(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】車両用電池ユニット
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6568 20140101AFI20250212BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20250212BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20250212BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20250212BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20250212BHJP
【FI】
H01M10/6568
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/6556
(21)【出願番号】P 2021173846
(22)【出願日】2021-10-25
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花岡 輝彦
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-518944(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0036066(US,A1)
【文献】国際公開第2017/002325(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/171885(WO,A1)
【文献】特表2013-509688(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0066682(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6568
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/647
H01M 10/6556
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルと、該電池セルを冷却するための液状冷媒を通す冷媒通路が形成された冷媒通路部材を備えた車両用電池ユニットであって、
上記冷媒通路部材は、上記冷媒が上記複数の電池セルの下面又は側面に沿って横方向に流れるように設けられており、
上記冷媒通路部材は、該冷媒通路部材を上下に貫通し、該冷媒通路部材から漏洩した冷媒を該冷媒通路部材上から該冷媒通路部材の下方へ排出する複数の漏洩冷媒排出管部を備えていることを特徴とする車両用電池ユニット。
【請求項2】
請求項1において、
上記複数の電池セル及び上記冷媒通路部材を収容するケースと、
上記ケース内に該ケースの底面との間に隙間をあけて配置され、上記複数の電池セルを支持するプレートとを備え、
上記プレートは、該プレートを上下に貫通し、上記漏洩冷媒排出管部から下方に排出される漏洩冷媒を上記ケースの底面に導く貫通孔を備え、
上記ケースの底面に上記漏洩冷媒を排出する排出口が開口していることを特徴とする車両用電池ユニット。
【請求項3】
請求項2において、
上記複数の電池セル各々は、上面及び下面が側面に比べて広い扁平な直方体形状を有し、その一つの側面に電極端子及び安全弁を備え、
上記冷媒が上記複数の電池セルの下面に沿って横方向に流れるように、上記冷媒通路部材が上記プレートの上に載り、上記複数の電池セルが横並びになって上記冷媒通路部材を介して上記プレートに載置されていることを特徴とする車両用電池ユニット。
【請求項4】
請求項3において、
上記冷媒通路部材は、熱伝導性充填剤を含有する柔軟なシリコーン樹脂によって形成され、その表面が上記冷媒を吸収すると軟化するゲルによって覆われて扁平な直方体状になっていることを特徴とする車両電池ユニット。
【請求項5】
請求項2において、
上記複数の電池セル各々は、相対する一対の側面が他の側面、上面及び下面に比べて広い直方体形状を有し、その上面に電極端子及び安全弁を備え、
上記複数の電池セルは上記広い側面同士が向かい合うように並設されており、
