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7632229リターナブル品のメンテナンス管理システム及びメンテナンス管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】リターナブル品のメンテナンス管理システム及びメンテナンス管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/30 20230101AFI20250212BHJP
【FI】
G06Q10/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021174094
(22)【出願日】2021-10-25
(65)【公開番号】P2023063959
(43)【公開日】2023-05-10
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吹切 利也
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-166760(JP,A)
【文献】特開2004-355281(JP,A)
【文献】特開2011-076312(JP,A)
【文献】特開2007-066116(JP,A)
【文献】特開2021-060782(JP,A)
【文献】特開平03-118131(JP,A)
【文献】特開2006-227751(JP,A)
【文献】特開平10-320031(JP,A)
【文献】特開2021-101313(JP,A)
【文献】特開2006-318311(JP,A)
【文献】特開2002-083076(JP,A)
【文献】国際公開第2011/111336(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リターナブル品のメンテナンス管理システムであって、
記憶装置と、
プロセッサと、を備え、
前記記憶装置は、
前記リターナブル品のそれぞれに割り振られた個体番号と前記リターナブル品のメンテナンス項目ごとのメンテナンス予定時期とが紐づけられた在庫管理データと、
前記リターナブル品のメンテナンス項目とメンテナンス標準時間とが紐づけられたメンテナンス作業マスタと、を記憶し、
前記プロセッサは、
対象リターナブル品の個体番号を取得する第1処理と、
前記取得した個体番号を前記在庫管理データに照合することにより、前記対象リターナブル品のメンテナンス項目の中でメンテナンス予定時期が到来しているメンテナンス項目があるかどうか判定する第2処理と、
前記メンテナンス予定時期が到来しているメンテナンス項目について、前記メンテナンス作業マスタからメンテナンス標準時間を取得し、前記取得したメンテナンス標準時間に基づき、前記対象リターナブル品の第1の予定期間中のメンテナンスが可能かどうか判定する第3処理と、
前記第1の予定期間中のメンテナンスが可能であれば、前記対象リターナブル品をメンテナンスするようにメンテナンス指示を出し、前記第1の予定期間中のメンテナンスが困難な場合には前記対象リターナブル品を仮置きするように仮置き指示を出す第4処理と、を実行する
ことを特徴とするリターナブル品のメンテナンス管理システム。
【請求項2】
前記記憶装置は、前記メンテナンス項目ごとの所要作業時間を作業員別に登録した作業員マスタをさらに記憶し、
前記プロセッサは、
前記第3処理では、前記作業員マスタから取得した作業員別の所要作業時間に基づいて作業員別に合計メンテナンス作業時間を計算し、前記作業員別の合計メンテナンス作業時間と前記取得したメンテナンス標準時間とに基づき、前記対象リターナブル品を前記第1の予定期間中にメンテナンスすることができる作業員がいるかどうか判定し、
前記第4処理では、前記対象リターナブル品を前記第1の予定期間中にメンテナンスすることができる作業員に対して前記メンテナンス指示を出す
ことを特徴とする請求項1に記載のリターナブル品のメンテナンス管理システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記作業員の実績作業時間に基づいて、前記作業員マスタに登録された作業員別の作業時間を補正する第5処理、を実行する
ことを特徴とする請求項2に記載のリターナブル品のメンテナンス管理システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、メンテナンスが実施されたメンテナンス項目の次回のメンテナンス予定時期を前記在庫管理データに自動登録する第6処理、を実行する
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のリターナブル品のメンテナンス管理システム。
【請求項5】
リターナブル品のメンテナンス管理方法であって、
前記リターナブル品のそれぞれに割り振られた個体番号と前記リターナブル品のメンテナンス項目ごとのメンテナンス予定時期とが紐づけられた在庫管理データと、
前記リターナブル品のメンテナンス項目とメンテナンス標準時間とが紐づけられたメンテナンス作業マスタと、を予めコンピュータに用意しておき、
対象リターナブル品の個体番号を取得し、
前記取得した個体番号を前記在庫管理データに照合することにより、前記対象リターナブル品のメンテナンス項目の中でメンテナンス予定時期が到来しているメンテナンス項目があるかどうか判定し、
前記メンテナンス予定時期が到来しているメンテナンス項目について、前記メンテナンス作業マスタからメンテナンス標準時間を取得し、前記取得したメンテナンス標準時間に基づき、前記対象リターナブル品の第1の予定期間中のメンテナンスが可能かどうか判定し、
