(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】排熱回収装置およびこれを備える空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F25B 27/02 20060101AFI20250212BHJP
F25B 27/00 20060101ALI20250212BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20250212BHJP
F01P 3/20 20060101ALI20250212BHJP
F01N 5/02 20060101ALI20250212BHJP
F01M 5/00 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
F25B27/02 F
F25B27/00 A
F25B1/00 321B
F25B1/00 399Y
F01P3/20 H
F01P3/20 E
F01N5/02 K
F01N5/02 A
F01M5/00 A
F01M5/00 D
(21)【出願番号】P 2022046276
(22)【出願日】2022-03-23
【審査請求日】2024-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 裕真
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-324644(JP,A)
【文献】特開平08-254371(JP,A)
【文献】実開昭60-128912(JP,U)
【文献】特開2019-019809(JP,A)
【文献】特開昭58-080465(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0201963(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102004031365(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第111120038(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 27/02
F25B 27/00
F25B 1/00
F01P 3/20
F01N 5/02
F01M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和装置のコンプレッサを駆動させる内燃機関に設けられた排熱回収装置であって、
前記内燃機関の排気ガスが流通する排気ガス流路と、
前記内燃機関に潤滑油を循環させる潤滑油流路と、
前記内燃機関を冷却する冷却水を流通させ、冷却水と前記空気調和装置の冷媒サイクルを流通する冷媒とを熱交換させることが可能である第1熱交換器を有する冷却水流路と、
前記排気ガス流路および前記潤滑油流路に接続され、排気ガスと潤滑油とを熱交換させることが可能である第2熱交換器と、
前記排気ガス流路および前記冷却水流路に接続され、排気ガスと冷却水とを熱交換させる第3熱交換器と、
制御部とを備え、
前記排気ガス流路は、
前記第2熱交換器が接続された主流路と、
前記主流路から前記第2熱交換器よりも上流側で分岐して、前記第2熱交換器を迂回するバイパス流路と、
前記制御部により、排気ガスを前記主流路の前記第2熱交換器が設けられた部分に導き前記バイパス流路への流通を遮断する第1状態と、排気ガスを前記バイパス流路に導き前記主流路の前記第2熱交換器が設けられた部分への流通を遮断する第2状態とが切り替えられる切替部とを含み、
前記空気調和装置の暖房運転時に、前記制御部により前記切替部が前記第2状態に切り替えられるとともに、前記第3熱交換器において排気ガスと冷却水とが熱交換され、かつ、前記第1熱交換器において冷媒と冷却水とが熱交換される、排熱回収装置。
【請求項2】
前記制御部は、潤滑油の温度が所定温度より低い場合に前記切替部を前記第1状態に切り替えるように制御する、請求項1に記載の排熱回収装置。
【請求項3】
前記主流路は、前記第2熱交換器より下流側において前記バイパス流路と接続され、
前記切替部は、前記上流側に設けられた第1切替部と、前記下流側に設けられた第2切替部とを有し、
