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  • 特許-エレベーターのかご照明装置の調整方法 図1
  • 特許-エレベーターのかご照明装置の調整方法 図2
  • 特許-エレベーターのかご照明装置の調整方法 図3
  • 特許-エレベーターのかご照明装置の調整方法 図4
  • 特許-エレベーターのかご照明装置の調整方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】エレベーターのかご照明装置の調整方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/06 20060101AFI20250212BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20250212BHJP
   B66B 11/02 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
B66B1/06 A
B66B3/00 P
B66B11/02 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024050111
(22)【出願日】2024-03-26
【審査請求日】2024-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱口 萌子
(72)【発明者】
【氏名】物部 愛
(72)【発明者】
【氏名】成田 岳人
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109319639(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109335904(CN,A)
【文献】中国実用新案第202364449(CN,U)
【文献】下出 雅徳 Masanori SHIMOIDE,特集 SPECIAL FEATURE,ディテール ,第218号,日本,株式会社彰国社 SHOKOKUSHA Publishing Co., Ltd.,2018年09月17日,37-104ページ
【文献】河合 誠 Makoto Kawai,Human Interface 2010 論文集 地球と生きる [DVD-ROM] ヒューマンインタフェースシンポジウム2010 論文集 Proceedings of the Human Interface Symposium 2010 Proceedings of the Human Interface Symposium 2010,日本,2010年09月10日,285-290ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00 - 1/52
B66B 3/00 - 3/02
B66B 11/00 - 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターのかご内に設置され、前記かご内を照明し、色温度と明るさが調整可能なかご照明装置と、
前記エレベーターに関連するパラメーターを取得する取得部と、
前記パラメーターと、前記かご内に再現される色温度と照度が対応付けられたテーブルを記憶した記憶部を有
前記取得部から前記パラメーターを得て、
前記パラメーターに対応して前記かご内に再現される色温度と照度を前記記憶部の前記テーブルから読み出し、
前記かご内が、前記色温度と前記照度となるように前記かご照明装置の色温度と明るさを調整する、
エレベーターのかご照明装置の調整方法であって、
前記取得部は、前記かごの停止する各階床の乗場の照度を測定する照度センサーであり、
前記パラメーターは、前記乗場の照度であり、
前記テーブルに記憶された前記かご内に再現される前記色温度と前記照度は、クルーゾフの快適領域内にあり、
前記テーブルに記憶された前記かご内に再現される前記色温度と前記照度は、前記乗場の照度が高い場合に高く設定され、低い場合に低く設定されている、
エレベーターのかご照明装置の調整方法。
【請求項2】
前記乗場の照度は、前記エレベーターの据付時及び/又はメンテナンス時に前記照度センサーにより測定された照度である、
請求項に記載のエレベーターのかご照明装置の調整方法。
【請求項3】
前記乗場の照度は、前記かごが次に停止する階床の乗場の照度である、
請求項に記載のエレベーターのかご照明装置の調整方法。
【請求項4】
エレベーターのかご内に設置され、前記かご内を照明し、色温度と明るさが調整可能なかご照明装置と、
前記エレベーターに関連するパラメーターを取得する取得部と、
