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特許7632668ネットワーク管理装置、ネットワーク管理方法、及び映像配信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】ネットワーク管理装置、ネットワーク管理方法、及び映像配信システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/24 20110101AFI20250212BHJP
   H04N 21/63 20110101ALI20250212BHJP
   H04N 19/115 20140101ALI20250212BHJP
   H04N 19/154 20140101ALI20250212BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
H04N21/24
H04N21/63
H04N19/115
H04N19/154
H04N7/18 K
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023550774
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2021035602
(87)【国際公開番号】W WO2023053186
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】沢辺 亜南
(72)【発明者】
【氏名】篠原 悠介
(72)【発明者】
【氏名】岩井 孝法
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 浩一
【審査官】鈴木 隆夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-150512(JP,A)
【文献】特開2017-011360(JP,A)
【文献】特開2016-187176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00-21/858
H04N 19/00-19/98
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像から対象物を認識するために、前記映像を配信する映像配信装置に要求される前記映像の品質を示す要求品質を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記要求品質に基づいて、前記対象物を認識できる前記映像の分析性能を算出する第1算出部と、
前記第1算出部により算出された前記分析性能に基づいて、前記映像の配信に係るパラメータを算出する第2算出部と、を備える、
ネットワーク管理装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記映像の映像品質をさらに取得し、
前記第1算出部は、前記取得部により取得された前記要求品質及び前記映像品質に基づいて、前記分析性能を算出する、
請求項1に記載のネットワーク管理装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記要求品質として、前記映像に要求される認識率を示す要求認識率と、前記映像に要求される遅延量の上限を示す要求遅延量と、を取得すると共に、前記映像品質として、前記映像のフレームレートを取得し、
前記認識率は、複数枚の映像フレームのうち1枚以上の映像フレームで前記対象物を認識する割合である、
請求項2に記載のネットワーク管理装置。
【請求項4】
前記第1算出部は、
前記取得部により取得された前記要求遅延量及び前記フレームレートに基づいて、前記要求遅延量以内に生成される映像フレームのフレーム数を示す要求遅延内フレーム数を算出し、
前記要求認識率が、前記取得部により取得された要求認識率である場合における、再現率と映像フレームのフレーム数との関係を示す第1関数を算出し、
前記算出された前記要求遅延内フレーム数及び前記第1関数に基づいて、1枚の映像フレーム当たりに必要な再現率を示す必要再現率を、前記分析性能として算出し、
前記第2算出部は、
前記第1算出部により算出された前記必要再現率と、再現率と映像ビットレートとの関係を示す第2関数と、に基づいて、前記映像に必要な映像ビットレートを示す必要映像ビットレートを、前記パラメータとして算出する、
請求項3に記載のネットワーク管理装置。
【請求項5】
前記第2関数は、前記認識率のばらつきを考慮して、算出されたものである、
請求項4に記載のネットワーク管理装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記対象物に応じた前記要求品質を取得する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のネットワーク管理装置。
【請求項7】
映像から対象物を認識するために、前記映像を配信する映像配信装置に要求される前記映像の品質を示す要求品質を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得された前記要求品質に基づいて、前記対象物を認識できる前記映像の分析性能を算出する第1算出ステップと、
前記第1算出ステップにより算出された前記分析性能に基づいて、前記映像の配信に係るパラメータを算出する第2算出ステップと、を含む、
ネットワーク管理方法。
【請求項8】
前記取得ステップでは、前記映像の映像品質をさらに取得し、
前記第1算出ステップでは、前記取得ステップにより取得された前記要求品質及び前記映像品質に基づいて、前記分析性能を算出する、
請求項7に記載のネットワーク管理方法。
【請求項9】
前記取得ステップでは、前記要求品質として、前記映像に要求される認識率を示す要求認識率と、前記映像に要求される遅延量の上限を示す要求遅延量と、を取得すると共に、前記映像品質として、前記映像のフレームレートを取得し、
前記認識率は、複数枚の映像フレームのうち1枚以上の映像フレームで前記対象物を認識する割合である、
請求項8に記載のネットワーク管理方法。
【請求項10】
前記第1算出ステップでは、
前記取得ステップにより取得された前記要求遅延量及び前記フレームレートに基づいて、前記要求遅延量以内に生成される映像フレームのフレーム数を示す要求遅延内フレーム数を算出し、
前記要求認識率が、前記取得ステップにより取得された要求認識率である場合における、再現率と映像フレームのフレーム数との関係を示す第1関数を算出し、
前記算出された前記要求遅延内フレーム数及び前記第1関数に基づいて、1枚の映像フレーム当たりに必要な再現率を示す必要再現率を、前記分析性能として算出し、
前記第2算出ステップでは、
前記第1算出ステップにより算出された前記必要再現率と、再現率と映像ビットレートとの関係を示す第2関数と、に基づいて、前記映像に必要な映像ビットレートを示す必要映像ビットレートを、前記パラメータとして算出する、
請求項9に記載のネットワーク管理方法。
【請求項11】
前記第2関数は、前記認識率のばらつきを考慮して、算出されたものである、
請求項10に記載のネットワーク管理方法。
【請求項12】
前記取得ステップでは、前記対象物に応じた前記要求品質を取得する、
請求項7から11のいずれか1項に記載のネットワーク管理方法。
【請求項13】