前記第1の予定期間中のメンテナンスが可能であれば、前記対象リターナブル品をメンテナンスするようにメンテナンス指示を出し、前記第1の予定期間中のメンテナンスが困難な場合には前記対象リターナブル品を仮置きするように仮置き指示を出す
ことを前記コンピュータに実行させることを特徴とするリターナブル品のメンテナンス管理方法。
【請求項6】
前記メンテナンス項目ごとの所要作業時間を作業員別に登録した作業員マスタを予め前記コンピュータに用意しておき、
前記作業員マスタから取得した作業員別の所要作業時間に基づいて作業員別に合計メンテナンス作業時間を計算し、前記作業員別の合計メンテナンス作業時間と前記取得したメンテナンス標準時間とに基づき、前記対象リターナブル品を前記第1の予定期間中にメンテナンスすることができる作業員がいるかどうか判定することによって、前記対象リターナブル品の前記第1の予定期間中のメンテナンスが可能かどうか判定し、
前記対象リターナブル品を前記第1の予定期間中にメンテナンスすることができる作業員に対して前記メンテナンス指示を出す
ことを前記コンピュータに実行させることを特徴とする請求項5に記載のリターナブル品のメンテナンス管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リターナブル品のメンテナンス管理システム及びメンテナンス管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばビールの樽や炭酸ガスボンベは、繰り返し使用されるリターナブル品である。リターナブル品の正常な使用を担保するためには、回収したリターナブル品に対して定期的にメンテナンスを施すことが必要とされる。リターナブル品のメンテナンスには、複数のメンテナンス項目があり、メンテナンス項目ごとにメンテナンスに要する時間も異なる。このため、従来は、メンテナンスの効率的運用を実現するため、回収したリターナブル品を保管しておき、在庫が一定量たまったところで各リターナブル品のステータスの確認と、ステータスに応じた作業の決定が行われていた。しかし、従来行われている方法では、入庫後ステータスの確認を待つリターナブル品を保管するために、大きなスペースを用意しなければならないという問題があった。
【0003】
なお、本願発明に関連する技術分野における技術水準を示す先行技術文献としては、以下の特許文献1乃至3が例示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-154547号公報
【文献】特開2004-280676号公報
【文献】特開2011-258145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、入庫後ステータスの確認を待つリターナブル品の数を低減し、効率よくメンテナンスを行う事ができる、リターナブル品のメンテナンス管理システム及びメンテナンス管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るリターナブル品のメンテナンス管理システムは、在庫管理データとメンテナンス作業マスタとを記憶する記憶装置と、第1乃至第4の処理を実行するプロセッサとを備える。
【0007】
記憶装置に記憶された在庫管理データは、リターナブル品のそれぞれに割り振られた個体番号とリターナブル品のメンテナンス項目ごとのメンテナンス予定時期とが紐づけられたデータである。メンテナンス作業マスタは、リターナブル品のメンテナンス項目とメンテナンス標準時間とが紐づけられたデータである。
【0008】
プロセッサにより実行される第1処理は、対象リターナブル品の個体番号を取得する処理である。第2処理は、取得した個体番号を前記在庫管理データに照合することにより、対象リターナブル品のメンテナンス項目の中でメンテナンス予定時期が到来しているメンテナンス項目があるかどうか判定する処理である。第3処理は、メンテナンス予定時期が到来しているメンテナンス項目について、メンテナンス作業マスタからメンテナンス標準時間を取得し、取得したメンテナンス標準時間に基づき、対象リターナブル品の第1の予定期間中のメンテナンスが可能かどうか判定する処理である。第4処理は、第1の予定期間中のメンテナンスが可能であれば対象リターナブル品をメンテナンスするようにメンテナンス指示を出し、第1の予定期間中のメンテナンスが困難な場合には対象リターナブル品を仮置きするように仮置き指示を出す処理である。
【0009】
本発明に係るリターナブル品のメンテナンス管理方法は、準備段階として在庫管理データとメンテナンス作業マスタとを予め用意しておき、以下の第1乃至第4のステップを実行する。
【0010】
第1ステップでは、対象リターナブル品の個体番号を取得する。第2ステップでは、取得した個体番号を在庫管理データに照合することによって、対象リターナブル品のメンテナンス項目の中でメンテナンス予定時期が到来しているメンテナンス項目があるかどうか判定する。第3ステップでは、メンテナンス予定時期が到来しているメンテナンス項目について、メンテナンス作業マスタからメンテナンス標準時間を取得し、取得したメンテナンス標準時間に基づき、対象リターナブル品の第1の予定期間中のメンテナンスが可能かどうか判定する。そして、第4ステップでは、第1の予定期間中のメンテナンスが可能であれば、対象リターナブル品をメンテナンスするようにメンテナンス指示を出し、第1の予定期間中のメンテナンスが困難な場合には、対象リターナブル品を仮置きするように仮置き指示を出す。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るターナブル品のメンテナンス管理システム及びメンテナンス管理方法によれば、対象リターナブル品に対して、第1の予定期間中にメンテナンスするか、或いは、仮置きするかがリアルタイムで判断される。これにより、入庫後ステータスの確認を待つリターナブル品の在庫を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るメンテナンス管理システムの構成を示すブロック図である。
