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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】電子機器、印刷制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A45D 29/18 20060101AFI20250212BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
A45D29/18
B41J2/01 301
B41J2/01 451
B41J2/01 109
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021207059
(22)【出願日】2021-12-21
(65)【公開番号】P2023092069
(43)【公開日】2023-07-03
【審査請求日】2024-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 到
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-232414(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0303218(US,A1)
【文献】特開2017-118897(JP,A)
【文献】特開2017-018456(JP,A)
【文献】特開2020-192011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 29/00 - 29/22
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象である爪に対応する指を載置可能で、前記指が載置された場合に前記指が延びる方向に沿う軸周りに、第1回転位置と第2回転位置とを取り得るように回転可能な載置手段と、
前記載置手段に載置されている指の爪の位置を示す座標値を、前記載置手段が前記第1回転位置に位置するときに第1の座標値として所定のセンサに検出させるともに、前記載置手段が前記第2回転位置に位置するときに第2の座標値として前記センサに検出させる検出制御手段と、
前記第1の座標値に基づいて、前記爪に印刷するための第1の印刷データを生成し、前記第2の座標値に基づいて、前記爪に印刷するための第2の印刷データを生成する印刷データ生成手段と、
前記爪に印刷を施す印刷手段と、を備え、
前記印刷データ生成手段によって前記第2の印刷データが生成されたときは、
前記印刷手段による前記第1の印刷データに基づく前記爪に対する印刷は、前記載置手段が前記第1回転位置に位置するときに行われ、
前記印刷手段による前記第2の印刷データに基づく前記の爪に対する印刷は、前記載置手段が前記第2回転位置に位置するときに行われる、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記第1回転位置は、載置面に指の腹側が向くようにして前記載置手段に載置された指の爪が前記センサに対して正対する回転位置として設定されており、
前記第2回転位置は、前記載置面に指の腹側が向くようにして前記載置手段に載置された指の爪が前記センサに対して斜めに向く回転位置として設定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記印刷データ生成手段は、前記爪の幅方向端部での前記第2の座標値を、前記載置手段が前記第1回転位置に位置するときの前記爪の幅方向端部での座標値に換算した値が、前記爪の幅方向端部での前記第1の座標値が示す高さよりも予め定めた閾値以上低い位置を示す値である場合に、前記第1の座標値に基づき前記第1の印刷データを生成するとともに、前記爪の幅方向端部の領域について前記第2の座標値に基づき前記第2の印刷データを生成する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記センサは、ステレオカメラ方式またはToFカメラ方式の3Dセンサである、
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
刷対象である爪に対応する指を載置可能で前記指が載置された場合に前記指が延びる方向に沿う軸周りに第1回転位置と第2回転位置とを取り得るように回転可能な載置手段に載置されている指の爪の位置を示す座標値を、前記載置手段が前記第1回転位置に位置するときに第1の座標値として所定のセンサに検出させるともに、前記載置手段が前記第2回転位置に位置するときに第2の座標値として前記センサに検出させる検出制御工程と、
前記第1の座標値に基づいて、前記爪に印刷するための第1の印刷データを生成し、前記第2の座標値に基づいて、前記爪に印刷するための第2の印刷データを生成する印刷データ生成工程と、
前記印刷データ生成工程によって前記第2の印刷データが生成された場合において、前記載置手段が前記第1回転位置に位置するときに前記第1の印刷データに基づく前記爪に対する印刷を行い、前記載置手段が前記第2回転位置に位置するときに前記第2の印刷データに基づく前記爪に対する印刷を行う印刷工程と、
を含むことを特徴とする印刷制御方法。
【請求項6】
コンピュータに
印刷対象である爪に対応する指を載置可能で、前記指が載置された場合に前記指が延びる方向に沿う軸周りに、第1回転位置と第2回転位置とを取り得るように回転可能な載置手段に載置されている指の爪の位置を示す座標値を、前記載置手段が前記第1回転位置に位置するときに第1の座標値として所定のセンサに検出させるともに、前記載置手段が前記第2回転位置に位置するときに第2の座標値として前記センサに検出させる検出制御手段、
前記第1の座標値に基づいて、前記爪に印刷するための第1の印刷データを生成し、前記第2の座標値に基づいて、前記爪に印刷するための第2の印刷データを生成する印刷データ生成手段、
前記爪に印刷を施す印刷手段、として機能させ
前記印刷データ生成手段によって前記第2の印刷データが生成されたときは、
前記印刷手段による前記第1の印刷データに基づく前記爪に対する印刷は、前記載置手段が前記第1回転位置に位置するときに行われ、
前記印刷手段による前記第2の印刷データに基づく前記爪に対する印刷は、前記載置手段が前記第2回転位置に位置するときに行われる、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、印刷制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指の爪にデザインの印刷を施す印刷装置(ネイルプリンタ)が知られている。ネイルプリンタでは、印刷したい爪に対応した指を指置台に載置し、爪に対して例えばインクジェット方式を用いて印刷処理を行う。
【0003】
例えば特許文献1には、爪画像をカメラによって撮像し、取得した爪画像から爪の範囲(印刷範囲)を認識し、当該範囲に印刷を施すネイルプリンタ(特許文献1において、「液滴を吐出」させて印刷を行う「射出装置」)が記載されている。
また特許文献1には、「射出装置」が三次元形状を有する立体構造物に対して印刷を行うプリンタである場合について言及されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-018589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、爪の形は、形状等が十人十色である。
例えば爪の側部が上面の画像から認識できる範囲よりも内側に巻いている巻き爪の場合、爪を上方から撮影しただけでは内側に巻き込んでいる部分の形状や範囲等を正しく認識することができない。この場合、爪の側部について正しい印刷データを生成することができず、塗り残し部分を生じてしまうおそれもある。
また、爪の曲率が強く、爪の側部の深さ(高さ位置)が爪の上面よりも極端に低い場合(例えば爪の側部が上面に対して垂直に近い角度で下方に大きく落ち込んでいる場合)等にも爪を上方から撮影しただけでは爪の側部の形状や範囲等を正しく認識することができず、爪の側部について正しい印刷データを生成することができない。
【0006】
さらに、印刷装置(ネイルプリンタ)がインクジェット方式を用いて印刷処理を行う場合、印刷対象面(すなわち爪の表面)から印刷ヘッドのインク吐出面までの距離(以下において「爪-ヘッド間距離」とする)には適切に印刷することができる範囲がある。