前記第1状態において、前記バイパス流路は、前記第1切替部および前記第2切替部により遮断される、請求項1または請求項2に記載の排熱回収装置。
【請求項4】
請求項1に記載の排熱回収装置と、
前記コンプレッサにより圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器を通過した冷媒を膨張させる膨張弁と、
前記膨張弁を通過した冷媒を気化させ、気化した冷媒を前記コンプレッサに戻す気化器とを備え、
前記冷媒サイクルは、前記コンプレッサ、前記凝縮器、前記膨張弁および前記気化器を冷媒が循環することによって構成され、
前記第1熱交換器は、前記冷媒サイクルにおける前記膨張弁と前記気化器との間に設けられている、空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排熱回収装置およびこれを備える空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排熱回収装置を開示した先行技術文献として、特開2012-107599号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された排熱回収装置は、冷却水流路と、第一排気ガス流路と、潤滑油流路とを備える。冷却水流路は、内燃機関の冷却水が流通する。第一排気ガス流路は、内燃機関の排気ガスが流通する。潤滑油流路は、内燃機関の潤滑油が流通する。潤滑油流路は、冷却水流路および第一排気ガス流路と熱交換させることが可能に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関により動作する空気調和装置において、空気調和装置のインバータ制御により、内燃機関が間欠運転する場合がある。内燃機関が停止している間に、内燃機関を流通する冷却水は放熱し、その温度が低下する。特許文献1に記載された排熱回収装置においては、内燃機関の冷却水流路と潤滑油流路とが熱交換されるため、冷却水の温度低下に伴い、潤滑油の温度が低下する。潤滑油温度の低下によって、内燃機関の摺動部材の摺動特性が悪化するため、内燃機関の燃費が低下する。他方、当該冷却水と空気調和装置の冷媒サイクルにおける冷媒とを熱交換させることによって、空気調和装置の暖房性能を向上させる余地がある。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、内燃機関の燃費の低下を抑制しつつ、空気調和装置の暖房性能を向上させることができる、排熱回収装置およびこれを備える空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく排熱回収装置は、空気調和装置のコンプレッサを駆動させる内燃機関に設けられている。排熱回収装置は、排気ガス流路と、潤滑油流路と、第1熱交換器を有する冷却水流路と、第2熱交換器と、第3熱交換器と、制御部とを備える。排気ガス流路は、内燃機関の排気ガスが流通する。潤滑油流路は、内燃機関に潤滑油を循環させる。冷却水流路は、内燃機関を冷却する冷却水を流通させる。第1熱交換器は、冷却水と空気調和装置の冷媒サイクルを流通する冷媒とを熱交換させることが可能である。第2熱交換器は、排気ガス流路および潤滑油流路に接続され、排気ガスと潤滑油とを熱交換させることが可能である。第3熱交換器は、排気ガス流路および冷却水流路に接続され、排気ガスと冷却水とを熱交換させる。排気ガス流路は、主流路と、バイパス流路と、切替部とを含む。主流路には、第2熱交換器が接続されている。バイパス流路は、主流路から第2熱交換器よりも上流側で分岐して、第2熱交換器を迂回する。切替部は、制御部により、排気ガスを主流路の第2熱交換器が設けられた部分に導きバイパス流路への流通を遮断する第1状態と、排気ガスをバイパス流路に導き主流路の第2熱交換器が設けられた部分への流通を遮断する第2状態とが切り替えられる。空気調和装置の暖房運転時に、制御部により切替部が第2状態に切り替えられるとともに、第3熱交換器において排気ガスと冷却水とが熱交換され、かつ、第1熱交換器において冷媒と冷却水とが熱交換される。
【0007】
本発明の一形態においては、制御部は、潤滑油の温度が所定温度より低い場合に切替部を第1状態に切り替えるように制御する。
【0008】
