(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】ガスバリア積層体及び包装袋
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20250212BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20250212BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250212BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B7/022
B32B27/00 H
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2024561590
(86)(22)【出願日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2024021651
【審査請求日】2024-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2023099482
(32)【優先日】2023-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】福上 美季
(72)【発明者】
【氏名】古田 薫
(72)【発明者】
【氏名】山田 幹典
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-79681(JP,A)
【文献】国際公開第2021/230319(WO,A1)
【文献】特開2021-20391(JP,A)
【文献】特開平10-29264(JP,A)
【文献】特開2019-217764(JP,A)
【文献】特開2003-236972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリアコートが設けられる基材を有するバリア層と、
前記バリア層の第1主面に重なるシーラント層と、
前記バリア層の第2主面に重なる支持層と、
前記バリア層及び前記シーラント層を接着する第1接着層と、
前記バリア層及び前記支持層を接着する第2接着層と、
を備えるガスバリア積層体であって、
前記第1接着層は、2液硬化型のウレタン接着剤を含み、
前記基材はポリオレフィンを含み、
前記ガスバリア積層体に対してレトルト処理を実施した後、走査プローブ顕微鏡で測定された前記第1接着層の弾性率は、5MPa以上53MPa未満である、
ガスバリア積層体。
【請求項2】
前記第2接着層は、2液硬化型のウレタン接着剤を含み、
前記レトルト処理の実施後、走査プローブ顕微鏡で測定された前記第2接着層の弾性率は、5MPa以上53MPa未満である、請求項1に記載のガスバリア積層体。
【請求項3】
前記バリア層は、前記基材と前記バリアコートとの間に位置するアンカーコート層及び蒸着層をさらに有し、
前記アンカーコート層は、前記基材と前記蒸着層との間に位置する、請求項1または2に記載のガスバリア積層体。
【請求項4】
前記蒸着層の厚さは、5nm以上80nm以下である、請求項3に記載のガスバリア積層体。
【請求項5】
前記レトルト処理の実施前、走査プローブ顕微鏡で測定された前記第1接着層の弾性率は、55MPa以上である、請求項1または2に記載のガスバリア積層体。
【請求項6】
前記第1接着層の厚さと、前記第2接着層の厚さとのそれぞれは、0.5μm以上10μm以下である、請求項1または2に記載のガスバリア積層体。
【請求項7】
前記シーラント層の弾性率は、600MPa以上1400MPa以下である、請求項1または2に記載のガスバリア積層体。
【請求項8】
前記基材と、前記シーラント層とのそれぞれは、ポリオレフィンフィルムであり、
前記ガスバリア積層体におけるポリオレフィンの合計質量の割合は、90質量%以上である、請求項1または2に記載のガスバリア積層体。
【請求項9】
前記基材は、延伸ポリプロピレンフィルムであり、
前記シーラント層は、無延伸ポリプロピレンフィルムである、請求項8に記載のガスバリア積層体。
【請求項10】
請求項1または2に記載のガスバリア積層体の製袋物である、包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスバリア積層体及び包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、包装材料に包まれる内容物の保護などの観点から、酸素バリア性能、水蒸気バリア性能などのガスバリア性能を付与された積層体(ガスバリア積層体)が利用されている。例えば、下記特許文献1には、樹脂基材と、該樹脂基材上に設けられ、主に無機化合物を含むガスバリア蒸着層と、該ガスバリア蒸着層上に設けられるガスバリア被覆層とを含むガスバリア積層フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなガスバリア積層体にレトルト処理を実施した場合、ガスバリア性が劣化しやすい問題があった。
【0005】
本開示の一側面に係る目的は、レトルト処理後においてもガスバリア性を良好に発揮可能なガスバリア積層体及び包装袋の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係るガスバリア積層体は、バリアコートが設けられる基材を有するバリア層と、バリア層の第1主面に重なるシーラント層と、バリア層の第2主面に重なる支持層と、バリア層及びシーラント層を接着する第1接着層と、バリア層及び支持層を接着する第2接着層と、を備えるガスバリア積層体であって、第1接着層は、2液硬化型のウレタン接着剤を含み、基材はポリオレフィンを含み、ガスバリア積層体に対してレトルト処理を実施した後、走査プローブ顕微鏡で測定された第1接着層の弾性率は、5MPa以上53MPa未満である。
【0007】
このガスバリア積層体によれば、走査プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)で測定された第1接着層の弾性率は、5MPa以上53MPa未満である。この場合、レトルト処理に伴う基材の伸縮が発生したとしても、第1接着層が良好に追従する。このため、第1接着層内のクラック発生に伴うバリアコートの損傷発生などを抑制できる。したがって、レトルト処理後においてもガスバリア性を良好に発揮可能なガスバリア積層体を提供できる。
【0008】
第2接着層は、2液硬化型のウレタン接着剤を含み、レトルト処理の実施後、走査プローブ顕微鏡で測定された第2接着層の弾性率は、5MPa以上53MPa未満でもよい。この場合、レトルト処理に伴う基材及び支持層の伸縮が発生したとしても、第2接着層が良好に追従する。このため、第2接着層内のクラック発生に伴うバリアコートの損傷発生なども抑制できる。
【0009】
バリア層は、基材とバリアコートとの間に位置するアンカーコート層及び蒸着層をさらに有し、アンカーコート層は、基材と蒸着層との間に位置してもよい。この場合、ガスバリア積層体のガスバリア性を向上できる。
【0010】
蒸着層の厚さは、5nm以上80nm以下でもよい。この場合、蒸着層の割れを防ぎつつ、ガスバリア性を向上できる。
【0011】
レトルト処理の実施前、走査プローブ顕微鏡で測定された第1接着層の弾性率は、55MPa以上でもよい。
【0012】
第1接着層の厚さと、第2接着層の厚さとのそれぞれは、0.5μm以上10μm以下でもよい。この場合、バリア層とシーラント層との剥離を良好に抑制しつつ、ガスバリア積層体を容易にモノマテリアル化できる。
【0013】
シーラントの弾性率は、600MPa以上1400MPa以下でもよい。この場合、ガスバリア積層体の成型性が向上し得る。
【0014】
基材と、シーラント層とのそれぞれは、ポリオレフィンフィルムであり、ガスバリア積層体におけるポリオレフィンの合計質量の割合は、90質量%以上でもよい。この場合、モノマテリアル化が実現される。
【0015】
基材は、延伸ポリプロピレンフィルムであり、シーラント層は、無延伸ポリプロピレンフィルムでもよい。この場合、積層体は、レトルト処理等に対する耐熱性に優れている。
【0016】
本開示の一側面は、上記ガスバリア積層体の製袋物である包装袋を提供してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、レトルト処理後においてもガスバリア性を良好に発揮可能なガスバリア積層体及び包装袋を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る積層体の模式平面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る積層体を示す模式断面図である。
【
図4】
図4は、オーブン加熱時の熱収縮率の測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、場合により図面を参照しつつ本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0020】
<積層体>
図1は、一実施形態に係る積層体の模式平面図である。
図2は、一実施形態に係る積層体を示す模式断面図である。
図1及び
図2に示される積層体1は、ガスバリア性を有するシート状部材(ガスバリア積層体)であり、例えば包装袋などの製造に利用されるシート状の包装材料である。積層体1は、例えば、レトルト処理、ボイル処理などの加熱処理を施す用途に好適に用いることができる。
【0021】
レトルト処理は、一般に食品、医薬品等を保存するために、カビ、酵母、細菌などの微生物を加圧殺菌する方法である。通常は、食品等を包装した包装袋を、105~140℃、0.15~0.30MPaで10~120分の条件で加圧殺菌処理をする。レトルト装置は、加熱蒸気を利用する蒸気式と加圧加熱水を利用する熱水式があり、内容物となる食品等の殺菌条件に応じて適宜使い分ける。ボイル処理は、食品、医薬品等を保存するため湿熱殺菌する方法である。通常は、内容物にもよるが、食品等を包装した包装袋を、60~100℃、大気圧下で、10~120分の条件で湿熱殺菌処理を行う。ボイル処理は、通常、熱水槽を用いて100℃以下で処理を行う。方法としては、一定温度の熱水槽の中に浸漬し一定時間処理した後に取り出すバッチ式と、熱水槽の中をトンネル式に通して処理する連続式がある。
【0022】
積層体1は、バリア層10と、シーラント層20と、第1接着層30と、支持層40と、第2接着層50とを有する。積層体1では、シーラント層20と、第1接着層30と、バリア層10と、第2接着層50と、支持層40とが順に積層される。以下では、