例えばこの「爪-ヘッド間距離」が近すぎると印刷ヘッドが爪に干渉してしまうおそれがあり、逆に「爪-ヘッド間距離」が遠すぎると印刷ヘッドから吐出された液滴(インク等)が正しい場所に着弾できず、高品質な印刷を行うことができない。
【0007】
上記のように爪が巻き爪である場合や、爪の曲率が大きい場合には、印刷データを生成するための爪の画像を爪の側部まで適切に取得することが難しく、また、印刷時においても爪全体について「爪-ヘッド間距離」を適切に保って印刷することが難しいという問題がある。
この点、特許文献1に記載の装置は、これらの問題を解決できる構成とはなっていない。このため、爪の形状によっては爪の側部まで正常に印刷することができないことがあった。
【0008】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、曲率等の爪の形状によらず
正常に印刷をすることができる電子機器、印刷制御方法及びプログラムを提供する
ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明に係る電子機器は、印刷対象である爪に対応する指を載置可能で、前記指が載置された場合に前記指が延びる方向に沿う軸周りに、第1回転位置と第2回転位置とを取り得るように回転可能な載置手段と、前記載置手段に載置されている指の爪の位置を示す座標値を、前記載置手段が前記第1回転位置に位置するときに第1の座標値として所定のセンサに検出させるともに、前記載置手段が前記第2回転位置に位置するときに第2の座標値として前記センサに検出させる検出制御手段と、前記第1の座標値に基づいて、前記爪に印刷するための第1の印刷データを生成し、前記第2の座標値に基づいて、前記爪に印刷するための第2の印刷データを生成する印刷データ生成手段と、前記爪に印刷を施す印刷手段と、を備え、前記印刷データ生成手段によって前記第2の印刷データが生成されたときは、前記印刷手段による前記第1の印刷データに基づく前記爪に対する印刷は、前記載置手段が前記第1回転位置に位置するときに行われ、前記印刷手段による前記第2の印刷データに基づく前記爪に対する印刷は、前記載置手段が前記第2回転位置に位置するときに行われる、を備えることを特徴とする
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、曲率などの爪の形状によらず正常に印刷をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態における印刷装置の要部外観構成を示す斜視図である。
図2】実施形態における指載置台の模式的な斜視図である。
図3】実施形態における印刷装置の概略の制御構成を示す要部ブロック図である。
図4】回転していない状態の指載置台に載置された指の爪と印刷ヘッド等との位置関係を示す模式図である。
図5】回転した状態の指載置台に載置された指の爪と印刷ヘッド等との位置関係を示す模式図である。
図6】(a)は、指を上方から見た平面図であり、(b)及び(d)は、回転させない状態の指を図2に示す太矢印VI方向から見た図であり、(c)は、回転させた状態の指を図2に示す太矢印VI方向から見た図である。
図7】(a)は、指を上方から見た平面図であり、(b)及び(d)は、回転させない状態の指を図2に示す太矢印VI方向から見た図であり、(c)は、回転させた状態の指を図2に示す太矢印VI方向から見た図である。
図8図6に示す爪について生成される印刷データ例を示す図である。
図9図7に示す爪について生成される印刷データ例を示す図である。
図10】実施形態における印刷制御方法のフローチャートである。
図11】実施形態における印刷制御方法のフローチャートである。
図12】実施形態における印刷制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から図12を参照しつつ、本発明に係る印刷装置、電子機器、印刷制御方法及びプログラムの一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、以下の実施形態では、印刷装置が手の指の爪を印刷対象としてこれに印刷するネイルプリント装置である場合を例に説明するが、本発明における印刷装置の印刷対象は手の指の爪に限るものではなく、例えば足の指の爪等を印刷対象としてもよい。また、ネイルチップや各種アクセサリの表面等、爪以外のものを印刷対象としてもよい。
【0013】
図1は、本実施形態における印刷装置(ネイルプリンタ)の要部外観構成を示す斜視図である。また図2は、印刷装置の要部制御構成を示すブロック図である。
なお、以下の実施形態において、上下、左右及び前後は、図1に示した向きをいうものとする。また、X方向、Y方向及びZ方向は、図1に示した方向をいうものとする。
【0014】
図1に示すように、印刷装置1は、ほぼ箱形に形成された筐体2を有している。
筐体2の上面(天板)には操作部21が設置されている。
操作部21は、ユーザが各種入力を行うものである。
操作部21は、例えば、印刷装置1の電源をON/OFFする電源スイッチ釦、動作を停止させる停止スイッチ釦、印刷開始を指示する印刷開始釦等、各種の入力を行うための操作釦等で構成されている。
操作部21が操作されると操作に応じた操作信号が制御装置10に出力され、制御装置10が操作信号にしたがった制御を行い、印刷装置1の各部を動作させる。例えば操作された操作部21が電源スイッチボタンである場合、ボタン操作に応じて印刷装置1の電源がON/OFFされる。
【0015】
また筐体2の上面(天板)には、表示部22が設けられている。
表示部22は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のフラットディスプレイ等で構成されている。
なお、表示部22の表面に各種の入力を行うためのタッチパネルが一体的に構成されていてもよい。この場合には、タッチパネルが操作部21として機能する。
【0016】
表示部22の表示画面には、各種の案内画面、警告表示画面等が表示可能となっている。
例えば、本実施形態では指載置台3がユーザの指Uを載置したまま回転可能となっている。指載置台3が回転動作(回動)する際には、「今から指載置台が右側に傾きます。」等、ユーザに注意喚起するメッセージ等やイメージ図が表示部22に表示されてもよい。これにより指載置台3が回転してもユーザを驚かせずに済み、ユーザが慌てて指Uを動かしてしまうエラー等を防ぐことができる。なお、ユーザへの注意喚起は表示部22による表示ではなく、スピーカ、発光ダイオード等の報知手段による音や光を用いた報知であっても良い。
また表示部22には、ユーザが操作部21等から入力・選択したネイルデザインや、後述するカメラ51によって撮影された爪画像、爪画像から検出された爪領域(印刷領域)、印刷領域にデザインを重畳させた仕上がりイメージ画像等が表示されてもよい。
【0017】
印刷装置1の筐体2の前面側(図1においてY方向の手前側)であって装置の左右方向(図1におけるX方向)のほぼ中央部には、印刷装置1による印刷時に印刷対象である爪Tに対応する指Uを挿入する開口部である指挿入口23が形成されている。なお指挿入口23の位置や大きさ等は図示例に限定されない。
【0018】
また筐体2の内部には、図示しない装置本体が収容されている。
装置本体上であって指挿入口23に対応する部分には、指挿入口23から挿入された指U(印刷対象である爪Tに対応する指U)を載置する載置手段としての指載置台3が設けられている(図1参照)。
【0019】
図2は、指載置台の要部構成を示す模式的な斜視図である。図2において、指載置台3に載置された指Uを二点鎖線で示している。
本実施形態の指載置台3は、ほぼ箱形に形成されたケース30を備えており、ケース30内には指Uの腹を受ける指受け部31が配置されている。指受け部31は例えばウレタン等の柔軟性を有する樹脂で形成されていることが好ましい。図2等に示すように、指受け部31における幅方向の中央部は、指の長さ方向(図2においてY方向)に沿って多少窪んだ形状となっており、指受け部31上に配置された指Uを安定して受けることができるようになっている。
【0020】
ケース30の手前側(図2においてY方向の手前側)には、指Uを囲うように枠状部32が形成されており、枠上部32の天面は、指載置台3に載置された指Uの上面の高さ位置を規制する指押え部321として機能する。
本実施形態では、指受け部31が図示しないばね等の付勢部材等によって上方に押し上げられる構成となっており、指載置台3に載置された指Uは指受け部31と天面321との間に挟まれることで位置が固定される。このように、本実施形態では、指受け部31と天面321とによって指Uを固定する指固定手段が構成される。なお、指固定手段の構成はこれに限定されない。例えば指載置台3に指Uの動きを規制するベルト等を設けて、より確実に指Uを固定する構成としてもよい。
