(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】紙巻取装置及び紙巻取方法
(51)【国際特許分類】
B65H 19/26 20060101AFI20250212BHJP
【FI】
B65H19/26
(21)【出願番号】P 2024532845
(86)(22)【出願日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2023010427
(87)【国際公開番号】W WO2024189922
(87)【国際公開日】2024-09-19
【審査請求日】2024-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 恭弘
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-035969(JP,A)
【文献】特開平02-249848(JP,A)
【文献】特開2017-052571(JP,A)
【文献】特開平02-123078(JP,A)
【文献】特開平11-226640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を巻き取る紙巻取装置であって、
回転軸を中心に旋回する第1アームに設けられた前記紙が巻き取られるべき対象の第1巻き芯と、
前記第1巻き芯を駆動させる第1モータと、
前記回転軸を中心に旋回する第2アームに設けられた前記第1巻き芯の次に前記紙が巻き取られるべき対象の第2巻き芯と、
前記第2巻き芯を駆動させる第2モータと、
前記第1モータ及び前記第2モータの回転制御を行う制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記回転制御において、
前記第1巻き芯による前記紙の巻き取り完了後、且つ、前記第2アームの旋回により前記第2巻き芯の位置が前記紙を巻き取るべき位置となった後の前記第2巻き芯付近の前記紙を切断するトラバースカッターの動作中おいて、前記第2モータのトルク値がトルク基準値以上の場合、前記第2モータの制御モードを速度制御からトルク制御に切り替えるとともに、前記紙の張力が目標範囲内となるように前記第2モータの
前記トルク値を調節する張力補正制御を行うように構成され
、
前記トルク基準値は、前記第2巻き芯に前記紙が巻き取られる直前の前記第1巻き芯の前記紙の巻き取り時における前記紙の張力が前記目標範囲内であるときの前記第1モータのトルク値である
ことを特徴とする紙巻取装置。
【請求項2】
紙を巻き取る紙巻取装置であって、
回転軸を中心に旋回する第1アームに設けられた前記紙が巻き取られるべき対象の第1巻き芯と、
前記第1巻き芯を駆動させる第1モータと、
前記回転軸を中心に旋回する第2アームに設けられた前記第1巻き芯の次に前記紙が巻き取られるべき対象の第2巻き芯と、
前記第2巻き芯を駆動させる第2モータと、
前記第1モータ及び前記第2モータの回転制御を行う制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記回転制御において、
前記第1巻き芯による前記紙の巻き取り完了後、且つ、前記第2アームの旋回により前記第2巻き芯の位置が前記紙を巻き取るべき位置となった後の前記第2巻き芯付近の前記紙を切断するトラバースカッターの動作中おいて、前記第2モータのトルク値がトルク基準値以上の場合、前記第2モータの制御モードを速度制御からトルク制御に切り替えるとともに、前記紙の張力が目標範囲内となるように前記第2モータの前記トルク値を調節する張力補正制御を行うように構成され、
前記トルク基準値は、前記第2巻き芯に前記紙が巻き取られる直前の前記第1モータのトルク値に少なくとも前記第2モータの機械損失を足し込んだ値である
ことを特徴とする紙巻取装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の紙巻取装置であって、
前記機械損失は、前記第2モータの駆動中において定期的に更新される