本発明の一形態においては、主流路は、第2熱交換器より下流側においてバイパス流路と接続される。切替部は、上流側に設けられた第1切替部と、下流側に設けられた第2切替部とを有する。第1状態において、バイパス流路は、第1切替部および第2切替部により遮断される。
【0009】
本発明に基づく空気調和装置は、上記排熱回収装置と、凝縮器と、膨張弁と、気化器とを備える。凝縮器は、コンプレッサにより圧縮された冷媒を凝縮させる。膨張弁は、凝縮器を通過した冷媒を膨張させる。気化器は、膨張弁を通過した冷媒を気化させ、気化した冷媒をコンプレッサに戻す。冷媒サイクルは、コンプレッサ、凝縮器、膨張弁および気化器を冷媒が循環することによって構成されている。第1熱交換器は、冷媒サイクルにおける膨張弁と気化器との間に設けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、内燃機関の燃費の低下を抑制しつつ、空気調和装置の暖房性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る空気調和装置の構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る排熱回収装置が備える第2熱交換器の第1状態における第2熱交換器周辺の構成を示す断面図である。
【
図3】
図2の第2熱交換器周辺の構成をIII-III線矢印方向から見た断面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態に係る排熱回収装置が備える第2熱交換器の第2状態における第2熱交換器周辺の構成を示す断面図である。
【
図5】本発明の一実施の形態に係る排熱回収装置の時間に対する冷却水および潤滑油の温度変化を示すグラフである。
【
図6】本発明の一実施の形態に係る空気調和装置の運転状態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態に係る排熱回収装置およびこれを備える空気調和装置について図面を参照して説明する。以下の実施の形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る空気調和装置の構成を示す概略図である。本発明の一実施の形態に係る空気調和装置1は、内燃機関としてのガスエンジンを駆動源として空気調和を行なうガスヒートポンプ(GHP)方式の空気調和装置である。なお、内燃機関は、ガスエンジンに限定されず、ガソリンエンジン、LNGエンジンまたはエタノールエンジンなどであってもよい。
【0014】
図1に示すように、空気調和装置1は、コンプレッサ10と、凝縮器11と、膨張弁12と、気化器13と、冷媒流路14と、内燃機関20と、ラジエータ21と、排熱回収装置3とを備える。
【0015】
コンプレッサ10、凝縮器11、膨張弁12および気化器13は、この順で冷媒流路14によって接続され、これらを冷媒2が循環することによって冷媒サイクルを構成している。
【0016】
コンプレッサ10は、冷媒2を圧縮する。冷媒2は圧縮されることによって高温高圧の気体状態となる。凝縮器11は、コンプレッサ10により圧縮された冷媒2を凝縮させる。冷媒2は凝縮器11により空気と熱交換されて放熱することによって、高温高圧の液体状態となる。膨張弁12は、凝縮器11を通過した冷媒2を膨張させる。冷媒2は膨張弁12により断熱膨張することによって、低温低圧の液体状態となる。気化器13は、膨張弁12を通過した冷媒2を気化させる。冷媒2は、気化器13により空気と熱交換されて吸熱することによって、低温低圧の気体状態となる。気化器13により気化した冷媒2は、コンプレッサ10に戻される。
【0017】
冷媒流路14は、第1冷媒流路14aと、第2冷媒流路14bと、第3冷媒流路14cと、第4冷媒流路14dとを含む。第1冷媒流路14aは、コンプレッサ10と凝縮器11とを接続する。第2冷媒流路14bは、凝縮器11と膨張弁12とを接続する。第3冷媒流路14cは、膨張弁12と気化器13とを接続する。第4冷媒流路14dは、気化器13とコンプレッサ10とを接続する。これにより、冷媒2が冷媒流路14を循環する際に、暖房運転時には凝縮器11の冷媒2と室内空気とが熱交換される。また、図示しない四方弁による冷媒経路の切り替えにより、冷房運転時には凝縮器11が気化器となり、内部の冷媒2と室内空気とが熱交換されることによって、室内空気の温度が調節される。
【0018】