【0021】
本実施形態における載置手段である指載置台3は、指載置台3に載置される指Uの長さ方向(指Uが延びる方向、図2において破線で示す方向)である第1方向(本実施形態では、Y方向)に沿う軸(図2に示す軸34)周り、つまり、後述する図6及び図7のY軸を軸として第1状態から第2状態を取り得るように回転(回動)可能となっている。また、本実施形態では、図6及び図7のように、Z軸方向において指載置台3に載置された指の腹の高さ位置と、回転中心(原点位置)の高さ位置が殆ど一致する構成となっている。
ここで「第1状態」とは載置手段である指載置台3が回転していない状態(初期状態)、であり、「第2状態」とは第1方向に沿う軸34周りに指載置台3が回転した回転状態(指載置台3のXY平面に対する角度が第1状態とは異なる状態)である。
【0022】
図2に模式的に示すように、指載置台3には、指載置台3全体を第1方向に沿う軸34周りに回転させる載置台回転モータ33が設けられている。本実施形態において「第1方向に沿う軸34」は、載置台回転モータ33の回転軸である。
載置台回転モータ33は正逆いずれの方向にも回転可能となっており、指載置台3及び指載置台3に載置されている指Uを、右回り、左回りに適宜回動(揺動)させる。
【0023】
本実施形態では、指Uを載置した指載置台3を回転させた状態で、カメラ51による撮影、3Dセンサ6による測定等による爪Tの位置の検出(座標値の取得)を行う。また必要に応じて、指Uを載置した指載置台3を回転させた状態で爪Tに印刷を行う。
指載置台3を回転させる角度をどの程度とするかは適宜設定される事項である。この角度は、デフォルトで予め設定された角度であってもよいし、例えば後述するカメラ51や3Dセンサ6による認識の結果を見ながら、爪Tと認識される範囲がすべて確認できるようになる角度まで回転させてもよい。
【0024】
ただ、指Uを無理に回転させようとするとユーザの負担となり、意識的・無意識的に回転に逆らおうとして載置された指Uの位置をずらしてしまう場合もある。このため、一般的にユーザに無理を強いない程度の角度が予め設定され、爪Tの全範囲が認識されたか否かにかかわらず、設定角度まで回転したら回転が停止するようになっていることが好ましい。また指Uの可動範囲等はユーザによっても異なることから、回転角度や回転速度等についてユーザが適宜設定できるようになっていてもよい。また、印刷ヘッド41は、指載置台3を回転させた場合に、指Uや指載置台3等と接触しない高さであることが好ましく、さらに後述する3Dセンサによって印刷ヘッド41と指Uとが接触しそうな座標に指Uが位置していることを検出した場合に、表示部22によるアラーム表示や、報知手段による音や光の警報を発しても良い。
なお、指載置台3を回転させた状態での爪Tの位置検出や印刷処理については後に詳述する。
【0025】
図3は、本実施形態に係る印刷装置の制御構成を示す要部ブロック図である。
装置本体には、図3に示す印刷機構4、撮影部5、3Dセンサ6等が設けられている。
【0026】
印刷機構4は、後述する印刷データに基づいて、印刷対象である爪Tに印刷を施す印刷手段である。印刷機構4は、印刷ヘッド41と、印刷ヘッド41を適宜移動させる移動機構等を備えている。
印刷ヘッド41の構成は特に限定されないが、例えばインクを貯留する貯留部(インクカートリッジ)と図示しないインク吐出部とが一体に形成されたカートリッジ一体型のヘッドである。
本実施形態では、印刷ヘッド41の下面(指載置台3に配置された爪Tの表面と対向する面)に、インクを吐出させる吐出口を有するインク吐出面411が形成されている。印刷ヘッド41は、微滴化したインクをインク吐出面411から印刷対象面(爪Tの表面)に吹き付けて印刷を行うインクジェット方式のヘッドである。
【0027】
印刷ヘッド41に貯留されているインクは、例えば、シアン(C;CYAN)、マゼンタ(M;MAGENTA)、イエロー(Y;YELLOW)等の各色のインク(以下「色インク」という。)である。なお、印刷ヘッド41から吐出されるインクはこれに限定されず、他の色のインクを吐出可能であってもよい。また、印刷ヘッド41は、色インクを吐出するものに限定されず、例えばデザインを印刷する前に下地となる液剤(白色等の下地用インク)を吐出させるものであってもよい。印刷装置1は、いずれか1つの印刷ヘッド41を有していてもよいし、複数の印刷ヘッド41を備えていてもよい。
【0028】
インクジェット方式で印刷を行う場合、印刷対象面(すなわち爪Tの表面)から印刷ヘッド41のインク吐出面411までの距離(以下において「爪-ヘッド間距離」とする)には適切に印刷することができるZ軸方向の範囲(これを「適正距離範囲Ra」とする。図4及び図5参照)がある。
例えばこの「爪-ヘッド間距離」が近すぎると、インク吐出面411が印刷対象面(爪Tの表面)に接触してインク吐出面411又は印刷対象面(爪Tの表面)が傷つくおそれがある。他方で「爪-ヘッド間距離」が遠すぎると、印刷ヘッド41から吐出された液滴(インク等)が正しい位置に着弾せず、高品質な印刷を行うことができない。
【0029】
図4及び図5は、指載置台に載置された指の爪と印刷ヘッド等との位置関係を示す模式図である。図4は指載置台3が回転していない状態を示し、図5は指載置台3が回転した状態を表している。
各図中「適正距離範囲Ra」を破線で示している。
印刷ヘッド41から吐出された液滴(インク等)を着弾させたい印刷対象面(爪Tの表面)上の地点が、2本の破線で区切った「適正距離範囲Ra」内に位置していれば、正しくインクが着弾し(着弾の乱れを生じず)、きれいな印刷を行うことができる。
【0030】
例えば、図4及び図5に示す爪Tでは、座標値(xd,zd)で表される地点は、指載置台3が回転していない状態(「第1状態」)で印刷しても「適正距離範囲Ra」内に入っている。このため、適切に印刷を行うことができる。なお、ここでの座標値(xd,zd)とは、例えば第1状態において3Dセンサ6が爪Tの幅方向の端部を検出できる限界の座標であり、このz座標の最小値(zd)よりもZ軸方向の高さが低い部分は巻き爪等により上方からは検出できない。また、座標値(x,z)で表される地点は、指載置台3が回転していない「第1状態」では「適正距離範囲Ra」内に入らない。このため、図4に示すような「第1状態」で印刷を行うと、爪Tの幅方向の端部に液滴が着弾せず、きれいな印刷とならない。この場合でも図5に示すように指載置台3が回転した状態(「第2状態」)では座標値(x,z)で表される地点が「適正距離範囲Ra」内に入る。このため、指載置台3を回転させた「第2状態」で印刷を行えば、適切に印刷を行うことができる。なお、ここでの座標値(x,z)とは、例えば指載置台3を回転させたときに3Dセンサ6によって検出される爪Tの幅方向の最端部(爪Tと皮膚部分との境界)の座標であり、巻き爪の程度が大きい場合、指載置台3を回転していない「第1状態」では検出できない可能性のある座標である。
【0031】
また移動機構は、印刷ヘッド41を保持する図示しないホルダを、装置左右方向であるX方向及び装置前後方向であるY方向(図1等にいうX方向、Y方向参照)に移動させるものである。
移動機構は、印刷ヘッド41(ホルダ)のX方向への移動の際に駆動するX方向移動モータ45、Y方向への移動の際に駆動するY方向移動モータ47を備えている(図3参照)。X方向移動モータ45、Y方向移動モータ47は、例えばステッピングモータであり、制御部11により動作が制御される。
さらに移動機構は、光学センサ等により構成された位置検出センサ48を有している。位置検出センサ48は、例えば印刷ヘッド41のX方向の原点位置やY方向の原点位置を取得する原点センサ、印刷ヘッド41の現在位置等を把握するエンコーダセンサ等である。
【0032】
また撮影部5は、カメラ51と、光源52とを備えている。
撮影部5を構成するカメラ51等は、例えば筐体2の天面内側や、装置本体に立設された図示しない支持部材等に取り付けられている。撮影部5のカメラ51等の配置は特に限定されないが、例えば図4図5に示すように、指載置台3に載置された指Uの爪Tの上方に配置され、爪Tを含む指Uを上方から撮影して爪画像を取得可能となっている。
【0033】
カメラ51は、例えば、200万画素以上の画素を有するCCD(Charge Coupled Device)型やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型等の固体撮影素子とレンズ等を備えて構成された小型カメラである。
