(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】接着剤塗布装置
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20250212BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20250212BHJP
E04F 21/20 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/00 101
E04F21/20 B
(21)【出願番号】P 2024007875
(22)【出願日】2024-01-23
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】堀 一夫
(72)【発明者】
【氏名】松隈 政元
(72)【発明者】
【氏名】疊 将志
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-074772(JP,U)
【文献】特開2016-047522(JP,A)
【文献】国際公開第2020/186003(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0032334(US,A1)
【文献】中国実用新案第212223574(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 11/10
B05C 5/00
E04F 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に吐出口を有しており、内部に接着剤を収容可能な筐体と、
上記筐体内を上記吐出口に対して進退可能であり、上記接着剤を上記吐出口から押し出す押出部と、
上記筐体の外方において回転可能に支持された車輪と、
上記車輪の回転を上記押出部の進退方向への移動に変換する変換機構と、を備えており、
上記変換機構は、
上記押出部から上記吐出口とは反対方向へ延びるラックと、
上記ラックと噛み合っており、上記車輪の回転によって上記車輪の第1回転軸と平行な第2回転軸を中心に回転する第1ピニオンと、
上記第2回転軸と平行な第3回転軸を中心に回転し、上記第1ピニオンと噛み合う第2ピニオンと、
上記車輪と上記第2ピニオンとに掛け渡されるベルトと、を有する接着剤塗布装置。
【請求項2】
上記ラック、上記第1ピニオン、および上記第2ピニオンは、上記筐体に覆われている請求項
1に記載の接着剤塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工現場において床面上等に接着剤を塗布する接着剤塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、施工現場において床面上等に接着剤を塗布する接着剤塗布装置が記載されている。特許文献1に記載の接着剤塗布装置では、作業者は、操作レバーを複数回、操作することによって所望量の接着剤を筐体の吐出口から押し出した後、この押し出された接着剤を筐体の底部から下方へ突出する塗布部によって床下地材上に移動させて塗り拡げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の接着剤塗布装置では、操作レバーによる操作の回数に応じて押し出される接着剤の量が変化するとともに、押し出された接着剤を塗布部によって床下地材上に移動させて塗り拡げるので、接着剤塗布装置の移動距離に応じて一定の塗布量の接着剤を床下地材上に塗布するのに熟練を要する。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業者の技量に関わらず、移動距離に応じて一定の塗布量の接着剤を塗布できる接着剤塗布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 請求項1に係る接着剤塗布装置は、底部に吐出口を有しており、内部に接着剤を収容可能な筐体と、上記筐体内を上記吐出口に対して進退可能であり、上記接着剤を上記吐出口から押し出す押出部と、上記筐体の外方において回転可能に支持された車輪と、上記車輪の回転を上記押出部の進退方向への移動に変換する変換機構と、を備える。上記変換機構は、上記押出部から上記吐出口とは反対方向へ延びるラックと、上記ラックと噛み合っており、上記車輪の回転によって上記車輪の第1回転軸と平行な第2回転軸を中心に回転する第1ピニオンと、を有する。
【0007】
