(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07H 21/02 20060101AFI20250212BHJP
C07H 21/04 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
C07H21/02
C07H21/04
(21)【出願番号】P 2021509682
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014308
(87)【国際公開番号】W WO2020196890
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2019065158
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(72)【発明者】
【氏名】市丸 泰介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大輔
(72)【発明者】
【氏名】平井 邦博
(72)【発明者】
【氏名】山下 健
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-531794(JP,A)
【文献】特表2007-531510(JP,A)
【文献】国際公開第2012/157723(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/122236(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/104836(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/070859(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/179412(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/077292(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/086397(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/203574(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/212236(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 21/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5’位水酸基が保護されておらず、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよく、もしくは固相担体に結合していてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(以下、「核酸A」と称する場合がある)と、3’位水酸基または3’位アミノ基が
ホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されており、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(以下、「核酸B」と称する場合がある)を、
(1)P-(R)
3
(2)P-(OR)
3
(3)P(R)
2(OR)
(4)PR(OR)
2
(5)PH(O)(R)
2
(6)PH(O)(OR)
2、および
(7)PH(O)R(OR)
(上記式(1)~(7)中、Rは、同じでも異なってもよく、独立して、置換されていてもよいアリール基または低級アルキル基を表し、
2つのRが互いに結合しそれらが隣接する他の原子と一緒になって環を形成してもよい;ここで上記酸化防止剤は、同一または異なる酸化防止剤のR部分が結合した2量体であってもよい。)
から選択されるリン系酸化防止剤、
(8)R-S-R 、および
(9)
【化1】
(上記式(8)、(9)中、Rは、同じでも異なってもよく、独立して、低級アルキル基または置換されていてもよいアリール基を表す;
ここで上記酸化防止剤は、同一または異なる酸化防止剤のR部分が結合した2量体であってもよい。)
から選択される硫黄系酸化防止剤、および
(10)(OR)
2P(S)-S-M-S-P(S)(OR)
2
(式中、Rは、同じでも異なってもよく、独立して、低級アルキル基または置換されていてもよいアリール基を表し、およびMは、Zn、NiまたはCuを表す;
ここで上記酸化防止剤は、同一または異なる酸化防止剤のR部分が結合した2量体であってもよい。)
で示されるリン・硫黄系酸化防止剤、
から選択される酸化防止剤の存在下に縮合させて、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル体を得る工程(工程(1))を含む、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
【請求項2】
核酸Bにおいて、3’位水酸基または3’位アミノ基が、ホスホロアミダイト法によりホスホロアミダイト誘導体へと修飾されているか、H-ホスホネート法によりH-ホスホネート誘導体へと修飾されているか、ジハロホスフィン法によりホスホロクロリダイト誘導体へと修飾されているか、またはオキサザホスホリジン法によりオキサザホスホリジン誘導体へと修飾されている、請求項
1に記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
【請求項3】
核酸Bにおいて、3’位水酸基または3’位アミノ基がホスホロアミダイト法によりホスホロアミダイト誘導体へと修飾されているか、または3’位水酸基または3’位アミノ基がH-ホスホネート法によりH-ホスホネート誘導体へと修飾されている、請求項
2に記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
【請求項4】
さらに、工程(1)で得られたホスファイト体または亜リン酸ジエステル体を、5-[(N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ]-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン(DDTT)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン-1,1-ジオキシド(Beaucage試薬)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン、フェニルアセチルジスルフィド(PADS)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、5-フェニル-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-オン(POS)、3-アミノ-1,2,4-ジチアゾール-5-チオン(ADTT、キサンタンヒドリド)、N-[(2-シアノエチル)チオ]フタルイミドおよび硫黄から選択される硫化剤と反応させる工程(工程(2))を含む、請求項1~
3のいずれかに記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
【請求項5】
酸化防止剤が、
(1)P-(R)
3
(2)P-(OR)
3
(3)P(R)
2(OR)
(4)PR(OR)
2 、および
(5)PH(O)R(OR)
(上記式(1)~(5)中、Rは、同じでも異なってもよく、独立して、置換されていてもよいアリール基または低級アルキル基を表し、
2つのRが互いに結合しそれらが隣接する他の原子と一緒になって環を形成してもよい;ここで上記酸化防止剤は、同一または異なる酸化防止剤のR部分が結合した2量体であってもよい。)
から選択されるリン系酸化防止剤、および
(6)
【化2】
(上記式(6)中、Rは、同じでも異なってもよく、独立して、低級アルキル基または置換されていてもよいアリール基を表す;
ここで上記酸化防止剤は、同一または異なる酸化防止剤のR部分が結合した2量体であってもよい。)
で示される硫黄系酸化防止剤、から選択される、請求項1~
4のいずれかに記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
【請求項6】
酸化防止剤が、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、亜リン酸トリエチル、エトキシジフェニルホスフィン、ジエトキシフェニルホスフィン、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシド(リン系酸化防止剤);および、イソブチレンスルフィド(硫黄系酸化防止剤)から選択される、請求項1~
5のいずれかに記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
【請求項7】
酸化防止剤が、リン系酸化防止剤である、請求項1~
6のいずれかに記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
【請求項8】
酸化防止剤が、P-(R)
3で表されるホスフィン類である、請求項1~
7のいずれかに記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
【請求項9】
核酸Aが、5’位水酸基が保護されておらず、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである、請求項1~
8のいずれかに記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
【請求項10】
核酸Aが、5’位水酸基が保護されておらず、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の2’位水酸基、3’位水酸基および3’位アミノ基、並びにデオキシリボース残基の3’位水酸基および3’位アミノ基から選ばれる少なくとも一つの基が、酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基(以下、「擬似固相保護基」と称する場合がある)で保護され、かつその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(以下、「核酸a」と称する場合がある)、または
5’位水酸基が保護されておらず、3’位末端のリン酸基の一つのOHが-OLn1-OH(式中、Ln1は有機基を示す。)に置き換わっており、-OLn1-OHの水酸基が酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基で保護され、かつその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(以下、「核酸α」と称する場合がある)であり、かつ、
核酸Bが、3’位水酸基または3’位アミノ基が、
ホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されており、かつ5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、かつその他の基がさらに、酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基(以下、「擬似固相保護基」と称する場合がある)および核酸合成に用いられる保護基から選ばれる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(以下、「核酸b」と称する場合がある)である、請求項1~
9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
核酸Bが、3’位水酸基が
ホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されており、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである、請求項1~
10のいずれかに記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
【請求項12】
得られたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの保護基を全て除去した後、保護されていないホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドを単離する工程をさらに含む、請求項1~
11のいずれかに記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法に関するものであり、核酸合成の分野において有用である。
【背景技術】
【0002】
アンチセンス、siRNA(small interfering RNA)、アプタマーなどの核酸医薬品は、抗体医薬品に続く次世代医薬品として注目されている。核酸医薬品は抗体医薬品と同様に高い特異性と有効性が期待される一方で、従来の低分子化合物からなる医薬品と同じく化学合成により製造することができる。新規な核酸医薬の研究・開発に当たって、核酸間の結合部位のリン原子を修飾した修飾核酸の検討が行われてきた。リン原子がS化されたホスホロチオエート化部位(ホスホロチオエート核酸間結合部位)を有するタイプの核酸医薬がその代表的なものであり、例えば、ホミビルセン(Fomivirsen)、ミポメルセン(Mipomersen)、オブリメルメルセン(Oblimersen)、アリカホルセン(Alicaforsen)などが挙げられる。
ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法として、固相合成(固相法)や液相法があり、さらに固相法と液相法の欠点を解消するため、擬似固相保護基を使用した液相法も開発されている(特許文献1~9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/157723号
【文献】国際公開第2013/122236号
【文献】国際公開第2017/104836号
【文献】国際公開第2005/070859号
【文献】国際公開第2013/179412号
【文献】国際公開第2014/077292号
【文献】国際公開第2017/086397号
【文献】国際公開第2018/203574号
【文献】国際公開第2018/212236号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチド合成にあたっては、現在ホスホロアミダイト法やH-ホスホネート法などが汎用されており、ジハロホスフィン法やオキサザホスホリジン法も知られている。ホスホロアミダイト法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法ではホスファイト体を合成し、H-ホスホネート法では亜リン酸ジエステル体を合成し、各々さらに硫化反応に付して目的物であるホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドを得ることが行われている。ところが、発明者は、検討の結果このような方法に従って合成した場合には、上記ホスファイト体または亜リン酸ジエステル体が生成する段階で、リン原子の酸化反応が併せて進行し、ホスホトリエステル体またはホスホジエステル体(以下、「PO不純物」と称する場合がある)が副生することにより、その後の硫化反応が阻害され、目的とするホスホロチオエート化オリゴヌクレオチドを効率良く合成できないという問題点が存在することを新たに見出した。この「PO不純物」は、本来ホスホロチオエート化部位であるところが酸化されてホスホトリエステル体またはホスホジエステル体になっている不純物である。本発明の課題は、この新たに見出された問題点を解決し、より高収率で目的とするホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドを製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ホスファイト体の形成のための方法(例えば、ホスホロアミダイト法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法)を用いてホスファイト体を合成する段階、または亜リン酸ジエステル体の形成のための方法(例えば、H-ホスホネート法)を用いて亜リン酸ジエステル体を合成する段階で、特定の酸化防止剤を共存させることにより、この新たな課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下の通りである。
【0006】
[1]5’位水酸基が保護されておらず、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよく、もしくは固相担体に結合していてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(以下、「核酸A」と称する場合がある)と、3’位水酸基または3’位アミノ基がホスファイト体または亜リン酸ジエステル体の形成のための方法により修飾されており、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(以下、「核酸B」と称する場合がある)を、酸化防止剤の存在下に縮合させて、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル体を得る工程(工程(1))を含む、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
[2]核酸Bにおいて、3’位水酸基または3’位アミノ基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されている、上記[1]に記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
[3]さらに、工程(1)で得られたホスファイト体または亜リン酸ジエステル体を硫化剤と反応させる工程(工程(2))を含む、上記[1]又は[2]に記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
[4](1)5’位水酸基が保護されておらず、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよく、もしくは固相担体に結合していてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(以下、「核酸A」と称する場合がある)と、3’位水酸基または3’位アミノ基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されており、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(以下、「核酸B」と称する場合がある)を、酸化防止剤の存在下に縮合させて、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル体を得る工程、および
(2)得られたホスファイト体または亜リン酸ジエステル体を硫化剤と反応させる工程、を含む、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
【0007】
[5]酸化防止剤が、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、およびリン・硫黄系酸化防止剤から選択される、上記[1]~[4]のいずれかに記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
【0008】
[6]酸化防止剤が、
(1)P-(R)3
(2)P-(OR)3
(3)P(R)2(OR)
(4)PR(OR)2
(5)PH(O)(R)2
(6)PH(O)(OR)2 、および
(7)PH(O)R(OR)
(上記式(1)~(7)中、Rは、同じでも異なってもよく、独立して、置換されていてもよいアリール基、または低級アルキル基を表し、2つのRが互いに結合しそれらが隣接する他の原子と一緒になって環を形成してもよい;
ここで上記酸化防止剤は、同一または異なる酸化防止剤のR部分が結合した2量体であってもよい。)
から選択されるリン系酸化防止剤、
(8)R-S-R 、および
(9)
【0009】
【0010】
(上記式(8)、(9)中、Rは、同じでも異なってもよく、独立して、低級アルキル基または置換されていてもよいアリール基を表す;
ここで上記酸化防止剤は、同一または異なる酸化防止剤のR部分が結合した2量体であってもよい。)
から選択される硫黄系酸化防止剤、および
(10)(OR)2P(S)-S-M-S-P(S)(OR)2
(式中、Rは、同じでも異なってもよく、独立して、低級アルキル基または置換されていてもよいアリール基を表し、およびMは、Zn、NiまたはCuを表す;
ここで上記酸化防止剤は、同一または異なる酸化防止剤のR部分が結合した2量体であってもよい。)
で示されるリン・硫黄系酸化防止剤、から選択される、上記[1]~[4]のいずれかに記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
[7]酸化防止剤が、
(1)P-(R)3
(2)P-(OR)3
(3)P(R)2(OR)
(4)PR(OR)2 、および
(5)PH(O)R(OR)
(上記式(1)~(5)中、Rは、同じでも異なってもよく、独立して、置換されていてもよいアリール基または低級アルキル基を表し、2つのRが互いに結合しそれらが隣接する他の原子と一緒になって環を形成してもよい;
ここで上記酸化防止剤は、同一または異なる酸化防止剤のR部分が結合した2量体であってもよい。)
から選択されるリン系酸化防止剤、および
(6)
【0011】
【0012】
(上記式(6)中、Rは、同じでも異なってもよく、独立して、低級アルキル基または置換されていてもよいアリール基を表す;
ここで上記酸化防止剤は、同一または異なる酸化防止剤のR部分が結合した2量体であってもよい。)
で示される硫黄系酸化防止剤、から選択される、上記[1]~[4]のいずれかに記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
[8]酸化防止剤が、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、亜リン酸トリエチル、エトキシジフェニルホスフィン、ジエトキシフェニルホスフィン、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン 10-オキシド(リン系酸化防止剤);および、イソブチレンスルフィド(硫黄系酸化防止剤)から選択される、上記[1]~[4]のいずれかに記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
[9]酸化防止剤が、リン系酸化防止剤である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
[10]酸化防止剤が、P-(R)3で表されるホスフィン類である、上記[1]~[5]のいずれかに記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
【0013】
[11]核酸Aが、5’位水酸基が保護されておらず、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである、上記[1]~[10]のいずれかに記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
【0014】
[12]核酸Aが、5’位水酸基が保護されておらず、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の2’位水酸基、3’位水酸基および3’位アミノ基、並びにデオキシリボース残基の3’位水酸基および3’位アミノ基から選ばれる少なくとも一つの基が、酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基(以下、「擬似固相保護基」と称する場合がある)で保護され、かつその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(以下、「核酸a」と称する場合がある)(好ましくは、リボース残基並びにデオキシリボース残基の3’位は水酸基である)、または
5’位水酸基が保護されておらず、3’位末端のリン酸基の一つのOHが-OLn1-OH(式中、Ln1は有機基を示す。)に置き換わっており、-OLn1-OHの水酸基が酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基で保護され、かつその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(以下、「核酸α」と称する場合がある)であり、かつ、核酸Bが、3’位水酸基または3’位アミノ基が、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル体の形成のための方法(好ましくは、ホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法)により修飾されており、かつ5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、かつその他の基がさらに、酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基(以下、「擬似固相保護基」と称する場合がある)および核酸合成に用いられる保護基から選ばれる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(以下、「核酸b」と称する場合がある)である、上記[1]~[11]のいずれかに記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
【0015】
[13]核酸Bが、3’位水酸基がホスファイト体または亜リン酸ジエステル体の形成のための方法(好ましくは、ホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法)により修飾されており、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである、上記[1]~[12]のいずれかに記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
