(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】固定金具および建築物
(51)【国際特許分類】
F16B 17/00 20060101AFI20250212BHJP
E04B 9/18 20060101ALI20250212BHJP
E04B 1/38 20060101ALN20250212BHJP
【FI】
F16B17/00 Z
E04B9/18 J
E04B1/38 400Z
(21)【出願番号】P 2023219016
(22)【出願日】2023-12-26
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 瞭
(72)【発明者】
【氏名】青木 隆太郎
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-308874(JP,A)
【文献】特開2021-173159(JP,A)
【文献】特開2019-116966(JP,A)
【文献】特開平11-270047(JP,A)
【文献】特開2014-185433(JP,A)
【文献】特開2005-282020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 17/00
E04B 1/38
E04B 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横架材に吊下物を固定するための固定金具であって、
前記横架材の第1側面に配置されるプレート部と、前記プレート部に設けられて前記吊下物が接続される接続部と、前記プレート部を前記横架材に固定する固定部と、を備え、
前記固定部は、
軸方向に延びる挿通孔を有し、かつ、前記プレート部を貫通して前記横架材に打ち込まれる外部ピンと、
前記外部ピン内に配置されて前記軸方向と交差する交差方向に前記外部ピンから突出可能に設けられ、かつ、前記横架材に係合する係合部材と、
前記係合部材を前記交差方向に押すように前記外部ピンの前記挿通孔に挿通する挿通部材と、
前記挿通部材を付勢する付勢部と、
前記プレート部に設けられて、前記挿通部材を前記付勢部を介して支持する支持部と、を備える、
固定金具。
【請求項2】
前記プレート部を第1プレート部として、前記横架材において、前記第1プレート部が配置される第1側面と反対側の第2側面に配置される第2プレート部と、前記第1プレート部と前記第2プレート部とを繋ぐ中間プレート部と、をさらに備え、
前記第1プレート部には、前記固定部としての第1固定部が設けられ、
前記第2プレート部には、前記固定部としての第2固定部が設けられ、
前記接続部は、前記中間プレート部に設けられる、
請求項1に記載の固定金具。
【請求項3】
前記挿通部材は、前記外部ピンの前記軸方向に延びるように構成され、
前記付勢部は、前記挿通部材を前記軸方向に押す第1付勢力を付与するように構成され、
前記支持部は、前記挿通部材に前記第1付勢力が加わるように前記付勢部を支持する、
請求項1または2に記載の固定金具。
【請求項4】
前記外部ピンは、前記挿通孔の内周面に雌ねじ部を有し、
前記挿通部材は、前記雌ねじ部に係合する雄ねじ部を有し、かつ、前記外部ピンの前記軸方向に延びるように構成され、
前記付勢部は、前記挿通部材の中心軸を中心として周方向に前記挿通部材を回転させる第2付勢力を付与するように構成され、
前記支持部は、前記挿通部材に前記周方向の前記第2付勢力が加わるように前記付勢部を支持する、
請求項1または2に記載の固定金具。
【請求項5】
前記付勢部の第2付勢力を増大させる付勢力増大部をさらに備え、
前記外部ピンは、前記挿通孔の内周面に雌ねじ部を有し、
前記挿通部材は、前記雌ねじ部に係合する雄ねじ部を有し、かつ、前記外部ピンの前記軸方向に延びるように構成され、
前記付勢部は、前記挿通部材の中心軸を中心として周方向に前記挿通部材を回転させる前記第2付勢力を付与するように構成され、
前記支持部は、前記付勢部を支持し、
前記付勢力増大部は、前記支持部に設けられて、操作に基づいて前記付勢部に前記周方向の前記第2付勢力を増大させる、
請求項1または2に記載の固定金具。
【請求項6】
前記付勢部は、前記挿通部材を嵌め込む嵌め込み部と、
前記挿通部材と前記支持部との間に配置される捩じりばねと、を備え、
前記付勢力増大部は、前記捩じりばねを支持する芯材と、ラチェット歯車と、前記ラチェット歯車に係合するラチェット係合部と、を備え、
前記芯材は、前記嵌め込み部または前記付勢力増大部に支持され、
前記捩じりばねの第1端は、前記挿通部材または前記嵌め込み部に接続され、かつ、前記捩じりばねにおいて前記第1端と反対側の第2端は、前記ラチェット歯車に接続される、
請求項5に記載の固定金具。
【請求項7】
前記雄ねじ部は、第1方向のねじであり、
前記捩じりばねは、前記第1方向に巻くコイルばねであり、
前記ラチェット歯車は、前記第1方向に回転可能となるように構成され、
前記ラチェット係合部は、前記ラチェット歯車が前記第1方向に回転可能かつ前記第1方向と逆方向に回転不可となるように係合する、
請求項6に記載の固定金具。
【請求項8】
前記雄ねじ部は、第1方向のねじであり、
前記捩じりばねは、前記第1方向と逆方向に巻くコイルばねであり、
前記ラチェット歯車は、前記第1方向に回転可能となるように構成され、
前記ラチェット係合部は、前記ラチェット歯車が前記第1方向に回転可能かつ前記第1方向と逆方向に回転不可となるように係合する、
請求項6に記載の固定金具。
【請求項9】
横架材を含む躯体と、前記横架材に設けられる請求項1または2に記載の固定金具と、を備える、
建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固定金具および建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