車輪の両方向の回転が、第1ピニオンおよびラックを介して押出部の進退方向への移動に変換される。このため、押出部は、車輪の回転量に応じた移動量だけ進退方向へ移動するので、作業者は、技量に関わらず、接着剤塗布装置の移動距離に応じて一定の塗布量の接着剤を塗布できる。
【0008】
(2) 請求項2に係る接着剤塗布装置は、上記変換機構は、上記車輪と上記第1ピニオンとに掛け渡されるベルトを有する請求項1に記載の接着剤塗布装置である。
【0009】
車輪の回転がベルトを介して第1ピニオンに伝達されるので、車輪の回転が複数の歯車を介して第1ピニオンに伝達される場合と比べて、車輪の回転がスムーズに第1ピニオンに伝達される。このため、作業者は、車輪を床面に押し当てた状態で接着剤塗布装置を移動させやすい。
【0010】
(3) 請求項3に係る接着剤塗布装置は、上記変換機構は、上記第2回転軸と平行な第3回転軸を中心に回転し、上記第1ピニオンと噛み合う第2ピニオンと、上記車輪と上記第2ピニオンとに掛け渡されるベルトと、を有する請求項1に記載の接着剤塗布装置である。
【0011】
作業者は、例えば、車輪を筐体よりも作業者の手前に位置させた状態で車輪を床面に押し当てて接着剤塗布装置を手前に移動させると、車輪の回転がベルトおよび第2ピニオンを介して伝達された第1ピニオンがラックを吐出口へ向って移動させる方向に回転するので、押出部が吐出口へ進む方向に移動する。このため、作業者は、接着剤塗布装置を手前に移動させながら接着剤を塗布できるので、接着剤を塗布しやすい。また、吐出口から押し出された接着剤が車輪に付着しない。
【0012】
(4) 請求項6に係る接着剤塗布装置は、上記ラック、上記第1ピニオン、および上記第2ピニオンは、上記筐体に覆われている請求項3に記載の接着剤塗布装置である。
【0013】
ラック、第1ピニオンおよび第2ピニオンに異物が接触することが筐体によって抑制されるので、変換機構が故障しにくい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、作業者は、技量に関わらず、接着剤塗布装置の移動距離に応じて一定の塗布量の接着剤を塗布できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る接着剤塗布装置1の正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る接着剤塗布装置1の断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る接着剤塗布装置1のラック32の側面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る接着剤塗布装置1のラック32が第1方向Aに沿って移動可能に2つの支持片36に支持されている状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の変形例に係る接着剤塗布装置1の断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の他の変形例に係る接着剤塗布装置1の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る接着剤塗布装置1について説明する。なお、以下に説明される実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0017】
図1、
図2に示されるように、接着剤塗布装置1は、筐体2、押出部3、車輪4、および変換機構5を備える。筐体2は、第1方向Aに沿って延びる略円筒形状である。筐体2は、本体ケーシング11およびサブケーシング12を有する。本体ケーシング11は、底部11Aおよび本体部11Bを有する。底部11Aは、本体ケーシング11の第1方向Aの一方端部に位置する。底部11Aは、第1方向Aの一方に向かって径が小さくなる円錐筒形状である。底部11Aは、底部11Aの一方端を第1方向Aに沿って貫通する吐出口21を有する。本体部11Bは、底部11Aの他方端から第1方向Aの他方へ延びる円筒形状である。本体部11Bの内部空間は、底部11Aの内部空間と連通している。本体部11Bの第1方向Aの他方端は開放している。本体ケーシング11は、本体部11Bの第1方向Aの他方端の開口を通して接着剤を収容可能である。なお、本体ケーシング11は、接着剤を直接収容してもよく、接着剤を封入した接着剤充填袋を収容してもよい。接着剤を封入した接着剤充填袋が押圧されると、接着剤充填袋に位置する開口を通して接着剤が外部へ押し出される。
