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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】流体作動機械
(51)【国際特許分類】
   F03C 1/12 20060101AFI20250212BHJP
   F04B 1/0452 20200101ALI20250212BHJP
【FI】
F03C1/12
F04B1/0452
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023123115
(22)【出願日】2023-07-28
(65)【公開番号】P2025019482
(43)【公開日】2025-02-07
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】竹本 翔一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】本田 拓
(72)【発明者】
【氏名】北本 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】岡 祐介
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀生
(72)【発明者】
【氏名】淺坂 雅史
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-521518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03C 1/12
F04B 1/0452
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力軸を回転させるピストンが内部で往復運動するシリンダ室と、
流体収容部から前記シリンダ室に流体を供給する開状態と、前記流体収容部から前記シリンダ室に前記流体を供給しない閉状態とを切り替え可能なバルブユニットと、
前記動力軸の回転開始時に、前記閉状態から、前記閉状態と前記開状態の間の中間状態に遷移させる制御部と、
を備え、
前記バルブユニットは、
前記開状態に切り替える開放位置と、前記閉状態に切り替える閉塞位置との間で移動する主バルブと、
前記主バルブの軸部を囲んでおり、前記軸部に対して移動して前記主バルブを貫通している貫通路の閉塞と開放を行う移動部材を含む副バルブと、を有し、
前記制御部は、前記主バルブが前記閉塞位置に位置する状態で前記移動部材によって前記貫通路を開放させることで、前記中間状態に遷移させる、
流体作動機械。
【請求項2】
前記制御部は、前記動力軸の回転開始時に、前記バルブユニットを動作させる通電のオン・オフを繰り返して、前記中間状態に遷移させる、
請求項1に記載の流体作動機械。
【請求項3】
前記主バルブは、前記閉状態の場合には前記シリンダ室との連通部を閉塞する前記閉塞位置に位置し、前記閉状態の場合には前記連通部を開放する前記開放位置に位置し、
前記制御部は、前記主バルブが前記閉塞位置に位置する状態で前記貫通路を開放して前記連通部と連通させることで、前記中間状態に遷移させる、
請求項に記載の流体作動機械。
【請求項4】
前記バルブユニットは、前記移動部材を移動させる磁力を発生するために通電を受けるコイルを更に有し、
前記制御部は、前記主バルブが前記閉塞位置に位置する状態で、前記コイルへの通電のオン・オフを繰り返して、前記貫通路を閉塞する閉塞位置と前記貫通路を開放する開放位置との間で前記移動部材を往復移動させる、
請求項に記載の流体作動機械。
【請求項5】
前記シリンダ室の圧力を検出するための圧力センサを更に備え、
前記制御部は、前記圧力センサの検出結果に基づいて、前記通電のオン・オフを制御する、
請求項2に記載の流体作動機械。
【請求項6】
前記流体作動機械は、車両に搭載されており、
前記制御部は、前記車両の発進時に、前記バルブユニットを前記閉状態から、前記閉状態と前記開状態の間の中間状態に遷移させる、
請求項1に記載の流体作動機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体作動機械及びバルブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
流体作動機械として、車両に搭載されているポンプモータが利用されている。下記の特許文献1のポンプモータにおいては、ピストンが並進運動するシリンダにオイルを供給することで、ピストンによって動力軸であるクランクシャフトを回転させて、動力を伝達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-55018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術では、高圧チャンバからシリンダにオイルを供給するためにバルブを開いた際に、シリンダ内の圧力が高圧チャンバの圧力と同じになる。このため、動力軸によるトルクが大きくなり、例えば車両の発進時に必要な小さなトルクを発生させることが困難である。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、流体作動機械の動作開始時に小トルクを発生させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、動力軸を回転させるピストンが内部で往復運動するシリンダ室と、流体収容部から前記シリンダ室に流体を供給する開状態と、前記流体収容部から前記シリンダ室に前記流体を供給しない閉状態とを切り替え可能なバルブユニットと、前記動力軸の回転開始時に、前記閉状態から、前記閉状態と前記開状態の間の中間状態に遷移させる制御部と、を備える、流体作動機械を提供する。
【0007】
また、前記制御部は、前記動力軸の回転開始時に、前記バルブユニットを動作させる通電のオン・オフを繰り返して、前記中間状態に遷移させることとしてもよい。
【0008】
また、前記バルブユニットは、前記開状態に切り替える開放位置と、前記閉状態に切り替える閉塞位置との間で移動する主バルブと、前記主バルブを貫通している貫通路を閉塞又は開放する副バルブと、を有し、前記制御部は、前記主バルブが前記閉塞位置に位置する状態で前記貫通路を開放させることで、前記中間状態に遷移させることとしてもよい。
【0009】
また、前記主バルブは、前記閉状態の場合には前記シリンダ室との連通部を閉塞する前記閉塞位置に位置し、前記閉状態の場合には前記連通部を開放する前記開放位置に位置し、前記制御部は、前記主バルブが前記閉塞位置に位置する状態で前記貫通路を開放して前記連通部と連通させることで、前記中間状態に遷移させることとしてもよい。
【0010】
また、前記副バルブは、前記主バルブに対して移動して、前記貫通路の開閉を行う移動部材を有し、前記制御部は、前記主バルブが前記閉塞位置に位置する状態で前記移動部材によって前記貫通路を開放することで、前記中間状態に遷移させることとしてもよい。
【0011】
また、前記バルブユニットは、前記移動部材を移動させる磁力を発生するために通電を受けるコイルを更に有し、前記制御部は、前記主バルブが前記閉塞位置に位置する状態で、前記コイルへの通電のオン・オフを繰り返して、前記貫通路を閉塞する閉塞位置と前記貫通路を開放する開放位置との間で前記移動部材を往復移動させることとしてもよい。
【0012】
また、前記シリンダ室の圧力を検出するための圧力センサを更に備え、前記制御部は、前記圧力センサの検出結果に基づいて、前記通電のオン・オフを制御することとしてもよい。
【0013】
また、前記流体作動機械は、車両に搭載されており、前記制御部は、前記車両の発進時に、前記バルブユニットを前記閉状態から、前記閉状態と前記開状態の間の中間状態に遷移させることとしてもよい。
【0014】
本発明の第2の態様においては、収容部から供給された流体をシリンダ室への供給を制御するバルブユニットであって、前記収容部と接続する第1流路と、前記シリンダ室と接続する第2流路と、前記第1流路と前記第2流路との間の第3流路と、前記第3流路に設けられ、前記第3流路を閉塞する閉塞位置と、前記第3流路を開放する開放位置と、の間を移動可能な主バルブと、前記主バルブに設けられ、前記主バルブが前記閉塞位置にある状態で前記第1流路と前記第2流路とを接続する第4流路と、前記第4流路を開放または閉塞する副バルブと、を有し、前記第4流路の流抵抗は、前記第3流路の流抵抗よりも高い、バルブユニットを提供する。
【0015】