ことを特徴とする紙巻取装置。
【請求項4】
請求項1
又は2に記載の紙巻取装置であって、
前記制御装置は、前記回転制御において、更に、
前記第2モータの前記制御モードを速度制御からトルク制御への切り替え後、且つ、前記トラバースカッターの動作完了後において、前記第1モータの駆動を停止させるように前記第1モータの制御モードを設定するように構成されている
ことを特徴とする紙巻取装置。
【請求項5】
紙を巻き取る紙巻取方法であって、
回転軸を中心に旋回する第1アームに設けられた前記紙が巻き取られるべき対象の第1巻き芯による前記紙の巻き取り完了後、且つ、前記回転軸を中心に旋回する第2アームに設けられた前記第1巻き芯の次に前記紙が巻き取られるべき対象の第2巻き芯の位置が前記紙を巻き取るべき位置となった後の前記第2巻き芯付近の前記紙を切断するトラバースカッターの動作中おいて、前記第2巻き芯を駆動させる第2モータのトルク値がトルク基準値以上か否かを判定することと、
前記第2モータの前記トルク値が前記トルク基準値以上と判定された場合、前記第2モータの制御モードを速度制御からトルク制御に切り替えることと、
前記紙の張力が目標範囲内となるように前記第2モータの
前記トルク値を調節する張力補正制御を行うことと、
を含
み、
前記トルク基準値は、前記第2巻き芯に前記紙が巻き取られる直前の前記第1巻き芯の前記紙の巻き取り時における前記紙の張力が前記目標範囲内であるときの前記第1巻き芯を駆動させる第1モータのトルク値である
ことを特徴する紙巻取方法。
【請求項6】
紙を巻き取る紙巻取方法であって、
回転軸を中心に旋回する第1アームに設けられた前記紙が巻き取られるべき対象の第1巻き芯による前記紙の巻き取り完了後、且つ、前記回転軸を中心に旋回する第2アームに設けられた前記第1巻き芯の次に前記紙が巻き取られるべき対象の第2巻き芯の位置が前記紙を巻き取るべき位置となった後の前記第2巻き芯付近の前記紙を切断するトラバースカッターの動作中おいて、前記第2巻き芯を駆動させる第2モータのトルク値がトルク基準値以上か否かを判定することと、
前記第2モータの前記トルク値が前記トルク基準値以上と判定された場合、前記第2モータの制御モードを速度制御からトルク制御に切り替えることと、
前記紙の張力が目標範囲内となるように前記第2モータの前記トルク値を調節する張力補正制御を行うことと、
を含み、
前記トルク基準値は、前記第2巻き芯に前記紙が巻き取られる直前の前記第1巻き芯を駆動させる第1モータのトルク値に少なくとも前記第2モータの機械損失を足し込んだ値である
ことを特徴とする紙巻取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、紙の巻き取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、紙やフィルム等の帯状のシート状物であるウエブを複数の巻取ロールにより連続的に巻き取る技術を開示する。この従来技術では、ウエブが巻き取られるべき巻取ロールの交換が行われるときにウエブが切断される。具体的には、ウエブが新たに巻き取られるべき巻き芯の外周面にウエブが接した状態で当該ウエブが切断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の巻き芯で紙を連続的に巻き取る場合、巻き芯による紙の巻き取りが完了した後の巻取ロールの交換時における紙の切断にはトラバースカッターが使用されることがある。トラバースカッターによる紙の切断時において、当該巻取ロールと紙を巻き取るべき新たな巻き芯がともに紙を巻き取る状態が発生する。
【0005】
この場合、トラバースカッターによる紙の切断時における新たな巻き芯が紙を巻き取るのに適した動作状態でない場合、新たな巻き芯に巻き取られる紙にシワや紙の巻き崩れ等が生じるおそれがある。
【0006】