上記冷媒通路部材は、上記冷媒が上記複数の電池セル各々の4つの側面に沿って横方向に流れるように設けられており、上記複数の電池セル各々の周囲に上記漏洩冷媒排出管部が配置されていることを特徴とする車両用電池ユニット。
【請求項6】
請求項2において、
上記複数の電池セル各々は、相対する一対の側面が他の側面、上面及び下面に比べて広い直方体形状を有し、その上面に電極端子及び安全弁を備え、
上記複数の電池セルは上記広い側面同士が向かい合うように並設されており、
上記冷媒通路部材は、並設された複数の電池セルの両側を当該電池セルの並設方向に延びており、
上記冷媒通路部材と上記電池セルの間、並びに相隣る上記電池セルの間に熱伝導材が設けられ、上記冷媒通路部材と上記電池セルの間の熱伝導材と、相隣る上記電池セルの間の熱伝導材は連続しており、
上記熱伝導材の高さが上記冷媒通路部材の高さよりも高く、上記熱伝導材の上端が上記冷媒通路部材の上端よりも高くなっていることを特徴とする車両用電池ユニット。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれか一において、
上記複数の電池セルの並設方向の中央側に位置する上記漏洩冷媒排出管部は両端側に位置する上記漏洩冷媒排出管部よりも内径が大きいことを特徴とする車両用電池ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用電池ユニットは、電池セルのエネルギー密度が高まる傾向にあり、その結果、電池セルの発熱及び温度上昇も大きくなるため、安全性・寿命維持の観点で電池セルの冷却が必要になる。電池セルを効率的に冷却するには、液状冷媒を通す冷媒通路部材を電池セルに直接接触させる冷却方式が有効である。
【0003】
特許文献1には、複数の円筒形電池セルを並べてなる電池セル列の間に、内部に冷媒が流れる波形の冷却チューブを隣接する列の電池セル間を縫うように配置することが記載されている。また、冷却チューブと電池セルの間に熱伝導性媒体を設けることも同文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記冷却方式の場合、冷却チューブのような冷媒通路部材の経年劣化や衝撃による破損によって冷媒が漏れて、電池セルが短絡(液絡)を起こすことが懸念される。すなわち、冷媒通路部材から漏れた冷媒が冷媒通路部材の上に溜まってくると、その冷媒が電池セルの電極端子に接触して短絡を生ずるという問題である。
【0006】
そこで、本発明は、冷媒通路部材から液状冷媒が漏れても電池セルが短絡しないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、漏洩冷媒を冷媒通路部材の上から冷媒通路部材の下方に排出できるようにする。
【0008】
ここに開示する車両用電池ユニットは、複数の電池セルと、該電池セルを冷却するための液状冷媒を通す冷媒通路が形成された冷媒通路部材を備え、
上記冷媒通路部材は、上記冷媒が上記複数の電池セルの下面又は側面に沿って横方向に流れるように設けられており、
上記冷媒通路部材は、該冷媒通路部材を上下に貫通し、該冷媒通路部材から漏洩した冷媒を該冷媒通路部材上から該冷媒通路部材の下方へ排出する複数の漏洩冷媒排出管部を備えていることを特徴とする。
【0009】
これによれば、冷媒通路部材の上に漏洩冷媒が溜まることが避けられるから、漏洩冷媒による電池セルの短絡を防止することができる。
【0010】
一実施形態では、上記複数の電池セル及び上記冷媒通路部材を収容するケースと、
上記ケース内に該ケースの底面との間に隙間をあけて配置され、上記複数の電池セルを支持するプレートとを備え、
上記プレートは、該プレートを上下に貫通し、上記漏洩冷媒排出管部から下方に排出される漏洩冷媒を上記ケースの底面に導く貫通孔を備え、
上記ケースの底面に上記漏洩冷媒を排出する排出口が開口している。
【0011】
これによれば、漏洩冷媒排出管部によって冷媒通路部材の下方に排出された漏洩冷媒がプレートの貫通孔を通ってケースの底面に導かれる。プレートとケース底面の間に隙間があるから、この隙間が漏洩冷媒の排出路となり、従って、漏洩冷媒が滞ることなく、ケース底面に開口した排出口から円滑に排出される。
【0012】
一実施形態では、上記複数の電池セル各々は、上面及び下面が側面に比べて広い扁平な直方体形状を有し、その一つの側面に電極端子及び安全弁を備え、