【0018】
本体部11Bの外面における第1方向Aの一方端の近傍に車輪フレーム22が位置する。車輪フレーム22は、本体部11Bの外面から第1方向Aに直交する第2方向Bの一方へ延びる棒状のフレームである。本体部11Bの外面において第1方向Aの他方端に一対の係合爪23、23が位置する。一対の係合爪23、23は、本体部11Bの外面における第2方向Bの両側に位置する。一対の係合爪23、23は、本体部11Bの他方端から第1方向Aの他方へ突出している。一対の係合爪23、23は、第2方向Bの外方に向けて弾性変形可能である。
【0019】
サブケーシング12は、本体部11Bの他方端に接続されている。サブケーシング12は、本体部11Bの他方端から第1方向Aの他方へ延びる四角筒形状である。サブケーシング12の内部空間は、本体部11Bの内部空間に連通している。サブケーシング12の第1方向Aの他方端は開放している。サブケーシング12の第1方向Aに沿った長さL1は、本体部11Bの第1方向Aに沿った長さL2よりも短い。サブケーシング12の第2方向Bに沿った長さL3は、本体部11Bの第2方向Bに沿った長さL4と略等しい。サブケーシング12の第1方向Aおよび第2方向Bに直交する第3方向Cに沿った長さL5は、本体部11Bの第3方向Cに沿った長さL6よりも短い。サブケーシング12の第2方向Bの一方側にベルト通孔24が位置する。ベルト通孔24は、サブケーシング12を第2方向Bに沿って貫通している。ベルト通孔24は、第3方向Cよりも第1方向Aの長さが長い四角形状である。
【0020】
サブケーシング12の外面における第1方向Aの一方端に一対の係合溝25、25が位置する。一対の係合溝25、25は、サブケーシング12の外面における第2方向Bの両側に位置する。一対の係合溝25、25は、サブケーシング12の外面から凹んだ窪みである。一対の係合溝25、25には、一対の係合爪23、23が第2方向Bの外方に向けて弾性変形した状態で嵌り込んでいる。これにより、サブケーシング12は、本体ケーシング11の第1方向Aの他方端に着脱可能に取り付けられている。
【0021】
押出部3は、本体ケーシング11の本体部11Bの内部空間に位置する。押出部3は、本体部11Bの内径よりも僅かに小さい直径を有する円形である。押出部3は、本体部11Bの内部空間を第1方向Aに沿って進退可能である。第1方向Aは、進退方向の一例である。
【0022】
車輪4は、筐体2の外方に位置する。車輪4は、車輪フレーム22に回転可能に支持された第1回転軸4Aを有する。第1回転軸4Aは、第3方向Cに沿って延びている。車輪4は、第1回転軸4Aを中心に回転可能である。
【0023】
変換機構5は、ラック32、第1ピニオン33、第2ピニオン34、およびベルト35を有する。ラック32は、平板部32Aおよび複数の歯32Bを有する。平板部32Aは、本体部11Bの内部空間からサブケーシング12の内部空間に亘って位置する。平板部32Aは、押出部3における吐出口21とは反対側の面に連結されている。平板部32Aは、押出部3から第1方向Aの他方へ延びている。平板部32Aは、第1方向Aおよび第3方向Cへ拡がる平板状である。平板部32Aの第1方向Aに沿った長さL7は、サブケーシング12の第1方向Aに沿った長さL1に、本体部11Bの第1方向Aに沿った長さL2を足し合わせた長さに略等しい。
【0024】
複数の歯32Bは、平板部32Aの第2方向Bにおける一方の面に位置する。複数の歯32Bは、第1方向Aに沿って平板部32Aの一方端から他方端に亘って並んでいる。
【0025】
図3に示されるように、ラック32は、平板部32Aの第3方向Cにおける両側面に第1方向Aに沿って延びる支持溝32Cを有する。各支持溝32Cは、平板部32Aの各側面から凹んでいる。各支持溝32Cは、平板部32Aの第1方向Aの一方端の近傍から平板部32Aの第1方向Aの他方端の近傍に亘って位置する。
図4に示されるように、各支持溝32Cには、サブケーシング12の内面における第3方向Cの両側から第3方向Cの内方へ延びる各支持片36が挿入されている。各支持片36は、各支持溝32Cから第1方向Aに抜け止めされている。これにより、ラック32は、第1方向Aに沿って移動可能に2つの支持片36に支持されている。
【0026】
ラック32の全体は、押出部3が本体部11Bの内部空間における第1方向Aの一方端に位置するとき、本体部11Bおよびサブケーシング12によって覆われている。
図2に示されるように、押出部3が本体部11Bの内部空間における第1方向Aの一方端よりも他方側に位置するとき、ラック32の第1方向Aの他方端は、サブケーシング12から露出する。