図2図1に示すメンテナンス管理システムにおけるデータ相関図である。
図3図1に示すメンテナンス管理システムにおいて作業者側で行われる処理について具体的に説明する図である。
図4図1に示すメンテナンス管理システムにおけるメンテナンス処理の流れを示すフローチャートである
図5図1に示すメンテナンス管理システムにおけるメンテナンス処理の流れを示すフローチャートである
図6図1に示すメンテナンス管理システムにおけるメンテナンス処理の流れを示すフローチャートである
図7図1に示すメンテナンス管理システムにおける作業員マスタの更新処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、以下に示す実施形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施形態において説明する構造やステップ等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るリターナブル品のメンテナンス管理システムの構成を示すブロック図である。本メンテナンス管理システムでメンテナンス管理の対象となるリターナブル品10は、例えば、ビールなどの樽、炭酸ガスボンベ、作業服やシーツなどのリネン製品である。本メンテナンス管理システムは、在庫管理計算機2と作業現場端末4とを含む。
【0015】
在庫管理計算機2は、図示しない記憶装置とプロセッサとを有するコンピュータである。在庫管理計算機2の記憶装置には、リターナブル品在庫管理データD1、メンテナンス作業マスタD2、作業員マスタD3、作業員技量マスタD4、及び始業/終業時間マスタD5が記憶されている。在庫管理計算機2のプロセッサは、後述する処理P2乃至P4、P7乃至P11を実行する。
【0016】
作業現場端末4は、在庫管理計算機2に有線接続された無線ルータ6を介して作業現場端末4と無線接続可能な無線携帯端末である。作業現場端末4は、在庫管理計算機2から送信される情報を表示するディスプレイと、作業員が情報を入力する入力キーを有する。また、作業現場端末4は、リターナブル品10に取り付けられた一次元コードや二次元コードを読み取るスキャナを備えている。
【0017】
ここで、在庫管理計算機2に記憶されたデータD1~D5を含む、本メンテナンス管理システムにおけるデータの相関について、図2に示すデータ相関図を用いて説明する。
【0018】
リターナブル品在庫管理データD1は、シリアル番号とアドレスとステータスとを含む。シリアル番号は、リターナブル品10ごとに割り当てられたユニークな個体番号である。シリアル番号ごとに、アドレスとステータスとが関連付けられている。アドレスは、リターナブル品10が現在、入庫在庫、メンテ在庫、出庫在庫、及び廃棄のうちのどのロケーションに置かれているかを示す情報である。ステータスは、リターナブル品10のメンテナンスに関するステータスであって、メンテナンスの予定日及びその許容誤差日数、廃棄の予定日及びその許容誤差日数、入庫日(後述の入庫時の作業でシリアル番号を読み取った日付であり、「スキャン日」とも記す)、メンテナンス完了日、出庫日等が含まれる。また、複数項目のメンテナンス(図2の例では、メンテナンスA、B、及びC)が行われる場合は、メンテナンスの項目ごとにメンテナンス予定日が登録される。
【0019】
メンテナンス項目とは、メンテナンスの内容である。例えば、リターナブル品10が炭酸ガスボンベの場合、メンテナンス項目として、検査項目であるエア漏れチェックと法定点検、部品交換項目であるバルブOリングの定期交換とバルブ本体交換が登録される。また、周期的に行われるメンテナンス項目については、例えば、1年、3年、5年、8年など、メンテナンス周期が併せて登録される。
【0020】
メンテナンス作業マスタD2は、メンテナンス項目とメンテナンス標準時間とを含み、それらは相互に関連付けられている。メンテナンス標準時間は、メンテナンス作業に要する標準的な時間である。所要時間はメンテナンスの内容によって異なるため、メンテナンス項目ごとにメンテナンス標準時間が登録されている。例えば、メンテナンスAは10分、メンテナンスBは15分、メンテナンスCは30分のように登録されている。
【0021】
作業員マスタD3は、作業員番号と作業員技量ランクと作業員別項目標準作業時間とを含む。作業員番号は、作業員ごとに割り当てられたユニークな個人番号である。作業員番号ごとに、作業員技量ランクと作業員別項目標準作業時間とが関連付けられている。作業員技量ランクは、作業員番号で特定される作業員のメンテンナンス作業の技量ランクである。上、中、下のいずれかの技量ランクがメンテナンス項目ごとに登録されている。作業員別項目標準作業時間は、作業員番号で特定される作業員があるメンテンナンス作業に要する標準的作業時間である。作業員別項目標準作業時間は、作業員番号ごと、且つメンテナンス項目ごとに登録されている。
【0022】
