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特許7632551二軸配向ポリエステルフィルムロール及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】二軸配向ポリエステルフィルムロール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/12 20060101AFI20250212BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20250212BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20250212BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20250212BHJP
【FI】
B29C55/12
C08J5/18 CFD
B29K67:00
B29L9:00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023163659
(22)【出願日】2023-09-26
(62)【分割の表示】P 2023008256の分割
【原出願日】2021-08-06
(65)【公開番号】P2023174704
(43)【公開日】2023-12-08
【審査請求日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2020148502
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 信之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 考道
(72)【発明者】
【氏名】春田 雅幸
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-256328(JP,A)
【文献】国際公開第2022/049998(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/095725(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/090673(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/187694(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/065108(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/12
C08J 5/18
B29K 67/00
B29L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート容器をリサイクル使用したポリエステル樹脂と粒子を含むポリエステル樹脂組成物からなる二軸配向ポリエステルフィルムを巻き取ってなる二軸配向ポリエステルフィルムロールであって、下記要件(1)~()をすべて満たす二軸配向ポリエステルフィルムロール。
(1)少なくとも一方のフィルム面の最大突起高さSpが3.0μm以下である。
(2)フィルム厚み12μmでのヘイズが10%以下である。
(3)フィルムの片面とその反対面の動摩擦係数が0.26以上0.45以下で、かつ静止摩擦係数が0.25以上0.46以下である。
(4)フィルム長手方向にフィルムロールの表層から巻き芯まで1000m毎にサンプリングした時の算術平均高さSa及び最大突起高さSpのバラつきがいずれも40%以下である。
(バラつきは、最大値をXmax、最小値をXmin、平均値をXaveとしたときの、下記式[1]で表される
バラつき(%)=100x(Xmax-Xmin)/Xave・・・[1])
(5)フィルム表裏面同士での空気抜け時間が14秒以下である。
【請求項2】
請求項1に記載のポリエチレンテレフタレート容器をリサイクル使用したポリエステル樹脂が、メカニカルリサイクルポリエステル樹脂及び/またはケミカルリサイクルポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルムロール。
【請求項3】
前記二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中の全ジカルボン酸成分100モル%に対するイソフタル酸成分の含有率が0.01モル%以上2.0モル%以下であることを特徴とする、前記請求項1又は2に記載の二軸配向ポリエステルフィルムロール。
【請求項4】
フィルム100m2当たり1mm以上の欠点数が20個未満であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムロール。
【請求項5】
前記二軸配向ポリエステルフィルム全層中の無機粒子の含有量が100ppm以上1000ppm以下である請求項1~4のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムロール。
【請求項6】
前記ポリエチレンテレフタレート容器をリサイクル使用したポリエステル樹脂が、少なくとも1度のアルカリ洗浄が施されてなるペットボトルをメカニカルリサイクルしたポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムロール。
【請求項7】
二軸配向ポリエステルフィルムロールの製造方法であって、ポリエステル原料樹脂溶融押出し工程、二軸延伸工程、及び二軸延伸後のフィルムをロール状に巻き取る工程を含んでなり、前記ポリエステル原料樹脂の溶融押出し工程において、ホッパーに上方から前記ポリエチレンテレフタレート容器をリサイクル使用したポリエステル樹脂の原料樹脂チップを供給すると共に、ホッパー内であって押出機直上に出口を有する配管を通じて前記粒子を含むポリステル樹脂組成物の原料樹脂チップを供給して、両チップを混合し、溶融押し出しする工程を有することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸配向ポリエステルフィルムロール及びその製造方法に関するものであり、詳しくは、優れた透明性、機械特性を有するとともに、フィルムの製造工程中の滑り性や巻取り性にも優れており、ペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂(以下、「ペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂」と称する場合がある)を用いることにより、環境配慮されたポリエステルフィルムロールであると共に、巻長の長い長尺のフィルムロールであっても長手方向の物性のバラつきの少ない二軸配向ポリエステルフィルムロール及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
耐熱性や機械物性に優れた熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル樹脂は、プラスチックフィルム、エレクトロニクス、エネルギー、包装材料、自動車等の非常に多岐な分野で利用されている。プラスチックフィルムの中でも、二軸配向ポリエステルフィルムは機械特性強度、耐熱性、寸法安定性、耐薬品性、光学特性などとコストのバランスに優れることから,工業用,包装用分野において幅広く用いられている。
【0003】
工業用フィルムの分野では、優れた透明性を有することから液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)向けの機能フィルムとして用いることができる。また耐加水分解性を付与したPETフィルムは太陽電池バックシート用フィルムとしても利用されており、機能性フィルム、ベースフィルムとして様々な目的で使われている。
【0004】
包装用フィルムの分野では、食品包装用、ガスバリアフィルム用途として利用されている。特に、ガスバリア性に優れるフィルムは、食品、医薬品、電子部品等の気密性を要求される包装材料、または、ガス遮断材料として使用され、近年需要が高まっている。
【0005】
例えば、特許文献1では、ペットボトル再生原料を使用した二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムであって、温度285℃における溶融比抵抗が1.0×108Ω・cm以内であり、フィルムに含まれるナトリウム含有量及びカリウム含有量が0ppmより大きく150ppm以下であることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルムが開示されている。
かかる技術によれば、ペットボトル再生原料を作る際に使用する洗浄液成分の残存が少なく熱安定性に優れ、異物も少なく、且つ溶融時の比抵抗が安定しており、フィルムの生産性、及び品位を損なうことがない二軸配向ポリエステルフィルムが得られるというものである。
【0006】
しかしながら、生産性を向上させるため、冷却ドラムの回転数を上げ、ワイヤー状電の位置や電流値、電圧値を調整することでピンナーバブル等の表面欠点のない品質の良いポリエステル系樹脂シートを製造する方法については言及されているが、フィルムの製造工程中の滑り性やフィルムロールの巻取り性などの品位については言及されていない。滑り性を向上させるために平均粒子径2.5μmのシリカ粒子を使用し、フィルム中のシリカ量を150ppm~640ppm添加しているが、算術平均高さSaや最大突起高さSpが低くなり易く、二軸配向ポリエステルフィルムが巻取られる際にロールに巻込まれる空気が均一に抜けず、シワや気泡状のニキビといった外観不良の原因となる課題があり、フィルムの生産性及び品位について十分に考慮されていない。
【0007】