映像から対象物を認識するために、前記映像を配信する映像配信装置に要求される前記映像の品質を示す要求品質を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記要求品質に基づいて、前記対象物を認識できる前記映像の分析性能を算出する第1算出部と、
前記第1算出部により算出された前記分析性能に基づいて、前記映像の配信に係るパラメータを算出する第2算出部と、を備える、
映像配信システム。
【請求項14】
前記取得部は、前記映像の映像品質をさらに取得し、
前記第1算出部は、前記取得部により取得された前記要求品質及び前記映像品質に基づいて、前記分析性能を算出する、
請求項13に記載の映像配信システム。
【請求項15】
前記取得部は、前記要求品質として、前記映像に要求される認識率を示す要求認識率と、前記映像に要求される遅延量の上限を示す要求遅延量と、を取得すると共に、前記映像品質として、前記映像のフレームレートを取得し、
前記認識率は、複数枚の映像フレームのうち1枚以上の映像フレームで前記対象物を認識する割合である、
請求項14に記載の映像配信システム。
【請求項16】
前記第1算出部は、
前記取得部により取得された前記要求遅延量及び前記フレームレートに基づいて、前記要求遅延量以内に生成される映像フレームのフレーム数を示す要求遅延内フレーム数を算出し、
前記要求認識率が、前記取得部により取得された要求認識率である場合における、再現率と映像フレームのフレーム数との関係を示す第1関数を算出し、
前記算出された前記要求遅延内フレーム数及び前記第1関数に基づいて、1枚の映像フレーム当たりに必要な再現率を示す必要再現率を、前記分析性能として算出し、
前記第2算出部は、
前記第1算出部により算出された前記必要再現率と、再現率と映像ビットレートとの関係を示す第2関数と、に基づいて、前記映像に必要な映像ビットレートを示す必要映像ビットレートを、前記パラメータとして算出する、
請求項15に記載の映像配信システム。
【請求項17】
前記第2関数は、前記認識率のばらつきを考慮して、算出されたものである、
請求項16に記載の映像配信システム。
【請求項18】
前記第2算出部により算出された前記必要映像ビットレートに基づいて、前記映像をエンコードするエンコーダと、
前記エンコーダによりエンコードされた前記映像を、ネットワークを介して、配信する映像配信部と、をさらに備える、
請求項16又は17に記載の映像配信システム。
【請求項19】
前記第2算出部により算出された前記必要映像ビットレートに基づいて、前記映像の配信に用いるネットワークに対し、保証帯域を設定する保証帯域設定部をさらに備える、
請求項16又は17に記載の映像配信システム。
【請求項20】
前記取得部は、前記対象物に応じた前記要求品質を取得する、
請求項13から19のいずれか1項に記載の映像配信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ネットワーク管理装置、ネットワーク管理方法、及び映像配信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ローカル5G(Fifth Generation)の登場によって、地方自治体や民間の事業者(ユーザ)がモバイル網を構築し、ユーザ自身でモバイル網を運用できるようになってきた。
例えば、監視カメラから映像を収集し、対象物(例えば、人、顔など)の有無を検出する用途のために、民間人がモバイル網を構築する例が挙げられる。
【0003】
また、モバイル網を効率的に運用する技術についても注目が集まっている。
例えば、特許文献1には、システムQoE(Quality of Experience)の向上と、サービス優先度及びシステムスループットの向上と、の両立を図るための技術が開示されている。特許文献1に開示された技術によれば、ビットレートとQoEとの関係を示すQoE関数を用いて、要求されるQoEを満たすリソース量(スループット)を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5011408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ネットワークの状況によっては、映像配信に必要な通信帯域を十分に確保できない場合がある。
例えば、監視カメラで撮影された映像のように、対象物を検出する用途に用いられる映像の場合、認識精度を高く保つため、映像配信時の映像ビットレートが高くなりやすい。しかし、映像ビットレートが高くなると、十分な通信帯域を確保することが困難になる。
【0006】
そこで本開示の目的は、上述した課題を鑑み、認識精度を保ちつつ、効率的な映像配信を実現できるネットワーク管理装置、ネットワーク管理方法、及び映像配信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様によるネットワーク管理装置は、
映像から対象物を認識するために、前記映像を配信する映像配信装置に要求される前記映像の品質を示す要求品質を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記要求品質に基づいて、前記対象物を認識できる前記映像の分析性能を算出する第1算出部と、
前記第1算出部により算出された前記分析性能に基づいて、前記映像の配信に係るパラメータを算出する第2算出部と、を備える。
【0008】
一態様によるネットワーク管理方法は、
映像から対象物を認識するために、前記映像を配信する映像配信装置に要求される前記映像の品質を示す要求品質を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得された前記要求品質に基づいて、前記対象物を認識できる前記映像の分析性能を算出する第1算出ステップと、
前記第1算出ステップにより算出された前記分析性能に基づいて、前記映像の配信に係るパラメータを算出する第2算出ステップと、を含む。
【0009】
一態様によるネットワークシステムは、
映像から対象物を認識するために、前記映像を配信する映像配信装置に要求される前記映像の品質を示す要求品質を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記要求品質に基づいて、前記対象物を認識できる前記映像の分析性能を算出する第1算出部と、
前記第1算出部により算出された前記分析性能に基づいて、前記映像の配信に係るパラメータを算出する第2算出部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
上述の態様によれば、認識精度を保ちつつ、効率的な映像配信を実現できるネットワーク管理装置、ネットワーク管理方法、及びネットワークシステムを提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る映像配信システムの構成例を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係る映像配信システムの概略的な動作フローの例を説明するフロー図である。
図3】実施の形態2に係るネットワーク管理装置の構成例を示すブロック図である。
図4】各実施の形態3~5が想定する映像配信システムの構成例を示す図である。
図5】各実施の形態3~5及び関連技術のそれぞれにおける映像ビットレートの設定方法の例を説明する図である。
図6】各実施の形態3~5において実施するFamily-wise認識について、ソリューションの視点で説明する図である。
図7】各実施の形態3~5において実施するFamily-wise認識について、技術的な視点で説明する図である。