本開示の1つの目的は、巻取ロールの交換時における新たな巻き芯による紙の巻き取りの安定性を向上させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の観点は、紙を巻き取る紙巻取装置に関連する。紙巻取装置は、回転軸を中心に旋回する第1アームに設けられた紙が巻き取られるべき対象の第1巻き芯と、第1巻き芯を駆動させる第1モータと、回転軸を中心に旋回する第2アームに設けられた第1巻き芯の次に紙が巻き取られるべき対象の第2巻き芯と、第2巻き芯を駆動させる第2モータと、第1モータ及び第2モータの回転制御を行う制御装置と、を備える。制御装置は、回転制御において、第1巻き芯による紙の巻き取り完了後、且つ、第2アームの旋回により第2巻き芯の位置が紙を巻き取るべき位置となった後の第2巻き芯付近の紙を切断するトラバースカッターの動作中おいて、第2モータのトルク値がトルク基準値以上の場合、第2モータの制御モードを速度制御からトルク制御に切り替えるとともに、紙の張力が目標範囲内となるように第2モータのトルク値を調節する張力補正制御を行う。トルク基準値は、第1巻き芯の紙の巻き取り時における紙の張力が目標範囲内であるときの第1モータのトルク値である。
【0008】
本開示の第2の観点は、紙を巻き取る紙巻取装置に関連する。紙巻取装置は、回転軸を中心に旋回する第1アームに設けられた紙が巻き取られるべき対象の第1巻き芯と、第1巻き芯を駆動させる第1モータと、回転軸を中心に旋回する第2アームに設けられた第1巻き芯の次に紙が巻き取られるべき対象の第2巻き芯と、第2巻き芯を駆動させる第2モータと、第1モータ及び第2モータの回転制御を行う制御装置と、を備える。制御装置は、回転制御において、第1巻き芯による紙の巻き取り完了後、且つ、第2アームの旋回により第2巻き芯の位置が紙を巻き取るべき位置となった後の第2巻き芯付近の紙を切断するトラバースカッターの動作中おいて、第2モータのトルク値がトルク基準値以上の場合、第2モータの制御モードを速度制御からトルク制御に切り替えるとともに、紙の張力が目標範囲内となるように第2モータのトルク値を調節する張力補正制御を行う。トルク基準値は、更に、第1モータのトルク値に少なくとも第2モータの機械損失を足し込んだ値である。
【0009】
本開示の第3の観点は、第2の観点に加えて、次の特徴を更に有する。機械損失は、第2モータの駆動中において定期的に更新される。
【0010】
本開示の第4の観点は、第1又は第2の観点に加えて、次の特徴を更に有する。制御装置は、回転制御において、更に、第2モータの制御モードを速度制御からトルク制御への切り替え後、且つ、トラバースカッターの動作完了後において、第1モータの駆動を停止させるように第1モータの制御モードを設定する。
【0011】
本開示の第5の観点は、紙を巻き取る紙巻取方法に関連する。紙巻取方法は、回転軸を中心に旋回する第1アームに設けられた紙が巻き取られるべき対象の第1巻き芯による紙の巻き取り完了後、且つ、回転軸を中心に旋回する第2アームに設けられた第1巻き芯の次に紙が巻き取られるべき対象の第2巻き芯の位置が紙を巻き取るべき位置となった後の第2巻き芯付近の紙を切断するトラバースカッターの動作中おいて、第2巻き芯を駆動させる第2モータのトルク値がトルク基準値以上か否かを判定することと、第2モータのトルク値がトルク基準値以上と判定された場合、第2モータの制御モードを速度制御からトルク制御に切り替えることと、紙の張力が目標範囲内となるように第2モータのトルク値を調節する張力補正制御を行うことと、を含む。トルク基準値は、第1巻き芯の紙の巻き取り時における紙の張力が目標範囲内であるときの第1巻き芯を駆動させる第1モータのトルク値である。
【0012】
