(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】無人搬送車
(51)【国際特許分類】
B66F 9/06 20060101AFI20250212BHJP
B66F 7/06 20060101ALI20250212BHJP
B65G 1/00 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
B66F9/06 Z
B66F7/06 F
B66F7/06 B
B65G1/00 501C
(21)【出願番号】P 2024554882
(86)(22)【出願日】2024-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2024032789
【審査請求日】2024-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2023174121
(32)【優先日】2023-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】米野 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】上野 俊幸
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-072893(JP,U)
【文献】実開昭61-176197(JP,U)
【文献】特開2023-107186(JP,A)
【文献】実開昭56-171374(JP,U)
【文献】特開2020-077295(JP,A)
【文献】実開平06-063580(JP,U)
【文献】実開昭49-086554(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/06
B66F 7/06
B66F 5/00
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動車輪を備えて走行自在に構成された台車と、
該台車に昇降自在に設けられた昇降装置と、を備え、
前記昇降装置は、
荷を載置する荷載置部を有し、下面に前記台車の走行面に平行なカムフォロアガイド面を備えた装置昇降部と、
該装置昇降部の下方定位置に固定され、前記台車の走行面に平行な方向に延在するカムフォロアガイド溝を有する装置基礎部と、
中間部がピン接合され、接合部分を中心として互いに回動自在にX字状に連結された第1、第2のリンクアームを有し、前記第1のリンクアームの第1の端部が前記装置昇降部の定位置に回動自在に支持され、前記第1のリンクアームの第2の端部に第1のカムフォロアが設けられると共に、該第1のカムフォロアが前記カムフォロアガイド溝に係合され、前記第2のリンクアームの第1の端部が前記装置基礎部の定位置に回動自在に支持され、前記第2のリンクアームの第2の端部に第2のカムフォロアが設けられると共に、該第2のカムフォロアが前記カムフォロアガイド面に係合されたリンク機構と、
前記第1のカムフォロアを前記平行な方向に移動させる駆動機構と、を備え、
前記駆動機構は、
前記装置基礎部に設けられ、前記平行な方向に延在する螺子軸と、
該螺子軸に螺着され、該螺子軸に対し相対的回動不可能に支持され、前記第1のカムフォロアが設けられた移動部材と、
前記螺子軸を回転駆動する駆動源と、
を備え
、
前記装置昇降部は、下面に前記第2のカムフォロアが係合された昇降部本体と、この昇降部本体に載置された荷受け台と、この荷受け台の前記台車の進行方向前後の一端に回動自在に連結され下端が前記台車上面に摺動自在に当接させたカバーとを備える、無人搬送車。
【請求項2】
前記移動部材には前記台車の走行方向に向けて前記第1のカムフォロアと間隔を空けて、前記カムフォロアガイド溝に係合させて補助カムフォロアが設けられている、請求項1に記載の無人搬送車。
【請求項3】
前記移動部材は、前記台車の幅方向に延在するように設けられ、前記移動部材の左右両端にそれぞれ前記リンク機構が設けられている、請求項1または2に記載の無人搬送車。
【請求項4】
前記台車の進行方向に間隔を空けて第1、第2の前記昇降装置が設けられる、請求項3に記載の無人搬送車。
【請求項5】
前記第1のカムフォロアは、前記カムフォロアガイド溝内に配置される外輪と固定軸部とを備え、前記固定軸部は、前記移動部材に固定され、