図8】実施の形態3に係るネットワーク管理装置の構成例を示すブロック図である。
図9】実施の形態3に係る認識率の定義例を説明する図である。
図10】実施の形態3に係るRecall対フレーム関数の例を説明する図である。
図11】実施の形態3に係るRecall対映像ビットレート関数を近似した近似曲線の例を説明する図である。
図12】映像ビットレート対Recallのデータの収集方法の例を説明する図である。
図13図11に示される近似曲線の計算方法の例を説明する図である。
図14】実施の形態3に係る映像ビットレート対認識率の結果の例を説明する図である。
図15】実施の形態3に係るネットワーク管理装置の概略的な動作フローの例を説明するフロー図である。
図16】実施の形態4に係る映像配信システムの構成例を示すブロック図である。
図17】実施の形態5に係る映像配信システムの構成例を示すブロック図である。
図18】実施の形態2~5に係るネットワーク管理装置を実現するコンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。なお、以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、以下の各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、以下で示す具体的な数値などは、本開示の理解を容易とするための例示にすぎず、これに限定されるものではない。
【0013】
<実施の形態1>
まず、図1を参照して、本実施の形態1に係る映像配信システム3の構成例について説明する。
【0014】
図1に示されるように、本実施の形態1に係る映像配信システム3は、取得部111と、第1算出部112と、第2算出部113と、を備えている。
取得部111は、映像から対象物を認識するために、その映像を配信する映像配信装置に要求される、その映像の品質を示す要求品質を取得する。取得部111は、後述する品質記憶部101に対応する。
【0015】
第1算出部112は、取得部111により取得された要求品質に基づいて、対象物を認識できる映像の分析性能を算出する。第1算出部112は、後述する要求遅延内フレーム数算出部102、Recall対フレーム関数算出部103、及び必要Recall算出部104を組み合わせた構成に対応する。
【0016】
第2算出部113は、第1算出部112により算出された分析性能に基づいて、映像の配信に係るパラメータを算出する。第2算出部113は、後述するRecall対映像ビットレート関数記憶部105及び必要映像ビットレート算出部106を組み合わせた構成に対応する。
【0017】
続いて、図2を参照して、本実施の形態1に係る映像配信システム3の概略的な動作フローの例について説明する。
図2に示されるように、まず、取得部111は、映像から対象物を認識するために、その映像に要求される品質を示す要求品質を取得する(ステップS301)。
【0018】
次に、第1算出部112は、取得部111により取得された要求品質に基づいて、対象物を認識できる映像の分析性能を算出する(ステップS302)。
その後、第2算出部113は、第1算出部112により算出された分析性能に基づいて、映像の配信に係るパラメータを算出する(ステップS303)。
【0019】
上述したように本実施の形態1によれば、要求品質に基づいて、対象物を認識できる映像の分析性能を算出し、算出された分析性能に基づいて、映像の配信に係るパラメータを算出する。これにより、要求品質(認識精度)を保ちつつ、効率的な映像配信を実現することができる。
【0020】
なお、取得部111は、映像の映像品質をさらに取得しても良い。また、第1算出部112は、取得部111により取得された要求品質及び映像品質に基づいて、分析性能を算出しても良い。
【0021】
また、取得部111は、要求品質として、映像に要求される認識率を示す要求認識率と、映像に要求される遅延量を示す要求遅延量と、を取得すると共に、映像品質として、映像のフレームレートを取得しても良い。また、認識率は、複数枚の映像フレームのうち1枚以上の映像フレームで対象物を認識する割合であっても良い。
【0022】
また、第1算出部112は、取得部111により取得された要求遅延量及びフレームレートに基づいて、要求遅延量以内に生成される映像フレームのフレーム数を示す要求遅延内フレーム数を算出しても良い。さらに、第1算出部112は、要求認識率が、取得部111により取得された要求認識率である場合における、再現率と映像フレームのフレーム数との関係を示す第1関数を算出しても良い。第1関数は、後述するRecall対フレーム関数に対応する。さらに、第1算出部112は、上記で算出された要求遅延内フレーム数及び第1関数に基づいて、1枚の映像フレーム当たりに必要な再現率を示す必要再現率を、分析性能として算出しても良い。また、第2算出部113は、第1算出部112により算出された必要再現率と、再現率と映像ビットレートとの関係を示す第2関数と、に基づいて、映像に必要な映像ビットレートを示す必要映像ビットレートを、パラメータとして算出しても良い。第2関数は、後述するRecall対映像ビットレート関数に対応する。
【0023】
また、第2関数は、認識率のばらつきを考慮して、算出されたものであっても良い。
また、取得部111は、対象物に応じた要求品質を取得しても良い。
また、映像配信システム3は、第2算出部113により算出された必要映像ビットレートに基づいて、映像をエンコードするエンコーダと、このエンコーダによりエンコードされた映像を、ネットワークを介して、配信する映像配信部と、をさらに備えていても良い。このエンコーダ及び映像配信部は、後述するエンコーダ202及び映像配信部203に対応する。
【0024】
また、映像配信システム3は、第2算出部113により算出された必要映像ビットレートに基づいて、映像の配信に用いるネットワークに対し、保証帯域を設定する保証帯域設定部をさらに備えていても良い。この保証帯域設定部は、後述する保証帯域設定部402に対応する。
【0025】
<実施の形態2>
続いて、図3を参照して、本実施の形態2に係るネットワーク管理装置100Bの構成例について説明する。本実施の形態2は、上述した実施の形態1においては、分散して設けられていた構成要素を、1つの装置(ネットワーク管理装置100B)に集約して設けた実施の形態に相当する。
【0026】
すなわち、図3に示されるように、本実施の形態2に係るネットワーク管理装置100Bは、上述した実施の形態1と同様の構成要素である、取得部111と、第1算出部112と、第2算出部113と、を備えている。
【0027】
本実施の形態2は、上述した実施の形態1と比較して、上述した実施の形態1と同様の構成要素を、ネットワーク管理装置100Bに集約して設けた点のみが異なる。そのため、本実施の形態2の動作及び効果は、上述した実施の形態1の動作及び効果と同様であるため、その説明を省略する。
【0028】
<各実施の形態3~5の概要>
以下で説明する各実施の形態3~5は、上述した実施の形態1,2をより具体化したものである。
各実施の形態3~5について説明する前に、各実施の形態3~5の概要について説明する。
まず、図4を参照して、各実施の形態3~5が想定する映像配信システム9の構成例について説明する。
【0029】