本開示の第6の観点は、紙を巻き取る紙巻取方法に関連する。紙巻取方法は、回転軸を中心に旋回する第1アームに設けられた紙が巻き取られるべき対象の第1巻き芯による紙の巻き取り完了後、且つ、回転軸を中心に旋回する第2アームに設けられた第1巻き芯の次に紙が巻き取られるべき対象の第2巻き芯の位置が紙を巻き取るべき位置となった後の第2巻き芯付近の紙を切断するトラバースカッターの動作中おいて、第2巻き芯を駆動させる第2モータのトルク値がトルク基準値以上か否かを判定することと、第2モータのトルク値がトルク基準値以上と判定された場合、第2モータの制御モードを速度制御からトルク制御に切り替えることと、紙の張力が目標範囲内となるように第2モータのトルク値を調節する張力補正制御を行うことと、を含む。トルク基準値は、更に、第1巻き芯を駆動させる第1モータのトルク値に少なくとも第2モータの機械損失を足し込んだ値である。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、紙を切断するトラバースカッターの動作時おいて、第2モータのトルク値がトルク基準値以上の場合、第2モータの制御モードを速度制御からトルク制御に切り替えるとともに、紙の張力が目標範囲内となるように第2モータのトルク値を調節する張力補正制御が行われる。これにより、巻取ロールの交換時における新たな巻き芯による紙の巻き取りの安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態に係る紙巻取装置の概要を説明するための図である。
【
図2】実施の形態に係る紙巻取装置の概要を説明するための図である。
【
図3】実施の形態に係る紙巻取装置の具体例を説明するための図である。
【
図4】実施の形態に係る紙巻取装置の具体例を説明するための図である。
【
図5】実施の形態に係る紙巻取装置の処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態に係る紙巻取装置、及び紙巻取方法について説明する。また、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0016】
1.概要
1-1.紙巻取装置の構成
【0017】
図1は、実施の形態に係る紙巻取装置1の概要を説明するための図である。紙巻取装置1は、複数の巻き芯により紙50を連続的に巻き取るターレット式の装置である。紙50は、例えば、800μm等の厚さを有する厚紙である。紙巻取装置1は、紙巻取機構部2と、紙切断部3と、制御装置100とを備えている。
【0018】
紙巻取機構部2は、アーム部10(第1アーム10a、第2アーム10b、第3アーム10c、第4アーム10d)を含んでいる。各アームのそれぞれは、各アームの一端に設けられた回転軸10eを中心に少なくとも一方向に旋回する機構を有している。これらのアームは、
図1(A)に示すように、十字形状の構造であってもよい。
【0019】
各アームのそれぞれは、紙巻取装置1の運転開始後、所定のタイミングごとに所定角度の旋回を繰り返し行う。あるいは、後述する制御装置100による旋回指示を受けて所定角度の旋回を行う。
【0020】
第1アーム10aの他端には、第1巻き芯11が設けられている。また、第2アーム10bの他端には、第2巻き芯12が設けられている。第3アーム10cの他端には、ガイドローラ13が設けられている。そして、第4アーム10dの他端には、ガイドローラ14が設けられている。
【0021】
第1巻き芯11は、紙50が巻き取られるべき対象の巻き芯である。第2巻き芯12は、第1巻き芯11の次に紙50が巻き取られるべき対象の巻き芯である。第2巻き芯12は、例えば、
図1(A)に示すように、回転軸10eを介して、第1巻き芯11の反対側に位置している。第1巻き芯11及び第2巻き芯12のいずれか一方の巻き芯の位置が紙50を巻き取るべき位置であるとき、紙50が当該巻き芯により巻き取られる。紙50を巻き取るべき位置は、例えば、
図1(A)に示す第1巻き芯11の位置である。
【0022】
ガイドローラ14は、第1巻き芯11による紙50の巻き取り完了後、且つ、第2アーム10bの旋回により第2巻き芯12の位置が紙50を巻き取るべき位置となってから紙50が切断されるまでの間において、第1巻き芯11に巻き取られる紙50を案内する。図示は省略するが、ガイドローラ13は、第2巻き芯12による紙50の巻き取り完了後、且つ、第1アーム10aの旋回により再び第1巻き芯11の位置が紙50を巻き取るべき位置となってから紙50が切断されるまでの間において、第2巻き芯12に巻き取られる紙50を案内する。
【0023】