上記のような優れた透明性、機械特性を有するとともに、フィルムの製造工程中の滑り性や巻取り性にも優れており、ペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂を用いることにより環境配慮されたポリエステルフィルムを得る手段としては、ペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂に対して粒子を含むポリエステル樹脂を配合したポリエステル樹脂組成物を二軸延伸することにより得ることができるものと期待でき、通常の比重の樹脂チップと、粒子を含む比重の大きな樹脂チップを混合して成膜するのが一般的である。しかし、粒子を含む樹脂チップと通常樹脂チップの比重差が大きいため、これら原料樹脂チップの偏析により、混合、押出し工程で原料比率のバラつきが生じ易く、フィルム長手方向で物性差が生じる。その結果、長尺な製品ロールの長手方向で均一な物性の製品が得られなくなるケースがある。ペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂には、イソフタル酸成分が含まれており非晶質成分を多く含むことから、従来の化石燃料由来のポリエステル樹脂よりも延伸時の延伸応力が低くなるため、無機粒子などの滑剤が沈み込み易くなる。その結果、二軸配向ポリエステルフィルムの表面粗さが低くなり易く、滑り性やフィルムロール巻取り性が十分得られなくなるケースがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6036099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、かかる従来技術の問題点を改善し、優れた透明性、機械特性を有するとともに、フィルムの製造工程中の滑り性や巻取り性にも優れており、且つペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂を用いることにより環境配慮された二軸配向ポリエステルフィルムロール及びその製造方法を提供することであり、より好適には異物が少なく、巻長の長い長尺のフィルムロールであっても長手方向の物性のバラつきが少ない二軸配向ポリエステルフィルムロール及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが鋭意検討した結果、ペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂に対して粒子を含むポリエステル樹脂を配合したポリエステル樹脂組成物を二軸延伸して得られる二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、原料となる樹脂チップの混合に際しては、ホッパーに上方からペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂チップを供給すると共に、ホッパー内であって押出機直上に出口を有する配管(以下、インナーパイプと称する場合がある)を通じて、粒子を含むポリエステル樹脂チップを供給して、両チップを混合し、溶融押し出しする事で、フィルムの長手方向で物性のばらつきが少ない均一なフィルムを得ることができることを見出した。更に本発明者らは、特に本発明で使用するペットボトルを含む、市場や社会からの再生原料を作る際に異物除去のためアルカリ洗浄を行ったものであっても使用する洗浄液成分の残存が少なく、異物も少ないばかりか、フィルム表面上の最大突起高さを特定の高さ以下とすることでフィルムの製造工程中の滑り性や巻取り性を向上させることができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
1.ペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂と粒子を含むポリエステル樹脂組成物からなる二軸配向ポリエステルフィルムを巻き取ってなる二軸配向ポリエステルフィルムロールでであって、下記要件(1)~(4)をすべて満たす二軸配向ポリエステルフィルムロール。
(1)少なくとも一方のフィルム面の最大突起高さSpが3.0μm以下である。
(2)フィルム厚み12μmでのヘイズが10%以下である。
(3)フィルム表裏面同士での空気抜け時間が14秒以下である。
(4)フィルム長手方向にフィルムロールの表層から巻き芯まで1000m毎にサンプリングした時の算術平均高さSa及び最大突起高さSpのバラつきがいずれも40%以下である。
(バラつきは、最大値をXmax、最小値をXmin、平均値をXaveとしたときの、下記式[1]で表される
バラつき(%)=100x(Xmax-Xmin)/Xave・・・[1])
【0012】
2.前記1.に記載のペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂が、メカニカルリサイクルポリエステル樹脂及び/またはケミカルリサイクルポリエステル樹脂であることを特徴とする前記1.に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【0013】
3.前記二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中の全ジカルボン酸成分100モル%に対するイソフタル酸成分の含有率が0.01モル%以上2.0モル%以下であることを特徴とする、1.又は2.に記載の二軸配向ポリエステルフィルムロール。
【0014】
4.フィルム100m当たり1mm以上の欠点数が20個未満であることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムロール。
【0015】
5.前記二軸配向ポリエステルフィルムの片面とその反対面の動摩擦係数が0.20以上0.60以下である1.~4.のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムロール。
【0016】
6.前記二軸配向ポリエステルフィルム全層中の無機粒子の含有量が100ppm以上1000ppm以下である1.~5.のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムロール。
【0017】
7. 前記ペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂が少なくとも1度のアルカリ洗浄が施されてなることを特徴とする1.~6.のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムロール。
【0018】
8. 二軸配向ポリエステルフィルムロールの製造方法であって、ポリエステル原料樹脂溶融押出し工程、二軸延伸工程、及び二軸延伸後のフィルムをロール状に巻き取る工程を含んでなり、前記ポリエステル原料樹脂の溶融押出し工程において、ホッパーに上方から前記ペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂の原料樹脂チップを供給すると共に、ホッパー内であって押出機直上に出口を有する配管を通じて前記粒子を含むポリステル樹脂組成物の原料樹脂チップを供給して、両チップを混合し、溶融押し出しする工程を有することを特徴とする1.~7.のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムロールの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、優れた透明性、機械特性を有するとともに、フィルムの製造工程中の滑り性や巻取り性にも優れており、ペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂)を用いることにより、環境配慮されたポリエステルフィルムロールであると共に、巻長の長い長尺のフィルムロールであっても長手方向の物性のバラつきの少ない二軸配向ポリエステルフィルム及びその製造方法を提供することができる。
【0020】
特に近年は、二軸配向ポリエステルフィルムの生産効率を高めるために、延伸工程を経て最初に巻き取る二軸配向ポリエステルフィルムロール(以下、マスターロール)の幅方向の長さと長手方向の長さをより大きくすることが進められているが、このようなサイズの大きなフィルムロールにおいても、二軸配向ポリエステルフィルムが巻取られる際に巻込まれる空気が均一に抜けず、シワや気泡状のニキビといった外観不良やブロッキングが少なく、二次加工を行いやすい二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができる。
マスターロールをスリットし小分けにしたフィルムロールも同様である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを製造するための樹脂チップの混合方法の一例を説明する為の概略図である。
図2図2図1の部分拡大図である。
図3】空気抜け時間測定の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。
[ペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂]
本発明おけるペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂としては、市場や社会から回収された使用済みペットボトルを選別、粉砕、洗浄して表面の汚れ、異物を十分に取り除いた後に高温下に曝して、樹脂内部に留まっている汚染物質等を高度に洗浄した後に再度ペレット化する物理的再生法により得られたポリエステル樹脂(以下、メカニカルリサイクルポリエステル樹脂と称する場合がある)及び、使用済みの包装容器に含まれるポリエステル樹脂をモノマーレベルまで分解した後に汚染物質等の除去を行い、再度重合を行うことにより得られるポリエステル樹脂(以下、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂と称する場合がある)のいずれも好適に用いることができる。
【0023】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムに使用されるペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートを主体とする容器のリサイクル品を主体とするものであり、例えば、茶飲料、清涼飲料などの飲料用容器のリサイクル品が好ましく使用でき、適宜配向されていても良く、無色のものが好ましいが、若干の着色成分を含んでいても良い。
【0024】
好ましく利用できるペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされた再生原料は、通常の重合法及び固相重合法で製造、成型されたポリエステルであり、好ましくはポリエチレンテレフタレートを主体とするものであり、他のポリエステル成分、共重合成分を含んでいても差し支えない。触媒としてアンチモン、ゲルマニウム、チタンなどの金属化合物、安定剤としてのリン化合物などを含んでいてもよい。通常ペットボトル用のポリエステルには触媒としてゲルマニウムが用いられることが多く、ペットボトル再生原料を使用してフィルム化すれば、フィルム中にゲルマニウムが1ppm以上含まれるものとなる。しかしながら、あくまでも触媒の含有量であるので、通常高々100ppm以下であり、普通は50ppm以下である。
【0025】
以下、メカニカルリサイクルポリエステル樹脂とケミカルリサイクルポリエステル樹脂について説明する。
【0026】
[メカニカルリサイクルポリエステル樹脂]