前記移動部材には、前記固定軸部を囲む円筒状壁部が設けられ、前記第1のリンクアームは、前記円筒状壁部周りに回動自在に取り付けられている、請求項1または2に記載の無人搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場や物流の現場では、荷物の搬送に人手を介さず自動的に物資の移動を可能とする無人搬送車が利用されている。ここで利用されている無人搬送車には、昇降装置を備えているものがある。この昇降装置付きの無人搬送車は、対象とする荷、例えばボックスパレット等の下に潜り込んだ後、昇降装置で荷を持ち上げ次の搬送場所へ荷を搬送する。例えば、特許文献1には、パンタグラフ機構のリンクの伸び縮みを、モータで駆動されるウォームジャッキの螺子を上下させることにより、荷を昇降させる無人搬送車用のリフトテーブルが開示されている。特許文献2には、リンク機構の揺動支点部材に設けた雌螺子部材とこの雌螺子部材に螺合する雄螺子部材をモータにより駆動することによって雌螺子部材を介して揺動支点を移動させリンク機構の昇降動作を行う誘導式無人車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-244897号公報
【文献】特開昭59-220446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで昇降装置には、低いパスライン、あるいは多種多様なパスラインに対応して荷を昇降することが求められている。これに対して、特許文献1に記載のリフトテーブルでは、昇降動作に垂直移動を伴うウォームジャッキを採用しているため、ウォームジャッキ高さにより昇降装置の扁平化と高ストローク化の両立が困難な場合がある。また、ジャッキストロークの入力軸に対して、モータの出力軸が同心軸上で接続されているため、モータの位置が装置の中腹となってしまいモータの大きさによっては昇降装置の高さ寸法に影響をおよぼす場合がある。このことは、無人搬送車の扁平化を妨げ、荷のパスラインによっては、無人搬送車が対象とする荷に潜り込めないことや、複数のパスラインの差分によっては、それぞれ異なった無人搬送車を用意する必要が生じる等の問題が懸念される。特許文献2に記載の昇降装置では、モータや回転螺軸などからなる水平直動機構が揺動支点と連結されているため、水平直動機構の位置が揺動支点の位置に依存してしまい、昇降装置の高さ寸法に影響をおよぼす場合があるので、上述の特許文献1と同様の問題が懸念される。
【0005】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、昇降装置の駆動機構を低い位置に配置することによって、高ストロークかつ扁平な昇降装置を実現し、この昇降装置を搭載することで無人搬送車の低床化を実現し、低パスラインの荷への適合と1台の同一車両で多種多様な荷のパスラインに対応することができる無人搬送車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の無人搬送車は、駆動車輪を備えて走行自在に構成された台車と、該台車に昇降自在に設けられた昇降装置と、を備え、前記昇降装置は、荷を載置する荷載置部を有し、下面に前記台車の走行面に平行なカムフォロアガイド面を備えた装置昇降部と、該装置昇降部の下方定位置に固定され、前記台車の走行面に平行な方向に延在するカムフォロアガイド溝を有する装置基礎部と、中間部がピン接合され、接合部分を中心として互いに回動自在にX字状に連結された第1、第2のリンクアームを有し、前記第1のリンクアームの第1の端部が前記装置昇降部の定位置に回動自在に支持され、前記第1のリンクアームの第2の端部に第1のカムフォロアが設けられると共に、該第1のカムフォロアが前記カムフォロアガイド溝に係合され、前記第2のリンクアームの第1の端部が前記装置基礎部の定位置に回動自在に支持され、前記第2のリンクアームの第2の端部に第2のカムフォロアが設けられると共に、該第2のカムフォロアが前記カムフォロアガイド面に係合されたリンク機構と、前記第1のカムフォロアを前記平行な方向に移動させる駆動機構と、を備え、前記駆動機構は、前記装置基礎部に設けられ、前記平行な方向に延在する螺子軸と、該螺子軸に螺着され、該螺子軸に対し相対的回動不可能に支持され、前記第1のカムフォロアが設けられた移動部材と、前記螺子軸を回転駆動する駆動源と、を備える。
【0007】
本発明の一態様では、前記移動部材には前記台車の走行方向に向けて前記第1のカムフォロアと間隔を空けて、前記カムフォロアガイド溝に係合させて補助カムフォロアが設けられている。