上記冷媒が上記複数の電池セルの下面に沿って横方向に流れるように、上記冷媒通路部材が上記プレートの上に載り、上記複数の電池セルが横並びになって上記冷媒通路部材を介して上記プレートに載置されている。
【0013】
従って、各電池セルをその下面側から冷媒通路部材の冷媒によって冷却することができる。そして、冷媒通路部材から冷媒が漏れ出ても、これを漏洩冷媒排出管部によって冷媒通路部材の上から下方に排出することができるから、冷媒が冷媒通路部材の上に溜まることがなく、電池セルの短絡が防止される。
【0014】
上記複数の電池セルが横並びになって上記冷媒通路部材を介して上記プレートに載置されている形態において、好ましくは、上記冷媒通路部材は、熱伝導性充填剤を含有する柔軟なシリコーン樹脂によって形成され、その表面が上記冷媒を吸収すると軟化するゲルによって覆われて扁平な直方体状になっている。
【0015】
従って、冷媒通路部材は、冷媒が漏れ出ていないときは上面が平坦であって、複数の電池セルを広い面で支持して下面側から冷却する。冷媒通路部材から冷媒が漏れ出ると、冷媒通路部材の冷媒で濡れた部分は、表面のゲルが冷媒を吸収することによって軟化してへたる(くぼむ)。よって、漏れ出た冷媒が漏洩冷媒排出管部に向かって流れ易くなり、その排出がスムースになる。
【0016】
一実施形態では、上記複数の電池セル各々は、相対する一対の側面が他の側面、上面及び下面に比べて広い直方体形状を有し、その上面に電極端子及び安全弁を備え、
上記複数の電池セルは上記広い側面同士が向かい合うように並設されており、
上記冷媒通路部材は、上記冷媒が上記複数の電池セル各々の4つの側面に沿って横方向に流れるように設けられており、上記複数の電池セル各々の周囲に上記漏洩冷媒排出管部が配置されている。
【0017】
従って、各電池セルをその周囲(側面)から冷媒通路部材の冷媒によって冷却することができる。そして、冷媒通路部材から冷媒が漏れ出ても、これを漏洩冷媒排出管部によって冷媒通路部材の上から下方に排出することができるから、冷媒が冷媒通路部材の上に溜まることがなく、電池セルの短絡が防止される。
【0018】
一実施形態では、上記複数の電池セル各々は、相対する一対の側面が他の側面、上面及び下面に比べて広い直方体形状を有し、その上面に電極端子及び安全弁を備え、
上記複数の電池セルは上記広い側面同士が向かい合うように並設されており、
上記冷媒通路部材は、並設された複数の電池セルの両側を当該電池セルの並設方向に延びており、
上記冷媒通路部材と上記電池セルの間、並びに相隣る上記電池セルの間に熱伝導材が設けられ、上記冷媒通路部材と上記電池セルの間の熱伝導材と、相隣る上記電池セルの間の熱伝導材は連続しており、
上記熱伝導材の高さが上記冷媒通路部材の高さよりも高く、上記熱伝導材の上端が上記冷媒通路部材の上端よりも高くなっている。
【0019】
従って、各電池セルを熱伝導材の伝熱により冷媒通路部材の冷媒によって冷却することができる。電池セル間には冷却通路部材ではなく熱伝導材を設ける構成であるから、電池セル並設方向の電池ユニットの長さの短縮化に有利になる。電池セル間の熱伝導材の上端が冷媒通路部材の上端よりも高くなっているから、漏洩冷媒の電池セル間への侵入を防止することができる。
【0020】
一実施形態では、上記複数の電池セルの並設方向の中央側に位置する上記漏洩冷媒排出管部は両端側に位置する上記漏洩冷媒排出管部よりも内径が大きい。
【0021】
電池セル並設方向の中央側の電池セルは両端側の電池セルよりも温度が上昇しやすいところ、当該中央側の漏洩冷媒排出管部の内径を大きくしたことにより、当該中央側の短絡リスクが低減し、安全性向上に有利になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、冷媒通路部材に該冷媒通路部材の上から冷媒を該冷媒通路部材の下方へ排出する複数の漏洩冷媒排出管部を設けたから、冷媒通路部材の上に漏洩冷媒が溜まることが避けられ、漏洩冷媒による電池セルの短絡防止に有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】実施形態1の冷媒通路部材、支持プレート及びケースを示す斜視図。
【
図3】実施形態1に係る電池ユニットの冷媒通路部材が破損したときの漏洩冷媒排出ルートを示す縦断面図。
【
図9】
図8のIX-IX線において熱伝導材を省略して示す断面図。図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
<実施形態1>