集められた使用済のリサイクルペットボトルは、他の材料やごみが混ざらないように選別され、ラベルなどを除去した後、粉砕されフレークとなる。これらのフレークには、異物が付着、混入している場合が多くある。また、薬品や溶剤などの化学物質を消費者が使用済みのPETボトルに充填して使用している場合も考えられる。例えば、食器などの洗剤、殺虫剤、除草剤、農薬や各種オイル類などが考えられる。通常の洗浄ではPETボトル表面に吸着した化学物質を十分に取り除くことができないため、アルカリ洗浄を行うことが好ましい。この洗浄工程で用いるアルカリ金属水酸化物の溶液としては水酸化ナトリウム溶液、または水酸化カリウム溶液を用いる。このような洗浄工程では、アルカリ洗浄の前に予備洗浄を行っても良い。
アルカリ洗浄を行わないと、原料の樹脂中に異物として残存してしまうため、これらが混入して製膜時の破断のきっかけとなり生産性を低下させてしまうばかりか、フィルム中に異物として残り、フィルムの外観や、後に行われる印刷工程での印刷抜けの原因となりうる。
【0027】
上記洗浄工程で用いるアルカリ金属水酸化物の水溶液の濃度は、温度、時間、攪拌の状態にもよるが、通常は1~10重量%の範囲である。また、洗浄に要する時間は10~100分の範囲であり、効果を高めるため攪拌しながら行うのが好ましい。
【0028】
アルカリ洗浄に続いて、すすぎ洗浄、乾燥を行うことが好ましい。アルカリ洗浄やすすぎ洗浄は数回繰り返して行っても良い。アルカリ洗浄工程において洗浄で用いるアルカリ金属水酸化物の水溶液成分がフレークに残存することにより、その後のペレット造粒工程における溶融押出工程やフィルム製膜時における溶融押出工程を経由することにより、最終的に得られるフィルムの物性に影響を与えることがある。
【0029】
最終的にこれらのペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂を使用して得られるフィルム中のナトリウム及びカリウムの濃度が0ppmより大きく150ppm以下であることが好ましく、より好ましくは3~120ppmであり、更に好ましくは5~80ppmである。フィルム中に含まれるナトリウムまたはカリウム濃度が150ppmより高くなるとフィルムの耐熱性、熱安定性が低下したり、着色したりするので好ましくない。また、全くない状態であるとジエチレングリコールの生成を抑えるなどの効果が薄れるため好ましくない。また、ペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂には若干量はこれらの成分が含有されている場合があり全くなしとするのは困難である。
【0030】
このような洗浄工程では、アルカリ金属水酸化物の水溶液により、ペットボトルフレークの一部が加水分解される。また、ペットボトルを成形する際の加熱により樹脂の重合度が低下する。さらに、回収したペットボトルを再利用するため粉砕した後、再度溶融してペレット化する際に加わる熱や水分の影響により重合度が低下する。そのままでも再利用できるが、使用する用途によっては重合度が低下した場合、成形性や強度、透明性や耐熱性などが劣り、そのままでは再利用することができないことがある。
【0031】
そのような場合、低下した重合度を回復させるため、粉砕して洗浄されたPETボトルのフレークもしくはフレークを溶融し、ペレット化したものを固相重合することが好ましい。
【0032】
固相重合工程では、洗浄したフレーク、もしくはフレークを溶融押出してペレット化したものを180~245℃、好ましくは200~240℃の窒素ガス、希ガスなどの不活性気体中で連続固相重合することにより行うことができる。
【0033】
最終的にペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂として、極限粘度が0.55~0.90dl/g、好ましくは0.60~0.85dl/gとなる条件で、フレーク、またはペレットの条件を調整して行うのが望ましい。
【0034】
フレークをペレット化する工程について説明する。フレークを脱気手段および濾過手段を有する押出機を用いて溶融、押出、冷却、造粒する。
【0035】
押出機における溶融工程では通常260~300℃、好ましくは265~295℃で溶融混練することにより行うことができる。投入するペットボトルを粉砕したフレークは十分に乾燥しておく必要があり、5~200、好ましくは10~100ppm、更には15~50ppmとなる条件で乾燥を行うことが好ましい。フレークに含まれる水分が多い場合、溶融工程で加水分解反応が進み、得られるポリエステル樹脂の極限粘度が低下する。脱気手段として、樹脂の溶融帯域に少なくとも1箇所の真空ベントを有しているものが好ましい。
【0036】
また、該押出機は、濾過手段として溶融樹脂の粒径25μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは10μm以上の固形異物を濾過して除去できるフィルターを有しているのが好ましい。
【0037】
フィルターを通過した溶融樹脂はダイスを経由し、水中で冷却された後、所望の形状のペレットに切断され造粒される。
[ポリエステル樹脂組成物]
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムは下記のポリエステル樹脂を主成分として含むポリエステル樹脂組成物からなる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーである。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートが挙げられ、機械的特性および耐熱性、コストなどの観点からポリエチレンテレフタレートが好ましい。
ここでの主成分とはポリエステル樹脂組成物中の含有率が80重量%以上であることを意味し、90重量%以上であることが好ましく、95重量%以上がより好ましく、98重量%以上が最も好ましい。
【0038】
また、これらのポリエステル樹脂には、本発明の目的が損なわれない範囲であれば、他の成分が共重合されていてもよい。具体的には、共重合成分としては、ジカルボン酸成分では、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4-ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸およびそのエステル形成性誘導体等が挙げられる。また、ジオール成分としてはジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコールも挙げられる。共重合量としては、構成する繰り返し単位あたり10モル%以内が好ましく、5モル%以内がより好ましく、3モル%以下が最も好ましい。
【0039】
[ケミカルリサイクルポリエステル樹脂]
本発明で用いられるケミカルリサイクルポリエステル樹脂の製造方法としては特に限定されないが、具体的には例えば、特開2000-169623号に記載の如く、回収された使用済みペットボトルを選別、粉砕、洗浄して異物を取り除いた後に、解重合を行うことによりPET樹脂の原料または中間原料まで分解、精製したものを重合して新たなPET樹脂とするものある。解重合にはエチレングリコール(EG)を加えて触媒の存在下で、樹脂製造時の中間原料であるビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)にまで戻し、これを精製した後、PETに再重合する方法や、特開2000-302707号公報に記載の如くポリエチレンテレフタレートを酸化した鉄を必須成分とする触媒の存在下に非水系有機溶媒中で加熱処理してテレフタル酸とエチレングリコールを生成した後、再度重合する方法が挙げられる。
ケミカルリサイクルポリエステル樹脂の特徴は解重合/再重合の間に異物、異種材質が取り除かれ、バージン樹脂と同等に品質の高いポリエステル樹脂に再生できるため、前述したメカニカルリサイクルポリエステル樹脂と比べ、衛生性に優れているため、食品包装用途として特に好ましく用いることができる。
【0040】
本発明で用いるケミカルリサイクルポリエステル樹脂は、使用済みペットボトルを減容圧縮したベールを出発原料としている。このペットボトルベールは、現在市町村が採用している公知の方法によって製造される。ペットボトルベールの替わりに他のポリエチレンテレフタレート廃棄物やペットボトルのフレークを出発原料として用いることができる。
【0041】
ペットボトル廃棄物を減容圧縮したペットボトルベールを粉砕機に投入し、温水もしくは常温水又は洗剤を含有する温水もしくは常温水を注入して水中粉砕する。
【0042】
次に、粉砕機から排出されるペットボトルのフレークと洗浄水の混合物は直ちに比重分離処理を行って、金属、石、ガラス、砂とフレークとを分離する。次いで、フレークと洗浄水とを分離し、フレークはイオン交換水で濯ぎ、遠心脱水する。
【0043】
上記前処理工程で得られた粗製ポリエチレンテレフタレートフレークを解重合、溶融すると同時に加水分解させて重合度の低いポリエチレンテレフタレート溶融物とし、過剰のエチレングリコールによって解重合し粗製BHETと粗製エチレングリコールの二種混合溶液を得る。
【0044】
解重合反応終了後の粗製BHETと粗製エチレングリコールの二種混合溶液を降温し、濾過して高融点沈殿物としての未反応の線状及び環状オリゴマー、ポリエチレンテレフタレート以外の残存異プラスチッの凝固物、金属等の固形異物を除去し、次いで吸着・イオン 交換処理を施して、着色物と溶存イオンを除去することにより、粗製BHET中に含まれる異物を取り除く。
【0045】
前記前精製工程を経て得られた粗製BHETと粗製エチレングリコールの二種混合溶液に蒸留・蒸発操作を施してエチレングリコールを分離・留出させて濃縮BHETを得る、もしくは二種混合溶液を10℃以下まで冷却してBHETを晶析させた後エチレングリコールとBHETを固液分離することにより濃縮BHETを得て、この濃縮BHETを190℃を越え250℃以下の温度で且つ蒸発器内での濃縮BHETの滞留時間が10分以下となるように真空蒸発させて精製ビス-β-ヒドロキシエチルテレフタレートを得る。
【0046】
上記のようにして高純度の精製BHETを得たのち、この精製BHETを溶融重縮合反応器に仕込んで高純度ポリエチレンテレフタレートポリマーを得る。
【0047】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂のうち、メカニカルリサイクルポリエステル樹脂、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂以外の化石燃料由来のポリエステル樹脂の製造方法としては、まず、前述のジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成誘導体とを主たる出発原料として、常法に従い、エステル化またはエステル交換反応を行った後、さらに高温・減圧下で重縮合反応を行うことによって製造する方法等が挙げられる。
【0048】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂の極限粘度としては、製膜性や再回収性などの点から0.50~0.90dl/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.55~0.80dl/gの範囲である。
