の高輝度レーザ点群を検出することにより、無人フォークリフト30の自己位置を推定する。なお、制御装置43が4個以上の反射材13の高輝度レーザ点群に基づいて、自己位置を推定することも可能である。
【0030】
ところで、無人フォークリフト30が棚20の2段目の荷収容部24に対して荷Wを出入させる際、フォーク38が受承する荷Wを荷収容部24の受承部材の上方に位置させ、車体31を移動させることで荷Wが荷収容部24に対して出入される。フォーク38が受承する荷Wを荷収容部24の受承部材の上方に位置させると、デッドスペースSdの殆どは、フォーク38により受承された荷Wにより埋められる。このため、レーザセンサ50のレーザ光が遮られる。荷Wによってレーザ光が遮断されると、レーザ光がデッドスペースSdを通過することができず反射材13を見失う。
【0031】
制御装置43は、荷Wの出入により荷Wがレーザ光を遮断することにより反射材13の高輝度レーザ点群を検出することができなくても、無人フォークリフト30の自己位置を直ちに見失うことなく、自己位置を推定する。制御装置43は、複数(3個)の反射材13の高輝度レーザ点群に基づいて自己位置を推定するが、制御装置43は、荷Wがレーザ光を遮断しない状態では、常に4個以上の反射材13の高輝度レーザ点群を検出する。したがって、自己位置を推定のために用いた特定の反射材13が検出されないとき、制御装置43は、自己位置の推定に用いなかった反射材13の高輝度レーザ点群を含む3個の反射材13の高輝度レーザ点群を自己位置推定のために利用する。
【0032】
棚20の荷収容部24に対する荷Wの出入が完了し、レーザ光がデッドスペースSdを通過すれば、制御装置43は、レーザ光が遮断される前に用いた反射材13の高輝度レーザ点群を含む3個の反射材13の高輝度レーザ点群に基づいて、自己位置を推定する。
【0033】
次に、本実施形態の無人フォークリフト30による棚20に対する荷役について説明する。
図1に示す位置の無人フォークリフト30が対向する棚20の荷収容部24に載置されている荷Wを取り出す場合について説明する。
図5(a)に示すように、荷役装置33が荷Wを持ち上げる前の状態では、デッドスペースSdを通過するレーザセンサ50のレーザ光は遮断されない。このとき、レーザセンサ50は5個の反射材13A、13B、13F、13J、13Kを検出している(
図1を参照)。したがって、制御装置43は、反射材13A、13B、13F、13J、13Kの中から3個の反射材13(無人フォークリフト30に近い順で反射材13A、13B、13K)の高輝度レーザ点群に基づいて無人フォークリフト30の自己位置を推定する。
【0034】
次に、
図5(b)に示すように、荷役装置33が荷Wを持ち上げることにより荷WがデッドスペースSdを通過するレーザ光を遮断する。このため、制御装置43は、反射材13Kの高輝度レーザ点群を検出できなくなる。レーザセンサ50が反射材13Kを検出できなくなると、制御装置43は、検出されている反射材13Jの高輝度レーザ点群と、反射材13A、13Bの高輝度レーザ点群に基づいて自己位置を推定する。
【0035】
次に、
図5(c)に示すように、棚20の荷収容部24に対する荷Wの取り出しが完了すると、荷Wがレーザ光を遮断しなくなるので、レーザ光が再びデッドスペースSdを通過する。このため、レーザセンサ50は反射材13Kを再び検出し、制御装置43は、反射材13Kの高輝度レーザ点群を検出する。したがって、制御装置43は、レーザ光が遮断される前に用いた3個の反射材13A、13B、13Kの高輝度レーザ点群に基づいて、自己位置を推定する。
【0036】
また、無人フォークリフト30が対向する棚20の荷収容部24に荷Wを出入させる場合、制御装置43は、特定の反射材13の高輝度レーザ点群を検出できなくなる。このとき、制御装置43は、自己位置の推定に用いなかった反射材13の高輝度レーザ点群を含む3個の反射材13の高輝度レーザ点群に基づいて自己位置を推定する。
【0037】
なお、棚20の3段目の荷収容部24に対して荷Wを出入させるとき、荷WがデッドスペースSdを通過するレーザ光を遮断するが、この場合も、制御装置43は、自己位置の推定に用いなかった反射材13の高輝度レーザ点群を含む3個の反射材13の高輝度レーザ点群に基づいて自己位置を推定する。レーザ光がデッドスペースSdを再び通過すると、レーザ光が遮断される前に用いた3個の反射材13の高輝度レーザ点群に基づいて、自己位置を推定する。
【0038】
ところで、本実施形態では、自己位置を推定のために用いた特定の反射材13が検出されないとき、制御装置43は、自己位置の推定に用いなかった反射材13の高輝度レーザ点群を含む3個の反射材13の高輝度レーザ点群に基づいて自己位置を推定する。仮に、荷Wを棚20に対して出入させ、荷Wがレーザ光を遮断するとき、レーザセンサ50が何らかの理由で3個以上の反射材13を検出できない場合には、制御装置43は、オドメトリ情報であるエンコーダ46から出力された回転量に基づいて自己位置を推定する。
【0039】
具体的には、荷Wがレーザ光を遮断したとき、制御装置43は、無人フォークリフト30が棚20に対して接近又は離隔するように、走行駆動装置40を制御する。そして、制御装置43は無人フォークリフト30の移動時における回転量を積算することにより、所定時間における無人フォークリフト30の移動量(距離や方向)を算出することができる。よって、オドメトリ情報を使用することにより無人フォークリフト30の自己位置を推定することができる。
【0040】