作業員技量マスタD4は、作業技量ランクと作業技量ランク別作業時間とを含む。作業技量ランクはメンテナンス項目ごとに設定され、メンテナンス項目ごとの作業技量ランクに作業技量ランク別作業時間が関連付けられている。作業技量ランク別作業時間は、関連付けられた技量ランクにおいて許容される作業時間の範囲を示す。例えば、メンテナンスAについてランク上は100秒未満、ランク中は100秒以上180秒未満、ランク下は180秒以上のように登録されている。
【0023】
始業/終業時間マスタD5は、作業員の始業時間と終業時間とを含む。社員、パートタイマー、アルバイトなど作業員の雇用形態が複数ある場合には、雇用形態ごとに始業時間と終業時間とが登録されている。
【0024】
一方、リターナブル品10に取り付けられた一次元コード或いは二次元コードには、そのリターナブル品10のシリアル番号が登録されている。リターナブル品10のシリアル番号と入庫日(スキャン日)をリターナブル品在庫管理データD1のステータスと照合することで、対象ステータスデータd1が得られる。対象ステータスデータd1には、当該リターナブル品10を廃棄することの可/不可、メンテナンス項目のそれぞれについてメンテナンスを行うことの可/不可、仮置きに関する情報が含まれる。
【0025】
対象ステータスデータd1から、対象ステータス指示データd2が作成される。対象ステータス指示データd2は、作業員に対する指示内容を含むデータであり、作業現場端末4に送信される。対象ステータス指示データd2には、対象の作業員が当該リターナブル品10を廃棄や仮置きの指示、或いは、どのメンテナンス項目についてメンテナンスを行うかの指示が含まれる。
【0026】
対象ステータス指示データd2から所定期間(例えば、1日、1週間、或いは1か月)ごとに作業実績データd3が作成される。作業実績データd3は、所定期間内での作業予定設定期間内での時刻と作業項目と紐付けられた作業員別作業予定スケジュールデータと、作業員別項目実績作業時間を含む。作業員別項目実績作業時間は、作業員ごとメンテナンス項目ごとの実績作業時間である。作業実績データd3は、作業員マスタD3における作業員別の作業員技量ランク及び作業員別項目標準作業時間の更新に用いられる。さらに作業員別作業予定スケジュールデータは作業の割り当てに使用される。
【0027】
再び図1に戻り、本メンテナンス管理システムで行われる処理について説明する。
【0028】
リターナブル品10が入庫すると、作業員Aにより、リターナブル品10のシリアル番号が作業現場端末4に入力される(処理P1)。処理1は、入庫したリターナブル品10のシリアル番号を取得する処理である。以下、入庫したリターナブル品10を対象リターナブル品10という。入力は、前述のとおり、対象リターナブル品10に取り付けられた一次元コードや二次元コードを作業現場端末4のスキャナで読み取ることにより自動で行われる。コードの汚損により読み取りができない場合には、入力キーの操作によって手動でシリアル番号を入力することができる。作業員Aのかわりに自動的に読み取ることができる装置であってもよい。
【0029】
作業現場端末4に入力された対象リターナブル品10のシリアル番号は、無線通信等の通信手段によって在庫管理計算機2に送信される。在庫管理計算機2は、対象リターナブル品10のシリアル番号をリターナブル品在庫管理データD1に照合する(処理P2)。処理P2は、対象リターナブル品10のメンテナンス項目の中でメンテナンス予定時期が到来しているメンテナンス項目があるかどうか判定する処理である。この処理により、対象ステータスデータd1が得られる。
【0030】
次に、在庫管理計算機2は、対象ステータスデータd1から特定されるメンテナンス予定時期が到来しているメンテナンス項目について、メンテナンス作業マスタD2からメンテナンス標準時間を取得する。また、在庫管理計算機2は、作業員マスタD3から作業員別の所要作業時間を取得し、取得した作業員別の所要作業時間に基づいて作業員別に合計メンテナンス作業時間を計算する。そして、在庫管理計算機2は、作業員別の合計メンテナンス作業時間と、メンテナンスが予定されているメンテナンス項目のメンテナンス標準時間とに基づき、対象リターナブル品10を第1の予定期間中にメンテナンスすることが可能かどうか判定する。詳しくは、対象リターナブル品10を第1の予定期間中にメンテナンスすることができる作業員がいるかどうか判定する。その判定結果に基づき、在庫管理計算機2は、どの作業者に対してどのような指示を出すのかを決定する。そして、作業員別作業スケジュールデータを作成・更新する(以上、処理P3)。例えば第1の予定期間とは、リターナブル品10のシリアル番号を読み取った当日の就業期間である。
【0031】
次に、在庫管理計算機2は、処理P3で決定された指示を含む、作業員別作業スケジュールデータを作業現場端末4に送信する。詳しくは、対象リターナブル品10を第1の予定期間中にメンテナンスすることができる作業員がいる場合、その作業員に対してメンテナンス指示が送信される。第1の予定期間中のメンテナンスが困難な場合には、対象リターナブル品10を一時的に仮置きするように、同一作業員または他の作業員に対して仮置き指示を含む作業員別作業スケジュールデータが送信される。また、対象リターナブル品10の廃棄時期が到来している場合、対象リターナブル品10を廃棄するように、同一作業員または他の作業員に対して廃棄指示を含む作業員別作業スケジュールデータが送信される(以上、処理P4)。
【0032】
作業現場端末4は、在庫管理計算機2から送付された作業員別作業スケジュールデータに基づき当該作業員の作業スケジュールおよび作業指示をディスプレイに表示する(処理P5)。作業表示を表示する作業現場端末4は、作業員Bの作業現場端末4に限定される。作業員Bは、対象リターナブル品10に対する作業の担当者として選定された作業員である。よって、作業員Bは、処理P1を行った作業員Aと同一人物の場合もあれば異なる人物の場合もある。