図1に示されるように、方向MDを積層体1の流れ方向(長手方向)とし、方向TDを積層体1の巾方向(短手方向)とする。また、方向MD,TDの両方に直交する方向を、積層体1に含まれる部材の積層方向とする。
【0023】
[バリア層10]
バリア層10は、積層体1における中間層として機能する部材であると共に、水蒸気、酸素などの気体(ガス)に対するガスバリア性を示す。
図2に示されるように、バリア層10は、基材11と、密着層12と、蒸着層13と、バリアコート14とを有する。バリア層10においては、基材11と、密着層12と、蒸着層13と、バリアコート14とが順に積層される。このため、密着層12と蒸着層13とは、積層方向において基材11とバリアコート14との間に位置し、かつ、密着層12は、基材11と蒸着層13との間に位置する。本実施形態では、バリア層10のうち基材11が、積層方向において最も第1接着層30に近く、バリア層10の第1主面10bを形成する。このため、バリア層10のうちバリアコート14が、積層方向において最も第1接着層30から遠く、バリア層10の第2主面10aを形成する。
【0024】
[基材11]
基材11は、積層体1における支持層として機能するプラスチック部材である。基材11の厚さは、特に限定されない。用途に応じ、当該厚さを6~200μmとすることができるが、環境負荷低減のための材料削減の観点、及び、優れた耐熱性、耐衝撃性と優れたガスバリア性とを得る観点から、9~50μmであってよく、12~38μmであってよく、18~30μmであってよい。
【0025】
積層体1のリサイクル適正等の観点から、基材11は、例えばポリオレフィンフィルムである。本実施形態では、基材11は、ポリプロピレンフィルムを含んでいてよく、ポリプロピレンフィルムからなるものであってよい。ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレンを、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステル等を用いてグラフト変性して得られる酸変性ポリプロピレンフィルム等であってもよい。また、ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。
【0026】
基材11を構成するポリプロピレンフィルムには、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、静電防止剤等の各種添加材が添加されてよい。
【0027】
基材11を構成するポリプロピレンフィルムは、延伸フィルムであってよく、無延伸フィルムであってよい。耐衝撃性、耐熱性、耐水性、寸法安定性等の観点から、ポリプロピレンフィルムは、延伸ポリプロピレンフィルムでもよい。これにより、製袋時のヒートシール工程において基材11が熱融着することを抑制することができる。また、レトルト処理、ボイル処理などの加熱処理を施す用途に、積層体1が用いられてもよい。延伸方法としては特に限定されず、インフレーションによる延伸、または一軸延伸、二軸延伸など、寸法が安定したフィルムが供給可能であれば、どのような方法でもよい。
【0028】
基材11には、その積層面に、バリア性能を損なわない範囲でコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの各種前処理を施したり、易接着層などのコート層を設けても構わない。当該積層面は、バリア層10の第1主面10bを形成する面でもよい。
【0029】
[基材11の熱収縮率]
基材11を120℃で15分間さらした後(以下、単に「加熱後」とする)、下記式(1)で求められる基材11のMD方向の熱収縮率が1%以上である。例えば、基材11もしくは基材11を含むバリア層10を120℃で15分間オーブンにて加熱した後、下記式(1)で求められる基材11のMD方向の熱収縮率が1%以上である。製袋時の変形低減、バリア層10とシーラント層20との剥離抑制などの観点から、MD方向における上記熱収縮率は、例えば、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下などである。一例では、MD方向における上記熱収縮率は、1.2%以上、1.5%以上、2%以上、2.5%以上、3%以上などである。MD方向における上記熱収縮率は、例えば、1%以上7%以下、1%以上6.7%以下、1.5%以上4%以下、2%以上3.7%以下などである。なお、例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルムは上記熱収縮率が1%である一方で、PETフィルムは上記熱収縮率が1%未満である。
MD方向の熱収縮率(%)=(加熱前のMD方向長さ-加熱後のMD方向長さ)/加熱前のMD方向長さ×100 …(1)
【0030】
上記加熱後、下記式(2)で求められる基材11のTD方向の熱収縮率は、特に限定されないが、例えば1%以上であり、基材11のMD方向の熱収縮率以下である。製袋時の変形低減、バリア層10とシーラント層20との剥離抑制などの観点から、TD方向における上記熱収縮率は、例えば、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下などである。一例では、TD方向における上記熱収縮率は、1.2%以上、1.5%以上、2%以上、2.5%以上、3%以上などである。TD方向における上記熱収縮率は、例えば、1%以上7%以下、1%以上6.7%以下、1.5%以上4%以下、2%以上3.7%以下などである。
TD方向の熱収縮率(%)=(加熱前のTD方向長さ-加熱後のTD方向長さ)/加熱前のTD方向長さ×100 …(2)
【0031】
一般に、二軸延伸フィルムなどの延伸フィルムにおいては、MD方向の熱収縮率は、TD方向の熱収縮率よりも大きい。
【0032】
[密着層]
密着層12は、基材11上における蒸着層13の密着性能向上を発揮できる層(アンカーコート層)として機能し、基材11の直上に設けられる。このため、密着層12は、基材11と蒸着層13との間に位置する。密着層12が設けられることによって、バリア層10において蒸着層13が設けられる表面の平滑性を向上できる。なお、平滑性が向上することで蒸着層13を欠陥なく均一に成膜し易くなり、高いバリア性を発現し易い。密着層12は、例えばアンカーコート剤を用いて形成することができる。
【0033】
アンカーコート剤としては、例えば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂等が挙げられる。アンカーコート剤としては、耐熱性及び層間接着強度の観点から、ポリエステル系ポリウレタン樹脂が用いられてもよい。
【0034】
密着層12の厚さは特に限定されないが、当該厚さは、0.01~5μmの範囲でもよいし、0.03~3μmの範囲でもよいし、0.05~2μmの範囲でもよい。密着層12の厚さが上記下限値以上であると、より十分な層間接着強度が得られる傾向があり、他方、上記上限値以下であると所望のガスバリア性が発現し易い傾向がある。
【0035】
密着層12を基材11上に塗工する方法としては、公知の塗工方法が特に制限なく使用可能であり、浸漬法(ディッピング法)、スプレー、コーター、印刷機、刷毛等を用いる方法が挙げられる。また、これらの方法に用いられるコーター及び印刷機の種類並びにそれらの塗工方式としては、ダイレクトグラビア方式、リバースグラビア方式、キスリバースグラビア方式、オフセットグラビア方式等のグラビアコーター、リバースロールコーター、マイクログラビアコーター、チャンバードクター併用コーター、エアナイフコーター、ディップコーター、バーコーター、コンマコーター、ダイコーター等を挙げることができる。
【0036】
密着層12の塗布量としては、アンカーコート剤を塗工して乾燥した後の1m2あたりの質量が0.01~5g/m2でもよいし、0.03~3g/m2でもよい。アンカーコート剤を塗工して乾燥した後の1m2あたりの質量が上記下限以上であると、成膜が十分となる傾向があり、他方、上記上限以下であると十分に乾燥し易く溶剤が残留し難い傾向がある。
【0037】
密着層12を乾燥させる方法としては、特に限定されないが、自然乾燥による方法や、所定の温度に設定したオーブン中で乾燥させる方法、上記コーター付属の乾燥機、例えばアーチドライヤー、フローティングドライヤー、ドラムドライヤー、赤外線ドライヤー等を用いる方法を挙げることができる。さらに、乾燥の条件としては、乾燥させる方法により適宜選択することができ、例えばオーブン中で乾燥させる方法においては、温度60~100℃にて、1秒間~2分間程度乾燥してもよい。
【0038】
密着層12として、上記ポリウレタン樹脂に代えて、ポリビニルアルコール系樹脂を用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ビニルエステル単位がケン化されてなるビニルアルコール単位を有するものであればよく、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)が挙げられる。
【0039】
PVAとしては、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等のビニルエステルを、単独で重合し、次いでケン化した樹脂が挙げられる。PVAは、共重合変性又は後変性された変性PVAであってもよい。変性PVAは、例えばビニルエステルと、ビニルエステルと共重合可能な不飽和モノマーを共重合させた後にケン化することで得られる。ビニルエステルと共重合可能な不飽和モノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン;3-ブテン-1-オール、4-ペンチン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル;ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸;アルキルビニルエーテル、ジメチルアリルビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2-ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキンラン、グリセリンモノアリルエーテル、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン等のビニル化合物;塩化ビニリデン、1,4-ジアセトキシ-2-ブテン、ビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0040】