図1に示す車両用電池ユニット1は、ケース2に電池モジュール3、冷媒通路部材4及び支持プレート5を収容してなる。電池モジュール3は充放電可能な複数の電池セル6よりなる。電池セル6は、上面及び下面の面積が側面の面積に比べて広い、すなわち、上下方向の厚みが薄い扁平な直方体形状を有し、その一つの側面に正負の各電極端子7及び安全弁8を備えている。複数の電池セル6はバスバー(図示省略)によって電気的に直列接続されている。
【0026】
本例の電池モジュール3では、複数の電池セル6がその厚み方向に積み重なった平積み状態とされ、この平積みされた電池セル6が複数横並びになっている、すなわち、横方向(水平方向)に並設されている。本例の平積みセルでは、2個の電池セル6を積み重ねているが、その積層数は任意である。相隣る電池セル6の間には熱伝導材9が介装されている。電池モジュール3の上面及び側面(電極端子7及び安全弁8を備える側面を除く)も熱伝導材9で覆われている。熱伝導材9としては、例えば、シリカ微粉等の熱伝導充填剤を配合したシリコーン樹脂を採用することができる。
【0027】
電池ユニット1においては、冷媒通路部材4が支持プレート5の上に載り、電池モジュール3が冷媒通路部材4を介して支持プレート5に載置されている。
【0028】
図2に示すように、支持プレート5は、横方向に延びる2本の平行な支持バー11に渡した複数の板材12よりなる。支持プレート5の相隣る板材12の間は、透かされて支持プレート5を上下に貫通する貫通孔13になっている。この支持バー11に支持した支持プレート5が角形のケース2の底面に載置されている。
図1に示すように、支持プレート5とケース2の底面の間には支持バー11の高さに対応する隙間14ができている。
【0029】
図2に示すように、冷媒通路部材4は、横幅に比べて高さが低い扁平な直方体形状であり、電池セル6の並設方向(以下、「セル並設方向」とい。)に延びている。この冷媒通路部材4に水等の液状冷媒を通す冷媒通路15が形成されている。冷媒通路部材4の一端に冷媒の入口15aと出口15bが開口している。冷媒通路15は、入口15aからセル並設方向に延び、冷媒通路部材4の他端側で折り返して出口15bに至っている。ケース2の一端には冷媒通路部材4の入口15a及び出口15bに対応する入口2a及び出口2bが開口している。
【0030】
冷媒通路部材4は、セル並設方向に間隔をおいて設けられた複数の漏洩冷媒排出管部16a,16bを備えている。漏洩冷媒排出管部16a,16bは、冷媒通路部材4を上下に貫通し、冷媒通路15から冷媒通路部材4の上に漏洩した冷媒を冷媒通路部材4の下方へ排出する。漏洩冷媒排出管部16a,16bは、冷媒通路部材4の上壁と下壁を結んで上下に延びる管状のものであるから、冷媒通路15から漏洩冷媒排出管部16の管内に冷媒が漏れ出ることはない。セル並設方向の中央側に位置する漏洩冷媒排出管部16bは並設方向の両端側に位置する漏洩冷媒排出管部16aよりも内径が大きくなっている。
【0031】
漏洩冷媒排出管部16a,16bの管孔は、電池セル6の正負の電極端子7間の中央の真下に対応する位置に設けられている。また、漏洩冷媒排出管部16a,16bの管孔と支持プレート5の貫通孔13は上下に対応し、且つその管孔は貫通孔13よりも小さい。すなわち、支持プレート5が漏洩冷媒排出管部16a,16bの管孔を塞ぐことがないように、支持プレート5の貫通孔13が配置されている。ケース2の底面には漏洩冷媒排出孔17が開口している。
【0032】
冷媒通路部材4は、シリカ微粉等の熱伝導性充填剤を含有する柔軟なシリコーン樹脂によって形成され、その表面が冷媒を吸収すると軟化するゲルによって覆われて扁平な直方体状になっている。そのようなゲルとしては、例えば、親水性ゲルにシリコーンを結びつけたシリコーンハイドロゲルを採用することができる。親水性成分としてポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマーなどが利用される。
【0033】
上記電池ユニット1では、冷媒通路部材4の上に電池セル6が載置されていることにより、冷媒が平積みになった下段の電池セル6の下面に沿って横方向に流れて、その電池セル6が下面側から冷却される。上段側の電池セル6は熱伝導材9を介する伝熱によって冷媒通路部材4の冷媒通路15を流れる冷媒によって冷却される。
【0034】