本実施形態では、指載置台3に載置された指U及びその爪Tを撮影手段としてのカメラ51により撮影して爪Tを含む指Uの画像(「爪画像」という)を取得する。取得された「爪画像」は制御部11に送られて、後述するように、この「爪画像」から印刷対象である爪Tの形状(「爪輪郭」)や爪輪郭の内側領域である爪領域等を検出(取得)するようになっている。
【0034】
図4及び図5に示すようにカメラ51は、指載置台3の上方に配置されており、指載置台3に載置された指U及びその爪Tを上方から撮影する。
指載置台3が回転していない「第1状態」で爪Tを撮影した爪画像には、例えば図4において座標値(xd,zd)で表される地点は写り込むが、これより垂直方向(Z軸方向)又は内側に巻き込む方向に下がった地点は写らない。
このため、例えば爪Tの側部が上面の画像から認識できる範囲よりも内側に巻いている巻き爪の場合や、例えば爪Tの曲率が強く、爪Tの側部が上面に対して垂直に近い角度で下方に大きく落ち込んでいる場合等には、爪画像から爪Tの側部の形状や範囲等を正しく認識することは難しい。
【0035】
これに対して図5に示すように指載置台3を回転させた状態(「第2状態」)とすると、「第1状態」ではカメラ51で撮影することのできなかった箇所(例えば図5において座標値(x,z)で表される地点)も爪画像に写り込む。
このため本実施形態では、カメラ51による爪画像の撮影の際、指載置台3が回転していない「第1状態」と指載置台3を回転させた状態「第2状態」とでそれぞれ撮影を行い、爪画像を取得するようになっている。これにより、爪Tの曲率等の形状によらず、爪Tの側部の形状や範囲等を爪画像から認識することができる。
【0036】
光源52は、例えばカメラ51の左右両側等に配置され、カメラ51の撮影対象(印刷対象である爪Tの表面やこれを含む指U)を照明する。
光源52の具体的な構成や配置は特に限定されないが、例えば複数のLEDを備える照明ユニットである。なお光源52は、カメラ51の撮影対象を照明可能であれば、LEDに限定されない。
なお、撮影部5の構成や配置は、ここに例示したものに限定されない。
【0037】
さらに本実施形態の印刷装置1は、3Dセンサ(3次元センサ)6を備えている。
本実施形態において3Dセンサ6は爪Tの少なくとも一部(例えば爪幅方向の側端部等)の位置を示す座標値を検出する検出手段である。3Dセンサ6は、対象物の形状等を3次元的にとらえるものであり、x,y座標で表される2次元的な位置情報を取得するカメラ51と異なり、高さ方向の情報も含めたx,y,z座標で表される3次元的な位置情報を取得する。
【0038】
検出手段としての3Dセンサ6は、回転していない状態(初期状態)である「第1状態」(図4参照)にある指載置台3に載置されている爪Tの座標値である「第1の座標値」及び回転状態である「第2状態」(図5参照)にある指載置台3に載置されている爪Tの座標値である「第2の座標値」を検出する。
【0039】
3Dセンサ6は、3次元の情報を取得可能なものであればよく具体的な構成等は限定されない。例えば3Dセンサ6としては、2つのカメラで構成されるステレオカメラ方式、対象物に赤外線を照射して反射させ、反射した赤外線が戻ってくるまでの時間を計測することで物体の深度を計算するToF(Time of Flight)カメラ方式のいずれであってもよい。
また3Dセンサ6の配置等は特に限定されず、例えば図4及び図5に示すようにカメラ51の近傍等に配置される。
【0040】
なお、3Dセンサ6は対象物のうち、どの部分が爪Tでどの部分が指Uであるかを、例えば爪Tと皮膚部分との境界における深度の差を検出する等して行う。しかし、爪の形状は十人十色であり、爪Tと皮膚部分との境界の深度に殆ど差がない場合もありうる。
このため、本実施形態では、撮影部5のカメラ51によって取得された爪画像から画像解析により爪領域を検出し、さらに爪領域内の3次元情報を見ることで爪Tの側端部等の位置や形状を示す座標値等を検出する。
【0041】
印刷装置1に搭載される制御装置10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成される制御部11(図3参照)と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)で構成される記憶部12(図3参照)とを備えるコンピュータである。
制御装置10は、例えば筐体2の上面(天板)の内側(下面側)等に配置された図示しない基板等に搭載されている。
【0042】
記憶部12は、印刷装置1を動作させるための各種プログラムやデータ等を記憶している。
具体的には、記憶部12には、印刷処理を行うための印刷制御プログラム、指載置台3に載置されている爪Tの位置を示す座標値等に基づいて爪輪郭、爪領域等の爪情報を検出する爪情報検出処理を行うための爪情報検出プログラム等の各種プログラムが格納されており、制御部11がこれらのプログラムを例えばRAMの作業領域に展開して、プログラムが制御部11において実行されることによって、印刷装置1の各部が統括制御されるようになっている。
また、記憶部12には、制御部11によって取得された爪輪郭や爪形状に関する各種データ等が記憶される。
なお、記憶部12には、撮影部5のカメラによって取得された爪画像等のデータ、3Dセンサ6によって取得された3次元的な座標情報(座標値)等が記憶されてもよいし、その他各種データが記憶されてもよい。
【0043】
制御部11は、機能的に見た場合、主として表示制御手段、撮影制御手段、爪情報検出手段、印刷データ生成手段、印刷制御手段等として機能する。なお、制御部11の機能はここに例示したものに限定されない。例えば、印刷装置1は、各種端末装置等の外部装置との間で通信を行うための通信部25を有しており、制御部11は、通信制御手段としてこの通信部25の動作を制御し、外部装置との間で通信を行わせることができる。
表示制御手段、撮影制御手段、爪情報検出手段、印刷データ生成手段、印刷制御手段等としての機能は、制御部11と記憶部12に記憶されたプログラムとの協働によって実現される。
【0044】
表示制御手段としての制御部11は、表示部22の表示動作を制御する。
制御部11からの表示指示信号に従って表示部22の表示画面に各種の表示が行われる。
【0045】
撮影制御手段としての制御部11は、撮影部5のカメラ51を制御して撮影を行わせ、画像を取得するとともに、光源52を制御する光源制御手段としても機能する。
本実施形態において撮影制御手段としての制御部11は、撮影部5(撮影部5のカメラ51及び光源52)を制御して、指配置台3に載置された爪T(爪Tを含む指U)を撮影させ、爪画像を取得する。
【0046】
爪情報検出手段としての制御部11は、撮影部5(撮影部5のカメラ51)に指U及び爪Tを撮影させて取得した爪画像を解析することにより指Uの爪Tに関する情報(これを「爪情報」という。)を取得(検出)するものである。
爪情報検出手段としての制御部11によって取得される爪情報は、例えば、爪Tとそれ以外の部分(指Uの皮膚部分等)とを分けて爪Tの領域(爪領域)や爪領域を画する爪輪郭である。また、予め下地層となる白色のインク層を手塗りなどによって形成している場合は、より領域の境界が明確になり、爪情報が取得(検出)しやすくなる。
【0047】
本実施形態では、爪情報検出手段としての制御部11が、カメラ51によって取得された爪画像からの2次元的な爪情報に加えて、3Dセンサ6によって取得される3次元的な爪情報を考慮して、印刷対象領域となる爪領域を画する爪輪郭を検出する。
爪画像から検出された2次元的な情報では、例えば爪Tの幅方向端部が内側に巻いている巻き爪や、爪Tの幅方向端部が極端に湾曲している場合等、爪Tの上方からの画像からでは正確なz座標が把握しきれず、爪Tの側端部の形状等を検出することができない。
この点、爪情報の検出を行う際には、制御部11が、カメラ51により爪画像を取得させるとともに、3Dセンサ6を動作させて指載置台3上に載置された対象物(指U及び爪T)の位置を示すx,y,z座標値を取得させる。
これにより、爪Tとそれ以外の部分(指U等)との境界(爪輪郭)については爪画像から検出し、爪輪郭の内側の領域(爪領域)の、3次元的な位置を示す座標値については3Dセンサ6によって得ることができる。
【0048】
本実施形態では、制御部11は、指載置台3が回転していない状態(初期状態)である「第1状態」(図4参照)で、カメラ51による爪Tの撮影と検出手段としての3Dセンサ6による座標値(「第1の座標値」)の取得を行わせる。