前記パラメーターと、前記かご内に再現される色温度と照度が対応付けられたテーブルを記憶した記憶部を有
前記取得部から前記パラメーターを得て、
前記パラメーターに対応して前記かご内に再現される色温度と照度を前記記憶部の前記テーブルから読み出し、
前記かご内が、前記色温度と前記照度となるように前記かご照明装置の色温度と明るさを調整する、
エレベーターのかご照明装置の調整方法であって、
前記取得部は、前記エレベーターに乗車する乗客の持ち物を含めた色味を測定する色味測定センサーであり、
前記パラメーターは、前記乗客の持ち物を含めた色味であり、
前記テーブルに記憶された前記かご内に再現される前記色温度と前記照度は、クルーゾフの快適領域内にある、
エレベーターのかご照明装置の調整方法。
【請求項5】
前記テーブルに記憶された前記かご内に再現される前記色温度と前記照度は、前記色味が明るい場合に低く設定され、暗い場合に高く設定されている、
請求項に記載のエレベーターのかご照明装置の調整方法。
【請求項6】
前記テーブルに記憶された前記かご内に再現される前記色温度と前記照度は、前記色味が寒色系の場合に高く設定され、暖色系の場合に低く設定されている、
請求項に記載のエレベーターのかご照明装置の調整方法。
【請求項7】
前記色味測定センサーは、前記かご内を撮影可能なカメラである、
請求項乃至請求項の何れか1項に記載のエレベーターのかご照明装置の調整方法。
【請求項8】
前記乗場には、ゲート又は行先階登録装置が設置されており、
前記色味測定センサーは、前記ゲートを通過する又は前記行先階登録装置へ登録している利用者を撮影可能なカメラである、
請求項乃至請求項の何れか1項に記載のエレベーターのかご照明装置の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターのかご照明装置の調整方法に関するものであり、より詳細には、かご照明装置の色温度と照度の調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベーターのかごの天井には、LEDなどの光源を有するかご照明装置が組み込まれている。このかご照明装置は、操作盤の視認性や防犯などの機能面から一定以上の明るさを確保するように法定化されている。
【0003】
特許文献1では、かごの内装によってかご内に再現される照度は変化するため、かご内の照度を新規据付時やメンテナンス時などに測定し、かご内の照度が所定の照度となるよう調光するかご照明装置を開示している。
【0004】
また、特許文献2では、かごが乗場に到着した際に、かご内と乗場の照度の違いを不快と感じることがないように、かご内と乗場に夫々照度測定センサーを設置し、乗場到着前にかご内の照度を乗場の照度に合わせるようにしたエレベーターの制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-245047号公報
【文献】WO2019/159275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かご内をより快適な空間にすることが求められている。
【0007】
本発明の目的は、かご内をより快適な空間とするためのエレベーターのかご照明装置の調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエレベーターのかご照明装置の調整方法は、
エレベーターのかご内に設置され、前記かご内を照明し、色温度と明るさが調整可能なかご照明装置と、
前記エレベーターに関連するパラメーターを取得する取得部と、
前記パラメーターと、前記かご内に再現される色温度と照度が対応付けられたテーブルを記憶した記憶部を有する、
エレベーターのかご照明装置の調整方法であって、
前記取得部から前記パラメーターを得て、
前記パラメーターに対応して前記かご内に再現される色温度と照度を前記記憶部の前記テーブルから読み出し、
前記かご内が、前記色温度と前記照度となるように前記かご照明装置の色温度と明るさを調整する。
【0009】
前記テーブルに記憶された前記かご内に再現される前記色温度と前記照度は、クルーゾフの快適領域内にあることが望ましい。
【0010】
前記取得部は、かご内温度を測定するかご内温度センサーであって、
前記パラメーターは、前記かご内温度であり、
前記テーブルに記憶された前記かご内に再現される前記色温度と前記照度は、前記かご内温度が高い場合に高く設定され、低い場合に低く設定されていることが望ましい。
【0011】
前記テーブルに記憶された前記かご内に再現される前記色温度と前記照度は、前記かご内温度に対して、夏と冬で異なる値に設定されることが望ましい。
【0012】
前記取得部は、前記エレベーターの設置された環境の外気温度を測定する外気温度センサーであって、