図3に示すように、冷媒通路部材4に破損箇所18を生じて、その破損箇所18から冷媒通路15を流れる冷媒が漏れて冷媒通路部材4の上に出た場合について説明する。その漏洩冷媒は、矢符で排出ルート19を示すように、冷媒通路部材4の上面から漏洩冷媒排出管部16a,16bを通り、支持プレート5の貫通孔13を通って、支持プレート5とケース2の底面間の隙間に排出され、ケース2の底面を伝って排出孔17から排出される。
【0035】
冷媒通路部材4は冷媒が漏れていないときは上面が平坦であって、電池セルを広い面で支持して下面側から冷却する。冷媒通路部材4から冷媒が漏れ出ると、冷媒通路部材4の冷媒で濡れた部分は、表面のゲルが冷媒を吸収することによって軟化してへたる、すなわち、表面がくぼんだ状態になる。よって、冷媒通路部材4の上から漏洩冷媒が漏洩冷媒排出管部16a,16bに向かって流れ易くなり、その排出がスムースになる。
【0036】
漏洩冷媒は冷媒通路部材4の上面を漏洩冷媒排出管部16a,16bに向かって流れるが、その漏洩冷媒排出管部16a,16bは電池セル6の正負の電極端子7の間に開口しているから、排出される漏洩冷媒によって短絡を生ずることが避けられる。また、漏洩冷媒排出管部16a,16bは支持プレート5の貫通孔13の上に配置されていて、管孔が支持プレート5で塞がれていないから、漏洩冷媒排出管部16a,16bから貫通孔13への漏洩冷媒の排出もスムースになる。
【0037】
さらに、電池セル6の電極端子7及び安全弁8が設けられた面を短絡防止用の防水材で覆わなくてもよいから、電池セル6の内部短絡時に発生するガスの安全弁8から放出を妨げることもない。
【0038】
<実施形態2>
本実施形態を
図4及び
図5を参照して説明する。電池ユニット1は、充放電可能な複数の電池セル6よりなる電池モジュール3、液状冷媒を通す冷媒通路が形成された冷媒通路部材4及び支持プレート5をケース2に収容してなる。
【0039】
電池セル6は、相対する一対の側面が他の側面、上面及び下面に比べて広い縦方向に扁平になった直方体形状を有し、その上面に正負の電極端子7及び安全弁8を備えている。本実施形態の電池モジュール3では、複数の電池セル6は広い側面同士が向かい合うように並設されている。複数の電池セル6はバスバー(図示省略)によって電気的に直列接続されている。
【0040】
冷媒通路部材4は、液状冷媒が複数の電池セル各々の4つの側面に沿って横方向に流れるように設けられている。すなわち、冷却通路部材4は、電池モジュール3の両側を電池セル6の並設方向に延びる冷媒通路部15aと、電池モジュール3の両端及び相隣る電池セル6間において両側の冷媒通路部15aを結ぶ冷媒通路部15bとを備えている。冷媒通路部材4のセル並設方向の両端に冷媒の入口15cと出口15dが開口している。冷媒通路部材4の上端は電池セル6の上面よりも低くなっている。
【0041】
冷却通路部材4における各電池セル6の周囲には漏洩冷媒を排出するための漏洩冷媒排出管部16が配置されている。漏洩冷媒排出管部16は、冷媒通路部材4の上壁と下壁を結んで上下に延びる管状のものであり、冷媒通路部材4を上下に貫通し、冷媒通路部15a,15bから冷媒通路部材4の上に漏洩した冷媒を冷媒通路部材4の下方へ排出する。
【0042】
電池モジュール3及び冷媒通路部材4は実施形態1と同様の支持プレート5によってケース2の底面に支持されている。従って、支持プレート5には、実施形態1と同じく、貫通孔13が設けられ、支持プレート5とケース2の底面の間には隙間14が設けられている。ケース2の底面には漏洩冷媒排出孔17が開口している。
【0043】
漏洩冷媒排出管部16の管孔と支持プレート5の貫通孔13は上下に対応し、且つその管孔は貫通孔13よりも小さい。すなわち、支持プレート5が漏洩冷媒排出管部16の管孔を塞ぐことがないように、支持プレート5の貫通孔13が配置されている。
【0044】
本実施形態においては、冷媒を冷媒通路部材4に流すと、その冷媒が各電池セル6の周囲(側面)に沿って横方向に流れ、電池セル6はその周囲から冷媒によって冷却される。
【0045】
冷媒通路部材4に破損箇所18を生じて、その破損箇所18から冷媒通路15を流れる冷媒が漏れて冷媒通路部材4の上に出た場合について説明する。その漏洩冷媒は、矢符で排出ルート19を示すように、冷媒通路部材4の上面から漏洩冷媒排出管部16を通り、支持プレート5の貫通孔13を通って、支持プレート5とケース2の底面間の隙間に排出され、ケース2の底面を伝って排出孔17から排出される。漏洩冷媒排出管部16は支持プレート5の貫通孔13の上に配置されていて、管孔が支持プレート5で塞がれていないから、漏洩冷媒排出管部16から貫通孔13への漏洩冷媒の排出がスムースになる。