また制御部11は、指載置台3を回転させる載置台回転モータ33を適宜動作させ、例えば予め設定された回転角度まで指載置台3を回転させた回転状態である「第2状態」(図5参照)として、カメラ51による爪Tの撮影と検出手段としての3Dセンサ6による座標値(「第2の座標値」)の取得を行わせる。なお、第1の座標値と第2の座標値の取得の順序は逆でも良い。
【0049】
図6(a)~図6(d)は、巻き爪等でなく爪幅方向の湾曲も特別大きくない、一般的な爪Tの場合を例示した図である。
また、図7(a)~図7(d)は、爪Tが程度の大きな巻き爪である場合を例示した図である。
図6(a)~図6(d)及び図7(a)~図7(d)において、指載置台3を回転させない状態において爪Tの幅方向の端部と認識された箇所を示すラインを、図中二点鎖線α(図6(a)及び図7(a)の向きで配置された指Uの上面視において指U(爪T)の左側となるラインを「α」、右側となるラインを「α’」)とする。また指載置台3を回転させない状態における指Uの幅方向の端部を示すラインを、図中二点鎖線β(図6(a)及び図7(a)の向きで配置された指Uの上面視において指U(爪T)の左側となるラインを「β」、右側となるラインを「β’」)とする。
【0050】
図6(a)及び図7(a)は、指Uを上方から見た場合の爪Tの上面図である。
図6(b)及び図7(b)は、図6(a)及び図7(a)で示した爪Tを有する指Uを、回転させていない状態(初期状態、「第1状態」)の指載置台3に載置させた状態(爪Tが第1の位置にある状態)を図2に示す太矢印VI方向から見た図を示している。なお、回転させない状態で爪Tの幅方向の端部と認識された箇所(図中白抜きの丸で示す)の位置を示す座標値を基準の座標値xd,zd(又はxd,yd,zd)とする。
【0051】
図6(c)及び図7(c)は、は、指Uを載置させたまま指載置台3を角度+θm回転させ、図6(b)及び図7(b)に示した状態から図中x軸方向+側を角度+θmだけ傾けた状態(「第2状態」)とした場合の指Uを図2に示す太矢印VI方向から見た図である。このときのx軸と座標x,zとのなす角度をθとする。また図6(d)及び図7(d)は、図6(c)及び図7(c)に示した状態から指載置台3を角度-θmだけ仮想的に回転させて、回転させていない状態(初期状態、「第1状態」)に戻した(換算した)場合の指Uを図2に示す太矢印VI方向から見た図である。なお、「第2状態」となっている指載置台3に指Uが配置されているとき、爪Tは「第2の位置」にある状態となる。
【0052】
さらに図6(d)及び図7(d)では、図6(c)及び図7(c)において、指載置台3を回転させた状態で爪Tの幅方向の端部と認識された箇所(図中黒丸で示す)の位置を示す座標値をx,z(又はx,y,z)と示す。
また、x軸とz軸とのy軸の交点を原点としたとき、原点から座標x,z(又はx,y,z)によって示される位置までの距離(すなわち原点とx,z(又はx,y,z)とを結ぶ線の長さ)を距離rとし、原点と座標x,z(又はx,y,z)とを結ぶ線がx軸に対してなす角度をθとする。なお、距離rは爪の形状によって僅かに値が異なることがあるが、ここでは近似的に距離rに統一している。
【0053】
図6(d)及び図7(d)において、指載置台3を回転させた状態のときに爪Tの幅方向の端部と認識された箇所を座標x,z(又はx,y,z)とし、これを回転させない「第1状態」に戻したときの位置を示す座標値を座標x’,z’(又はx’,y’,z’)とする。なお、座標x’,z’(又はx’,y’,z’)の値は、座標x,z(又はx,y,z)を、三角関数を用いて換算し算出した値である。
【0054】
三角関数を用いた換算は、例えば以下のように行う。
rcos(θ)=x
r=x/cos(θ) ・・・ 式1
rcos(θ-θm)=x'
r=x'/cos(θ-θm) ・・・ 式2
式1及び式2より、
x/cos(θ)=x'/cos(θ-θm)
x'=x cos(θ-θm)/cos(θ)
θ=tan-1(z/x)
z'=x'tan(θ-θm)
他のx,y座標に関しても同様の換算を行う。
【0055】
これにより、例えば図6(d)及び図7(d)に示す、指載置台3を回転させた際に爪Tの端部として確認された箇所の位置を示す座標値x,z(又はx,y,z)を、指載置台3を回転させていない状態における位置の座標値x’,z’(又はx’,y’,z’)に換算することができる。
なお、図示例ではx軸方向+側についてのみ説明しているが、指載置台3を回転させた状態でのカメラ51による爪Tの撮影及び3Dセンサ6による計測は、x軸方向-側についても同様に行う。
【0056】
例えば図6(a)~図6(d)に示すように、爪Tが巻き爪でもなく、曲率もそれほど大きくない場合には、指載置台3を回転させない状態で爪Tを上方から見た場合の爪Tの幅方向の端部と、指載置台3を回転させたときに確認できる爪Tの幅方向の端部とがほぼ一致する。
このように、指載置台3を回転させた状態で検出することができた爪Tの幅方向の端部の高さ方向の座標値z(これを指載置台3が回転していない状態に換算した際の値である座標値z‘)を、指載置台3を回転させない状態で取得された座標値zdと比較した場合に、両者がほぼ同じとなる場合には、指載置台3を回転していない状態でも爪T全体(すなわち爪Tの中央部から端部まで)を上方から撮影することができる。このため指載置台3が回転していない状態においてカメラ51で取得された爪画像から検出される爪輪郭の内側領域(これを「主印刷領域」とする)を印刷範囲としてデザインを合わせ込めば爪Tの端部まできれいに印刷することができる印刷データTD(図8等参照)となる。
【0057】
これに対して、例えば図7(a)~図7(d)に示すように、爪Tが大きく内側に巻いている巻き爪である場合や、爪Tの幅方向の端部が極端に湾曲して深く落ち込んでいる場合等には、指載置台3を回転させると、回転前には確認することのできなかった部分が現れる。このような場合、回転時に検出できた爪Tの端部の位置を示す座標値z(これを指載置台3が回転していない状態に換算した際の値z‘)が、指載置台3を回転させない状態で爪Tを上方から見た場合の爪Tの幅方向の端部の座標値zdよりも小さくなる。
【0058】
座標値z‘が座標値zdよりも小さい箇所(図9において網掛けされた箇所)は、指載置台3が回転していない状態においてカメラ51で取得された爪画像に基づいて検出される爪輪郭の内側領域(「主印刷領域」)を印刷範囲とするだけでは端部に塗り残しを生じてしまう。
このため制御部11は、座標値z‘が座標値zdよりも小さい箇所がある場合は、「主印刷領域」に付加すべき「補足印刷領域」とし、「主印刷領域」に爪幅方向左右の「補足印刷領域」を付加した範囲を印刷領域とする。
【0059】
印刷データ生成手段としての制御部11は、印刷手段としての印刷機構4によって印刷を行うための印刷データを生成する。具体的には、爪情報検出手段としての制御部11によって設定された印刷領域に所望のデザインを合わせ込む等により印刷データを生成する。
すなわち、制御部11は、ユーザによって選択されたネイルデザイン(デザイン)の画像データを切り出し、適宜拡大縮小、配置の調整等を行うとともに、爪Tの印刷領域として設定された範囲内にフィッティングする。
なお、爪情報検出手段として爪Tの曲率等を取得した場合には、制御部11は、この爪の曲率等に基づいて、印刷データに適宜曲面補正を行ってもよい。曲面補正を行った場合には、より爪Tの形状に合った印刷データを生成することができる。
【0060】
本実施形態では、検出手段である3Dセンサ6による検出結果や撮影部5のカメラ51によって取得された爪画像に基づく爪情報等に基づいて印刷データが生成される。そして、爪Tの第1の位置(指載置台3が回転していない状態のときの爪Tの位置)を示す座標値である第1の座標値と、爪Tの第2の位置(指載置台3が回転した状態のときの爪Tの位置)を示す座標値である第2の座標値と、を検出する検出手段である3Dセンサ6等と、検出された第1の座標値と第2の座標値とに基づいて、爪Tに印刷を行うための印刷データを生成する印刷データ生成手段としての制御部11等と、を備えて、電子機器100(図3参照)が構成されている。
特に本実施形態の3Dセンサ6は、指載置台3が「第1状態」(回転前の状態)である場合の爪Tの座標値である「第1の座標値」(例えば図6(d)及び図7(d)に示す座標値(基準の座標値)xd,yd,zd)及び指載置台3が「第2状態」(回転状態)である場合の爪Tの座標値である「第2の座標値」(例えば図6(d)及び図7(d)に示す座標値x,(y,)z)を検出するようになっており、制御部11は、爪Tの「第1の座標値」と爪Tの「第2の座標値」に基づく換算値とを比較し、比較結果に基づいて印刷データを生成する。