前記パラメーターは、前記外気温度であり、
前記テーブルに記憶された前記かご内に再現される前記色温度と前記照度は、前記外気温度が高い場合に高く設定され、低い場合に低く設定されていることが望ましい。
【0013】
前記取得部は、前記かご内の乗車割合を検知する乗車割合検知センサーであって、
前記パラメーターは、前記乗車割合であって、
前記テーブルに記憶された前記かご内に再現される前記色温度と前記照度は、前記乗車割合が高い場合に高く設定され、低い場合に低く設定されていることが望ましい。
【0014】
前記取得部は、前記かごの停止する各階床の乗場の照度を測定する照度センサーであって、
前記パラメーターは、前記乗場の照度であって、
前記テーブルに記憶された前記かご内に再現される前記色温度と前記照度は、前記乗場の照度が高い場合に高く設定され、低い場合に低く設定されていることが望ましい。
【0015】
前記乗場の照度は、前記エレベーターの据付時及び/又はメンテナンス時に前記照度センサーにより測定された照度であることが望ましい。
【0016】
前記乗場の照度は、前記かごが次に停止する階床の乗場の照度であることが望ましい。
【0017】
前記取得部は、前記エレベーターに乗車する乗客の持ち物を含めた色味を測定する色味測定センサーであって、
前記パラメーターは、前記乗客の持ち物を含めた色味であることが望ましい。
【0018】
前記テーブルに記憶された前記かご内に再現される前記色温度と前記照度は、前記色味が明るい場合に低く設定され、暗い場合に高く設定されていることが望ましい。
【0019】
前記テーブルに記憶された前記かご内に再現される前記色温度と前記照度は、前記色味が寒色系の場合に高く設定され、暖色系の場合に低く設定されていることが望ましい。
【0020】
前記色味測定センサーは、前記かご内を撮影可能なカメラであることが望ましい。
【0021】
前記乗場には、ゲート又は行先階登録装置が設置されており、
前記色味測定センサーは、前記ゲートを通過する又は行先階登録装置へ登録している利用者を撮影可能なカメラであることが望ましい。
【0022】
前記取得部は、前記エレベーターの設置された地域の日時及び太陽高度を演算可能であり、
前記パラメーターは、前記太陽高度であって、
前記テーブルに記憶された前記かご内に再現される前記色温度と前記照度は、前記太陽高度が低い場合に低く設定され、高い場合に高く設定されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のエレベーターのかご照明装置の調整方法によれば、エレベーターに関連するパラメーターに基づいて、かご照明装置の色温度と明るさを調整することで、かご内に再現される色温度と照度を設定し、かご内を快適な空間にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るエレベーターの概略構成を示す説明図である。
図2図2は、エレベーターの要部制御ブロック図である。
図3図3は、かご内をかごドア方向に見た概略図である。
図4図4は、クルーゾフ効果を示すグラフである。
図5図5は、太陽高度に基づくテーブルの設定内容を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のエレベーター10のかご照明装置50の調整方法について図面を参照しながら説明を行なう。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係るエレベーター10の概略構成を示す説明図である。なお、図示では、本発明に関連する機能のみを示している。エレベーター10は、建物11内を貫通するシャフト12内にかご30を昇降可能に配置して構成される。
【0027】
乗客が搭乗するかご30は、乗客が出入りするためのかごドア31を有する。かごドア31は、開閉装置32により自動開閉する。
【0028】
シャフト12のたとえば最上部に設けられた機械室13には、巻上機14とブレーキ15が収容されている。巻上機14には、ブレーキ15と、巻上機14により回転するシーブ16が設けられており、シーブ16には、そらせ車17が並設されている。シーブ16とそらせ車17には、メインロープ18が掛けられている。メインロープ18の一端はかご30、他端はカウンターウェイト19が吊下支持されている。
【0029】
また、シャフト12には、建物11の各階床の乗場20に通じる乗場ドア21が配置され、シャフト12内と各乗場20とを連通可能としている。通常の運行では、巻上機14を駆動してかご30を昇降させ、所定の階床の乗場20でかご30を停止させて開閉装置32を作動させることで、かごドア31の開閉に連動して、乗場ドア21が開閉する。
