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  • 特許-内燃機関の制御システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】内燃機関の制御システム
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/34 20060101AFI20250212BHJP
【FI】
F02D41/34 100
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022024521
(22)【出願日】2022-02-21
(65)【公開番号】P2023121269
(43)【公開日】2023-08-31
【審査請求日】2024-02-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】細野 清隆
(72)【発明者】
【氏名】柳川 健介
(72)【発明者】
【氏名】川辺 敬
(72)【発明者】
【氏名】村上 隆
(72)【発明者】
【氏名】廣江 健太
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-108372(JP,A)
【文献】特開平03-000950(JP,A)
【文献】特開2004-162588(JP,A)
【文献】特開2012-136959(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0240737(US,A1)
【文献】特開平09-195826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1吸気ポートと、
第2吸気ポートと、
前記第1吸気ポートに配置される第1燃料噴射弁と、
前記第2吸気ポートに配置される第2燃料噴射弁と、
内燃機関の温度を取得する機関温度取得部と、
前記第1吸気ポートに配置され、前記第1吸気ポートに流れる吸気の第1吸気温度と第1吸気量とを検知する第1ポート吸気検知部と、
前記第2吸気ポートに配置され、前記第2吸気ポートに流れる吸気の第2吸気温度と第2吸気量とを検知する第2ポート吸気検知部と、
前記内燃機関を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記第1吸気量および前記第2吸気量を用いて、前記第1燃料噴射弁の噴射量および前記第2燃料噴射弁の噴射量の少なくともいずれか一方を変更する第1制御と、
前記第1吸気温度および前記第2吸気温度を用いて、前記第1燃料噴射弁の噴射量および前記第2燃料噴射弁の噴射量の少なくともいずれか一方を変更する第2制御と、
を含み、
前記機関温度取得部によって取得した前記内燃機関の温度に基づいて、前記第1制御と、前記第2制御のいずれか一方を優先して実行する、
内燃機関の制御システム。
【請求項2】
前記内燃機関は、第1気筒を有し、
前記第1吸気ポートおよび前記第2吸気ポートは、前記第1気筒に接続される、
請求項1に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記機関温度取得部によって取得した前記内燃機関の温度が所定温度未満の場合、前記第1制御を優先する、
請求項1または2に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1制御において、前記第1吸気量が減少した場合、次の燃料噴射タイミングにおける前記第1燃料噴射弁の噴射量を減量するとともに、前記第2燃料噴射弁の噴射量を増量する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記機関温度取得部によって取得した前記内燃機関の温度が所定温度以上の場合、前記第2制御を優先する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第2制御において、前記第1吸気温度が低下した場合、次の燃料噴射タイミングにおける前記第1燃料噴射弁の噴射量を減量する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の内燃機関の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸気ポートに燃料を噴射する内燃機関の制御システムが知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。