紙巻取機構部2は、更に、第1モータ21と、第2モータ22とを含んでいる。第1モータ21は、第1巻き芯11を駆動させるモータであり、第1巻き芯11に固定して取り付けられている。第2モータ22は、第2巻き芯12を駆動させるモータであり、第2巻き芯12に固定して取り付けられている。第1モータ21及び第2モータ22は、後述する制御装置100による指令を受けて、駆動開始、または駆動停止を行う。
【0024】
第1巻き芯11及び第2巻き芯12のいずれか一方の巻き芯の位置が紙50を巻き取るべき位置であるときにおいて、当該巻き芯に対応するモータを駆動させることにより、当該巻き芯による紙50の巻き取りが実現される。
【0025】
紙切断部3は、第1タッチアーム30と、第2タッチアーム40とを含んでいる。第1タッチアーム30は、切断後の紙50を第2巻き芯12が巻き取れるように、紙50の切断時において、第2巻き芯12の外周面に紙50を押さえ付けるための機械装置である。
【0026】
第1タッチアーム30は、第1タッチアーム30の一端に設けられた回転軸30aを基準として旋回する機構を有している。ここで、
図1の視点で第1タッチアーム30が時計回り方向に旋回する動作を前進と称し、
図1の視点で第1タッチアーム30が反時計周り方向に旋回する動作を後退と称す。第1タッチアーム30は、紙50の切断前に前進し、紙50の切断後に後退する。
【0027】
具体的には、第1タッチアーム30は、
図1(B)に示すように、紙巻取機構部2の動作完了と同時に前進する。また、第1タッチアーム30は、後述するトラバースカッター40cによる紙50の切断完了と同時に後退する。
【0028】
第1タッチアーム30は、前進時において、第1タッチアーム30の他端に設けられたニップロール30bにより第2巻き芯12の外周面に紙50を押さえ付ける。これにより、切断後の紙50を第2巻き芯12が巻き取れるようになる。
【0029】
第2タッチアーム40は、紙50を切断する機械装置である。第2タッチアーム40は、第2タッチアーム40の一端に設けられた回転軸40aを基準として旋回する機構を有している。
図1の視点で第2タッチアーム40が反時計周り方向に旋回する動作を前進と称し、
図1の視点で第2タッチアーム40が時計周り方向に旋回する動作を後退と称す。第2タッチアーム40は、紙50の切断前に前進し、紙50の切断後に後退する。
【0030】
具体的には、第2タッチアーム40は、
図1(B)に示すように、紙巻取機構部2の動作完了と同時に前進する。また、第2タッチアーム40は、後述するトラバースカッター40cによる紙50の切断完了と同時に後退する。
【0031】
第2タッチアーム40は、第2タッチアーム40の他端に設けられた第2巻き芯12を嵌め込んで固定することが可能な巻き芯固定具40bを有しており、紙50の切断時において第2巻き芯12が巻き芯固定具40bにより固定される。
【0032】
第2タッチアーム40は、第2タッチアーム40の一端と第2タッチアーム40の他端との間に設けられたトラバースカッター40cを有している。トラバースカッター40cは、紙50を切断する切断機である。トラバースカッター40cは、紙50の切断時以外は第2タッチアーム40に収納されており、紙50の切断時にのみ用いられる。トラバースカッター40cの使用中のイメージは、例えば、
図1(B)のように表される。
【0033】
トラバースカッター40cは、第2巻き芯12が紙50を巻き取るべき位置となった後の第2巻き芯12付近の紙50を切断する。紙50を切断する位置は、例えば、
図1(B)に示すように、第2タッチアーム40の一端(回転軸40a)と第2タッチアーム40の他端(巻き芯固定具40b)との間であり、且つ、第2巻き芯12付近の位置である。トラバースカッター40cによる紙50の切断方法の概要については後述する。
【0034】