【0030】
乗場20及びかご30には、乗客が乗場呼びやかご呼び、ドア開閉などの種々の操作を行なう操作盤22,33が配置されている。
【0031】
エレベーター10の制御は、機械室13に設けられた運行制御部41とかご30に設けられたかご制御部42により行なわれる。図2は、エレベーター10の要部制御ブロック図である。運行制御部41は、たとえば、操作盤22,33からのかご呼び等に応じて、かご30の昇降、すなわち、巻上機14とブレーキ15を制御する。また、かご制御部42は、開閉装置32の制御等を行なう。本発明では、運行制御部41とかご制御部42、また、次に説明する照明制御部43をまとめて制御装置40と称する。
【0032】
かご30内には、かご照明装置50が配置される。かご照明装置50は、色温度と明るさが調整可能なLEDや有機LED等の光源を採用することができる。かご照明装置50は、たとえば、図3に示すように、かご30の天井に配置することができる。かご照明装置50は、図2に示す照明制御部43からのオン、オフや色温度と明るさの指令により制御される。かご照明装置50の色温度は、かご30内に再現される色温度と同義であり、かご照明装置50の色温度を調整することで、かご30内に再現される色温度も調整される。また、かご照明装置50の明るさ(光束)を調整することで、かご照明装置50によって照らされたかご30内の照度を調整できる。
【0033】
より詳細には、照明制御部43は、次に説明する取得部60により取得されたパラメーターに基づいて、かご照明装置50の色温度と明るさを調整することで、かご30内に再現される色温度と照度を調整する。照明制御部43は、パラメーターと、かご30内に再現される色温度と照度が対応付けられたテーブルを記憶した記憶部44を有する。テーブルの具体例は、後述するが、照明制御部43は、かご30内の色温度と照度が所定の値で再現されるように、かご照明装置50の色温度と明るさを調整する。なお、テーブルには、かご30内の色温度と照度ではなく、これらを実現するために必要なかご照明装置50の色温度と明るさを記憶するようにしてもよい。
【0034】
エレベーター10には、エレベーター10に関連するパラメーターを取得する取得部60が配置される。
【0035】
エレベーター10に関連するパラメーターとは、たとえば、かご内温度、エレベーター10が設置された環境の外気温度、かご30内の乗車割合(かご床占有率)などである。パラメーターは、これに限定されるものではなく、実施例ではこれらの他、かご30が次に停止する乗場20の照度、かご30に搭乗する乗客の持ち物を含めた色味、エレベーター10の設置された地域の太陽高度を挙げている。
【0036】
取得部60は、パラメーターに応じたセンサー等である。具体的には、パラメーターがかご内温度の場合、かご30内に設置されるかご内温度センサー61(図2及び図3)、パラメーターが外気温度の場合は建物11の外部に設置される外気温度センサー62(図1及び図2)、かご30内の乗車割合はかご30内の乗客の乗車割合を検知する乗車割合検知センサー63(図2及び図3)などである。乗車割合検知センサー63は、たとえばかご30の積載量を測定する重量センサー63a(図1及び図2)である。
【0037】
本発明では、取得部60が取得したエレベーター10に関連するパラメーターに基づいて、かご30内の照度及び色温度が再現されるように、照明制御部43はかご照明装置50の色温度と明るさを調整する。
【0038】
たとえば、パラメーターがかご内温度の場合、かご内温度センサー61が照明制御部43と電気的に接続される。照明制御部43の記憶部44には、後述する表1の如き、かご内温度と、かご30内に再現される色温度及び照度を対応付けたテーブルが格納されている。そして、照明制御部43は、かご内温度センサー61により取得されたかご内温度に対応した色温度と照度をテーブルから読み出し、これら色温度と照度が再現されるようにかご照明装置50の色温度と明るさを調整する。
【0039】
かご30内の色温度と当該色温度に対する照度は、照明の色温度と照度に対する心理効果(クルーゾフ効果)に基づいて設定することができる。図4はクルーゾフ効果を示している。クルーゾフ効果は、横軸は色温度(K)、縦軸は照度(lx)であり、色温度と照度が図に示す快適曲線間の快適領域(クルーゾフの快適領域、図4中「快適領域」)内にある場合には快適に感じ、快適領域から外れると不快感を与えるという心理効果を示している。
【0040】
