(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】楽器用信号出力装置、楽器用信号出力装置における楽器用信号の制御方法
(51)【国際特許分類】
G10H 1/32 20060101AFI20250212BHJP
【FI】
G10H1/32 A
(21)【出願番号】P 2023078985
(22)【出願日】2023-05-12
(62)【分割の表示】P 2020211151の分割
【原出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】市川 聡
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-292196(JP,A)
【文献】特開2006-195264(JP,A)
【文献】特開2016-075808(JP,A)
【文献】特開平05-088672(JP,A)
【文献】特開平10-069275(JP,A)
【文献】登録実用新案第3004469(JP,U)
【文献】実開平01-105997(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00-7/12
G10G 1/00
G06F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
演奏者による操作に応じた操作信号を取得する操作信号取得部と、
前記操作信号の値に応じた変調度でパルス幅変調されたパルス幅変調信号を生成し、前記パルス幅変調信号を楽器用信号として電子楽器に供給するパルス幅変調信号生成部と、
前記パルス幅変調信号の電圧レベルを変換するレベルシフタと、
第1端子及び第2端子と、
前記第1端子
に接続され、第1のスイッチ端子及び第2のスイッチ端子を有する第1スイッチと、
前記第2端子に接続され、第1のスイッチ端子及び第2のスイッチ端子を有する第2スイッチと
、
第3スイッチと、
制御部と、
を備え
、
前記制御部は、
前記第1端子から前記第1スイッチを介して電源電圧が入力された場合、前記第1スイッチの前記第1のスイッチ端子及び前記第3スイッチを介して前記レベルシフタに前記電源電圧を入力させるとともに、前記レベルシフタで変換された前記パルス幅変調信号を前記第2スイッチの前記第2のスイッチ端子を介して前記第2端子に出力させ、
前記第2端子から前記第2スイッチを介して電源電圧が入力された場合、前記第2スイッチの前記第1のスイッチ端子及び前記第3スイッチを介して前記レベルシフタに前記電源電圧を入力させるとともに、前記レベルシフタで変換された前記パルス幅変調信号を前記第1スイッチの前記第2のスイッチ端子を介して前記第1端子に出力させるよう、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ及び前記第3スイッチを制御する、楽器用信号出力装置。
【請求項2】
電池を更に備え、
前記制御部は、
初期化処理の場合、前記電池からの電圧を、前記第
3スイッチを介して前記レベルシフタに供給させるよう前記第
3スイッチを制御する、請求項1に記載の楽器用信号出力装置。
【請求項3】
前記パルス幅変調信号の出力段に、前記パルス幅変調信号を平滑化して出力するローパスフィルタを更に備える、請求項1又は2の何れかに記載の楽器用信号出力装置。
【請求項4】
楽器用信号出力装置における楽器用信号の制御方法であって、
前記楽器用信号出力装置は、
演奏者による操作に応じた操作信号の値に応じた変調度でパルス幅変調されたパルス幅変調信号を生成し、前記パルス幅変調信号を楽器用信号として電子楽器に供給するパルス幅変調信号生成部と、
前記パルス幅変調信号の電圧レベルを変換するレベルシフタと、
第1端子及び第2端子と、
前記第1端子に接続され、第1のスイッチ端子及び第2のスイッチ端子を有する第1スイッチと、
前記第2端子に接続され、第1のスイッチ端子及び第2のスイッチ端子を有する第2スイッチと、
第3スイッチと、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1端子から前記第1スイッチを介して電源電圧が入力された場合、前記第1スイッチの前記第1のスイッチ端子及び前記第3スイッチを介して前記レベルシフタに前記電源電圧を入力させるとともに、前記レベルシフタで変換された前記パルス幅変調信号を前記第2スイッチの前記第2のスイッチ端子を介して前記第2端子に出力させ、
前記第2端子から前記第2スイッチを介して電源電圧が入力された場合、前記第2スイッチの前記第1のスイッチ端子及び前記第3スイッチを介して前記レベルシフタに前記電源電圧を入力させるとともに、前記レベルシフタで変換された前記パルス幅変調信号を前記第1スイッチの前記第2のスイッチ端子を介して前記第1端子に出力させるよう、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ及び前記第3スイッチを制御し、