【0046】
さらに、電池セル6の電極端子7及び安全弁8が設けられた面を短絡防止用の防水材で覆わなくてもよいから、電池セル6の内部短絡時に発生するガスの安全弁8から放出を妨げることもない。
【0047】
<実施形態3>
本実施形態を
図6及び
図7を参照して説明する。電池ユニット1は、充放電可能な複数の電池セル6よりなる電池モジュール3、液状冷媒を通す冷媒通路が形成された冷媒通路部材4及び支持プレート5をケース2に収容してなる。
【0048】
電池セル6は、実施形態2と同様に縦方向に扁平になった直方体形状を有し、その上面に正負の電極端子7及び安全弁8を備えている。本実施形態においても、電池モジュール3は、複数の電池セル6が広い側面同士が向かい合うように並設され、複数の電池セル6はバスバーによって電気的に直列接続されている。
【0049】
冷媒通路部材4は、電池モジュール3の両側を電池セル6の並設方向に延びる冷媒通路部15aと、電池モジュール3の両端において両側の冷媒通路部15aを結ぶ冷媒通路部15bとを備えている。冷媒通路部材4のセル並設方向の両端に冷媒の入口15cと出口15dが開口している。冷媒通路部材4の上端は電池セル6の上面よりも低くなっている。
【0050】
冷媒通路部材4の冷媒通路部15aと電池セル6の間、並びに相隣る電池セル6の間に熱伝導材9が設けられている。冷媒通路部材4と電池セル6の間の熱伝導材9と電池セル6間の熱伝導材9は連続している。熱伝導材9の高さは冷媒通路部材4の高さよりも高く、熱伝導材9の上端が冷媒通路部材4の上端よりも高くなっている。
【0051】
冷却通路部材4には、電池モジュール3の両側(冷媒通路部15a)と電池モジュール3の両端側(冷媒通路部15b)に漏洩冷媒排出管部16a,16bが設けられている。漏洩冷媒排出管部16a,16bは、冷媒通路部材4の上壁と下壁を結んで上下に延びる管状のものであり、冷媒通路部15a,15bから冷媒通路部材4の上に漏洩した冷媒を冷媒通路部材4の下方へ排出する。
【0052】
電池モジュール3の両側(冷媒通路部15a)には複数の漏洩冷媒排出管部16a,16bがセル並設方向に間隔をおいて並び、その並設方向の中央側に位置する漏洩冷媒排出管部16bは並設方向の両端側に位置する漏洩冷媒排出管部16aよりも内径が大きくなっている。
【0053】
電池モジュール3及び冷媒通路部材4は実施形態1と同様の支持プレート5によってケース2の底面に支持されている。従って、支持プレート5には、実施形態1と同じく、貫通孔13が設けられ、支持プレート5とケース2の底面の間には隙間14が設けられている。ケース2の底面には漏洩冷媒排出孔17が開口している。
【0054】
漏洩冷媒排出管部16a,16bの管孔と支持プレート5の貫通孔13は上下に対応し、且つその管孔は貫通孔13よりも小さい。すなわち、支持プレート5が漏洩冷媒排出管部16a,16bの管孔を塞ぐことがないように、支持プレート5の貫通孔13が配置されている。
【0055】
冷媒を冷媒通路部材4に流すと、その冷媒が電池モジュール3の両側面及び両端面に沿って横方向に流れることにより、電池セル6が冷却される。電池セル6間の熱伝導材9が電池モジュール3の両側面の熱伝導材9に繋がっているから、電池セル6間から熱伝導材9による伝熱によって電池モジュールの両側に放熱される。よって、電池セル6間に熱がこもることはない。
【0056】
冷媒通路部材4に破損箇所18を生じて冷媒が冷媒通路部材4の上に漏れた場合は、その漏洩冷媒は実施形態2と同じように排出される。すなわち、漏洩冷媒は、矢符で排出ルート19を示すように、冷媒通路部材4の上面から漏洩冷媒排出管部16a,16bを通り、支持プレート5の貫通孔13を通って、支持プレート5とケース2の底面間の隙間に排出され、ケース2の底面を伝って排出孔17から排出される。漏洩冷媒排出管部16a,16bは支持プレート5の貫通孔13の上に配置されていて、管孔が支持プレート5で塞がれていないから、漏洩冷媒排出管部16a,16bから貫通孔13への漏洩冷媒の排出がスムースになる。
【0057】
電池モジュール3のセル並設方向の中央側の電池セル6は両端側の電池セル6よりも温度が上昇しやすいところ、当該中央側の漏洩冷媒排出管部16bの内径を大きくしたことにより、当該中央側の短絡リスクが低減し、安全性向上に有利になる。