冷媒サイクルにおける膨張弁12と気化器13との間の第3冷媒流路14cには、第1熱交換器15が設けられている。第1熱交換器15は、後述する冷却水流路50における冷却水6と空気調和装置1の冷媒サイクルを流通する冷媒2とを熱交換させることが可能である。
【0019】
内燃機関20は、空気調和装置1のコンプレッサ10を駆動させる。内燃機関20は、図示しないプーリなどによってコンプレッサ10と接続されて、コンプレッサ10を駆動させる。
【0020】
ラジエータ21は、内燃機関20を冷却する。ラジエータ21は、後述する冷却水流路50により内燃機関20と接続されている。ラジエータ21は、空気または冷却水などの熱交換媒体22によって空冷または水冷される。
【0021】
排熱回収装置3は、内燃機関20に設けられ、排気ガス4の熱を回収する。排熱回収装置3は、排気ガス流路30と、潤滑油流路40と、冷却水流路50と、第2熱交換器60と、第3熱交換器70とを含む。
【0022】
排気ガス流路30には、内燃機関20の排気ガス4が流通する。内燃機関20の排気ガス4は、排気ガス流路30を流通して排気口31から外部へ排出される。
【0023】
排気ガス流路30は、主流路33と、バイパス流路34と、切替部35とを有する。排気ガス4は、主流路33またはバイパス流路34を流通することが可能である。排気ガス4の流路は、切替部35により切り替えられる。主流路33、バイパス流路34および切替部35の構成については、後述する。
【0024】
潤滑油流路40には、内燃機関20に潤滑油5が循環する。潤滑油5は、内燃機関20における図示しないシリンダまたはピストンなどの摺動部材の摺動特性を向上させる。潤滑油5は、その温度が低くなるにつれて粘性が高くなるため、潤滑油5の温度が低下するとともに摺動部材の摺動特性は悪化する。
【0025】
冷却水流路50には、内燃機関20を冷却する冷却水6が流通する。冷却水流路50は、第1冷却水流路51と、第2冷却水流路53と、第3冷却水流路55とを含む。
【0026】
第1冷却水流路51は、冷却水6を内燃機関20の内部に導入する。第1冷却水流路51には、流路の途中に第1弁52が設けられている。第1弁52は、たとえば、三方弁である。第1弁52は、ラジエータ21または第3冷却水流路55のいずれかから第1冷却水流路51に流入する冷却水6の流路を切り替える。
【0027】
第2冷却水流路53には、内燃機関20を冷却した後の冷却水6が流通する。第2冷却水流路53には、流路の途中に第2弁54が設けられている。第2弁54は、たとえば、三方弁である。第2弁54は、第2冷却水流路53からラジエータ21または第3冷却水流路55のいずれかに流入する冷却水6の流路を切り替える。
【0028】
第3冷却水流路55は、第1冷却水流路51および第2冷却水流路53から分岐している。第3冷却水流路55には、冷却水6が流通する。第3冷却水流路55上には、第1熱交換器15が配置されている。第1熱交換器15は、第3冷却水流路55を流通する冷却水6と冷媒サイクルにおける冷媒2とを熱交換させることが可能である。
【0029】
第2熱交換器60は、排気ガス流路30および潤滑油流路40に接続され、排気ガス4と潤滑油5とを熱交換させることが可能である。
【0030】
第3熱交換器70は、排気ガス流路30および冷却水流路50に接続され、排気ガス4と冷却水6とを熱交換させる。
【0031】
なお、本実施の形態における第2熱交換器60は、排気ガス流路30の第3熱交換器70より上流側に位置しているが、第2熱交換器60が排気ガス流路30の第3熱交換器70より下流側に位置していてもよい。
【0032】
制御部80は、内燃機関20からの信号によって切替部35を制御可能である。制御部80は、内燃機関20および第2熱交換器60と有線または無線により当該信号を送受信可能に接続されている。
【0033】
以下、排気ガス流路30上の第2熱交換器60における排気ガス4と潤滑油5との熱交換について説明する。
【0034】
図2は、本発明の一実施の形態に係る排熱回収装置が備える第2熱交換器の第1状態における第2熱交換器周辺の構成を示す断面図である。
図3は、
図2の第2熱交換器周辺の構成をIII-III線矢印方向から見た断面図である。
図4は、本発明の一実施の形態に係る排熱回収装置が備える第2熱交換器の第2状態における第2熱交換器周辺の構成を示す断面図である。