前記操作信号を取得し、
前記パルス幅変調信号生成部が、前記操作信号の値に応じた変調度でパルス幅変調されたパルス幅変調信号を生成し、前記パルス幅変調信号を楽器用信号として前記レベルシフタを介して電子楽器に供給する、
楽器用信号出力装置における楽器用信号の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エクスプレッションペダルをはじめとする楽器用信号出力装置、楽器用信号出力装置における楽器用信号の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子楽器の演奏操作子として電子楽器に接続して使用するエクスプレッションペダル等の楽器用信号出力装置が知られているが、製造メーカ毎に接続プラグの配線方式やペダルと電子楽器本体の内部構造が異なるため、ユーザが電子楽器に対応したペダルを購入する必要があった。具体的には例えば、接続プラグには一般にステレオ標準フォーンプラグが使用されているが、チップ(TIP)、リング(RING)、スリーブ(SLEEVE)の順に、電源、信号線、グランド(接地)が配線されている第1タイプと、信号線、電源、グランドが配線されている第2タイプが存在し、それぞれの電子楽器に非対応の極性のペダルを接続した場合に、正常に動作せず、場合によっては電子楽器又はペダルが故障してしまう場合もあるいう問題があった。
【0003】
このような問題に対して、第1の従来技術として、極性を反転させることにより電子楽器とペダルを正常に接続できるようにした、極性切替えスイッチを搭載した製品が知られている(例えば非特許文献1)。
【0004】
また、第2の従来技術として、ステレオ標準フォーンプラグに接続することにより、極性を反転させることのできるアダプタケーブルが知られている(例えば非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】「M-AUDIO社エクスプレッションペダルEX-P」、2020年12月10日インターネット検索<URL:http://m-audio.jp/ex-p/>
【文献】「TRS変換アダプター」、2020年12月10日インターネット検索<URL:https://beatbars.com/ja/trs-extension-reversed.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子楽器とエクスプレッションペダルの間には外観からはわからない対応・非対応がある。また、ペダル内部のボリューム抵抗値も10kΩから50kΩのものが一般的ではあるが、それ以外の抵抗値のものも存在する。しかしながら、上記従来技術のように単に極性を反転しただけでは、ペダル側のボリューム抵抗値と電子楽器側の入力インビーダンスとが合わずに、ペダルの可動域に対して実際の楽器用信号の入力範囲が狭まってしまい、演奏者が意図したように楽器用信号を電子楽器に供給することができず、演奏効果の範囲が狭まってしまう場合があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、電子楽器の仕様によらずに電子楽器との接続マッチングを正しく行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
態様の一例の楽器用信号出力装置は、演奏者による操作に応じた操作信号を取得する操作信号取得部と、前記操作信号の値に応じた変調度でパルス幅変調されたパルス幅変調信号を生成し、前記パルス幅変調信号を楽器用信号として電子楽器に供給するパルス幅変調信号生成部と、前記パルス幅変調信号の電圧レベルを変換するレベルシフタと、第1端子及び第2端子と、前記第1端子に接続され、第1のスイッチ端子及び第2のスイッチ端子を有する第1スイッチと、前記第2端子に接続され、第1のスイッチ端子及び第2のスイッチ端子を有する第2スイッチと、第3スイッチと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1端子から前記第1スイッチを介して電源電圧が入力された場合、前記第1スイッチの前記第1のスイッチ端子及び前記第3スイッチを介して前記レベルシフタに前記電源電圧を入力させるとともに、前記レベルシフタで変換された前記パルス幅変調信号を前記第2スイッチの前記第2のスイッチ端子を介して前記第2端子に出力させ、前記第2端子から前記第2スイッチを介して電源電圧が入力された場合、前記第2スイッチの前記第1のスイッチ端子及び前記第3スイッチを介して前記レベルシフタに前記電源電圧を入力させるとともに、前記レベルシフタで変換された前記パルス幅変調信号を前記第1スイッチの前記第2のスイッチ端子を介して前記第1端子に出力させるよう、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ及び前記第3スイッチを制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子楽器の仕様によらずに電子楽器との接続マッチングを正しく行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態であるエクスプレッションペダル装置のブロック図である。
【
図2】実施形態に使用されるステレオ標準フォーンプラグの使用態様を示す図である。
【
図3】実施形態の制御処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下に説明する本発明の実施形態は、電子楽器にケーブル接続して演奏者のペダル操作により音量ボリュームをコントロールできるエクスプレッションペダル装置である。
図1は、実施形態であるエクスプレッションペダル装置100のブロック図である。
【0012】
エクスプレッションペダル装置100の外観は、ペダル部102がペダルケース部101にペダル回転軸103を軸として回転可能に取り付けられている。演奏者は、ペダル部102を足で踏むことにより、踏み込む量に応じて特には図示しない電子楽器の発音音量を制御することができる。このために、エクスプレッションペダル装置100は、演奏者がペダル部102を踏み込んだ量に応じた楽器用信号を、電子楽器に供給する。なお、演奏者がペダル部102を踏むことによってコントロールするパラメータは、音量ボリュームに限られず、例えばワウワウやディストーション等の音響効果であってもよい。ペダルケース部101の上部には、ペダルの操作状態を表示するためのLED表示部104が具備されている。ペダルケース部101の側面には、電子楽器との間をステレオ標準フォーンプラグケーブルにて接続するための楽器接続ジャック部105が具備されている。
【0013】
ペダルケース部101には、制御システム110が内蔵されている。制御システム110において、判別部及び制御部として動作するマイコン111は、エクスプレッションペダル装置100の全体の動作を制御する。マイコン111は、A/D変換部112とPWM信号発生部113を内蔵している。
【0014】
特には図示しない電子楽器のエクスプレッションペダル接続ジャックと、エクスプレッションペダル装置100の楽器接続ジャック部105は、ステレオ標準フォーンプラグケーブルによって接続される。このケーブルのステレオ標準フォーンプラグは、例えば
図2の210として示されるように、TIP接点201、RING接点202、及びSLEEVE接点203の3つの接点を有するプラグである。各接点間は絶縁材料により絶縁されている。TIP接点201、RING接点202、及びSLEEVE接点203にはそれぞれ、TIP線204、RING線205、及びSLEEVE線206を介して電子楽器の内部回路と接続されている。
【0015】
ステレオ標準フォーンプラグは、
図1の楽器接続ジャック部105に挿入されることにより、ステレオ標準フォーンプラグのTIP接点201、RING接点202、及びSLEEVE接点203がそれぞれ、楽器接続ジャック部105内のTIP端子125、RING端子126、及びSLEEVE端子127に接続される。
【0016】
楽器接続ジャック部105のTIP端子125は、スイッチ部の一部である第1スイッチ(図中「第1SW」と表記)114に接続される。第1スイッチ114は、スイッチ可能な第1スイッチ端子t1と第2スイッチ端子t2を備え、マイコン111からスイッチ制御が可能な電子スイッチである。
【0017】
第1スイッチ114の第1スイッチ端子t1は、レベルシフタ119を介して、マイコン111内のA/D変換部112の端子AIN1に接続される。また、上記第1スイッチ端子t1には、第2の端子が電子楽器側から接地レベルを供給するSLEEVE端子127に接続された抵抗117の第1の端子に接続される。レベルシフタ119は、特には図示しない第1の電源端子で電池128から電源スイッチ129を介して内部電源の供給を受け、特には図示しない第2の電源端子は電子楽器側から接地レベルを供給するSLEEVE端子127に接続される。そして、レベルシフタ119は、第1スイッチ114の第1スイッチ端子t1を介して電圧信号が入力する場合に、抵抗117が接続される部分の電圧値をA/D変換部112で監視できる電圧値に変換する。
【0018】