また、前記主バルブと前記副バルブを制御する制御部を有し、前記制御部は、前記流体が前記第3流路を流れる第1状態と、前記主バルブが前記閉塞位置にあり、かつ、前記第4流路が閉塞されている第2状態と、を切り替える第1の動作モードと、前記流体が前記第4流路を流れる第3状態と、前記第2状態と、を切り替える第2の動作モードとで、前記バルブユニットを動作させることとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、流体作動機械の動作開始時に小トルクを発生させられるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一の実施形態に係る流体作動機械1の構成を示す模式図である。
図2】バルブユニット31の内部構成を示す模式図である。
図3】バルブユニット31の内部構成を示す模式図である。
図4】バルブユニット31の内部構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<流体作動機械の構成>
一の実施形態に係る流体作動機械の構成について説明する。以下の説明では、流体作動機械の一例として、油圧ポンプモータを例に挙げて説明するが、流体作動機械は油圧ポンプモータに限定されない。流体作動機械は、流体機械とも呼ばれ、一般に流体と機械の間でエネルギー変換をする装置である。流体としては、水や油などの液体や空気やガスなどの気体が用いられ、流体の密度・粘度などの性質により低速回転用、高速回転用などの用途が異なる。
【0019】
図1は、一の実施形態に係る流体作動機械1の構成を示す模式図である。流体作動機械1は、ここではトラック等の車両に搭載されている。流体作動機械1は、一例として、車両の変速機と連結しており、発生した動力を車両の駆動輪に伝達できる構成となっている。
【0020】
流体作動機械1は、シリンダ室11、12、13、14と、供給路16と、圧力センサ18と、ピストン21、22、23、24と、クランクシャフト26と、バルブユニット31、32、33、34と、制御部70を有する。なお、4つのシリンダ室11~14及び4つのピストン21~24が設けられていることとしたが、これに限定されず、シリンダ室及びピストンの数は、3つ又は5つ以上であってもよい。
【0021】
シリンダ室11~14は、クランクシャフト26の周囲に配置されている。4つのシリンダ室11~14は、周方向に沿って等間隔(具体的には、90度間隔)で配置されている。
【0022】
供給路16は、流体を収容する流体収容部19とシリンダ室11~14を繋ぐ流路である。ここでは、供給路16は、4つのシリンダ室11~14に流体を供給できるように、分岐している。流体収容部19は、ここでは高圧の流体を収容する高圧チャンバである。
【0023】
圧力センサ18は、シリンダ室11~14内の圧力を検出する。ここでは、シリンダ室11~14の各々に、圧力センサ18が設けられており、各シリンダ室11~14の圧力が検出される。
【0024】
ピストン21~24は、シリンダ室11~14の内部で往復運動する。ピストン21~24が往復運動することで、ピストン21~24が接するクランクシャフト26が回転する。
【0025】
クランクシャフト26は、動力を伝達する動力軸である。クランクシャフト26は、シャフト部27と、カム部28を有する。
シャフト部27は、クランクシャフト26の回転軸である。カム部28は、シャフト部27の外周に偏心するように設けられている。カム部28の外周面には、ピストン21~24が接する。この構成により、ピストン21~24の往復運動が、カム部28を介してシャフト部27の回転運動に変換される。
【0026】
バルブユニット31~34は、流体収容部19からシリンダ室11~14への流体の流れを調整する。バルブユニット31~34の各々は、対応するシリンダ室11~14の各々への流体の流れを調整する。例えば、バルブユニット31は、シリンダ室11への流体の流れを調整する。バルブユニット31~34は、供給路16からシリンダ室11~14への経路の途中に設けられている。バルブユニット31~34は、流体収容部19からシリンダ室11~14に流体を供給する開状態と、流体収容部19からシリンダ室11~14に流体を供給しない閉状態とを切り替え可能である。なお、バルブユニット31~34の詳細構成については、後述する。
【0027】
制御部70は、流体作動機械1の動作全体を制御する。例えば、制御部70は、シリンダ室11~14に流体を供給する開状態とシリンダ室11~14に流体を供給しない閉状態との間で遷移するように、バルブユニット31~34を制御する。
【0028】
<バルブユニットの詳細構成>
バルブユニット31~34の構成は同一であるので、以下では、バルブユニット31を例に挙げて、バルブユニットの内部構成の詳細について説明する。
【0029】