PVAの重合度は、例えば300~3000である。重合度が300より小さいとバリア性が低下し易く、また3000超であると粘度が高すぎて塗工適性が低下し易い。PVAのケン化度は90モル%以上でもよく、95モル%以上でもよく、99モル%以上でもよい。また、PVAのケン化度は100モル%以下であっても、99.9モル%以下であってもよい。PVAの重合度及びケン化度は、JIS K 6726(1994)に記載の方法に準拠して測定できる。
【0041】
EVOHは、一般にエチレンと、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等のビニルエステルとの共重合体をケン化して得られる。
【0042】
EVOHの重合度は、例えば300~3000である。重合度が300より小さいとバリア性が低下し易く、また3000超であると粘度が高すぎて塗工適性が低下し易い。EVOHのビニルエステル成分のケン化度は90モル%以上でもよく、95モル%以上でもよく、99モル%以上でもよい。また、EVOHのケン化度は100モル%以下であっても、99.9モル%以下であってもよい。EVOHのケン化度は、核磁気共鳴(1H-NMR)測定を行い、ビニルエステル構造に含まれる水素原子のピーク面積と、ビニルアルコール構造に含まれる水素原子のピーク面積とから求められる。
【0043】
EVOHのエチレン単位含有量は10モル%以上であり、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましく、25モル%以上が特に好ましい。また、EVOHのエチレン単位含有量は65モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。エチレン単位含有量が10モル%以上であると、高湿度下におけるガスバリア性あるいは寸法安定性を良好に保つことができる。一方、エチレン単位含有量が65モル%以下であると、ガスバリア性を高めることができる。EVOHのエチレン単位含有量は、NMR法により求めることができる。
【0044】
密着層12としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、密着層12の形成方法としては、ポリビニルアルコール系樹脂溶液を用いた塗布、多層押出等が挙げられる。
【0045】
[蒸着層13]
蒸着層13は、水蒸気、酸素に対するガスバリア性を示す層(ガスバリア層)であり、金属及び無機酸化物の少なくとも一を含む。蒸着層13は、密着層12の直上に設けられる。蒸着層13は、単層構造でもよいし、積層構造でもよい。このため、蒸着層13は、金属蒸着層及び無機酸化物層の少なくとも一を含む。蒸着層13が金属蒸着層を備える場合、金属蒸着層に含まれる金属としては、例えばアルミニウム、ステンレスなどが挙げられる。蒸着層13が無機酸化物層を備える場合、無機酸化物層に含まれる無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。透明性及びバリア性の観点から、無機酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及び酸化マグネシウムからなる群より選択されてよい。また、加工時に引っ張り延伸性に優れる観点から、無機酸化物層が、酸化ケイ素を用いた層を含んでもよい。無機酸化物層を用いることにより、積層体1のリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層で、高いバリア性を得ることができる。
【0046】
蒸着層13が酸化ケイ素を用いた無機酸化物層である場合、当該無機酸化物層のO/Si比は、1.7以上であることが望ましい。O/Si比が1.7以上であると金属Siの含有割合が抑制されて良好な透明性が得られ易い。また、O/Si比は2.0以下であることが好ましい。O/Si比が2.0以下であるとSiOの結晶性が高くなって無機酸化物層が硬くなり過ぎることを防ぐことができ、良好な引張り耐性が得られる。これにより、バリアコート14を積層する際に無機酸化物層にクラックが発生することを抑制できる。また、包装袋に成形後もボイルやレトルト処理時の熱により基材11が収縮することがあるが、O/Si比が2.0以下であることで無機酸化物層が上記収縮に追従し易く、バリア性の低下を抑制することができる。これらの効果をより十分に得る観点から、無機酸化物層のO/Si比は1.75以上1.9以下であることが好ましく、1.8以上1.85以下であることがより好ましい。
【0047】
蒸着層13が酸化ケイ素を用いた無機酸化物層である場合、当該無機酸化物層のO/Si比は、X線光電子分光法(XPS)により求めることができる。例えば、測定装置はX線光電子分光分析装置(日本電子株式会社製、商品名:JPS-90MXV)にて、X線源は非単色化MgKα(1253.6eV)を使用し、100W(10kV-10mA)のX線出力で測定することができる。O/Si比を求めるための定量分析には、それぞれO1sで2.28、Si2pで0.9の相対感度因子を用いることができる。
【0048】
蒸着層13の厚さは、例えば、5nm以上80nm以下である。蒸着層13の厚さが5nm以上であると、十分な水蒸気バリア性を得ることができる。また、蒸着層13の厚さが80nm以下であると、薄膜の内部応力による変形によりクラックが発生することを抑制し、水蒸気バリア性の低下を抑制することができる。なお、蒸着層13の厚さが80nmを超えると、材料使用量の増加、及び膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し易いため、経済的観点からも好ましくない。上記と同様の観点から、蒸着層13の厚さは、20nm以上40nm以下でもよい。
【0049】
蒸着層13は、例えば真空成膜で形成することができる。真空成膜では、物理気相成長法あるいは化学気相成長法を用いることができる。物理気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。化学気相成長法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
上記真空成膜では、抵抗加熱式真空蒸着法、EB(Electron Beam)加熱式真空蒸着法、誘導加熱式真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、デュアルマグネトロンスパッタリング法、プラズマ化学気相堆積法(PECVD法)等が特に好ましく用いられる。但し、生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては、電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式が用いられてもよい。
【0051】
[バリアコート14]
バリアコート14は、ガスバリア性を持った被膜層(ガスバリア性被覆層)であり、基材11上に設けられる。バリアコート14は、例えば、水酸基含有高分子化合物、金属アルコキシド、シランカップリング剤、及び、それらの加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種を含有するガスバリア性被覆層形成用組成物(以下、コーティング剤ともいう)を用いて形成された層である。
【0052】
コーティング剤は、レトルト処理等の熱水処理後のガスバリア性をより十分に維持する観点から、少なくともシランカップリング剤又はその加水分解物を含有することが好ましく、水酸基含有高分子化合物、金属アルコキシド及びそれらの加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種と、シランカップリング剤又はその加水分解物とを含有することがより好ましく、水酸基含有高分子化合物又はその加水分解物と、金属アルコキシド又はその加水分解物と、シランカップリング剤又はその加水分解物とを含有することが更に好ましい。コーティング剤は、例えば、水溶性高分子である水酸基含有高分子化合物を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液に、金属アルコキシドとシランカップリング剤とを直接、或いは予め加水分解させるなどの処理を行ったものを混合して調製することができる。
【0053】
バリアコート14を形成するためのコーティング剤に含まれる各成分について詳細に説明する。コーティング剤に用いられる水酸基含有高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でもポリビニルアルコール(PVA)をバリアコート14のコーティング剤に用いた場合、ガスバリア性が特に優れるので好ましい。
【0054】
バリアコート14は、優れたガスバリア性を得る観点から、下記一般式(I)で表わされる金属アルコキシド及びその加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種を含む組成物から形成されることが好ましい。
M(OR1)m(R2)n-m …(I)
上記一般式(I)中、R1及びR2はそれぞれ独立に炭素数1~8の1価の有機基であり、メチル基、エチル基等のアルキル基であることが好ましい。MはSi、Ti、Al、Zr等のn価の金属原子を示す。mは1~nの整数である。なお、R1又はR2が複数存在する場合、R1同士又はR2同士は同一でも異なっていてもよい。
【0055】
金属アルコキシドとして具体的には、テトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O-2’-C3H7)3〕などが挙げられる。テトラエトキシシラン及びトリイソプロポキシアルミニウムは、加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0056】
シランカップリング剤としては、下記一般式(II)で表される化合物が挙げられる。
Si(OR11)p(R12)3-pR13 …(II)
上記一般式(II)中、R11はメチル基、エチル基等のアルキル基を示し、R12はアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、アクリロキシ基で置換されたアルキル基、又は、メタクリロキシ基で置換されたアルキル基等の1価の有機基を示し、R13は1価の有機官能基を示し、pは1~3の整数を示す。なお、R11又はR12が複数存在する場合、R11同士又はR12同士は同一でも異なっていてもよい。R13で示される1価の有機官能基としては、グリシジルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、又は、イソシアネート基を含有する1価の有機官能基が挙げられる。