第1スイッチ114の第2スイッチ端子t2は、楽器用信号123を出力する後述するLPF(ローパスフィルタ)122に接続される。
【0019】
楽器接続ジャック部105のRING端子126は、スイッチ部の一部である第2スイッチ(図中「第2SW」と表記)115に接続される。第2スイッチ115は、スイッチ可能な第1スイッチ端子t1と第2スイッチ端子t2を備え、マイコン111からスイッチ制御が可能な電子スイッチである。
【0020】
第2スイッチ115の第1スイッチ端子t1は、レベルシフタ120を介して、マイコン111内のA/D変換部112の端子AIN2に接続される。また、上記第1スイッチ端子t1には、第2の端子が電子楽器側から接地レベルを供給するSLEEVE端子127に接続された抵抗118の第1の端子に接続される。レベルシフタ120は、特には図示しない第1の電源端子で電池128から電源スイッチ129を介して内部電源の供給を受け、特には図示しない第2の電源端子は電子楽器側から接地レベルを供給するSLEEVE端子127に接続される。そして、レベルシフタ120は、第2スイッチ115の第1スイッチ端子t1を介して電圧信号が入力する場合に、抵抗118が接続される部分の電圧値をA/D変換部112で監視できる電圧値に変換する。
【0021】
第2スイッチ115の第2スイッチ端子t2は、楽器用信号123を出力する後述するLPF122に接続される。
【0022】
電子楽器からの電源電圧を入力するためのスイッチ部の一部である第3スイッチ(図中「第3SW」と表記)116の第1スイッチ端子t1は第1スイッチ114の第1スイッチ端子t1に接続され、第3スイッチ116の第2スイッチ端子t2は第2スイッチ115の第1スイッチ端子t1に接続され、第3スイッチ116の第3スイッチ端子t3は、電池128が接続される電源スイッチ129に接続される。第3スイッチ116は、マイコン111からスイッチ制御が可能な電子スイッチである。第3スイッチ116は、第3スイッチ116の第1スイッチ端子t1、第3スイッチ116の第2スイッチ端子t2、又は第3スイッチ116の第3スイッチ端子t3を介して入力する電源電圧を、レベルシフタ121の特には図示しない第1の電源端子に供給する。レベルシフタ121の特には図示しない第2の電源端子は、電子楽器側から接地レベルを供給するSLEEVE端子127に接続される。そして、レベルシフタ121は、後述するマイコン111内のPWM(パルス幅変調)信号発生部113が出力するPWM信号130の電圧レベルを、電子楽器側で処理可能な電圧レベルに変換する。
【0023】
ボリューム可変抵抗124は、第1の固定端子に第3スイッチ116から供給される電源電圧が入力し、第2の固定端子がSLEEVE端子127が接続される接地線に接続される。そして、ボリューム可変抵抗124の可変端子はエクスプレッションペダル装置100のペダル部102が演奏者によって踏み込まれることによって可変摺動し、その可変端子から検出される電圧値がマイコン111内のA/D変換部112の端子AIN0にてデジタルの演奏操作信号の可変電圧値として検出される。
【0024】
マイコン111は、上記ボリューム可変抵抗124の可変電圧値をA/D変換部112の端子AIN0を介して検出し、その可変電圧値に応じてパルス幅変調されたPWM信号130を、PWM信号発生部113に発生させる。
【0025】
このPWM信号130は、レベルシフタ121で電圧変換された後に、LPF122で平滑化され、そのLPF122の出力が楽器用信号123として、第1スイッチ114又は第2スイッチ115の第1スイッチ端子t1を介して、TIP端子125又はRING端子126から電子楽器に向けて出力される。
【0026】
このほかマイコン111には、LED表示部104が接続される。マイコン111は、エクスプレッションペダル装置100の演奏者による操作状態(例えば、ペダル部102の踏込み量)や、後述するエラー表示などを、LED表示部104にデジタル表示させる。
【0027】
図1の構成を有するエクスプレッションペダル装置100及びそれが内蔵する制御システム110の動作について、
図3のフローチャートに従って説明する。
図3は、
図1のマイコン111が実行する制御処理の例を示すフローチャートである。この制御処理は、マイコン111が、内部の特には図示しないメモリに記憶された制御プログラムを実行する処理である。
【0028】
図1の電源スイッチ129が投入されると、マイコン111はまず、初期化処理を実行する(
図3のステップS301)。この初期化処理において、マイコン111は、
図1の第1スイッチ(図中「第1SW」と表記)114に第1スイッチ端子t1を選択させ、
図1の第2スイッチ(図中「第2SW」と表記)115に第1スイッチ端子t1を選択させ、