【0016】
[14]工程(2)で使用される硫化剤が、5-[(N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ]-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン(DDTT)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン-1,1-ジオキシド(Beaucage試薬)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン、フェニルアセチルジスルフィド(PADS)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、5-フェニル-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-オン(POS)、3-アミノ-1,2,4-ジチアゾール-5-チオン(ADTT、キサンタンヒドリド)、N-[(2-シアノエチル)チオ]フタルイミドおよび硫黄から選択される、上記[3]~[13]のいずれかに記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
【0017】
[15]得られたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの保護基を全て除去した後、保護されていないホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドを単離する工程をさらに含む、上記[1]~[14]のいずれかに記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
【0018】
[16](1)3’位水酸基または3’位アミノ基が保護されておらず、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよく、もしくは固相担体に結合していてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(核酸A-1)(好ましくは、核酸A-1における3’位は水酸基である)と、5’位水酸基がホスファイト体または亜リン酸ジエステル体の形成のための方法(好ましくは、ホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法)により修飾されており、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(核酸B-1)とを、酸化防止剤の存在下に縮合させて、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル体を得る工程(工程(1-1))、
を含むホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
[17]さらに、工程(1-1)で得られたホスファイト体または亜リン酸ジエステル体を硫化剤と反応させる工程(工程(2―1))を含む、
上記[16]に記載のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法などの、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル体の形成のために当技術分野で広く用いられている方法を用いてホスファイト体または亜リン酸ジエステル体を合成する段階で、特定の酸化防止剤を共存させることによりホスホトリエステル体またはホスホジエステル体(「PO不純物」)の副生を抑制することができ、これに続く硫化反応をより効率良く行うことができる。この「PO不純物」は、本来ホスホロチオエート化部位であるところが酸化されてホスホジエステル体に変換されている不純物である。従って、本発明をオリゴヌクレオチド合成における核酸鎖伸長に際して全ての縮合工程、または必要とする縮合工程で実施することにより、目的とするホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドをより高収率で製造することができる。ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造においては、核酸伸長のサイクルを適宜繰り返すことから、塩基伸長毎の反応工程でたとえ1%以下の微量な不純物副生であっても、目的物となるオリゴヌクレオチド伸長体になると不純物が多量になってしまう。そのため、高純度のオリゴヌクレオチドを取得するには各反応単工程の不純物副生を抑制することが肝要であり、「PO不純物」の副生を抑制する本発明の意義は極めて大きい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
文中で特に断らない限り、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味をもつ。本明細書に記載されたものと同様または同等の任意の方法および材料は、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料を以下に記載する。本明細書で言及したすべての刊行物および特許は、例えば、記載された発明に関連して使用されうる刊行物に記載されている、構築物および方法論を記載および開示する目的で、参照として本明細書に組み入れられる。
【0021】
[ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法]
本発明の製造方法は、以下の工程(1)を含み、さらに工程(2)を含むホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法である。
【0022】
工程(1)
5’位水酸基が保護されておらず、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよく、もしくは固相担体に結合していてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(核酸A)と、3’位水酸基または3’位アミノ基がホスファイト体または亜リン酸ジエステル体の形成のための方法(例えば、ホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法、およびオキサザホスホリジン法から選択される方法)により修飾されており、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(核酸B)を、酸化防止剤の存在下に縮合させて、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル体を得る工程
【0023】
工程(2)
得られたホスファイト体または亜リン酸ジエステル体を硫化剤と反応させる工程
【0024】
当技術分野で公知のホスホロアミダイト法などによるヌクレオチド鎖を伸長させる工程において、ホスホロチオエート化部位を導入したい伸長ステップで本発明の上記工程(1)、さらに工程(2)を実施することにより、全ての、または必要な核酸間結合部位を、高収率でホスホロチオエート化することができる。本発明の当該オリゴヌクレオチドの製造方法と核酸合成の分野で通常使用されている核酸間結合部位がホスホトリエステル結合またはホスホジエステル結合であるオリゴヌクレオチドの製造方法(以下「通常のオリゴヌクレオチドの製造方法」と称する場合がある)とを組み合わせ、目的とするホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドに応じてその核酸伸長のサイクルを適宜繰り返すことにより、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドを伸長させて、目的とするホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドを製造することができる。このような実施態様もまた、本発明の範囲に包含される。
【0025】
以下、本発明の上記工程(1)と工程(2)について詳述する。
【0026】
上記工程(1)および工程(2)は、固相もしくは液相のいずれの反応条件下でも実施することができるが、液相条件下で実施することがより好ましい。
【0027】
工程(1)酸化防止剤の存在下での縮合反応
【0028】
工程(1)における核酸Bの3’位水酸基または3’位アミノ基のホスファイト体または亜リン酸ジエステル体の形成のための修飾は、例えば、ホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法、およびオキサザホスホリジン法などから選択される当技術分野で公知の方法により行うことができる。
これらの方法は、当業者に広く知られており、縮合反応の過程で形成されるホスファイト体または亜リン酸ジエステル体についても、当業者には容易に理解されるものである。
なお、3’位に水酸基を有する核酸Bに代えて、3’位にアミノ基を有する核酸Bを用いて、ホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法、およびオキサザホスホリジン法などの方法を適用して縮合体を得る場合、3’位とリン原子との結合が、-O-P結合に代わって-N-P結合となるが、この場合も本明細書中では-O-P結合である場合に準じて便宜上「ホスファイト体」または「亜リン酸ジエステル体」と称することとする。また対応する「PO不純物」についても、同様に「ホスホトリエステル体」または「ホスホジエステル体」と称することとする。
ここで、核酸Bは、3’位水酸基がホスファイト体または亜リン酸ジエステル体の形成のための方法により修飾されており、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである場合が好ましい。
【0029】
ホスホロアミダイト法による修飾については、例えば、S. L. Beaucage, Protocols for Oligonucleotides and Analogs (Chapter 3) 1993年,33-62頁;M. H. Caruthers et al., Method in Enzymology 1987, 154, 287-313; S. L. Beaucage and M. H. Caruthers, Tetrahedron Letters 1981, 22, 1859-1862;日本化学会編 第5版 実験化学講座16 有機化合物IV 2010年 377-381頁などを参照して実施することができる。
【0030】
H-ホスホネート法を用いる修飾については、例えば、B. F. Froehler, Protocols for Oligonucleotides and Analogs (Chapter 4) 1993年,63-80頁;日本化学会編 第5版 実験化学講座16 有機化合物IV 2010年 381-384頁などを参照して実施することができる。
【0031】
ジハロホスフィン誘導体(ジハロホスフィン法)を用いる修飾については、例えば、日本化学会編 第4版 実験化学講座22 金属錯体・遷移金属クラスター 1999年 426-431頁などを参照して実施することができる。
【0032】
オキサザホスホリジン法を用いる修飾については、例えば、N.Oka et al.,J.Am.Chem.Soc.,2008年,130,16031-16037頁; N.Oka et al.,Organic Letters.,2009年,Vol.11,No.4,967-970頁;国際公開第2011/08682号などを参照して実施することができる。
【0033】
このように3’位水酸基または3’位アミノ基がホスファイト体または亜リン酸ジエステル体の形成のための方法(例えば、ホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法、およびオキサザホスホリジン法から選択される方法)により修飾された核酸Bは、核酸Aと酸化防止剤の存在下に縮合させて、対応するホスファイト体または亜リン酸ジエステル体へと導かれる。
なお、上記のホスファイト体または亜リン酸ジエステル体の形成のための方法には多くの改良法も当技術分野では知られており(例えば、国際公開第2014/010250号参照)、これらも本発明の実施において用いることができる。また、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル体の形成のための方法により修飾された核酸Bが市販されている場合には、当該市販品を本発明の実施において用いることもできる。
【0034】
使用される酸化防止剤とてしては、生成したホスファイト体または亜リン酸ジエステル体のリン原子の酸化によるホスホトリエステル体またはホスホジエステル体(「PO不純物」)の副生を防止するに十分な酸化防止効果を有するものを選択し、かつ、縮合工程で酸化防止剤が核酸B(ホスホロアミダイト体やH-ホスホネート体等)と反応し、縮合工程自体で悪影響を及ぼさないものを選択することが好ましい。更に、液相条件下での実施で、縮合反応に続く工程(2)を同一反応器内で行うことを企図する場合には、後続する反応に悪影響を及ぼさず、不純物の副生を誘発しないものを選択することが好ましい。このような観点から好ましい酸化防止剤としては、例えば、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、およびリン・硫黄系酸化防止剤が挙げられる。具体例としては、以下の式で表される酸化防止剤が挙げられる。
【0035】
リン系酸化防止剤としては、下記が挙げられる。
(1)P-(R)3 (「ホスフィン類」と称する場合がある)
(2)P-(OR)3 (「亜リン酸エステル類(ホスファイト類)」と称する場合がある)
(3)P(R)2(OR) (「亜ホスフィン酸エステル」と称する場合がある)
(4)PR(OR)2 (「亜ホスホン酸エステル類」と称する場合がある)
(5)PH(O)(R)2 (「ホスフィンオキシド類」と称する場合がある)
(6)PH(O)(OR)2 (「ホスホン酸エステル類」と称する場合がある)
(7)PH(O)R(OR) (「ホスフィン酸エステル類」と称する場合がある)
(上記式(1)~(7)中、Rは、同じでも異なってもよく、独立して、置換されていてもよいアリール基または低級アルキル基を表し、2つのRが互いに結合しそれらが隣接する他の原子と一緒になって環を形成してもよい;
ここで上記酸化防止剤は、同一または異なる酸化防止剤のR部分が結合した2量体であってもよい。)
上記の2量体としては、例えば以下の構造式で示されるものが挙げられる。
【0036】
【0037】
本明細書中、「アリール基」としては、「C6-14アリール基」が挙げられ、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリルが挙げられる。
当該「アリール基」は、低級アルキル基、低級アルコキシ基および低級シクロアルキル基から選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい(例えば、トルオイル、メトキシフェニル)。
本明細書中、「低級アルキル」としては、「C1-6アルキル基」が挙げられ、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチルが挙げられる。
本明細書中、「低級アルコキシ基」としては、「C1-6アルコキシ基」が挙げられ、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシが挙げられる。
本明細書中、「低級シクロアルキル基」としては、「C3-10シクロアルキル基」が挙げられ、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、アダマンチルが挙げられる。
以下の他の酸化防止剤についても、同様である。
【0038】
硫黄系酸化防止剤としては、下記が挙げられる。
(8)R-S-R
(9)
【0039】
【0040】
(上記式(8)、(9)中、Rは、同じでも異なってもよく、独立して、低級アルキル基または置換されていてもよいアリール基を表す;
ここで上記酸化防止剤は、同一または異なる酸化防止剤のR部分が結合した2量体であってもよい。)
【0041】
リン・硫黄系酸化防止剤としては、下記が挙げられる。
(10)(OR)2P(S)-S-M-S-P(S)(OR)2
(式中、Rは、同じでも異なってもよく、独立して、低級アルキル基または置換されていてもよいアリール基を表し、およびMは、Zn、NiまたはCuを表す;
ここで上記酸化防止剤は、同一または異なる酸化防止剤のR部分が結合した2量体であってもよい。)
【0042】
上記の酸化防止剤の中で、より好ましいものとしては、式:P-(R)3で表されるホスフィン類、式:P-(OR)3で表される亜リン酸エステル(又はホスファイト)類、式:P(R)2(OR)で表される亜ホスフィン酸エステル類、式:PR(OR)2で表される亜ホスホン酸エステル類、式:PH(O)R(OR)で表されるホスフィン酸エステル類、
【0043】
【0044】
で表される硫黄系酸化防止剤が挙げられる。
【0045】
式:P-(R)3で表されるホスフィン類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィンが好ましい。なかでもトリフェニルホスフィンがより好ましい。式:P-(OR)3で表される亜リン酸エステル(又はホスファイト)類としては、例えば、亜リン酸トリエチル(P(OEt)3)が好ましい。
式:P(R)2(OR)で表される亜ホスフィン酸エステル類としては、例えば、エトキシジフェニルホスフィンが好ましい。式:PR(OR)2で表される亜ホスホン酸エステル類としては、例えば、ジエトキシフェニルホスフィンが好ましい。
【0046】
式:PH(O)R(OR)で表されるホスフィン酸エステル類としては、例えば、
【0047】
【0048】
で表される9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン 10-オキシドが好ましい。
【0049】
【0050】
で表される硫黄系酸化防止剤としては、
【0051】
【0052】
で表されるイソブチレンスルフィドが好ましい。
【0053】
酸化防止剤の使用量は、後続の反応への影響を考慮すると少ない程好ましいが、縮合反応に使用される核酸A1モルに対して通常0.1~2モルが好ましく、より好ましくは、0.2~1モルである。
【0054】
本工程が液相条件下で行われる場合に使用される溶媒は、核酸A、核酸B、酸化防止剤などが溶解し、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であれば特に限定されないが、例えば、塩化メチレン、アセトニトリル、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル、CPME、トルエン、シクロヘキサン、それらの混合溶媒などが挙げられる。中でも、クロロホルム、テトラヒドロフラン、トルエン、塩化メチレン、アセトニトリル、それらの混合溶媒が好ましい。
【0055】
本工程で使用する核酸Aおよび核酸Bの溶液中の濃度は、それらが溶媒に溶解していれば特に限定されない。
核酸Bの使用量は、使用される核酸A1モルに対して、1~3モルが好ましく、より好ましくは1.2~2.5モルである。
【0056】
本工程の縮合反応を行うに当たっては、活性化剤を添加して実施することができる。例えば、ホスホロアミダイト法の活性化剤としては、当技術分野で汎用されるテトラゾール誘導体(例えば、5-エチルチオ-1H-テトラゾール(ETT)、5-ベンジルチオ-1H-テトラゾール、など)、イミダゾール誘導体(例えば、4,5-ジシアノイミダゾール、など)などが挙げられる。好ましくは、テトラゾール誘導体であり、より好ましくは、5-エチルチオ-1H-テトラゾールである。H-ホスホネート法の活性化剤としては、縮合剤のみ、縮合剤および縮合添加剤との組み合わせ、またはピバロイルクロライド等が挙げられる。縮合剤のみとしては、HATU(O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート)、HCTU(O-(1H-6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート)、Pybop(ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム)、BopCl(ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロリド)、TBTU(O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート)、HBTU(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート)等が挙げられる。縮合剤および縮合添加剤との組み合わせとしては、DIC(ジイソプロピルカルボジイミド)、EDC・HCl(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、WSC・HCl)、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)等の縮合剤および、HOAt(1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール)、HOCt(1-ヒドロキシ-1H-1,2,3-トリアゾール-5-カルボン酸エチルエステル)、HOBt(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール)、HOOBt(3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン)、DMAP(N,N-ジメチル-4-アミノピリジン)等の縮合添加剤との組み合わせが挙げられる。
【0057】
本工程の縮合反応の反応温度は、反応が進行しさえすれば特に限定されないが、-10℃~60℃が好ましく、5℃~35℃がより好ましい。反応時間は、使用するオリゴヌクレオチドの種類、酸化防止剤の種類および溶媒の種類、反応温度等により異なるが、例えば5分~24時間である。
【0058】
本工程は、例えば、核酸Aを溶解した溶液に、核酸Bと酸化防止剤を添加した後、活性化剤を添加することにより行うことができるが、これは一実施態様であり、本発明はこの態様に限定されるものではない。
【0059】
本発明では、工程(2)の際の副生成物の生成を抑制するために、工程(2)の前にホスホロアミダイト法などにより活性化された核酸Bをクエンチする工程をさらに含むことができる。
【0060】
クエンチ剤としては、当技術分野で公知のものを、本工程におけるクエンチ剤として使用することができる。クエンチ剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。クエンチ剤としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、2-プロパノール、t-ブタノール、2,2,2,-トリフルオロエタノール(TFE)、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、2,3-O-イソプロピリデン-D-リボフラノース、3’-O-トリイソプロピルシリル-チミジン等のハロゲン化されていてもよい1価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のハロゲン化されていてもよい多価アルコール、など)、フェノール類(例えば、4-ニトロフェノールやペンタフルオロフェノール、など)およびアミン類(例えば、モルホリン、など)が挙げられる。
【0061】
クエンチ剤は、好ましくは、アルコール類およびアミン類から選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくはメタノール、2-プロパノール、t-ブタノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、およびモルホリンから選ばれる少なくとも一つである。なかでも、2,2,2-トリフルオロエタノールが好ましい。
【0062】
本工程におけるクエンチ剤の使用量は、工程(1)における核酸Bの使用量1モルに対して、好ましくは1~20モル、より好ましくは1~15モル、さらに好ましくは1~10モルである。
【0063】
クエンチ剤の添加後の反応液の温度は、核酸Bがクエンチできさえすれば特に限定されないが、5℃~40℃が好ましく、15℃~30℃がより好ましい。
【0064】
工程(2)硫化剤による硫化反応
【0065】
本工程に使用する硫化剤としては、ホスファイト結合または亜リン酸ジエステル結合を、ホスホロチオエート結合に変換しうる能力がありさえすれば、特に限定されないが、5-[(N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ]-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン(DDTT)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン-1,1-ジオキシド(Beaucage試薬)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン、フェニルアセチルジスルフィド(PADS)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、5-フェニル-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-オン(POS)、3-アミノ-1,2,4-ジチアゾール-5-チオン(ADTT、キサンタンヒドリド)、硫黄、シアノエチルメチルチオスルホネート、N-[(2-シアノエチル)チオ]コハク酸イミド、N-[(2-シアノエチル)チオ]モルホリン-3,5-ジオン、N-[(2-シアノエチル)チオ]フタルイミドが好ましい。
【0066】