【0057】
シランカップリング剤として具体的には、ビニルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤などが挙げられる。
【0058】
また、シランカップリング剤は、上記一般式(II)で表される化合物が重合した多量体であってもよい。多量体としては三量体が好ましく、より好ましくは1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートである。これは、3-イソシアネートアルキルアルコキシシランの縮重合体である。この1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、イソシア部には化学的反応性はなくなるが、ヌレート部の極性により反応性は確保されることが知られている。一般的には、3-イソシアネートアルキルアルコキシランと同様に接着剤などに添加され、接着性向上剤として知られている。よって1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートを、水酸基含有高分子化合物に添加することにより、水素結合によりガスバリア性被覆層の耐水性を向上させることができる。3-イソシアネートアルキルアルコキシランは反応性が高く、液安定性が低いのに対し、1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、ヌレート部はその極性により水溶性ではないが、水系溶液中に分散しやすく、液粘度を安定に保つことができる。また、耐水性能は3-イソシアネートアルキルアルコキシランと1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートとは同等である。
【0059】
1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、3-イソシアネートプロピルアルコキシシランの熱縮合により製造されるものもあり、原料の3-イソシアネートプロピルアルコキシシランが含まれる場合もあるが、特に問題はない。さらに好ましくは、1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルプロピル)イソシアヌレートであり、より好ましくは1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートである。このメトキシ基は加水分解速度が速く、またプロピル基を含むものは比較的安価に入手し得ることから1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートは実用上有利である。
【0060】
また、コーティング剤には、ガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、あるいは、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を必要に応じて加えることも可能である。
【0061】
バリアコート14の厚さは、50~1000nmでもよく、100~500nmでもよい。バリアコート14の厚さが50nm以上であると、より十分なガスバリア性を得ることができる傾向があり、1000nm以下であると、十分な柔軟性を保持できる傾向がある。
【0062】
バリアコート14を形成するためのコーティング液は、例えば、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法等により塗布することができる。このコーティング液を塗布してなる塗膜は、例えば、熱風乾燥法、熱ロール乾燥法、高周波照射法、赤外線照射法、UV照射法、またはそれらの組み合わせにより乾燥させることができる。
【0063】
上記塗膜を乾燥させる際の温度は、例えば、50~150℃でもよいし、70~100℃でもよい。乾燥時の温度を上記範囲内とすることで、蒸着層13及びバリアコート14にクラックが発生することをより一層抑制でき、優れたバリア性を発現することができる。
【0064】
バリアコート14は、ポリビニルアルコール系樹脂及びシラン化合物を含むコーティング剤を用いて形成されてよい。コーティング剤には、必要に応じて酸触媒、アルカリ触媒、光重開始剤等を加えてよい。
【0065】
ポリビニルアルコール系樹脂は上記のとおりである。また、シラン化合物としては、シランカップリング剤、ポリシラザン、シロキサン等が挙げられ、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
【0066】
[印刷層]
積層体1は、印刷層を備えていてよい。印刷層は、例えば、基材11の少なくとも一方の表面上に設けることができる。印刷層は、内容物に関する情報の表示、内容物の識別、隠蔽性の向上、あるいは包装袋の意匠性向上を目的として、積層体1の外側から見える位置に設けられる。印刷方法及び印刷インキは特に制限されず、既知の印刷方法及び印刷インキの中からフィルムへの印刷適性、色調などの意匠性、密着性、食品容器としての安全性などを考慮して適宜選択される。印刷方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法などを用いることができる。中でもグラビア印刷法は生産性や絵柄の高精細度の観点から、好ましく用いることができる。
【0067】
印刷層の密着性を高めるため、印刷層を設ける層の表面には、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの各種前処理を施したり、易接着層などのコート層を設けても構わない。
【0068】
[シーラント層20]
シーラント層20は、積層体1においてヒートシールによる封止性を付与する層であり、バリア層10の第1主面10bに重なる。積層体1のリサイクル適正等の観点から、シーラント層20は、基材11と同様にポリオレフィンフィルムである。本実施形態では、シーラント層20は、単層構造を有し、かつ、ポリプロピレンを主材料とする樹脂層であるが、これに限られない。シーラント層20は、積層構造を有してもよい。シーラント層20は、ポリプロピレンフィルムを含んでいてよく、ポリプロピレンフィルムからなるものであってよい。
【0069】
ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレンを、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステル等を用いてグラフト変性して得られる酸変性ポリプロピレンフィルム等であってもよい。また、ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体(ランダムPP)、プロピレン-エチレンブロック共重合体(ブロックPP)、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。一例では、シーラント層20が積層構造を有する場合、シーラント層20は、ホモプロピレン樹脂を含む層、ランダムPPを含む層、ブロックPPを含む層、及び、プロピレン-αオレフィン共重合体を含む層の少なくとも1つを有する。シーラント層20の形状安定性などの観点から、ブロックPPを含む層がシーラント層20の中間層として用いられてもよい。この場合、当該中間層には、エラストマーが添加されてもよい。後述するシーラント層20の弾性率などの観点から、エラストマーの添加量は、例えば、10質量%以上30質量%以下である。シーラント層20のシール機能などの観点から、ランダムPPを含む層がシーラント層20の表面及び裏面を構成してもよい。
【0070】
シーラント層20を構成するポリプロピレンフィルムは、ヒートシールによる封止性を高める観点から、無延伸ポリプロピレンフィルムでもよい。
【0071】
シーラント層20を構成するポリプロピレンフィルムには、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、静電防止剤等の各種添加材が添加されてよい。
【0072】
シーラント層20の厚さは、内容物の質量、包装袋の形状などにより定められるが、概ね30~150μmでもよく、50~80μmでもよい。
【0073】
積層体1によって包装袋などが成型された場合における当該包装袋の開口性などの観点から、シーラント層の弾性率は、例えば600MPa以上、700MPa以上、850MPa以上などである。基材11のMD方向に沿ったシーラント層20の弾性率と、基材11のTD方向に沿ったシーラント層20の弾性率とのそれぞれは、例えば、600MPa以上である。一例では、基材11のMD方向に沿ったシーラント層20の弾性率は、850MPa以上であり、基材11のTD方向に沿ったシーラント層20の弾性率は、700MPa以上である。シーラント層20同士の密着性などの観点から、シーラント層の弾性率は、例えば1400MPa以下、1100MPa以下、1000MPa以下などである。基材11のMD方向に沿ったシーラント層20の弾性率は、1100MPa以下であり、基材11のTD方向に沿ったシーラント層20の弾性率は、1000MPa以下である。一例では、シーラント層の弾性率は、600MPa以上1400MPa以下である。本実施形態では、シーラント層20の弾性率は、シーラント層20の20mm角のサンプルを、標点間距離:250mm、引張速度:5m/分の条件にて0.05%~0.25%伸ばしたときに測定される応力から算出される。なお、包装袋の開口性とは、袋の開きやすさに相当する。包装袋の開口性が良好である場合、当該包装袋への内容物の充填が失敗しにくくなる。
【0074】
シーラント層20の形成方法としては、上述のポリプロピレンからなるフィルム状のシーラント層を一液硬化型もしくは二液硬化型ウレタン系接着剤等の接着剤で貼り合わせるドライラミネート法、フィルム状のシーラント層を無溶剤接着剤を用いて貼り合わせるノンソルベントドライラミネート法、上述したポリプロピレンを加熱溶融させ、カーテン状に押し出し、貼り合わせるエクストルージョンラミネート法等、いずれも公知の積層方法により形成することができる。
【0075】
上記形成方法の中でも、レトルト処理、特に120℃以上の高温熱水処理に対する耐性が高く好ましいのは、ドライラミネート法である。一方、包装袋を85℃以下の温度で処理する用途に用いるのであれば、ラミネート方式は特に制限されない。
【0076】
[第1接着層30]