【0008】
本発明の一態様では、前記移動部材は、前記台車の幅方向に延在するように設けられ、前記移動部材の左右両端にそれぞれ前記リンク機構が設けられている。
【0009】
本発明の一態様では、前記台車の進行方向に間隔を空けて第1、第2の前記昇降装置が設けられる。
【0010】
本発明の一態様では、前記装置昇降部は、下面に前記第2のカムフォロアが係合された昇降部本体と、この昇降部本体に載置された荷受け台と、この荷受け台の前記台車の進行方向前後の一端に回動自在に連結され下端が前記台車上面に摺動自在に当接させたカバーとを備える。
【0011】
本発明の一態様では、前記第1のカムフォロアは、前記カムフォロアガイド溝内に配置される外輪と固定軸部とを備え、前記固定軸部は、前記移動部材に固定され、前記移動部材には、前記固定軸部を囲む円筒状壁部が設けられ、前記第1のリンクアームは、前記円筒状壁部周りに回動自在に取り付けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、昇降装置の駆動機構を低い位置に配置することによって、高ストロークかつ扁平な昇降装置を実現し、この昇降装置を搭載することで無人搬送車の低床化を実現し、低パスラインの荷への適合と1台の同一車両で多種多様な荷のパスラインに対応することができる無人搬送車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態による無人搬送車の上面図である。
【
図3】本発明の実施形態による昇降装置の上面図である。
【
図8】本発明の実施形態による無人搬送車の昇降装置の取り付け関係を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
(実施形態)
本実施形態の無人搬送車の上面図を
図1、その側面図を
図2に示す。本発明の無人搬送車10は、駆動車輪2を備えて走行自在に構成された台車1と、台車1に昇降自在に設けられた昇降装置4と、を備えている。台車1の中央側部に駆動車輪2が、前後側部に従動輪3が配置されており、台車1前後に計一組(2個)の昇降装置4が配置されている。昇降装置4の上部には在荷検知センサ5が配置されている。
【0015】
昇降装置4の上面図を
図3、側面図を
図4に示す。また、上面図(
図3)のA-A矢視断面図を
図5、側面図(
図4)のB-B矢視断面図を
図6、側面図(
図4)のC-C矢視断面図を
図7に示す。なお、
図6では簡略化のため、符号24、25(後述するリンク結合部材)の構成部品は図から除外して表記する。
【0016】
図4に示すように、昇降装置4は、装置昇降部13と、装置基礎部12と、リンク機構28と、駆動機構29と、を備えている。装置昇降部13は、荷を載置する荷載置部Sを有し、下面に台車の走行面に平行なカムフォロアガイド面G1を備えている。装置基礎部12は、装置昇降部13の下方定位置に固定され、台車1の走行面に平行な方向に延在するカムフォロアガイド溝G2を有する。リンク機構28は、中間部がピン接合され、接合部分を中心として互いに回動自在にX字状に連結された第1のリンクアーム19と、第2のリンクアーム20とを有し、第1のリンクアーム19の第1の端部19aが装置昇降部13の定位置に回動自在に支持され、第1のリンクアーム19の第2の端部19bに第1のカムフォロア22が設けられると共に、第1のカムフォロア22がカムフォロアガイド溝G2に係合され、第2のリンクアーム20の第1の端部20aが装置基礎部12の定位置に回動自在に支持され、第2のリンクアーム20の第2の端部20bに第2のカムフォロア21が設けられると共に、第2のカムフォロア21がカムフォロアガイド面G1に係合される。
【0017】
駆動機構29は、第1のカムフォロア22を台車1の走行面に平行な方向に移動させる。
図5に示すように、駆動機構29は、装置基礎部12に設けられ、台車1の走行面に平行な方向に延在する螺子軸14と、螺子軸14に螺着され、螺子軸14に対し相対的回動不可能に支持され、
図4に示す第1のカムフォロア22が結合された移動部材15と、螺子軸14を回転駆動させるモータ(駆動源)11と、を備える。
【0018】
図4、
図7に示すように、移動部材15には台車1の走行方向に向けて第1のカムフォロア22と間隔を空けて、カムフォロアガイド溝G2に係合させて補助カムフォロア23が設けられている。
図6に示すように、移動部材15は、台車1の幅方向(紙面の上下方向)に延在するように設けられ、移動部材15の左右両端にそれぞれリンク機構28、28が設けられている。