構造材同士を繋ぐための金具をねじによって構造材に固定する技術が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、スプリングを有するナットと、ねじとによって、金具を構造材に固定する。スプリングがねじを付勢するため、ねじの緩みが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建築物において吊下物が吊り下げられる場合がある。吊下物は、金具を介して横架材に固定される。金具は、ねじなどの固定部材によって横架材に固定される。この場合、吊下物に荷重が加わる都度、または、吊下物の揺れが生じる都度、金具および固定部材に外力が加わる。そうすると、徐々にねじ孔が拡大する。ねじ孔が拡大すると、ねじが緩む。そして、金具の固定状態が低下する。そこで、横架材に対する金具の固定状態の強度低下を抑制できる、固定金具および建築物を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決する固定金具は、横架材に吊下物を固定するための固定金具であって、前記横架材の第1側面に配置されるプレート部と、前記プレート部に設けられて前記吊下物が接続される接続部と、前記プレート部を前記横架材に固定する固定部と、を備え、前記固定部は、軸方向に延びる挿通孔を有し、かつ、前記プレート部を貫通して前記横架材に打ち込まれる外部ピンと、前記外部ピン内に配置されて前記軸方向と交差する交差方向に前記外部ピンから突出可能に設けられ、かつ、前記横架材に係合する係合部材と、前記係合部材を前記交差方向に押すように前記外部ピンの前記挿通孔に挿通する挿通部材と、前記挿通部材を付勢する付勢部と、前記プレート部に設けられて、前記挿通部材を前記付勢部を介して支持する支持部と、を備える。
【0006】
この構成によれば、挿通部材は、係合部材を交差方向に押す。このため、外部ピンが打ち込まれた横架材の孔が拡大すると、係合部材が交差方向に押し出される。これによって、係合部材と横架材の孔との係合が維持され続ける。このようにして、固定金具の固定状態の強度低下を抑制できる。
【0007】
(2)上記(1)に記載の固定金具において、前記プレート部を第1プレート部として、前記横架材において、前記第1プレート部が配置される第1側面と反対側の第2側面に配置される第2プレート部と、前記第1プレート部と前記第2プレート部とを繋ぐ中間プレート部と、をさらに備え、前記第1プレート部には、前記固定部としての第1固定部が設けられ、前記第2プレート部には、前記固定部としての第2固定部が設けられ、前記接続部は、前記中間プレート部に設けられる。
【0008】
この構成によれば、固定金具は、第1固定部および第2固定部によって横架材の第1側面と第2側面とに固定される。これによって、吊下物を介して固定金具にかかる荷重によって、横架材に対して固定金具が傾くことを抑制できる。
【0009】
(3)上記(1)または上記(2)に記載の固定金具において、前記挿通部材は、前記外部ピンの前記軸方向に延びるように構成され、前記付勢部は、前記挿通部材を前記軸方向に押す第1付勢力を付与するように構成され、前記支持部は、前記挿通部材に前記第1付勢力が加わるように前記付勢部を支持する。この構成によれば、挿通部材を軸方向に付勢できる。
【0010】
(4)上記(1)または上記(2)に記載の固定金具において、前記外部ピンは、前記挿通孔の内周面に雌ねじ部を有し、前記挿通部材は、前記雌ねじ部に係合する雄ねじ部を有し、かつ、前記外部ピンの前記軸方向に延びるように構成され、前記付勢部は、前記挿通部材の中心軸を中心として周方向に前記挿通部材を回転させる第2付勢力を付与するように構成され、前記支持部は、前記挿通部材に前記周方向の前記第2付勢力が加わるように前記付勢部を支持する。この構成によれば、第2付勢力によって、外部ピンの挿通孔に挿通部材がねじ込まれるように、挿通部材を付勢できる。
【0011】
(5)上記(1)または上記(2)に記載の固定金具において、前記付勢部の第2付勢力を増大させる付勢力増大部をさらに備え、前記外部ピンは、前記挿通孔の内周面に雌ねじ部を有し、前記挿通部材は、前記雌ねじ部に係合する雄ねじ部を有し、かつ、前記外部ピンの前記軸方向に延びるように構成され、前記付勢部は、前記挿通部材の中心軸を中心として周方向に前記挿通部材を回転させる前記第2付勢力を付与するように構成され、前記支持部は、前記付勢部を支持し、前記付勢力増大部は、前記支持部に設けられて、操作に基づいて前記付勢部に前記周方向の前記第2付勢力を増大させる。この構成によれば、第2付勢力を、付勢力増大部によって増大させることができる。
【0012】
(6)上記(5)に記載の固定金具において、前記付勢部は、前記挿通部材を嵌め込む嵌め込み部と、前記挿通部材と前記支持部との間に配置される捩じりばねと、を備え、前記付勢力増大部は、前記捩じりばねを支持する芯材と、ラチェット歯車と、前記ラチェット歯車に係合するラチェット係合部と、を備え、前記芯材は、前記嵌め込み部または前記付勢力増大部に支持され、前記捩じりばねの第1端は、前記挿通部材または前記嵌め込み部に接続され、かつ、前記捩じりばねにおいて前記第1端と反対側の第2端は、前記ラチェット歯車に接続される。この構成によれば、ラチェット機構によって第2付勢力を増大させることができる。
【0013】
(7)上記(6)に記載の固定金具において、前記雄ねじ部は、第1方向のねじであり、前記捩じりばねは、前記第1方向に巻くコイルばねであり、前記ラチェット歯車は、前記第1方向に回転可能となるように構成され、前記ラチェット係合部は、前記ラチェット歯車が前記第1方向に回転可能かつ前記第1方向と逆方向に回転不可となるように係合する。この構成によれば、ラチェット機構によって第2付勢力を増大させることができる。
【0014】