図2図4は、バルブユニット31の内部構成を示す模式図である。バルブユニット31は、筐体40と、流路部42と、連通部44と、主バルブ46と、貫通路48と、第1ばね50と、移動部材52と、第2ばね54と、コイル56を有する。
【0030】
筐体40は、バルブユニット31の本体を成している。筐体40内に流路部42等が設けられている。
【0031】
流路部42は、供給路16と連通しており、供給路16から流体が流路部42に流入する流路である。流路部42は、図2図4に示すように、筐体40を貫通するように設けられている。なお、供給路16は、ここでは、図2等に示す流路部42の長手方向の両端と繋がっている(図3及び図4では、説明の便宜上、流路部42の下側からの流入のみが示されている)。
【0032】
連通部44は、シリンダ室11と連通しており、バルブユニット31内の流体が連通部44からシリンダ室11に流れる流路である。連通部44は、流路部42に直交するように設けられている。連通部44の幅は、流路部42の幅よりも小さい。
【0033】
主バルブ46は、シリンダ室11に流体を供給する開状態に切り替える開放位置と、シリンダ室11に流体を供給しない閉状態に切り替える閉塞位置の間で移動するバルブである。具体的には、主バルブ46は、連通部44を閉塞する閉塞位置(図2に示す位置)と、連通部44を開放する開放位置(図4に示す位置)とに位置する。主バルブ46が開放位置に位置すると、シリンダ室11に流体が供給される開状態となり、主バルブ46が閉塞位置に位置すると、シリンダ室11に流体が供給されない閉状態となる。主バルブ46が開放位置にある場合、図4に示すように、流路部42と連通部44とを接続する流路部49を流体が通過して、シリンダ室11に流体が供給される。言い換えると、主バルブ46は、流路部42と連通部44とを接続する流路部49(図4)に設けられ、流路部49を閉塞する閉塞位置と、流路部49を開放する開放位置との間を移動可能なバルブであるといえる。
【0034】
主バルブ46は、軸部47aと大径部47bを有する。
軸部47aは、筐体40のガイド凹部41に沿って軸方向に移動可能となっている。ガイド凹部41は、流路部42から見て、連通部44とは反対側に設けられている。軸部47aが軸方向に移動することで、主バルブ46が閉塞位置又は開放位置に位置する。
【0035】
大径部47bは、軸部47aの先端に設けられており、大径部47bの直径は軸部47aの直径よりも大きい。大径部47bの先端面は、湾曲した凸面となっている。主バルブ46が閉塞位置に位置する際には、大径部47bの先端面が、図2に示すように連通部44を閉塞する。一方で、主バルブ46が開放位置に位置する際には、大径部47bの先端面が、図4に示すように連通部44から離れている。
大径部47bは、筐体40内の流路部49(図4参照)に位置する。流路部49は、図4に示すように、流路部42(第1流路)と連通部44(第2流路)の間に位置する第3流路である。大径部47bは、主バルブ46が閉塞位置に位置する際に流路部49を閉塞し(図2参照)、主バルブ46が開放位置に位置する際に流路部49を開放する(図4参照)。
【0036】
貫通路48は、主バルブ46を貫通するように設けられた第4流路である。貫通路48は、ここでは、軸部47aの外周面と大径部47bの先端面との間を貫通するように、T字状に形成されている。ただし、これに限定されず、貫通路48は、L字状に形成されていてもよい。貫通路48は、主バルブ46が閉塞位置にある状態で流路部42と連通部44とを接続する流路である。貫通路48を設けることで、例えば主バルブ46が閉塞位置に位置していても、流路部42の流体が、貫通路48を経由して連通部44に流れることが可能となっている。貫通路48は細い流路となっており、貫通路48の幅は連通部44の幅よりも小さい。すなわち、貫通路48における流抵抗は、主バルブ46が開放位置に位置する場合において流路部42から連通部44をつなぐ流路部49における流抵抗よりも高い。
【0037】
第1ばね50は、ガイド凹部41内に設けられている。第1ばね50は、ここでは圧縮ばねであり、主バルブ46を連通部44に向けて押している。第1ばね50は、主バルブ46の軸部47aの端面とガイド凹部41の底面とに接している。第1ばね50が主バルブ46を押すことによって、主バルブ46は連通部44を閉塞する閉塞位置に位置する。
【0038】