図1の第3スイッチ(図中「第3SW」と表記)116に第3スイッチ端子t3を選択させる。この結果、マイコン111は、特には図示しない電子楽器からステレオ標準フォーンプラグケーブルが楽器接続ジャック部105に接続されるのを待機する状態になる。
【0029】
ステレオ標準フォーンプラグケーブルの接続待機状態において、楽器接続ジャック部105のTIP端子125の信号レベルが、第1スイッチ114の第1スイッチ端子t1からペダル内部の電池128によって動作するレベルシフタ119を介して、同じく電池128によって動作するマイコン111内のA/D変換部112の端子AIN1にてデジタル値として検出される。
【0030】
また、楽器接続ジャック部105のRING端子126の信号レベルが、第2スイッチ115の第1スイッチ端子t1から電池128によって動作するレベルシフタ120を介して、電池128によって動作するマイコン111内のA/D変換部112の端子AIN2にてデジタル値として検出される。
【0031】
更に、PWM信号130の電圧値を変換するレベルシフタ121は、電源投入当初は、第3スイッチ116の第3スイッチ端子t3を介して供給される電池128からの電源電圧によって動作する。
【0032】
この状態において、マイコン111は、内部のA/D変換部112の端子AIN1が検出する電圧値が論理的にハイレベルとなり、かつ同じく端子AIN2が検出する電圧値が論理的にローレベルとなったか否かを判定する(
図3のステップS302)。
【0033】
ステップS302の判定がYESならば、マイコン111は、
図1の第1スイッチ114に第1スイッチ端子t1を選択させ、
図1の第2スイッチ115に第2スイッチ端子t2を選択させ、
図1の第3スイッチ116に第1スイッチ端子t1を選択させる。その上で、マイコン111は、内部のPWM信号発生部113をオンして、エクスプレッションペダル装置100の動作を開始させる(以上、
図3のステップS303)。
【0034】
上述のように、ステップS302の判定がYESとなった時点で、マイコン111は、楽器接続ジャック部105に電子楽器に接続されているステレオ標準フォーンプラグケーブルが接続されたことを認識し、その電気状態が、
図2(a)に示されるタイプ1の電気状態であると判定する。
図2(a)に示されるように、タイプ1の電気状態では、電子楽器の側において、ステレオ標準フォーンプラグのTIP接点201に、そのTIP接点201に接続されているTIP線204に、電子楽器内部の電源207が接続される。また、ステレオ標準フォーンプラグのRING接点202に、そのRING接点202に接続されているRING線205に、エクスプレッションペダル装置100側からの楽器用信号を検出するための信号回路208が接続される。更に、ステレオ標準フォーンプラグのSLEEVE接点203に、そのSLEEVE接点203に接続されているSLEEVE線206に、接地レベル209が接続される。
【0035】
マイコン111は、
図3のステップS303の制御を実行してエクスプレッションペダル装置100の動作を開始することにより、
図1の制御システム110に以下の制御動作を実行させることができる。
【0036】
まず、
図2(a)のタイプ1の電源状態により、電子楽器に接続されているステレオ標準フォーンプラグのTIP線204及びTIP接点201から楽器接続ジャック部105のTIP端子125を介して入力する電子楽器の電源207からの電源電圧が、第1スイッチ114の第1スイッチ端子t1から第3スイッチ116の第1スイッチ端子t1を介してレベルシフタ121に供給される。
【0037】
また、
図2(a)の電源状態により、LPF122から出力される楽器用信号123が、第2スイッチ115の第2スイッチ端子t2から楽器接続ジャック部105のRING端子126を介して出力される。この結果、上記楽器用信号123が、電子楽器に接続されているステレオ標準フォーンプラグのRING接点202からRING線205を介して、電子楽器内の信号回路208に供給される。
【0038】
このようにして、
図2(a)のタイプ1の電源状態を具備する電子楽器が、ステレオ標準フォーンプラグケーブルによって、
図1のエクスプレッションペダル装置100の楽器接続ジャック部105に接続されるだけで、電子楽器からエクスプレッションペダル装置100への電源供給と、エクスプレッションペダル装置100から電子楽器への楽器用信号123の供給を、自動的に正しく行うことができる。
【0039】
ステップS302の判定がNOならば、次にマイコン111は、内部のA/D変換部112の端子AIN1が検出する電圧値が論理的にローレベルであり、かつ同じく端子AIN2が検出する電圧値が論理的にハイレベルであるか否かを判定する(
図3のステップS304)。
【0040】