【0061】
より具体的には、例えば爪Tの幅方向端部における「第2の座標値」(図6(a)~図6(d)、図7(a)~図7(d)において、座標値x,z(又はx,y,z))を指載置台3の回転前の状態における座標値に換算した値(図6(a)~図6(d)、図7(a)~図7(d)において、座標値x’,z’(又はx’,y’,z’))が、爪Tの幅方向端部の「第1の座標値」(すなわち座標値xd,zd)よりも、予め定めた閾値(実施形態で示す例では、指載置台3が回転していない「第1状態」のときに検出できる限界の爪Tの側端部の位置を示す座標値zd)よりも低い高さ位置である箇所がない場合(図6(a)~図6(d)等参照)には、「第1の座標値」に基づき「主印刷領域」に対応する「第1の印刷データTD1」を生成し、これを印刷データTDとする(この場合の印刷データTDのイメージを図8に示す。)。
【0062】
これに対して、座標値x’,z’(又はx’,y’,z’))が、座標値zdよりも低い高さ位置である箇所がある場合(図7等参照)には、「第1の座標値」に基づき「主印刷領域」に対応する「第1の印刷データTD1」を生成するとともに、座標値zdよりも低い高さ位置である箇所(例えば爪Tの幅方向端部の領域)について「第2の座標値」に基づき「補足印刷領域」に対応する「第2の印刷データTD2」を生成する。そして「第1の印刷データTD1」と「第2の印刷データTD2」とを合わせてデザインに対応する印刷データTDとなるように印刷データを生成する(この場合の印刷データTDのイメージを図9に示す。)。
【0063】
なお、印刷領域として、「主印刷領域」の他に「補足印刷領域」がある場合には、印刷データ生成手段としての制御部11は、「主印刷領域」と「補足印刷領域」とを合わせた印刷領域全体に、デザインのデータを割り付けて爪全体に印刷される一つながりのデータとなるように「第1の印刷データTD1」及び「第2の印刷データTD2」を生成する。
【0064】
図8は、図6(a)~図6(d)に示すような比較的一般的な爪についての印刷データの例を示したものである。この場合には、印刷データTDが「主印刷領域」に対応するデータである「第1の印刷データTD1」のみで構成される。
これに対して図9は、図7(a)~図7(d)に示すような大きく内側に巻き込んだ巻き爪についての印刷データの例を示したものである。この場合には、印刷データTDが「主印刷領域」に対応するデータである「第1の印刷データTD1」と「補足印刷領域」に対応するデータである「第2の印刷データTD2」とで構成される。
【0065】
印刷制御手段としての制御部11は、生成された印刷データ(「第1の印刷データTD1」及び「第2の印刷データTD2」)にしたがって爪Tに印刷を施すように印刷機構4の各部を制御する。
具体的には、制御部11は、印刷データに基づいて印刷機構4に制御信号を出力し、爪Tに対してこの印刷データにしたがった印刷を施すように印刷機構4のX方向移動モータ45Y方向移動モータ47、位置検出センサ48及び印刷ヘッド41等を制御する。
【0066】
さらに本実施形態では、印刷データ生成手段として制御部11が「第1の印刷データTD1」の他に「第2の印刷データTD2」を生成した場合、印刷機構4による「第1の印刷データTD1」に基づく爪Tに対する印刷は、指載置台3を「第1状態」(すなわち回転させない状態)として行い、印刷機構4による「第2の印刷データTD2」に基づく爪Tに対する印刷は、指載置台3を「第2状態」(すなわち回転させた回転状態)として行う。
【0067】
すなわち、座標値zd程度の高さ位置までは、印刷データに曲面補正を行う等の対応をすることで適切なインク着弾が可能であるが、これよりも低い高さ位置にあたる「補足印刷領域」は、指載置台3を「第1状態」としたままでは、例えば図4に示す印刷に適した範囲(「適正距離範囲Ra」)から外れてしまう。このような「補足印刷領域」に印刷する場合(すなわち、「第2の印刷データTD2」に基づく印刷を行う場合)には、印刷ヘッド41のインク吐出面411と爪T表面との距離が遠すぎてインクの着弾が乱れ、きれいに印刷することができない。
【0068】
そこで、本実施形態では、こうした「補足印刷領域」について「第2の印刷データTD2」に基づく印刷を行う際には、印刷領域の検出の際と同様の角度(本実施形態の例では角度θm)まで指載置台3を回転させ、この回転状態(「第2状態」)で印刷を行うように制御部11が載置台回転モータ33等を制御する。
指載置台3を回転させることで、座標値zdよりも低い高さ位置にある座標値z’(図5において「第1状態」に換算する前の座標値z)の箇所も印刷に適した範囲(「適正距離範囲Ra」)内に位置させることができる。
【0069】
なお、回転状態(「第2状態」)で印刷を行う場合としては、以下の場合が考えられる。
すなわち、まずx軸の+側の領域について回転状態(「第2状態」)で印刷を行う場合としては、x軸の+側において「補足印刷領域」として設定した領域に印刷する場合、座標値zdで示される位置が、「適正距離範囲Ra」(図4及び図5参照)に入っていないが、座標値zで示される高さが「適正距離範囲Ra」内に入っている場合、座標値zで示される位置及び座標値zdで示される位置が、いずれも「適正距離範囲Ra」内に入っていないが、座標値zで示される位置の方が「適正距離範囲Ra」に近い場合が考えられる。
また、x軸の-側の領域について回転状態(「第2状態」)で印刷を行う場合としては、x軸の-側において「補足印刷領域」として設定した領域に印刷する場合、座標値zdで示される位置が、「適正距離範囲Ra」(図4及び図5参照)に入っていないが、座標値zで示される高さが「適正距離範囲Ra」内に入っている場合、座標値zで示される位置及び座標値zdで示される位置が、いずれも「適正距離範囲Ra」内に入っていないが、座標値zで示される位置の方が「適正距離範囲Ra」に近い場合が考えられる。
【0070】
続いて、図10から図12等を参照しつつ、本実施形態における印刷装置1の動作、印刷制御方法について説明する。
図10から図12は、本実施形態における印刷制御処理を示すフローチャートである。
【0071】
本実施形態の印刷装置1で印刷を行う場合には、図10に示すように、まず爪Tに印刷を施したい指Uを指載置台3に載置するようユーザに促すメッセージ等を表示部22等に表示させる(ステップS1)。なお、指Uを載置するよう促す手法は表示に限られず、例えば印刷装置1にスピーカ等の音声出力部(報知手段)を備える場合には音声によるアナウンス等によってもよい。
指Uが指載置台3に載置されると、制御部11は、載置台回転モータ33を動作させて指載置台3を+θm回転させ、初期状態である「第1状態」から回転状態である「第2状態」とする(ステップS2)。
【0072】
そしてこの「第2状態」において、x座標の+側につき3Dセンサ6により測定を開始させ(ステップS3)、3Dセンサ6により爪Tのx,y座標値及び高さ位置を示す座標値zを取得(測定)する(ステップS4)。
3Dセンサ6により取得される値は、例えば、
(x1, y1, z11), (x2, y1, Z21), ・・・, (xn, y1, zn1)
(x1, y2, z12), (x2, y2, Z22), ・・・, (xn, y2, zn2)
・・・
(x1, yn, z1n), (x2, yn, Z2n), ・・・, (xn, yn, znn)
となる。
【0073】
さらに制御部11は、3Dセンサ6による測定結果から各座標における各々の角度θ(図6(d)、図7(d)のように、X軸方向に平行かつY軸上から各座標に延ばした各直線とXY平面とのなす角)を算出する(ステップS5)。
角度θを算出する計算式は、以下のような式となる。
tan-1(z/x)
【0074】
この結果制御部11は、算出結果として例えば、
θ11, θ21, ・・・, θn1、
θ12, θ22, ・・・, θn2、
・・・
θ1n, θ2n, ・・・, θnn
といった角度を得ることができる。
【0075】
また指載置台3に載置された指U及び爪Tをカメラ51により撮影させ、爪画像を取得する(ステップS6)。
制御部11は、爪画像を取得すると、爪画像から爪領域(爪輪郭として検出された境界線の内側領域)を検出する(ステップS7)。そして、爪領域として検出された領域のx,y,z座標値及び各座標の角度θを記憶部12等に記憶させる(ステップS8)。
【0076】