図4に示されるように、映像配信システム9は、ネットワーク管理装置10と、映像配信装置20と、分析装置30と、を備えている。なお、ネットワーク管理装置10と映像配信装置20間を接続するネットワークは、有線ネットワークでも無線ネットワークでも良い。また、映像配信装置20と分析装置30間を接続するネットワークは、無線ネットワークである。また、無線ネットワークは、Wifi(Wireless Fidelity)、LTE(Long Term Evolution)、4G、5G、又はローカル5G等であって良い。
【0030】
映像配信装置20は、監視カメラなどのカメラであり、カメラで撮影された映像を配信する。
分析装置30は、映像配信装置20により配信された映像を分析する。例えば、分析装置30は、映像に映り込む対象物(例えば、人、顔、車など)を認識することによって、対象物を検出する。具体的には、分析装置30は、映像に対象物が映り込んでいるか否かの二値分類を行う。このように、分析装置30は、対象物の検出などのソリューション用途のために使用される。
【0031】
ネットワーク管理装置10は、映像配信装置20による映像配信に係るパラメータを決定し、決定されたパラメータを映像配信装置20に設定する。映像配信に係るパラメータとは、例えば、映像ビットレート、フレームレートなどである。映像配信に係るパラメータが映像ビットレートである場合、映像配信装置20は、ネットワーク管理装置10により設定された映像ビットレートに基づいて、映像をエンコードして配信する。以下では、映像配信に係るパラメータは、映像ビットレートであるものとして説明する。
【0032】
続いて、図5を参照して、各実施の形態3~5及び関連技術のそれぞれにおける映像ビットレートの設定方法の例について説明する。
分析装置30による映像分析では、一般的には、映像フレーム単位の分析技術が用いられている。そのため、映像フレーム単位で認識精度を評価するのが業界的な標準になっている。
【0033】
そのため、関連技術として、上述した特許文献1に記載の技術と上述した業界的な標準とを組み合わせた技術を想定すると、関連技術では、映像フレーム単位の認識精度対映像ビットレート関数を用いて、要求される認識精度を満たすように、映像ビットレートを設定すると考えられる。すなわち、関連技術では、図5の上部に示されるように、分析装置30において、映像フレーム毎に対象物の認識精度を保証するように、映像ビットレートを設定すると考えられる。なお、図5の上部において、棒状の斜線の要素は、映像フレーム毎に認識精度を保証することを示している。すなわち、ネットワーク管理装置10は、分析装置30がFrame-wise認識を実行することを想定して、映像ビットレートを設定すると考えられる。
【0034】
しかし、映像フレーム毎に、認識精度を保証するためには、高い映像ビットレートで映像を配信する必要がある。その結果、映像配信に必要な通信帯域を十分に確保することが困難となる。
【0035】
そこで、各実施の形態3~5では、図5の下部に示されるように、分析装置30において、映像フレーム毎に対象物の認識精度を保証するのではなく、N(Nは2以上の整数)枚の映像フレームのうち、1枚以上の映像フレームで対象物の認識精度を保証するように、映像ビットレートを設定する。すなわち、ネットワーク管理装置10は、分析装置30がFamily-wise認識を実行することを想定して、映像ビットレートを設定する。なお、図5は、N=4の例、すなわち、4枚の映像フレームのうち、1枚以上の映像フレームで対象物を認識できることを保証する例である。そのため、図5の下部において、棒状の斜線の要素は、4枚の映像フレームのうち1枚以上で認識精度を保証することを示している。
【0036】
このように、各実施の形態3~5では、1枚の映像フレームで対象物を認識できる確率は低いものの、N枚の映像フレームのうち、1枚以上の映像フレームで対象物を認識できることが保証されるように、映像ビットレートを設定する。これにより、関連技術と比較して、映像ビットレートを低くすることができ、映像配信に必要な通信帯域の確保が容易となる。
【0037】
次に、図6を参照して、各実施の形態3~5において実施するFamily-wise認識について、ソリューションの視点で説明する。
図6は、分析装置30において、不審者を検出したらアラートを発生させるソリューション用途のために使用される映像フレームの例である。図6には、6枚の映像フレームが示されている。また、図6では、下に向かうほど、新しい映像フレームとなっており、人が映り込んだことが検出されると、その人が枠で囲まれるようになっている。
【0038】
図6の例では、3枚目の映像フレームにて人が映り込んだことが検出されている。しかし、続く4枚目及び5枚目の映像フレームでは、その人が検出できず、検出の取りこぼしが発生しているが、6枚目の映像フレームではその人が再度検出されている。
【0039】
このように、検出の取りこぼしがあっても、類似コンテキスト(図6の例では、映り込んだ人)が一定時間継続する場合は、以降の数枚の映像フレームのうち、1枚の映像フレームでも、類似コンテキストを検出できていれば、アラートを発生させることができる。
【0040】
ただし、1枚の映像フレームだけにしか映り込まないコンテキストは、一定時間継続して現れないため、想定しないものとする。例えば、映像のフレームレートが24fpsの場合、数10msの間にしか映り込まないようなコンテキストは想定しない。
【0041】
次に、図7を参照して、各実施の形態3~5において実施するFamily-wise認識について、技術的な視点で説明する。
図7は、分析装置30が対象物を検出する場合における、映像ビットレート対精度スコアの関係を示すグラフである。図7において、横軸は、映像ビットレートを示し、縦軸は、Precision、Accuracy、及びRecallの各々の精度スコアを示している。Precisionは、検出した対象物が正しい検出である割合を示しており、適合率とも称される。Accuracyは、対象物をどれくらい正確に検出できているかを示しており、正解率とも称される。Recallは、対象物の検出の取りこぼしがない割合を示しており、再現率とも称される。Precision、Accuracy、及びRecallは、対象物を認識できる映像の分析性能の一例である。
【0042】
図7に示されるように、Precisionの精度スコアは、映像ビットレートに依存しない。
一方、Recallの精度スコアは、映像ビットレートに依存するが、映像ビットレートが約150kbpsであれば、約0.9以上の精度スコアを維持できている。このことから、映像ビットレートが低く、対象物の検出の取りこぼしがあっても、別の映像フレームで対象物を検出できてさえすれば、その検出が正しい確率が約90%以上であることがわかる。
【0043】
以下で説明する各実施の形態3~5では、映像配信に係るパラメータとして、映像配信に必要な必要映像ビットレートを算出する。ここで、必要映像ビットレートの算出には、検出の取りこぼしをどれくらい減らすかが重要となる。そこで、以下の各実施の形態3~5では、必要映像ビットレートの算出のために、Recallを使用する。
【0044】
<実施の形態3>
以下、本実施の形態3について説明する。
まず、図8を参照して、本実施の形態3に係るネットワーク管理装置100の構成例について説明する。本実施の形態3に係るネットワーク管理装置100は、例えば、クラウドサーバ、MEC(Multi-access Edge Computing)サーバ、及びエッジ装置などであり、設置場所は制限されない。
【0045】