【0058】
電池セル6の電極端子7及び安全弁8が設けられた面を短絡防止用の防水材で覆わなくてもよいから、電池セル6の内部短絡時に発生するガスの安全弁8から放出を妨げることもない。
【0059】
本実施形態では、電池セル6間には冷却通路部材ではなく熱伝導材9を設ける構成であるから、電池モジュールの電池セル並設方向の長さ短縮に有利になる。電池セル6間の熱伝導材9の上端が冷媒通路部材4の上端よりも高くなっているから、漏洩冷媒の電池セル6間への侵入を防止することができる。
【0060】
<実施形態4>
本実施形態を
図8及び
図9を参照して説明する。電池ユニット1は、充放電可能な複数の電池セル6よりなる電池モジュール3、液状冷媒を通す冷媒通路が形成された冷媒通路部材4及び支持プレート5をケース2に収容してなる。
【0061】
電池セル6は円筒形であって直立し、頂面に安全弁を備えた正の電極端子7が設けられている。電池モジュール3は、複数の電池セル6を横方向にジグザグに並設してなる。複数の電池セル6はバスバーによって電気的に直列接続されている。
【0062】
冷媒通路部材4は、電池モジュール3の複数の電池セル6の間を縫うようにセル並設方向にジグザグ形状に延びている。この冷媒通路部材4に液状冷媒を通す冷媒通路15が形成されている。冷媒通路部材4の一端に冷媒の入口15aと出口15bが開口している。冷媒通路部材4の上端は電池セル6の上面よりも低くなっている。ケース2の内壁と冷媒通路部材4の間には電池セル6を包むように熱伝導材9が設けられている。
【0063】
冷媒通路部材4は、セル並設方向に間隔をおいて設けられた複数の漏洩冷媒排出管部16を備えている。漏洩冷媒排出管部16は、冷媒通路部材4を上下に貫通し、冷媒通路15から冷媒通路部材4の上に漏洩した冷媒を冷媒通路部材4の下方へ排出する。漏洩冷媒排出管部16は、冷媒通路部材4の上壁と下壁を結んで上下に延びる管状のものであるから、冷媒通路15から漏洩冷媒排出管部16の管内に冷媒が漏れ出ることはない。
【0064】
電池モジュール3及び冷媒通路部材4は実施形態1と同様の支持プレート5によってケース2の底面に支持されている。従って、支持プレート5には、実施形態1と同じく、貫通孔13が設けられ、支持プレート5とケース2の底面の間には隙間14が設けられている。ケース2の底面には漏洩冷媒排出孔17が開口している。
【0065】
漏洩冷媒排出管部16の管孔と支持プレート5の貫通孔13は上下に対応し、且つその管孔は貫通孔13よりも小さい。すなわち、支持プレート5が漏洩冷媒排出管部16の管孔を塞ぐことがないように、支持プレート5の貫通孔13が配置されている。
【0066】
冷媒を冷媒通路部材4に流すと、その冷媒が電池セル6側面に沿って横方向に流れることにより、電池セル6は熱伝導材9を介して冷媒通路部材4の冷媒に熱を奪われて冷却される。
【0067】
冷媒通路部材4に破損箇所18を生じて冷媒が冷媒通路部材4の上に漏れたとき、その漏洩冷媒は、矢符で排出ルート19を示すように、冷媒通路部材4の上面から漏洩冷媒排出管部16を通り、支持プレート5の貫通孔13を通って、支持プレート5とケース2の底面間の隙間に排出され、ケース2の底面を伝って排出孔17から排出される。漏洩冷媒排出管部16は支持プレート5の貫通孔13の上に配置されていて、管孔が支持プレート5で塞がれていないから、漏洩冷媒排出管部16から貫通孔13への漏洩冷媒の排出がスムースになる。
【0068】
電池セル6の電極端子7及び安全弁8が設けられた面を短絡防止用の防水材で覆わなくてもよいから、電池セル6の内部短絡時に発生するガスの安全弁8から放出を妨げることもない。
【0069】
<その他>
実施形態1,3では、セル並設方向中央側の漏洩冷媒排出管部16bの内径を大きくしたが、他の実施形態においても同様にセル並設方向中央側の漏洩冷媒排出管部16bの内径を大きくすることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 電池ユニット
2 ケース
3 電池モジュール
4 冷媒通路部材
5 支持プレート
6 電池セル
7 電極端子
8 安全弁
9 熱伝導材
13 貫通孔
14 隙間
15 冷媒通路
15a 冷媒通路部
15b 連絡通路部
15c 入口
15d 出口
16 漏洩冷媒排出管部
16a,16b 漏洩冷媒排出管部
17 漏洩冷媒排出孔
18 破損箇所
19 排出ルート