(8)上記(6)に記載の固定金具において、前記雄ねじ部は、第1方向のねじであり、前記捩じりばねは、前記第1方向と逆方向に巻くコイルばねであり、前記ラチェット歯車は、前記第1方向に回転可能となるように構成され、前記ラチェット係合部は、前記ラチェット歯車が前記第1方向に回転可能かつ前記第1方向と逆方向に回転不可となるように係合する。この構成によれば、ラチェット機構によって第2付勢力を増大させることができる。
【0015】
(9)上記課題を解決する建築物は、横架材を含む躯体と、前記横架材に設けられる上記(1)~上記(8)のいずれか一項に記載の固定金具と、を備える。この構成によれば、建築物において、横架材に対する固定金具の固定状態の強度低下を抑制できる。このため、金具を介して横架材に吊下物を固定した場合、吊下物の固定状態の安定性を維持できる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の固定金具によれば、横架材に対する金具の固定状態の強度低下を抑制できる。本開示の建築物によれば、吊下物の固定状態の安定性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態について、建築物の模式図である。
【
図2】第1実施形態について、固定金具の斜視図である。
【
図3】第1実施形態について、固定金具の正面図である。
【
図4】
図3の4-4線に沿う天井梁の断面図である。
【
図5】
図3の5-5線に沿う固定金具の断面図である。
【
図6】第1実施形態について、外部ピンの斜視図である。
【
図7】第1実施形態について、
図6の方向と異なる方向から見た、外部ピンの斜視図である。
【
図8】第1実施形態について、係合部材の斜視図である。
【
図9】第1実施形態について、挿通部材の斜視図である。
【
図10】第1実施形態について、固定金具の施工方法を説明する図である。
【
図11】第1実施形態について、固定金具の施工方法を説明する図である。
【
図12】第1実施形態について、固定金具の作用を示す図である。
【
図13】第2実施形態について、外部ピンの斜視図である。
【
図14】第2実施形態について、挿通部材の斜視図である。
【
図15】第2実施形態について、固定金具の作用を示す図である。
【
図16】第3実施形態について、固定金具の断面図である。
【
図17】第3実施形態について、付勢力増大部の正面図である。
【
図18】第4実施形態について、固定金具の断面図である。
【
図19】変形例について、固定金具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
図1~
図12を参照して、固定金具1および建築物2について説明する。
図1および
図2に示されるように、建築物2は、横架材3を含む躯体と、横架材3に設けられている固定金具1と、を備える。建築物2の一例として、戸建ての住宅、集合住宅、および施設などが挙げられる。施設の例として、リハビリテーション施設、スポーツジム、スポーツ・演劇練習用の部屋を含む施設、健康促進センター等が挙げられる。本実施形態において、建築物2は1階建てのリハビリテーション施設である。横架材3の一例として、桁および梁などが挙げられる。本実施形態において、横架材3は木製の天井梁3Aである。天井梁3Aは、天井の近くに配置される梁である。本実施形態では、天井梁3Aは、天井裏に配置される。他の例において、天井梁3Aは、天井の下に配置される場合もある。天井梁3Aは、第1側面6と、第1側面6と反対側の第2側面10と、第1側面6の下端と第2側面10の下端とを繋ぐ下面11と、を有する。
【0019】
図2および
図3に示されるように、固定金具1は、天井梁3Aに吊下物4を固定するための金具である。吊下物4は、天井梁3Aに吊り下げられる物である。吊下物4の例として、リハビリ器具4A、健康器具、トレーニング用器具、プロジェクター、テレビ等の電気機器等が挙げられる。本実施形態において、吊下物4は、リハビリ器具4Aである。リハビリ器具4Aは、固定金具1によって天井梁3Aから吊り下げられるように天井梁3Aに固定されている。
【0020】
固定金具1は、天井梁3Aの第1側面6に配置されるプレート部7と、プレート部7に設けられてリハビリ器具4Aが接続される接続部8と、プレート部7を天井梁3Aに固定する固定部9と、を備える。本実施形態において、第1側面6に配置されるプレート部7を第1プレート部7Aと言う。
【0021】
図3および
図4に示されるように、固定金具1は、天井梁3Aの第2側面10に配置される第2プレート部7Bをさらに備える。固定金具1は、さらに、第1プレート部7Aと第2プレート部7Bとを繋ぐ中間プレート部7Cを備える。固定金具1が天井梁3Aに取り付けられた状態において、中間プレート部7Cは、天井梁3Aの下面11に沿って延びている。接続部8は、中間プレート部7Cに設けられる。接続部8は、中間プレート部7Cから下方に延びる。中間プレート部7Cは、天井梁3Aの下面11と隙間をあけて配置されてもよい。中間プレート部7Cと天井梁3Aとの間に隙間があけられている場合、隙間にスペーサーを配置してもよい。中間プレート部7Cは、下面11と接するように配置されてもよい。
【0022】
本実施形態では、接続部8は、中間プレート部7Cから天井12に向かって下方に延びている。接続部8の下端には、天井12を貫通するボルトが設けられている。このボルトにリハビリ器具4Aを取り付けることによって、リハビリ器具4Aは天井梁3Aに固定されている。
【0023】
第1プレート部7Aには、固定部9としての第1固定部9Aが設けられる。第2プレート部7Bには、固定部9としての第2固定部9Bが設けられる。第1固定部9Aおよび第2固定部9Bは、それぞれの外部ピン14が互いに干渉しないように、天井梁3Aに対して平面視で互い違いに配置されている(