良好な反応が進行しうるという観点で、5-[(N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ]-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン(DDTT)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン-1,1-ジオキシド(Beaucage試薬)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン、フェニルアセチルジスルフィド(PADS)、5-フェニル-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-オン(POS)、シアノエチルメチルチオスルホネート、N-[(2-シアノエチル)チオ]フタルイミドがより好ましく、5-[(N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ]-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン(DDTT)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン-1,1-ジオキシド(Beaucage試薬)、5-フェニル-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-オン(POS)シアノエチルメチルチオスルホネート、N-[(2-シアノエチル)チオ]フタルイミドがさらに好ましく、5-[(N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ]-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン(DDTT)、5-フェニル-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-オン(POS)、シアノエチルメチルチオスルホネート、N-[(2-シアノエチル)チオ]フタルイミドが特に好ましい。かかる硫化剤は、0.05~2Mの濃度になるように適当な溶媒で希釈して使用することができる。かかる希釈溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されないが、例えば、ジクロロメタン、アセトニトリル、ピリジンまたはこれら任意の混合溶媒が挙げられる。
【0067】
硫化剤の使用量は、工程(1)における核酸Aの使用量1モルに対して、例えば1~50モル、好ましくは1~5モルである。
【0068】
反応温度は、反応が進行しさえすれば特に限定されないが、0℃~60℃が好ましく、10℃~40℃がより好ましい。反応時間は、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル体の種類、使用する硫化剤の種類、反応温度等によって異なるが、例えば1分~3時間である。
【0069】
工程(2)の硫化剤による硫化反応は、工程(1)の酸化防止剤の存在下での縮合反応ごとにその都度行ってもよく、あるいは何回かの工程(1)の酸化防止剤の存在下での縮合反応によりヌクレオシド、ヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドが伸長した後にまとめて行ってもよい。当業者であれば、用いるホスファイト体または亜リン酸ジエステル体の形成のための方法等の反応条件に応じて、適宜選択して本発明を実施することができる。
【0070】
以上の工程(1)および/または工程(2)は、核酸Bの5’位の水酸基の保護基の有無にかかわらず実施することが可能であり、例えば、工程(1)の後に後述の分離工程を実施することもでき、あるいは、工程(1)に続けて工程(2)、さらに後述の分離工程を実施することも可能である。このように核酸の伸長工程において、核酸Bの5’位の水酸基が保護されている場合においては保護基の脱保護は任意の工程であり、適宜合成計画に従って行うことができる。
【0071】
以上、本発明の工程(1)と工程(2)について詳述した。本発明を実施することにより従来法の欠点が改善され、より効率良く目的とするホスホロチオエート化部位をオリゴヌクレオチドの核酸間結合に導入することができる。本発明は、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法として優れたものである。
【0072】
本発明を実施するに当たっては、当技術分野でオリゴヌクレオチドの製造過程で必要により実施される以下の諸工程も併せて実施することができる。
なお、各工程は、工程ごとに生成物を単離してから次の工程を実施することも可能であり、あるいは、各工程を適宜連続して実施することも可能である。
【0073】
[脱保護工程]
本工程は、工程(2)で得られたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの5’位水酸基の保護基を酸によって除去し、5’位水酸基が保護されていないホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドを得る工程となる。本工程は、当技術分野で通常行われる方法により行うことができる(例えば、国際公開第2012/157723号、国際公開第2013/122236号、国際公開第2017/104836号参照)。
【0074】
[中和工程]
上記脱保護工程の後に、使用した酸を中和するため、反応液に塩基を添加してもよい。但し、本発明の製造方法では、必要に応じて、後述の[固液分離または抽出]および洗浄を行うことによって、脱保護工程で使用した酸を反応系から除去することが可能である。そのため、当該中和工程は必須ではない。本工程は、当技術分野で通常行われる方法により行うことができる(例えば、国際公開第2012/157723号、国際公開第2013/122236号、国際公開第2017/104836号参照)。
【0075】
[固液分離または抽出工程]
本工程は、上記で得られた5’位水酸基が保護されていないホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドのいずれかの基が酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基(擬似固相保護基)で保護されている場合に、当該オリゴヌクレオチドを含む反応液に極性溶媒を添加し、当該オリゴヌクレオチドを沈殿させて精製するか(固液分離)、または反応液に極性溶媒を添加し、極性溶媒-非極性溶媒間で分層させ、非極性溶媒層に当該オリゴヌクレオチドを移行させて精製する(抽出)工程である。本工程は、例えば、国際公開第2012/157723号、国際公開第2013/122236号、国際公開第2017/104836号に詳述された方法により行うことができる。
【0076】
工程(2)で得られたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドが最終的に目的とする核酸配列を有するものである場合には、続けて「脱保護工程」および「単離工程」に付すことができる。すなわち、工程(2)で得られたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの保護基を全て除去した後、保護されていないホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドを単離する工程をさらに含むことができる。本工程は、例えば、国際公開第2012/157723号、国際公開第2013/122236号、国際公開第2017/104836号に詳述された方法により行うことができる。
【0077】
上記各工程における反応の進行の確認は、いずれも一般的な液相有機合成反応と同様の方法を適用できる。即ち、薄層シリカゲルクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等を用いて反応を追跡することができる。
【0078】
以上、本発明の工程(1)および工程(2)を詳述し、核酸伸長の過程で目的とする部位に効率良くホスホロチオエート化部位を導入できる方法について説明した。本発明の特徴は、ホスホロチオエート化部位の導入に当たって、特定の酸化防止剤の存在下に、適宜保護された核酸Aと核酸Bとの間で縮合反応を行う点にあり、この特徴を活用できる限り、本発明の製造方法は、核酸の構造などを問わず、適宜保護されたヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(ホスホロチオエート化部位を有していてもよい)に広く適用することができる。本発明で製造されるオリゴヌクレオチドは、全てのリン原子がS化されたホスホロチオエート化部位となるオリゴヌクレオチド(All PS体)のみならず、特定の一部リン原子のみS化されたホスホロチオエート化部位を有し、残りのリン原子はS化されていないホスフェートであるオリゴヌクレオチド(Mixed Backbone Oligonucleotide(一般に、「MBO」と称する場合がある))も含む。
【0079】
以下、本発明の製造方法が適用される、核酸Aおよび核酸Bについて詳述する。
【0080】
本発明の製造方法が適用される一つの態様では、
核酸Aが、5’位水酸基が保護されておらず、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよく、もしくは固相担体に結合していてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドであり、
核酸Bが、3’位水酸基または3’位アミノ基がホスファイト体または亜リン酸ジエステル体の形成のための方法(例えば、ホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法、およびオキサザホスホリジン法から選択される方法)により修飾されており、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである。
【0081】
ここにおいてより好ましい態様では、核酸Bが、3’位水酸基がホスファイト体または亜リン酸ジエステル体の形成のための方法により修飾されており、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである。
【0082】
本明細書において、オリゴヌクレオチドの構成単位となる「ヌクレオシド」とは、核酸塩基が糖(例えば、2-デオキシリボース、リボース、2位炭素原子および4位炭素原子が2価の有機基により結合された2-デオキシリボースまたはリボースなど)の1位にN-グリコシド化により結合された化合物を意味する。
本明細書における「糖」は、水酸基がアミノ基に置き換わったアミノ糖、および2位水酸基がハロゲン原子に置き換わったリボースや分子内で架橋する構造を有するリボース(LNA;BNA)も包含する。
【0083】
2位炭素原子および4位炭素原子が2価の有機基により結合された2-デオキシリボースまたはリボースとしては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
下記式中、Rは水素原子、置換または無置換の炭化水素基、置換または無置換の水酸基、置換または無置換のアミノ基のいずれかを示し、R’は、水素原子、水酸基のいずれかを示す。
【0084】
【0085】
アミノ糖としては、例えば、以下に示すような3位水酸基がアミノ基に置き換わった2-デオキシリボース、3位水酸基がアミノ基に置き換わったリボース、および3位水酸基がアミノ基に、2位水酸基がハロゲンに置き換わったリボースが挙げられる(下記式中、Xsはハロゲン原子を示す。)。
【0086】
【0087】
本明細書中、「リン酸基」は、-O-P(O)(OH)2だけでなく、酸素原子が硫黄原子またはNHに置き換わった基(例えば、-O-P(S)(OH)2、-NH-P(O)(OH)2、-NH-P(S)(OH)2)も包含する。また、リン酸基中の水酸基(-OH)が-ORp(式中、Rpは、リン酸基の保護基などの有機基を示す)に置き換わった基(例えば、保護されたリン酸基)も、「リン酸基」に包含される。
【0088】
本明細書中、「ヌクレオチド」とは、ヌクレオシドにリン酸基が結合した化合物を意味する。3’位水酸基または5’位水酸基がリン酸基に置き換わったヌクレオチドとしては、例えば、下記式に示す化合物が挙げられる(下記式中、Rm1およびRm2は、それぞれ独立して、水素原子または有機基(但し、ヌクレオシド残基を除く)を示し、Xmは、水素原子、水酸基またはハロゲン原子を示し、R1およびR2は、水素原子またはアルキル基を示し、R1およびR2は互いに結合してそれらが隣接する他の原子と一緒になって5または6員環を形成してもよく、R3およびR4は、水素原子またはフェニル基を示す)。
【0089】
【0090】
【0091】
3’位水酸基または5’位水酸基がリン酸基に置き換わったヌクレオチドとしては、例えば、下記式(I’)、(II’)および(III’)に示すものが別の好ましいものとして挙げられる。
【0092】
【0093】
[上記式(I’)、(II’)および(III’)中において、
*は3’位水酸基または3’位アミノ基との結合位置を示し;
L7は、-O-または-S-を示し;
L8は、-L-O-、-L-S-、-L-C(R1)(R2)-O-、-L-C(R1)(R2)-S-、-Ls-O-または-Ls-S-を示し;
環Aは、置換されていてもよい、酸素、窒素、硫黄、リンおよびケイ素から独立して選ばれる0~10個のヘテロ原子を有する、3~20員の、単環式、二環式または多環式の環を示し;
環A’は、置換されていてもよい、酸素、窒素、硫黄、リンおよびケイ素から独立して選ばれる1~10個のヘテロ原子を有する、3~20員の、単環式、二環式または多環式の環であって、-N(R6)-部分を含む環を示し;
Lは、共有結合、または置換されていてもよいC1-6アルキレンを示し、ここで、1以上のメチレン単位は、独立して、-L’-で置き換えられてもよく;
各L’は、独立して、共有結合、置換されていてもよい二価のC1-3アルキレン、-C(R3)(R4)-、-C(R3)(R4)-C(R3)(R4)-、-Cy-または-C(R3)[C(R4)3]-を示し;
R1、R2、R3、R4およびR5は、独立して、水素、-Ls-R、ハロゲン、-CN、-NO2、-Ls-Si(R)3、-OR、-SRまたは-N(R)2を示し;
各Lsは、独立して、共有結合であるか、またはC1-30脂肪族基、および酸素、窒素、硫黄、リンおよびケイ素から独立して選ばれる1~10個のヘテロ原子を有するC1-30ヘテロ脂肪族基から選ばれる、置換されていてもよい二価の直鎖または分枝鎖の基を示し、ここで、1以上のメチレン単位は、独立して、C1-6アルキレン、C1-6アルケニレン、-C≡C-、酸素、窒素、硫黄、リンおよびケイ素から独立して選ばれる1~5個のヘテロ原子を有する二価のC1-C6ヘテロ脂肪族基、-C(R’)2-、-Cy-、-O-、-S-、-S-S-、-N(R’)-、-C(O)-、-C(S)-、-C(NR’)-、-C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)O-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2N(R’)-、-C(O)S-、-C(O)O-、-P(O)(OR’)-、-P(O)(SR’)-、-P(O)(R’)-、-P(O)(NR’)-、-P(S)(OR’)-、-P(S)(SR’)-、-P(S)(R’)-、-P(S)(NR’)-、-P(R’)-、-P(OR’)-、-P(SR’)-、-P(NR’)-、-P(OR’)[B(R’)3]-、-OP(O)(OR’)O-、-OP(O)(SR’)O-、-OP(O)(R’)O-、-OP(O)(NR’)O-、-OP(OR’)O-、-OP(SR’)O-、-OP(NR’)O-、-OP(R’)O-および-OP(OR’)[B(R’)3]O-から選ばれる、置換されていてもよい基で置き換えられてもよく、そして1以上の炭素原子は、独立して、CyLで置き換えられてもよく;
各-Cy-は、独立して、C3-20脂環式環、C6-20アリール環、酸素、窒素、硫黄、リンおよびケイ素から独立して選ばれる1~10個のヘテロ原子を有する5~20員のヘテロアリール環、および酸素、窒素、硫黄、リンおよびケイ素から独立して選ばれる1~10個のヘテロ原子を有する3~20員のヘテロシクリル環から選ばれる、置換されていてもよい二価の基を示し;
各CyLは、独立して、C3-20脂環式環、C6-20アリール環、酸素、窒素、硫黄、リンおよびケイ素から独立して選ばれる1~10個のヘテロ原子を有する5~20員のヘテロアリール環、および酸素、窒素、硫黄、リンおよびケイ素から独立して選ばれる1~10個のヘテロ原子を有する3~20員のヘテロシクリル環から選ばれる、置換されていてもよい四価の基を示し;
各R’は、独立して、-R、-C(O)R、-CO2Rまたは-SO2Rを示し;
tは、0~20を示し;
R6は、R’を示し;
R7は、-OHまたは-SHを示し;
R8は、-L-R7、-L-C(R1)(R2)-R7または-Ls-R7を示し;
R1、R2、R3およびR4の少なくとも1つは、水素ではなく;
各Rは、独立して、水素、またはC1-30脂肪族基、酸素、窒素、硫黄、リンおよびケイ素から独立して選ばれる1~10個のヘテロ原子を有するC1-30ヘテロ脂肪族基、C6-30アリール基、C6-30アリール脂肪族基、酸素、窒素、硫黄、リンおよびケイ素から独立して選ばれる1~10個のヘテロ原子を有するC6-30アリールヘテロ脂肪族基、酸素、窒素、硫黄、リンおよびケイ素から独立して選ばれる1~10個のヘテロ原子を有する5~30員のヘテロアリール基、および酸素、窒素、硫黄、リンおよびケイ素から独立して選ばれる1~10個のヘテロ原子を有する3~30員のヘテロシクリル基から選ばれる、置換されていてもよい基を示すか、あるいは2つのR基は、独立して、一緒になって共有結合を形成してもよく;あるいは
同一原子上の2個以上のRは、独立して、当該原子と一緒になって、当該原子に加えて、酸素、窒素、硫黄、リンおよびケイ素から独立して選ばれる0~10個のヘテロ原子を有する、置換されていてもよい、3~30員の、単環式、二環式または多環式の環を形成してもよく;あるいは
2個以上の原子上の2個以上のR基は、独立して、介在している原子と一緒になって、介在している原子に加えて、酸素、窒素、硫黄、リンおよびケイ素から独立して選ばれる0~10個のヘテロ原子を有する、置換されていてもよい、3~30員の、単環式、二環式または多環式の環を形成してもよい。
但し、R1とR2は同一ではなく、R3とR4は同一ではない。]
【0094】
本明細書中、「オリゴヌクレオチド」とは、ヌクレオシドにヌクレオチドが1個以上連結した化合物を意味する。なお、特に断らない場合、「オリゴヌクレオチド」には、リン酸基の酸素原子が硫黄原子に置き換わったホスホロチオエート化されたオリゴヌクレオチド、リン酸基の-O-が-NH-に置き換わったオリゴヌクレオチド、リン酸基中の水酸基(-OH)が-ORp(式中、Rpは有機基を示す)に置き換わったオリゴヌクレオチドも包含される。本発明におけるオリゴヌクレオチドのヌクレオシドの数は特に限定されないが、好ましくは3~50、より好ましくは5~30である。
【0095】
本明細書中、「3’位アミノ基」とは、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの3’位の炭素原子に結合したアミノ基を意味する。
本明細書中、「5’位アミノ基」とは、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの5’位の炭素原子に結合したアミノ基を意味する。
【0096】
本明細書中、「3’位リン酸基」とは、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの3’位の炭素原子に結合したリン酸基を意味する。
本明細書中、「5’位リン酸基」とは、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの5’位の炭素原子に結合したリン酸基を意味する。
【0097】
本明細書中、「核酸塩基」とは、核酸の合成に使用されるものであれば特に制限されず、例えば、シトシル基、ウラシル基、チミニル基等のピリミジン塩基、アデニル基、グアニル基等のプリン塩基を挙げることができる。核酸塩基には、上記した基の他に、核酸塩基が任意の置換基(例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシアルキル基、水酸基、アミノ基、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシ、シアノ、ニトロ等)により任意の位置に1~3個置換されている修飾核酸塩基(例えば、8-ブロモアデニル基、8-ブロモグアニル基、5-ブロモシトシル基、5-ヨードシトシル基、5-ブロモウラシル基、5-ヨードウラシル基、5-フルオロウラシル基、5-メチルシトシル基、8-オキソグアニル基、ヒポキサンチニル基等)も包含される。
また、「保護されていてもよい核酸塩基」とは、例えば、アミノ基を有する核酸塩基であるアデニル基、グアニル基、またはシトシル基において、アミノ基が後述の「アミノ基の保護基」により保護されていてもよいことを意味し、核酸塩基のアミノ基が、ヌクレオチドの5’位の脱保護条件に耐え得る保護基により保護されている核酸塩基が好ましい。
【0098】
本明細書において「核酸合成に用いられる保護基」は、核酸合成の分野で通常使用されるものであれば特に制限されないが、例えば以下のものが挙げられる。
【0099】
1)水酸基の保護基(核酸塩基部の水酸基の保護基は、後述の核酸塩基部の保護基に記載する)
特に断らない限り、「水酸基の保護基」としては、特に限定されず、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY&SONS)出版(1999年)等に記載されている任意の保護基を挙げることができる。具体的には、メチル基、ベンジル基、p-メトキシベンジル基、tert-ブチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、2-テトラヒドロピラニル基、エトキシエチル基、シアノエチル基、シアノエトキシメチル基、フェニルカルバモイル基、1,1-ジオキソチオモルホリン-4-チオカルバモイル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、[(トリイソプロピルシリル)オキシ]メチル(Tom)基、1-(4-クロロフェニル)-4-エトキシピペリジン-4-イル(Cpep)基等を挙げることができる。保護されていてもよい水酸基の保護基は、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、またはtert-ブチルジメチルシリル基であることが好ましく、経済性および入手の容易さの観点から、tert-ブチルジメチルシリル基であることが特に好ましい。
【0100】
2)アミノ基の保護基
特に断らない限り、「アミノ基の保護基」としては、特に限定されず、例えば、グリーンズ・プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Greene’s PROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS)、第4版、ウィリー・インターサイエンス(Wiley-Interscience)出版(2006年)等に記載されている保護基を挙げることができる。該保護基の具体例としては、ピバロイル基、ピバロイロキシメチル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、フェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、4-tert-ブチルフェノキシアセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、(2-ヘキシル)デカノイル基、ジメチルホルムアミジニル基、1-(ジメチルアミノ)エチリデン基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基を挙げることができる。これらの中でも、アセチル基、フェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、(2-ヘキシル)デカノイル基、ジメチルホルムアミジニル基、および1-(ジメチルアミノ)エチリデン基が好ましい。
【0101】
3)核酸塩基の保護基
アミノ基を有する核酸塩基であるアデニル基、グアニル基、またはシトシル基において、アミノ基は前述の「アミノ基の保護基」により保護されていてもよい。核酸塩基のアミノ基が、ヌクレオチドの5’位の脱保護条件に耐え得る保護基により保護されている核酸塩基が好ましい。
核酸塩基のカルボニル基も保護されていてもよい。例えば、フェノール、2,5-ジクロロフェノール、3-クロロフェノール、3,5-ジクロロフェノール、2-ホルミルフェノール、2-ナフトール、4-メトキシフェノール、4-クロロフェノール、2-ニトロフェノール、4-ニトロフェノール、4-アセチルアミノフェノール、ペンタフルオロフェノール、4-ピバロイロキシベンジルアルコール、4-ニトロフェネチルアルコール、2-(メチルスルホニル)エタノール、2-(フェニルスルホニル)エタノール、2-シアノエタノール、2-(トリメチルシリル)エタノール、ジメチルカルバミン酸クロライド、ジエチルカルバミン酸クロライド、エチルフェニルカルバミン酸クロライド、1-ピロリジンカルボン酸クロライド、4-モルホリンカルボン酸クロライド、ジフェニルカルバミン酸クロライド等を反応させて、核酸塩基のカルボニル基を保護することができる。ここで、カルボニル基の保護基については、特に導入しなくてもよい場合がある。
【0102】
本発明の製造方法が適用されるより好ましい態様は、
核酸Aが、5’位水酸基が保護されておらず、核酸塩基のアミノ基およびイミノ基、リボース残基の2’位水酸基、3’位水酸基および3’位アミノ基、並びにデオキシリボース残基の3’位水酸基および3’位アミノ基から選ばれる少なくとも一つの基が、酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基(擬似固相保護基)で保護され、かつその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(以下、「核酸a」と称する場合がある)、または
5’位水酸基が保護されておらず、3’位末端のリン酸基の一つのOHが-OLn1-OH(式中、Ln1は有機基を示す。)に置き換わっており、-OLn1-OHの水酸基が酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基(擬似固相保護基)で保護され、かつその他の基がさらに核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(以下、「核酸α」と称する場合がある)であり、