図8に示されるように、本実施の形態3に係るネットワーク管理装置100は、品質記憶部101と、要求遅延内フレーム数算出部102と、Recall対フレーム関数算出部103と、必要Recall算出部104と、Recall対映像ビットレート関数記憶部105と、必要映像ビットレート算出部106と、を備えている。なお、ネットワーク管理装置100が備える各構成要素は、別々の装置に搭載されても良い。例えば、品質記憶部101及びRecall対映像ビットレート関数記憶部105は、クラウドにあっても良い。また、各関数算出部(要求遅延内フレーム数算出部102、Recall対フレーム関数算出部103、及び必要Recall算出部104)と、必要映像ビットレート算出部106と、が異なる装置に搭載され、有線又は無線で互いに通信を行って、情報を取得しても良い。
【0046】
品質記憶部101には、分析装置(例えば、図4の分析装置30)が、映像から対象物を認識するために、映像を配信する映像配信装置(例えば、図4の映像配信装置20)に要求する映像の品質(認識品質)を示す要求品質(要求認識品質)が、予め記憶される。具体的には、品質記憶部101には、要求品質として、要求遅延量d[s]及び要求認識率pが予め記憶される。要求遅延量d[s]とは、分析装置が映像配信装置に要求する映像の遅延量の上限を示し、要求認識率pとは、分析装置が映像配信装置に要求する映像の認識率を示している。
【0047】
ここで、認識率の定義について、図9を参照して説明する。図9は、検出する対象物が顔となる例である。映像ビットレートを変えた映像において、オリジナル映像で顔を検出した映像フレームを起点にして、続くN枚の映像フレーム中で顔を検出し、N枚の映像フレーム中で1回でも顔を検出できれば、検出は成功とする。そして、検出の成功及び失敗の統計を取り、成功した割合を示すものを、認識率とする。
【0048】
また、品質記憶部101には、映像配信装置(例えば、図4の映像配信装置20)が配信し、分析装置が受信する映像の実際の品質を示す映像品質が、予め記憶される。具体的には、品質記憶部101には、映像品質として、フレームレートm[fps]が予め記憶される。なお、映像品質の他の例としては、ビットレートや解像度(量子化パラメータ(QP値))等も挙げられる。
【0049】
なお、品質記憶部101は、分析装置から、要求遅延量d[s]及び要求認識率pを取得し、映像配信装置又は分析装置から、フレームレートm[fps]を取得しても良い。又は、品質記憶部101は、要求遅延量d[s]、要求認識率p、及びフレームレートm[fps]を、ユーザからの入力により取得しても良い。
【0050】
要求遅延内フレーム数算出部102は、品質記憶部101に記憶された要求遅延量d[s]及びフレームレートm[fps]に基づいて、要求遅延量d[s]以内に生成される映像フレームのフレーム数を示す要求遅延内フレーム数nmaxを算出する。nmaxは、要求遅延量がd[s]、フレームレートがm[fps]である場合、以下の数式1により算出される。
【数1】
【0051】
Recall対フレーム関数算出部103は、品質記憶部101に記憶された要求認識率pに基づいて、要求認識率がpである場合における、Recallと映像フレームのフレーム数との関係を示すRecall対フレーム関数を算出する。Recall対フレーム関数は、要求認識率がp、Recallがqのときに、対象物を認識するまでの映像フレームのフレーム数を示す関数となる。
要求認識率がp、Recallがqのときに、N枚目の映像フレームまでに対象物を認識する確率は、以下の数式2により表される。
【数2】
対象物の認識に必要な映像フレームのフレーム数は、数式2を変形することにより、以下の数式3により表される。
【数3】
【0052】
Recall対フレーム関数算出部103は、要求認識率がp、Recallがqのときには、上述した数式3を、Recall対フレーム関数として算出する。要求認識率pが0.95のときに、上述した数式3をグラフ化した例を、図10に示す。図10において、横軸はRecall、縦軸は映像フレームのフレーム数を示している。
【0053】
必要Recall算出部104は、要求遅延内フレーム数算出部102により算出された要求遅延内フレーム数nmaxと、Recall対フレーム関数算出部103により算出されたRecall対フレーム関数と、に基づいて、N枚目の映像フレームまでに対象物を認識するために、1枚の映像フレーム当たりに必要なRecallを示す必要Recall qminを算出する。
【0054】
例えば、要求遅延量dが1[s]、フレームレートmが24[fps]のとき、要求遅延内フレーム数算出部102により算出された要求遅延内フレーム数nmaxは、数式1により、24となる。また、要求認識率が0.95のとき、Recall対フレーム関数算出部103により算出されたRecall対フレーム関数をグラフ化したグラフは、図10となる。そのため、必要Recall算出部104は、図10のグラフにおいて、nmax=24に対応するRecallの値0.12を、必要Recall qminとして算出する。
【0055】
なお、関連技術のように、Frame-wise認識を想定する場合は、映像フレーム毎に対象物の認識精度を保証する必要があるため、Nは、最小のnminとなり、値が1となる。図10のグラフにおいて、nmin=1に対応するRecallの値は0.95となり、この値が必要Recallとなる。
【0056】
Recall対映像ビットレート関数記憶部105は、Recallと映像ビットレートとの関係を示すRecall対映像ビットレート関数を記憶する。Recall対映像ビットレート関数を近似した近似曲線の例を、図11に示す。図11において、横軸は映像ビットレート、縦軸はRecallを示している。また、図11においては、2本の近似曲線が示されており、点線の近似曲線は、映像全体のRecall(μ)を示し、実線の近似曲線は、μ-σ(標準偏差)を示している。μ-σの近似曲線を導出したのは、認識率のばらつきを考慮したためであり、後述するように、必要映像ビットレート算出部106は、μ-σの近似曲線を用いて、必要映像ビットレートを算出する。
【0057】
ここで、図12及び図13を参照して、図11に示される2本の近似曲線の作成方法について説明する。図12及び図13は、検出する対象物が顔となる例である。なお、ここでは、近似曲線を作成する動作主体を、便宜的に、作成部(不図示)と称する。作成部は、ネットワーク管理装置10に設けられても良いし、別の装置に設けられても良い。
【0058】
(1)映像ビットレート対Recallのデータの収集
まず、図12に示されるように、作成部は、オリジナル映像の配信を受けて(ステップS101)、顔検出を行い(ステップS102)、検出結果を記憶し(ステップS103)、Recallを計算する(ステップS107)。次に、作成部は、映像ビットレートを落とした映像の配信を受けて(ステップS104)、顔検出を行い(ステップS105)、検出結果を記憶し(ステップS106)、Recallを計算する(ステップS107)。映像ビットレートが閾値を下回らない間は、作成部は、ステップS104~S107のループを繰り返す。その後、作成部は、映像ビットレートとRecallとの関係を示す映像ビットレート対Recallのデータを蓄積する(ステップS108)。
【0059】
(2)近似曲線の計算
次に、作成部は、映像ビットレート対Recallのデータを用いて、以下の数式4へのフィッティングを行い、その結果、図13に示されるようなf(x)~f(x)を作成する。
【数4】
ここで、数式4において、xは映像ビットレート、yはRecall、i={1,2,3,4}である。