図1、
図2に示すように、台車1の進行方向に間隔を空けて第1、第2の昇降装置4、4が設けられる。
【0019】
図8は、本実施形態による無人搬送車10の昇降装置4の取り付け関係を示す側面図である。
図8に示すように、装置昇降部13は、下面に第2のカムフォロア21が係合された昇降部本体30と、この昇降部本体30に載置された荷受け台31と、この荷受け台31の台車1の進行方向前後の一端に回動自在に連結され下端が台車1上面に摺動自在に当接させたカバー32とを備える。なお、カバー32とそれに係る部材は、
図4、
図5では簡略化のため省略されている。
【0020】
上述のように構成された無人搬送車10の構成部品について、以下にさらに詳細に説明する。
図4~
図7に示すように、装置基礎部12は、底板部12aと底板部12aから鉛直上方に板状に立ち上がるガイド部材12bとから構成されており、底板部12aにモータ11のボディが固着され、ガイド部材12bに固定軸部材17が固着されている。ガイド部材12bには、台車1の走行面に平行な方向に延在するカムフォロアガイド溝G2が設けられており、第1のカムフォロア22と補助カムフォロア23が係合している。カムフォロアガイド溝G2には転動面Yが設けられており、第1のカムフォロア22、補助カムフォロア23の外輪の上下を挟み込む形となっている。
【0021】
図5に示すように、モータ11の出力軸には螺子軸14が結合されている。移動部材15には螺子軸14に対応した雌ねじが設けられており、ねじの勘合により螺子軸14と連結されている。
【0022】
図6、
図7に示すように、移動部材15の両側には符号16~符号23の部材からなるリンク機構28、28が計二組配置されている。移動部材15には
図4に示す補助カムフォロア23の固定軸部(軸受内輪軸)と第1のカムフォロア22の固定軸部(軸受内輪軸)が固着されている。固定軸部材17には第2のリンクアーム20が17の軸を中心とした回転自由度を有した状態で結合されている。第1のカムフォロア22の固定軸部には第1のリンクアーム19が回動自在に取り付けられている。
【0023】
ここで、移動部材15、第1のカムフォロア22、及び第1のリンクアーム19の結合状態について更に詳細に説明する。
図9は、
図4のD-D矢視断面図である。
図4に示すように、第1のカムフォロア22は、カムフォロアガイド溝G2内に配置される外輪53と固定軸部51とを備えている。外輪53は、複数のニードルローラー55を介在させ、外輪53が固定軸部51を中心として、複数のニードルローラー55を転動させながら回転可能になるように装着されている。
【0024】
移動部材15には、側方に突出するように筒状の円筒状壁部41が設けられており、その内側に第1のカムフォロア22の固定軸部51が挿入され、固定軸部51の先端部57には、雄ねじが形成され、移動部材15の内方に形成された雌ねじに螺着されている。第1のリンクアーム19は、その第2の端部19bに円形の開口部Kが設けられ、その内部に軸受け42を介在させた状態で、移動部材15の円筒状壁部41の外周に嵌着されている。第1のリンクアーム19と移動部材15との間にはスペーサー43が配置され、第1のリンクアーム19と移動部材15との間の間隙が一定となるように構成されている。この構成によって、第1のリンクアーム19は、円筒状壁部41周りに円筒状の軸受け42を介して回動自在に取り付けられている。
【0025】
外輪53は、装置基礎部12に設けられたカムフォロアガイド溝G2に沿って紙面の前後方向(紙面に垂直な方向)に移動可能となっている。この構成のもとに、移動部材15が紙面の前後方向に移動すると、第1のカムフォロア22の外輪53がカムフォロアガイド溝G2に案内されて移動する。その一方第1のリンクアーム19は、軸受け42に対して回動して、第1のリンクアーム19が、後述する固定軸部材18(
図4)の軸を中心に揺動する。
【0026】
第1のリンクアーム19には揺動軸部材16が固着されており、揺動軸部材16には第2のリンクアーム20が揺動軸部材16の軸を中心とした回転自由度を有した状態で結合されている。これにより、第1のリンクアーム19と第2のリンクアーム20は、
図3における揺動軸Xを中心とした回転自由度を有して結合される。
【0027】
図4、