たとえば、クルーゾフ効果では、3300K以下の色温度が暖かい色味、5300K以上では冷たい色味、3300K~5300Kではその中間の色味であるとされている。また、快適領域よりも高い照度は暑苦しく、不快感を得、快適領域よりも低い照度は陰うつで暗く冷たく、同じく不快感を得るとされている。このため、表1の実施例では後述のとおり、照明制御部43は、かご内温度が18℃未満の場合には、かご30内に再現される色温度と照度が2700K、100lx、かご内温度が18℃以上28℃未満の場合には3800K、500lx、28℃以上の場合は7000K、4000lxとなるように、かご照明装置50の色温度と明るさを調整している。なお、クルーゾフの快適領域には幅があるが、記憶部44のテーブルに記憶しておくかご30内に再現される色温度と照度は、快適領域内にあればよく、クルーゾフの快適曲線の中点(図4中直線で示す)であることがより望ましい。
【0041】
クルーゾフ効果に基づいて、パラメーター(かご内温度)に対応するかご30内に再現される色温度と照度を上記のとおり調整することで、かご内温度が低いときには、乗客は暖かい色味の照明により暖かみを感じ、かご内温度が高いときには、冷たい色味の照明により涼しい感じを得るから、快適にかご30に乗車できる。
【0042】
なお、かご30内に再現される色温度と照度の調整は、緩やかな対数変化とすることが望ましいため、かご照明装置50の色温度と明るさの調整は、緩やかな対数変化とすることが好ましい。乗客が違和感を抱くことがないようにするためである。
【実施例
【0043】
以下、エレベーターに関連するパラメーターを種々例示し、これに対応してかご30内の色温度と照度が所望の値となるようにかご照明装置50の色温度と明るさを調整する。なお、本明細書において種々の数値を明示して説明を行なっているが、これら数値は何れも一例であることに留意されたい。
【0044】
<実施例1>
パラメーターをかご内温度とし、かご内温度に基づいてかご30内に再現される色温度と照度を調整する。
【0045】
取得部60は、かご30内の温度を測定するかご内温度センサー61であり、照明制御部43に電気的に接続される(図2及び図3)。かご内温度センサー61は、かご30内に配置してもよいし、エアコンなどの空調機構に温度センサーが搭載されている場合には、当該温度センサーを用いることができる。たとえば、温度測定は、かご30の戸開時毎、或いは、戸閉時毎に実施することができる。
【0046】
表1は、かご内温度と、かご30内に再現される色温度及び照度の対応関係を示す表である。表1ではかご内温度を3つの温度範囲に分け、夫々の温度範囲に最適な調整内容と具体的な設定値の例を示している。温度範囲は2つ以上であれば3つに限定されず、また、各温度に対してリニアに色温度と照度を変化させるようにしてもよい。
【0047】
【表1】
【0048】
なお、表1では、かご内温度が低い温度範囲では、色温度を下げ、照度は色温度を基にクルーゾフ効果に従って調整し(色温度2700K、照度100lx)、高い温度範囲では、色温度が上がるようにして、照度は色温度を基にクルーゾフ効果に従って調整している(色温度7000K、照度4000lx)。
【0049】
中間の温度範囲、すなわち、18℃以上28℃未満については、一例として、かご30内の照度をJIS Z 9110:2010で規定された500lxとし、色温度については、当該照度を基にクルーゾフ効果に従って調整している(3800K)。表1に記載した「かご内で再現される各値の例」に従って、かご30内で再現される色温度と照度を実現できるように、かご照明装置50の色温度と明るさを調整する。表中、かご照明装置50の調整内容を「照明調整内容」に示す。かご30内に再現される照度がJIS規格の規定どおり(500lx)である場合、かご照明装置50の明るさの欄には「変更なし」と記載し、かご30内で再現される色温度に基づいてかご照明装置50の明るさを調整する場合には「かご色温度を基にクルーゾフ効果に従って調整」と記載している。かご照明装置50の色温度についてはかご30内で再現される照度を基に調整する場合「かご照度を基にクルーゾフ効果に従って調整」と記載している。以下の実施例についても、同様である。
【0050】
実施例1によれば、かご内温度が18℃未満と低い場合には、乗客は暖かい色味の照明により暖かみを感じ、かご内温度が28℃以上と高い場合には、冷たい色味の照明により涼しい感じを得るから、快適にかご30に乗車できる。
【0051】
<実施例2>
実施例2は、パラメーターとしてエレベーター10が設置されている環境の外気温度を採用し、外気温度に基づいてかご30内に再現される色温度と照度を調整する。
【0052】
取得部60は、建物11の外に設けられた外気温度を測定する外気温度センサー62であり、照明制御部43に電気的に接続される(図1及び図2)。
【0053】