第1接着層30は、バリア層10とシーラント層20とを接着する層状部材である。第1接着層30に含まれる接着剤の材料としては、例えば、ポリエステル-イソシアネート系樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル系樹脂などを用いることができる。包装袋をレトルト用途に使用する観点から、第1接着層30として、レトルト耐性のあるウレタン樹脂(例えば、2液硬化型のウレタン系接着剤)が用いられてもよい。なお、環境配慮の点からは、接着剤は3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)を含まなくてもよい。第1接着層30は、塩素を含まなくてもよい。この場合、第1接着層30を形成する接着剤における、リサイクル後の再生樹脂等の着色、及び加熱処理による臭いの発生を抑制できる。第1接着層30は、環境配慮の観点から、バイオマス材料で形成されていてもよく、溶剤を含まなくてもよい。
【0077】
第1接着層30として2液硬化型のウレタン系接着剤が用いられる場合、当該ウレタン系接着剤は、主剤と硬化剤とによって形成される。主剤は、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオールなどである。ポリエステルポリオールは、例えば、ジオールとジカルボン酸とを重合することによって得られる。ポリエステルポリウレタンポリオールは、ジオールとジカルボン酸とジイソシアネートとを重合することによって得られる。ジオールは、例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオール、2,4-へキシレングリコールなどである。ジカルボン酸は、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸などである。ジイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと記載)などである。硬化剤は、例えば、IPDIのトリメチロールプロパン(以下、TMPと記載)アダクト体、キシリレンジイソシアネート(以下、XDIと記載)のTMPアダクト体、IPDIのTMPアダクト体とXDIのTMPアダクト体との混合体、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと記載)のビュレット体などである。上記ウレタン系接着剤の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、例えば、10,000~50,000程度である。
【0078】
第1接着層30の厚さは、0.5μm以上10μm以下である。第1接着層30の厚さが0.5μm以上である場合、バリア層10とシーラント層20との剥離を良好に抑制できる。第1接着層30の厚さが10μm以下である場合、積層体1を容易にモノマテリアル化(詳細は後述)できる。第1接着層30の厚さは、1μm以上でもよいし、2μm以上でもよいし、8μm以下でもよいし、6μm以下でもよいし、5μm以下でもよい。
【0079】
[第1接着層30の弾性率]
本実施形態では、積層体1に対してレトルト処理を実施した後、第1接着層30の弾性率は、5MPa以上53MPa未満である。この場合、第1接着層30は、レトルト処理、ボイル処理などの加熱処理に伴う基材11の伸縮に対して良好に追従できる。このため、上述した熱収縮率を有する基材11を含む積層体1に上記加熱処理が実施されても、バリア層10とシーラント層20との間における剥離が発生しにくくなる。加えて、上記加熱処理後の冷却時などにおける第1接着層30のクラック発生、ならびに、当該クラック発生に伴うバリア層10(密着層12、蒸着層13及びバリアコート14の少なくとも一つ)の損傷発生が抑制される。レトルト処理の実施後における第1接着層30の弾性率は、例えば、9MPa以上でもよいし、15MPa以上でもよいし、20MPa以上でもよいし、50MPa以下でもよいし、47MPa以下でもよいし、42MPa以下でもよい。積層体1に対するレトルト処理の実施前における第1接着層30の弾性率は特に限定されないが、例えば55MPa以上もしくは60MPa以上である。
【0080】
積層体1における第1接着層30の弾性率は、例えば、シーラント層20から露出される部分(露出部分)の断面の弾性率を測定することによって得られる。当該断面の弾性率は、例えば、走査プローブ顕微鏡(SPM)で測定されることによって得られる。この場合、第1接着層30の弾性率は、例えば走査プローブ顕微鏡(SPM)にて測定されたフォースカーブにより算出された弾性率を表す。第1接着層30の弾性率は、例えば、以下の実施例に記載される手法によって得られる。なお、レトルト処理が実施されていない第1接着層30の弾性率も、以下の実施例に記載される手法によって得られる。
【0081】
接着層の硬さは、接着剤の材料、硬化剤の量、エージング時間等によって制御することができる。接着剤の分子鎖間の距離が狭いほど、接着層は硬くなる傾向がある。接着剤が嵩高いほど、接着層は柔らかくなる傾向がある。脂肪族である接着層の硬さは、脂環族又は芳香族である接着層と比べ、柔らかくなる傾向がある。脂環族である接着層の硬さは、芳香族である接着層と比べ、硬くなる傾向がある。接着層に含まれる硬化剤の量が多いほど、接着層は硬くなる傾向がある。エージング時間が長いほど、接着層は硬くなる傾向がある。接着層が硬いほど接着層の弾性率は高くなる。
【0082】
[支持層40]
支持層40は、積層体1における支持体として機能するシート状のプラスチック部材である。支持層40は、基材11と同様の機能及び性能を有してもよい。支持層40の厚さは、基材11の厚さと同程度でもよい。積層体1のリサイクル適正等の観点から、支持層40は、例えばポリオレフィンフィルムである。耐熱性の観点から、支持層40は、ポリプロピレンフィルムを含んでいてよく、ポリプロピレンフィルムからなるものであってよい。支持層40を構成するポリプロピレンフィルムには、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、静電防止剤等の各種添加材が添加されてよい。支持層40を構成するポリプロピレンフィルムは、延伸フィルムであってよく、無延伸フィルムであってよい。
【0083】
本実施形態では、支持層40を120℃で15分間さらした後、上記式(1)で求められる支持層40のMD方向の熱収縮率が1%以上である。例えば、支持層40、もしくは支持層40とバリア層10との積層体を120℃で15分間オーブンにて加熱した後、上記式(1)で求められる支持層40のMD方向の熱収縮率が1%以上である。MD方向における上記熱収縮率は、例えば、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、又は、7%以下である。一例では、MD方向における上記熱収縮率は、1.2%以上、1.5%以上、2%以上、2.5%以上、3%以上などである。MD方向における上記熱収縮率は、例えば、1%以上7%以下、1%以上6.7%以下、1.5%以上4%以下、2%以上3.7%以下などである。
【0084】
上記加熱後、上記式(2)で求められる支持層40のTD方向の熱収縮率は、特に限定されないが、例えば1%以上12%以下である。一例では、TD方向における上記熱収縮率は、1.2%以上、1.5%以上、2%以上、2.5%以上、3%以上などである。TD方向における上記熱収縮率は、例えば、1%以上7%以下、1%以上6.7%以下、1.5%以上4%以下、2%以上3.7%以下などである。
【0085】
[第2接着層50]
第2接着層50は、バリア層10と支持層40とを接着する層状部材である。第2接着層50に含まれる接着剤の材料は、第1接着層30に含まれる接着剤の材料と同様である。包装袋をレトルト用途に使用する観点から、第2接着層50として、レトルト耐性のあるウレタン樹脂(例えば、2液硬化型のウレタン系接着剤)が用いられてもよい。第2接着層50の厚さは、第1接着層30の厚さと同様であり、0.5μm以上10μm以下である。
【0086】
[第2接着層50の弾性率]
本実施形態では、積層体1に対してレトルト処理を実施した後、第2接着層50の弾性率は、5MPa以上53MPa未満である。この場合、第2接着層50は、レトルト処理、ボイル処理などの加熱処理に伴う基材11及び支持層40の伸縮に対して良好に追従できる。このため、上述した熱収縮率を有する基材11及び支持層40を含む積層体1に上記加熱処理が実施されても、バリア層10と支持層40との間における剥離が発生しにくくなる。加えて、上記加熱処理後の冷却時などにおける第2接着層50のクラック発生、ならびに、当該クラック発生に伴うバリア層10(密着層12、蒸着層13及びバリアコート14の少なくとも一つ)の損傷発生が抑制される。レトルト処理の実施後における第2接着層50の弾性率は、例えば、9MPa以上でもよいし、15MPa以上でもよいし、20MPa以上でもよいし、50MPa以下でもよいし、47MPa以下でもよいし、42MPa以下でもよい。レトルト処理の実施前における第2接着層50の弾性率は特に限定されないが、例えば55MPa以上もしくは60MPa以上である。なお、レトルト処理が実施されていない第2接着層50の弾性率も、以下の実施例に記載される手法によって得られる。
【0087】
接着層の硬さは、接着剤の材料、硬化剤の量、エージング時間等によって制御することができる。接着剤の分子鎖間の距離が狭いほど、接着層は硬くなる傾向がある。接着剤が嵩高いほど、接着層は柔らかくなる傾向がある。脂肪族である接着層の硬さは、脂環族又は芳香族である接着層と比べ、柔らかくなる傾向がある。脂環族である接着層の硬さは、芳香族である接着層と比べ、硬くなる傾向がある。接着層に含まれる硬化剤の量が多いほど、接着層は硬くなる傾向がある。エージング時間が長いほど、接着層は硬くなる傾向がある。接着層が硬いほど接着層の弾性率は高くなる。
【0088】
[ポリオレフィンの含有量]
積層体1におけるポリオレフィン(本実施形態では、ポリプロピレン)の合計質量の割合は、90質量%以上である。これにより、積層体1は、単一素材からなる(モノマテリアルの)包装材料と言うことができ、リサイクル性に優れる。リサイクル性をより向上させる観点から、積層体1におけるポリオレフィンの含有量は、積層体1の全量を基準として92.5質量%以上であってよく、95質量%以上であってよい。
【0089】
<包装袋>
以下では、
図3を参照しながら、積層体1の製袋物である包装袋の例について説明する。
図3は、包装袋の一例の概略平面図である。
図3に示される包装袋100は、例えば内容物を挟むように二つ折りにした積層体1の端部を封止することによって、袋形状に成形される。
【0090】