図5示すように、第2のリンクアーム20の第2の端部20bには第2のカムフォロア21の固定軸部(軸受内輪軸)が固着されている。一組(2個)の第1のリンクアーム19はリンク結合部材24によって固着されている。一組(2個)の第2のリンクアーム20はリンク結合部材25によって固着されている。装置昇降部13には固定軸部材18が固着されている。装置昇降部13にはカムフォロアガイド面G1が設けられており、第2のカムフォロア21の外輪上側に接触する形となっている。固定軸部材18には第1のリンクアーム19が固定軸部材18の軸を中心とした回転自由度を有した状態で結合されている。
【0028】
図8に示すように、台車1に昇降装置4の装置基礎部12が固着されている。車両の扁平化のため、台車1の底面には昇降装置の装置基礎部12の一部を可能な限り走行床側に近づけることができるよう、部分的な切り欠き穴が設けられている。昇降装置4の昇降部本体30上部には荷受け台31が設置されている。荷受け台31には蝶番33を介してカバー32が結合されている。蝶番33は回転自由度を有するため、カバー32の蝶番33の固定部とは逆側の部分は台車1の上面に接触した状態となっている。
【0029】
上述のように構成された無人搬送車の動作について説明する。
駆動車輪2の回転により車両の走行を行い、一組(2個)の駆動車輪2の速度差により車両の操舵が行われる。無人搬送車10が対象とする荷の下で走行を停止した後、昇降装置4を駆動し自身の一部を上昇させることで荷を持ち上げる。このとき、一組(2個)の昇降装置4、4はそれぞれ独立して動作を行う。在荷検知センサ5は荷が正常に持ち上げられたかを監視するために用いられ、在荷検知センサ5の信号出力状態により、無人搬送車10の制御装置(図示せず)が判断を行う。なお、無人搬送車の移動に関しては、ライントレース式、ランドマーク式、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等、いずれの方法で行ってもよく、既知の技術としてここでは、その説明を省略する。
【0030】
昇降装置4は、モータ11の出力軸の回転により、螺子軸14が連動して回転する。螺子軸14の回転により、ねじの勘合により連結された移動部材15が螺子軸14の軸方向に移動する。移動部材15の移動に伴い、移動部材15に結合された第1のカムフォロア22と補助カムフォロア23が転動面Yに沿ってカムフォロアガイド溝G2内を移動する。移動部材15が移動する際は、第1のカムフォロア22の位置が螺子軸14の中心軸からずれているため、螺子軸14に対しモーメントが作用するが、本構成では補助カムフォロア23を追加することにより、螺子軸14にかかるモーメントを補助カムフォロア23およびカムフォロアガイド溝G2の転動面Yで支持している。移動部材15が移動時に第1のカムフォロア22の移動に連動して、第1のリンクアーム19の第2の端部19bも移動する。
【0031】
第1のリンクアーム19は、固定軸部材18によって回転自由度を有した状態で装置昇降部13と結合されており、第2のリンクアーム20は、固定軸部材17によって回転自由度を有した状態で装置基礎部12と結合されている。第1のリンクアーム19と第2のリンクアーム20とは、揺動軸部材16を介して回転自由度を有した状態で結合されている。さらに、移動部材15と第1のカムフォロア22の固定軸部51とは固着されており、第1のカムフォロア22の固定軸部51と第1のリンクアーム19とは回転自由度を有した状態で結合さている。そのため、移動部材15の移動による第1のカムフォロア22の移動時には、第1のリンクアーム19の固定軸部材18の軸を中心としての回転運動と共に、移動部材15に固着された第1のカムフォロア22の固定軸部51と第1のリンクアーム19との第1のカムフォロア22の軸を中心とした回転運動も同時に行われ、揺動軸部材16も移動する。この移動に伴って、第2のリンクアーム20は、固定軸部材17を中心とした回転運動を行う。
【0032】
これらの動作により、固定軸部材18によって、第1のリンクアーム19に回転自由度を有した状態で接合された装置昇降部13が垂直移動を行う。装置昇降部13の姿勢は第2のリンクアーム20に結合された第2のカムフォロア21の外輪で装置昇降部13に設けられたカムフォロアガイド面G1を支持することで水平に保たれる。リンク結合部材24,25はそれぞれリンクアーム19、20を結合することにより機械的強度を向上させている。
【0033】