表2は、外気温度と、かご30内に再現される色温度及び照度の対応関係を示す表である。表1ではかご内温度を3つの温度範囲に分け、夫々の温度範囲に最適な調整内容と具体的な設定値の例を示している。もちろん、温度範囲は2つ以上であれば3つに限定されず、また、各温度に対してリニアに色温度と照度を変化させるようにしてもよい。
【0054】
【表2】
【0055】
なお、表2では、外気温度が低い温度範囲では、色温度を下げて、照度は色温度を基にクルーゾフ効果に従って調整し(色温度2800K、照度150lx)、高い温度範囲では、色温度を上げて、照度は色温度を基にクルーゾフ効果に従って調整している(色温度6000K、照度3000lx)。
【0056】
中間の温度範囲、すなわち、0℃以上25℃未満は、かご30の照度は、たとえば前記JIS規格を満たす照度とし、色温度は照度を基にクルーゾフ効果に従って調整するようにしている(色温度3800K、照度500lx)。
【0057】
実施例2によれば、外気温度が0℃未満の場合には、乗客は暖かい色味の照明により暖かみを感じ、外気温度が25℃以上の場合には、冷たい色味の照明により涼しい感じを得るから、快適にかご30に乗車できる。
【0058】
<実施例3>
実施例3は、パラメーターとしてかご内温度と季節を採用し、これらに対応してかご30内に再現される色温度と照度を調整する。
【0059】
かご内温度は、実施例1と同様、取得部60としてかご内温度センサー61を採用する。また、季節は、気象学的な季節として、たとえば3~5月を春、6~8月を夏、9~11月を秋、12~2月を冬とし、制御装置40等に搭載されているクロック機能を参照して判定する。具体的実施形態を表3に示す。
【0060】
表3では、季節が夏の高温時と、冬の低温時の場合だけ、本発明の調整方法に従ってかご30内の色温度と照度が再現されるようにかご照明装置50を調整している。それ以外の比較的快適な夏の低温時と冬の高温時や、春と冬については、かご照明装置50は、たとえば、かご30に再現される照度を前記JIS規格を満たす明るさとし、色温度はかご30に再現される照度を基に、クルーゾフ効果に従って調整するようにしている。
【0061】
【表3】
【0062】
具体的には、夏と冬は、夫々28℃を境界にして2つの温度範囲に分けている。そして、夏はかご内温度が28°以上の高温の場合について、かご30内に再現される色温度と照度が高い冷たい色味の照明として涼しい感じを得られるようにしている。また。冬はかご内温度が28°未満の低温の場合について、色温度と照度が低い暖かい色味の照明として暖かい感じを得られるようにしている。これにより、乗客は快適にかご30に乗車できる。
【0063】
<実施例4>
実施例4は、パラメーターとしてかご30内の乗客の乗車割合を採用している。乗客の乗車割合を検知する取得部60は、乗車割合検知センサー63であって、たとえば、かご30内の積載量を検知する重量センサー63a(図1図2)やかご30内の混雑度合いを撮影するカメラ63b(図2図3)を例示できる。重量センサー63aは、かご30内の積載量により乗客の乗車割合やかご床占有率を検知できる。また、カメラ63bは、かご30内を撮影し、画像解析により乗客の乗車割合やかご床占有率を検知できる。たとえば、乗車割合をかご床占有率Yとした場合、表4に示すように、乗車割合は、かご床占有率Yが0~37%以下、37%超67%以下、67%超97%以下、97%超の4段階のレベルと規定することができる。各レベルの乗車割合の定義は表4のとおりである。
【0064】
【表4】
【0065】
照明制御部43は、表4の乗車割合検知センサー63から得られた乗車割合(かご床占有率Y)のレベルに応じてかご30内の色温度と照度が再現されるように、かご照明装置50の色温度と明るさを調整する。乗客は、一般的にかご30内の乗車割合が高くなる程、不快を感じる。このため、本実施例では、表5に示すように、乗車割合がレベル3、4となったときに、本発明の調整方法に従ってかご30内に再現される色温度と照度を調整している。なお、かご照明装置50の色温度と明るさはクルーゾフ効果に従って調整している。一方、レベル2以下では、乗車割合は低いから、かご30内に再現される照度は、たとえば、前記JIS規格を満たす照度とし、色温度は照度を基にクルーゾフ効果に従って調整するようにしている。
【0066】
【表5】
【0067】
本実施例によれば、かご30の乗車割合が高くなる程、かご30内に再現される色温度と照度が高い冷たい色味の照明として涼しい感じを得られるようにしている。これにより、乗客は快適にかご30に乗車できる。
【0068】
<実施例5>
本実施例は、パラメーターとして乗場20の照度と温度を採用し、かご30内に再現される色温度と照度を調整する。取得部60は、乗場20の照度を測定する照度センサー64と、乗場20の温度を測定する乗場温度センサー65である。乗場20とは、かご30が次に停止する乗場である。