【0049】
本発明におけるポリエステル樹脂組成物中には、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを巻き取ってなるフィルムロールが下記要件(1)~(4)をすべて満たすようにするために、無機粒子、有機粒子、及びこれらの混合物からなる粒子からなる群から選択される少なくとも1種の粒子を含有することが好ましい。
(1)少なくとも一方のフィルム面の最大突起高さSpが3.0μm以下である。
(2)フィルム厚み12μmでのヘイズが10%以下である。
(3)フィルム表裏面同士での空気抜け時間が14秒以下である。
(4)フィルム長手方向にフィルムロールの表層から巻き芯まで1000m毎にサンプリングした時の算術平均高さSa及び最大突起高さSpのバラつきがいずれも40%以下である。(バラつきは、最大値をXmax、最小値をXmin、平均値をXaveとしたときの、下記式[1]で表される。
バラつき(%)=100x(Xmax-Xmin)/Xave・・・[1])
【0050】
使用する無機粒子としては、例えば、シリカ(酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、アルミナ、シリカ-アルミナ複合酸化物粒子、硫酸バリウムからなる粒子が挙げられる。 有機粒子としては、例えば、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレンからなる粒子を挙げることができる。中でもシリカ(酸化珪素)、炭酸カルシウム、又はアルミナ(酸化アルミニウム)からなる粒子、若しくはポリメタクリレート、ポリメチルアクリレート、又はその誘導体からなる粒子が好ましく、シリカ(酸化珪素)、又は炭酸カルシウムからなる粒子がより好ましく、中でもシリカ(酸化珪素)がヘイズを低減する点で特に好ましい。これらにより透明性と滑り性と発現することができる。
【0051】
本発明における粒子の重量平均粒径は、コールカウンターにて測定した値である。粒子の平均粒径は0.5~4.0μmが好ましく、より好ましくは0.8~3.8μmであり、さらに好ましくは1.5~3.0μmである。
粒子の重量平均粒径が0.5μm未満では、表面の凹凸形成が不十分であり、フィルムの滑り性の低下やロールに巻取る際に巻込まれる空気が均一に抜けず、シワや気泡上のニキビといった外観不良が生じやすくなり、巻取り性が悪化し易い。
粒子の重量平均粒径が4.0μmを超える場合は、粗大突起の形成により印刷不良などのフィルムの品質を損ないやすい。また、二軸配向ポリエステルフィルム表面の最大突起高さSpが3.0μmよりも大きくなりやすい。
【0052】
本発明における粒子を含むポリエステル樹脂組成物(マスターバッチ)中の無機粒子の濃度は2000~70000ppmが好ましく、5000~50000ppmがより好ましく、7000~30000ppmが特に好ましい。
マスターバッチ中の無機粒子の濃度が2000ppmより小さい場合は、無機粒子を含有するマスターバッチの添加比率が大きくなり、主原料となるペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂の割合が少なくなり、安価な樹脂や環境配慮などへの樹脂特性を効果的に得られなくなる。マスターバッチ中の無機粒子の濃度が70000ppmより大きいと、原料の偏析のために長手方向で原料比率の変動が大きくなるため、得られたフィルムの長手方向のバラつきが大きくなりやすい。
【0053】
本発明におけるポリエステル樹脂組成物中に粒子を配合する方法としては、例えば、ポリエステル系樹脂を製造のためのエステル化の段階、エステル交換反応終了後、もしくは重縮合反応開始前の段階のいずれかの段階において添加することができるが、エチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めるのが好ましい。
また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールまたは水等に分散させた粒子のスラリーとポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法、または混練押出し機を用いて、乾燥させた粒子とポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法等によって行うのも好ましい。
【0054】
粒子とポリエステル系樹脂原料と混合する工程において、粒子の凝集体をなるべく少なくするのが、目的とする表面状態を安定して得る上で好ましいが、混合工程以降の二軸配向ポリエステルフィルムの製膜工程の条件を調整することにより、その影響を少なくできる。
【0055】
また、本発明におけるポリエステル樹脂組成物中には本発明の目的を損なわない範囲において、少量の他の重合体や酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料またはその他の添加剤等が含有されていてもよい。
【0056】
上記のようにして得られる二軸配向ポリエステルフィルムにメカニカルリサイクルポリエステル樹脂を用いる場合は、フィルム中の全ジカルボン酸成分100モル%に対するイソフタル酸成分の含有率が0.01モル%以上2.0モル%以下の範囲で含まれることが好ましい。一般にペットボトルに使用されているポリエステルにはボトル外観を良好にするため、結晶性の制御が行われており、その手段として、10モル%以下のイソフタル酸成分を含むポリエステルが用いられていることがある。
このため本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、ペットボトルからリサイクルされたメカニカルリサイクルポリエステル樹脂を用いる場合には、イソフタル酸成分を含む材料が一定量含まれることとなる。
【0057】
フィルム中に含まれるポリエステル樹脂を構成する全ジカルボン酸成分に占めるイソフタル酸成分の量の下限は好ましくは0.01モル%であり、より好ましくは0.05モル%であり、さらに好ましくは0.1モル%であり、特に好ましくは0.15モル%である。先に述べたようにペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂は、イソフタル酸成分を多く含むものがあるため、フィルム中のポリエステル樹脂を構成するイソフタル酸成分が0.01モル%未満であることは、リサイクル樹脂の比率の高いポリエステルフィルムの製造が結果として困難になり、あまり好ましくない。フィルム中に含まれるポリエステル樹脂を構成する全ジカルボン酸成分に占めるイソフタル酸成分の量の上限は好ましくは2.0モル%であり、より好ましくは1.5モル%であり、さらに好ましくは1.0モル%である。2.0モル%を超えると結晶性が低下するため、フィルムとしての力学強度が低下することがあり、あまり好ましくない。また、イソフタル酸成分の含有率を上記範囲とすることでラミネート強度、熱収縮率、厚みムラに優れたフィルムの作成が容易となり好ましい。
【0058】
ペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂の極限粘度の上限は好ましくは0.90dl/gであり、より好ましくは0.80dl/gでり、さらに好ましくは0.75dl/gであり、特に好ましくは0.69dl/gである。0.90dl/gを超えると押出機からの樹脂が吐出しにくくなって生産性が低下することがあり、あまり好ましくない。
【0059】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、フィルムを構成するポリエステル樹脂全量に対するペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂の含有率の下限は好ましくは50重量%であり、より好ましくは70重量%であり、さらに好ましくは90質量%であり、特に好ましくは100重量%である。50重量%未満であるとリサイクル樹脂の活用としては、含有率に乏しく、環境保護への貢献の点であまり好ましくない。なお、フィルムとして機能向上のために無機粒子などの滑剤や添加剤を添加する場合に用いるマスターバッチ(高濃度含有樹脂)としてペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂を用いることもできる。
【0060】
[二軸配向ポリエステルフィルム及びフィルムロールの製造方法]
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、例えば上記のペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂チップと、ポリエステル樹脂を主成分とするポリエステル樹脂組成物のチップとをホッパーに備えた押出機に供給及び混合し、押出機により溶融押し出しして未延伸シートを形成し、その未延伸シートを延伸することによって得ることができる。
下記に好適な例を述べるが、これらに制限されものではない。
【0061】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、単層、2層、3層、あるいは4層以上の積層構造であってもよい。2層構造以上の場合においては、各層は上述のようにポリエステル系樹脂、及び無機粒子、さらにはポリエステル系樹脂以外の樹脂を構成成分とするが、互いに隣接する各層のいずれかの構成成分の種類又は含有量は異なるものとする。
単層構造の場合には、本発明における表面層(A)は二軸配向ポリエステルフィルム全体となる。
2層構造の場合には、本発明における表面層(A)はいずれか一方あるいは両方の層となる。3層構造の場合には、本発明における表面層(A)はいずれか一方あるいは両側の層となる。
【0062】
3層構造の場合、フィルムを構成する組成をA、A´、B、Cと表せば、例えばA/B/C、A/B/A、あるいはA/B/A´の構成を取ることができるが、特に両面の表面特性を変える必要のない場合は、両側の層を同じ組成に設計としたA/B/Aの構成とする方が、製造が容易であり好ましい。ここで、A、A´は組成が同一でないものである。
【0063】
特に、3層構造の場合は、基層(B)に無機粒子がなくても、表面層(A)のみの添加粒子量を制御することでフィルムの表面粗さを制御することができ、フィルム中に無機粒子の含有量をより少なくすることができ、好ましい。これは、無機粒子とポリエステル樹脂との境界に出来るボイド(空隙)を介して、におい成分が抜け、保香性が低下する点を改善することにもつながるためである。
さらに基層(B)にフィルム表面の特性に悪影響を与えない範囲で、製膜工程で発生するエッジ部分の回収原料、あるいは他の製膜工程のリサイクル原料などを適時混合して使用することが容易となり、コスト的にも優位である。