【0035】
図2~
図4に示すように、本実施の形態における排気ガス流路30は、ガス配管32の内部に形成されている。排気ガス4は、ガス配管32の内部を流通する。主流路33は、ガス配管32の一部を構成している。主流路33は、第2熱交換器60に接続されている。
【0036】
潤滑油流路40は、潤滑油配管41の内部に形成されている。潤滑油5は、潤滑油配管41の内部を流通する。第2熱交換器60は、主流路33を構成するガス配管32の一部と潤滑油配管41とが接続されることによって構成される。本実施の形態における第2熱交換器60は、主流路33を構成するガス配管32の一部の外周面を潤滑油配管41で覆うことにより構成されている。
【0037】
バイパス流路34は、主流路33から第2熱交換器60よりも上流側で分岐している。バイパス流路34は、第2熱交換器60を迂回する。すなわち、排気ガス4がバイパス流路34を流通する場合、排気ガス4と潤滑油5とは熱交換されない。
【0038】
バイパス流路34は、第2熱交換器60より下流側において主流路33と接続されている。なお、バイパス流路34は、第2熱交換器60より下流側において主流路33と接続されることなく排気口31まで延在していてもよい。
【0039】
切替部35は、制御部80の制御によって、第1状態または第2状態に切り替えられる。第1状態は、排気ガス4を主流路33の第2熱交換器60が設けられた部分に導きバイパス流路34への流通を遮断する状態である。第2状態は、排気ガス4をバイパス流路34に導き主流路33の第2熱交換器が設けられた部分への流通を遮断する状態である。切替部35は、たとえば、電磁弁である。
【0040】
本実施の形態における切替部35は、第1切替部35aと、第2切替部35bとを有する。第1切替部35aは、排気ガス流路30における第2熱交換器60より上流側に設けられている。第2切替部35bは、第2熱交換器60より下流側に設けられている。
【0041】
図2に示すように、上記第1状態において、バイパス流路34は、第1切替部35aおよび第2切替部35bにより遮断される。これにより、第2熱交換器60において排気ガス4と潤滑油5とが熱交換される。なお、本実施の形態に係る切替部35は、第1切替部35aおよび第2切替部35bにより構成されているが、この構成に限定されず、第1切替部35aのみが設けられた構成であってもよい。
【0042】
図4に示すように、上記第2状態において、主流路33の第2熱交換器60が設けられた部分は、第1切替部35aおよび第2切替部35bにより遮断される。これにより、排気ガス4は、第2熱交換器60において潤滑油5と熱交換されることなくバイパス流路34内を流通する。
【0043】
なお、第1切替部35aおよび第2切替部35bは、同時に切替動作が行なわれることが望ましい。これにより、切替部35の切替動作によって遮断される流路に対して、意図しない排気ガス4の上流側における流入、または下流側における逆流を抑制することができる。
【0044】
図5は、本発明の一実施の形態に係る排熱回収装置の時間に対する冷却水および潤滑油の温度変化を示すグラフである。
図5においては、縦軸に温度(℃)、横軸に時間(t)を示している。
図5中の横軸において、時間t0は内燃機関の始動時間、時間t1は内燃機関の停止時間、時間t2は冷却水の循環停止時間、時間t3は内燃機関の再始動時間を示している。
【0045】
図5に示すように、内燃機関が始動すると(t0)、内燃機関の排気ガスと潤滑油および冷却水とが熱交換されることによって、潤滑油および冷却水の温度は上昇する。空気調和装置は、インバータ制御によって室内空気との熱交換の程度が調整されるため、内燃機関の始動(t0)後、一定時間を経過すると内燃機関が停止する(t1)。
【0046】
冷却水は、内燃機関が停止しても一定期間の間、冷却水流路内を循環する。これにより、冷却水はラジエータにおいて熱交換され、冷却水の温度が低下する。一定期間経過後、冷却水の循環が停止される(t2)。冷却水の循環の停止後(t2)から内燃機関が再始動する(t3)までの期間においては、潤滑油および冷却水は自然冷却される。インバータ制御によって、空気調和装置の始動にともなって内燃機関が再始動すると(t3)、再び排気ガスと冷却水および潤滑油とが熱交換されるため、冷却水温度および潤滑油温度は上昇する。
【0047】