図4参照)。本実施形態において、第1固定部9Aと第2固定部9Bとは、実質的に互いに同じ構成である。以降、第1固定部9Aについて説明する。また、以降の図において、第2固定部9Bについて、図示を省略する。
【0024】
図5に示されるように、第1固定部9Aは、第1プレート部7Aを貫通して天井梁3Aに打ち込まれる外部ピン14を備える。外部ピン14は、軸方向SAに延びる挿通孔13を有する。また、第1固定部9Aは、外部ピン14内に配置される係合部材15を備える。係合部材15は、軸方向SAと交差する交差方向SB(
図12参照)に外部ピン14から突出可能に設けられる。また、第1固定部9Aは、挿通部材16を備える。挿通部材16は、係合部材15を交差方向SBに押すように外部ピン14の挿通孔13に挿通する。さらに、第1固定部9Aは、挿通部材16を付勢する付勢部17と、挿通部材16を付勢部17を介して支持する支持部18と、を備える。
【0025】
付勢部17は、第1付勢力FAを挿通部材16に付与するように構成される。第1付勢力FAは、挿通部材16を軸方向SAに押す力である。具体的には、付勢部17は、弾性部材によって構成される。本実施形態において、付勢部17は、右巻きのコイルばねによって構成される。付勢部17は、左巻きコイルばねによって構成されてもよい。付勢部17の第1端17Aは、挿通部材16に溶接等によって接続されている。付勢部17において、第1端17Aの反対側の第2端17Bは、支持部18に溶接等によって接続されている。
【0026】
支持部18は、金属板により構成される。支持部18は、第1プレート部7Aから交差する方向に延びるアーム部18Aと、アーム部18Aから垂れ下げるように延びるアーム垂下部18Bと、を備える。支持部18は、第1プレート部7Aに設けられる。具体的には、アーム部18Aの端部は、第1プレート部7Aに溶接等によって取り付けられている。アーム垂下部18Bは、アーム部18Aの先端部から下方に延びる。付勢部17の第2端17Bは、アーム垂下部18Bの下部に接続される。支持部18は、5mm以上10mm以下の厚みの金属板で構成されることが好ましい。本実施形態において、支持部18を構成する金属板の厚みは6mmである。支持部18は、挿通部材16に第1付勢力FAが加わるように付勢部17を支持する。
【0027】
図6および
図7に示されるように、外部ピン14は、係合部材15(
図8参照)が外部ピン14から突出するための貫通孔19を有する。貫通孔19は、外部ピン14の外周面から挿通孔13に向かって延びている。貫通孔19は、挿通孔13と繋がっている。貫通孔19には、係合部材15が収容される。係合部材15は、係合部材15の上面15Aが挿通孔13の内周面に向くように貫通孔19に収容される(
図5、
図8参照)。外部ピン14は、貫通孔19が下方に位置するように天井梁3Aに打ち込まれる(
図5参照)。本実施形態において、挿通孔13は、外部ピン14の端から外部ピン14の中間部分まで延びている。挿通孔13は、外部ピン14の一方の端から他方の端まで貫通させるように形成されてもよい。
【0028】
図8に示されるように、係合部材15は、四角錐台のような形状に形成されている。係合部材15の上面15Aは、挿通部材16の先端と接触する面である(
図5参照)。上面15Aは、挿通部材16の先端に向かうにつれて高さが低くなるように傾斜する傾斜面となっている。ここで、係合部材15の高さは、係合部材15が貫通孔19に収容された収容状態において、軸方向SAを中心軸としたときの径方向の長さとして定義される。係合部材15は、挿通部材16の押圧作用に基づいて、外部ピン14の貫通孔19(
図7参照)から押し出されることによって、天井梁3Aにおける外部ピン孔5の周面に係合する。外部ピン孔5は、天井梁3Aが外部ピン14に打ち込まれたことによって形成される孔を示す。係合部材15の下面15Bは、常に天井梁3Aの外部ピン孔5の周面に接触する(
図5参照)。上面15Aは、外部ピン14に沿うように湾曲してもよい。下面15Bは、外部ピン孔5の周面に沿うように湾曲してもよい。
【0029】
図9に示されるように、挿通部材16は、内部ピン16Aと基部16Bとを備える。本実施形態において、基部16Bはプレート状の金属板によって形成されている。内部ピン16Aは、基部16Bの面の中心から外部ピン14の軸方向SAに延びるように構成される。内部ピン16Aの先端は先細りに構成される。内部ピン16Aは、内部ピン16Aの先端が係合部材15の上面15Aに接触するように、挿通孔13に挿通する(
図5参照)。
【0030】
図10および
図11を参照して、固定金具1を天井梁3Aに固定する手順の一例を説明する。
図10および
図11に示されるように、第1プレート部7Aが天井梁3Aの第1側面6に配置されている状態において、外部ピン14を、ハンマーなどの工具によって、外部ピン14が第1プレート部7Aを貫通するように、天井梁3Aに水平方向に打ち込む。
【0031】
次に、内部ピン16Aを外部ピン14の挿通孔13に挿通させる。そして、付勢部17の第1端17Aを挿通部材16の基部16Bに接続し、かつ、付勢部17の第2端17Bを支持部18に接続する。そして、付勢部17としてのコイルばねを縮めた状態において、支持部18を第1プレート部7Aに取り付ける。上記手順は、固定金具1を天井梁3Aに固定する一例であるため、上記手順内の各工程は可能な範囲で前後してもよい。
【0032】
[本実施形態の作用]
図12を参照して、本実施形態の作用を説明する。なお、図面は、理解を容易にするために天井梁3Aに外部ピン14が打ち込まれた外部ピン孔5を誇張して模式的に示している。
図12に記載の外部ピン孔5の寸法比率は実際のものと異なる。
【0033】
固定金具1の外部ピン14は、プレート部7を貫通して天井梁3Aに打ち込まれている。挿通部材16は、支持部18に支持されている付勢部17によって軸方向SAに付勢される。外部ピン14内の係合部材15は、外部ピン14の挿通孔13に挿通する挿通部材16によって、外部ピン14の軸方向SAと交差する交差方向SBに押されている。