核酸Bが、3’位水酸基または3’位アミノ基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法、およびオキサザホスホリジン法から選択される方法により修飾されており、かつ5’位水酸基が酸性条件下で除去可能な一時保護基で保護され、かつその他の基がさらに、酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基(擬似固相保護基)および核酸合成に用いられる保護基から選ばれる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(以下、「核酸b」と称する場合がある)である。
【0103】
核酸a、核酸αおよび核酸bにおける「核酸合成に用いられる保護基」としては、核酸Aおよび核酸Bについて上記で説明されたものと同じ保護基を挙げることができる。
【0104】
核酸a、核酸αおよび核酸bにおける「酸性条件下では除去されず、塩基性条件下で除去可能な保護基(擬似固相保護基)」としては、それぞれ独立して、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基を有するか、または分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を有する保護基が挙げられる。擬似固相保護基は、核酸a、核酸α、核酸b、および工程(1)および工程(2)により得られたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドに疎水性を付与して、非極性溶媒に対する溶解性を向上させる。また極性溶媒に対する溶解性を低下させることもできる。このような擬似固相保護基で保護されたヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、非極性溶媒の液相中でも縮合反応を行うことができ(工程(1))、工程(2)で得られた反応液に極性溶媒を添加することによって、擬似固相保護基で保護されたホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドが沈殿し、その固液分離を行うことができる。または工程(2)で得られた反応液に極性溶媒を添加して、極性溶媒-非極性溶媒間で分層させ、非極性溶媒にホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドを移行させることにより、その抽出を行うことができる。このような擬似固相保護基としては、例えば、国際公開第2012/157723号、国際公開第2013/122236号、国際公開第2017/104836号、国際公開第2013/179412号、国際公開第2014/077292号、国際公開第2017/086397号に記載されているものを使用することができる。
【0105】
「核酸合成に用いられる保護基」は、核酸合成の分野で通常使用されるものであれば特に制限されず、上記の低分子量の保護基も含まれるが、工程(2)の後で固液分離による精製を行う場合、擬似固相保護基は、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基を有する保護基であることが好ましく、工程(2)の後で抽出による精製を行う場合、擬似固相保護基は、分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を有する保護基であることが好ましい。
【0106】
まず、固液分離のために好適な擬似固相保護基について説明する。固液分離のために好適な擬似固相保護基としては、例えば、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基がリンカーを介して結合したC6-14炭化水素環を有する保護基が挙げられる。
【0107】
前記炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基は、好ましくは直鎖状のC10-40アルキル基および直鎖状のC10-40アルケニル基から選ばれる基であり、より好ましくは直鎖状のC10-40アルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状のC10-30アルキル基であり、特に好ましくは直鎖状のC12-28アルキル基であり、最も好ましくは直鎖状のC14-26アルキル基である。
【0108】
前記リンカーは、好ましくは-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-S-、-SO-、-SO2-、および-Si(R’)(R”)O-、-Si(R’)(R”)-(R’、R”は、それぞれ独立して、水素原子またはC1-22炭化水素基を示す。)から選ばれ、より好ましくは-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)NH-および-NHC(=O)-から選ばれ、より好ましくは-O-である。
【0109】
前記C6-14炭化水素環は、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環およびシクロヘキサン環から選ばれ、より好ましくはベンゼン環およびシクロヘキサン環から選ばれ、さらに好ましくはベンゼン環である。
【0110】
固液分離のために好適な擬似固相保護基は、好ましくは、直鎖状のC10-40アルキル基が単結合または-O-を介して結合した炭化水素基が-O-を介して結合したベンゼン環を有する保護基である。
【0111】
次に、抽出のために好適な擬似固相保護基について説明する。「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」における「分岐鎖」としては、直鎖状または分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基であり、C1-6アルキル基が好ましく、C1-4アルキル基がより好ましく、メチル基またはエチル基が一層好ましい。また、該「分岐鎖」は、1個以上のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0112】
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」における「脂肪族炭化水素基」とは、直鎖状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であり、C2-300アルキル基(好ましくは、C3-100アルキル基、より好ましくは、C3-60アルキル基)、C2-300アルケニル基(好ましくは、C3-100アルケニル基、より好ましくは、C3-60アルケニル基)またはC2-300アルキニル基(好ましくは、C3-100アルキニル基、より好ましくは、C3-60アルキニル基)である。
【0113】
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」における「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基」の部位は、特に限定されず、末端に存在しても(1価基)、それ以外の部位に存在してもよい(例えば2価基)。
【0114】
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基」としては、例えば、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、アラキル基、ベヘニル基、オレイル基、リノリル基、リグノセリル基等の分岐異性体であって、1以上の分岐鎖を有する1価基およびそれらから誘導される2価基が挙げられる。「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基」は、好ましくは、3,7,11-トリメチルドデシル基、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデシル基(以下、2,3-ジヒドロフィチル基ということもある。)、2,2,4,8,10,10-ヘキサメチルウンデカン-5-イル基等である。
【0115】
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」中に「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基」が複数存在する場合には、その各々は同一のものであっても、異なるものであってもよい。
【0116】
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」中の「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基」以外の部位は任意に設定することができる。例えば-O-、-S-、-CO-、-NH-、-COO-、-OCONH-、-CONH-、-NHCO-、炭化水素基(1価基または2価基)等の部位を有していてもよい。「炭化水素基」としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香脂肪族炭化水素基、単環式飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基等が挙げられ、具体的には、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等の1価基およびそれらから誘導される2価基が用いられる。「アルキル基」としては、C1-6アルキル基が好ましく、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。「アルケニル基」としては、C2-6アルケニル基が好ましく、例えば、ビニル、1-プロペニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル等が挙げられる。「アルキニル基」としては、C2-6アルキニル基が好ましく、例えば、エチニル、プロパルギル、1-プロピニル等が挙げられる。「シクロアルキル基」としては、C3-6シクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられる。「アリール基」は、C6-14アリール基が好ましく、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、ビフェニリル、2-アンスリル等が挙げられる。中でもC6-10アリール基がより好ましく、フェニルが特に好ましい。「アラルキル基」としては、C7-20アラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、1-フェニルプロピル、ナフチルメチル、1-ナフチルエチル、1-ナフチルプロピル等が挙げられる。中でも、C7-16アラルキル基(C6-10アリール-C1-6アルキル基)がより好ましく、ベンジルが特に好ましい。該「炭化水素基」は、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子)、オキソ基等から選択される置換基で置換されていてもよい。
【0117】
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」における「総炭素数」は、14以上、好ましくは16以上、より好ましくは18以上であり、300以下、好ましくは200以下、より好ましくは160以下である。また、「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」における分岐鎖の数は特に制限されないが、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がより好ましく、8以上がより好ましく、10以上がさらに好ましい。この分岐鎖の数が多いほど、オリゴヌクレオチド鎖が長鎖になった場合でも、分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を有する擬似固相保護基で保護されたヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドは、有機溶媒(特に、非極性溶媒)に対して良好に溶解する。
【0118】
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」としては、式(A):
【0119】
【0120】
[式中、
*は、隣接原子との結合位置を示し;
R14およびR15は、それぞれ独立して、水素原子またはC1-4アルキル基を示し;および
X1は、単結合またはC1-4アルキレン基を示す。
但し、R14およびR15が共に水素原子であることはない。]
で表される同一または異なる2価の基を有する基が好ましい。
【0121】
式(A)で表される2価の基を有する基としては、例えば、下記式(B)~(D)のいずれかで表される基が挙げられる。なお、式(B)~(D)における各記号の定義中の炭素数、繰り返し単位の数(m1、n0~n2)等は便宜上示されたものであって、総炭素数が14以上(好ましくは16以上、より好ましくは18以上)、300以下(好ましくは200以下、より好ましくは160以下)になるよう上記した定義の範囲内で適宜変更することができる。以下、式(B)~(D)について、順に説明する。
【0122】
式(B)は、以下の通りである。
【0123】
【0124】
[式中、
*は、隣接原子との結合位置を示し;
R16およびR17は、水素原子を示すか、または一緒になって=Oを示し;
n0は、2~40の整数を示し;
n0個のR18およびR19は、それぞれ独立して、水素原子またはC1-4アルキル基を示し;
n0個のX2は、それぞれ独立して、単結合またはC1-4アルキレン基を示し;
R20は、水素原子またはC1-4アルキル基を示し;および
R21は、C1-4アルキル基を示す。
但し、R18およびR19が共に水素原子であることはなく、且つn0が2の場合には、R20はC1-4アルキル基を示す。]
【0125】
式(B)の基としては、
R16およびR17は、共に水素原子であり;
n0は、2~40の整数であり;
n0個のR18およびR19は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基であり;
n0個のX2は、それぞれ独立して、単結合、メチレン基またはエチレン基であり;および
R20は、水素原子、メチル基またはエチル基である
基(但し、R18およびR19が共に水素原子であることはなく、且つn0が2の場合には、R20はメチルまたはエチル基を示す。)が好ましい。
【0126】
より好適な式(B)の基は、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、アラキル基、ベヘニル基等の炭素数14~160の分岐異性体であり、中でも2,3-ジヒドロフィチル基、3,7,11-トリメチルドデシル基、2,2,4,8,10,10-ヘキサメチル-5-ドデカノイル基が特に好ましい。
【0127】
式(C)は、以下の通りである。
【0128】
【0129】
[式中、
*は、隣接原子との結合位置を示し;
m1個のOR22は、それぞれ独立して、式(B)で表される基により置換された水酸基を示し;および
m1は、1~3の整数を示す。]
なお、式(C)中の「式(B)で表される基」は、その*がO(即ち、隣接原子)との結合位置を示すこと以外は上述した通りである。
【0130】
式(C)の基において、R22は、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、アラキル基、ベヘニル基等の炭素数14~30の分岐異性体である基がより好ましく、中でも2,3-ジヒドロフィチル基、3,7,11-トリメチルドデシル基が特に好ましい。
【0131】
式(D)は、以下の通りである。
【0132】
【0133】
[式中、
*は、Qとの結合位置を示し;
n1は、1~10の整数を示し;
n2は、1~10の整数を示し;
n1個のR26およびR27は、それぞれ独立して、水素原子またはC1-4アルキル基を示し;
n1個のX3は、それぞれ独立して、単結合またはC1-4アルキレン基を示し;
n2個のR28およびR29は、それぞれ独立して、水素原子またはC1-4アルキル基を示し;
n2個のX5は、それぞれ独立して、単結合またはC1-4アルキレン基を示し;
X4は、単結合またはC1-4アルキレン基を示し;および
R23、R24、R25、R30、R31およびR32は、それぞれ独立して、水素原子またはC1-4アルキル基を示す。
但し、R26およびR27、および/またはR28およびR29が共に水素原子であることはなく、且つn1+n2が2の場合には、R23、R24およびR25の2個以上がそれぞれ独立して、C1-4アルキル基を示すか、またはR30、R31およびR32の2個以上がそれぞれ独立して、C1-4アルキル基を示す。]
【0134】
式(D)の基としては、
n1は、1~5の整数であり;
n2は、1~5の整数であり;
n1個のR26およびR27は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基であり;
n1個のX3は、それぞれ独立して、単結合、メチレン基またはエチレン基であり;
n2個のR28およびR29は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基であり;
n2個のX5は、それぞれ独立して、単結合、メチレン基またはエチレン基であり;
X4は、単結合、メチレン基またはエチレン基であり;および
R23、R24、R25、R30、R31およびR32は、それぞれ独立して、水素原子またはC1-4アルキル基である
基(但し、R26およびR27、および/またはR28およびR29が共に水素原子であることはなく、且つn1+n2が2の場合には、R23、R24およびR25の2個以上がそれぞれ独立して、C1-4アルキル基を示すか、またはR30、R31およびR32の2個以上がそれぞれ独立して、C1-4アルキル基を示す。)がより好ましい。
【0135】
特に好適な式(D)の基としては、
n1は、1~5の整数であり;
n2は、1~5の整数であり;
n1個のR26およびR27は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基であり;
n1個のX3は、それぞれ独立して、単結合またはメチレン基であり;
n2個のR28およびR29は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基であり;
n2個のX5は、それぞれ独立して、単結合またはメチレン基であり;
X4は、単結合またはメチレン基であり;および
R23、R24、R25、R31、R31およびR32は、メチル基である
基(但し、R26およびR27、および/またはR28およびR29が、共に水素原子であることはない)が挙げられる。
【0136】
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」の具体例として、以下の基が挙げられる。各基中の*は結合位置を示し;式中のn3は、3以上の整数を示し;n4は、該基の総炭素数が14以上300以下になるように適宜設定され得る。
【0137】
【0138】
「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」の好ましい具体例として、以下の基が挙げられる:
3,7,11,15-テトラメチルヘキサデシル基(別名:2,3-ジヒドロフィチル基);
3,7,11-トリメチルドデシル基;
2,2,4,8,10,10-ヘキサメチル-5-ドデカノイル基;
3,4,5-トリ(3’,7’,11’,15’-テトラメチルヘキサデシルオキシ)ベンジル基;および
3,5-ジ(3’,7’,11’,15’-テトラメチルヘキサデシルオキシ)ベンジル基。
【0139】
擬似固相保護基は、より好ましくは、下記式(g-I)で表される基(以下「擬似固相保護基(g-I)」と略称することがある。)である。
**L-Y-Z (g-I)
[式中、
**は保護される基との結合位置を示し;
Lは、単結合、または式(a1)若しくは(a1’):
【0140】
【0141】
(式中、
*は、Yとの結合位置を示し;
**は前記と同義であり;
R1およびR2は、それぞれ独立して、C1-22炭化水素基を示し;
L1は、置換されていてもよい2価のC1-22炭化水素基を示し;
L2は、単結合を示すか、***C(=O)O-R4-N(R5)****または***C(=O)N(R3)-R4-N(R5)****(式中、***は、L1との結合位置を示し、****は、C=Oとの結合位置を示し、R4は、C1-22アルキレン基を示し、R3およびR5は、それぞれ独立して、水素原子若しくはC1-22アルキル基を示すか、またはR3およびR5が一緒になって、環を形成していてもよい。)で表される基を示す。)で表される基を示し;
Yは、単結合、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示す。)を示し;および
Zは、式(a2)、式(a2’)または式(a2”):
【0142】
【0143】
[式中、
*は、結合位置を示し;
R6は、水素原子であるか、あるいはRbが、下記式(a3)で表される基である場合には、環Aまたは環BのR6は、R8と一緒になって単結合または-O-を示して、環Aまたは環Bおよび環Cと共に縮合環を形成していてもよく;
kは、1~4の整数を示し;
k個のQは、それぞれ独立して、-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-NR7-、-C(=O)NH-または-NHC(=O)-を示し;
k個のR7は、それぞれ独立して、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基を示すか、または分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を示し;
環Aおよび環Bは、それぞれ独立して、k個のQR7に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよく;
Raは、水素原子を示し;および
Rbは、水素原子、または式(a3):
【0144】
【0145】
(式中、
*は、結合位置を示し;
jは、0~4の整数を示し;
j個のQは、それぞれ独立して、前記と同義であり;
j個のR9は、それぞれ独立して、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基を示すか、または分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を示し;
R8は、水素原子を示すか、または環Aまたは環BのR6と一緒になって単結合または-O-を示して、環Aまたは環Bおよび環Cと共に縮合環を形成していてもよく;および
環Cは、j個のQR9に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)で表される基を示すか、或いは
RaおよびRbが、一緒になってオキソ基を形成する。]で表される基を示す。]
【0146】
式(a2)、式(a2’)および式(a2”)中のR7、並びに式(a3)中のR9が有する炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基は、それぞれ独立して、好ましくは直鎖状のC10-40アルキル基および直鎖状のC10-40アルケニル基から選ばれる基であり、より好ましくは直鎖状のC10-40アルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状のC10-30アルキル基であり、特に好ましくは直鎖状のC12-28アルキル基であり、最も好ましくは直鎖状のC14-26アルキル基である。
式(a2)、式(a2’)および式(a2”)中のR7、並びに式(a3)中のR9が有するリンカーは、それぞれ独立して、好ましくは-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)NH-または-NHC(=O)-であり、より好ましくは-O-である。
【0147】
式(a2)、式(a2’)および式(a2”)中のR7、並びに式(a3)中のR9の「炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基」は、好ましくは、直鎖状のC10-40アルキル基、1~3個の直鎖状のC10-40アルキル基が-O-を介して結合したベンジル基、または1~3個の直鎖状のC10-40アルキル基が-O-を介して結合したシクロヘキシルメチル基である。
【0148】
式(a2)、式(a2’)および式(a2”)中のR7、並びに式(a3)中のR9の一態様である「分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基」は、それぞれ独立して、好ましくは上記式(A)で表される2価の基を有する基であり、より好ましくは上記式(B)~(D)のいずれかで表される基であり、さらに好ましくは上記式(B)で表される基であり、特に好ましくは2,3-ジヒドロフィチル基、3,7,11-トリメチルドデシル基、または2,2,4,8,10,10-ヘキサメチル-5-ドデカノイル基である。
【0149】
式(a2)、式(a2’)、式(a2”)および式(a3)中のQは、好ましくは-O-、-C(=O)NH-または-NHC(=O)-であり、より好ましくは-O-である。
【0150】
式(g-I)において、式(a1)で表されるLの好ましい態様は、
L1が、2価のC1-22炭化水素基(ここで、当該炭化水素基を構成する1または2以上の-CH2-は、-O-、-C(=O)-等で置換されていても良い)、またはCH2-O-1,4-フェニレン-O-CH2であり;および
L2が、単結合であるか、または***C(=O)N(R3)-R4-N(R5)****(式中、***は、L1との結合位置を示し、****は、C=Oとの結合位置を示し、R4は、C1-6アルキレン基を示し、R3およびR5は、それぞれ独立して水素原子、若しくは置換されていてもよいC1-6アルキル基を示すか、またはR3およびR5が一緒になって、置換されていてもよいC1-6アルキレン基を形成していてもよい。)で表される基である、
基である。
【0151】
式(a1)で表されるLの別の好ましい態様は、
L1が、2価のC1-22炭化水素基であり;および
L2が単結合である、
基である。
【0152】
式(a1)で表されるLの別の好ましい態様は、
L1が、エチレン基であり;および
L2が、***C(=O)N(R3)-R4-N(R5)****(式中、***は、L1との結合位置を示し、****は、C=Oとの結合位置を示し、R4は、C1-22アルキレン基を示し、R3およびR5は、それぞれ独立して、水素原子若しくはC1-22アルキル基を示すか、またはR3およびR5が一緒になって、環を形成していてもよい。)で表される基を示す。)で表される基である、
基である。
【0153】
式(a1)で表されるLの別の好ましい態様は、
L1が、エチレン基であり;および