包装袋100は、内容物が収容される本体部101と、本体部101の端部に位置するシール部102と、積層体1が折り曲げられた折曲部103とを有する三方袋である。本体部101の形状は、特に限定されず、例えば所定の方向から見て矩形状を呈する。本体部101の外表面における少なくとも一部には、印刷が施されていてよい。本体部101には、例えば、内容物に加えて窒素等の特定の気体が収容されてもよい。シール部102は、積層体1が備えるシーラント層20の一部と他部とが貼り合わされる部分である。シール部102においては、積層体1が備えるシーラント層20の一部と他部とが互いに密着している。シール部102は、例えば積層体1が備えるシーラント層20の一部と他部とが加熱及び圧縮される(すなわち、ヒートシールされる)ことによって形成されるが、これに限られない。例えば、シール部102は、コールドシール等によって形成されてもよい。包装袋100では、折曲部103が本体部101の一辺を構成し、シール部102が本体部101の残り三辺を構成する。折曲部103の両端と、シール部102とは重なっている。
【0091】
以上に説明した本実施形態に係る積層体1に対してレトルト処理を実施した後、走査プローブ顕微鏡(SPM)で測定された第1接着層30の弾性率は、5MPa以上53MPa未満である。これにより、レトルト処理に伴う基材11の伸縮が発生したとしても、第1接着層30が良好に追従する。このため、MD方向の熱収縮率が1%以上である基材11が積層体1に含まれる場合であっても、第1接着層30内のクラック発生に伴うバリアコート14の損傷発生などを抑制できる。したがって、レトルト処理後においてもガスバリア性(特に、酸素透過防止性能)を良好に発揮可能な積層体1を提供できる。
【0092】
本実施形態では、第2接着層50は、2液硬化型のウレタン接着剤を含み、積層体1に対するレトルト処理の実施後、走査プローブ顕微鏡で測定された第2接着層50の弾性率は、5MPa以上53MPa未満である。この場合、レトルト処理に伴う基材11及び支持層40の伸縮が発生したとしても、第1接着層30だけでなく第2接着層50も良好に追従する。このため、第2接着層50内のクラック発生に伴うバリアコート14の損傷発生なども抑制できる。
【0093】
本実施形態では、バリア層10は、基材11とバリアコート14との間に位置する密着層12及び蒸着層13を有し、密着層12は、基材11と蒸着層13との間に位置する。このため、バリア層が基材11及びバリアコート14のみを有する場合と比較して、積層体1のガスバリア性を向上できる。
【0094】
本実施形態では、蒸着層13の厚さは、5nm以上80nm以下でもよい。この場合、蒸着層13の割れを防ぎつつ、ガスバリア性を向上できる。
【0095】
本実施形態では、第1接着層30の厚さは、0.5μm以上10μm以下でもよい。この場合、バリア層10とシーラント層20との剥離を良好に抑制しつつ、積層体1を容易にモノマテリアル化できる。
【0096】
本実施形態では、基材11と、シーラント層20とのそれぞれは、ポリオレフィンフィルムであり、積層体1におけるポリオレフィンの合計質量の割合は、90質量%以上でもよい。この場合、モノマテリアル化が実現される。
【0097】
本実施形態では、基材11は、延伸ポリプロピレンフィルムであり、シーラント層20は、無延伸ポリプロピレンフィルムでもよい。この場合、積層体1は、レトルト処理等に対する耐熱性に優れている。
【0098】
本開示の一側面に係るガスバリア積層体及びその包装袋は、例えば以下の[1]~[10]に記載する通りであり、上記実施形態及び上記変形例に基づいてこれらを詳細に説明した。
[1] バリアコートが設けられる基材を有するバリア層と、
前記バリア層の第1主面に重なるシーラント層と、
前記バリア層の第2主面に重なる支持層と、
前記バリア層及び前記シーラント層を接着する第1接着層と、
前記バリア層及び前記支持層を接着する第2接着層と、
を備えるガスバリア積層体であって、
前記第1接着層は、2液硬化型のウレタン接着剤を含み、
前記基材はポリオレフィンを含み、
前記ガスバリア積層体に対してレトルト処理を実施した後、走査プローブ顕微鏡で測定された前記第1接着層の弾性率は、5MPa以上53MPa未満である、
ガスバリア積層体。
[2] 前記第2接着層は、2液硬化型のウレタン接着剤を含み、
前記レトルト処理の実施後、走査プローブ顕微鏡で測定された前記第2接着層の弾性率は、5MPa以上53MPa未満である、[1]に記載のガスバリア積層体。
[3] 前記バリア層は、前記基材と前記バリアコートとの間に位置するアンカーコート層及び蒸着層をさらに有し、
前記アンカーコート層は、前記基材と前記蒸着層との間に位置する、[1]または[2]に記載のガスバリア積層体。
[4] 前記蒸着層の厚さは、5nm以上80nm以下である、[3]に記載のガスバリア積層体。
[5] 前記レトルト処理の実施前、走査プローブ顕微鏡で測定された前記第1接着層の弾性率は、55MPa以上である、[1]~[4]のいずれかに記載のガスバリア積層体。
[6] 前記第1接着層の厚さと、前記第2接着層の厚さとのそれぞれは、0.5μm以上10μm以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のガスバリア積層体。
[7] 前記シーラント層の弾性率は、600MPa以上1400MPa以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のガスバリア積層体。
[8] 前記基材と、前記シーラント層とのそれぞれは、ポリオレフィンフィルムであり、
前記ガスバリア積層体におけるポリオレフィンの合計質量の割合は、90質量%以上である、[1]~[7]のいずれかに記載のガスバリア積層体。
[9] 前記基材は、延伸ポリプロピレンフィルムであり、
前記シーラント層は、無延伸ポリプロピレンフィルムである、[8]に記載のガスバリア積層体。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載のガスバリア積層体の製袋物である、包装袋。
【0099】
しかし、本開示の一側面は、上記実施形態、上記変形例及び上記[1]~[10]に限定されない。本開示の一側面は、その要旨を逸脱しない範囲でさらなる変形が可能である。
【0100】
上記実施形態及び上記変形例では、積層体におけるポリプロピレンの合計質量の割合が、90質量%以上であればよい。このため、例えば、上記変形例に係る積層体において、基材と支持層との一方におけるポリプロピレンの質量比率は、90質量%未満でもよい。もしくは、積層体において、バリア層におけるポリプロピレンの質量比率は、90質量%未満でもよい。
【0101】
上記実施形態及び上記変形例では、基材上にアンカーコート層及び蒸着層が設けられるが、これに限られない。例えば、シーラント層上に蒸着層が設けられてもよい。この場合、シーラント層と蒸着層との間にアンカーコート層が設けられてもよい。このとき、シーラント層とアンカーコート層とは、共押出層でもよい。もしくは、基材上にアンカーコート層及び蒸着層が含まれ、かつ、シーラント層上に蒸着層が設けられてもよい。
【実施例】
【0102】
本開示を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本開示はこれらの例に限定されるものではない。
【0103】
<基材、支持層及びシーラント層>
基材及び支持層の組み合わせの1つ(第1組み合わせ)として、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(三井化学東セロ株式会社製、商品名:ME-1、MD熱収縮率:2.0%、厚さ:20μm)を準備した。基材及び支持層の組み合わせの別の1つ(第2組み合わせ)として、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(MD熱収縮率:3.7%、厚さ:20μm)を準備した。基材及び支持層の組み合わせの更に別の1つ(第3組み合わせ)として、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(MD熱収縮率:6.7%、厚さ:20μm)を準備した。また、シーラント層として、以下の5種類のシーラント層を準備した。
第1シーラント層:無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(東レフィルム加工株式会社製、商品名:トレファンZK93KM、厚さ:60μm)
第2シーラント層:ポリプロピレン積層フィルム(1)(厚さ:60μm)
第3シーラント層:ポリプロピレン積層フィルム(2)(厚さ:60μm)
第4シーラント層:ポリプロピレン積層フィルム(3)(厚さ:60μm)
第5シーラント層:ポリプロピレン積層フィルム(4)(厚さ:60μm)
【0104】
ポリプロピレン積層フィルム(1)ないしポリプロピレン積層フィルム(4)のそれぞれは、表層(10μm)/中間層(40μm)/裏層(10μm)の3層構造を有する。ポリプロピレン積層フィルム(1)の表層と裏面とのそれぞれは、ホモポリプロピレン樹脂(h-PP)とプロピレン-エチレンランダム共重合体(r-PP)との混合物(h-PP:r-PP=7:3)から形成される。ポリプロピレン積層フィルム(2)ないしポリプロピレン積層フィルム(3)における表層と裏面とのそれぞれは、r-PPから形成される。ポリプロピレン積層フィルム(1)ないしポリプロピレン積層フィルム(4)の中間層は、プロピレン-エチレンブロック共重合体(b-PP)から形成される。ポリプロピレン積層フィルム(1)の中間層におけるエラストマー(三井化学株式会社製、タフマーPN―3560)の添加量は、31質量%である。ポリプロピレン積層フィルム(2)の中間層には、エラストマーが添加されていない。ポリプロピレン積層フィルム(3)の中間層におけるエラストマー(三井化学株式会社製、タフマーPN―3560)の添加量は、31質量%である。ポリプロピレン積層フィルム(4)の中間層におけるエラストマー(三井化学株式会社製、タフマーPN―3560)の添加量は、55質量%である。
【0105】
<密着層形成用組成物の調製>
γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン:アクリルポリオール=1:5の比率で混合、撹拌することによって混合溶液を生成した。続いて、トリレンジイソシアネート(TDI)を、アクリルポリオールのOH基の数に対してトリレンジイソシアネートのNCO基の数が等量となるように上記混合溶液に加えた。そして、当該混合溶液を2質量%になるよう酢酸エチルで希釈した。これにより、密着層形成用組成物(アンカーコート剤)を調製した。
【0106】