【0064】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの表面層(A)における粒子の含有量の下限は600重量ppmであり、より好ましくは700重量ppmであり、特に好ましくは800質量ppmである。粒子の含有量が600重量ppm未満であるとフィルム表面の算術平均高さSaが小さくなり易く、滑り性が低下することがあり、あまり好ましくない。また、フィルム表面の最大突起高さSpも小さくなり易く、ロールに巻取る際に巻込まれる空気が均一に抜けず、シワや気泡上のニキビといった外観不良が生じやすくなり、巻取り性が悪化し易い。
【0065】
原料となる樹脂チップの混合に際しては、ホッパーに上方からペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂チップを供給すると共に、ホッパー内であって押出機直上に出口を有する配管(以下、インナーパイプと称する場合がある)を通じて前記ポリエステル樹脂組成物のチップを供給して、両チップを混合し、溶融押し出しする事が好ましい。ペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂チップとポリエステル樹脂組成物のチップとを混合した状態で押出し機の上のホッパーに入れると、比重やチップの形状の異なる樹脂チップがホッパー内で原料偏析を起こす可能性があり、特にホッパーの内壁が鉛直でない箇所(斜めになっている部分)で原料偏析を起こす心配が高いが、インナーパイプを通じてホッパー内の押出機直上部にポリエステル樹脂組成物をダイレクトに供給すると、比重やチップ形状が異なっていっても、原料偏析を低減でき、ポリエステルフィルムを安定して工業生産することができる。
【0066】
具体的な混合手順の一例を図1に示す。図1は、ホッパー1を備えた押出機2と、インナーパイプ3との関係の一例を示す概略図である。図1に示す様に、本発明のポリエステルフィルムの主原料であるペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂チップ以外の樹脂はインナーパイプ3を通じて供給され、ポリエステル樹脂組成物のチップはホッパー1の上部から供給される。そしてインナーパイプ3の出口4が押出機直上(正確には押出機2の樹脂供給口5の直上)になっているため、原料の混合比率を一定に保つことができる。
このインナーパイプを通じてホッパー内の押出機直上部にポリエステル樹脂組成物をダイレクトに供給する手段を採用することにより、表面粗さのバラつきを抑制する効果を得ることができる。
【0067】
ペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂とポリエステル樹脂組成物を溶融押し出しする際には、ホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂とポリエステル樹脂組成物を乾燥させた後に、押出機を利用して、ポリエステル樹脂の融点以上となり、かつ200~300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。あるいは、ポリエステル樹脂、粒子及び必要に応じて添加物を別々の押出機で送り出し、合流させた後に混合溶融しシート状に押し出してもよい。
溶融樹脂組成物の押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
【0068】
そして、押し出し後のシート状の溶融ポリエステル樹脂を急冷することによって、その未延伸シートを得ることができる。なお、溶融ポリエステル樹脂を急冷する方法としては、溶融ポリエステル樹脂を口金より回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。回転ドラムの温度は40℃以下に設定するのが好ましい。
【0069】
さらに、得られた未延伸シートを、以下のような長手方向および幅方向の二軸延伸工程、熱固定工程、熱弛緩工程等の工程を組み合わせることで、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを得ることが可能となる。
以下に詳細に説明する。長手方向とは、未延伸シートを走行させる方向を、幅方向とはそれと直角方向を意味する。
【0070】
延伸方法は長手方向と幅方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸でも、長手方向と幅方向の延伸をどちらか一方を先に行う逐次二軸延伸でも可能であるが、製膜速度が速く生産性が高いという点と最終的に得られる二軸配向ポリエステルフィルムの厚み均一性が優れるという点から逐次二軸延伸が最も好ましい。
ここでいう製膜速度とは、延伸工程を経てマスターロールに巻き取られる際の二軸配向ポリエステルフィルムの走行速度(m/分)を意味する。
【0071】
未延伸シートの長手方向への延伸時温度としては、ポリエステル樹脂のガラス転移点温度(以下、Tg)を指標として、(Tg+15)~(Tg+55)℃の範囲、延伸倍率としては4.2~4.7倍の範囲とすることが好ましい。
延伸時温度が(Tg+55)℃以下であり、さらに4.2倍以上である場合、最大突起高さSpを上記(1)の上限値以下としやすく、また長手方向と幅方向の分子配向のバランスがよく、長手方向と幅方向の物性差が小さく好ましい。また、得られる二軸延伸ポリエステルフィルムの平面性も良く好ましい。
一方、長手方向の延伸温度が(Tg+15)℃以上であり、さらに延伸倍率が4.7倍以下の場合、最大突起高さSpを上記(1)の上限値以下としやすい。熱弛緩工程におけるフィルムの走行方向とは逆方向に生じる引張応力(ボーイング現象)が大きくなり過ぎず好ましい。
【0072】
また、長手方向の延伸において、一段階での延伸でなく、複数のロール間で2段、3段若しくは4段以上の段階に分けて延伸する方法では、延伸速度をあまり大きくしないで、長手方向の延伸倍率を大きくできるため、フィルム幅方向での物性差をより低減させることができるという点から好ましい。効果や設備面、コストの点からは二段又は三段延伸が好ましい。
また、長手方向の延伸において、1段目、2段目を低倍延伸することで、結晶化せずに長手方向に弱く配向したポリマー構造を多数形成することが出来き、さらにそのフィルムを3段目で高倍率延伸することで、長手方向に強く配向され延伸時の延伸応力が高くなることで、粒子の凝集による粗大突起の発生を制御し易く、フィルム面の最大突起高さSpを上記の上限値以下としやすい。
【0073】
未延伸シートを長手方向に延伸して得られたフィルムに、必要に応じてコロナ処理やプラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能を付与するためにフィルムの少なくとも一方の面に樹脂分散液又は樹脂溶解液を塗布することもできる。
【0074】
未延伸シートを長手方向に延伸して得られたフィルムを幅方向に延伸する場合、テンター装置に導き、未延伸シートを長手方向に延伸したフィルムの両端をクリップで把持して、熱風によりフィルムを所定の温度まで加熱した後、長手方向に搬送しながらクリップ間の距離を広げることでフィルムを幅方向に延伸することができる。
幅方向の延伸時温度がTg+5℃以上であると、延伸時に破断が生じにくくなり、好ましい。
また延伸時温度がTg+40℃以下であると、均一な幅方向の延伸がしやすくなり、幅方向の厚み斑が大きくなりにくいため、フィルムロール表面の巻硬度の幅方向のバラつきが大きくなりにくく好ましい。
より好ましくはTg+8℃以上Tg+37℃以下であり、更に好ましくはTg+11℃以上Tg+34℃以下である。
未延伸シートを長手方向に延伸して得られたフィルムの幅方向への延伸倍率は4.0倍以上6倍以下が好ましい。
幅方向延伸倍率が4.0倍以上であると、物質収支的に高い収率が得られやすい上に、力学強度が低下しないほか、幅方向の厚み斑が大きくなりにくく、フィルムロールの幅方向の巻硬さのバラつきが生じにくく好ましい。幅方向延伸倍率は4.1倍以上がより好ましく、4.2倍以上がさらに好ましい。
また幅方向延伸倍率が6.0倍以下であると、延伸製膜時に破断しにくくなり好ましい。
【0075】
幅方向の延伸工程に続いて熱固定工程を行うが、未延伸シートを長手方向に延伸して得られたフィルムを幅方向に延伸したフィルムの熱固定温度は240℃以上250℃以下が好ましい。
熱固定温度が240℃以上の場合、長手方向および幅方向ともに熱収縮率が高くなりすぎず、二次加工時の熱寸法安定性が良くなるため好ましい。
一方、熱固定温度が250℃以下の場合、ボーイングが増加しにくく好ましい。
【0076】
さらに熱弛緩処理工程を行うが、熱固定工程の後に熱固定工程と別々に行ってもよく、熱固定工程と同時に行っても良い。熱弛緩処理工程におけるフィルム幅方向の弛緩率としては、4%以上8%以下が好ましい。
弛緩率が4%以上の場合、得られる二軸配向ポリエステルフィルムの幅方向の熱収縮率が高くなりすぎず、二次加工時の寸法安定性が良きなるため好ましい。
一方、弛緩率が8%以下の場合、フィルムの幅方向中央部のフィルムの走行方向とは逆方向に生じる引張応力(ボーイング現象)が大きくなり過ぎず、幅方向のフィルム厚み変動率が大きくならず好ましい。
【0077】
熱弛緩処理工程では、未延伸シートを長手方向に延伸して得られたフィルムを幅方向に延伸されたフィルムが熱緩和により収縮されるまでの間、幅方向の拘束力が減少して自重により弛んでしまったり、また、フィルム上下に設置されたノズルから吹き出す熱風の随伴気流によってフィルムが膨らんでしまうことがあるため、フィルムが非常に上下に変動し易い状況下にあり、得られる二軸延伸ポリエステルフィルムの配向角や斜め熱収縮率差の変化量が大きく変動しやすい。
これらを軽減させる方法としては、例えば、上下部のノズルから吹き出す熱風の風速を調整することで、フィルムが平行になるように保つことが挙げられる。
【0078】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムには、本発明の目的を損なわない限りにおいて、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、表面粗面化処理が施されてもよく、また、公知のアンカーコート処理、印刷、装飾などが施されてもよい。
【0079】
上記の方法で延伸製膜された幅広の二軸配向ポリエステルフィルムは、ワインダー装置により巻き取られ、マスターロールが作製される。マスターロールの幅は5000mm以上10000mm以下が好ましい。ロールの幅が5000mm以上であると、その後スリット工程、蒸着加工や印刷加工においてフィルム面積あたりのコストが低くなり好ましい。
マスターロールの巻長は10000m以上100000m以下が好ましい。ロールの巻長が5000m以上であると、その後スリット工程、蒸着加工や印刷加工などの二次加工においてフィルム面積あたりのコストが低くなり好ましい。