ステップS304の判定がYESならば、マイコン111は、
図1の第1スイッチ114に第2スイッチ端子t2を選択させ、
図1の第2スイッチ115に第1スイッチ端子t1を選択させ、
図1の第3スイッチ116に第2スイッチ端子t2を選択させる。その上で、マイコン111は、内部のPWM信号発生部113をオンして、エクスプレッションペダル装置100の動作を開始させる(以上、
図3のステップS305)。
【0041】
上述のように、ステップS304の判定がYESとなった時点で、マイコン111は、楽器接続ジャック部105に電子楽器に接続されているステレオ標準フォーンプラグケーブルが接続されたことを認識し、その電気状態が、
図2(b)に示されるタイプ2の電気状態であると判定する。
図2(b)に示されるように、タイプ2の電気状態では、電子楽器の側において、ステレオ標準フォーンプラグのTIP接点201に、そのTIP接点201に接続されているTIP線204に、エクスプレッションペダル装置100側からの楽器用信号を検出するための信号回路208が接続される。また、ステレオ標準フォーンプラグのRING接点202に、そのRING接点202に接続されているRING線205に、電子楽器内部の電源207が接続される。更に、ステレオ標準フォーンプラグのSLEEVE接点203に、そのSLEEVE接点203に接続されているSLEEVE線206に、接地レベル209が接続される。
【0042】
マイコン111は、
図3のステップS305の制御を実行してエクスプレッションペダル装置100の動作を開始することにより、
図1の制御システム110に以下の制御動作を実行させることができる。
【0043】
まず、
図2(b)のタイプ2の電源状態により、電子楽器に接続されているステレオ標準フォーンプラグのRING線205及びRING接点202から楽器接続ジャック部105のRING端子126を介して入力する電子楽器の電源207からの電源電圧が、第2スイッチ115の第1スイッチ端子t1から第3スイッチ116の第2スイッチ端子t2を介してレベルシフタ121に供給される。
【0044】
また、
図2(b)の電源状態により、LPF122から出力される楽器用信号123が、第1スイッチ114の第2スイッチ端子t2から楽器接続ジャック部105のTIP端子125を介して出力される。この結果、上記楽器用信号123が、電子楽器に接続されているステレオ標準フォーンプラグのTIP接点201からTIP線204を介して、電子楽器内の信号回路208に供給される。
【0045】
このようにして、
図2(b)のタイプ2の電源状態を具備する電子楽器が、ステレオ標準フォーンプラグケーブルによって、
図1のエクスプレッションペダル装置100の楽器接続ジャック部105に接続されるだけで、電子楽器からエクスプレッションペダル装置100への電源供給と、エクスプレッションペダル装置100から電子楽器への楽器用信号123の供給を、自動的に正しく行うことができる。
【0046】
ステップS304の判定がNOならば、更にマイコン111は、内部のA/D変換部112の端子AIN1が検出する電圧値と、同じく端子AIN2が検出する電圧値が共に論理的にハイレベルであるか否かを判定する(
図3のステップS306)。
【0047】
ステップS306の判定がYESならば、マイコン111は、楽器接続ジャック部105に電子楽器に接続されているステレオ標準フォーンプラグケーブルが接続されたことを認識し、その接続状態が異常であることを認識する。これによりマイコン111は、電子楽器との接続状態にエラーがあるとして、
図1のLED表示部104に、エラー状態を表示させる(
図3のステップS307)。
【0048】
ステップS306の判定もNOならば、マイコン111は、楽器接続ジャック部105にはまだケーブルは接続されていないことを認識し、
図1の制御システム110の第1スイッチ114、第2スイッチ115、及び第3スイッチ116の状態は初期状態のまま変化させずに、
図3のステップS302の判定処理に戻って接続待機状態を続行する。
【0049】
図4は、
図1のPWM信号130を楽器用信号123として使用することの効果を示す動作波形図である。上述したように、本実施形態では、通常のエクスプレッションペダルで使われているボリューム可変抵抗による電圧分割値をそのまま出力するのではなく、ボリューム可変電圧値をマイコン111内のA/D変換部112からPWM信号発生部113を介して電圧値を出力するようにした。これにより、本実施形態では、従来問題であった、電子楽器とのインピーダンスマッチングの問題を解消することが可能となる。従来、エクスプレッションペダルでは、電子楽器の本体側から供給される電源電圧がボリューム可変抵抗で分圧されていた。この場合の可変抵抗値は、10kΩから50kΩと大きいため、電子楽器の音源LSIのように複数チャネル(例えば8チャネル)を内部のマルチプレクサで1つの信号にして処理するタイプのA/D変換器では、電圧を検出しようとする際に、1つ前の時分割チャネルの波形の影響を受けて、波形がなまるなどして正確な値を検出できない場合があった。