【0069】
照度センサー64は、乗場ドア21の三方枠付近の高さ1.5m程度(成人の頭から首の高さ)の位置に設置することが望ましい。照度センサー64は、乗客等の影になって正しい照度が測れないことがある。このため、照度センサー64は乗場20に複数設置し、照明制御部43は、得られた測定値から外れ値を除外して乗場20の照度とすることが望ましい。
【0070】
乗場温度センサー65も、乗場ドア21の三方枠付近の高さ1.5m程度に位置に設置することが望ましい。
【0071】
照度センサー64と乗場温度センサー65は、かご呼び又は乗場呼びにより次に停止する階床の乗場20の照度と乗場温度を測定し、照明制御部43に送信する。照明制御部43は、たとえば、乗客がかご30に乗車し、戸閉したときに、次に停止する階床の乗場20の照度と乗場温度を参照し、これら照度と乗場温度に基づいて、かご30内の色温度と照度が再現されるようにかご照明装置50の色温度と明るさを変えながら、次に停止する階床の乗場20まで上昇又は下降する。具体的には、1階で戸開した後、かご呼びにより3階まで移動する場合、1階で戸閉後に3階の照度センサー64と乗場温度センサー65により測定された照度と乗場温度を参照する。そして、照明制御部43は、3階にかご30が到着するまでにかご照明装置50の色温度と明るさを変える。
【0072】
なお、夜間など、戸閉後に長時間(たとえば3時間)、かご30が同じ乗場20に着床し続けている場合、乗場20の照度や乗場温度が変わることが多い。このため、同一階床でかご制御部42が戸開信号を受けることを考慮して、一定時間毎に乗場20の照度と乗場温度を再測定し、都度かご30内に再現される色温度と照度を変更することができる。また、同一階床でかご制御部42が戸開信号を受けたときには、照明制御部43が当該乗場20の照度と乗場温度を改めて参照し、かご30内に再現される色温度と照度を戸開時までに変えるようにしてもよい。もちろん、他の階床で乗場呼びがあった場合には、当該階床まで移動する間に、乗場20の照度と乗場温度を測定し、かご30が着床するまでにかご30内の色温度と照度が調整されるように、かご照明装置50の色温度と明るさを変更すればよい。
【0073】
なお、各乗場20に照度センサー64と乗場温度センサー65を設置するにはコストが掛かる。このため、照度と乗場温度は、エレベーター10の新規据付時に測定し、当該照度と乗場温度でかご30内に再現される色温度と照度が調整されるように、かご照明装置50を制御するようにしてもよい。そして、定期メンテナンス時に改めて各乗場20の照度と温度を測定し、修正するようにすればよい。この場合、照度センサーと乗場温度センサーは、据付時、メンテナンス時に各乗場20に持ち込んで順次測定すればよいから1基ずつで済む。
【0074】
また、各乗場20の照度と乗場温度に加えて、実施例1に示したかご内温度を組み合わせて、かご30内に再現される色温度と照度を調整することもできる。
【0075】
<実施例6>
本実施例は、乗客の荷物を含む色味(以下、「乗客の色味」という)をパラメーターとしている。取得部60は、色味測定センサー66であって、たとえばカメラ63bである。照明制御部43は、たとえばカメラで撮影された画像から乗客及び荷物の画素を抽出し、当該画素の有する色味に関する情報から判断する。画素をRGBの256階調の情報とした場合には、乗客の色味は、階調のピークとなる色とすることができる。
【0076】
照明制御部43は、乗客の色味と、かご30内に再現される色温度及び照度に関するテーブルを有する。テーブルは、たとえば、乗客の色味が暗い場合には、かご30内に再現される色温度と照度を高くしてかご30内を落ち着きのある色味とし、乗客の色味が明るい場合には、色温度と照度を低くしてかご30内を穏やかな色味となる設定とする。
【0077】
具体的には、かご30内にカメラ63b(色味測定センサー66:図2図3)を設置し、かご30内を撮影して、照明制御部43は、乗客の色味を判断する。判断は、戸閉時毎とすることができる。そして、判断された乗客の色味に基づいてかご照明装置50の色温度と明るさを調整する。
【0078】
これにより、暗い色味の利用者が乗車したときに、かご全体が暗い色で占められるが、色温度と照度を高くすることでさわやかな感じを得ることができ、逆に、明るい色味の利用者が乗車したときには、かご30内に再現される色温度と照度を低くして穏やかな感じを得られるようにすることができる。
【0079】
なお、照明制御部43は、荷物を含む乗客の色調(カラートーン)でかご30内に再現される色温度と照度を調整することもできる。
【0080】