このような、吸気ポートに燃料を噴射するシステムとしては、吸気ポート内で混合気を形成するポートインジェクション方式と、吸気ポートから気筒内に向けて燃料を直接噴射するセミダイレクトインジェクション方式と、が知られている。特許文献1および特許文献2は、セミダイレクトインジェクション方式の内燃機関の制御システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-139410号公報
【文献】特開2021-32131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような吸気ポートに燃料を噴射する内燃機関では、吸気ポートに付着する燃料によって吸気ポート間の空燃比にバラツキが生じる。特許文献1は、内燃機関のエミッションに着目し、吸気行程から排気行程までの一サイクル中に2つの燃料噴射弁のいずれか一方を噴射する内燃機関の制御システムを開示している。特許文献2は、触媒の早期暖機に着目し、2つの燃料噴射弁のうちいずれか一方を噴射する内燃機関の制御システムを開示している。したがって、特許文献1および特許文献2の内燃機関の制御システムでは、2つの燃料噴射弁のうちいずれか一方は、燃料を噴射しない状態となり吸気ポート間の空燃比にバラツキが生じるおそれがある。特許文献1および特許文献2は、いずれも吸気ポート間の空燃比のバラツキに着目した内燃機関の制御システムは開示していない。
【0005】
本開示の課題は、吸気ポート間の空燃比のバラツキを抑制できる内燃機関の制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る内燃機関の制御システムは、第1吸気ポートと、第2吸気ポートと、前記第1吸気ポートに配置される第1燃料噴射弁と、前記第2吸気ポートに配置される第2燃料噴射弁と、前記内燃機関の温度を取得する機関温度取得部と、前記第1吸気ポートに配置され、前記第1吸気ポートに流れる吸気の第1吸気温度と第1吸気量とを検知する第1ポート吸気検知部と、前記第2吸気ポートに配置され、前記第2吸気ポートに流れる吸気の第2吸気温度と第2吸気量とを検知する第2ポート吸気検知部と、前記内燃機関を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記第1吸気量および前記第2吸気量を用いて、前記第1燃料噴射弁の噴射量および前記第2燃料噴射弁の噴射量の少なくともいずれか一方を変更する第1制御と、前記第1吸気温度および前記第2吸気温度を用いて、前記第1燃料噴射弁の噴射量および前記第2燃料噴射弁の噴射量の少なくともいずれか一方を変更する第2制御と、を含み、前記機関温度取得部によって取得した前記内燃機関の温度に基づいて、前記第1制御と、前記第2制御のいずれか一方を優先して実行する。
【0007】
この内燃機関の制御システムによれば、機関温度取得部から取得した内燃機関の温度に基づいて、第1制御と、第2制御のいずれか一方を優先して実行することによって、第1吸気ポートと第2吸気ポートの空燃比のバラツキを抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、吸気ポート間の空燃比のバラツキを抑制できる内燃機関の制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態による内燃機関の制御システムのシステム図。
図2】本開示の実施形態による内燃機関の気筒の拡大図。
図3】本開示の実施形態による制御装置の制御手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下明細書において吸気、または排気の流れる方向に対して上流側を上流と明細書に記し、下流側を下流と明細書に記す。
【0011】
図1に示すように、内燃機関2の制御システム1は、複数の吸気ポート4と、複数の燃料噴射弁6と、複数のポート吸気検知部8と、温度検知部(機関温度取得部の一例)10と、制御装置20と、を備える。本実施形態の内燃機関2は、複数の気筒(第1気筒の一例)10が直列に配置された直列型の内燃機関2である。しかし、気筒11の配置および数は、変更可能である。具体的には、内燃機関2は、気筒11がV型、または水平対向型に配置されてもよい。また、気筒11の数は、1から12個程度あってもよい。また、本実施形態の内燃機関2は、図示しない混合気に点火プラグによって点火するガソリンエンジンである。