棚20の荷収容部24に対する荷Wの取り出しが完了し、荷Wがレーザ光を遮断しなくなれば、自己位置を推定のために用いた特定の反射材13が検出されるので、制御装置43は、再び反射材13の高輝度レーザ点群に基づいて自己位置を推定すればよい。
【0041】
本実施形態の無人フォークリフト30は以下の効果を奏する。
(1)荷役装置33により出入される荷WがデッドスペースSdを通るレーザ光を遮蔽することで複数の反射材13のうち特定の反射材13が検出されなくても、制御装置43は、特定の反射材13を除く、検出可能な複数の反射材13に基づいて自己位置を推定する。したがって、棚20にデッドスペースSdを含む収容空間のほかにレーザ光を通すための専用のレーザ用空間を設ける必要がなくなる。その結果、棚20のスペース効率を向上し、棚20の高さを抑制するとともに、棚20の部材を削減でき、製作コストを抑制できる。
【0042】
(2)制御装置43は、特定の反射材13を検出するレーザ光が遮断されたときに、レーザセンサ50により検出可能とする少なくとも3個の反射材13の高輝度レーザ点群に基づいて自己位置を推定する。よって、複数の反射材13のうちの特定の反射材13へのレーザ光が遮断されたときに、制御装置43は、レーザセンサ50が検出する少なくとも3個の反射材13の高輝度レーザ点群に基づいて自己位置を推定することで、自己位置を正確に推定することができる。
【0043】
(3)レーザセンサ50は、車体31の全周囲(360°)にレーザ光を走査可能とするセンサ回転部52を備えているので、自己位置の推定に必要な複数の反射材13を互いに異なる位置に設けても、自己位置の推定に必要な複数の反射材13をより確実に検出することができる。
【0044】
(4)無人フォークリフト30が棚20の間口に対向する位置では、レーザセンサ50が少なくとも4個の反射材13を検出することができるように、複数の反射材13が壁11に取り付けられている。したがって、荷WがデッドスペースSdを通過するレーザ光を遮断し、特定の反射材13が検出されなくても、制御装置43は、少なくとも3個の反射材13の高輝度レーザ点群を検出することができる。
【0045】
(5)倉庫10において間口以外の位置では3個以上の反射材13を検出できるように、複数の反射材13が壁11に取り付けられている。したがって、倉庫10において間口以外の位置では、レーザ光を遮る高さまで荷Wを上昇させない限り、制御装置43は、3個以上の反射材13の高輝度レーザ点群を検出することができる。
【0046】
(6)荷Wを棚20に対して出入させ、荷Wが特定の反射材13を検出するレーザ光を遮断し、自己位置を推定のために検出可能な複数の反射材13が不足するとき、レーザセンサ50が何らかの理由で3個以上の反射材13を検出できない場合には、エンコーダ46から出力された回転量をオドメトリ情報とし、制御装置43はオドメトリ情報に基づいて自己位置を推定する。エンコーダ46により検出される後輪35の車軸の回転量をオドメトリ情報とするので、自己位置推定のための機器を追加する必要がない。
【0047】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0048】
○ 上記の実施形態では、レーザセンサは、車体の全周囲にレーザ光を走査可能とするセンサ回転部を備えたが、これに限らない。レーザセンサは、例えば、270°の範囲でレーザ光を走査してもよく、必ずしもレーザ光を全周囲に走査しないようにしてもよい。
○ 上記の実施形態では、荷がデッドスペースを通るレーザ光を遮蔽することで複数の高輝度部材のうち特定の高輝度部材が検出されないとき、少なくとも3個の高輝度部材のレーザ点およびオドメトリ情報に基づいて自己位置を推定したがこれ限定されない。例えば、複数の高輝度部材のうちの特定の高輝度部材へのレーザ光が遮断されたときに、レーザセンサにより検出可能とする少なくとも3個の高輝度部材のレーザ点のみに基づいて自己位置を推定してもよい。また、複数の高輝度部材のうちの特定の高輝度部材へのレーザ光が遮断されたときに、オドメトリ情報のみに基づいて自己位置を推定してもよい。
○ 上記の実施形態では、棚の2段目の荷収容部のデッドスペースをレーザ光が通過するようにレーザセンサを設けるようにしたが、これに限らない。無人搬送車の条件に応じてレーザセンサの高さを変更してもよく、例えば、1段目の荷収容部のデッドスペースをレーザ光が通過するようにしてもよい。
○ 上記の実施形態では、棚が床面に固定された固定式の棚(固定棚)としたが、これに限定されない。棚は床面に対して移動可能な移動棚であってもよい。なお、棚が移動棚である場合、移動棚に反射材を設けないようにする。
○ 上記の実施形態では、複数の反射材を倉庫の壁にのみ設置するようにしたが、これに限らない。棚が固定式の固定棚であれば、棚の支柱や横架材に反射材を設けてもよい。また、倉庫の壁以外の柱や倉庫内に設置された固定構造物に反射材を設けてもよい。
○ 上記の実施形態では、無人搬送車として無人リーチ式フォークリフトを例示したが、これに限定されない。無人搬送車は、フォークリフトに限らず自律走行可能であって棚に対して荷の出入を可能とする無人搬送車であれば、種類や形式は問われない。
【符号の説明】
【0049】
10 スタッカクレーン10 倉庫
11(11A、11B、11C、11D、11E) 壁
13(13A、13B、13C、13D、13E、13F、13G) 反射材
20 棚
24 荷収容部
30 無人フォークリフト(無人搬送車)
31 車体
33 荷役装置
35 後輪(駆動輪)
38 フォーク
43 制御装置
46 エンコーダ
50 レーザセンサ
52 センサ回転部
53 送受光体
E 探索範囲
L レーザ光
R 所定半径(探索範囲)
Sw 荷スペース
Sd デッドスペース
W 荷