次に、図11の「A」以下に示すように、指載置台3を-θm回転させ、回転状態である「第2状態」から初期状態である「第1状態」に戻す(ステップS9)。
そして、3Dセンサ6により爪Tのxd,yd座標値及び高さ位置を示す座標値zdを取得(測定)する(ステップS10)。
3Dセンサ6により取得される値は、例えば、
(xd1, yd1, zd11), (xd2, yd1, zd21), ・・・, (xdn, yd1, zdn1)
(xd1, yd2, zd12), (xd2, yd2, zd22), ・・・, (xdn, yd2, zdn2)
・・・
(xd1, ydn, zd1n), (xd2, ydn, zd2n), ・・・, (xdn, ydn, zdnn)
となる。
【0077】
さらに制御部11は、指載置台3に載置された指U及び爪Tをカメラ51で撮影させて(ステップS11)、爪画像を取得し、当該爪画像から爪領域を検出する(ステップS12)。
そして制御部11は、このようにして「第1状態」において爪領域として検出された領域を「主印刷領域」とし(ステップS13)、爪領域として検出された領域のxd,yd,zd座標値を記憶部12等に記憶させる(ステップS14)。
また制御部11は、以下のような計算式を用いて、「第2状態」において取得されたx,y,z座標値を、「第1状態」での座標値x’,y’,z’に換算する(ステップS15)。
x' = x cos(θ-θm) / cos(θ)
θ = tan-1(z/x)
【0078】
そして、制御部11は、「z’<zd」である座標の箇所があるか否かを判断し(ステップS16)、「z’<zd」である座標の箇所がある場合(ステップS16;YES)には、当該箇所を「補足印刷領域」として印刷領域に追加する(ステップS17)。他方、「z’<zd」である座標の箇所がない場合(ステップS16;NO)には、「補足印刷領域」を設定せずに次のステップS18に進む。
【0079】
以上のようにしてx軸の+側の領域について測定が終了すると、制御部11は、x軸の-側の領域について測定が終了しているか否かを判断する(ステップS18)。
x軸の+側の領域、-側の領域のいずれから先に測定処理を行うかは任意である。測定順序は装置側でデフォルトの順序が定まっていてもよい。
x軸の-側の領域について測定が終了していない場合(ステップS18;NO)には、図10に戻り、「B」以降の処理を行う。すなわち、指載置台3を-θm回転させ、初期状態である「第1状態」から回転状態である「第2状態」とする(ステップS19)。そして「第2状態」(回転状態)においてx座標の-側について3Dセンサ6による測定を開始する(ステップS20)。なお、その後のステップS4からステップS17までの処理はx軸の+側の領域について行ったものと同様であるため、説明を省略する。
【0080】
x軸の+側の領域、x軸の-側の領域ともに測定が終了すると(ステップS18;YES)、図12に進み、「C」以下に示すように、爪領域として検出された領域を印刷領域(「主印刷領域」、「補足印刷領域」)として表示部22等に表示させ(ステップS21)、ユーザに確認を促す。
制御部11は、印刷開始指示が操作部等から入力されたか否かを判断し(ステップS22)、一定時間印刷開始指示が入力されない場合や、印刷キャンセルの入力があった場合(ステップS22;NO)には、印刷処理を中止する(ステップS23)。
他方、印刷開始指示が入力された場合(ステップS22;YES)には、制御部11はさらに指載置台3を回転させた「第2状態」で印刷すべき領域があるか否かを判断する(ステップS24)。
【0081】
「第2状態」で印刷すべき領域がある場合(ステップS24;YES)には、指載置台3を+θm回転させ、初期状態である「第1状態」から回転状態である「第2状態」とする(ステップS25)。そして制御部11は、「第2状態」(回転状態)において印刷すべき領域のうち、x軸の+側の領域に、「第2の印刷データTD2」(図9参照)に基づく印刷を施すように印刷機構4を制御する(ステップS26)。
x軸の+側の領域の印刷が完了すると、次に指載置台3を-2θm回転させ(ステップS27)、指載置台3を逆側(例えば図5に示した状態の逆)に傾ける。そして、「第2状態」で印刷すべきx軸の-側の領域に、「第2の印刷データTD2」(図9参照)に基づく印刷を施すように印刷機構4を制御する(ステップS28)。
【0082】
x軸の+側の領域及びx軸の-側の領域への印刷が完了すると、制御部11は載置台回転モータ33の動作を制御して指載置台3を+θm回転させ(ステップS29)、初期状態である「第1状態」に戻す。そして、「第1状態」において印刷すべき領域(「主印刷領域」)に、「第1の印刷データTD1」(図9参照)に基づく印刷を施すように印刷機構4を制御する(ステップS30)。
また、「第2状態」で印刷すべき領域がない場合(図7参照、ステップS24;NO)の場合も、ステップS30に進み、「第1の印刷データTD1」(図9参照)に基づく印刷を施すように印刷機構4が制御される。
なお、x軸の+側の「補足印刷領域」及びx軸の-側の「補足印刷領域」への印刷、「第1状態」において印刷すべき「主印刷領域」への印刷の順序はここに例示したものに限定されず、例えば「主印刷領域」への印刷の後、「補足印刷領域」への印刷を行ってもよい。
【0083】
このように、印刷領域を「第1状態」において印刷すべき領域「主印刷領域」と「第2状態」において印刷すべき領域「補足印刷領域」とに分けて、それぞれについて対応する印刷データ(「第1の印刷データTD1」及び「第2の印刷データTD2」)を用意することで、ユーザの爪Tの形状等によらず、高品質な印刷を行うことができる。
【0084】
以上のように、本実施形態の電子機器100は、爪Tの第1の位置を示す座標値である第1の座標値と、爪Tの第2の位置を示す座標値である第2の座標値と、を検出する検出手段としての3Dセンサ6等と、第1の座標値と第2の座標値とに基づいて、爪Tに印刷を行うための印刷データを生成する印刷データ生成手段としての制御部11と、を備えている。
これにより、上方等、一方向だけからでは十分に確認することができない爪Tの幅方向の端部まで正確に形状や高さ位置等を認識し、爪Tの幅方向の端部まで適切に印刷することのできる印刷データを生成することができる。このため、爪T全体に高品質な印刷を施すことができる。
【0085】
また、本実施形態では、印刷装置1が、印刷データに基づいて、印刷対象である爪Tに印刷を施す印刷手段としての印刷ヘッド41と、爪Tに対応する指Uを載置する載置手段としての指載置台3と、爪Tの少なくとも一部の位置を示す座標値を検出する検出手段としての3Dセンサ6等と、印刷ヘッド41によって印刷を行うための印刷データを生成する印刷データ生成手段としての制御部11と、を備え、指載置台3は、指Uの長さ方向である第1方向(本実施形態ではY方向)に沿う軸(本実施形態では載置台回転モータ33の軸34)周りに、「第1状態」から「第2状態」を取り得るように回転可能であり、3Dセンサ6等は、「第1状態」にある指載置台3に載置されている指Uの爪Tの座標値である「第1の座標値」及び「第2状態」にある指載置台3に載置されている指Uの爪Tの座標値である「第2の座標値」を検出し、印刷データ生成手段としての制御部11は、3Dセンサ6等の検出結果に基づいて印刷データを生成する。
これにより、ユーザの爪Tが巻き爪である場合や幅方向の端部の曲率が極端に大きいような場合でも、上方からでは十分に確認することができない爪Tの幅方向の端部まで正確に形状や高さ位置等を認識し、爪Tの幅方向の端部まで適切に印刷することのできる印刷データを生成することができる。そしてこのような場合でも爪Tと印刷ヘッド41との距離が印刷に適した範囲内となるようにして印刷を行うことができるため、爪Tの形状等に関わらず、着弾乱れ等のない高品質な印刷を爪T全体に施すことができる。
【0086】
また、本実施形態では、「第1状態」は載置手段である指載置台3が回転していない初期状態であり、「第2状態」は第1方向に沿う軸34周りに指載置台3が回転した回転状態であって、印刷データ生成手段としての制御部11は、爪Tの「第1の座標値」と爪Tの「第2の座標値」とを比較し、比較結果に基づいて印刷データを生成する。
これにより、指載置台3を回転させることで、上方からでは確認しづらい爪Tの幅方向の端部まで正確に形状や高さ位置等を認識し、爪Tの幅方向の端部まで適切に印刷することのできる印刷データを生成することができる。
【0087】