制御装置100は、第1モータ21及び第2モータ22の回転制御を行うコントローラである。コントローラは、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)である。また、制御装置100は、第1モータ21及び第2モータ22を駆動するドライバを含んでいる。更に、制御装置100は、紙巻取プログラム(不図示)を格納している。制御装置100が紙巻取プログラムを実行することにより、第1モータ21及び第2モータ22の回転制御の機能が実現される。
【0035】
制御装置100は、第1モータ21と、第2モータ22と、アーム部10と、第1タッチアーム30と、第2タッチアーム40とにそれぞれ接続している。制御装置100と各機器との間のそれぞれは、例えば、ケーブルで接続されている。
【0036】
制御装置100は、少なくとも第2アーム10bの旋回開始フラグをアーム部10から受信する。また、制御装置100は、少なくとも第1タッチアーム30の前進開始フラグを第1タッチアーム30から受信する。更に、制御装置100は、少なくとも第2タッチアーム40の後退開始フラグを第2タッチアーム40から受信する。制御装置100による第1モータ21及び第2モータ22の回転制御の詳細については後述する。
【0037】
1-2.トラバースカッターの動作例
図2は、実施の形態に係る紙巻取装置1におけるトラバースカッター40cの切断方法の概要を説明するための図である。具体的には、
図2には、第1巻き芯11による紙50の巻き取り完了後、且つ、第2アーム10bの旋回により第2巻き芯12の位置が紙50を巻き取るべき位置となった後の第2巻き芯12付近の紙50を切断するトラバースカッター40cの動作例が時系列で示されている。
【0038】
トラバースカッター40cは、
図2に示すように、ニップロール30bにより第2巻き芯12の外周面に紙50を押さえ付けた状態で、紙50の長手方向に直交する方向(切断方向)に紙50を切断する。トラバースカッター40cの切断速度は紙50の巻き取り速度に合わせられているので、第1巻き芯11に巻き取られている紙50はトラバースカッター40cにより巻き取り方向に対して斜め45度に切断される。
【0039】
また、トラバースカッター40cには、切断方向に対して可動範囲60が設けられている。トラバースカッター40cは、
図2に示すように、可動範囲60に従って紙50を切断する。尚、紙50の幅をW[m]、第1巻き芯11に巻き取られている紙50の速度をV[m/min]としたとき、トラバースカッター40cの切断時間は、以下の式(1)で表される。
【0040】
【0041】
例えば、紙50の幅が2.01[m]であり、紙50の速度を20[m/min]としたとき、トラバースカッター40cの切断時間は、6.03[s]となる。
【0042】
トラバースカッター40cによる紙50の切断後、2つに分離された紙50のそれぞれは、第1巻き芯11と第2巻き芯12のそれぞれに巻き取られる。これにより、紙巻取装置1の運転を連続的に動作させた状態で第1巻き芯11による紙50の巻き取りが完了した後の巻取ロールを交換することができる。
【0043】
2.具体例
2-1.モータの回転制御例
図3は、実施の形態に係る紙巻取装置1の具体例を説明するための図である。具体的には、
図3は、紙巻取装置1の制御装置100における第1モータ21と第2モータ22の回転制御例を示している。尚、
図3(A)に示す部分の処理は、機械動作が連鎖的に行われ、制御装置100による制御は行われない。これを踏まえ、以下、制御装置100による第1モータ21と第2モータ22の回転制御例を説明する。
【0044】
制御装置100は、
図3(B)に示すタイミングにおいて、第1巻き芯11による紙50の巻き取り完了後における第2アーム10bの旋回開始フラグをアーム部10から受信する。
【0045】
そして、制御装置100は、第2モータ22を駆動させるように第2モータ22の制御モードを設定する。具体的には、制御装置100は、第2モータ22の制御モードを速度制御に設定する。速度制御とは、モータの回転速度を目標速度の範囲内で駆動させるように制御することである。
【0046】
第2モータ22の制御モードが速度制御に設定された場合、第2モータ22の駆動状態は、停止状態、加速状態の順に遷移される。これにより、第2モータ22を駆動させることができる。その後、第2モータ22は、第2モータ22の速度が目標速度の範囲内で駆動するように制御される。