【0060】
具体的には、まず、作成部は、上述した数式4へのフィッティングを行い、f(x)及びf(x)を作成する。次に、作成部は、f(x)の標準偏差σを求め、f(x)-σにより、f(x)を作成する。次に、作成部は、f(x)において、オリジナル映像のビットレートに対応する点と、f(x)において、f(x)とf(x)の交点のx座標に対応する点と、を結び、これをf(x)とする。そのため、a=aとなる。また、f(x)とf(x)との交点と、f(x)とf(x)との交点と、はx座標が等しくなる。
【0061】
以上のようにして、図13に示されるようなf(x)~f(x)が作成される。このうち、f(x)及びf(x)からなる近似曲線が、図11に示されるμに対応する近似曲線となる。また、f(x)及びf(x)からなる近似曲線が、図11に示されるμ-σに対応する近似曲線となる。
【0062】
必要映像ビットレート算出部106は、必要Recall算出部104により算出された必要Recall qminと、Recall対映像ビットレート関数記憶部105に記憶されたRecall対映像ビットレート関数と、に基づいて、N枚目の映像フレームまでに対象物を認識するために、映像に必要な映像ビットレートを示す必要映像ビットレートβminを算出する。
【0063】
例えば、必要Recall qmin=0.12、Recall対映像ビットレート関数の近似曲線が図11となるとき、図11のμ-σの近似曲線において、qmin=0.12に対応する映像ビットレートは73[kbps]となる。そのため、必要映像ビットレート算出部106は、73[kbps]を必要映像ビットレートβminとして算出する。
【0064】
なお、関連技術のように、Frame-wise認識を想定する場合は、N=1となるため、上述したように、必要Recallは0.95となる。図11のμの近似曲線において、q=0.95に対応する映像ビットレートは425[kbps]となる。そのため、425[kbps]が必要映像ビットレートとなる。
【0065】
続いて、図14を参照して、映像ビットレート対認識率(Family-wise認識の認識率)の結果の例について説明する。図14において、横軸は映像ビットレート、縦軸は認識率を示している。
【0066】
関連技術のように、Frame-wise認識を想定する場合、N=1となり、必要映像ビットレートは425[kbps]となる。この場合、要求認識率(0.95)以上を維持できるものの、必要映像ビットレートは高くなる。
【0067】
これに対して、本実施の形態3のように、Family-wise認識を想定する場合、N=24となり、必要映像ビットレートは73[kbps]となる。この場合、必要映像ビットレートは低いもののも、要求認識率(0.95)以上を維持できている。
このことから、本実施の形態3によれば、映像ビットレートを削減(425[kbps]から73[kbps])しつつ、要求認識率(0.95)以上を維持できることがわかる。
【0068】
続いて、図15を参照して、本実施の形態3に係るネットワーク管理装置100の概略的な動作フローの例について説明する。
図15に示されるように、まず、品質記憶部101は、要求遅延量、要求認識率、及びフレームレートを記憶する(ステップS201)。
【0069】
次に、要求遅延内フレーム数算出部102は、品質記憶部101に記憶された要求遅延量及びフレームレートに基づいて、要求遅延内フレーム数を算出する(ステップS202)。
【0070】
次に、Recall対フレーム関数算出部103は、品質記憶部101に記憶された要求認識率に基づいて、その要求認識率である場合における、Recall対フレーム関数を算出する(ステップS203)。
なお、ステップS202,S203の処理は、逆の順番で行われても良いし、同時に並行して行われても良い。
【0071】
次に、必要Recall算出部104は、要求遅延内フレーム数算出部102により算出された要求遅延内フレーム数と、Recall対フレーム関数算出部103により算出されたRecall対フレーム関数と、に基づいて、1枚の映像フレーム当たりの必要Recallを算出する(ステップS204)。
【0072】
その後、必要映像ビットレート算出部106は、必要Recall算出部104により算出された必要Recallと、Recall対映像ビットレート関数記憶部105に記憶されたRecall対映像ビットレート関数と、に基づいて、必要映像ビットレートを算出する(ステップS205)。
【0073】
上述したように本実施の形態3によれば、Family-wise認識を想定して、必要映像ビットレートを算出する。すなわち、N枚の映像フレームのうち、1枚以上の映像フレームで対象物を認識する割合を示す認識率が要求認識率を満たすように、1枚の映像フレーム当たりの必要Recallを算出し、算出された必要Recallに基づいて、必要映像ビットレートを算出する。
【0074】
これにより、要求認識率(認識精度)を保ちつつ、Frame-wise認識を想定する場合と比較して、映像ビットレートを低く抑えることができるため、効率的な映像配信を実現することができる。また、映像ビットレートを低く抑えられることから、映像配信に必要な通信帯域を削減することもできる。
【0075】
<実施の形態4>
続いて、図16を参照して、本実施の形態4に係る映像配信システム1の構成例について説明する。
図16に示されるように、本実施の形態4に係る映像配信システム1は、ネットワーク管理装置100Aと、映像配信装置200と、分析装置300と、を備えている。なお、映像配信装置200と分析装置300間を接続する無線ネットワークは、Wifi、LTE、4G、5G、又はローカル5G等であって良い(以下の図17において同じ)。
【0076】
ネットワーク管理装置100Aは、上述した実施の形態1に係るネットワーク管理装置100と比較して、必要映像ビットレート送信部107を追加している点が異なる。
必要映像ビットレート送信部107は、必要映像ビットレート算出部106により算出された必要映像ビットレートの情報を、映像配信装置200に送信する。
【0077】
映像配信装置200は、映像を配信する装置であり、例えば、監視カメラに代表されるカメラなどである。映像配信装置200は、必要映像ビットレート受信部201と、エンコーダ202と、映像配信部203と、撮影部204と、を備えている。
必要映像ビットレート受信部201は、ネットワーク管理装置100Aから、必要映像ビットレートの情報を受信する。
撮影部204は、映像を撮影する。
エンコーダ202は、必要映像ビットレート受信部201により受信された必要映像ビットレートに基づいて、撮影部204により撮影された映像をエンコードする。
映像配信部203は、エンコーダ202によりエンコードされた映像を、ネットワークを介して、分析装置300に送信する。
【0078】
分析装置300は、映像を分析する装置であり、クラウドサーバなどである。分析装置300は、映像受信部301と、デコーダ302と、映像分析部303と、を備えている。
映像受信部301は、映像配信装置200から、ネットワークを介して、映像を受信する。
デコーダ302は、映像受信部301により受信された映像をデコードする。
映像分析部303は、デコーダ302によりデコードされた映像を分析する。例えば、映像分析部303は、映像に映り込む対象物(例えば、人、顔、車など)を認識することによって、対象物を検出する。具体的には、映像分析部303は、映像に対象物が映り込んでいるか否かの二値分類を行う。
【0079】