【0012】
本実施形態の内燃機関2は、エアクリーナ13と、過給機14と、吸気マニホールド17と、を有し、エアクリーナ13から吸い込まれた吸気が過給機14のコンプレッサ14aによって過給される。過給された吸気はインタークーラ15によって冷却され、吸気マニホールド17を介して吸気ポート4に供給される。また、内燃機関2は、排気バルブ16と、排気浄化触媒18と、を有し、過給機14のタービン14bを介して排気浄化触媒18に排気が供給される。しかし、内燃機関2は、過給機14などを有さない内燃機関2であってもよい。
【0013】
図2に示すように、吸気ポート4は、4つの気筒11のそれぞれに接続される。吸気ポート4は、シリンダヘッド2a(図1参照)に設けられ、シリンダヘッド2aによって形成されたポート壁2bによって分岐される第1吸気ポート4aと第2吸気ポート4bと、を有する。第1吸気ポート4aと、第2吸気ポート4bとは、気筒11の配列方向に隣り合って配置され、同じ気筒11につながる。第1吸気ポート4aは、気筒11と接続するポート出口が第1吸気バルブ12aによって開閉される。第2吸気ポート4bは、第1吸気ポート4aと同様に、気筒11と接続するポート出口が第2吸気バルブ12bによって開閉される。
【0014】
燃料噴射弁6は、第1吸気ポート4a、および第2吸気ポート4bのそれぞれに配置される。具体的には、第1吸気ポート4aには第1燃料噴射弁6aが配置され、第2吸気ポート4bには第2燃料噴射弁6bが配置される。図1および図2に示すように、第1燃料噴射弁6aおよび第2燃料噴射弁6bは、デリバリーパイプ6cから燃料が供給される。第1燃料噴射弁6aおよび第2燃料噴射弁6bは、それぞれ制御装置20と電気的に接続され、制御装置20によって、燃料噴射期間および燃料噴射タイミングが制御される。
【0015】
図2に示すように、第1燃料噴射弁6aは、燃料を噴射する噴孔がポート壁2bの上流側端部2cよりも、気筒11側に配置され、第1吸気バルブ12aが開弁時に燃料を気筒11に向かって噴射する。第2燃料噴射弁6bは、第1燃料噴射弁6aと同様に、燃料を噴射する噴孔がポート壁2bの上流側端部2cよりも、気筒11側に配置され、第2吸気バルブ12bが開弁時に燃料を気筒11に向かって噴射する。すなわち、本実施形態の内燃機関2は、第1吸気ポート4aおよび第2吸気ポート4bに混合気を形成するとともに、気筒11にも燃料を噴射可能なセミダイレクトインジェクション方式の内燃機関2である。
【0016】
ポート吸気検知部8は、吸気ポート4に流れる吸気温度Tiと、吸気量Qrと、を検知するセンサである。本実施形態では、ポート吸気検知部8は、吸気温度Tiを検知し、検知した吸気温度Tiを信号に変換し、制御装置20に送信する。制御装置20は、記憶したマップに基づいて、吸気温度Tiに基づいた信号を吸気量Qrに変換する。しかし、ポート吸気検知部8は、吸気温度Tiおよび吸気量Qrをそれぞれ別々に検知するセンサであってもよい。
【0017】
本実施形態では、ポート吸気検知部8は、第1吸気ポート4aおよび第2吸気ポート4bのそれぞれに配置される。具体的には、第1吸気ポート4aには第1ポート吸気検知部8aが配置され、第2吸気ポート4bには第2ポート吸気検知部8bが配置される。第1ポート吸気検知部8aは、第1燃料噴射弁6aの先端付近に取り付けられ、第2ポート吸気検知部8bは、第2燃料噴射弁6bの先端付近に取り付けられる。これによって、第1ポート吸気検知部8aは、第1吸気ポート4aの第1吸気温度Ti1と、第1吸気量Q1と、を検知できる。第2ポート吸気検知部8bは、第2吸気ポート4bの第2吸気温度Ti2と、第2吸気量Q2と、を検知できる。
【0018】
図1に示すように、本実施形態では温度検知部10は、内燃機関2の機関温度Teを検知するセンサである。機関温度Teは内燃機関2の温度状態を示す値である。本実施形態では、温度検知部10は、内燃機関2のシリンダヘッド2aおよび図示しないシリンダブロックを流れる冷却水の温度を検知し、制御装置20に送信する水温センサである。しかし、温度検知部10は、例えば内燃機関2に充填されるオイルの温度を検知し、制御装置20に送信する油温センサであってもよい。また、機関温度Teは、例えばエアフロセンサ22によって検知したエアフロ温度Taに基づいて、制御装置20が内燃機関2の機関温度Teを推定することによって取得してもよい。いずれにせよ、制御装置20が機関温度Teを取得できれば、どのような方法であってもよい。