<バリアコート用コーティング液αの調製>
下記のA液、B液及びC液を10gずつ準備し、混合することでコーティング液αを調製した。
A液:テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4)17.9gとメタノール10gに0.1N塩酸72.1gを加えて30分間攪拌して加水分解させた固形分5質量%(SiO2換算)の加水分解溶液。
B液:ポリビニルアルコールの5質量%水/メタノール溶液(水:メタノールの質量比は95:5)。
C液:1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルプロピル)イソシアヌレートを水/イソプロピルアルコールの混合液(水:イソプロピルアルコールの質量比は1:1)で固形分5質量%に希釈した加水分解溶液。
【0107】
<バリアコート用コーティング液βの調製>
まず、TEOSとメタノールと0.1N塩酸とを、質量比が45/15/40となるように混合し、TEOS加水分解溶液を得た。この溶液と、ポリビニルアルコール(以下「PVA」と言う)の5質量%水溶液と、シランカップリング剤としての1,3,5-トリス(3-メトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを水/IPA(イソプロピルアルコール)=1/1溶液で固形分5質量%(R2Si(OH)3換算)に希釈した溶液と、の3つの溶液を混合してコーティング液βを調製した。コーティング液βは、TEOSのSiO2固形分(換算値)とイソシアヌレートシランのR2Si(OH)3固形分(換算値)とPVA固形分との質量比率が40/5/55になるように調液した。
【0108】
<バリアコート用コーティング液γの調製>
以下の「水性ポリウレタン樹脂」:40~75質量%と、「水溶性高分子」:10~40質量%と、「シランカップリング剤」:5~20質量%とを配合することによって、コーティング液γを調製した。
水性ポリウレタン樹脂:酸基含有ポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含有する水性ポリウレタン樹脂の水性分散体、三井化学株式会社製の水性ポリウレタンディスバージョン「タケラック(登録商標)WPB-341」、固形分率30%。
水溶性高分子:鹸化度98~99%、重合度500のポリビニルアルコール(商品名:ポバールPVA-105、株式会社クラレ製)。
シランカップリング剤:3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(商品名:KBE-403、信越化学工業株式会社製)。
【0109】
<2液硬化型のウレタン接着剤(a)~(k)の調製>
まず、主剤として、以下に示す2種類のポリオールを準備した。なお、いずれの主剤も、溶剤として酢酸エチルを含む。
主剤A:ジオールとしてエチレングリコールとネオペンチルグリコールを等量ずつ用いるとともに、ジカルボン酸としてアジピン酸を用いて、ジオールとジカルボン酸のモル比が1:1となるように重合して得られるポリエステルポリオール(分子量(Mw):28,000)
主剤B:ジオールとしてエチレングリコールと1,6ーヘキサンジオールを等量ずつ用いるとともにと、ジカルボン酸としてテレフタル酸を用いて、ジオールとジカルボン酸のモル比が1:1となるように重合して得られるポリエステルポリウレタンポリオール(分子量(Mw):27,000)
【0110】
硬化剤として、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと記載)のトリメチロールプロパン(以下、TMPと記載)アダクト体と、キシリレンジイソシアネート(以下、XDIと記載)のTMPアダクト体との混合物(モル比1:1)を準備した。次に、上記主剤Aと上記硬化剤とを、NOC/OHが1.5になるように配合することによって、2液硬化型のウレタン接着剤(a)を得た。
【0111】
硬化剤として、IPDIのTMPアダクト体と、XDIのTMPアダクト体との混合物(モル比1:1)を準備した。次に、上記主剤Aと上記硬化剤とを、NOC/OHが1.8になるように配合することによって、2液硬化型のウレタン接着剤(b)を得た。
【0112】
硬化剤として、IPDIのTMPアダクト体と、XDIのTMPアダクト体との混合物(モル比2:1)を準備した。次に、上記主剤Aと上記硬化剤とを、NOC/OHが1.5になるように配合することによって、2液硬化型のウレタン接着剤(c)を得た。
【0113】
硬化剤として、IPDIのTMPアダクト体と、XDIのTMPアダクト体との混合物(モル比3:1)を準備した。次に、上記主剤Aと上記硬化剤とを、NOC/OHが1.5になるように配合することによって、2液硬化型のウレタン接着剤(d)を得た。
【0114】
硬化剤として、IPDIのTMPアダクト体と、XDIのTMPアダクト体との混合物(モル比3:1)を準備した。次に、上記主剤Aと上記硬化剤とを、NOC/OHが1.8になるように配合することによって、2液硬化型のウレタン接着剤(e)を得た。
【0115】
硬化剤として、IPDIのTMPアダクト体と、XDIのTMPアダクト体との混合物(モル比3:1)を準備した。次に、上記主剤Bと上記硬化剤とを、NOC/OHが1.8になるように配合することによって、2液硬化型のウレタン接着剤(f)を得た。
【0116】
硬化剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと記載)のビュレット体を準備した。次に、上記主剤Aと上記硬化剤とを、NOC/OHが1.5になるように配合することによって、2液硬化型のウレタン接着剤(g)を得た。
【0117】
硬化剤として、HDIのビュレット体を準備した。次に、上記主剤Aと上記硬化剤とを、NOC/OHが1.8になるように配合することによって、2液硬化型のウレタン接着剤(h)を得た。
【0118】
硬化剤として、IPDIのTMPアダクト体を準備した。次に、上記主剤Aと上記硬化剤とを、NOC/OHが1.5になるように配合することによって、2液硬化型のウレタン接着剤(i)を得た。
【0119】
硬化剤として、IPDIのTMPアダクト体を準備した。次に、上記主剤Aと上記硬化剤とを、NOC/OHが1.8になるように配合することによって、2液硬化型のウレタン接着剤(j)を得た。
【0120】
硬化剤として、IPDIのTMPアダクト体を準備した。次に、上記主剤Bと上記硬化剤とを、NOC/OHが1.8になるように配合することによって、2液硬化型のウレタン接着剤(k)を得た。
【0121】
(実施例1)
バーコートを用いて基材に密着層形成用組成物を塗工し、当該密着層形成用組成物を50℃で乾燥させた。これにより、厚さ0.2μmの密着層(アンカーコート層)を形成した。次に、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、厚さ40nmの酸化ケイ素からなる透明な蒸着層(シリカ蒸着層)を形成した。
【0122】
次に、バーコートを用いて蒸着層上にコーティング液αを塗工し、当該コーティング液αを60℃で1分間乾燥させた。これにより、厚さ300nmのバリアコートを蒸着層上に形成した。以上により、基材、密着層、蒸着層及びバリアコートを有するバリア層を形成した。
【0123】
次に、バリア層のバリアコート上に、2液硬化型のウレタン接着剤(a)を塗工し、厚さ3μmの接着層(第2接着層)を形成した。次に、当該接着層を介して支持層をドライラミネート法によってラミネートした。次に、バリア層の基材上に、2液硬化型のウレタン接着剤(a)を塗工し、厚さ3μmの接着層(第1接着層)を形成した。次に、当該接着層を介して上記第1シーラント層をドライラミネート法によってラミネートした。これにより、支持層、第2接着層、バリアコート、蒸着層、密着層、基材、第1接着層、及び上記第1シーラント層の積層構造を有する積層体(ガスバリア積層体)を製造した。得られた積層体におけるポリプロピレンの含有量は90質量%以上であった。
【0124】
(実施例2~8)
接着剤(a)の代わりに2液硬化型のウレタン接着剤(b)~(h)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~8の積層体をそれぞれ製造した。
【0125】
(実施例9~16)
コーティング液αの代わりにコーティング液βを用いたこと以外は、実施例1~8と同様にして、実施例9~16の積層体をそれぞれ製造した。
【0126】
(実施例17~24)
コーティング液αの代わりにコーティング液γを用いたこと以外は、実施例1~8と同様にして、実施例17~24の積層体をそれぞれ製造した。
【0127】
(実施例25~32)
基材と支持層の組み合わせの組み合わせを第2組み合わせとしたこと、及び、コーティング液αの代わりにコーティング液βを用いたこと以外は、実施例1~8と同様にして、実施例25~32の積層体をそれぞれ製造した。
【0128】
(実施例33~40)
基材と支持層の組み合わせの組み合わせを第3組み合わせとしたこと、及び、コーティング液αの代わりにコーティング液βを用いたこと以外は、実施例1~8と同様にして、実施例33~40の積層体をそれぞれ製造した。
【0129】
(実施例41~48)
シーラント層として第2シーラント層を用いたこと、及び、コーティング液αの代わりにコーティング液βを用いたこと以外は、実施例1~8と同様にして、実施例41~48の積層体をそれぞれ製造した。
【0130】
(実施例49~56)
シーラント層として第3シーラント層を用いたこと、及び、コーティング液αの代わりにコーティング液βを用いたこと以外は、実施例1~8と同様にして、実施例49~56の積層体をそれぞれ製造した。
【0131】
(実施例57~64)
シーラント層として第4シーラント層を用いたこと、及び、コーティング液αの代わりにコーティング液βを用いたこと以外は、実施例1~8と同様にして、実施例57~64の積層体をそれぞれ製造した。
【0132】
(実施例65~72)
シーラント層として第5シーラント層を用いたこと、及び、コーティング液αの代わりにコーティング液βを用いたこと以外は、実施例1~8と同様にして、実施例65~72の積層体をそれぞれ製造した。
【0133】
(実施例73~80)
貼り合わせの順番を、支持層、第2接着層、基材、密着層、蒸着層、バリアコート、第1接着層、及び上記第1シーラント層としたこと以外は、実施例9~16と同様にして、実施例73~80の積層体をそれぞれ製造した。
【0134】
(比較例1~3)
接着剤(a)の代わりに2液硬化型のウレタン接着剤(i)~(k)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1~3の積層体をそれぞれ製造した。