【0034】
単にボルトによってプレート部7が固定されている場合において、固定金具に吊下物の荷重が繰り返し加わると、プレート部7を介してボルトに荷重が集中するため、ボルト孔は広がる虞がある。ボルト孔の広がりによってねじが緩むため、吊下物が不安定になる。
【0035】
図12に示されるように、本実施形態によれば、付勢部17によって付勢される挿通部材16は、外部ピン孔5の広がりに応じて、係合部材15を外部ピン14の軸方向SAと交差する交差方向SBに押す。これにより、係合部材15は、外部ピン孔5の広がりに追従するように外部ピン14から突出する。そして、係合部材15は、天井梁3Aと係合し続ける。係合部材15と天井梁3Aにおける外部ピン孔5との係合によって、外部ピン14の緩みを抑制できる。これによって、天井梁3Aに設けられるリハビリ器具4Aの固定状態の不安定化を抑制できる。
【0036】
また、固定金具1は、天井梁3Aの下面11に沿って延びている中間プレート部7Cが下面11と隙間をあけて配置されるように、天井梁3Aに固定されてもよい。この場合、天井梁3Aに対して固定金具1の取付位置の高さを調整し易くなる。
【0037】
[本実施形態の効果]
本実施形態の効果を説明する。
(1)固定金具1は、天井梁3Aの第1側面6に配置されるプレート部7と、リハビリ器具4Aが接続される接続部8と、プレート部7を天井梁3Aに固定する固定部9と、を備える。接続部8は、プレート部7に設けられる。固定部9は、軸方向SAに延びる挿通孔13を有し、かつ、プレート部7を貫通して天井梁3Aに打ち込まれる外部ピン14を備える。固定部9は、外部ピン14内に配置されて軸方向SAと交差する交差方向SBに外部ピン14から突出可能に設けられ、かつ、天井梁3Aに係合する係合部材15を備える。固定部9は、係合部材15を交差方向SBに押すように外部ピン14の挿通孔13に挿通する挿通部材16を備える。固定部9は、挿通部材16を付勢する付勢部17と、挿通部材16を付勢部17を介して支持する支持部18と、を備える。
【0038】
外部ピン14が打ち込まれた天井梁3Aの外部ピン孔5には、接続部8および外部ピン14を介してリハビリ器具4Aの荷重が加わる。外部ピン孔5は、リハビリ器具4Aの荷重によって広がる虞がある。この構成によれば、挿通部材16は、係合部材15を交差方向SBに押す。このため、外部ピン14が打ち込まれた天井梁3Aの外部ピン孔5が拡大すると、係合部材15が交差方向SBに押し出される。これによって、係合部材15と外部ピン孔5との係合が維持され続ける。このようにして、固定金具1の固定状態の強度低下を抑制できる。
【0039】
(2)固定金具1は、プレート部7を第1プレート部7Aとして、天井梁3Aにおいて、第1プレート部7Aが配置される第1側面6と反対側の第2側面10に配置される第2プレート部7Bをさらに備える。固定金具1は、第1プレート部7Aと第2プレート部7Bとを繋ぐ中間プレート部7Cをさらに備える。第1プレート部7Aには、固定部9としての第1固定部9Aが設けられる。第2プレート部7Bには、固定部9としての第2固定部9Bが設けられる。接続部8は、中間プレート部7Cに設けられる。この構成によれば、固定金具1は、第1固定部9Aおよび第2固定部9Bによって天井梁3Aの第1側面6と第2側面10とに固定される。これによって、リハビリ器具4Aを介して固定金具1にかかる荷重によって、天井梁3Aに対して固定金具1が傾くことを抑制できる。
【0040】
(3)挿通部材16は、外部ピン14の軸方向SAに延びるように構成される。付勢部17は、挿通部材16を軸方向SAに押す第1付勢力FAを付与するように構成される。支持部18は、挿通部材16に第1付勢力FAが加わるように付勢部17を支持する。この構成によれば、挿通部材16を軸方向SAに付勢できる。
【0041】
(4)建築物2は、天井梁3Aを含む躯体と、天井梁3Aに設けられる固定金具1と、を備える。この構成によれば、建築物2において、天井梁3Aに対する固定金具1の固定状態の強度低下を抑制できる。このため、金具を介して天井梁3Aにリハビリ器具4Aを固定した場合、リハビリ器具4Aの固定状態の安定性を維持できる。
【0042】
[第2実施形態]
第2実施形態の固定金具1を説明する。本実施形態において、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態の構成と同一の符号を付す。重複する構成についてはその説明を省略する。
【0043】
図13~
図15を参照して、本実施形態の説明をする。
本実施形態では、挿通部材16は、ねじ構造を有する。付勢部17は、挿通部材16の中心軸を中心として周方向SCに挿通部材16を回転させる第2付勢力FBを付与するように構成される。挿通部材16の中心軸は軸方向SAに沿って延びる。そして、付勢部17は、挿通部材16の中心軸に対する周方向SCに付勢力を蓄える。具体的には、付勢部17は、コイルばねによって構成される。コイルばねは、周方向SCに巻かれた構造を有する。本実施形態では、周方向SCは、右回りの方向である。
【0044】
図13に示されるように、外部ピン14は、挿通孔13の内周面に雌ねじ部20を有する。雌ねじ部20は、付勢部17と同じ方向に巻かれている。本実施形態において、雌ねじ部20は、右巻きである。
【0045】
図14に示されるように、外部ピン14の軸方向SAに延びるように構成される挿通部材16は、雌ねじ部20に係合する雄ねじ部21を有する。本実施形態において、雄ねじ部21は、右巻きである。
【0046】
図15を参照して、本実施形態の作用を説明する。なお、図面は、理解を容易にするために天井梁3Aの外部ピン孔5を誇張して模式的に示している。外部ピン孔5の寸法比率は実際のものと異なる。
【0047】