【0019】
制御装置20は、アクセルペダル30に取り付けられたアクセルポジションセンサ30aからアクセル開度Thを検知し、アクセル開度Thに応じて、内燃機関2を制御する装置である。本実施形態では、制御装置20は、アクセル開度Thに基づいて目標吸入空気量Qtと、目標空燃比AFtと、を決定する。制御装置20は、目標吸入空気量Qtに基づいて、気筒11に供給される混合気の空燃比が目標空燃比AFtとなるように、目標燃料噴射量Pを決定する。そして制御装置20は、第1ポート吸気検知部8aおよび第2ポート吸気検知部8bが検知した第1吸気温度Ti1および第2吸気温度Ti2、または第1吸気量Q1および第2吸気量Q2に基づいて、目標燃料噴射量Pを決定する。具体的には、目標燃料噴射量Pのうち、第1燃料噴射弁6aで噴射する第1目標燃料噴射量(第1燃料噴射弁6aの噴射量の一例)P1および第2燃料噴射弁6bで噴射する第2目標燃料噴射量(第2燃料噴射弁6bの噴射量の一例)P2を決定する。
【0020】
そのほか制御装置20は、ポート吸気検知部8、温度検知部10、エアフロセンサ22、およびアクセルポジションセンサ30aなどのセンサから取得した値に基づいて、内燃機関2が所望の運転状態となるように、スロットルバルブ24、燃料噴射弁6の噴射タイミングと噴射期間、吸気バルブ12および排気バルブ16のバルブオーバーラップ、過給機14の過給圧、などの各装置の制御を実行してもよい。制御装置20は、実際には、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成されるECU(Electrоnic Control Unit)である。制御装置20は、メモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、内燃機関2が、所望の運転状態となるように各装置を制御する。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。
【0021】
次に、図3のフローチャートを用いて、制御装置20が実行する制御手順について説明する。制御装置20は、図示しないイグニッションンスイッチがオンされると、制御手順を開始する。
【0022】
ステップS1では、制御装置20は、機関温度Teを取得する。制御装置20は、機関温度Teを取得すると、ステップS2に処理を進める。ステップS2では、制御装置20は、機関温度Teが所定温度Td未満か否か判断する。
【0023】
ここで、所定温度Tdはポート壁2bに付着した付着燃料が気化する温度である。例えば、内燃機関2が冷態状態(例えば、水温センサの値が80℃以下)の場合、ポート壁2bに付着した燃料は気化し難い。このため、第1吸気ポート4aおよび第2吸気ポート4bとの間に空燃比のバラツキは発生し難い。したがって、制御装置20は、付着燃料分を考慮せず、第1目標燃料噴射量P1と第2目標燃料噴射量P2とを決定できる。このため、制御装置20は、第1吸気量Q1と、第2吸気量Q2と、に基づいて、第1目標燃料噴射量P1と第2目標燃料噴射量P2とを決定できる。
【0024】
そこで、制御装置20は、ステップS2において機関温度Teが所定温度Td未満と判断した場合(ステップS2 YES)、ステップS3に処理を進め、制御装置20は、第1吸気量Q1と、第2吸気量Q2と、を取得する。制御装置20は、第1吸気量Q1と、第2吸気量Q2と、を取得すると、ステップS4に処理を進める。
【0025】
ステップS4からステップS7において、制御装置20は、第1吸気量Q1および第2吸気量Q2を用いて、第1目標燃料噴射量P1および第2目標燃料噴射量P2の少なくともいずれか一方を変更する第1制御を実行する。
【0026】
本実施形態では、制御装置20は、ステップS4において第1吸気量Q1と第2吸気量Q2とを比較し、第1吸気量Q1が第2吸気量Q2よりも多いか否か判断する。制御装置20は、第1吸気量Q1が第2吸気量Q2よりも多いと判断した場合(ステップS4 YES)、ステップS5に処理を進める。ステップS5では、制御装置20は、第1目標燃料噴射量P1を増量し、第2目標燃料噴射量P2を減量する。