【0027】
第1ピニオン33は、サブケーシング12の内部空間に位置している。これにより、第1ピニオン33の全体がサブケーシング12に覆われている。第1ピニオン33は、サブケーシング12の内面に回転可能に支持された第2回転軸33Aを有する。第2回転軸33Aは、第1回転軸4Aと平行な第3方向Cに沿って延びている。第1ピニオン33は、第2回転軸33Aを中心に回転する。ラック32の複数の歯32Bと噛み合っている。
【0028】
第2ピニオン34は、サブケーシング12の内部空間に位置している。これにより、第2ピニオン34の全体がサブケーシング12に覆われている。第2ピニオン34は、第1ピニオン33の第1方向Aの一方に位置している。第2ピニオン34は、サブケーシング12の内面に回転可能に支持された第3回転軸34Aを有する。第3回転軸34Aは、第2回転軸33Aと平行な第3方向Cに沿って延びている。第2ピニオン34は、第3回転軸34Aを中心に回転する。第2ピニオン34は、第1ピニオン33と噛み合っている。
【0029】
図2に示されるように、第2ピニオン34の歯先円の直径D4および歯数は、第1ピニオン33の歯先円の直径D5および歯数と同じである。第3回転軸34Aの直径D1は、第2回転軸33Aの直径D2と同じである。第3回転軸34Aの直径D1は、車輪4の第1回転軸4Aの直径D3よりも小さい。第2ピニオン34の歯先円の直径D4は、車輪4の直径D6よりも小さい。
【0030】
ベルト35は、車輪4の第1回転軸4Aと第2ピニオン34の第3回転軸34Aとにサブケーシング12のベルト通孔24を通して掛け渡されている。これにより、車輪4の両方向の回転が、ベルト35および第2ピニオン34を介して第1ピニオン33に伝達可能である。車輪4の両方向の回転が第1ピニオン33に伝達されると、第1ピニオン33と噛み合うラック32が第1方向Aに沿って移動することにより、押出部3が第1方向Aに沿って移動する。このようにして、車輪4の両方向の回転が押出部3の進退方向への移動に変換される。
【0031】
押出部3の移動距離および接着剤の吐出口21からの吐出量は、車輪4の第1回転軸4Aの直径D3と車輪4の直径D6との比を変更したり、第2ピニオン34の第3回転軸34Aの直径D1と車輪4の第1回転軸4Aの直径D3との比を変更したり、第2ピニオン34の歯先円の直径D4と第2ピニオン34の第3回転軸34Aの直径D1との比を変更したりすることによって調節可能である。例えば、車輪4の第1回転軸4Aの直径D3の車輪4の直径D6に対する比が大きくされると、押出部3の移動距離が長くなる。反対に、第1回転軸4Aの直径D3の車輪4の直径D6に対する比が小さくされると、押出部3の移動距離が短くなる。また、第2ピニオン34の第3回転軸34Aの直径D1の車輪4の第1回転軸4Aの直径D3に対する比が小さくされると、押出部3の移動距離が長くなる。反対に、第2ピニオン34の第3回転軸34Aの直径D1の車輪4の第1回転軸4Aの直径D3に対する比が大きくされると、押出部3の移動距離が短くなる。また、第2ピニオン34の歯先円の直径D4の第2ピニオン34の第3回転軸34Aの直径D1に対する比が大きくされると、押出部3の移動距離が長くなる。反対に、第2ピニオン34の歯先円の直径D4の第2ピニオン34の第3回転軸34Aの直径D1に対する比が小さくされると、押出部3の移動距離が短くなる。
【0032】
また、吐出口21の大きさを変更することにより、接着剤の吐出口21からの吐出しやすさを調節することができる。例えば、吐出口21を大きくすると、本体ケーシング11内における接着剤の移動抵抗が小さくなるので、接着剤が吐出口21から吐出しやすくなる。反対に、吐出口21を小さくすると、本体ケーシング11内における接着剤の移動抵抗が大きくなるので、接着剤が吐出口21から吐出しにくくなる。
【0033】
次に、接着剤塗布装置1の使用方法が説明される。初期状態として、接着剤を封入した接着剤充填袋が本体ケーシング11に収容されている。なお、接着剤を本体ケーシング11に収容するときは、作業者は、ベルト35を車輪4の第1回転軸4Aから取り外した後、サブケーシング12を本体ケーシング11から取り外す。次いで、作業者は、本体部11Bの第1方向Aの他方端の開口を通して接着剤を収容する。次に、作業者は、本体ケーシング11の一対の係合爪23、23をサブケーシング12の一対の係合溝25、25に嵌め込むことにより、サブケーシング12を本体ケーシング11に取り付ける。最後に、作業者は、ベルト35を車輪4の第1回転軸4Aに掛け渡す。