【0033】
作業員Bは、作業現場端末4のディスプレイに表示された作業指示に従い、対象リターナブル品10をメンテナンスエリアに運ぶか、仮置きエリアに運ぶか、或いは、廃棄エリアに運ぶ。対象リターナブル品10をメンテナンス対象である場合、作業員Bは、作業指示に従いメンテナンスを実施する。
【0034】
作業員Bは、メンテナンス作業の終了後、作業実績を作業現場端末4に入力し、在庫管理計算機2に送信する(処理P6)。
【0035】
在庫管理計算機2は、作業現場端末4から送信される作業実績から作業者毎に作業時間を収集する(処理P7)。そして、収集した作業者毎の作業時間を作業実績データd3に登録する(処理P8)。
【0036】
所定期間が経過したら、在庫管理計算機2は、作業実績データd3より作業者別、且つメンテナンス項目別に平均作業時間を算出する(処理P9)。次に、在庫管理計算機2は、今回算出された平均作業時間と、作業員マスタD3に登録されている作業員別項目標準作業時間との差に基づいて、作業員別項目標準作業時間に対する補正である作業時間補正を算出する(処理P10)。そして、在庫管理計算機2は、作業時間補正に基づいて作業員マスタD3に登録されている作業員別項目標準作業時間を補正する(処理P11)。
【0037】
以上、本メンテナンス管理システムで行われる処理について説明した。以下では、特に作業者側で行われる処理について図3を用いてより具体的に説明する。
【0038】
まず、作業現場端末4によって対象リターナブル品10のコードがスキャンされる(処理P101)。スキャニングで得られた対象リターナブル品10のシリアル番号は、スキャン日とともにターナブル品在庫管理データD1に照合される(処理P102)。図3のターナブル品在庫管理データD1にはステータスデータの構成の例が示されている。シリアル番号に関連付けられて、製造日、破棄予定日、メンテナンスA予定日、メンテナンスB予定日、メンテナンスC予定日、破棄日、スキャン日、メンテナンス完了日、出庫日が記載されている。図3に示す例では、シリアル番号がNs2のリターナブル品のスキャン日が2020年3月31日であるのに対し、メンテナンスAの予定日は2019年1月1日であることから、メンテナンスAの予定日は既に超過されている。この場合、在庫管理計算機2は、メンテンナンス作業時間の有無が判定し(処理P103)、メンテナンスを実施できる作業員に対して指示を出す(処理P104)。
【0039】
作業現場端末4のディスプレイの表示内容は、メンテンナンス作業時間の有無に応じて異ならされる。図3に示す表示W0は、作業員(従業員B)に対する作業スケジュール画面である。作業端末は起動すると作業員に対して個人を特定するための識別番号(例えば従業員番号)の入力を要求する。識別番号を入力すると、在庫管理計算機2から送付された作業員別作業スケジュールデータに基づき当該作業員の作業スケジュールが表示される。作業スケジュールは当該日(例えば識別番号を入力した日)の作業スケジュールである。作業スケジュールは作業予定時刻順に、作業番号と作業予定時刻と対象となるリターナブル品10のシリアル番号と作業名が表示される。例えば表示W0にて作業番号を選択する、あるいは予定時刻となると、その作業の詳細を指示する画面である例えば表示W1あるいは表示W2に遷移する。
【0040】
図3に示す表示W1は、メンテナンスAのための作業時間が有る場合の表示例である。表示W1では、作業員に対して、シリアル番号2のリターナブル品に対するメンテナンスAの実施が指示されている。また、メンテナンスAのための参考情報として、開始予定時刻とメンテナンスAの標準時間が表示されている。一方、図3に示す表示W2は、メンテナンスAのための作業時間が無い場合の表示例である。表示W2では、メンテナンス作業時間は既に超過していることが表示され、作業として「仮置き」が指示されている。作業員は作業の開始前に表示W1や表示W2の「開始/完了」を選択すると当該作業の作業時間の計時が開始され、作業終了時に再度「開始/完了」を選択すると作業時間の計時が完了する。
【0041】
メンテナンスAのための作業時間が有る場合、表示W1により、作業員に対して対象リターナブル品10のメンテナンスが指示される(処理P105)。メンテナンスAのための作業時間が無い場合、表示W2により、作業員に対して対象リターナブル品10の仮置きが指示される(処理P106)。仮置きされた対象リターナブル品10は、別時間(例えば翌日)にてメンテナンス処理される(処理P107)。メンテナンスが完了作業した対象リターナブル品10は、出庫のための通常在庫エリアに保管される(処理P108)。
【0042】
メンテナンスの完了後、ターナブル品在庫管理データD1に登録されている対象リターナブル品10のステータスは更新される。図3に示す例において、今回、メンテナンスAが実施されたのであれば、メンテナンスAの予定日が更新される。メンテナンスAの周期が3年である場合、第1の予定期間(2020年3月31日)より3年後の2023年3月31日が次回のメンテンナンスAの予定日として登録される。
【0043】
なお、ターナブル品在庫管理データD1では、各メンテナンス項目の予定日に加えて許容誤差日数も登録されている。よって、スキャン日がメンテナンス予定日の前であっても許容誤差日数の範囲に入っていれば、メンテナンスを実施することができる。許容誤差日数は、一度出庫してから次回入庫するまでの期間が長い品物ほど、長い期間に設定されている。また、メンテナンス項目の中でも、法定検査のような期限までに実施することが必須の項目や、必須ではなくとも重要な項目については、他の項目よりも長めの許容誤差日数が予定日の前にメンテナンスできる様に設定されている。