L2が、***C(=O)N(R3)-R4-N(R5)****(式中、***は、L1との結合位置を示し、****は、C=Oとの結合位置を示し、N(R3)-R4-N(R5)部分が、1,4-ピペラジンジイル基を形成する。)で表される基である、
基である。
【0154】
式(a1)で表されるLの別の好ましい態様は、
L1が、エチレン基であり;および
L2が、***C(=O)N(R3)-R4-N(R5)****(式中、***は、L1との結合位置を示し、****は、C=Oとの結合位置を示し、R4は、ペンチレン基、またはヘキシレン基を示し、R3およびR5は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を示す。)で表される基である、
基である。
【0155】
式(a1)で表されるLの特に好ましい態様は、入手が容易で安価なスクシニル基である。
【0156】
次に、式(g-I)において式(a1’)で表されるLについて説明する。
式(a1’)中のL1は、好ましくは2価のC6-10芳香族炭化水素基であり、より好ましくはフェニレン基である。
式(a1’)中のL2は、好ましくは単結合である。
式(a1’)中のL1およびL2の好ましい組合せとしては、L1が2価のC6-10芳香族炭化水素基であり、L2が単結合である、組合せである。式(a1’)中のL1およびL2のより好ましい組合せとしては、L1がフェニレン基であり、L2が単結合である、組合せである。
式(a1’)中のR1およびR2は、それぞれ独立して、好ましくはC1-22アルキル基であり、より好ましくはC1-10アルキル基である。
【0157】
式(a1’)で表されるLの好ましい態様は、
R1およびR2が、それぞれ独立して、C1-22アルキル基であり;
L1が、2価のC6-10芳香族炭化水素基であり;および
L2が、単結合である、
基である。
【0158】
式(a1’)で表されるLの別の好ましい態様は、
R1およびR2が、それぞれ独立して、C1-10アルキル基であり;
L1が、フェニレン基であり;および
L2が、単結合である、
基である。
【0159】
式(g-I)におけるYがNRである場合、前記Rは、好ましくは、水素原子、C1-6アルキル基またはC7-16アラルキル基であり、より好ましくは水素原子、メチル、エチルまたはベンジルであり、さらに好ましくは水素原子である。Yは、好ましくは単結合、酸素原子またはNRであり、より好ましくは単結合または酸素原子である。
【0160】
式(g-I)におけるZは、好ましくは、式(a2)または式(a2”)で表される基であり、より好ましくは式(a2”)で表される基である。式(a2)で表されるZ(即ち、ベンジル基の構造)を有する擬似固相保護基に比べて、式(a2”)で表されるZ(即ち、シクロヘキシルメチル基の構造)を有する擬似固相保護基を使用することにより、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(a)等の非極性溶媒に対する溶解性を飛躍的に向上することができる。それによって、本発明の製造方法をより高濃度で実行でき、生産性が大きく向上する。
【0161】
式(a2)において、R6は水素原子であることが好ましい。また、式(a2)において、RaおよびRbが、水素原子であるか、または一緒になってオキソ基を形成することが好ましい。
【0162】
式(a2)で表されるZの、固液分離のために好ましい態様は、
RaおよびRbが、水素原子であり;
R6が、水素原子であり;
kが、1~3の整数であり;
k個のQが、-O-であり;および
k個のR7が、それぞれ独立して、直鎖状のC10-40アルキル基である、
基である。
【0163】
式(a2)で表されるZの、固液分離のために好ましい別の態様は、
RaおよびRbが、水素原子であり;
R6が、水素原子であり;
kが、1~3の整数であり;
k個のQが、-O-であり;
k個のR7が、それぞれ独立して、1~3個の直鎖状のC10-40アルキル基が-O-を介して結合したベンジル基、または1~3個の直鎖状のC10-40アルキル基が-O-を介して結合したシクロヘキシルメチル基であり;および
環Aが、k個のQR7に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい、
基である。
【0164】
式(a2)で表されるZの、固液分離のために好ましい別の態様は、
Raが、水素原子であり;および
Rbが、式(a3)(式中、*は結合位置であり、jが、0~3の整数であり、j個のQが、-O-であり、j個のR9が、それぞれ独立して、直鎖状のC10-40アルキル基であり、R6およびR8が、共に水素原子である。)で表される基である、
基である。
【0165】
式(a2)で表されるZの、固液分離のために好ましい別の態様は、
Raが、水素原子であり;および
Rbが、式(a3)(式中、*は結合位置であり、jが、0~3の整数であり、j個のQが、-O-であり、j個のR9が、それぞれ独立して、直鎖状のC10-40アルキル基であり、R8は、R6と一緒になって単結合または-O-を示して、環Aおよび環Cと共に縮合環を形成する。)で表される基である、
基である。
【0166】
式(a2)で表されるZの、固液分離のために好ましい別の態様は、
RaおよびRbが、一緒になってオキソ基を形成し;
R6が、水素原子であり;
kが、1~3の整数であり;
k個のQが、-O-であり;および
k個のR7が、それぞれ独立して、直鎖状のC10-40アルキル基である、
基である。
【0167】
式(a2)で表されるZの、固液分離のために好ましい別の態様は、
RaおよびRbが、一緒になってオキソ基を形成し;
R6が、水素原子であり;
kが、1~3の整数であり;
k個のQが、-O-であり;
k個のR7が、それぞれ独立して、1~3個の直鎖状のC10-40アルキル基が-O-を介して結合したベンジル基、または1~3個の直鎖状のC10-40アルキル基が-O-を介して結合したシクロヘキシルメチル基であり;および
環Aが、k個のQR7に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい、
基である。
【0168】
式(a2”)において、R6は水素原子であることが好ましい。また、式(a2”)において、RaおよびRbが、水素原子であるか、または一緒になってオキソ基を形成することが好ましい。
【0169】
式(a2”)で表されるZの、固液分離のために好ましい態様は、
RaおよびRbが、水素原子であり;
R6が、水素原子であり;
kが、1~3の整数であり;
k個のQが、-O-であり;および
k個のR7が、それぞれ独立して、直鎖状のC10-40アルキル基である、
基である。
【0170】
式(a2”)で表されるZの、固液分離のために好ましい別の態様は、
RaおよびRbが、水素原子であり;
R6が、水素原子であり;
kが、1~3の整数であり;
k個のQが、-O-であり;
k個のR7が、それぞれ独立して、1~3個の直鎖状のC10-40アルキル基が-O-を介して結合したベンジル基、または1~3個の直鎖状のC10-40アルキル基が-O-を介して結合したシクロヘキシルメチル基であり;および
環Bが、k個のQR7に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい、
基である。
【0171】
式(a2”)で表されるZの、固液分離のために好ましい別の態様は、
Raが、水素原子であり;
Rbが、式(a3)(式中、*は結合位置であり、jが、0~3の整数であり、j個のQが、-O-であり、j個のR9が、それぞれ独立して、C10-40アルキル基であり、R6およびR8が、共に水素原子である。)で表される基である、
基である。
【0172】
式(a2”)で表されるZの、固液分離のために好ましい別の態様は、
Raが、水素原子であり;
Rbが、式(a3)(式中、*は結合位置であり、jが、0~3の整数であり、j個のQが、-O-であり、j個のR9が、それぞれ独立して、直鎖状のC10-40アルキル基であり、R8は、R6と一緒になって単結合または-O-を示して、環Bおよび環Cと共に縮合環を形成する。)で表される基である、
基である。
【0173】
式(a2”)で表されるZの、固液分離のために好ましい別の態様は、
RaおよびRbが、一緒になってオキソ基を形成し;
R6が、水素原子であり;
kが、1~3の整数であり;
k個のQが、-O-であり;および
k個のR7が、それぞれ独立して、直鎖状のC10-40アルキル基である、
基である。
【0174】
式(a2”)で表されるZの、固液分離のために好ましい別の態様は、
RaおよびRbが、一緒になってオキソ基を形成し;
R6が、水素原子であり;
kが、1~3の整数であり;
k個のQが、-O-であり;
k個のR7が、それぞれ独立して、1~3個の直鎖状のC10-40アルキル基が-O-を介して結合したベンジル基、または1~3個の直鎖状のC10-40アルキル基が-O-を介して結合したシクロヘキシルメチル基であり;および
環Bが、k個のQR7に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい、
基である。
【0175】
固液分離のために好適な擬似固相保護基(g-I)は、好ましくは、
Lが、スクシニル基であるか、または式(a1’)で表される基(式(a1’)中、R1およびR2が、それぞれ独立して、C1-10アルキル基であり、L1が、2価のフェニレン基であり、L2が、単結合である。)であり、および
Y-Zが、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルオキシ基、3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルオキシ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルアミノ基、2,4-ビス(ドコシルオキシ)ベンジルアミノ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)ベンジルアミノ基、ビス(4-ドコシルオキシフェニル)メチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]ベンジルアミノ基、2,4-ビス(ドデシルオキシ)ベンジルアミノ基、フェニル(2,3,4-トリス(オクタデシルオキシ)フェニル)メチルアミノ基、ビス[4-(12-ドコシルオキシドデシルオキシ)フェニル]メチルアミノ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、ビス(4-ドコシルオキシシクロへキシル)メチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4-ビス(ドデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、フェニル(2,3,4-トリス(オクタデシルオキシ)シクロへキシル)メチルアミノ基、ビス[4-(12-ドコシルオキシドデシルオキシ)シクロへキシル]メチルアミノ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、または3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基である、
基であるか、または
L-Yが、単結合またはスクシニル-1,4-ピペラジンジイル基であり、および
Zが、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンゾイル基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)ベンゾイル基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンゾイル基、または3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンゾイル基である、
基である。
【0176】
固液分離のために好適な擬似固相保護基(g-I)は、より好ましくは、
Lが、スクシニル基であり、および
Y-Zが、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルオキシ基、3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルオキシ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルアミノ基、2,4-ビス(ドコシルオキシ)ベンジルアミノ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)ベンジルアミノ基、ビス(4-ドコシルオキシフェニル)メチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]ベンジルアミノ基、2,4-ビス(ドデシルオキシ)ベンジルアミノ基、フェニル(2,3,4-トリス(オクタデシルオキシ)フェニル)メチルアミノ基、ビス[4-(12-ドコシルオキシドデシルオキシ)フェニル]メチルアミノ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアミノ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、ビス(4-ドコシルオキシシクロへキシル)メチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4-ビス(ドデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、フェニル(2,3,4-トリス(オクタデシルオキシ)シクロへキシル)メチルアミノ基、ビス[4-(12-ドコシルオキシドデシルオキシ)シクロへキシル]メチルアミノ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、または3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基である、
基であるか、または
L-Yが、単結合またはスクシニル-1,4-ピペラジンジイル基であり、および
Zが、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンゾイル基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)ベンゾイル基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンゾイル基、または3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンゾイル基である。
【0177】
固液分離のために好適な擬似固相保護基(g-I)は、さらに好ましくは、
Lが、スクシニル基であり、および
Y-Zが、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4-ビス(ドデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、または3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基である、
基であるか、または
L-Yが、単結合またはスクシニル-1,4-ピペラジンジイル基であり、および
Zが、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンゾイル基である基である。
【0178】
固液分離のために好適な擬似固相保護基(g-I)は、特に好ましくは、
Lが、スクシニル基であり、および
Y-Zが、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基またはフェニル(2,3,4-トリス(オクタデシルオキシ)フェニル)メチルアミノ基である、
基であるか、または
L-Yが、スクシニル-1,4-ピペラジンジイル基であり、および
Zが、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンゾイル基である、
基である。
【0179】
固液分離のために好適な擬似固相保護基(g-I)は、最も好ましくは、
Lが、スクシニル基であり、および
Y-Zが、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ基、または3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基である、
基であるか、または
L-Yが、スクシニル-1,4-ピペラジンジイル基であり、および
Zが、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンゾイル基である、
基である。
【0180】
抽出のために好適な擬似固相保護基(g-I)は、好ましくは、2-{2,4-ジ(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;3,5-ジ(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシスクシニル基;4-(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシスクシニル基;2-{1-[(2-クロロ-5-(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)フェニル)]ベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;3,4,5-トリ(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシスクシニル基;2-{3,4,5-トリ(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;2-{4-(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;2-{2-[3’,4’,5’-トリ(2”,3”-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ]-4-メトキシベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;2-{4-(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)-2-メトキシベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;4-(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)-2-メチルベンジルオキシスクシニル基;2-{4-(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)-2-メチルベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;4-[2,2,4,8,10,10-ヘキサメチル-5-ドデカノイルアミノ]ベンジルオキシスクシニル基;2-{4-[2,2,4,8,10,10-ヘキサメチル-5-ドデカノイルアミノ]ベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;4-(3,7,11-トリメチルドデシルオキシ)ベンジルオキシスクシニル基;2-{4-(3,7,11-トリメチルドデシルオキシ)ベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;2-{3,5-ジ(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;2-{1-[2,3,4-トリ(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)フェニル]ベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;2-{1-[4-(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)フェニル]-4’-(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基;3,4,5-トリス[3,4,5-トリ(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジル]ベンジルオキシスクシニル基;または2-{3,4,5-トリス[3,4,5-トリ(2’,3’-ジヒドロフィチルオキシ)ベンジル]ベンジルアミノカルボニル}エチルカルボニル基である。
【0181】
核酸bにおける5’位の水酸基を保護する「酸性条件下で除去可能な一時保護基」としては、酸性条件下で脱保護が可能であり、且つ水酸基の保護基として用いられるものであれば、特に限定はされないが、例えば、トリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、1,1-ビス(4-メトキシフェニル)-1-フェニルメチル基(ジメトキシトリチル基)等のビス(C1-6アルコキシ)トリチル基、1-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジフェニルメチル基(モノメトキシトリチル基)等のモノ(C1-18アルコキシ)トリチル基等を挙げることができる。これらの中でも、脱保護のしやすさ、入手の容易さの観点から、水酸基の一時保護基は、モノメトキシトリチル基またはジメトキシトリチル基であることが好ましく、ジメトキシトリチル基であることがより好ましい。
【0182】
Ln1の有機基とは、炭化水素基、または炭化水素基中の炭素原子がヘテロ原子で置き換わった基を意味する。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられる。また、有機基は、水酸基、アミノ基、オキソ基(=O)等の置換基を有していてもよい。有機基が有し得る水酸基およびアミノ基は、保護基で保護されていることが好ましい。有機基の形状は、鎖状(直鎖状または分岐鎖状)、環状またはこれらの組合せのいずれでもよい。
【0183】
有機基は、細胞に対して機能性を有する基を有していてもよい。細胞に対して機能性を有する基は、有機基の主鎖または側鎖の末端に結合していることが好ましい。細胞に対して機能性を有する基としては、例えば、「化合物の脂溶性を向上させることによって、化合物の細胞膜透過性を向上させる基」、「細胞膜受容体を介して細胞内への化合物の取込みを向上させる基」等が挙げられる。「化合物の脂溶性を向上させることによって、化合物の細胞膜透過性を向上させる基」としては、例えば、コレステロール残基、トコフェロール残基等が挙げられる。「細胞膜受容体を介して細胞内への化合物の取込みを向上させる基」としては、例えば、N-アセチルガラクトサミン残基等が挙げられる。これら細胞に対して機能性を有する基は、国際公開第2017/104836号に記載されている。
【0184】
-OLn1-OHの具体例としては、以下のものが挙げられる(下記式中の*は、リン原子との結合位置を示し、Acはアセチル基を示す)。
【0185】
【0186】
Ln1は、好ましくはC2-6アルキレン基、より好ましくはエチレン基である。
【0187】
本発明の製造方法を実施するに当たっての好適な核酸a、核酸αおよび核酸bについて、以下に詳述する。
【0188】
本発明の工程(1)で使用する核酸aとしては、例えば、下記式(a-I)で表される化合物(即ち、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド)が挙げられる。
【0189】
【0190】
[式中、
mは、0以上の整数を示し;
m+1個のBaseは、それぞれ独立して、保護されていてもよい核酸塩基を示し;
m+1個のXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、または2位炭素原子および4位炭素原子と結合する2価の有機基を示し;
m+1個のXn1は、それぞれ独立して、酸素原子またはNHを示し;
m個のR10は、それぞれ独立して、酸素原子または硫黄原子を示し;
m個のRp1は、それぞれ独立して、リン酸基の保護基を示し;
L、YおよびZは、前記と同義である。]
【0191】
以下では、式(a-I)で表される化合物を「化合物(a-I)」と略称することがある。他の式で表される化合物も同様に略称することがある。
【0192】
核酸塩基のアミノ基は、保護基で保護されていることが好ましい。該保護基としては、アセチル基、フェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、(2-ヘキシル)デカノイル基、ジメチルホルムアミジニル基、および=NC(R11)-N(R12)(R13)基(式中、R11は、メチル基を示し、R12およびR13は、それぞれ独立してC1-5アルキル基を示すか、またはR11およびR12が一緒になって、それらが結合する炭素原子および窒素原子と共に5員または6員の含窒素炭化水素環を形成していてもよい。)が好ましい。なお、前記=NC(R11)-N(R12)(R13)基としては、例えば、1-(ジメチルアミノ)エチリデン基が挙げられる。化合物(a-I)が複数のアミノ基を有する場合、アミノ基の保護基は1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0193】
mが0である場合、化合物(a-I)はヌクレオシドであり、mが1以上である場合、化合物(a-I)はオリゴヌクレオチドである。mは、49以下が好ましく、29以下がより好ましく、19以下がさらに好ましく、4以下が特に好ましく、2以下が最も好ましい。
【0194】
Xのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0195】
Xの保護されていてもよい水酸基の保護基としては、特に限定されず、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY&SONS)出版(1999年)等に記載されている任意の保護基を挙げることができる。具体的には、メチル基、ベンジル基、p-メトキシベンジル基、tert-ブチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、2-テトラヒドロピラニル基、エトキシエチル基、シアノエチル基、シアノエトキシメチル基、フェニルカルバモイル基、1,1-ジオキソチオモルホリン-4-チオカルバモイル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、[(トリイソプロピルシリル)オキシ]メチル(Tom)基、1-(4-クロロフェニル)-4-エトキシピペリジン-4-イル(Cpep)基等を挙げることができる。保護されていてもよい水酸基の保護基は、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、またはtert-ブチルジメチルシリル基であることが好ましく、経済性および入手の容易さの観点から、tert-ブチルジメチルシリル基であることが特に好ましい。