【0027】
第1目標燃料噴射量P1の増量する増量分P1iは、例えば、現在のサイクルにおいて第1吸気量Q1と第2吸気量Q2の差分を演算し、目標燃料噴射量Pに差分に応じた増量分P1iを加算して、次回サイクル時の第1目標燃料噴射量P1である次回第1目標燃料噴射量P1nを算出してもよい。そして、制御装置20は、次回サイクル時に次回第1目標燃料噴射量P1nを噴射してもよい。制御装置20は、第2目標燃料噴射量P2の減量する減量分P2dは、P1iと同量としてもよい。制御装置20は、第2目標燃料噴射量P2から減量分P2dを減算し、次回サイクル時の第2目標燃料噴射量P2である次回第2目標燃料噴射量P2nを算出してもよい。制御装置20は、次回サイクル時に次回第2目標燃料噴射量P2nを噴射してもよい。
【0028】
制御装置20は、例えば、現在のサイクルにおいて第1吸気量Q1と第2吸気量Q2の比率を演算し、目標燃料噴射量Pに比率に応じた増量分P1iおよび減量分P2dを演算してもよい。いずれにせよ制御装置20は、ステップS5において、第1目標燃料噴射量P1を増量し、第2目標燃料噴射量P2を減量できればよい。
【0029】
制御装置20は、第1吸気量Q1が第2吸気量Q2よりも多くないと判断した場合(ステップS4 NO)、ステップS6に処理を進める。ステップS6では、第1吸気量Q1が第2吸気量Q2よりも少ないか否か判断する。制御装置20はステップS6で、第1吸気量Q1が第2吸気量Q2よりも少ないと判断した場合(ステップS6 YES)、ステップS7に処理を進める。ステップS7では、制御装置20は、第1目標燃料噴射量P1を減量し、第2目標燃料噴射量P2を増量する。このときの、減量分P1dおよび増量分P2iは、ステップS5における算出方法と同様であるため説明を省略する。制御装置20は、ステップS5の処理、ステップS6で第1吸気量Q1が第2吸気量Q2よりも多いと判断した場合(ステップS6 NO)、およびステップS7の処理を実行すると、ステップS1に処理を進める。
【0030】
制御装置20は、このように第1制御において、第2吸気量Q2が減少した場合、次のサイクルにおける燃料噴射タイミングの次回第2目標燃料噴射量P2nを減量するとともに、次回第1目標燃料噴射量P1nを増量する。反対に、第1吸気量Q1が減少した場合、次のサイクルにおける燃料噴射タイミングの次回第1目標燃料噴射量P1n減量するとともに、次回第2目標燃料噴射量P2nを増量する。なお、制御装置20は、第1吸気量Q1および第2吸気量Q2に変化がない場合に、次回第1目標燃料噴射量P1nおよび次回第2目標燃料噴射量P2nを変更しなくてもよい。
【0031】
このように制御装置20は、機関温度Teが所定温度Td未満の場合、このように第1制御を優先して実行することによって、第1吸気ポート4aと第2吸気ポート4bとの間の空燃比のバラツキを抑制できる。
【0032】
制御装置20は、ステップS2において、機関温度Teが所定温度Td以上と判断する場合(ステップS2 NO)、ステップS8に処理を進める。所定温度Td以上では、ポート壁2bに付着した燃料が気化し、気化熱によって吸気温度Tiが低下する。このため、第1吸気ポート4aおよび第2吸気ポート4bとの間に空燃比のバラツキが発生しやすい。したがって、制御装置20は、付着燃料分を考慮し、第1目標燃料噴射量P1と第2目標燃料噴射量P2とを決定する必要がある。このため、制御装置20は、第1吸気温度Ti1および第2吸気温度Ti2を用いて、第1目標燃料噴射量P1および第2目標燃料噴射量P2を決定する。
【0033】
そこで、制御装置20は、ステップS8において第1吸気温度Ti1と、第2吸気温度Ti2と、を取得する。制御装置20は、第1吸気温度Ti1と、第2吸気温度Ti2と、を取得すると、ステップS9に処理を進める。
【0034】
ステップS9からステップS12において制御装置20は、第1吸気温度Ti1および第2吸気温度Ti2を用いて、第1目標燃料噴射量P1および第2目標燃料噴射量P2の少なくともいずれか一方を変更する第2制御を実行する。
【0035】