移動部材52は、主バルブ46に対して移動可能に設けられている。移動部材52は、強磁性体であり、コイル56が発生した磁力によって移動可能である。具体的には、移動部材52は、磁力によって、主バルブ46の大径部47bから離れる方向に移動する。移動部材52は、主バルブ46の軸部47aを囲むように設けられ、軸部47aの軸方向に移動可能である。移動部材52は、貫通路48を閉塞する閉塞位置(図2に示す位置)と、貫通路48を開放する開放位置(図3に示す位置)との間で移動する。このため、移動部材52は、貫通路48の開閉を行う。
【0039】
第2ばね54は、主バルブ46の軸部47aを覆うように設けられている。第2ばね54は、ここでは圧縮ばねであり、移動部材52を大径部47bに向けて押している。第2ばね54は、移動部材52の側面と軸部47aのフランジ部47cとに接している。第2ばね54が移動部材52を押すことによって、移動部材52は貫通路48を閉塞する閉塞位置に位置する。
【0040】
コイル56は、主バルブ46の周囲に設けられている。コイル56が通電を受けると、コイル56の周囲に磁力が発生し、移動部材52が磁力によって移動する。具体的には、磁力によって、移動部材52は、第2ばね54の押す力に逆らい、貫通路48を閉塞する閉塞位置から開放位置へ移動する。コイル56への通電がオフになると、移動部材52は、開放位置から閉塞位置へ戻る。本実施形態では、移動部材52、第2ばね54及びコイル56が、主バルブ46を貫通している貫通路48を閉塞又は解放する副バルブとして機能する。
【0041】
ここで、シリンダ室11に流体を供給しない閉状態から、シリンダ室11に流体を供給する開状態へ遷移する際の、バルブユニット31の動作例を説明する。バルブユニット31の動作は、制御部70によって制御される。なお、バルブユニット32~34も、バルブユニット31と同様に動作する。
【0042】
ここでは、バルブユニット31が閉状態にあるものとある。この場合、主バルブ46は、図2に示すように閉塞位置に位置して連通部44を閉塞している。また、コイル56が通電を受けていないため、移動部材52は、貫通路48を閉塞している。このため、流路部42の流体が、連通部44を介してシリンダ室11へ流れない。
【0043】
閉状態から開状態へ遷移する際には、まず、コイル56に通電が行われる。コイル56に通電が行われると、コイル56によって磁力が発生する。磁力が発生すると、移動部材52は、第2ばね54の押す力に逆らって、貫通路48を閉塞している閉塞位置(図2)から、貫通路48を開放している開放位置(図3)へ移動する。
【0044】
移動部材52が開放位置へ移動すると、貫通路48が開放されることで、流路部42の流体が貫通路48を介して連通部44へ流れる(図3)。そして、連通部44へ流れた流体は、シリンダ室11に流入することになる。
【0045】
その後、連通部44の流体から主バルブ46に圧力が作用し、主バルブ46は、第1ばね50の押す力に逆らって、閉塞位置から開放位置(図4)へ移動する。なお、主バルブ46が開放位置へ移動すると、貫通路48が移動部材52によって閉塞される。
【0046】
主バルブ46が開放位置へ移動すると、連通部44が開放されることで、流路部42の流体が、貫通路48を介さずに連通部44へ直接流れる(図4)。これにより、シリンダ室11に流体が流れやすくなり、シリンダ室11の圧力を高くすることができる。シリンダ室11の圧力が大きくなることで、クランクシャフト26が伝達するトルクも大きくなる。
【0047】
制御部70は、上述した構成のバルブユニット31~34を、第1の動作モード又は第2の動作モードで動作させる。第1の動作モードは、流体が流路部49を流れ第1状態(図4に示す開状態)と、主バルブ46が閉塞位置にあり、かつ貫通路48が閉塞されている第2状態(図2に示す閉状態)とを切り替える動作モードである。第2の動作モードは、流体が貫通路48を流れる第3状態(図3に示す状態)と、第2状態とを切り替える動作モードである。
【0048】
ところで、本実施形態において、流体作動機械1は、クランクシャフト26の回転開始時に、クランクシャフト26が伝達するトルクを小さくするために、以下のような制御を行っている。トルクを小さくする理由は、例えば、流体作動機械1が設けられ当該トルクによって駆動輪を駆動させる車両において、急激なトルクの増加を防止して、スムーズな発進を実現するためである。
【0049】