【0034】
図2に示されるように、作業者は、筐体2よりも自身の手前側に車輪4を位置させた状態で車輪4を床下地材41上に押し当てる。次いで、作業者は、接着剤塗布装置1を自身の手前側に移動させる。これにより、車輪4は、
図2における時計回りに回転する。車輪4の回転は、ベルト35を介して第2ピニオン34に伝達される。これにより、第2ピニオン34は、
図2における時計回りに回転する。第2ピニオン34と噛み合う第1ピニオン33は、
図2における反時計回りに回転する。第1ピニオン33と噛み合うラック32は、吐出口21へ向かう第1方向Aの一方へ移動する。ラック32と連結される押出部3は、吐出口21へ向かう第1方向Aの一方へ移動する。その結果が、接着剤が吐出口21から押し出されて床下地材41上に塗布される。
【0035】
[実施形態の作用効果]
接着剤塗布装置1では、車輪4の両方向の回転が、ベルト35、第2ピニオン34、第1ピニオン33、およびラック32を介して、押出部3の第1方向Aに沿った移動に変換される。このため、押出部3は、車輪4の回転量に応じた移動量だけ第1方向Aへ移動するので、作業者は、技量に関わらず、接着剤塗布装置1の移動距離に応じて一定の塗布量の接着剤を塗布できる。
【0036】
接着剤塗布装置1では、車輪4の回転がベルト35を介して第2ピニオン34に伝達されるので、車輪4の回転が複数の歯車を介して第2ピニオン34に伝達される場合と比べて、車輪4の回転がスムーズに第2ピニオン34に伝達される。このため、作業者は、車輪4を床面に押し当てた状態で接着剤塗布装置1を移動させやすい。
【0037】
接着剤塗布装置1では、作業者は、車輪4を筐体2よりも作業者の手前に位置させた状態で車輪4を床面に押し当てて接着剤塗布装置1を手前に移動させると、車輪4の回転がベルト35および第2ピニオン34を介して伝達された第1ピニオン33が
図2における反時計回りに回転して、ラック32が吐出口21へ向う第1方向Aの一方へ移動するので、押出部3が吐出口21へ向う第1方向Aの一方へ移動する。このため、作業者は、接着剤塗布装置1を手前に移動させながら接着剤を塗布できるので、接着剤を塗布しやすい。また、吐出口21から吐出された接着剤が車輪4に付着しない。
【0038】
接着剤塗布装置1では、ラック32、第1ピニオン33および第2ピニオン34は、サブケーシング12に覆われている。このため、ラック32、第1ピニオン33および第2ピニオン34に異物が接触することがサブケーシング12によって抑制されるので、変換機構5が故障しにくい。
【0039】
[変形例]
接着剤塗布装置1では、車輪4の回転は、ベルト35を介して第2ピニオン34に伝達されたが、車輪4の回転が第2ピニオン34に伝達できれば、ベルト伝達機構に限定されない。例えば、車輪4の回転は、複数の歯車を介して第2ピニオン34に伝達されてもよい。
【0040】
接着剤塗布装置1では、変換機構5は、第1ピニオン33および第2ピニオン34を有したが、
図5に示されるように、第2ピニオン34は省略されてもよい。この場合、ベルト35は、車輪4の第1回転軸4Aと第1ピニオン33の第2回転軸33Aに掛け渡される。変形例の接着剤塗布装置1では、作業者は、
図5における反時計回りに車輪4が回転するように接着剤塗布装置1を移動させると、第1ピニオン33が
図5における反時計回りに回転するので、ラック32が吐出口21へ向う第1方向Aの一方へ移動して、押出部3が吐出口21へ向う第1方向Aの一方へ移動する。その結果、接着剤が吐出口21から押し出される。この場合、吐出口21から押し出された接着剤が車輪4に付着することを防止するため、
図6に示されるように、車輪4は、第3方向Cにおいて吐出口21と一致しない2箇所に配置されてもよい。
【0041】
接着剤塗布装置1では、第2ピニオン34の第3回転軸34Aの直径D1は、車輪4の第1回転軸4Aの直径D3よりも小さかったが、車輪4の第1回転軸4Aの直径D3と同等以上の長さでもよい。このようにすると、第2ピニオン34および第1ピニオン33の回転速度が遅くなるので、車輪4の回転量に対してラック32および押出部3の移動距離が短くなる。このため、ユーザは、接着剤塗布装置1の一定の移動距離に対してより少ないの接着剤を塗布できる。
【0042】