図15に示されるように、付勢部17は、挿通部材16の中心軸を中心として周方向SCに挿通部材16を回転させる第2付勢力FBを付与するように構成される。周方向SCは、雌ねじ部20および雄ねじ部21の巻く方向と同じ右回りの方向である。予め、付勢部17を周方向SCと同じ方向に捩じった状態において、付勢部17の第1端17Aを挿通部材16に接続し、かつ、付勢部17の第2端17Bを支持部18に接続する。支持部18は、挿通部材16に周方向SCの第2付勢力FBが加わるように付勢部17を支持する。付勢部17は、挿通部材16に第2付勢力FBを付与する。挿通部材16は第2付勢力FBが付与された状態で外部ピン14に挿通する。
【0048】
このような構成によれば、外部ピン14の周方向SCに挿通部材16を回転させる第2付勢力FBによって、挿通部材16は、外部ピン14の挿通孔13の奥へねじ込まれるように付勢される。係合部材15は挿通部材16によって押されるため、係合部材15は、外部ピン孔5の広がりに追従するように外部ピン14から突出する。そして、係合部材15は、天井梁3Aと係合し続ける。係合部材15と天井梁3Aにおける外部ピン孔5との係合によって、外部ピン14の緩みを抑制できる。
【0049】
[第3実施形態]
第3実施形態の固定金具1を説明する。本実施形態において、第1実施形態および第2実施形態と共通する構成については、第1実施形態および第2実施形態の構成と同一の符号を付す。重複する構成についてはその説明を省略する。
【0050】
本実施形態の固定金具1は、付勢部17の付勢力を増大させることができる付勢力増大部23を備える点で、第2実施形態の固定金具1と異なる。
【0051】
図16および
図17を参照して、本実施形態の説明をする。なお、雌ねじ部20および雄ねじ部21の図示は省略している。
図16に示されるように、付勢部17は、挿通部材16と支持部18との間に配置される捩じりばね27を備える。外部ピン14は、挿通孔13の内周面に雌ねじ部20を有する。挿通部材16は、外部ピン14の軸方向SAに延びるように構成される。挿通部材16は、雌ねじ部20に係合する雄ねじ部21を有する。本実施形態において、雄ねじ部21は、第1方向SDのねじである。本実施形態において、第1方向SDは、右回りの方向である。第1方向SDは、左回りの方向であってもよい。
【0052】
本実施形態において、捩じりばね27は、第1方向SDに巻くコイルばねである。具体的には、捩じりばね27は、右巻きのコイルばねである。捩じりばね27は、左巻きのコイルばねであってもよい。また、支持部18は、付勢部17を支持する。固定金具1は、操作(後述)に基づいて捩じりばね27に第1方向SDの第2付勢力FBを増大させる付勢力増大部23をさらに備える。付勢力増大部23は、支持部18に設けられる(後述)。支持部18において、付勢力増大部23が設けられる部分には、芯材貫通孔18Cが設けられる。芯材貫通孔18Cは、捩じりばね27の第2端17Bと芯材24とを挿通させる(後述)。
【0053】
図16および
図17に示されるように、付勢力増大部23は、捩じりばね27を支持する芯材24と、ラチェット歯車25と、ラチェット歯車25に係合するラチェット係合部26と、を備える。
【0054】
ラチェット歯車25は、支持部18のアーム垂下部18Bに取り付けられているラチェット歯車収容部28に収容されている。ラチェット歯車収容部28は、ラチェット歯車25を収容するための第1収容孔28Aを有する。ラチェット歯車収容部28は、ラチェット係合部26を収容するための第2収容孔28Bを有する(後述)。第1収容孔28Aは、芯材貫通孔18C(
図16参照)と連通する。
【0055】
ラチェット歯車25は、芯材貫通孔18Cと連通するように形成されている挿入孔25Aとねじ巻き部29とを有する。本実施形態において、ねじ巻き部29は、溶接等によってラチェット歯車25に取り付けられているナットである。ねじ巻き部29は、ラチェット歯車25と一体的に構成される。ねじ巻き部29は、ナット孔が挿入孔25Aと連通するように配置されている。
【0056】
芯材24は、付勢力増大部23に支持される。芯材24の一方の端は、ラチェット歯車25またはねじ巻き部29に固定される。芯材24の他方の端は、他の部材に接続されていない。芯材24は、ラチェット歯車25から軸方向SAに延びる。芯材24は、捩じりばね27の中心部と芯材貫通孔18Cとに挿通する。捩じりばね27は、芯材24によって支持される。なお、芯材24において支持部18側の端は、自由端として構成されてもよい。この場合、芯材24において挿通部材16側の端は、挿通部材16の基部16Bに固定される。
【0057】
捩じりばね27の第1端17Aは、挿通部材16の基部16Bに接続される。捩じりばね27において第1端17Aと反対側の第2端17Bは、ラチェット歯車25に接続される。ラチェット歯車25に接続される第2端17Bは、芯材貫通孔18Cに挿通する。
【0058】
ラチェット歯車25は、第1方向SDに回転可能となるように構成される。ラチェット歯車25は、ねじ巻き部29を回転させることによって、芯材24を軸心として回転できる。ラチェット係合部26は、ラチェット歯車25が第1方向SDに回転可能かつ第1方向SDと逆方向に回転不可となるようにラチェット歯車25に係合する。ラチェット係合部26は、棒状の部材である。ラチェット係合部26は、ラチェット歯車収容部28の第2収容孔28Bに収容されている。第2収容孔28Bは、第1収容孔28Aと連通部34を介して連通する。ラチェット係合部26は、中心においてほぞ孔26Aを有する。ほぞ孔26Aには、支持部18から延びる突出部18Dが挿し込まれている。ラチェット係合部26は、突出部18Dを軸心として回転できる。
【0059】