制御部70は、クランクシャフト26の回転開始時には、シリンダ室11~14に流体を供給しない閉状態から、閉状態と開状態の間の中間状態に遷移させるように、バルブユニット31~34を制御する。中間状態は、図4に示す開状態に達するまえの状態である。例えば、中間状態は、図3に示すように、主バルブ46が閉塞位置に位置し、移動部材52が開放位置に位置する状態である。中間状態の場合には、流路部42の流体が貫通路48を介してシリンダ室11~14に流れることになる。このため、中間状態の場合のシリンダ室11~14の圧力は、開状態の場合のシリンダ室11~14の圧力よりも小さい。
【0050】
制御部70は、主バルブ46が閉塞位置に位置する状態で貫通路48を解放させることで、中間状態に遷移させる。具体的には、制御部70は、主バルブ46が閉塞位置に位置する状態で移動部材52によって貫通路48を解放して連通部44と連通させることで、中間状態に遷移させる。これにより、主バルブ46を移動させることなく、シリンダ室11~14に流体を供給することができる。
【0051】
制御部70は、クランクシャフト26の回転開始時には、バルブユニット31~34を動作させる通電のオン・オフを繰り返して、中間状態に遷移させる。制御部70は、通電のオン・オフを繰り返すことで、図2に示す閉状態と図3に示す状態との間で、バルブユニット31~34の状態を遷移させる。このように、中間状態は、図2に示す閉状態と図3に示す状態の間で遷移している状態を意味してもよい。
【0052】
制御部70は、主バルブ46が閉塞位置に位置する状態で、コイル56への通電のオン・オフを繰り返して、貫通路48を閉塞する閉塞位置と貫通路48を開放する開放位置との間で移動部材52を往復移動させる。具体的には、制御部70は、クランクシャフト26の回転開始時に、図2に示す閉塞位置と図3に示す開放位置との間で、移動部材52を往復移動させる。別言すれば、制御部70は、クランクシャフト26の回転開始時に、コイル56への通電のオン・オフを繰り返すことで、シリンダ室11~14に流体を供給しない閉状態と、貫通路48を介して流体を供給する状態との間の遷移を繰り返す。これにより、クランクシャフト26の回転開始時にシリンダ室11~14内の流体の量を少なくしやすくなるため、シリンダ室11~14の圧力を小さくしやすくなる。
【0053】
制御部70は、圧力センサ18の検出結果に基づいて、バルブユニット31~34への通電のオン・オフを制御してもよい。制御部70は、圧力センサ18が検出した圧力が所定値を維持するように、バルブユニット31~34への通電のオン・オフを切り替える。例えば、制御部70は、圧力センサ18が検出した圧力が所定値を超える場合には、通電のオフ時間を長くして、圧力が所定値になるように制御する。これにより、シリンダ室11~14の圧力が、クランクシャフトが所定の小トルクを発生できる状態に維持される。
【0054】
制御部70は、車両の発進時においてクランクシャフト26の回転を開始する時に、バルブユニット31~34をそれぞれ閉状態と中間状態の間で周期的に遷移させる。その後、制御部70は、車両の発進開始から所定時間が経過すると、バルブユニット31~34を閉状態と開状態の間で周期的に遷移させる。これにより、車両の発進直後にクランクシャフト26から車両の駆動輪に小トルクが伝達され、その後、中間状態から開状態に遷移すると大トルクが駆動輪に伝達される。この結果、車両のスムーズに発進させることができる。
【0055】
<本実施形態における効果>
上述した実施形態の流体作動機械1は、クランクシャフト26を回転させるピストン21~24が内部で往復運動するシリンダ室11~14と、シリンダ室11~14に流体を供給する開状態とシリンダ室11~14に流体を供給しない閉状態とで切り替え可能なバルブユニット31~34を有する。そして、流体作動機械1は、クランクシャフト26の回転開始時には、バルブユニット31~34を閉状態から、閉状態と開状態の間の中間状態に遷移させる。
これにより、クランクシャフト26の回転開始時に、シリンダ室11~14への流体の流入量が少ないため、シリンダ室11~14の圧力が高くならず、この結果、クランクシャフト26が伝達するトルクも小さくなる。
【0056】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0057】
1 流体作動機械
11~14 シリンダ室
18 圧力センサ
19 流体収容部
21~24 ピストン
26 クランクシャフト
31~34 バルブユニット
46 主バルブ
48 貫通路
52 移動部材
56 コイル
70 制御部
図1
図2
図3
図4