また、マスターロールよりスリットしたフィルムロールの巻幅は400mm以上3000mm以下であることが好ましい。巻幅が400mm以上であると、印刷工程において頻繁にフィルムロールを交換する手間が少なくなり、コストの面で好ましい。また、巻幅は長い方が好ましいが、3000mm以下であるとロール幅が大きくなりすぎない他、ロール重量が重くなりすぎず、ハンドリング性が低下せず好ましい。
フィルムロールの巻長は2000m以上65000m以下であることが好ましい。巻長が2000m以上であると、印刷工程において頻繁にフィルムロールを交換する手間が少なくなり、コストの面で好ましい。また、巻長は長い方が好ましいが、65000m以下であるとロール径が大きくなりすぎない他、ロール重量が重くなりすぎず、ハンドリング性が低下せず好ましい。
フィルムロールに用いる巻芯は、特に限定されるものではなく、通常、直径3インチ(37.6mm)、6インチ(152.2mm)、8インチ(203.2mm)等のサイズのプラスチック製、金属製、あるいは紙管製の筒状の巻芯を使用することができる。
【0080】
[二軸配向ポリエステルフィルム及びフィルムロールの特性]
本発明のペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂と粒子を含むポリエステル樹脂組成物からなる二軸配向ポリエステルフィルムを巻き取ってなるフィルムロールは、下記要件(1)~(4)をすべて満たすのが好ましい。それぞれについて詳細に説明する。
(1)少なくとも一方のフィルム面の最大突起高さSpが3.0μm以下である。
(2)フィルム厚み12μmでのヘイズが10%以下である。
(3)フィルム表裏面同士での空気抜け時間が14秒以下である。
(4)フィルム長手方向にフィルムロールの表層から巻き芯まで1000m毎にサンプリングした時の算術平均高さSa及び最大突起高さSpのバラつきがいずれも40%以下である。
(バラつきは、最大値をXmax、最小値をXmin、平均値をXaveとしたときの、下記式[1]で表される。
バラつき(%)=100x(Xmax-Xmin)/Xave・・・[1])
【0081】
(最大突起高さSp)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面の最大突起高さSpは、3.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは2.5μm以下であり、さらに好ましくは2.0μm以下である。最大突起高さSpが3.0μm以下であると粗大突起の形成による印刷抜けなどにより、印刷外観不良や意匠性が悪いなどフィルム品質を損ないにくくなり、好ましい。
フィルムロールの長手方向算術平均高さSa及び最大突起高さSpのバラつきが40%を超えると、二軸配向ポリエステルフィルムロールを二次加工して製造された包装材料に品質のばらつきが生じる恐れがある。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面の算術平均高さSaは、0.10μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.07μm以下であり、さらに好ましくは0.05μm以下である。算術平均高さSaが0.10μm以下を超えると印刷抜けなどにより、印刷外観不良や意匠性が悪くなるなどフィルム品質を損なう恐れがある。
【0082】
(ヘイズ)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのフィルム厚み12μmでのヘイズは10%以下であり、より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは4%以下である。フィルム厚み12μmでのヘイズが10%を超える場合、印刷外観が低下することや、高速での加工が進む中で異物検知がしにくくなり、十分な品質を得ることが困難になりやすい。
【0083】
(空気抜け時間)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの表裏面同士での空気抜け時間は、14秒以下であることが好ましく、より好ましくは13秒以下であり、さらに好ましくは12秒以下であり、特に好ましくは10秒以下である。空気抜け時間が14秒を超える場合、製造工程中および巻返し、スリット等でフィルムがロール状に巻取られる際に、ロールに巻込まれる空気が均一に均一に抜けず、シワや気泡状のニキビといった外観不良を生じる原因となりやすい。
【0084】
(動摩擦係数)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの一方の面とその反対面の間の動摩擦係数は0.20以上0.60以下であることが好ましい。
0.20以上であるとフィルム同士が滑りすぎず、フィルム製造時あるいはスリット時にワインダー装置によりフィルムロールを巻き取る時に、フィルムロールにシワが生じにくく、二次加工性が低下しにくい。さらに好ましくは0.30以上である。
また、0.60以下であるとフィルム同士が滑るので、フィルム製造時あるいはスリット時にワインダー装置によりフィルムロールを巻き取る時に、フィルムロールに巻ズレが生じにくく、二次加工性が低下しにくい。さらに好ましくは0.50以下であり、最も好ましくは0.45以下である。
【0085】
(静止摩擦係数)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの一方の面とその反対面の間の静止摩擦係数は0.20以上0.60以下であることが好ましい。
0.20以上であるとフィルム同士が滑りすぎず、フィルム製造時あるいはスリット時にワインダー装置によりフィルムロールを巻き取る時に、フィルムロールにシワが生じにくく、二次加工性が低下しにくい。さらに好ましくは0.30以上である。
また、0.60以下であると、フィルム同士が滑るので、フィルム製造時あるいはスリット時にワインダー装置によりフィルムロールを巻き取る時に、フィルムロールに巻ズレが生じにくく、二次加工性が低下しにくい。さらに好ましくは0.50以下であり、最も好ましくは0.45以下である。
【0086】
(無機粒子の含有量)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルム全層中の無機粒子の含有量は100ppm以上1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは800ppm以下である。無機粒子の含有量が100ppm未満である滑り性が低下してフィルムの製造工程中のロール走行時や巻取り、巻返し、スリット等で支障を及ぼし、フィルム表面にすり傷が入ったり、巻きシワの発生や静電気が発生する原因となりやすい。無機粒子の含有量が1000ppmを超える場合、フィルム表面の算術平均高さSaや最大突起高さSpが高くなる傾向にあり注意が必要である。また、フィルム中のボイドが多くなり、透明性が低下する原因となりやすい。
【0087】
(フィルム厚み)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのフィルム厚みは、5~40μmが好ましい。5μm以上であるとフィルムとしての強度やコシ感が低下せず、ワインダー装置により巻き取る際、フィルムロールにシワが入りにくく好ましい。一方、フィルム厚みは40μm以下の範囲であれば強度やコシ感は十分に得られ、コストの観点から薄肉化することが好ましい。フィルムの厚みは8~30μmがより好ましく、9μm~20μmが特に好ましい。
【0088】
(欠点数)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルム100m当たり1mm以上の異物が20個未満であることがフィルム品位の観点から好ましく、ポリエステル再生原料を用いながらも品位のよいフィルムであると言える。
【実施例
【0089】
A.ポリエステル樹脂の評価方法は下記の通りである。
[ガラス転移転(Tg)]
示差走査熱量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製DSC6220型)を用いて、樹脂試料5mgを窒素雰囲気下にて280℃まで溶融し、5分間保持した後、液体窒素にて急冷し、室温より昇温速度20℃/分の条件にて測定した。
【0090】
[固有粘度(IV)]
ポリエステル樹脂0.2gをフェノール/1,1,2,2-テトラクロルエタン(60/40(重量比))の混合溶媒50ml中に溶解し、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。単位はdl/g。
【0091】
[原料ポリエステル及びフィルムを構成するポリエステル中に含まれるテレフタル酸及びイソフタル酸成分の含有率]
クロロホルムD(ユーリソップ社製)とトリフルオロ酢酸D1(ユーリソップ社製)を10:1(体積比)で混合した溶媒に溶解させて、試料溶液を調製し、NMR(「GEMINI-200」;Varian社製)を用いて、温度23℃、積算回数64回の測定条件で試料溶液のプロトンのNMRを測定した。NMR測定では、所定のプロトンのピーク強度を算出して、酸成分100モル%中のテレフタル酸成分およびイソフタル酸成分の含有率(モル%)を算出した。
【0092】
B.ポリエステルフィルムの評価方法は下記の通りである。
下記に示すフィルム中の異物(欠点数)およびフィルムロールのシワ評価および算術平均高さSaと最大突起高さSpのバラつき(%)以外の特性の評価用フィルムのサンプリングは、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムロール表層より行った。
【0093】
[フィルムの厚み]
JIS K7130-1999 A法に準拠し、ダイアルゲージを用いて測定した。
【0094】
[ヘイズ]
JIS-K7136に準拠し、得られたフィルムから長手方向5cm×幅方向5cmの面積に切り出し、日本電色工業株式会社製のヘイズメーター(NDH5000)を用いて、ヘイズを測定した。測定は、3回行い、その平均値を求めた。
【0095】
[算術平均高さSa、最大高さSp]
ISO25178に準拠し、得られたフィルムから長手方向10cm×幅方向10cmの面積に切り出し、Zygo社製の白色レーザー干渉計(NEW VIEW8300)を用い、下記の観察条件にて走査を行い、算術平均高さSa(μm)と最大突起高さSp(μm)を測定した。測定は、未溶融物や埃等の異物を除く表面を対象とした。
測定箇所は10cm×10cmのサンプルの任意の箇所10点で測定し、その平均値をそれぞれ算術平均高さSa、最大突起高さSpとした。
算術平均高さSaと最大突起高さSpのバラつき(%)は、得られたポリエステルフィルムロール(幅800mm、巻長30,000m)について、長手方向にフィルムロールの表層から巻き芯まで1000m毎にサンプリングした。サンプリングした各フィルムについて、上記の条件にて測定を行った。得られた算術平均高さSaの最大値をXmax(N)、最小値をXmin(N)、平均値をXaveとし、式[1]で表される長手方向のバラつきを求めた。
(観察条件)