第2収容孔28Bは、ラチェット係合部26が第3方向SXに回転する場合、ラチェット係合部26がラチェット歯車25から離れる方向に回転できるように、構成される。また、第2収容孔28Bは、ラチェット係合部26の回転を止めるストッパ部35を備える。ストッパ部35は、ラチェット係合部26の先端部36と反対側の反対側端部37が当接するように構成される。具体的には、ストッパ部35は、ラチェット係合部26が第3方向SXとは逆方向に回転したときに、ラチェット係合部26の先端部36がラチェット歯車25の歯の間に差し込まれた状態で、かつ、ラチェット係合部26の回転が阻害されるように、ラチェット係合部26の反対側端部37が当該ストッパ部に当接するように構成される。
【0060】
具体的には、第2収容孔28Bは、ラチェット係合部26の近くに、ストッパ部35としての角部30を有する。角部30は、第1面31と第2面32とによって構成される。第1面31は、所定方向に延びる面である。ラチェット係合部26が第1面31に接触する状態において、ラチェット係合部26の先端部36は、ラチェット歯車25とは接触しない。第2面32は、所定方向に対して垂直に延びる面である。ラチェット係合部26が第2面32に接触する状態において、ラチェット係合部26の先端部36は、ラチェット歯車25の歯の間において、ラチェット歯車25の歯と接触する。ラチェット歯車25および第2面32に接触するラチェット係合部26は、ラチェット歯車25が第1方向SDとは逆方向に回転しないようにラチェット歯車25と係合する。
【0061】
付勢部17の捩じりばね27は、第2付勢力FBを付与するように構成される。第2付勢力FBは、挿通部材16の中心軸を中心として第1方向SDに挿通部材16を回転させる力である。
【0062】
捩じりばね27に第1方向SDの第2付勢力FBを増大させるための付勢力増大部23の操作について説明する。
ねじ巻き部29を第1方向SDと同じ方向に回転させると、ラチェット歯車25が第1方向SDに回転するとともに、付勢部17としての捩じりばね27が第1方向SDに捩じられるため、捩じりばね27に弾性エネルギーが蓄積される。このようにして、付勢部17としての捩じりばね27の第2付勢力FBを増大できる。
【0063】
本実施形態の効果について説明する。
(1)固定金具1は、捩じりばね27の第2付勢力FBを増大させる付勢力増大部23をさらに備える。外部ピン14は、挿通孔13の内周面に雌ねじ部20を有する。挿通部材16は、雌ねじ部20に係合する雄ねじ部21を有し、かつ、外部ピン14の軸方向SAに延びるように構成される。捩じりばね27は、挿通部材16の中心軸を中心として第1方向SDに挿通部材16を回転させる第2付勢力FBを付与するように構成される。支持部18は、捩じりばね27を支持する。付勢力増大部23は、支持部18に設けられる。付勢力増大部23は、操作に基づいて捩じりばね27に第1方向SDの第2付勢力FBを増大させる。この構成によれば、第2付勢力FBを、付勢力増大部23によって増大させることができる。
【0064】
(2)上記(1)に記載の固定金具1において、付勢力増大部23は、捩じりばね27を支持する芯材24と、ラチェット歯車25と、ラチェット係合部26と、を備える。芯材24は、付勢力増大部23に支持される。捩じりばね27の第1端17Aは、挿通部材16に接続され、かつ、捩じりばね27の第2端17Bは、ラチェット歯車25に接続される。この構成によれば、ラチェット機構によって第2付勢力FBを増大させることができる。
【0065】
(3)上記(2)に記載の固定金具1において、雄ねじ部21は、第1方向SDのねじである。捩じりばね27は、第1方向SDに巻くコイルばねである。ラチェット歯車25は、第1方向SDに回転可能となるように構成される。ラチェット係合部26は、ラチェット歯車25が第1方向SDに回転可能かつ第1方向SDと逆方向に回転不可となるように係合する。この構成によれば、ラチェット機構によって第2付勢力FBを増大させることができる。
【0066】
[第4実施形態]
第4実施形態の固定金具1を説明する。本実施形態において、第3実施形態と共通する構成については、第3実施形態の構成と同一の符号を付す。重複する構成についてはその説明を省略する。
【0067】
図18を参照して、本実施形態の説明をする。第3実施形態とは、挿通部材16と付勢部17との接続の点で異なる。
図18に示されるように、挿通部材16の基部16Bは、ボルト頭になるように形成されている。また、芯材24は、ねじ巻き部29と一体的に構成される。一例として、ねじ巻き部29はボルトである。ボルトの軸部分である芯材24は、挿入孔25Aと芯材貫通孔18Cと捩じりばね27の中心とを通過する。
【0068】
付勢部17は、挿通部材16を嵌め込む嵌め込み部22をさらに備える。嵌め込み部22は、棒状の部材である。嵌め込み部22の一方の端には、基部16Bを嵌め込む第1凹部22Aが設けられる。嵌め込み部22の他方の端には、第2凹部22Bが設けられる。芯材24は、第2凹部22Bに対して回転可能に挿入される。捩じりばね27の第1端17Aは、嵌め込み部22に接続される。この構成によっても、固定金具1は、第3実施形態と同様の効果を奏する。
【0069】
[変形例]
上記各実施形態は、固定金具1および建築物2が取り得る形態の例示である。上記各実施形態は、固定金具1および建築物2が取り得る形態を制限することを意図していない。固定金具1および建築物2は、上記各実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の一例を示す。
【0070】
・
図19に示されるように、固定金具1によって天井梁3Aに固定される吊下物4は、ハンモック4Bでもよい。ハンモック4Bは、各端部33をそれぞれ、固定金具1によって吊り下げられている。2つの固定金具1は、所定距離離れて天井梁3Aに配置されている。
【0071】
・雄ねじ部21は、周方向SCとは反対の左巻きに形成されてもよい。雌ねじ部20は、左巻きに形成される雄ねじ部21と係合できるように構成される。
【0072】