【0044】
最後に、本メンテナンス管理システムにおける一連の処理の流れについて図4及び図5を用いて説明する。
【0045】
図4乃至図6には、本メンテナンス管理システムによるメンテナンス処理の流れがフローチャートで示されている。図4には本管理システムにおけるメンテナンス処理のメインフローチャートが記されている。図5には本管理システムにおける新規リターナブル品10の対象ステータスデータd1を生成し、リターナブル品在庫管理データD1を更新するフローチャートが記されている。図6には本管理システムにおける作業員端末4のフローチャートが記されている。
【0046】
まず、図4のメインフローチャートから説明する。ステップS002では新規リターナブル品10があるか否か判断する。新規リターナブル品10がある場合はステップS004へ進み、ステップS004の処理の後にステップS600へ進む。ステップS004ではシリアル番号の読み取り処理を行い、新規リターナブル品10の対象ステータスデータd1を生成し、リターナブル品在庫管理データD1を更新する。更新後、ステップS006へ進む。新規リターナブル品10がない場合はステップS002からステップS006へ進む。
【0047】
ステップS004のシリアル番号読み取り処理の詳細は図5のフローチャートに示される。新規リターナブル品10がある場合、作業員は、作業現場端末4のメンテナンス管理画面を開き、作業員番号を入力する(ステップS101)。作業員は、作業現場端末4において入庫画面を選択し(ステップS102)、対象リターナブル品10のシリアル番号を入力する(ステップS103)。シリアル番号の入力は、作業現場端末4のスキャナによる読み取りでも可能であるし、入力キーによる手入力でも可能である。
【0048】
在庫管理計算機2は、入力されたシリアル番号を条件として、リターナブル品在庫管理データD1を検索し(ステップS104)、対象リターナブル品10のステータスを確認する(ステップS105)。
【0049】
対象リターナブル品10のステータスの確認結果に基づき、在庫管理計算機2は、廃棄の予定日が到来しているかどうか判定する(ステップS106)。廃棄の予定日が到来しているのであれば、在庫管理計算機2は、ステータスの「廃棄」を「可能」に変更する(ステップS107)。
【0050】
また、対象リターナブル品10のステータスの確認結果に基づき、在庫管理計算機2は、メンテナンスAの予定日が到来しているかどうか判定する(ステップS108)。メンテナンスAの予定日が到来しているのであれば、在庫管理計算機2は、ステータスの「メンテナンスA」を「可能」に変更し(ステップS109)、メンテナンス作業マスタD2からメンテナンスAのメンテナンス標準時間を取得する。
【0051】
また、対象リターナブル品10のステータスの確認結果に基づき、在庫管理計算機2は、メンテナンスBの予定日が到来しているかどうか判定する(ステップS110)。メンテナンスBの予定日が到来しているのであれば、在庫管理計算機2は、ステータスの「メンテナンスB」を「可能」に変更し(ステップS111)、メンテナンス作業マスタD2からメンテナンスBのメンテナンス標準時間を取得する。
【0052】
さらに、対象リターナブル品10のステータスの確認結果に基づき、在庫管理計算機2は、メンテナンスCの予定日が到来しているかどうか判定する(ステップS112)。メンテナンスCの予定日が到来しているのであれば、在庫管理計算機2は、ステータスの「メンテナンスC」を「可能」に変更し(ステップS113)、メンテナンス作業マスタD2からメンテナンスCのメンテナンス標準時間を取得する。
【0053】
次に、在庫管理計算機2は、上記の手順で作成された対象リターナブル品10のステータスデータd1により、リターナブル品在庫管理データD1を更新する(ステップS114)。これにてシリアル番号読み取り処理は終了する。
【0054】
再び図4のフローチャートに戻り説明を続ける。ステップS006からステップS016までの処理は、仮置きと新規入荷した未処理のリターナブル品について、在庫管理計算機2が次の優先順位で処理を行うようにするための処理ステップである。
優先順位1:破棄処理
優先順位2:メンテナンス予定日が第2時間より短いもの(メンテナンス期間までの余裕が短いもの)
優先順位3:仮置き期間が第3時間より長いもの(滞留期間が長いもの)
優先順位4:破棄予定までの期間が短いもの
【0055】
ステップS006では、在庫管理計算機2はメンテナンスすべきリターナブル品を選別するため、仮置きを含め、入庫され、破棄も出荷もされていないリターナブル品のリターナブル品在庫管理データD1を読み込む。
【0056】
ステップS008では、当該リターナブル品10のステータスの「廃棄」が可能かどうか判断する。ステータスの「廃棄」が「可能」である場合(YES)はステップS018に進む。ステータスの「廃棄」が「可能」でない場合(NO)はステップS012に進む。
【0057】
ステップS012では、当該リターナブル品10の何れかのメンテナンス予定日と現在日の差が第2時間TD2より短いかどうか判断する。第2時間TD2より短い場合(YES)はステップS018に進む。そうでない場合(NO)はステップS014に進む。
【0058】
ステップS014では、当該リターナブル品10の現在日と入庫日と差が第3時間より大きいかどうか判断する。第3時間より大きい場合(YES)はステップS018に進む。そうでない場合(NO)はステップS016に進む。
【0059】