装置昇降部13の垂直移動により、昇降部本体30の上面に設置された荷受け台31が連動して垂直移動を行う。荷受け台31は自重のみにより荷受け台31との接触関係が保たれている。そのため、荷受け台31と台車1との間に構造物が侵入した場合は、構造物には荷受け台31の自重のみが力として作用し、荷受け台31自体は昇降部本体30から分離するようになされている。ただし、無人搬送車10の直進方向および横方向への自由度は昇降部本体30と荷受け台31双方の部材に設けられた形状により、一定以上の水平移動が起こり得ないようになされている。荷受け台31は無人搬送車10が搬送対象とする荷の底面に接触し、荷を垂直移動(持ち上げる)させる。蝶番33を介して荷受け台31に固定されたカバー32は、蝶番33が回転自由度を有しているため、荷受け台31の垂直移動と連動して台車1の上部に自重により接触しながら可倒できるようになされている。これにより、昇降装置4が垂直移動する際に発生する荷受け台31と台車1との隙間・空間を減らし、昇降装置4内部へ構造物が侵入する経路を遮蔽する。
【0034】
以上述べたように、本実施形態の無人搬送車10に搭載される昇降装置4は、リンク機構28の下方に位置する第1のカムフォロア22を移動させることによって昇降動作を行うので、第1のカムフォロア22を移動させる駆動機構29を昇降装置4の下方にリンク機構28直下からずらして配置させることができる。この構造と、台車1の切り欠き穴により、アクチュエータ(本考案ではモータ)を装置下部に配置することができるので、駆動機構が揺動支点(本願における揺動軸部材16の位置)にある特許文献2の昇降装置に比較して、装置を扁平化することができる。特許文献1のような、ウォームジャッキのような垂直直動機器を使用せず、螺子軸14を台車1の走行面に平行に配置する構造により、軸ストロークによる高さの制約が低減されるため、装置の高ストローク化ができる。
【0035】
昇降部本体30と荷受け台31の関係により、荷を取り扱わない状態で昇降装置が動作している最中に荷受け台31と台車1との間に構造物が侵入した場合に、その構造物にかかる荷重を荷受け台31のみとすることができる。また、台車1と荷受け台31、カバー32、蝶番33の部材からなる構造により、昇降部本体30と荷受け台31の関係のみではカバーできない部分は物理的に侵入経路を遮蔽できるため、構造物の進入を防止することができる。
【0036】
かくして、昇降装置の駆動機構を低い位置に配置することによって、高ストロークかつ扁平な昇降装置を実現し、この昇降装置を搭載することで無人搬送車の低床化を実現し、低パスラインの荷への適合と1台の同一車両で多種多様な荷のパスラインに対応することができる無人搬送車を提供できる。なお、上述の実施形態では、螺子軸14と移動部材15とは、雄ねじと雌ねじの関係で勘合したが、ここにボールねじを採用してもよい。
【0037】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 台車
2 駆動車輪
4 昇降装置
10 無人搬送車
11 モータ(駆動源)
12 装置基礎部
13 装置昇降部
14 螺子軸
15 移動部材
19 第1のリンクアーム
19a 第1のリンクアームの第1の端部
19b 第1のリンクアームの第2の端部
20 第2のリンクアーム
20a 第2のリンクアームの第1の端部
20b 第2のリンクアームの第2の端部
21 第2のカムフォロア
22 第1のカムフォロア
23 補助カムフォロア
28 リンク機構
29 駆動機構
30 昇降部本体
31 荷受け台
32 カバー
33 蝶番
41 円筒状壁部
51 第1のカムフォロアの固定軸部
53 第1のカムフォロアの外輪
G1 カムフォロアガイド面
G2 カムフォロアガイド溝
S 荷載置部
【要約】
高ストロークかつ扁平な昇降装置を搭載することで無人搬送車の低床化を実現し、低パスラインの荷への適合と1台の同一車両で多種多様な荷のパスラインに対応することができる無人搬送車を提供する。駆動車輪を備えて走行自在に構成された台車と、該台車に昇降自在に設けられた昇降装置4と、を備え、前記昇降装置4は、荷を載置する荷載置部Sを有し、下面に前記台車の走行面に平行なカムフォロアガイド面G1を備えた装置昇降部13と、該装置昇降部13の下方定位置に固定され、前記台車の走行面に平行な方向に延在するカムフォロアガイド溝G2を有する装置基礎部12と、中間部がピン接合され、接合部分を中心として互いに回動自在にX字状に連結された第1、第2のリンクアーム19、20を有するリンク機構28と、前記第1のリンクアーム19の第1のカムフォロア22を移動させる駆動機構29と、を備える。