また、本実施形態では、「第1状態」は指載置台3が回転していない状態(初期状態)であり、「第2状態」は指載置台3を第1方向に沿う軸34周りに回転させた後の回転状態であり、印刷データ生成手段としての制御部11は、3Dセンサ6等によって検出された、爪Tの幅方向端部の「第2の座標値」を回転前の状態における座標値に換算した値が、爪Tの幅方向端部の第1の座標値よりも、予め定めた値以上低い高さ位置である場合に、「第1の座標値」に基づき「第1の印刷データTD1」を生成するとともに、爪Tの幅方向端部の領域について「第2の座標値」に基づき「第2の印刷データTD2」を生成する。
これにより、爪画像から検出できる2次元的な情報では把握しきれなかった爪T端部の立体的な形状を適切にとらえることができ、爪Tの形状に合った印刷データを用意することができる。
【0088】
また、本実施形態では、印刷データ生成手段としての制御部11によって「第2の印刷データTD2」が生成されたときは、印刷ヘッド41による「第1の印刷データTD1」に基づく爪Tに対する印刷は、指載置台3を「第1状態」として行われ、印刷ヘッド41による「第2の印刷データTD2」に基づく爪Tに対する印刷は、指載置台3を「第2状態」として行われる。
このように印刷データを分けて、印刷する領域により、指載置台3の状態を切り替えることで、爪Tのどの領域に印刷する場合にも「爪-ヘッド間距離」を、適切に印刷することができる範囲(「適正距離範囲Ra」)に保った状態で高品質な印刷を行うことができる。
【0089】
また、本実施形態では、指載置台3を第1方向に沿う軸周りに回転させる載置台回転モータ33を備えている。
これにより、手動により動作させるよりも正確に指載置台3の回転動作を行うことができる。
【0090】
また、本実施形態では、爪Tを撮影して爪画像を取得する撮影手段としてのカメラ51を備えている。
3Dセンサ6により検出できる座標値だけでは爪Tと指Uとの境界等を正しく把握することは困難であるところ、カメラ51により爪画像を取得できるため、画像解析によって適切に爪Tの輪郭形状、爪領域を把握することができる。
【0091】
また、本実施形態では、指載置台3は、指Uを固定する指固定手段として機能する指受け部31及び指押さえ部321を備えている。
これにより、指載置台3を「第1状態」から「第2状態」まで回動させ、指Uが指載置台3とともに傾いた場合でも、指Uがずれずに、その位置(傾き)を維持することができる。
【0092】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0093】
例えば、本実施形態では、指載置台3を第1方向に沿う軸周りに回転させる載置台回転モータ33を備えている場合を例示したが、指載置台3を回転動作させる構成はこれに限定されない。
例えば表示部等によってユーザに指示することにより、指載置台3を手動により回転動作させてもよい。
【0094】
また例えば、本実施形態では、指載置台3全体が回転する場合を例示したが、指載置台3に載置されている指U(指Uの爪T)を回転させることができればよく、指載置台3全体を回転させなくてもよい。
例えば指Uが載置されている指受け部31だけが回転するようになっていてもよい。
【0095】
また本実施形態では3Dセンサ6が爪T全体について位置座標(座標値)を取得する場合を例示したが、3Dセンサ6が座標値を取得するのは、爪T全体に限定されない。
例えば爪Tの側端部等、2次元的な情報からでは正確な形状等が把握しにくい箇所についてのみ3Dセンサ6による計測を行い3次元的な座標値の情報を取得するとしてもよい。
【0096】
また本実施形態では3Dセンサ6の他に撮影手段としてのカメラ51を備え、爪情報を取得する例を示したが、例えば3Dセンサ6によって取得される情報のみで爪Tと指Uの境界まで認識することができる場合には、カメラ51による撮影を行わなくてもよい。
【0097】
また本実施形態では、印刷装置1が単体で印刷動作を完結できるように構成されている場合を例示したが、印刷装置1はここに示すようなものに限定されない。
例えば外部の端末装置等(スマートフォンやタブレット端末等)と連携して印刷システムを構成してもよい。この場合、例えばネイルデザインの選択や爪情報の取得、印刷データの生成等、印刷動作以外の殆どの処理を端末装置等の外部装置側で行ってもよい。
【0098】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
印刷対象である爪に対応する指を載置可能で、前記指が載置された場合に前記指が延びる方向に沿う軸周りに、第1状態から第2状態を取り得るように回転可能な載置手段と、
前記第1状態にある前記載置手段に載置されている前記爪の位置を示す座標値である第1の座標値と、前記第2状態にある前記載置手段に載置されている前記爪の位置を示す座標値である第2の座標値と、を検出する検出手段と、
前記第1の座標値と前記第2の座標値とに基づいて、印刷データを生成する印刷データ生成手段と、を備える、
ことを特徴とする印刷装置。
<請求項2>
前記第1状態は前記載置手段が回転していない状態であり、前記第2状態は前記指が延びる方向に沿う軸周りに前記載置手段が回転した回転状態である、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
<請求項3>
前記印刷データ生成手段は、前記検出手段によって検出された、前記爪の幅方向端部の前記第2の座標値を前記載置手段が前記第1状態における座標値に換算した値が、前記爪の幅方向端部の前記第1の座標値の閾値よりも高さが低い位置である場合に、前記第1の座標値に基づき第1の印刷データを生成するとともに、前記爪の幅方向端部の領域について前記第2の座標値に基づき第2の印刷データを生成する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
<請求項4>
前記爪に印刷を施す印刷手段をさらに備え、
前記印刷データ生成手段によって前記第2の印刷データが生成されたときは、
前記印刷手段による前記第1の印刷データに基づく前記爪に対する印刷は、前記載置手段が前記第1状態である場合に行われ、
前記印刷手段による前記第2の印刷データに基づく前記爪に対する印刷は、前記載置手段が前記第2状態である場合に行われる、
ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
<請求項5>
前記載置手段を前記指が延びる方向に沿う軸周りに回転させるモータを備えている、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項6>
前記爪を撮影して爪画像を取得する撮影手段を備えている、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項7>
前記載置手段は、前記指を固定する指固定手段を備えている、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項8>
第1状態から第2状態を取り得るように回転可能な印刷対象の印刷対象面のうち、第1状態での座標値である第1の座標値と、第2状態での座標値である第2の座標値と、を検出する検出手段と、
前記第1の座標値と前記第2の座標値とに基づいて、前記印刷対象に印刷を行うための印刷データを生成する印刷データ生成手段と、を備える、
ことを特徴とする電子機器。
<請求項9>
第1状態から第2状態を取り得るように回転可能な印刷対象の印刷対象面のうち、第1状態での座標値である第1の座標値と、第2状態での座標値である第2の座標値と、を検出する検出工程と、
前記第1の座標値と前記第2の座標値とに基づいて、前記印刷対象に印刷を行うための印刷データを生成する印刷データ生成工程と、を含む、
ことを特徴とする印刷制御方法。
<請求項10>
コンピュータに、
第1状態から第2状態を取り得るように回転可能な印刷対象の印刷対象面のうち、第1状態での座標値である第1の座標値と、第2状態での座標値である第2の座標値と、を検出する検出機能と、
前記第1の座標値と前記第2の座標値とに基づいて、前記印刷対象に印刷を行うための印刷データを生成する印刷データ生成機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0099】
1 印刷装置
2 筐体
3 指配置台
31 指受け部
321 指押え部
10 制御装置
11 制御部
12 記憶部
4 印刷機構
41 印刷ヘッド
411 インク吐出面
5 撮影部
51 カメラ
6 3Dセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12