本実施形態では制御装置20は、ステップS9において、第1吸気温度Ti1が低下したか否か判断する。制御装置20は、例えば、第1吸気温度Ti1と第2吸気温度Ti2とを比較し、第1吸気温度Ti1が第2吸気温度Ti2よりも低い場合、第1吸気温度Ti1が低下したと判断してもよい。制御装置20は、吸気マニホールド17の温度を検知する図示しないセンサを有し、このセンサによって取得した温度と第1吸気温度Ti1とを比較し、第1吸気温度Ti1が低下したと判断してもよい。あるいは、制御装置20は、エアフロ温度Taと比較し、第1吸気温度Ti1が低下したと判断してもよい。いずれにせよ、第1吸気温度Ti1が低下した場合、第1吸気ポート4aのポート壁2bの付着燃料が気化し、気筒11に付着燃料が供給された可能性がある。
【0036】
そこで、制御装置20は、第1吸気温度Ti1が低下したと判断した場合(ステップS9 YES)、ステップS10に処理を進め、第1目標燃料噴射量P1を減量する。
【0037】
第1目標燃料噴射量P1を減量する減量分P1dは、例えば、制御装置20が第1吸気温度Ti1に応じた適正な燃料噴射量である適正第1燃料噴射量P1gをマップとして記憶しておいてもよい。この場合、制御装置20は、適正第1燃料噴射量P1gと第1目標燃料噴射量P1との差分を演算し、差分を減量分P1dとして、次回第1目標燃料噴射量P1nから減算してもよい。
【0038】
制御装置20は、第1吸気温度Ti1が低下していないと判断する場合(ステップS9 NO)、ステップS11に処理を進め、第2吸気温度Ti2が低下したか否か判断する。制御装置20は、第2吸気温度Ti2が低下したと判断した場合(ステップS11 YES)、ステップS12に処理を進め、第2目標燃料噴射量P2を減量する。第2目標燃料噴射量P2の減量方法は、第1目標燃料噴射量P1と同様であるため、説明を省略する。制御装置20は、ステップS10およびステップS12の処理を実行すると、ステップS1に処理を進める。制御装置20は、第2吸気温度Ti2が低下していないと判断した場合(ステップS11 NO)、ステップS1に処理を進める。制御装置20は、このような処理を所定期間毎に繰り返して実行する。
【0039】
制御装置20は、このように第2制御において、第1吸気温度Ti1が低下した場合、次のサイクルにおける燃料噴射タイミングの次回第1目標燃料噴射量P1nを減量する。反対に、第2吸気温度Ti2が減少した場合、次のサイクルにおける燃料噴射タイミングの次回第2目標燃料噴射量P2nを減量する。
【0040】
このように制御装置20は、機関温度Teが所定温度Td以上の場合、このように第2制御を優先して実行することによって、付着燃料によって濃くなる空燃比を補正し、第1吸気ポート4aと第2吸気ポート4bとの間の空燃比のバラツキを抑制できる。
【0041】
以上説明した通り、この内燃機関2の制御システム1によれば、温度検知部10によって取得した内燃機関2の機関温度Teに基づいて、第1制御と、第2制御のいずれか一方を優先して実行することによって、第1吸気ポート4aと第2吸気ポート4bの空燃比のバラツキを抑制できる。
【0042】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0043】
例えば、上記実施形態では、一つの気筒11に接続される第1吸気ポート4aおよび第2吸気ポート4bを例に用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、気筒11に接続される吸気ポート4と、隣の気筒11に接続される吸気ポート4との間の空燃比バラツキを抑制するために、本開示の制御を適用してもよい。また、外部充電又は外部給電が可能なプラグインハイブリッド車両(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)に適用してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1:制御システム,2:内燃機関
4:吸気ポート,4a:第1吸気ポート,4b:第2吸気ポート
6:燃料噴射弁,6a:第1燃料噴射弁,6b:第2燃料噴射弁
8:ポート吸気検知部,
8a:第1ポート吸気検知部,8b:第2ポート吸気検知部
10:温度検知部,11:気筒,20:制御装置
P1:第1目標燃料噴射量,P1n:次回第1目標燃料噴射量
P2:第2目標燃料噴射量,P2n:次回第2目標燃料噴射量
Q1:第1吸気量,Q2:第2吸気量
Td:所定温度
Te:機関温度
Ti1:第1吸気温度,Ti2:第2吸気温度
図1
図2
図3