図5中の点線の潤滑油温度で示すように、排熱回収装置において、冷却水と潤滑油とが排気ガスによって同時に熱交換される場合、潤滑油温度は、冷却水温度の影響を受けて、内燃機関の停止(t1)後から低下する。これにより、内燃機関における摺動部材の摺動特性が悪化する。その結果、内燃機関の燃費が低下する。
【0048】
一方、
図5中の実線の潤滑油温度で示すように、本実施の形態の排熱回収装置3においては、潤滑油5と冷却水6とは排気ガス4によって同時に熱交換されないため、内燃機関20の停止(t2)後に冷却水6の温度が低下しても、潤滑油5の温度低下が抑制される。これにより、潤滑油5の粘性が上昇することが抑制されることによって、内燃機関20における摺動部材の摺動特性が維持される。その結果、内燃機関20の燃費の低下が抑制される。
【0049】
図6は、本発明の一実施の形態に係る空気調和装置の運転状態を示すフローチャートである。
【0050】
図1、
図2、
図4および
図6に示すように、本実施の形態における空気調和装置1は、暖房運転時と冷房運転時とにおいて、排熱回収装置3の制御が異なる。
【0051】
具体的には、まず、内燃機関20が運転中であることを確認する。内燃機関20が運転中である場合には、内燃機関20における図示しない温度センサによって潤滑油温度および冷却水温度の監視を開始する。内燃機関20が運転中でない場合には、排気ガス4と潤滑油5とは熱交換する必要がない。このため、切替部35は、制御部80の制御によって、排気ガス4をバイパス流路34に導き主流路33の第2熱交換器60が設けられた部分への流通を遮断する第2状態に切り替えられる。
【0052】
次に、空気調和装置1が暖房運転であることを確認する。暖房運転である場合には、切替部35は、制御部80の制御によって、上記第2状態に切り替えられる。
【0053】
空気調和装置1が暖房運転でない場合、制御部80により、潤滑油温度が所定温度より低いことを確認する。本実施の形態の制御部80は、内燃機関20における潤滑油温度を直接計測した信号を受信することにより、潤滑油温度が所定温度より低いことを確認する。本実施の形態における所定温度は、たとえば、100~110℃である。
【0054】
次に、制御部80は、潤滑油5の温度が所定温度より低い場合に排気ガス4を主流路33の第2熱交換器60が設けられた部分に導きバイパス流路34への流通を遮断する第1状態に切り替えるように切替部35を制御する。一方で、潤滑油温度が所定温度より高い場合、切替部35は、制御部80の制御によって、上記第2状態に切り替えられる。
【0055】
上述の制御によって、空気調和装置1の暖房運転時においては、制御部80により切替部35が上記第2状態に切り替えられるとともに、第3熱交換器70において排気ガス4と冷却水6とが熱交換され、かつ、第1熱交換器15において冷媒2と冷却水6とが熱交換される。これにより、排熱回収装置3における排気ガス4と潤滑油5との熱交換を止めることによって、排気ガス4の熱を、潤滑油5の昇温に充てることなく、第1熱交換器15における冷却水6と熱交換させることができる。その結果、より多くの排気ガス4の熱を、気化器13の働きを補助するための冷媒2の入熱に充てることができるため、空気調和装置1の暖房性能を向上させることができる。
【0056】
本発明の一実施の形態に係る排熱回収装置3においては、排気ガス4と冷却水6との熱交換とは別に、第2熱交換器60において排気ガス4と潤滑油5とを熱交換可能に構成することにより内燃機関20における潤滑油5の温度低下を抑制することができる。このため、潤滑油5の粘性が上昇することが抑制されて、内燃機関20における摺動部材の摺動特性が維持されることにより、内燃機関20の燃費の低下を抑制することができる。
【0057】
さらに、本発明の一実施の形態に係る排熱回収装置3においては、空気調和装置1の暖房運転時に、第2熱交換器60において排気ガス4と潤滑油5とを熱交換させることなく、第3熱交換器70において排気ガス4と冷却水6とを熱交換させることによって、第1熱交換器15において冷却水6と冷媒サイクルにおける冷媒2とを熱交換することができる。このため、暖房運転時に、排気ガス4の熱を潤滑油5の昇温に充てることなく、第1熱交換器15における冷却水6と熱交換させて、より多くの排気ガス4の熱を気化器13の働きを補助するための冷媒2の入熱に充てることができるため、空気調和装置1の暖房性能を向上させることができる。