接着剤塗布装置1では、ラック32の平板部32Aの第1方向Aに沿った長さL7は、サブケーシング12の第1方向Aに沿った長さL1に、本体部11Bの第1方向Aに沿った長さL2を足し合わせた長さに略等しかったが、サブケーシング12の長さL1に本体部11Bの長さL2を足し合わせた長さよりも長くてもよい。また、ラック32の長さL7は、押出部3が本体部11B内の一方端に位置するとき、ラック32と第1ピニオン33との噛み合いが維持できれば、サブケーシング12の長さL1に本体部11Bの長さL2を足し合わせた長さよりも短くてもよい。
【0043】
接着剤塗布装置1では、押出部3が本体部11Bの内部空間における第1方向Aの一方端よりも他方側に位置するとき、ラック32の第1方向Aの他方端が、サブケーシング12から露出したが、例えば、サブケーシング12の第1方向Aに沿った長さを長くすることにより、押出部3の位置に関わらず、ラック32の全体が本体部11Bおよびサブケーシング12に覆われてもよい。
【0044】
接着剤塗布装置1では、第1ピニオン33の全体が、サブケーシング12に覆われていたが、第1ピニオン33がサブケーシング12に回転可能に支持されていれば、第1ピニオン33の少なくとも一部がサブケーシング12から露出していてもよい。また、第1ピニオン33は、本体部11Bに回転可能に支持されてもよい。また、第2ピニオン34の全体が、サブケーシング12に覆われていたが、第2ピニオン34がサブケーシング12に回転可能に支持されていれば、第2ピニオン34の少なくとも一部がサブケーシング12から露出していてもよい。また、第2ピニオン34は、本体部11Bに回転可能に支持されてもよい。
【0045】
接着剤塗布装置1では、ラック32は、サブケーシング12の内面から内方へ延びる2つの支持片36に第1方向Aに沿って移動可能に支持されたが、本体部11Bの内面に第1方向Aに沿って移動可能に支持されてもよい。ラック32、第1ピニオン33、および第2ピニオン34が本体部11Bに支持される場合、サブケーシング12は省略されてもよい。
【0046】
接着剤塗布装置1では、サブケーシング12は、一対の係合爪23、23が第2方向Bの外方に向けて弾性変形した状態で一対の係合溝25、25に嵌り込むことにより、本体ケーシング11に着脱可能に取り付けられたが、本体ケーシング11に着脱可能であれば、一対の係合爪23、23および一対の係合溝25、25に限定されない。例えば、サブケーシング12は、本体ケーシング11に圧入されることにより、本体ケーシング11に着脱可能に取り付けられてもよい。
【0047】
[付記1]
底部に吐出口を有しており、内部に接着剤を収容可能な筐体と、
上記筐体内を上記吐出口に対して進退可能であり、上記接着剤を上記吐出口から押し出す押出部と、
上記筐体の外方において回転可能に支持された車輪と、
上記車輪の回転を上記押出部の進退方向への移動に変換する変換機構と、を備えており、
上記変換機構は、
上記押出部から上記吐出口とは反対方向へ延びるラックと、
上記ラックと噛み合っており、上記車輪の回転によって上記車輪の第1回転軸と平行な第2回転軸回りに回転する第1ピニオンと、を有する接着剤塗布装置。
【0048】
[付記2]
上記変換機構は、上記車輪と上記第1ピニオンとに掛け渡されるベルトを有する付記1に記載の接着剤塗布装置。
【0049】
[付記3]
上記変換機構は、上記第2回転軸と平行な第3回転軸回りに回転し、上記第1ピニオンと噛み合う第2ピニオンを有しており、
上記ベルトは、上記車輪と上記第2ピニオンとに掛け渡されている付記2に記載の接着剤塗布装置。
【0050】
[付記4]
上記ラック、上記第1ピニオン、および上記第2ピニオンは、上記筐体に覆われている付記3に記載の接着剤塗布装置。
【符号の説明】
【0051】
1・・・接着剤塗布装置
2・・・筐体
3・・・押出部
4・・・車輪
4A・・・第1回転軸
5・・・変換機構
11A・・・底部
21・・・吐出口
32・・・ラック
33・・・第1ピニオン
33A・・・第2回転軸
34・・・第2ピニオン
34A・・・第3回転軸
35・・・ベルト
【要約】
【課題】作業者の技量に関わらず、移動距離に応じて一定の塗布量の接着剤を塗布できる接着剤塗布装置を提供する。
【解決手段】接着剤塗布装置1は、底部11Aに吐出口21を有しており、内部に接着剤を収容可能な筐体2と、筐体2内を吐出口21に対して進退可能であり、接着剤を吐出口21から押し出す押出部3と、筐体2の外方において回転可能に支持された車輪4と、車輪4の回転を押出部3の進退方向への移動に変換する変換機構5と、を備える。変換機構5は、押出部3から吐出口21とは反対方向へ延びるラック32と、ラック32と噛み合っており、車輪4の回転によって車輪4の第1回転軸4Aと平行な第2回転軸33Aを中心に回転する第1ピニオン33と、を有する。
【選択図】
図2