・対物レンズ:10倍
・ズームレンズ:1倍
・視野:0.82×0.82mm
・サンプリング間隔:0.803μm
・想定測定時間:4秒
・タイプ:Surface
・モード:CSI
・Z解像度:High
・スキャン長:20μm
・カメラモード:1024×1024@100Hz
・シャッター速度:100%
・光量:1.3%
・オプション:SureScan Off
SmartPsi Averages 4
ノイズ低減
・信号処理オプション:フリンジ次数解析 Advanced
フリンジ除去ON
【0096】
[動摩擦係数、静止摩擦係数、]
得られたフィルムから長手方向400mm×幅方向100mmの面積に切り出し、試料フィルムを作製した。これを23℃、65%RHの雰囲気下で12時間エージングし、試験テーブル用として長手方向300mm×幅方向100mmの試験片、滑り片用に長手方向100mm×幅方向100mmの試験片に分けた。
試験テーブル用試験片を試験テーブルにセットし、滑り片用試験片は、金属製の荷重が1.5kgの滑り片の底面(面積の大きさが39.7mm2、正方形)に、それぞれの面が反対となって接するように貼りつけた。
JIS K-7125に準拠し、引張試験機(A&D社製テンシロンRTG-1210)を用い、試験片の滑り速度を200mm/分、23℃、65%RH条件下で動摩擦係数と静止摩擦係数とをそれぞれ測定し、3回の測定の平均を用いた。
【0097】
[フィルム中の異物(欠点数)]
幅800mm、巻長10000m(8000平方メートル)で巻き取ったフィルムロールを、巻返し機を用いて巻返した。巻返す際 FUTEC社製の欠点検知機(型式 F MAX MR)を用いて欠点数を調査した。そしてタテ方向 または ヨコ方向のどちらか1つの方向で1mm以上のサイズの欠点数を求めた。全ての欠点数から下記式[3]により、1000平方メートル当りの欠点数を求めた。
100平方メートル当りの欠点数=全ての欠点数÷80・・・・・[3]
測定したフィルム中の異物の数により以下の判定基準で評価した。
○:フィルム中の異物の数20個/100m未満
×:フィルム中の異物の数20個/100m以上
【0098】
[フィルム全層中の無機粒子の含有量]
得られたフィルムを蛍光X線分析装置(リガク社製、Supermini200型)で、予め求めた検量線により求めた。
【0099】
[空気抜け時間]
図3に示すように、台盤1の上にフィルム4を載せる。次いで、フィルム押え2をフィルム4の上から載せ、固定することによって張力を与えながらフィルム4を固定する。次いで、フィルム押え2の上に、フィルム5として台盤1の上に載せたフィルム4の上面とは反対の面を下にして載せる。次いでフィルム5の上にフィルム押え8を載せ、更にネジ3を用いてフィルム押え8,2および台盤1を固定する。
次に、フィルム押え2に設けられた空洞2aと真空ポンプ6とを、フィルム押え2に設けられた細孔2cおよびパイプ7を介して接続する。そして、真空ポンプ6を駆動すると、フィルム5には、空洞2aに吸い付けられることによって張力が加わる。また、同時にフィルム4とフィルム5の重なり合った面もフィルム押え2に円周状に設けられた細孔2dを介して減圧され、フィルム4とフィルム5はその重なり合った面において、外周部から密着し始める。
密着する様子は、重なり合った面の上部から干渉縞を観察することによって容易に知ることができる。そして、フィルム4とフィルム5の重合面の外周部に干渉縞が生じてから重なり合った面の前面に干渉縞が拡がり、その動きが止まるまでの時間(秒)を測定し、この時間(秒)を空気抜け時間とする。なお、測定は2枚のフィルムを取り替えて5回繰り返し行い、その平均値を用いる。
【0100】
[フィルムロールのシワ評価]
製膜した二軸配向ポリエステルフィルムを幅800mm、巻長12000mで巻き取り、下記基準でロール表層にあるシワの評価を目視で行った。判定○、△を合格とした。
○:シワがない
△:弱いシワがあるが、引き出したフィルムに張力20N/m程度をかけるとシワが消える
×:強いシワがあり、引き出したフィルムに張力20N/m程度をかけてもシワが消えない
【0101】
以下に本実施例及び比較例で使用する原料樹脂チップの詳細を示す。
(ポリエステル樹脂A):メカニカルリサイクルポリエステル樹脂
後述する二軸配向ポリエステルフィルムの作製において使用するペットボトルより再生されたメカニカルリサイクルポリエステル樹脂として、以下の方法を用いて合成したものを用いた。
飲料用ペットボトルから残りの飲料などの異物を洗い流した後、粉砕してフレークを得た。得られたフレークをフレーク濃度10重量%、85℃、30分の条件で3.5重量%の水酸化ナトリウム溶液で攪拌下で洗浄を行った。アルカリ洗浄後、フレークを取り出し、フレーク濃度10重量%、25℃、20分の条件で蒸留水を用いて攪拌下で洗浄を行った。この水洗を蒸留水を交換してさらに2回繰り返し実施した。水洗後、フレークを乾燥した後、押出機で溶融し、順次目開きサイズの細かなものにフィルターを変えて2回更に細かな異物を濾別し、3回目に50μmの最も小さな目開きサイズのフィルターで濾別して、固有粘度0.69dl/g、イソフタル酸含有率1.5モル%のポリエステル樹脂Aを得た。
【0102】
(ポリエステル樹脂B):メカニカルリサイクルポリエステル樹脂
前記ポリエステル樹脂Aの製造工程において、アルカリ洗浄を行わなかった以外は、上記ポリエステル樹脂Aと同様にして、固有粘度0.69dl/g、イソフタル酸含有率1.5モル%のポリエステル樹脂Bを得た。
【0103】
(ポリエステル樹脂C):ケミカルリサイクルポリエステル樹脂
後述する二軸配向ポリエステルフィルムの作製において使用するペットボトルより再生されたケミカルリサイクルポリエステル樹脂として、以下の方法を用いて合成したものを用いた。
分別収集・回収されたペットボトルベールを湿式粉砕機に投入し、水1,000リッターに液体台所洗剤500gを加えたものを、上記湿式粉砕機内に循環させながら粉砕を行い、粉砕機に接続している比重分離機によって金属、砂、ガラス等の比重の大きいものを沈殿させ、上層部からフレークを取り出した。このフレークを純水で濯ぎ、遠心脱水して回収フレークとした。
【0104】
上記回収フレークを未乾燥の状態で溶融したもの30kgを攪拌機付きオートクレーブ中で、予め加熱しておいたエチレングリコール150kg、酢酸亜鉛2水和物150gの混合液中に仕込み、水・酢酸の如きエチレングリコールよりも沸点の低い溜分を除去した後、還流コンデンサーを用いて195~200℃の温度で4時間反応させた。
【0105】
反応終了後、反応器内容物温度を97~98℃まで降温し、フィルターで熱時濾過して浮遊物及び沈殿物を除去した。
【0106】
熱時濾過後の濾液を更に冷却し、粗製BHETが完全に溶解していることを確認した後、50~51℃で活性炭床、次いでアニオン/カチオン交換混合床を30分間かけて通し、前精製処理を施した。
【0107】
上記の前精製処理液を再度攪拌式オートクレーブに仕込み、加熱して余剰のエチレングリコールを198℃で常圧留出させ、濃縮BHETの溶融液を得た。
【0108】
得られた濃縮BHETの溶融液を、窒素ガス雰囲気下で攪拌しつつ、自然降温した後、オートクレーブから取り出し、濃縮BHETの細片ブロックを得た。
【0109】
この細片ブロックを再度130℃まで加熱・溶融した後、定量ポンプにて薄膜真空蒸発器に供給し、蒸発、冷却凝縮して精製BHETを得た。
【0110】
この精製BHETを原料として溶融重合を行い、固有粘度0.696dl/gのケミカルリサイクルポリエステル樹脂Cを得た。
【0111】
(ポリエステル樹脂D)
後述する二軸配向ポリエステルフィルムの作製において使用する化石燃料由来PET樹脂として、テレフタル酸//エチレングリコール=100//100(モル%)(東洋紡社製、固有粘度0.62dl/g)を用いた。
【0112】
(ポリエステル樹脂E)
エステル化反応缶を昇温して200℃に到達した時点で、テレフタル酸[86.4質量部]及びエチレングリコール[64.4質量部]からなるスラリーを仕込み、撹拌しながら、触媒として三酸化アンチモン[0.017質量部]及びトリエチルアミン[0.16質量部]を添加した。次いで加熱昇温を行い、ゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った。
その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、酢酸マグネシウム4水塩[0.071質量部]、次いでリン酸トリメチル[0.014質量部]を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温した後、リン酸トリメチル[0.012質量部]、次いで酢酸ナトリウム[0.0036質量部]を添加した後、15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、さらに平均粒子径2.5μmの不定形シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを粒子含有量を基準として0.7重量部添加した。このシリカ粒子は、エチレングリコールスラリーを予め調製し、これを遠心分離処理して粗粒部を35%カットし、その後、目開き5μmの金属フィルターでろ過処理を行って得られた粒子である。15分後に、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下重縮合反応を行い、極限粘度0.62dl/gのポリエステル樹脂Eを得た。
【0113】
(ポリエステル樹脂F、G、H、I、J)
シリカ粒子の重量平均粒径及び粒子含有量を変更した以外はポリエステル樹脂Dと同様の方法でポリエステル樹脂F、G、H、I、Jを得た。
【0114】
原料樹脂チップは、表1に示した通りである。なお、表中の略号は以下の通りである。
TPA:テレフタル酸
EG:エチレングリコール
【0115】
【表1】
【0116】
[実施例1]
3台の押出し機を用いて3層構成のフィルムを製膜した。基層(B)はポリエステル樹脂Aを95.0質量%、ポリエステル樹脂Dを5.0質量%、表面層(A)はポリエステル樹脂Aを87.5質量%、ポリエステル樹脂Dを12.5質量%とした。ここでポリエステル樹脂Dは、押出し機に入る前に他原料と混合するように図1に示すようなインナーパイプを用いて入れた。それぞれの原料樹脂を乾燥後、第1、第3の押出機より表面層(A)形成混合樹脂を285℃の樹脂温度で溶融押出しし、第2の押出機により基層(B)形成混合樹脂を285℃の樹脂温度にて溶融し、キャススティングドラムに接触する側から表面層(A)/基層(B)/表面層(A)の順番に、Tダイ内にて厚み比が1/10/1(μm)になるように合流積層し、T字の口金から吐出させ、表面温度が30℃のキャスティングドラムにて冷却固化させ、未延伸のポリエチレンテレフタレートシートを得た。
その際、直径0.15mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させて3層未延伸フィルムを得た。