上述したように本実施の形態4によれば、映像配信装置200は、ネットワーク管理装置100Aにより算出された必要映像ビットレートに基づいて、撮影部204により撮影された映像をエンコードして、分析装置300に配信することができる。また、ネットワーク管理装置100Aにより算出された必要映像ビットレートは、Family-wise認識を想定し、要求認識率を満たすように算出されたものであるため、分析装置300における対象物の検出精度を維持することができる。
【0080】
<実施の形態5>
続いて、図17を参照して、本実施の形態5に係る映像配信システム2の構成例について説明する。
図17に示されるように、本実施の形態5に係る映像配信システム2は、ネットワーク管理装置100Aと、帯域制御装置400と、を備えている。
【0081】
ネットワーク管理装置100Aは、上述した実施の形態4に係るネットワーク管理装置100Aと同様の構成である。ただし、必要映像ビットレートの情報の送信先は、帯域制御装置400となる。
【0082】
帯域制御装置400は、ネットワークの帯域を制御する装置であり、映像配信装置200と分析装置300との間に配置されるルータなどである。ただし、帯域制御装置400は、映像配信装置200と映像受信装置(不図示)との間に配置されるルータなどであっても良い。帯域制御装置400は、必要映像ビットレート受信部401と、保証帯域設定部402と、を備えている。
必要映像ビットレート受信部401は、ネットワーク管理装置100Aから、必要映像ビットレートの情報を受信する。
保証帯域設定部402は、必要映像ビットレート受信部401により受信された必要映像ビットレートに基づいて、映像配信装置200による映像の配信に用いるネットワークに対し、保証帯域を設定する。
【0083】
上述したように本実施の形態3によれば、帯域制御装置400は、ネットワーク管理装置100Aにより算出された必要映像ビットレートに基づいて、映像配信装置200による映像の配信に用いるネットワークに対し、保証帯域を設定することができる。
【0084】
<実施の形態に係るネットワーク管理装置のハードウェア構成>
続いて、図18を参照して、上述した実施の形態2~5に係るネットワーク管理装置100,100A,100Bを実現するコンピュータ900のハードウェア構成例について説明する。
【0085】
図18に示されるように、コンピュータ900は、プロセッサ901、メモリ902、ストレージ903、入出力インタフェース(入出力I/F)904、及び通信インタフェース(通信I/F)905などを備える。プロセッサ901、メモリ902、ストレージ903、入出力インタフェース904、及び通信インタフェース905は、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路で接続されている。
【0086】
プロセッサ901は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などの演算処理装置である。メモリ902は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリである。ストレージ903は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はメモリカードなどの記憶装置である。また、ストレージ903は、RAMやROMなどのメモリであっても良い。
【0087】
ストレージ903は、ネットワーク管理装置100,100A,100Bが備える構成要素の機能を実現するプログラムを記憶している。プロセッサ901は、これら各プログラムを実行することで、ネットワーク管理装置100,100A,100Bが備える構成要素の機能をそれぞれ実現する。ここで、プロセッサ901は、上記各プログラムを実行する際、これらのプログラムをメモリ902上に読み出してから実行しても良いし、メモリ902上に読み出さずに実行しても良い。また、メモリ902やストレージ903は、ネットワーク管理装置100,100A,100Bが備える記憶機能を実現する役割も果たす。
【0088】
また、上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、上述した実施の形態で説明された、ネットワーク管理装置100,100A,100Bにおける1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されても良い。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、SSD又はその他のメモリ技術、compact disc(CD)-ROM、digital versatile disk(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されても良い。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、又はその他の形式の伝搬信号を含む。
【0089】
入出力インタフェース904は、表示装置9041、入力装置9042、音出力装置9043などと接続される。表示装置9041は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、モニターのような、プロセッサ901により処理された描画データに対応する画面を表示する装置である。入力装置9042は、オペレータの操作入力を受け付ける装置であり、例えば、キーボード、マウス、及びタッチセンサなどである。表示装置9041及び入力装置9042は一体化され、タッチパネルとして実現されていても良い。音出力装置9043は、スピーカのような、プロセッサ901により処理された音響データに対応する音を音響出力する装置である。
【0090】
通信インタフェース905は、外部の装置との間でデータを送受信する。例えば、通信インタフェース905は、有線通信路または無線通信路を介して外部装置と通信する。
【0091】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上述した実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0092】
また、上述した実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
映像から対象物を認識するために、前記映像を配信する映像配信装置に要求される前記映像の品質を示す要求品質を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記要求品質に基づいて、前記対象物を認識できる前記映像の分析性能を算出する第1算出部と、
前記第1算出部により算出された前記分析性能に基づいて、前記映像の配信に係るパラメータを算出する第2算出部と、を備える、
ネットワーク管理装置。
(付記2)
前記取得部は、前記映像の映像品質をさらに取得し、
前記第1算出部は、前記取得部により取得された前記要求品質及び前記映像品質に基づいて、前記分析性能を算出する、
付記1に記載のネットワーク管理装置。
(付記3)
前記取得部は、前記要求品質として、前記映像に要求される認識率を示す要求認識率と、前記映像に要求される遅延量の上限を示す要求遅延量と、を取得すると共に、前記映像品質として、前記映像のフレームレートを取得し、
前記認識率は、複数枚の映像フレームのうち1枚以上の映像フレームで前記対象物を認識する割合である、
付記2に記載のネットワーク管理装置。