【0047】
また、制御装置100は、トラバースカッター40cの動作中、且つ、第2モータ22のトルク値が所定の条件を満たすタイミングにおいて、第2モータ22の制御モードを速度制御からトルク制御に切り替える。トルク制御とは、モータの発生トルクを目標トルクの範囲内で駆動させるように制御することである。
【0048】
トラバースカッター40cの動作中、且つ、第2モータ22のトルク値が所定の条件を満たすタイミングとは、例えば、
図3(C)に示す位置である。所定の条件とは、第2モータ22のトルク値がトルク基準値以上である条件を意味する。トルク基準値の設定の詳細については後述する。
【0049】
ここで、トラバースカッター40cの動作中のタイミングを制御装置100が把握する方法について考える。トラバースカッター40cの動作中の時間帯は、上述した式(1)により算出される。従って、制御装置100は、トラバースカッター40cの動作開始時刻のみを把握すればよい。トラバースカッター40cの動作開始時刻は、例えば、第1巻き芯11の紙50の巻き取り完了後における第2アーム10bの旋回開始時刻(
図3(B)に示すタイミング)に所定の時間帯(第1時間帯)を足し込んだ時刻である。あるいは、第1タッチアーム30の前進開始時刻(
図3(D)に示すタイミング)に所定の時間帯(第2時間帯)を足し込んだ時刻である。
【0050】
尚、第1時間帯及び第2時間帯は、予め決められた時間帯の情報であってもよいし、計測により取得された時間帯の情報であってもよい。
【0051】
これを踏まえ、制御装置100は、第2アーム10bから受信される第2アーム10bの旋回開始フラグを第2アーム10bの旋回開始時刻として設定する。あるいは、第1タッチアーム30から受信される第1タッチアーム30の前進開始フラグを第1タッチアーム30の前進開始時刻として設定する。そして、制御装置100は、第2アーム10bの旋回開始時刻に第1時間帯を足し込む。あるいは、第1タッチアーム30の前進開始時刻に第2時間帯を足し込む。これにより、制御装置100がトラバースカッター40cの動作開始時刻を把握することができる。
【0052】
更に、制御装置100は、トラバースカッター40cの動作中、且つ、第2モータ22のトルク値が上述した所定の条件を満たすタイミングにおいて、第2モータ22に対する張力補正制御を行う。すなわち、制御装置100は、当該タイミングにおいて、第2モータ22の制御モードを速度制御からトルク制御に切り替えるとともに、第2モータ22に対する張力補正制御を行う。張力補正制御とは、紙50の張力が目標範囲内となるようにモータのトルク値を調節することである。
【0053】
また、制御装置100は、第2モータ22の制御モードを速度制御からトルク制御に切り替え後、且つ、トラバースカッター40cの動作完了後において、第1モータ21の駆動を停止させるように第1モータ21の制御モードを設定する。具体的には、制御装置100は、第1モータ21の制御モードをトルク制御から停止に切り替える。第1モータ21の制御モードが停止に設定された場合、第1モータ21の駆動状態は、減速状態及、停止状態の順に遷移される。これにより、第1モータ21の駆動を停止させることができる。
【0054】
ここで、トラバースカッター40cの動作完了時刻を制御装置100が把握する方法について考える。トラバースカッター40cの動作完了時刻は、例えば、第2タッチアーム40の後退開始時刻(
図3(E)に示すタイミング)であってもよい。制御装置100は、第2タッチアーム40から受信される第2タッチアーム40の後退開始フラグを第2タッチアーム40の後退開始時刻として設定する。これにより、制御装置100がトラバースカッター40cの動作完了時刻を把握することができる。
【0055】
2-2.トルク基準値の設定例
制御装置100は、