得られた未延伸フィルムを115℃に加熱し、一段目を1.24倍、二段目を1.4倍、3段目を2.6倍とした三段延伸にて、全延伸倍率4.5倍で長手方向に延伸した。
引き続き、温度140℃、延伸倍率4.3倍にて幅方向に延伸し、245℃で熱固定し、幅方向に5%熱弛緩処理を行い、チルロールに接触した側の表面層(A)に40W・min/mの条件でコロナ処理を行い、ワインダーでロール状に巻取ることで、厚み12μmの二軸配向ポリエステルフィルムのマスターロール(巻長30000m、幅8000mm)を作製した。
得られたマスターロールから二軸配向ポリエステルフィルムを巻出し、直径6インチ(152.2mm)の巻芯に、800mm幅でスリットしながら、コンタクトロールでフィルムロールに面圧と、2軸ターレットワインダーでフィルムに張力をかけながら、フィルムロールを巻き取った。
得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側の表面層(A)で行った。
【0117】
[実施例2]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂Aを64.0質量%、ポリエステル樹脂Eを36.0質量%、基層(B)のポリエステル樹脂Aを64.0質量%、ポリエステル樹脂Eを36.0質量%、Tダイ内の厚み比を3/6/3(μm)に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側の表面層(A)で行った。
【0118】
[実施例3]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂Aを78.0質量%、ポリエステル樹脂Fを22.0質量%、基層(B)のポリエステル樹脂Aを98.0質量%、ポリエステル樹脂Fを2.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側の表面層(A)で行った。
【0119】
[実施例4]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂Aを83.5質量%、ポリエステル樹脂Gを16.5質量%、基層(B)のポリエステル樹脂Aを100.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側の表面層(A)で行った。
【0120】
[実施例5]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂をポリエステル樹脂Bに変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側の表面層(A)で行った。
【0121】
[実施例6]
原料として、実施例1において表面層(A)及び基層(B)に用いたポリエステル樹脂Aをポリエステル樹脂Cに変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側の表面層(A)で行った。
【0122】
[実施例7]
原料として、実施例1において表面層(A)及び基層(B)に用いたポリエステル樹脂Aをポリエステル樹脂A/ポリエステル樹脂C=50/50の比率に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側の表面層(A)で行った。
【0123】
[実施例8]
実施例1において表面層(A)及び基層(B)に用いたポリエステル樹脂Aをポリエステル樹脂A/ポリエステル樹脂C=10/90の比率に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側の表面層(A)で行った。
【0124】
[実施例9]
原料として、表面層(A)及び基層(B)のポリエステル樹脂をポリエステル樹脂C/ポリエステル樹脂D=50/50の比率に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側の表面層(A)で行った。
【0125】
[実施例10]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂をポリエステル樹脂C:90重量%とポリエステル樹脂D:10重量%の混合物に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側の表面層(A)で行った。
【0126】
[比較例1]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂をポリエステル樹脂Dに変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側の表面層(A)で行った。
【0127】
[比較例2]
原料として、表面層(A)のポリエステル樹脂Aを82.0質量%、ポリエステル樹脂Iを18.0質量%、基層(B)のポリエステル樹脂Aを98.6質量%、ポリエステル樹脂Iを1.4質量%に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側の表面層(A)で行った。
【0128】
[比較例3]
原料として、表面層(A)および基層(B)のポリエステル樹脂Aを96.0質量%、ポリエステル樹脂Jを4.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側の表面層(A)で行った。
【0129】
[比較例4]
実施例1と同じように、3台の押出し機を用いて3層構成のフィルムを製膜した。基層(B)はポリエステル樹脂Aを95.0質量%、ポリエステル樹脂Eを5.0質量%、表面層(A)はポリエステル樹脂Aを87.5質量%、ポリエステル樹脂Eを12.5質量%とした。しかし、ポリエステル樹脂A、ポリエステル樹脂Eは全て混合された状態で押出し機に入れた。つまり、ポリエステル樹脂Eははインナーパイプを用いずに、ホッパー上部で混合した状態で押出し機に入った。それぞれの原料樹脂を乾燥後、第1、第3の押出機より表面層(A)形成混合樹脂を285℃の樹脂温度で溶融押出しし、第2の押出機により基層(B)形成混合樹脂を285℃の樹脂温度にて溶融し、キャススティングドラムに接触する側から表面層(A)/基層(B)/表面層(A)の順番に、Tダイ内にて厚み比が1/10/1(μm)になるように合流積層し、T字の口金から吐出させ、表面温度が30℃のキャスティングドラムにて冷却固化させ、未延伸のポリエチレンテレフタレートシートを得た。その際、直径0.15mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させて3層未延伸フィルムを得た。
得られた未延伸フィルムを115℃に加熱し、一段目を1.24倍、二段目を1.4倍、3段目を2.6倍とした三段延伸にて、全延伸倍率4.5倍で長手方向に延伸した。
引き続き、温度140℃、延伸倍率4.3倍にて幅方向に延伸し、245℃で熱固定し、幅方向に5%熱弛緩処理を行い、チルロールに接触した側の表面層(A)に40W・min/mの条件でコロナ処理を行い、ワインダーでロール状に巻取ることで、厚み12μmの二軸配向ポリエステルフィルムのマスターロール(巻長30000m、幅8000mm)を作製した。
得られたマスターロールから二軸配向ポリエステルフィルムを巻出し、直径6インチ(152.2mm)の巻芯に、800mm幅でスリットしながら、コンタクトロールでフィルムロールに面圧と、2軸ターレットワインダーでフィルムに張力をかけながら、フィルムロールを巻き取った。
得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側の表面層(A)で行った。
【0130】
実施例1~10のフィルムは、表2の結果のように、最大突起高さSp、ヘイズ、空気抜け時間、長手方法のバラつきが規定の範囲内となるため、優れた透明性、機械特性を有するとともに、フィルムの製造工程中の滑り性や巻取り性にも優れており、且つペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂を用いることにより環境配慮されたポリエステルフィルムであり、異物が少なく、巻長の長い長尺のフィルムロールであっても長手方向の物性のバラつきが少ないものであった。
【0131】
比較例1は、得られたフィルムの最大突起高さSp、ヘイズ、空気抜け時間、長手方向のバラつきが規定の範囲内であるため、優れた透明性、機械特性を有するとともに、フィルムの製造工程中の滑り性や巻取り性にも優れているが、従来の化石燃料由来のポリエステル樹脂であるため、環境配慮されたポリエステルフィルムとしては劣るものであった。
【0132】
比較例2は、得られたフィルムのヘイズ、空気抜け時間、長手方向のバラつきは範囲内であるものの、最大突起高さSpが大きいため、フィルムの平滑性に劣るものであった。
【0133】
比較例3は、得られたフィルムの最大突起高さSp、ヘイズ、空気抜け時間、長手方向のバラつきは範囲内であるものの、空気抜け時間が長いため、ロールに巻込まれる空気が均一に均一に抜けず、ロールシワ評価が不良であった。
【0134】
実施例5は、得られたフィルムの最大突起高さSp、ヘイズ、空気抜け時間、長手方向のバラつきが規定の範囲内であるため、優れた透明性、機械特性を有するとともに、フィルムの製造工程中の滑り性や巻取り性にも優れているが、アルカリ洗浄を行っていないペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂を用いたため、フィルム中の異物が多く、工業的に連続生産されるフィルムとしてはやや劣るものであった。
【0135】
比較例4は、原料の供給にインナーパイプを用いておらず、原料の偏析のために長手方向で原料比率の変動が大きくなるため、得られたフィルムロールの算術平均高さSa、最大突起高さSpの長手方向のバラつきが大きく、フィルムロール中で部分的に実施例1~4と同等の物性を有する良好なフィルムを得ることができるものの、工業的に連続生産されるフィルムロールとしては劣るものであった。
【0136】
【表2A】
【0137】
【表2B】
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムロールは、優れた透明性、機械特性を有するとともに、フィルムの製造工程中の滑り性や巻取り性にも優れており、ペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされたポリエステル樹脂を用いることにより、環境配慮されたポリエステルフィルムからなり、異物が少なく、巻長の長い長尺のフィルムロールであっても長手方向の物性のバラつきが少ない二軸配向ポリエステルフィルムロール及びその製造方法を提供することが可能となった。
食品包装用、ガスバリアフィルム用途の包装用フィルムの分野において広く適用でき、昨今環境負荷低減が強く望まれることから、産業界に大きく寄与することが期待される。
図1
図2
図3