(付記4)
前記第1算出部は、
前記取得部により取得された前記要求遅延量及び前記フレームレートに基づいて、前記要求遅延量以内に生成される映像フレームのフレーム数を示す要求遅延内フレーム数を算出し、
前記要求認識率が、前記取得部により取得された要求認識率である場合における、再現率と映像フレームのフレーム数との関係を示す第1関数を算出し、
前記算出された前記要求遅延内フレーム数及び前記第1関数に基づいて、1枚の映像フレーム当たりに必要な再現率を示す必要再現率を、前記分析性能として算出し、
前記第2算出部は、
前記第1算出部により算出された前記必要再現率と、再現率と映像ビットレートとの関係を示す第2関数と、に基づいて、前記映像に必要な映像ビットレートを示す必要映像ビットレートを、前記パラメータとして算出する、
付記3に記載のネットワーク管理装置。
(付記5)
前記第2関数は、前記認識率のばらつきを考慮して、算出されたものである、
付記4に記載のネットワーク管理装置。
(付記6)
前記取得部は、前記対象物に応じた前記要求品質を取得する、
付記1から5のいずれか1項に記載のネットワーク管理装置。
(付記7)
映像から対象物を認識するために、前記映像を配信する映像配信装置に要求される前記映像の品質を示す要求品質を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得された前記要求品質に基づいて、前記対象物を認識できる前記映像の分析性能を算出する第1算出ステップと、
前記第1算出ステップにより算出された前記分析性能に基づいて、前記映像の配信に係るパラメータを算出する第2算出ステップと、を含む、
ネットワーク管理方法。
(付記8)
前記取得ステップでは、前記映像の映像品質をさらに取得し、
前記第1算出ステップでは、前記取得ステップにより取得された前記要求品質及び前記映像品質に基づいて、前記分析性能を算出する、
付記7に記載のネットワーク管理方法。
(付記9)
前記取得ステップでは、前記要求品質として、前記映像に要求される認識率を示す要求認識率と、前記映像に要求される遅延量の上限を示す要求遅延量と、を取得すると共に、前記映像品質として、前記映像のフレームレートを取得し、
前記認識率は、複数枚の映像フレームのうち1枚以上の映像フレームで前記対象物を認識する割合である、
付記8に記載のネットワーク管理方法。
(付記10)
前記第1算出ステップでは、
前記取得ステップにより取得された前記要求遅延量及び前記フレームレートに基づいて、前記要求遅延量以内に生成される映像フレームのフレーム数を示す要求遅延内フレーム数を算出し、
前記要求認識率が、前記取得ステップにより取得された要求認識率である場合における、再現率と映像フレームのフレーム数との関係を示す第1関数を算出し、
前記算出された前記要求遅延内フレーム数及び前記第1関数に基づいて、1枚の映像フレーム当たりに必要な再現率を示す必要再現率を、前記分析性能として算出し、
前記第2算出ステップでは、
前記第1算出ステップにより算出された前記必要再現率と、再現率と映像ビットレートとの関係を示す第2関数と、に基づいて、前記映像に必要な映像ビットレートを示す必要映像ビットレートを、前記パラメータとして算出する、
付記9に記載のネットワーク管理方法。
(付記11)
前記第2関数は、前記認識率のばらつきを考慮して、算出されたものである、
付記10に記載のネットワーク管理方法。
(付記12)
前記取得ステップでは、前記対象物に応じた前記要求品質を取得する、
付記7から11のいずれか1項に記載のネットワーク管理方法。
(付記13)
映像から対象物を認識するために、前記映像を配信する映像配信装置に要求される前記映像の品質を示す要求品質を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記要求品質に基づいて、前記対象物を認識できる前記映像の分析性能を算出する第1算出部と、
前記第1算出部により算出された前記分析性能に基づいて、前記映像の配信に係るパラメータを算出する第2算出部と、を備える、
映像配信システム。
(付記14)
前記取得部は、前記映像の映像品質をさらに取得し、
前記第1算出部は、前記取得部により取得された前記要求品質及び前記映像品質に基づいて、前記分析性能を算出する、
付記13に記載の映像配信システム。
(付記15)
前記取得部は、前記要求品質として、前記映像に要求される認識率を示す要求認識率と、前記映像に要求される遅延量の上限を示す要求遅延量と、を取得すると共に、前記映像品質として、前記映像のフレームレートを取得し、
前記認識率は、複数枚の映像フレームのうち1枚以上の映像フレームで前記対象物を認識する割合である、
付記14に記載の映像配信システム。
(付記16)
前記第1算出部は、
前記取得部により取得された前記要求遅延量及び前記フレームレートに基づいて、前記要求遅延量以内に生成される映像フレームのフレーム数を示す要求遅延内フレーム数を算出し、
前記要求認識率が、前記取得部により取得された要求認識率である場合における、再現率と映像フレームのフレーム数との関係を示す第1関数を算出し、
前記算出された前記要求遅延内フレーム数及び前記第1関数に基づいて、1枚の映像フレーム当たりに必要な再現率を示す必要再現率を、前記分析性能として算出し、
前記第2算出部は、
前記第1算出部により算出された前記必要再現率と、再現率と映像ビットレートとの関係を示す第2関数と、に基づいて、前記映像に必要な映像ビットレートを示す必要映像ビットレートを、前記パラメータとして算出する、
付記15に記載の映像配信システム。
(付記17)
前記第2関数は、前記認識率のばらつきを考慮して、算出されたものである、
付記16に記載の映像配信システム。
(付記18)
前記第2算出部により算出された前記必要映像ビットレートに基づいて、前記映像をエンコードするエンコーダと、
前記エンコーダによりエンコードされた前記映像を、ネットワークを介して、配信する映像配信部と、をさらに備える、
付記16又は17に記載の映像配信システム。
(付記19)
前記第2算出部により算出された前記必要映像ビットレートに基づいて、前記映像の配信に用いるネットワークに対し、保証帯域を設定する保証帯域設定部をさらに備える、
付記16又は17に記載の映像配信システム。
(付記20)
前記取得部は、前記対象物に応じた前記要求品質を取得する、
付記13から19のいずれか1項に記載の映像配信システム。
【符号の説明】
【0093】
1,2,3 映像配信システム
100,100A,100B ネットワーク管理装置
101 品質記憶部
102 要求遅延内フレーム数算出部
103 Recall対フレーム関数算出部
104 必要Recall算出部
105 Recall対映像ビットレート関数記憶部
106 必要映像ビットレート算出部
107 必要映像ビットレート送信部
111 取得部
112 第1算出部
113 第2算出部
200 映像配信装置
201 必要映像ビットレート受信部
202 エンコーダ
203 映像配信部
204 撮影部
300 分析装置
301 映像受信部
302 デコーダ
303 映像分析部
400 帯域制御装置
401 必要映像ビットレート受信部
402 保証帯域設定部
900 コンピュータ
901 プロセッサ
902 メモリ
903 ストレージ
904 入出力インタフェース
9041 表示装置
9042 入力装置
9043 音出力装置
905 通信インタフェース
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