図4に示すように、第2モータ22の駆動開始後、トルク基準値を設定する。トルク基準値は、第1巻き芯11の紙50の巻き取り時における紙50の張力が目標範囲内であるときの第1モータ21のトルク値である。トルク基準値の設定に用いられる第1モータ21のトルク値は、予め決められたデータであってもよいし、第2巻き芯12に紙50が巻き取られる直前の第1巻き芯11から取得されたデータであってもよい。
【0056】
更に、トルク基準値は、第1モータ21のトルク値に少なくとも第2モータ22の機械損失を足し込んだ値であってもよい。機械損失とは、モータの回転速度に依存する機械損を意味する。機械損失は、第2モータ22の個体差によって異なり、第2モータ22の駆動中において定期的に計算される。そして、トルク基準値の設定に用いられる機械損失が定期的に更新される。
【0057】
また、制御装置100は、トラバースカッター40cの動作中において、第2モータ22のトルク値がトルク基準値以上か否かを判定する。第2モータ22のトルク値がトルク基準値以上と判定された場合、制御装置100は、
図4に示すように、第2モータ22の制御モードを速度制御からトルク制御に切り替える。更に、制御装置100は、
図4に示すように、第2モータ22の制御モードを速度制御からトルク制御に切り替えるとともに、第2モータ22に対する張力補正制御を行う。
【0058】
2-3.効果
このように、実施の形態に係る紙巻取装置1では、トラバースカッター40cの動作中おいて、第2モータ22のトルク値がトルク基準値以上の場合、第2モータ22の制御モードを速度制御からトルク制御に切り替えるとともに、紙50の張力が目標範囲内となるように第2モータ22のトルク値を調節する張力補正制御が行われる。これにより、巻取ロールの交換時における新たな巻き芯による紙50の巻き取りの安定性を向上させることができる。
【0059】
3.処理例
図5は、実施の形態に係る紙巻取装置1における制御装置100の処理例を示すフローチャートである。
【0060】
ステップS100において、制御装置100は、第2アーム10bの旋回開始フラグに基づいて、第2モータ22の制御モードを速度制御に設定する。その後、処理はステップS110に進む。
【0061】
ステップS110において、制御装置100は、第2モータ22の回転制御を行うためのトルク基準値を設定する。その後、処理はステップS120に進む。
【0062】
ステップS120において、制御装置100は、トラバースカッター40cの動作中か否かを判定する。トラバースカッター40cの動作中であると判定された場合(ステップS120;Yes)、処理はステップS130に進む。それ以外の場合(ステップS120;No)、処理はステップS120に戻る。
【0063】
ステップS130において、制御装置100は、第2モータ22のトルク値がトルク基準値以上か否かを判定する。第2モータ22のトルク値がトルク基準値以上であると判定された場合(ステップS130;Yes)、処理はステップS140に進む。それ以外の場合(ステップS130;No)、処理はステップS130に戻る。
【0064】
ステップS140において、制御装置100は、第2モータ22の制御モードを速度制御からトルク制御に切り替える。その後、処理はステップS150に進む。
【0065】
ステップS150において、制御装置100は、第2モータ22に対する張力補正制御を実行する。その後、処理はステップS160に進む。尚、ステップS150の処理は、上述したステップS140の処理と同時に行われる。
【0066】
ステップS160において、制御装置100は、第1モータ21の制御モードをトルク制御から停止に切り替える。
【符号の説明】
【0067】
1…紙巻取装置、2…紙巻取機構部、3…紙切断部、10…アーム部、10a…第1アーム、10b…第2アーム、10c…第3アーム、10d…第4アーム、11…第1巻き芯、12…第2巻き芯、13…ガイドローラ、21…第1モータ、22…第2モータ、30…第1タッチアーム、30a…回転軸、30b…ニップロール、40…第2タッチアーム、40a…回転軸、40b…巻き芯固定具、40c…トラバースカッター、50…紙、60…可動範囲、100…制御装置