【0058】
本発明の一実施の形態に係る排熱回収装置3においては、所定温度を設定して潤滑油5の温度を直接監視することにより潤滑油5の温度が所定温度以下のときに制御部80から排気ガス流路30上の切替部35へ信号を送ることによって、切替部35における効率的な切替運転を行なうことができる。
【0059】
本発明の一実施の形態に係る排熱回収装置3においては、第2切替部35bを設けることによって、主流路33への排気ガス4の逆流を防ぐことで、確実に主流路33を遮断することができる。これにより、空気調和装置1の暖房運転時に排気ガス4と潤滑油5との熱交換を確実に抑制して、排気ガス4を暖房性能向上に関わる冷却水6と熱交換させることができる。
【0060】
本発明の一実施の形態に係る空気調和装置1においては、第1熱交換器15が冷媒サイクルにおける膨張弁12と気化器13との間に設けられていることによって、暖房運転時に第1熱交換器15において冷却水6と冷媒2とが熱交換して冷媒2が温度上昇する。これにより、排熱回収装置3における排気ガス4の熱を、潤滑油5の昇温に充てることなく、第1熱交換器15における冷却水6と熱交換させることができる。その結果、より多くの排気ガス4の熱を、気化器13の働きを補助するための冷媒2の入熱に充てることができるため、暖房性能を向上させることができる。
【0061】
以下、本発明の一実施の形態の変形例に係る排熱回収装置およびこれを備える空気調和装置について説明する。本変形例に係る排熱回収装置およびこれを備える空気調和装置は、制御部の制御方法が本発明の実施の形態1に係る排熱回収装置3およびこれを備える空気調和装置1と異なるため、本発明の実施の形態1に係る排熱回収装置3およびこれを備える空気調和装置1と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0062】
本発明の一実施の形態の変形例に係る排熱回収装置が備える制御部は、内燃機関などからの信号によって第2熱交換器を制御可能である。具体的には、制御部は、内燃機関の回転数、負荷、運転時間もしくは冷却水温度、または外気温などから潤滑油の温度を推定する。これにより、制御部によって、潤滑油温度が所定温度より低いことを確認する。
【0063】
本発明の一実施の形態の変形例に係る排熱回収装置およびこれを備える空気調和装置においては、制御部が内燃機関などからの信号によって潤滑油の温度を推定し、第2熱交換器において排気ガスと潤滑油とを熱交換可能に構成することにより内燃機関における潤滑油の温度低下を抑制することができる。このため、潤滑油の粘性が上昇することが抑制されて、内燃機関における摺動部材の摺動特性が維持されることにより、内燃機関の燃費の低下を抑制することができる。
【0064】
さらに、本発明の一実施の形態の変形例に係る排熱回収装置およびこれを備える空気調和装置においても、本発明の一実施の形態と同様に、空気調和装置の暖房運転時に、排気ガスの熱を潤滑油の昇温に充てることなく、第1熱交換器における冷却水と熱交換させて、気化器の働きを補助するための冷媒の入熱に充てることができるため、空気調和装置の暖房性能を向上させることができる。
【0065】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではない。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。上述した実施の形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 空気調和装置、2 冷媒、3 排熱回収装置、4 排気ガス、5 潤滑油、6 冷却水、10 コンプレッサ、11 凝縮器、12 膨張弁、13 気化器、14 冷媒流路、14a 第1冷媒流路、14b 第2冷媒流路、14c 第3冷媒流路、14d 第4冷媒流路、15 第1熱交換器、20 内燃機関、21 ラジエータ、22 熱交換媒体、30 排気ガス流路、31 排気口、32 ガス配管、33 主流路、34 バイパス流路、35 切替部、35a 第1切替部、35b 第2切替部、40 潤滑油流路、41 潤滑油配管、50 冷却水流路、51 第1冷却水流路、52 第1弁、53 第2冷却水流路、54 第2弁、55 第3冷却水流路、60 第2熱交換器、70 第3熱交換器、80 制御部。