ステップS016では、残ったリターナブル品10の内、破棄予定日までの日数(期間)の最も短いものを当該リターナブル品10として選択する。
【0060】
以上のような順位つけを行い、作業に順位付けすることで、在庫スペースの縮小や滞留(仮置き)期間の短縮、リターナブル品10の回転率を上げることができる。
【0061】
ステップS018では、在庫管理計算機2は、作業員別スケジュールに基づいて当該リターナブル品に対するメンテナンスを全作業員の終業時刻までに可能か、すなわち作業員別作業スケジュールデータの変更や追加が可能か判断する。例えば、現在の時刻から、最も早く作業員別スケジュールに空き時間のある作業員を選択する。そして当該リターナブル品10のメンテナンス可となっているメンテナンス項目について、作業員マスタD3から取得した作業員別項目別標準作業時間に基づいて、合計メンテナンス標準作業時間を計算する。そして、当該作業員の現在の作業スケジュールの最後の作業予定終了予定時刻に前述の合計メンテナンス標準作業時間を加えた場合に、当該作業員の終業予定時刻までに終了する事が可能か判断する。
【0062】
終業予定時刻までに終了が可能な場合はステップS020に進む。可能でない場合は現在の時刻から2番目に早く作業員別スケジュールに空き時間のある作業員を選択し、同様な手順で、当該作業員の終業予定時刻までに終了する事が可能か判断する。終業予定時刻までに終了が可能な場合はステップS020に進む。複数の作業員が、同時に空き時間となる場合は後述の技量ランクの高い作業員を優先的に選択するようにしてもよい。すべての従業員について就業予定時刻までに完了できない場合はステップS022へ進む。
【0063】
ステップS020では、在庫管理計算機2は、当該作業員の作業員別作業スケジュールデータの現在時刻に最も近接した空き時間に当該リターナブル品10のメンテナンス作業(破棄作業も含む)を追加し、新たな作業員別作業スケジュールデータを他業現場端末4に送信することで、当該リターナブル品に対する指示を行う。そしてステップS026へ移動する。
【0064】
当該リターナブル品10のメンテナンスを実施するには作業時間が不足している場合、仮置き作業を指示することになる。ステップS022は、仮置き品が新規入庫品であるかを判断するステップである。仮置き品が新規入庫品である場合はステップS024に進み、新規入庫品でない場合、当該品は元より仮置きされているのでそのままステップS026に進む。
【0065】
ステップS024では、在庫管理計算機2は、作業員別スケジュールに基づいて現在の時刻から最も早く作業員別スケジュールに空き時間のある作業員を選択する。当該作業員の作業員別作業スケジュールデータの現在時刻に最も近接した空き時間に当該リターナブル品10の仮置きを追加し、新たな作業員別作業スケジュールデータを作業現場端末4に送信することで、当該リターナブル品に対する仮置き指示を行う。そしてステップS026へ移動する。
【0066】
ステップS026では、在庫管理計算機2は、現在時刻がすべての作業員の終業時刻前かどうかを判断する。終業時刻前であればステップS002に戻り、そうでなければ終了する。
【0067】
次に、図6のフローチャートを用いて作業現場端末4を中心とした処理について説明する。まず、ステップS152では、作業員は作業現場端末4のメンテナンス管理画面を開き、作業員番号を入力する。さらに、作業現場端末4において作業スケジュール画面(図2の表示W0に相当)を選択して、作業を確認する。そして最初の作業番号を選択する。すると処理はステップS0154に移動する。
【0068】
ステップS0154では、作業現場端末4は作業の指示画面となり、対象品のシリアル番号と作業内容が表示される(図2の表示W1、W2相当)。
【0069】
ステップS0156では、作業員が作業現場端末4の「開始/完了」を選択すると、現場作業端末は当該作業の作業時間の計時を開始すると同時に在庫管理計算機2に当該品の当該作業の開始が通知される。
【0070】
ステップS158では、作業員は作業を実施し、作業現場端末4は当該作業の時間を計時する。作業員は作業が終了すると再び作業現場端末4の「開始/完了」を選択する。
【0071】
ステップS160では、作業現場端末4は作業完了処理に移行し、当該作業の計時を停止して、当該作業の完了と計時した時間を当該作業員の当該作業の実績作業時間として在庫管理計算機2に送信する。
【0072】
ステップS162では、在庫管理計算機2は現場作業端末4から受信した実績作業時間を作業実績データd3の作業員別項目実績作業時間として登録する。在庫管理計算機2は、対象ステータスデータd1の作業が完了した項目を更新するとともに、リターナブル品在庫管理データの当該部分(例えばメンテナンス予定日)を更新する。
【0073】
次に、ステップS164では、作業現場端末4は全ての予定作業が完了したか判定し、未完の場合はステップS154に戻り次の作業の指示画面を表示する。予定作業がすべて完了した場合はステップS166に進む。ステップS166では予定作業終了を表示する。
【0074】
図7には、本メンテナンス管理システムによる作業員マスタの更新処理の流れがフローチャートで示されている。このフローチャートに示す処理は、図6のフローチャートにおけるステップS162の実行を受けて実行される。
【0075】
ステップS201からS203までは、作業実績データd3を生成するための処理である。在庫管理計算機2は、ステップS201で作業員別項目実績作業時間を収集し、ステップS202及びステップS203で作業員別項目実績平均作業時間を計算する。
【0076】