また、AI学習を取り入れて、乗客の乗車前後の動画や画像を記憶させ、乗客の乗車による色調の変化がベストな色調となるように、かご30内に再現される色温度と照度を調整することもできる。
【0081】
乗客がまとっている服装や小物、髪色などによって、乗客がきれいに映えるように、かご30内に再現される色温度と照度を調整することもできる。たとえば、寒色系の服装の場合には、色温度と照度を高くし、暖色系の服の場合、色温度と照度を低く設定する。
【0082】
色味測定センサー66は、戸閉時のかご30内のカメラ映像を取得して、乗客の移動方向により、乗降する乗客を区別することが望ましい。乗客の乗降は、重量センサー63aや一般的に乗場ドア21に設置されている光電管や赤外線センサーなどにより判断することもできる。
【0083】
また、乗客の色味の測定に用いる画素の抽出は、無人のかご30内の画像との比較により行なうことができる。
【0084】
その他の実施例として、乗場20に図1に示すようにゲート70や行先階登録装置71を設置したエレベーター10では、ゲート70や行先階登録装置71の近傍に色味測定センサー66を配置している。この実施例では、ゲート70を通過する乗客の色味や、行先階登録装置71を操作する乗客の色味を予め測定し、かご30内に再現される色温度と照度の調整に用いることができる。
【0085】
<実施例7>
本実施例は、エレベーター10の設置された地域の太陽高度に基づいて、かご30内に再現される色温度と照度を調整する。
【0086】
取得部60は、当該地域の日時及び太陽高度を演算可能な構成とする。なお、取得部60は、照明制御部43の一機能であっても構わない。
【0087】
記憶部44のテーブルには、たとえば、エレベーター10の設置された地域の太陽高度が高くなる程、かご30内に再現される色温度と照度が高くなり、太陽高度が低い程、色温度と照度が低くなるような設定値としておく。また、日没から日の出までは、さらに色温度と照度が低くなることが好適である。
【0088】
図5は、東京都の4月1日の太陽高度に基づくテーブルの設定内容をグラフ化したものである。なお、横軸は時刻としている。日の出時刻は5時28分頃、日の入りは18時02分頃であり、南中は11時45分頃である。グラフには、時刻に対応するかご30内の色温度と照度を記載している。
【0089】
図5に従って、かご30内に再現される色温度と照度を調整することで、夕方から朝方にかけては、かご30内は、暖かい色味となり、昼間は、色温度と照度を高くして、涼しい色味となる。
【0090】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0091】
上記実施形態及び実施例では、かご30内で再現すべき色温度と照度をテーブルに記憶させているが、これら色温度と照度を実現するためのかご照明装置50の色温度と明るさをテーブルに記憶させておいてもよい。
【0092】
また、上記実施例の2以上を組み合わせてかご30内の色温度と照度が実現されるように、かご照明装置50を制御するようにしてもよい。
【0093】
なお、かご30内に再現される色温度と照度は、操作盤33等に明るさバーを表示し、図4に示すクルーゾフ効果の快適領域内で、保守員や乗客が調整できることもできる。また、保守員が照明制御部43に端末機器を接続し、明るさバーなどにより図4に示すクルーゾフ効果の快適領域内でかご30内に再現される色温度と照度を調整できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0094】
10 エレベーター
20 乗場
30 かご
40 制御装置
43 照明制御部
50 かご照明装置
60 取得部
61 かご内温度センサー
62 外気温度センサー
63 乗車割合検知センサー
64 照度センサー
65 乗場温度センサー
66 色味測定センサー
【要約】
【課題】本発明は、かご内をより快適な空間とするためのエレベーターのかご照明装置の調整方法を提供する。
【解決手段】本発明のエレベーターのかご照明装置の調整方法は、エレベーター10のかご30内に設置され、前記かご内を照明し、色温度と明るさが調整可能なかご照明装置50と、前記エレベーターに関連するパラメーターを取得する取得部60と、前記パラメーターと、前記かご内に再現される色温度と照度が対応付けられたテーブルを記憶した記憶部44を有する、エレベーターのかご照明装置の調整方法であって、前記取得部から前記パラメーターを得て、前記パラメーターに対応して前記かご内に再現される色温度と照度を前記記憶部の前記テーブルから読み出し、前記かご内が、前記色温度と前記照度となるように前記かご照明装置の色温度と明るさを調整する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5