【0196】
Xの「2位炭素原子および4位炭素原子と結合する2価の有機基」としては、ヌクレオシドの2位炭素原子および4位炭素原子と結合する限り特に限定はない。この2価の有機基としては、例えば、置換されていてもよいC2-7アルキレン基、並びに-O-、-NR33-(R33は水素原子またはC1-6アルキル基を示す)、-S-、-CO-、-COO-、-OCONR34-(R34は水素原子またはC1-6アルキル基を示す)および-CONR35-(R35は水素原子またはC1-6アルキル基を示す)から選ばれる2価のリンカーと、置換されていてもよいC1-7アルキレン基とから構成される2価の有機基等が挙げられる。C1-7アルキレン基およびC2-7アルキレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチリデン基(CH2=)が挙げられる。
【0197】
「2位炭素原子および4位炭素原子と結合する2価の有機基」としては、置換されていてもよいC2-7アルキレン基、-ORi-(Riは4位炭素原子と結合するC1-6アルキレン基を示す)、-O-NR33-Rj-(Rjは4位炭素原子と結合するC1-6アルキレン基を示し、R33は前記と同義を示す)、-O-Rk-O-Rl-(RkはC1-6アルキレン基を示し、Rlは4位炭素原子と結合架橋するC1-6アルキレン基を示す)が好ましく、-ORi-(Riは前記と同義を示す)、-O-NR33-Rj-(RjおよびR33は前記と同義を示す)、-O-Rk-O-Rl-(RkおよびRlは前記と同義を示す)がより好ましい。Ri、Rj、RkおよびRlで示されるC1-6アルキレン基としては、それぞれ独立して、メチレン基またはエチレン基が好ましい。
【0198】
「2位炭素原子および4位炭素原子と結合する2価の有機基」としては、-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、-O-NR33-CH2-(R33は前記と同義を示す)、-O-CH2-O-CH2-がより好ましく、-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、-O-NH-CH2-、-O-N(CH3)-CH2-、-O-CH2-O-CH2-(それぞれ、左側が2位炭素原子に結合し、右側が4位炭素原子に結合する。)がさらに好ましい。
【0199】
m+1個のXは、それぞれ独立して、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、または保護されていてもよい水酸基であり、より好ましくは水素原子または保護されていてもよい水酸基である。
【0200】
Rp1のリン酸基の保護基としては、塩基性条件下で除去可能であり、リン酸基の保護基として用いられるものであれば、特に限定はされないが、-CH2CH2WG(WGは、電子吸引性基を示す。)で表される基が好ましい。
WGの電子吸引性基としては、例えば、シアノ基、ニトロ基等が挙げられ、好ましくはシアノ基である。
【0201】
m個のRp1は、好ましくは、それぞれ独立して-CH2CH2WGで表される基である。
m+1個のXn1は、好ましくは酸素原子である。
L、YおよびZの説明は、前記の通りである。
【0202】
化合物(a-I)は、好ましくは下記式(a-i)で表される化合物である(下記式中の記号の定義および説明は、前記の通りである)。
【0203】
【0204】
化合物(a-I)は、自体公知の方法またはこれに準ずる方法で製造することができる。例えば、国際公開第2017/104836号公報に記載された方法に従って製造することができる。
【0205】
化合物(a-i)の中で、式(a-II)で表される化合物(即ち、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド)が好ましい。
【0206】
【0207】
[式中、
m、m個のBase、m+1個のX、m個のR10、m個のRp1、L、YおよびZは、それぞれ独立して、前記と同義であり;
R11は、メチル基を示し、R12およびR13は、それぞれ独立してC1-5アルキル基を示すか、またはR11およびR12が一緒になって、それらが結合する炭素原子および窒素原子と共に5員または6員の含窒素炭化水素環を形成していてもよい。]
【0208】
式(a-II)において、m個のRp1が、それぞれ独立して-CH2CH2WGで表される基であることが好ましい。
式(a-II)において、mが0であることが好ましい。即ち、化合物(a-II)の中で、式(a-III)で表される化合物(即ち、ヌクレオシド)が好ましい(下記式中の記号の定義および説明は、前記の通りである)。
【0209】
【0210】
式(a-II)および式(a-III)において、R11がメチル基であり、R12およびR13は、それぞれ独立してC1-5アルキル基であることが好ましく、R11、R12およびR13が、メチル基であることがより好ましい。
式(a-II)および式(a-III)における他の記号の説明は、前記の通りである。
【0211】
本発明において、最初の残基がアデニンを核酸塩基として有するホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドを製造する場合、出発物質であるヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドとして化合物(a-II)(特に、化合物(a-III))を使用することで、ブランチ体の生成等を抑制できる。ここで、ブランチ体とは、目的化合物の核酸塩基におけるアミノ基の保護基が脱落し、該アミノ基とモノマーとが結合して生成した副生成物をいう。
【0212】
また、化合物(a-i)の中で、式(a-IV)で表される化合物(即ち、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド)が好ましい。
【0213】
【0214】
[式中、
m、m+1個のBase、m+1個のX、m個のR10、m個のRp1、LおよびYは、それぞれ独立して、前記と同義であり;
Z’は、式(a2”):
【0215】
【0216】
[式中、
*は、結合位置を示し;
R6は、水素原子であるか、あるいはRbが、下記式(a3)で表される基である場合には、R8と一緒になって単結合または-O-を示して、環Bおよび環Cと共に縮合環を形成していてもよく;
kは、1~4の整数を示し;
k個のQは、それぞれ独立して、-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)NH-または-NHC(=O)-を示し;
k個のR7は、それぞれ独立して、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基を示すか、または分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を示し;
環Bは、k個のQR7に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよく;
Raは、水素原子を示し;および
Rbは、水素原子、または式(a3):
【0217】
【0218】
(式中、*は、結合位置を示し;
jは、0~4の整数を示し;
j個のQは、それぞれ独立して、前記と同義であり;
j個のR9は、それぞれ独立して、炭素数10以上の直鎖状の脂肪族炭化水素基が単結合またはリンカーを介して結合した炭化水素基を示すか、または分岐鎖を1以上有する脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有し、且つ総炭素数が14以上300以下である有機基を示し;
R8は、水素原子を示すか、またはR6と一緒になって単結合または-O-を示して、環Bおよび環Cと共に縮合環を形成していてもよく;および
環Cは、j個のQR9に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)で表される基を示すか、或いは
RaおよびRbが、一緒になってオキソ基を形成する。]で表される基を示す。]
【0219】
式(a-IV)において、m個のRp1が、それぞれ独立して-CH2CH2WGで表される基であることが好ましい。
式(a-IV)において、mが0であることが好ましい。
式(a-IV)における他の記号の説明は、前記の通りである。
化合物(a-IV)の中で、下記式(a-V)で表される化合物(即ち、ヌクレオシド)が好ましい(下記式中の記号の定義および説明は、前記の通りである)。
【0220】
【0221】
化合物(a-I)の中でも、擬似固相保護基中に式(a2”)で表されるZ’(即ち、シクロヘキシルメチル基の構造)を有する化合物(a-IV)(特に、化合物(a-V))は、擬似固相保護基中に式(a2)で表されるZ(即ち、ベンジル基の構造)を有する他の化合物(a-I)に比べて、非極性溶媒に対する溶解性が高い。そのため、化合物(a-IV)(特に、化合物(a-V))を使用することによって、本発明の製造方法をより高濃度で実行でき、生産性が大きく向上する。式(a2”)で表されるZ’の説明は、上述の式(a2”)で表されるZの説明と同じである。
【0222】
式(a-IV)および(a-V)において、
Lが、スクシニル基であるか、または式(a1’)で表される基(式(a1’)中、R1およびR2が、それぞれ独立して、C1-10アルキル基であり、L1が、2価のフェニレン基であり、L2が、単結合である。)であり、および
Y-Z’が、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4-ビス(ドデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、または3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基である、
組合せが、固液分離のために好ましい。
【0223】
式(a-IV)および(a-V)において、
Lが、スクシニル基であり、および
Y-Z’が、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、4-メトキシ-2-[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、2,4-ビス(ドデシルオキシ)シクロヘキシルメチルアミノ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基、または3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルアミノ基である、
組合せが、固液分離のためにより好ましい。
【0224】
式(a-IV)および(a-V)において、
Lが、スクシニル基であり、および
Y-Z’が、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス(ドコシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基、3,5-ビス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基、または3,4,5-トリス[3’,4’,5’-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]シクロヘキシルメチルオキシ基である、
組合せが、固液分離のためにさらに好ましい。
【0225】
式(a-IV)および(a-V)において、
Lが、スクシニル基であり、および
Y-Z’が、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ基である、
組合せが、固液分離のために特に好ましい。
【0226】
また、核酸aとしては、例えば、下記式(a-VI)で表される化合物(即ち、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド)が挙げられる。
【0227】
【0228】
[式中、
m+1個のBase1の少なくとも一つは、-L-Y-Zで保護されている核酸塩基を示し、残りは保護されていてもよい核酸塩基を示し;
m個のXn1は、それぞれ独立して、酸素原子またはNHを示し;
Xn2は、保護されている水酸基またはアミノ基を示し;
m、m+1個のX、m個のR10、m個のRp1、L、YおよびZは、それぞれ独立して、前記と同義である。]
【0229】
式(a-VI)中、m+1個のBase1の少なくとも一つは、-L-Y-Zで保護されている核酸塩基である。核酸塩基および-L-Y-Zの説明は、前記の通りである。
また、保護されていてもよい核酸塩基の説明も、前記の通りである。
【0230】
保護されている水酸基(Xn2)の保護基としては、特に限定されず、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY&SONS)出版(1999年)等に記載されている任意の保護基を挙げることができる。具体的には、メチル基、ベンジル基、p-メトキシベンジル基、tert-ブチル基、メトキシエチル基、、エトキシエチル基、シアノエチル基、シアノエトキシメチル基、フェニルカルバモイル基、1,1-ジオキソチオモルホリン-4-チオカルバモイル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、[(トリイソプロピルシリル)オキシ]メチル(Tom)基、1-(4-クロロフェニル)-4-エトキシピペリジン-4-イル(Cpep)基等を挙げることができる。水酸基の保護基は、好ましくは、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基またはtert-ブチルジメチルシリル基であり、経済性および入手の容易さの観点から、より好ましくはtert-ブチルジメチルシリル基である。なお、水酸基の保護および脱保護は周知であり、例えば上述のプロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシスに記載の方法によって行うことができる。
【0231】
保護されているアミノ基(Xn2)の保護基としては、特に限定されず、例えば、グリーンズ・プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Greene’s PROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS)、第4版、ウィリー・インターサイエンス(Wiley-Interscience)出版(2006年)等に記載されている保護基を挙げることができる。各保護基の具体例としては、ピバロイル基、ピバロイロキシメチル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、フェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、4-tert-ブチルフェノキシアセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、(2-ヘキシル)デカノイル基、ジメチルホルムアミジニル基、1-(ジメチルアミノ)エチリデン基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基を挙げることができる。アミノ基の保護基は、好ましくは、アセチル基、フェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、(2-ヘキシル)デカノイル基、ジメチルホルムアミジニル基、または1-(ジメチルアミノ)エチリデン基である。なお、アミノ基の保護および脱保護は周知であり、例えば上述のプロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシスに記載の方法によって行うことができる。
【0232】
式(a-VI)中のm個のXn1は、好ましくは酸素原子である。
式(a-VI)中のXn2は、好ましくは保護されている水酸基である。
式(a-VI)中のm個のRp1は、好ましくは、それぞれ独立して-CH2CH2WGで表される基である。
式(a-VI)中の他の記号の説明は、前記の通りである。
化合物(a-VI)は、好ましくは下記式(a-vi)で表される化合物である。
【0233】
【0234】
[式中、
Rn4は、水酸基の保護基を示し;
m、m+1個のBase1、m+1個のX、m個のR10、m個のRp1、L、YおよびZは、それぞれ独立して、前記と同義である。]
【0235】
式(a-vi)中のRn4の説明は、Xn2における水酸基の保護基の説明と同じである。
式(a-vi)中の他の記号の説明は、前記の通りである。
【0236】
また、核酸αとしては、例えば、下記式(a-VII)で表される化合物(即ち、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド)が挙げられる。
【0237】
【0238】
[式中、
m+1個のXn1は、それぞれ独立して、酸素原子またはNHを示し;
Ln1は有機基を示し;
m、m+1個のBase、m+1個のX、m+1個のR10、m+1個のRp1、L、YおよびZは、それぞれ独立して、前記と同義である。]
【0239】
式(a-VII)中のLn1は、好ましくはC2-6アルキレン基、より好ましくはエチレン基である。
式(a-VII)中のm+1個のXn1は、好ましくは酸素原子である。
式(a-VII)中のm+1個のRp1は、好ましくは、それぞれ独立して-CH2CH2WGで表される基である。
式(a-VII)中の他の記号の説明は、前記の通りである。
化合物(a-VII)は、好ましくは下記式(a-vii)で表される化合物である(下記式中の記号の定義および説明は、前記の通りである)。
【0240】
【0241】
化合物(a-VII)は、自体公知の方法またはこれに準ずる方法で製造することができる。mが0であり、Xn1が酸素原子であり、Lがスクシニル基である化合物(a-VII)は、例えば、以下のような工程によって製造することができる。
(i)化合物Z-Y-Hとコハク酸無水物とを縮合させて、Z-Y-CO(CH2)2COOHを製造する、
(ii)得られたZ-Y-CO(CH2)2COOHを、縮合剤の存在下、式:HO-Ln1-OQ”で表される化合物(前記式中、Q”は一時保護基を示し、Ln1は有機基を示す。)と縮合させた後、脱保護して、Z-Y-CO(CH2)2CO-O-Ln1-OHを製造する、
(iii)得られたZ-Y-CO(CH2)2CO-O-Ln1-OHにホスホロアミダイト化されたヌクレオシドを反応させて、mが0であり、Xn1が酸素原子であり、Lがスクシニル基である化合物(a-VII)を製造する。
上述のような縮合反応および脱保護反応は当業者にとって周知であり、当業者は、適宜条件を設定して行うことができる。
【0242】
Lがスクシニル基以外である化合物(a-VII)も、コハク酸無水物に代えて、対応する酸無水物、対応するジカルボン酸ハライド、対応するジカルボン酸の活性エステル等を用いて、同様の反応を行うことにより製造することができる。また、Xn1がNHである化合物(a-VII)は、3’位アミノ基がホスホロアミダイト化されたヌクレオシドを用いて、同様の反応を行うことにより製造することができる。また、mが1以上である化合物(a-VII)は、mが0である化合物(a-VII)を出発原料として用いて伸長プロセスを繰り返すことによって製造することができる。
【0243】
本発明の工程(1)で使用する核酸aまたは核酸αは、好ましくは化合物(a-I)、化合物(a-VI)または化合物(a-VII)であり、より好ましくは化合物(a-i)、化合物(a-vi)または化合物(a-vii)であり、より一層好ましくは化合物(a-i)または化合物(a-vi)であり、さらに好ましくは化合物(a-i)であり、さらに一層好ましくは化合物(a-II)または化合物(a-IV)であり、特に好ましくは化合物(a-III)または化合物(a-V)である。
【0244】
本発明の工程(1)で使用する核酸bは、5’位水酸基が保護基(一時保護基)で保護されている。水酸基の保護基としては、酸性条件下で脱保護が可能であり、且つ水酸基の保護基として用いられるものであれば、特に限定はされないが、例えば、トリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、1,1-ビス(4-メトキシフェニル)-1-フェニルメチル基(ジメトキシトリチル基)等のビス(C1-6アルコキシ)トリチル基、1-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジフェニルメチル基(モノメトキシトリチル基)等のモノ(C1-18アルコキシ)トリチル基等を挙げることができる。これらの中でも、脱保護のしやすさ、入手の容易さの観点から、水酸基の一時保護基は、モノメトキシトリチル基またはジメトキシトリチル基であることが好ましく、ジメトキシトリチル基であることがより好ましい。
【0245】
核酸bにおける3’位水酸基または3’位アミノ基がホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法による修飾は、前記工程(1)の説明中で述べられた通り、当技術分野で公知の方法に従って行うことができる。
【0246】
核酸bの製造方法の一例としてホスホロアミダイト法を適用する場合については、例えば、国際公開第2017/104836号の記載を参照することができる。
【0247】
核酸bとしては、例えば、下記式(b-I)で表される化合物(即ち、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド)が挙げられる。
【0248】
【0249】
[式中、
qは、0以上の整数を示し;
q+1個のBase2は、それぞれ独立して、-L-X-Zおよび核酸合成に用いられる保護基から選ばれる保護基で保護されていてもよい核酸塩基を示し;
q+1個のX、q+1個のRp1、q個のR10、L、XおよびZは、それぞれ独立して、前記と同義であり;
q+1個のXn1は、それぞれ独立して、酸素原子またはNHを示し;
Q”は、酸性条件下で除去可能な水酸基の一時保護基を示し;
R36およびR37は、それぞれ独立して、アルキル基を示すか、または隣接する窒素原子と一緒になって形成する5または6員の飽和環状アミノ基を示し、かかる飽和環状アミノ基は、窒素原子の他に環構成原子として酸素原子または硫黄原子を1個有していてもよい。]
【0250】
R36およびR37は、それぞれ独立して、好ましくはC1-10アルキル基であるか、または隣接する窒素原子と一緒になって形成する5または6員の飽和環状アミノ基であり、より好ましくはC1-10アルキル基であり、さらに好ましくはC1-6アルキル基である。
【0251】
酸性条件下で除去可能な水酸基の一時保護基の説明は、前記の通りである。Q”は、好ましくはモノメトキシトリチル基またはジメトキシトリチル基であり、より好ましくはジメトキシトリチル基である。
【0252】
式(b-I)中の核酸塩基のアミノ基は、保護基で保護されていることが好ましい。該保護基としては、-L-X-Zおよび核酸合成に用いられる保護基から選ばれる保護基が挙げられる。L、XおよびZの説明は、前記の通りである。核酸合成に用いられる保護基としては、アセチル基、フェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、(2-ヘキシル)デカノイル基、ジメチルホルムアミジニル基、および=NC(R11)-N(R12)(R13)基(式中、R11は、メチル基を示し、R12およびR13は、それぞれ独立してC1-5アルキル基を示すか、またはR11およびR12が一緒になって、それらが結合する炭素原子および窒素原子と共に5員または6員の含窒素炭化水素環を形成していてもよい。)が好ましい。なお、前記=NC(R11)-N(R12)(R13)基としては、例えば1-(ジメチルアミノ)エチリデン基が挙げられる。化合物(b-I)が複数のアミノ基を有する場合、アミノ基の保護基は1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0253】
qが0である場合、化合物(b-I)はヌクレオシドであり、qが1以上である場合、化合物(b-I)はオリゴヌクレオチドである。本工程で使用する化合物(b-I)において、qは、49以下が好ましく、29以下がより好ましく、19以下がさらに好ましく、4以下が特に好ましく、2以下が最も好ましい。
【0254】
q+1個のXは、それぞれ独立して、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、または保護されていてもよい水酸基であり、より好ましくは水素原子または保護されていてもよい水酸基である。
Base2は、それぞれ独立して、好ましくは核酸合成に用いられる保護基から選ばれる保護基で保護されていてもよい核酸塩基である。
q+1個のRp1は、それぞれ独立して、好ましくはCH2CH2WGで表される基である。
q+1個のXn1は、好ましくは酸素原子である。
L、XおよびZの説明は、前記の通りである。
化合物(b-I)は、好ましくは下記式(b-i)で表される化合物である。
【0255】
【0256】
[式中、
q+1個のBase3は、それぞれ独立して、核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよい核酸塩基を示し、
q、q+1個のX、q+1個のRp1、q個のR10、Q”、R36およびR37は、それぞれ独立して、前記と同義である。]
【0257】
式(b-i)中、核酸合成に用いられる保護基、q、q+1個のX、q+1個のRp1、q個のR10、Q”、R36およびR37の説明は、前記の通りである。
【0258】
本発明の工程(1)で使用する核酸aあるいは核酸αと核酸bとの組合せは、
好ましくは化合物(a-I)、化合物(a-VI)または化合物(a-VII)と化合物(b-I)との組合せであり、
より好ましくは化合物(a-i)、化合物(a-vi)または化合物(a-vii)と化合物(b-i)との組合せであり、
より一層好ましくは化合物(a-i)または化合物(a-vi)と化合物(b-i)との組合せであり、
さらに好ましくは化合物(a-i)と化合物(b-i)との組合せであり、
さらに一層好ましくは化合物(a-II)または化合物(a-IV)と化合物(b-i)との組合せであり、