具体的には、ステップS201では、メンテナンスを実施した項目の過去の直近所定回(例えば10回)の作業員別項目実績作業時間を準備する。ステップS202では、ステップS201で準備した過去の直近所定回の作業員別項目実績作業時間から異常値を除外する。異常値は、例えば標準時間を所定%以上逸脱している値と定義される。あるいは、中央値から所定%以上逸脱している値としてもよい。ステップS203では、異常値を除外された過去の作業時間の集合を用いて、メンテナンスを実施した項目の平均作業時間を算出する。
【0077】
ステップS204からS211までは、作業員マスタD3を更新するための処理である。在庫管理計算機2は、ステップS203で算出した平均作業時間が作業員マスタD3に登録されている現在の作業員別項目標準作業時間に対して短縮されたかどうか判定する(ステップS204)。平均作業時間が現在の作業員別項目標準作業時間よりも短縮されている場合、在庫管理計算機2は、作業員マスタD3の作業員別項目標準作業時間をマイナス補正する(ステップS205)。逆に、平均作業時間が現在の作業員別項目標準作業時間よりも短縮されていない場合、在庫管理計算機2は、作業員マスタD3の作業員別項目標準作業時間をプラス補正する(ステップS206)。ただし、平均作業時間と現在の作業員別項目標準作業時間との差が所定の誤差範囲内の場合、作業員別項目標準作業時間の補正は行われない。
【0078】
作業員マスタD3の補正について具体例をあげて説明する。ステップS201においてメンテナンスBの過去の直近6回の作業時間が準備され、それらの値が11分、5分、9分、13分、11分、11分であるとする。メンテナンスBの標準時間が10分、その+-30%以上が異常値である場合、ステップS202では異常値として5分と13分が除外される。そして、ステップS203において、残りの11分、9分、11分、11分の平均時間10.5分が算出される。
【0079】
作業員マスタD3に登録されているメンテナンスBの作業員別項目標準作業時間が11分である場合、ステップS204において、平均時間は現在の作業員別項目標準作業時間よりも短縮されたと判定される。この場合、ステップS205において、作業員マスタD3の作業員別項目標準作業時間のマイナス補正が行われる。例えば、現在の作業員別項目標準作業時間11分と平均時間10.5分との差分0.5分を算出し、その差分0.5分に1以下の補正係数を掛けて得られる時間をマイナス補正のための補正時間としてもよい。具体的には、補正係数が0.6であるなら、補正時間は0.3分となるので、作業員別項目標準作業時間11分から補正時間0.3分を差し引いた時間10.7分がメンテナンスBの新たな作業員別項目標準作業時間として登録される。
【0080】
次に、在庫管理計算機2は、作業員マスタD3の作業員別項目標準作業時間と、作業員マスタD4の作業技量ランク別作業時間とに相違があるかどうか判定する(ステップS207)。作業員マスタD3には、作業員ごとの作業員技量ランクが登録されている。作業員技量ランクは、作業員技量マスタD4の作業技量ランクに対応し、作業技量ランクには、作業技量ランク別作業時間が設定されている。例えば、現在、当該作業員が有するメンテナンスBの作業員技量ランクが「下」であり、対応する作業技量ランクの作業技量ランク別作業時間が11分以上であったとする。作業員マスタD3に登録されているメンテナンスBの作業員別項目標準作業時間が10.7分に更新されたとすれば、作業技量ランク別作業時間との間に相違が生じたことになる。
【0081】
作業員マスタD3の作業員別項目標準作業時間と作業技量ランク別作業時間とに相違がある場合、在庫管理計算機2は、作業員マスタD3の作業員別項目標準作業時間から作業員技量ランクを計算する(ステップS208)。上記の例では、作業員別項目標準作業時間10.7分から計算されるメンテナンスBの作業員技量ランクは「中」になる。
【0082】
在庫管理計算機2は、ステップS208で計算した作業員技量ランクが、過去の直近3回とも現在の作業員技量ランクと相違しているか判定する(ステップS209)。上記の例では、過去の直近3回とも作業員技量ランクが「中」であるかどうか判定する。
【0083】
過去の直近3回の作業員技量ランクが現在の作業員技量ランクと相違する場合、在庫管理計算機2は、作業員マスタD3の作業員技量ランクを変更する。上記の例では、作業員マスタD3に登録されているメンテナンスBの作業員技量ランクを「下」から「中」に変更する。また、これと併せて、在庫管理計算機2は、作業員マスタD3に登録されている作業員別項目標準作業時間を、作業員技量マスタD4で登録されている作業技量ランクの作業技量ランク別作業時間に合うように変更する(以上、ステップS210)。
【0084】
最後に、在庫管理計算機2は、ステップS206で作業員別項目標準作業時間が補正された場合、その補正結果或いは変更結果を用いて作業員マスタD3を更新する。また、ステップS210で作業技量ランクと作業員別項目標準作業時間が変更された場合、その変更結果を用いて作業員マスタD3を更新する(以上、ステップS211)。在庫管理計算機2は、このようにして図6のフローチャートにおけるステップS162の計算を行う。
【符号の説明】
【0085】
2 在庫管理計算機
4 作業現場端末
10 リターナブル品
D1 リターナブル品在庫管理データ
D2 メンテナンス作業マスタ
D3 作業員マスタ
D4 作業員技量マスタ
D5 始業/終業時間マスタ
d1 対象ステータスデータ
d2 対象ステータス指示データ
d3 作業実績データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7