【0050】
図4(a)は、従来の電圧分圧型の出力は波形例を示した図である。複数チャネル分が時分割処理されることにより、1チャネル分の波形出力は
図4(a)に示されるように櫛形となっているが、その場合に大きな値の分圧抵抗値の影響を受けて波形がなまってしまい、電子楽器側の時分割のA/D変換のタイミングで正しい電圧値を取得できない場合がある。
【0051】
図4(b)は、本実施形態におけるPWM信号130に基づく出力電圧の波形例を示した図である。本実施形態の場合は、PWM信号130により任意電圧が出力されるため、電子楽器とエクスプレッションペダル装置100との間のインピーダンスマッチングの問題がなくなり、
図4(b)に示される1チャネル分の櫛形の波形出力は波形がほとんどなまらず、電子楽器側の時分割のA/D変換のタイミングで正しい電圧値を取得することが可能となる。
【0052】
上記の場合に限らず、本発明によれば楽器側の入力がどのような状態であっても、いわゆるロー出しハイ受け(ローインピーダンスで出力し、ハイインピーダンスで受ける)と呼ばれる信号結線状態を実現でき、高域の減少など信号の劣化を抑えることが可能となる。
【0053】
このように、本実施形態では、電子楽器の仕様によらずに電子楽器とエクスプレッションペダル装置100との間の接続マッチングを正しく行うことが可能となる。
【0054】
本実施形態において、
図1の内部電池128は、電源スイッチ129によりエクスプレッションペダル装置100の電源が投入された後、楽器接続ジャック部105にステレオ標準フォーンプラグケーブルが接続されるまでの間は、制御システム110内の各部分に電源を供給するが、ケーブルが接続され
図3のフローチャートで例示される処理により、ステップS303又はS305の電気状態が決定した後は、第3スイッチ116を介して電子楽器からの電源供給を受けることができる。その場合に、マイコン111を含む全ての電源供給において、電池128かから電子楽器側の電源供給(第3スイッチ116の出力)に切り替えることにより、電池128の消耗を大幅に抑えることが可能となる。
【0055】
本実施形態では、ステレオ標準フォーンプラグのTIP接点201とRING接点202の電気状態が異なり、SLEEVE接点203は接地レベル209に固定される(
図2参照)場合の例について説明したが、SLEEVE接点203の電気状態が変わる場合についても、その電圧レベルを監視することにより、同様に適用することが可能となる。
【0056】
本実施形態では、エクスプレッションペダル装置に本発明の技術を適用した例について説明したが、本発明はエクスプレッションペダル装置以外の各種フットペダルやエフェクトペダル等に適用することも可能である。
【0057】
以上の実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
演奏者の演奏操作による操作に応じた操作信号を取得する操作信号取得部と、
前記操作信号の値に応じた変調度でパルス幅変調されたパルス幅変調信号を生成し、前記パルス幅変調信号を楽器用信号として電子楽器に供給するパルス幅変調信号生成部と、
を備える楽器用信号出力装置。
(付記2)
前記パルス幅変調信号の出力段に、前記パルス幅変調信号の出力レベルを前記電子楽器の入力レベルに合うようにレベル変換して出力するレベルシフタを更に備える、付記1に記載の楽器用信号出力装置。
(付記3)
前記パルス幅変調信号の出力段に、前記パルス幅変調信号を平滑化して出力するローパスフィルタを更に備える、付記1又は2の何れかに記載の楽器用信号出力装置。
(付記4)
演奏者による操作に応じた操作信号を取得し、
前記操作信号の値に応じた変調度でパルス幅変調されたパルス幅変調信号を生成し、前記パルス幅変調信号を楽器用信号として電子楽器に供給する、
楽器用信号出力装置における楽器用信号の制御方法。
【符号の説明】
【0058】
100 エクスプレッションペダル
101 ペダルケース部
102 ペダル部
103 ペダル回転軸
104 LED表示部
105 楽器接続ジャック部
110 制御システム
111 マイコン
112 A/D変換部
113 PWM信号発生部
114 第1スイッチ
115 第2スイッチ
116 第3スイッチ
117、118 抵抗
119、120、121 レベルシフタ
122 LPF
123 楽器用信号
124 ボリューム抵抗
125 電池
126 電源スイッチ