本明細書は、次の技術を開示する。
[付記1]
付記1は、横架材に吊下物を固定するための固定金具である。固定金具は、前記横架材の第1側面に配置されるプレート部と、前記プレート部に設けられて前記吊下物が接続される接続部と、前記プレート部を前記横架材に固定する固定部と、を備える。前記固定部は、軸方向に延びる挿通孔を有し、かつ、前記プレート部を貫通して前記横架材に打ち込まれる外部ピンと、前記外部ピン内に配置されて前記軸方向と交差する交差方向に前記外部ピンから突出可能に設けられ、かつ、前記横架材に係合する係合部材と、前記係合部材を前記交差方向に押すように前記外部ピンの前記挿通孔に挿通する挿通部材と、前記挿通部材を付勢する付勢部と、前記プレート部に設けられて、前記挿通部材を前記付勢部を介して支持する支持部と、を備える。
【0073】
[付記2]
付記1に記載の固定金具において、前記プレート部を第1プレート部として、前記横架材において、前記第1プレート部が配置される第1側面と反対側の第2側面に配置される第2プレート部と、前記第1プレート部と前記第2プレート部とを繋ぐ中間プレート部と、をさらに備える。前記第1プレート部には、前記固定部としての第1固定部が設けられる。前記第2プレート部には、前記固定部としての第2固定部が設けられる。前記接続部は、前記中間プレート部に設けられる。
【0074】
[付記3]
付記1または付記2に記載の固定金具において、前記挿通部材は、前記外部ピンの前記軸方向に延びるように構成される。前記付勢部は、前記挿通部材を前記軸方向に押す第1付勢力を付与するように構成される。前記支持部は、前記挿通部材に前記第1付勢力が加わるように前記付勢部を支持する。
【0075】
[付記4]
付記1または付記2に記載の固定金具において、前記外部ピンは、前記挿通孔の内周面に雌ねじ部を有する。前記挿通部材は、前記雌ねじ部に係合する雄ねじ部を有し、かつ、前記外部ピンの前記軸方向に延びるように構成される。前記付勢部は、前記挿通部材の中心軸を中心として周方向に前記挿通部材を回転させる第2付勢力を付与するように構成される。前記支持部は、前記挿通部材に前記周方向の前記第2付勢力が加わるように前記付勢部を支持する。
【0076】
[付記5]
付記1または付記2に記載の固定金具において、前記付勢部の第2付勢力を増大させる付勢力増大部をさらに備える。前記外部ピンは、前記挿通孔の内周面に雌ねじ部を有する。前記挿通部材は、前記雌ねじ部に係合する雄ねじ部を有し、かつ、前記外部ピンの前記軸方向に延びるように構成される。前記付勢部は、前記挿通部材の中心軸を中心として周方向に前記挿通部材を回転させる前記第2付勢力を付与するように構成される。前記支持部は、前記付勢部を支持する。前記付勢力増大部は、前記支持部に設けられて、操作に基づいて前記付勢部に前記周方向の前記第2付勢力を増大させる。
【0077】
[付記6]
付記5に記載の固定金具において、前記付勢部は、前記挿通部材を嵌め込む嵌め込み部と、前記挿通部材と前記支持部との間に配置される捩じりばねと、を備える。前記付勢力増大部は、前記捩じりばねを支持する芯材と、ラチェット歯車と、前記ラチェット歯車に係合するラチェット係合部と、を備える。前記芯材は、前記嵌め込み部または前記付勢力増大部に支持される。前記捩じりばねの第1端は、前記挿通部材または前記嵌め込み部に接続され、かつ、前記捩じりばねにおいて前記第1端と反対側の第2端は、前記ラチェット歯車に接続される。
【0078】
[付記7]
付記6に記載の固定金具において、前記雄ねじ部は、第1方向のねじである。前記捩じりばねは、前記第1方向に巻くコイルばねである。前記ラチェット歯車は、前記第1方向に回転可能となるように構成される。前記ラチェット係合部は、前記ラチェット歯車が前記第1方向に回転可能かつ前記第1方向と逆方向に回転不可となるように係合する。
【0079】
[付記8]
付記6に記載の固定金具において、前記雄ねじ部は、第1方向のねじである。前記捩じりばねは、前記第1方向と逆方向に巻くコイルばねである。前記ラチェット歯車は、前記第1方向に回転可能となるように構成される。前記ラチェット係合部は、前記ラチェット歯車が前記第1方向に回転可能かつ前記第1方向と逆方向に回転不可となるように係合する。
【0080】
[付記9]
付記9は、建築物に関する技術である。建築物は、横架材を含む躯体と、前記横架材に設けられる請求項1または2に記載の固定金具と、を備える。
【符号の説明】
【0081】
FA…第1付勢力、FB…第2付勢力、SA…軸方向、SB…交差方向、SC…周方向、SD…第1方向、1…固定金具、2…建築物、3…横架材、4…吊下物、6…第1側面、7…プレート部、7A…第1プレート部、7B…第2プレート部、8…接続部、9…固定部、9A…第1固定部、9B…第2固定部、10…第2側面、13…挿通孔、14…外部ピン、15…係合部材、16…挿通部材、17…付勢部、17A…第1端、17B…第2端、18…支持部、20…雌ねじ部、21…雄ねじ部、22…嵌め込み部、23…付勢力増大部、24…芯材、25…ラチェット歯車、26…ラチェット係合部、27…捩じりばね。
【要約】
【課題】横架材に対する金具の固定状態の強度低下を抑制できる固定感具、およびその固定金具によって吊下物の固定状態の安定性を維持できる建築物を提供する。
【解決手段】固定金具1は、固定部9を備える。固定部9は、軸方向SAに延びる挿通孔13を有し、かつ、天井梁3Aに打ち込まれる外部ピン14を備える。固定部9は、外部ピン14内に配置されて軸方向SAと交差する交差方向SBに外部ピン14から突出可能に設けられ、かつ、天井梁3Aに係合する係合部材15を備える。固定部9は、係合部材15を交差方向SBに押すように外部ピン14の挿通孔13に挿通する挿通部材16を備える。固定部9は、挿通部材16を付勢する付勢部17と、挿通部材16を付勢部17を介して支持する支持部18と、を備える。
【選択図】
図12