特に好ましくは化合物(a-III)または化合物(a-V)と化合物(b-i)との組合せである。
【0259】
以上、本発明のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法について詳述した。この製造方法は、現在当技術分野の核酸鎖の鎖伸長反応において一般的である「3’側から5’側の方向」への核酸鎖の伸長によるホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法となる。核酸Aが、5’位水酸基が保護されておらず、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである場合が好ましいが、本発明のホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法は、これとは逆方向の「5’側から3’側の方向」への核酸鎖の伸長によるホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造にも適用することができる。この「5’側から3’側の方向」への核酸鎖の伸長によるホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造は、以下に示される方法によって行うことができる。
【0260】
[A]3’位水酸基または3’位アミノ基が保護されておらず、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよく、もしくは固相担体に結合していてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(核酸A-1)(好ましくは、核酸A-1における3’位は水酸基である)と、5’位水酸基がホスファイト体または亜リン酸ジエステル体の形成のための方法(例えば、ホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法およびオキサザホスホリジン法から選択される方法)により修飾されており、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(核酸B-1)とを、酸化防止剤の存在下に縮合させて、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル体を得る工程(工程(1-1))、
を含むホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
[B]3’位水酸基または3’位アミノ基が保護されておらず、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよく、もしくは固相担体に結合していてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(核酸A-1)(好ましくは、核酸A-1における3’位は水酸基である)と、5’位水酸基がホスファイト体または亜リン酸ジエステル体の形成のための方法(例えば、ホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法、およびオキサザホスホリジン法から選択される方法)により修飾されており、かつその他の基が核酸合成に用いられる保護基で保護されていてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(核酸B-1)とを、酸化防止剤の存在下に縮合させて、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル体を得る工程(工程(1-1))、さらに、
得られたホスファイト体または亜リン酸ジエステル体を硫化剤と反応させる工程(工程(2-1))、を含む、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法。
【0261】
なお、3’位に水酸基を有する核酸A-1に代えて、3’位にアミノ基を有する核酸A-1を用いて、ホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法、ジハロホスフィン法、およびオキサザホスホリジン法などの方法を適用して縮合体を得る場合、3’位とリン原子との結合が、-O-P結合に代わって-N-P結合となるが、この場合も本明細書中では-O-P結合である場合に準じて便宜上「ホスファイト体」または「亜リン酸ジエステル体」と称することとする。また対応する「PO不純物」についても、同様に「ホスホトリエステル体」または「ホスホジエステル体」と称することとする。
【0262】
上記の2工程を含む製造方法における「酸化防止剤」、「硫化剤」、「核酸A-1」、「核酸B-1」などの各構成要素の定義や2工程の詳細な反応条件などは、上記「3’側から5’側の方向」への核酸鎖の伸長によるホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法において詳述された各構成要素の定義や各工程の反応条件と同様である。これらを参照して、当業者であれば「5’側から3’側の方向」への核酸鎖の伸長によるホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造を適宜行うことができる。
【0263】
本発明においては、5’位水酸基が保護されておらず、かつその他の基が核酸合成に用いられる固相担体に結合していてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(以下、「核酸A」と称する場合がある)や、3’位水酸基または3’位アミノ基が保護されておらず、かつその他の基が核酸合成に用いられる固相担体に結合していてもよいヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(核酸A-1)を使用して、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドを製造する方法も含む。固相条件下で本発明の製造方法が実施される場合には、核酸Aまたは核酸A-1の一つの基は固相担体に結合する。固相担体として用いられる固相支持体または樹脂は、固相合成での使用に適した当技術分野において知られているあらゆる支持体でありうる。本明細書中、「固相」という用語は、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドが慣用される機能的リンカー又はハンドル基を介して上記の固相支持体又は樹脂に結合又はリンクされることを含んでおり、本文脈で「固相」と言うときにはこのようなリンカーも含意している。固相の例は、例えば、ポリスチレン支持体(例えばp-メチルベンジル-ヒドリルアミンによってさらに機能化されてもよい)、又は、珪藻土封入ポリジメチルアクリルアミド(ペプシンK)、シリカ又は微細孔性ガラスなどの剛直な機能化支持体である。固相の樹脂マトリクスは、両親媒性のポリスチレン-PEG樹脂又はPEG-ポリアミド又はPEG-ポリエステル樹脂によって構成されてもよい。固相担体として、例えば、Wang-PEG レジンやRink-アミド PEG レジンが含まれる。
【実施例】
【0264】
以下、実施例に沿って本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。また、本発明において使用する試薬や装置、材料は特に言及されない限り、商業的に入手可能である。また、本明細書において、アミノ酸等を略号で表示する場合、各表示は、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものである。
【0265】
後述の実施例等で使用する略号の意味は、以下の通りである。
SUC: スクシニル
TOB: 3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ
2’-OMe-C-CE ホスホロアミダイト: 5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-2’-O-メチル-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト
DDTT: 5-[(N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ]-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン
ETT: 5-エチルチオ-1H-テトラゾール
TFE: 2,2,2-トリフルオロエタノール
TOF-MS: 飛行時間型質量分析計
HO-CmT-SUC-TOB: (2’-O-メチル-シチジン 3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル チミジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート)
HO-CmCmT-SUC-TOB: (2’-O-メチル-シチジン 3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル 2’-O-メチル-シチジン 3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル チミジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート)
HO-CmCmCmT-SUC-TOB: (2’-O-メチル-シチジン 3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル 2’-O-メチル-シチジン 3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル 2’-O-メチル-シチジン 3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル チミジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート)
HO-CmCmCmCmT-SUC-TOB: (2’-O-メチル-シチジン 3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル(2’-O-メチル-シチジン 3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル 2’-O-メチル-シチジン 3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル 2’-O-メチル-シチジン 3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル チミジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート)
T-CE ホスホロアミダイト: 5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-チミジン-3’-[O-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト
HO-TT-SUC-TOB: (チミジン 3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル チミジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート)
POS:5-フェニル-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-オン
【0266】
Piv-TOB: 3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル ピバレート
PADS: フェニルアセチルジスルフィド
DMTr: 4,4’-ジメトキシトリチル
LC-TOF MS: 液体クロマトグラフ-飛行時間型質量分析計
DBU: 1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン
PivCl: ピバロイルクロリド
CMPT:N-(シアノメチル)ピロリジニウムトリフラート
【0267】
2’-OMe-C-CE ホスホロアミダイト: 5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-N4-ベンゾイル-2’-O-メチル-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト
2’-OMe-G-CE ホスホロアミダイト: 5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-N2-イソブチリル-2’-O-メチル-グアノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト
【0268】
5-Me-dC(Bz)-CE ホスホロアミダイト: 5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-N4-ベンゾイル-2’-デオキシ-5-メチルシチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト
dG-CE ホスホロアミダイト: 5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-N2-イソブチリル-デオキシグアノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト
dT-CE ホスホロアミダイト: 5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-デオキシグチミジン-3’-[O-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト
【0269】
2’-O-TBDMS-C(Ac)-CE ホスホロアミダイト: 5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-N4-アセチル-2’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト
【0270】
LNA-A(Bz)-CE ホスホロアミダイト: 5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-N6-ベンゾイル-2 ’-O,4 ’-C-メチレン-アデノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト
【0271】
2’-F-C(Bz)-CE ホスホロアミダイト: 5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-N4-ベンゾイル-2’-フルオロ-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト
【0272】
dT-H-ホスホネート TEA 塩: 5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-デオキシチミジン-3’-H-ホスホネート,トリエチルアミン塩
【0273】
HO-T-SUC-TOB: デオキシチミジン-3’-イル 3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル スクシネート
HO-C-SUC-TOB: N4-ベンゾイル-デオキシシチジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-TC-SUC-TOB: デオキシチミジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N4-ベンゾイル-デオキシシチジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
【0274】
DMTrO-A・T・C・G・A・C・T・C・T・C・G・A・G・C・G・T・T・C・T・C-SUC-TOB(式中、「・」は、ホスホロチオニル結合を意味する。):
5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)- N6-[1-(ジメチルアミノ)エチリデン]-デオキシアデノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル-デオキシチミジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N4-ベンゾイル-デオキシシチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N2-イソブチリル-デオキシグアノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N6-[1-(ジメチルアミノ)エチリデン]--デオキシアデノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N4-ベンゾイル-デオキシシチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル-デオキシチミジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N4-ベンゾイル-デオキシシチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル-デオキシチミジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N4-ベンゾイル-デオキシシチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N2-イソブチリル-デオキシグアノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N6-[1-(ジメチルアミノ)エチリデン]--デオキシアデノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N2-イソブチリル-デオキシグアノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N4-ベンゾイル-デオキシシチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N2-イソブチリル-デオキシグアノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル-デオキシチミジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル-デオキシチミジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N4-ベンゾイル-デオキシシチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル-デオキシチミジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N4-ベンゾイル-デオキシシチジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
【0275】
HO-CmT-SUC-TOB: N4-ベンゾイル-2’-O-メチル-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル デオキシチミジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-GmCmT-SUC-TOB: N2-イソブチリル-2’-O-メチル-グアノシン 3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホリル N4-ベンゾイル-2’-O-メチル-シチジン 3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル デオキシチミジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-2’-OMe-U-SUC-TOB: 2’-O-メチル-ウリジン-3’-イル 3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル スクシネート
HO-Um-SUC-TOB: 2’-O-メチル-ウリジン-3’-イル 3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル スクシネート
HO-CmUm-SUC-TOB: N4-ベンゾイル-2’-O-メチル-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル 2’-O-メチル-ウリジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-GUm-SUC-TOB: N2-イソブチリル-デオキシグアノシン 3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル 2’-O-メチル-ウリジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-ALT-SUC-TOB: N6-ベンゾイル-2’-O,4’-C-メチレン-アデノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル デオキシチミジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-CfALT-SUC-TOB: N4-ベンゾイル-2’-フルオロ-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N6-ベンゾイル-2’-O,4’-C-メチレン-アデノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル デオキシチミジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-rCCfALT-SUC-TOB: N4-アセチル-2’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N4-ベンゾイル-2’-フルオロ-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N6-ベンゾイル-2’-O,4’-C-メチレン-アデノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル デオキシチミジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-(CH2)2-SUC-TOB: 3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル 2-ヒドロキシエチル スクシネート
HO-AL(CH2)2-SUC-TOB: N6-ベンゾイル-2’-O,4’-C-メチレン-アデノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル エチルオキシ-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-CfAL(CH2)2-SUC-TOB: N4-ベンゾイル-2’-フルオロ-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N6-ベンゾイル-2’-O,4’-C-メチレン-アデノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル エチルオキシ-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-rCCfAL(CH2)2-SUC-TOB: N4-アセチル-2’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N4-ベンゾイル-2’-フルオロ-シチジン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル N6-ベンゾイル-2’-O,4’-C-メチレン-アデノシン-3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル エチルオキシ-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-THT-SUC-TOB: デオキシチミジン-3’-ホスホネート デオキシチミジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-TOHT-SUC-TOB:デオキシチミジン-3’-ホスホロチオニル デオキシチミジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-GmT-SUC-TOB: N2-イソブチリル-2’-O-メチル-グアノシン 3’-[O-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル デオキシチミジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
HO-TSCNEtT-SUC-TOB:デオキシチミジン-3’-[S-(2-シアノエチル)]ホスホロチオニル デオキシチミジン-3’-イル-[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンジル]スクシネート
【0276】
以下、TOB付加化合物は、国際公開第2012/157723号に記載された方法により合成した。また、実施例や比較例で使用する2’-OMe-C-CE ホスホロアミダイト等のホスホロアミダイトモノマーは、市販のものを用いた。
【0277】
実施例1:ホスホロチオエート化2~5量体の合成(酸化防止剤有りの場合)
アルゴン雰囲気下、50mLの二口フラスコにHO-T-SUC-TOB(248.2mg, 0.20mmol)を入れ、脱水ジクロロメタン(10.0mL)と脱水アセトニトリル(1.0mL)を加え溶解させた後、2’-OMe-C-CE ホスホロアミダイト(518.5mg, 0.60mmol)とメチルジフェニルホスフィン(37.8μL, 0.20mmol)を加え、30分間撹拌した。その後、ETT(5-エチルチオ-1H-テトラゾール 、78.1mg, 0.60mmol)を加え室温で1時間撹拌した。
続いて、反応溶液にTFE(2,2,2-トリフルオロエタノール、219μL, 3.01mmol)を加え室温で30分間撹拌した後、2,6-キシリジン(638μL, 5.18mmol)とDDTT(5-[(N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ]-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン、215.6mg, 1.05mmol)を順次加え、室温で1時間撹拌した。得られた2量体(2merのように表記する場合がある。以下同様。)を分析したところ、PO不純物は0.09%であった。
m/z(TOF-MS):Calcd.1729.07, Found 1730.08 [M+H]+
上記と同様にして伸長した2量体HO-CmT-SUC-TOB(279.6mg, 0.16mmol)と2’-OMe-C-CE ホスホロアミダイト(419.2mg, 0.485mmol)を用いて3量体HO-CmCmT-SUC-TOBを合成した(290.8mg)。得られた3量体を分析したところ、PO不純物は0.25%であった。
m/z(TOF-MS):Calcd.2221.16, Found 2222.17 [M+H]+
同様にして伸長した3量体HO-CmCmT-SUC-TOB(290.8mg, 0.13mmol)と2’-OMe-C-CE ホスホロアミダイト(340.3mg, 0.394mmol)を用いて4量体HO-CmCmCmT-SUC-TOBを合成した(283.0mg)。得られた4量体を分析したところ、0.27%のPO不純物が含まれていた。
m/z(TOF-MS):Calcd.2713.24, Found 2714.23 [M+H]+
同様にして伸長した4量体HO-CmCmCmT-SUC-TOB(283.0mg, 0.10mmol)と2’-OMe-C-CE ホスホロアミダイト(270.1mg, 0.313mmol)を用いて5量体HO-CmCmCmCmT-SUC-TOBを合成した(254mg)。得られた5量体を分析したところ、0.30%のPO不純物が含まれていた。
m/z(TOF-MS):Calcd.3205.33, Found 1604.69 [M+2H]2+
酸化防止剤有りの場合における、各鎖長でのPO不純物の含有割合を表1に示す。
【0278】
【0279】
比較例1:ホスホロチオエート化2~5量体の合成(酸化防止剤無しの場合)
アルゴン雰囲気下、50mLの二口フラスコにHO-T-SUC-TOB(247.6mg, 0.20mmol)を入れ、脱水ジクロロメタン(10.0mL)と脱水アセトニトリル(1.0mL)を加え溶解させた後、2’-OMe-C-CE ホスホロアミダイト(518.4mg, 0.60mmol)とETT(5-エチルチオ-1H-テトラゾール 、78.1mg, 0.60mmol)を順次加え室温で1時間撹拌した。続いて、反応溶液にTFE(2,2,2-トリフルオロエタノール、218.6μL, 3.0mmol)を加え室温で30分間撹拌した後、2,6-キシリジン(380.6μL, 3.0mmol)とDDTT(5-[(N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ]-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン、129.3mg, 0.63mmol)を順次加え、室温で1時間撹拌した。得られた2量体を分析したところ、PO不純物は0.11%であった。
m/z(TOF-MS):Calcd.1729.07, Found 1730.08 [M+H]+
上記と同様にして2量体HO-CmT-SUC-TOB(297.4mg, 0.17mmol)と2’-OMe-C-CE ホスホロアミダイト(445.5mg, 0.52mmol)を用いて3量体HO-CmCmT-SUC-TOBを合成した(349.1mg)。得られた3量体を分析したところ、PO不純物は0.46%であった。
m/z(TOF-MS):Calcd.2221.16, Found 2222.17 [M+H]+
同様にして3量体HO-CmCmT-SUC-TOB(349.1mg, 0.16mmol)と2’-OMe-C-CE ホスホロアミダイト(407.5mg, 0.47mmol)を用いて4量体HO-CmCmCmT-SUC-TOBを合成した(415.3mg)。得られた4量体を分析したところ、PO不純物は0.68%であった。
m/z(TOF-MS):Calcd.2713.24, Found 2714.23 [M+H]+
同様にして4量体HO-CmCmCmT-SUC-TOB(415.3mg, 0.15mmol)と2’-OMe-C-CE ホスホロアミダイト(399.2mg, 0.46mmol)を用いて5量体HO-CmCmCmCmT-SUC-TOBを合成した(439.3mg)。得られた5量体を分析したところ、PO不純物は0.99%であった。
m/z(TOF-MS):Calcd.3205.33, Found 1604.69 [M+2H]2+
酸化防止剤無しの場合における、各鎖長でのPO不純物の含有割合を表2に示す。
【0280】
【0281】
実施例2:ホスホロチオエート化2量体からの3量体の合成(各種酸化防止剤有りの場合)
アルゴン雰囲気下、20mLの二口フラスコに、実施例1において2’-OMe-C-CE ホスホロアミダイトの代わりにT-CE ホスホロアミダイトを用いることにより、実施例1と同様にして合成したHO-TT-SUC-TOB(56.4mg, 0.035mmol)を入れ、脱水ジクロロメタン(1.8mL)と脱水アセトニトリル(0.5mL)を加え溶解させた後、2’-OMe-C-CE ホスホロアミダイト(91.8mg, 0.105mmol)と各種酸化防止剤(0.035mmol)を加え、30分間撹拌した。その後、ETT(5-エチルチオ-1H-テトラゾール 、14mg, 0.105mmol)を加え室温で3時間撹拌した。続いて、反応溶液にTFE(2,2,2-トリフルオロエタノール、38.4μL, 0.53mmol)を加え室温で2時間撹拌した後、2,6-キシリジン(50.2μL, 0.407mmol)とPOS(5-フェニル-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-オン、33.3mg, 0.171mmol)を順次加え、室温で1時間撹拌後、各反応溶液を分析した。PO不純物の含有割合に関する結果を表3に示す。
【0282】
比較例2:ホスホロチオエート化2量体から3量体の合成(酸化防止剤無しの場合)
実施例2の各種酸化防止剤(0.035mmol)を含まないこと以外は、実施例2と同様にして行った。PO不純物の含有割合に関する結果を表3に示す。
【0283】
【0284】
以下、酸化防止剤の存在下における種々のホスホロチオエート化オリゴマーの合成例を示す。
【0285】
実施例3:ホスホロチオエート化4量体の合成(ホスホロアミダイト法)
伸長反応
アルゴン雰囲気下、200mLの二口フラスコにHO-T-SUC-TOB(300mg,242μmol)とPiv-TOB (450mg,451μmol)を入れ、脱水ジクロロメタン(12.1mL)と脱水アセトニトリル(3.6mL)を加え溶解させた。その後、トリフェニルホスフィン(31.8mg,121μmol)とLNA-A(Bz)-CE ホスホロアミダイト(644mg,727μmol)と5-エチルチオ-1H-テトラゾール (94.6mg,727μmol)を順次加え室温で1.0時間撹拌した。
続いて、反応溶液に2,2,2-トリフルオロエタノール (265μL,3.6mmol)を加え室温で30分撹拌した後、2,6-キシリジン (506μL,4.1mmol)とDDTT (174mg,848μmol)を順次加え、室温で1.7時間撹拌した。その後、インドール(424mg,3.6mmol)とトリフルオロ酢酸(1.1mL,14.4mmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。続いて反応溶液にピリジン(3.5mL,43.0mmol)と水(180μL)を順次加え、室温にて1.0時間撹拌した。その後、アセトニトリル(112mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し、2量体HO-ALT-SUC-TOBを白色固体として得た。(829.9mg、95%)
m/z:Calcd.1751.07, Found 1753.09[M+H]+
上記と同様にして、上記で得られた白色固体(830mg)と2’-F-C(Bz)-CE ホスホロアミダイト、5-エチルチオ-1H-テトラゾールの代わりに4,5-ジシアノイミダゾールを用いて3量体HO-CfALT-SUC-TOBを白色固体として得た。(780.1mg、83%)
m/z:calcd.2231.13, found 1117.07[M+2H]2+
同様にして、上記で得られた白色固体(718mg)と2’-O-TBDMS-C(Ac)-CE ホスホロアミダイト、4,5-ジシアノイミダゾール5-の代わりにエチルチオ-1H-テトラゾールを用いて4量体HO-rCCfALT-SUC-TOBを白色固体として得た。(758.5mg、94%)
m/z:calcd.2761.27, found 1382.15 [M+2H]2+
脱保護反応
上記で得られた白色固体(10mg)と28%アンモニア水(5mL)をオートクレーブに入れて、65℃で4時間加熱した後、室温まで冷却した。シリンジフィルターにより反応液中の不溶物を除去した後、遠心エバポレーターで減圧濃縮した。その後、濃縮液を凍結乾燥し目的物である2’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-シチジン-3’-ホスホロチオニル-2’-フルオロ-シチジン-3’-ホスホロチオニル-2’-O,4’-C-メチレン-アデノシン-3’-ホスホロチオニル-デオキシチミジンを得た。
m/z:calcd.1357.24,found 1356.23[M-H]-
【0286】
実施例4:ホスホロチオエート化2量体の合成(ホスホロアミダイト法)
アルゴン雰囲気下、1000mLの三口フラスコにHO-C-SUC-TOB(3.0g,2.3mmol)とPiv-TOB (3.0g,3mmol)を入れ、脱水クロロホルム(113mL)と脱水アセトニトリル(34mL)を加え溶解させた。その後、トリフェニルホスフィン(296mg,1.1mmol)とdT-CE ホスホロアミダイト(3.7g,5.0mmol)と5-エチルチオ-1H-テトラゾール (648mg,5.0mmol)を順次加え室温で1.5時間撹拌した。
続いて、反応溶液に2,2,2-トリフルオロエタノール (1.8mL,24.9mmol)を加え室温で30分撹拌した後、2,6-キシリジン (2.2mL,17.6mmol)とPOS(1.2g,6.1mmol)を順次加え、室温で1.5時間撹拌した。
その後、2,3-ジメチルフラン(2.6mL,24.8mmol)とトリフルオロ酢酸(5.6mL,72.8mmol)を順次加え、室温で1.5時間撹拌した。続いて反応溶液にピリジン(44.1mL,546mmol)と水(960μL)を順次加え、室温にて1.5時間撹拌した。その後、アセトニトリル(1L)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し、2量体HO-TC-SUC-TOBを白色固体として得た。(6.7g、99%)
【0287】
実施例5:ホスホロチオエート化3量体の合成(ホスホロアミダイト法)
伸長反応
HO-T-SUC-TOBの代わりにHO-(CH2)2-SUC-TOB(256mg)を用いて実施例3と同様にして、HO-AL(CH2)2-SUC-TOB、続いて2量体HO-CfAL(CH2)2-SUC-TOB、最後に3量体HO-rCCfAL(CH2)2-SUC-TOBを白色固体として得た。(691mg)
m/z:calcd.2581.22, found 1292.11 [M+2H]2+
脱保護反応
上記で得られた白色固体(10mg)と28%アンモニア水(5mL)をオートクレーブに入れて、65℃で4時間加熱した後、室温まで冷却した。シリンジフィルターにより反応液中の不溶物を除去した後、遠心エバポレーターで減圧濃縮した。その後、濃縮液を凍結乾燥し目的物である2-[2’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)-シチジン-3’-ホスホロチオニル-2’-フルオロ-シチジン-3’-ホスホロチオニル-2’-O,4’-C-メチレン-アデノシン-3’-ホスホロチオニル]エタノールを得た。
m/z:calcd.1177.18,found 1176.18[M-H]-
【0288】
実施例6:ホスホロチオエート化20量体の合成(ホスホロアミダイト法)
伸長反応
クロロホルムの代わりにジクロロメタンを用い、実施例4と同様の操作を18回繰り返し、20量体DMTrO-A・T・C・G・A・C・T・C・T・C・G・A・G・C・G・T・T・C・T・C-SUC-TOB(式中、「・」は、ホスホロチオニル結合を意味する。)を白色固体として得た。(8.5g)
脱保護反応
得られた白色固体(5mg)と28%アンモニア水(5mL)をオートクレーブに入れて、65℃で4時間加熱した後、室温まで冷却した。シリンジフィルターにより反応液中の不溶物を除去した後、遠心エバポレーターで減圧濃縮した。その後、濃縮液を凍結乾燥し目的物である5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-デオキシアデノシン-3’-ホスホロチオニル-デオキシチミジン-3’-ホスホロチオニル-デオキシシチジン-3’-ホスホロチオニル-デオキシグアノシン-3’-ホスホロチオニル-デオキシアデノシン-3’-ホスホロチオニル-デオキシシチジン-3’-ホスホロチオニル-デオキシチミジン-3’-ホスホロチオニル-デオキシシチジン-3’-ホスホロチオニル-デオキシチミジン-3’-ホスホロチオニル-デオキシシチジン-3’-ホスホロチオニル-デオキシグアノシン-3’-ホスホロチオニル-デオキシアデノシン-3’-ホスホロチオニル-デオキシグアノシン-3’-ホスホロチオニル-デオキシシチジン-3’-ホスホロチオニル-デオキシグアノシン-3’-ホスホロチオニル-デオキシチミジン-3’-ホスホロチオニル-デオキシチミジン-3’-ホスホロチオニル-デオキシシチジン-3’-ホスホロチオニル-デオキシチミジン-3’-ホスホロチオニル-デオキシシチジンを得た。
m/z:calcd.6648.73,found 1661.67[M-4H]4ー
【0289】
実施例7:ホスホロチオエート化2量体の合成(H-ホスホネート法)
アルゴン雰囲気下、50mLの二口フラスコにHO-T-SUC-TOB(100mg,80.8μmol)とdT-H-ホスホネート TEA 塩(116.0mg,163μmol)とトリフェニルホスフィン(10.0mg,38.1μmol)を入れ、脱水ジクロロメタン(2.0mL)と脱水ピリジン(2.0mL)を加え溶解させた。その後、PivCl(29.5μl,242μmol)を加え室温で1.0時間撹拌した。
続いて、反応溶液にDBU(48.4μL,324μmol)とDDTT(34.3mg,167μmol)を加え室温で30分撹拌した。その後、アセトニトリル(30mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し白色固体(145.7mg)を得た。得られた固体をアルゴン雰囲気下、50mLの二口フラスコに入れ、脱水ジクロロメタン(4.0mL)と脱水アセトニトリル(1.2mL)を加え溶解させた。
その後、インドール(46.3mg,395μmol)とトリフルオロ酢酸(72.6μL,948μmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。続いて反応溶液にピリジン(220μL,2.7mmol)と水(42μL)を順次加え、室温にて1.0時間撹拌した。その後、アセトニトリル(30mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し2量体HO-TOHT-SUC-TOBを白色固体として得た。(85.9mg、71%)
m/z:calcd.1557.01, found 1558.02 [M+H]+
【0290】
実施例8:ホスホロチオエート化2量体の合成(H-ホスホネート法)
アルゴン雰囲気下、50mLの二口フラスコにHO-T-SUC-TOB(101mg,81.3μmol)とdT-H-ホスホネート TEA 塩(115.4mg,163μmol)とトリフェニルホスフィン(10.8mg,41.1μmol)を入れ、脱水ジクロロメタン(2.0mL)と脱水ピリジン(2.0mL)を加え溶解させた。その後、PivCl(29.5μl,242μmol)を加え室温で1.0時間撹拌した。その後、アセトニトリル(30mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過し白色固体(145.2mg)を得た。得られた固体をアルゴン雰囲気下、50mLの二口フラスコに入れ、脱水ジクロロメタン(4.0mL)と脱水アセトニトリル(1.2mL)を加え溶解させた。
その後、インドール(47.2mg,403μmol)とトリフルオロ酢酸(73.0μL,953μmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。続いて反応溶液にピリジン(230μL,2.8mmol)と水(42μL)を順次加え、室温にて1.0時間撹拌した。その後、アセトニトリル(30mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し2量体HO-THT-SUC-TOBを白色固体として得た。(104mg、86%)
m/z:calcd.1525.03, found 1526.05[M+H]+
【0291】
実施例9:ホスホロチオエート化2量体の合成(硫化剤:PADS)
アルゴン雰囲気下、50mLの二口フラスコにHO-T-SUC-TOB(98.8mg,79.6μmol)とPiv-TOB (102mg,103μmol)を入れ、脱水ジクロロメタン(4.0mL)と脱水アセトニトリル(1.2mL)を加え溶解させた。その後、トリフェニルホスフィン(13.2mg,50.3μmol)と2’-OMe-G-CE ホスホロアミダイト(144mg,165μmol)と5-エチルチオ-1H-テトラゾール(21.2mg,163μmol)を順次加え室温で1.0時間撹拌した。
続いて、反応溶液に2,2,2-トリフルオロエタノール(58.9μL,810μmol)を加え室温で30分撹拌した後、2,6-キシリジン(71.2μL,577μmol)とビスフェニルアセチルジスルフィド(62.9mg,208μmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。その後、インドール(98.2mg,838μmol)とトリフルオロ酢酸(220μL,2.87mmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。
続いて、反応溶液にピリジン(690μL,8.6mmol)とメタノール(57μL)を順次加え、室温にて1.0時間撹拌した。その後、アセトニトリル(37mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し2量体HO-GmT-SUC-TOBを白色固体として得た。(222.7mg、93%)
m/z(TOF-MS):Calcd.1735.09, Found 1737.11[M+H]+
【0292】
実施例10:ホスホロチオエート化2量体の合成(硫化剤:キサンタンヒドリド)
アルゴン雰囲気下、50mLの二口フラスコにHO-T-SUC-TOB(96.8mg,78.2μmol)とPiv-TOB (99.3mg,99.5μmol)を入れ、脱水ジクロロメタン(4.0mL)と脱水アセトニトリル(1.2mL)を加え溶解させた。その後、トリフェニルホスフィン(11.5mg,43.8μmol)と2’-OMe-G-CE ホスホロアミダイト(140mg,161μmol)と5-エチルチオ-1H-テトラゾール(20.9mg,161μmol)を順次加え室温で1.0時間撹拌した。
続いて、反応溶液に2,2,2-トリフルオロエタノール(58.9μL,810μmol)を加え室温で30分撹拌した後、2,6-キシリジン(71.2μL,577μmol)とキサンタンヒドリド(31.2mg,208μmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。
その後、インドール(96.5mg,824μmol)とトリフルオロ酢酸(220μL,2.87mmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。続いて、反応溶液にピリジン(690μL,8.6mmol)とメタノール(57μL)を順次加え、室温にて1.0時間撹拌した。その後、アセトニトリル(37mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し2量体HO-GmT-SUC-TOBを白色固体として得た。(217.9mg、91%)
m/z(TOF-MS):Calcd.1735.09, Found 1737.11[M+H]+
【0293】
実施例11:ホスホロチオエート化2量体の合成(硫化剤:硫黄)
アルゴン雰囲気下、50mLの二口フラスコにHO-T-SUC-TOB(101mg,81.3μmol)とPiv-TOB(98.7mg,98.9μmol)を入れ、脱水ジクロロメタン(4.0mL)と脱水アセトニトリル(1.2mL)を加え溶解させた。その後、トリフェニルホスフィン(12.0mg,45.8μmol)と2’-OMe-G-CE ホスホロアミダイト(141mg,162μmol)と5-エチルチオ-1H-テトラゾール(21.9mg,168μmol)を順次加え室温で1.0時間撹拌した。
続いて、反応溶液に2,2,2-トリフルオロエタノール(58.9μL,810μmol)を加え室温で30分撹拌した後、2,6-キシリジン(71.2μL,577μmol)と硫黄(13.0mg,405μmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。
その後、インドール(96.0mg,819μmol)とトリフルオロ酢酸(220μL,2.87mmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。続いて反応溶液にピリジン(690μL,8.6mmol)とメタノール(57μL)を順次加え、室温にて1.0時間撹拌した。その後、アセトニトリル(37mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し2量体HO-GmT-SUC-TOBを白色固体として得た。(221.2mg、92%)
m/z(TOF-MS):Calcd.1735.09, Found 1737.11[M+H]+
【0294】
実施例12:ホスホロチオエート化2量体の合成(脱保護:トリクロロ酢酸)
アルゴン雰囲気下、50mLの二口フラスコにHO-Um-SUC-TOB(102.4mg,81.7μmol)とPiv-TOB (105mg,105μmol)を入れ、脱水ジクロロメタン(4.0mL)と脱水アセトニトリル(1.2mL)を加え溶解させた。その後、トリフェニルホスフィン(9.8mg,37.3μmol)とdG-CE ホスホロアミダイト(135.1mg,161μmol)と5-エチルチオ-1H-テトラゾール(21.4mg,164μmol)を順次加え室温で1.0時間撹拌した。
続いて、反応溶液に2,2,2-トリフルオロエタノール(58.1μL,797μmol)を加え室温で30分撹拌した後、2,6-キシリジン(118μL,955μmol)とDDTT(40.9mg,199μmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。
その後、インドール(93.6mg,799μmol)とトリクロロ酢酸(698mg,4.27mmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。続いて反応溶液にピリジン(1.01mL,12.6mmol)と水(66μL)を順次加え、室温にて1.0時間撹拌した。その後、アセトニトリル(42mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し2量体HO-GUm-SUC-TOBを白色固体として得た。(241.5mg)
m/z(TOF-MS):calcd.1721.07, found 1723.10[M+H]+
【0295】
実施例13:ホスホロチオエート化2量体の合成(脱保護:ジクロロ酢酸)
アルゴン雰囲気下、50mLの二口フラスコにHO-Um-SUC-TOB(99.6mg,79.4μmol)とPiv-TOB (97.9mg,98.0μmol)を入れ、脱水ジクロロメタン(4.0mL)と脱水アセトニトリル(1.2mL)を加え溶解させた。その後、トリフェニルホスフィン(10.8mg,41.1μmol)とdG-CE ホスホロアミダイト(134.2mg,160μmol)と5-エチルチオ-1H-テトラゾール(20.9mg,161μmol)を順次加え室温で1.0時間撹拌した。
続いて、反応溶液に2,2,2-トリフルオロエタノール(58.1μL,797μmol)を加え室温で30分撹拌した後、2,6-キシリジン(118μL,955μmol)とDDTT(40.9mg,199μmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。
その後、インドール(93.2mg,796μmol)とジクロロ酢酸(478μl,5.78mmol)を順次加え、室温で1.0時間撹拌した。続いて反応溶液にピリジン(1.40mL,17.4mmol)と水(61μL)を順次加え、室温にて1.0時間撹拌した。その後、アセトニトリル(40mL)を添加し、析出した固体をキリヤマ漏斗で吸引濾過した後、乾燥し2量体HO-GUm-SUC-TOBを白色固体として得た。(228.7mg、96%)
m/z(TOF-MS):calcd.1721.07, found 1723.10[M+H]+
【産業上の利用可能性】
【0296】
本発明によれば、ホスファイト体または亜リン酸ジエステル体を合成する段階で、特定の酸化防止剤を共存させることによりホスホトリエステル体またはホスホジエステル体(「PO不純物」)の副生を抑制することができ、これに続く硫化反応をより効率良く行うことができるため、ホスホロチオエート化部位を有するオリゴヌクレオチドの製造方法として有用である。
【0297】
本出願は、日本で出願された特願2019-065158(出願日:2019年3月28日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。