【0135】
(比較例4~6)
接着剤(a)の代わりに2液硬化型のウレタン接着剤(i)~(k)を用いたこと以外は、実施例9と同様にして、比較例4~6の積層体をそれぞれ製造した。
【0136】
(比較例7~9)
接着剤(a)の代わりに2液硬化型のウレタン接着剤(i)~(k)を用いたこと以外は、実施例17と同様にして、比較例7~9の積層体をそれぞれ製造した。
【0137】
(比較例10~12)
接着剤(a)の代わりに2液硬化型のウレタン接着剤(i)~(k)を用いたこと以外は、実施例25と同様にして、比較例10~12の積層体をそれぞれ製造した。
【0138】
(比較例13~15)
接着剤(a)の代わりに2液硬化型のウレタン接着剤(i)~(k)を用いたこと以外は、実施例33と同様にして、比較例13~15の積層体をそれぞれ製造した。
【0139】
(比較例16~18)
接着剤(a)の代わりに2液硬化型のウレタン接着剤(i)~(k)を用いたこと以外は、実施例41と同様にして、比較例16~18の積層体をそれぞれ製造した。
【0140】
(比較例19~21)
接着剤(a)の代わりに2液硬化型のウレタン接着剤(i)~(k)を用いたこと以外は、実施例49と同様にして、比較例19~21の積層体をそれぞれ製造した。
【0141】
(比較例22~24)
接着剤(a)の代わりに2液硬化型のウレタン接着剤(i)~(k)を用いたこと以外は、実施例57と同様にして、比較例22~24の積層体をそれぞれ製造した。
【0142】
(比較例25~27)
接着剤(a)の代わりに2液硬化型のウレタン接着剤(i)~(k)を用いたこと以外は、実施例65と同様にして、比較例25~27の積層体をそれぞれ製造した。
【0143】
(比較例28~30)
貼り合わせの順番を、支持層、第2接着層、基材、密着層、蒸着層、バリアコート、第1接着層、及び上記第1シーラント層としたこと以外は、比較例4~6と同様にして、比較例28~30の積層体をそれぞれ製造した。
【0144】
<基材の熱収縮率の測定方法>
バリア層に含まれる基材の熱収縮率は、以下の手順に従って測定した。実施例1~8及び比較例1~3における基材の熱収縮率の測定結果は、以下の表1に示す。実施例9~16及び比較例4~6における基材の熱収縮率の測定結果は、以下の表2に示す。実施例17~24及び比較例7~9における基材の熱収縮率の測定結果は、以下の表3に示す。実施例25~32及び比較例10~12における基材の熱収縮率の測定結果は、以下の表4に示す。実施例33~40及び比較例13~15における基材の熱収縮率の測定結果は、以下の表5に示す。実施例41~48及び比較例16~18における基材の熱収縮率の測定結果は、以下の表6に示す。実施例49~56及び比較例19~21における基材の熱収縮率の測定結果は、以下の表7に示す。実施例57~64及び比較例22~24における基材の熱収縮率の測定結果は、以下の表8に示す。実施例65~72及び比較例25~27における基材の熱収縮率の測定結果は、以下の表9に示す。実施例73~80及び比較例28~30における基材の熱収縮率の測定結果は、以下の表10に示す。
【0145】
(a)
図4に示すように、測定対象である基材単体を200mm×200mmに切り出して測定サンプル500とした。
(b)
図4に示すように、測定サンプル500のTD方向に平行な120mm以上の長さの2本の直線L1及びL2を、100mmの間隔を空けて書き込んだ。
(c)
図4に示すように、測定サンプル500のMD方向に平行な120mm以上の長さの2本の直線L3及びL4を、100mmの間隔を空けて書き込んだ。
(d)
図4に示すように、直線L1に20mm間隔で7箇所に目盛りN1~N7を書き込んだ。直線L2~L4にも同様に目盛りを書き込んだ。このとき、直線L1の目盛りN1~N7のそれぞれと、直線L2の目盛りN1~N7のそれぞれとを直線で結んだ場合に、当該直線がMD方向と平行となるように、直線L1,L2の目盛りの位置を合わせた。また、直線L3の目盛りN1~N7のそれぞれと、直線L4の目盛りN1~N7のそれぞれとを直線で結んだ場合に、当該直線がTD方向と平行となるように、直線L3,L4の目盛りの位置を合わせた。
(e)所定の温度(150℃又は160℃)に加熱したオーブン内のガラス板上に、テフロン(登録商標)シートに載せた測定サンプル500を置き、15分間加熱した。加熱後、測定サンプル500をオーブンから取り出し、室温(25℃)で30分間放置した。
(f)直線L1の目盛りN1(L1とN1との交点)と直線L2の目盛りN1(L2とN1との交点)との直線距離をMD方向長さとして加熱前後で測定し、下記式(1)によりMD方向熱収縮率を求めた。同様にして目盛りN1~N7のそれぞれの位置でのMD方向熱収縮率を求め、それらの平均値を測定サンプル500のMD方向熱収縮率とした。
MD方向熱収縮率(%)=(加熱前のMD方向長さ-加熱後のMD方向長さ)/加熱前のMD方向長さ×100 …(1)
【0146】
<レトルト処理>
各実施例及び各比較例で作製した積層体を用いて、4辺をシール部とする包装袋を作製した。包装袋には、内容物として水を充填した。その後、130℃、60分のレトルト殺菌処理を行った。
【0147】
<第1接着層の弾性率測定>
実施例1~80及び比較例1~30のそれぞれにおいて、レトルト処理後の包装袋の一部である積層体を切り出した。そして、切り出した積層体から第1接着層の断面を露出させた断面試料を以下の方法で作製した。
【0148】
<断面試料作成>
まず、切り出した積層体の表面及び裏面をコロナ処理した。続いて、当該積層体を2mm×3mmの短冊型となるようにカミソリで裁断した後、裁断されたフィルム片を樹脂に包埋した。当該樹脂として、可視光硬化樹脂(東亞合成株式会社製、「アロニックス LCR D-800」)を用いた。上記フィルム片を樹脂にて包埋した後、光照射にて当該樹脂を硬化させた。上記樹脂の硬化後、樹脂に包埋される上記フィルム片をSPM試料ホルダー用インサートで固定した。続いて、常温(25℃)において固定されたフィルム片のトリミング及び断面切削をガラスナイフで行った。続いて、切削スピードを3mm/s、切削膜厚を500nmに設定し、ダイヤモンドナイフで鏡面になるまで断面切削を実施した。断面切削装置として、ウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社製、EM UC7)を用いた。また、切削方向は、上記フィルム片に含まれる各層の界面に対して水平な方向とした。断面が露出した試料(断面試料)の形状測定及び弾性率測定は、SPM試料ホルダー用インサートで固定された状態で実施された。
【0149】
<弾性率測定>
次に、走査プローブ顕微鏡(SPM)によって第1接着層の弾性率を以下の方法で測定した。上記断面試料に対して、SPM(走査型プローブ顕微鏡)による形状測定および弾性率測定を行った。なお、SPMとして、オックスフォード・インストゥルメンツ製「JupiterXR(商品名)」を用いた。また、SPMのカンチレバー(測定探針)としてnanotools製「biosphere B30-FM(商品名)」(先端半径:30nm、バネ定数:2.8N/m)を用いた。上記断面試料の測定および第1接着層の弾性率の算出においては、カンチレバーの先端半径は製品の個別特性値を参照し、カンチレバーのバネ定数と光てこ感度とは、SPMの校正機能であるGetReal法により取得した値を用いた。
【0150】
まず、SPMのACモード(タッピングモード)により視野範囲1μm×1μm、走査速度2Hzの条件にて、上記断面試料の層界面と垂直に走査した形状測定を行った。ここで、視野中心が第1接着層の断面の膜厚中央となるように設定した。次に、SPMのコンタクトモードにより、最大荷重:10nN、試験速度:500nm/sの条件にて第1接着層に対してカンチレバーを押し込み、引き抜いた際のフォースカーブ(荷重変位曲線)を取得した。フォースカーブは、上記視野範囲において、100nm間隔で縦10点×横10点の計100点取得した。カンチレバーの押し込みと、引き抜きとのそれぞれにて、変位500nm以上のフォースカーブを取得した。上記断面試料に対しては、試料水準ごとに2箇所行い、合計200点のフォースカーブを取得した。なお、カンチレバーの弾性率を865GPaと仮定し、ポアソン比を0.2と仮定し、第1接着層のポアソン比を0.33と仮定した。
【0151】
得られたフォースカーブに対してJKR(Johnson-Kendall-Roberts)理論の弾性接触モデルを用いた解析を行い、第1接着層の弾性率を算出した。JKR理論による弾性率の算出は、SPMの解析ソフトウェアにより、試料の弾性率・変位原点・最大凝着力をフィッティングパラメーターとしたフィッティング解析により行った。フォースカーブ1点ごとの解析範囲は、最大荷重到達後の引き抜き時の荷重変化のうち、荷重が最初に「(最大荷重-最小荷重)×0.65+最小荷重」に達した際の荷重および変位を起点とし、最小荷重に達した際の荷重および変位を終点とする範囲とした。
【0152】
以上の手順により、試料水準ごとに取得したフォースカーブ200点の弾性率の平均値を算出した。各実施例及び各比較例における第1接着層の弾性率の測定結果は、以下の表1~10に示す。なお、各実施例及び各比較例において、第2接着層の弾性率は、対応する第1接着層の弾性率と同一とみなすことが可能である。
【0153】
(酸素透過度測定)
レトルト処理後の積層体に対し、酸素透過度(OTR)の測定を行った。測定は酸素透過度測定装置(Modern Control社製、OX-TRAN(登録商標) 2/20)を用いて、温度30℃、相対湿度70%の条件で行った。OTRの測定方法は、JIS K-7126、B法(等圧法)、及びASTM D3985-81に準拠し、OTRの測定値は単位[cc/m2・day・atm]で表記した。各実施例及び各比較例のOTRの測定結果を下記表1~10に示す。
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
表1~3に示されるように、コーティング液αを用いた実施例及び比較例よりも、コーティング液βもしくはコーティング液γを用いた実施例及び比較例の酸素透過度が低くなっている。
【0165】
表1~3に示されるように、基材がOPPフィルムである場合第1接着層の弾性率が43MPaを超えて大きくなるほど、積層体の酸素透過度の測定結果が高くなっている。特に表1~3に示されるように、第1接着層の弾性率が53MPa以上である場合の酸素透過度は、第1接着層の弾性率が53MPa未満である場合の酸素透過度よりも急激に大きくなる傾向がある。例えば、実施例6と比較例1とを比較した場合、比較例1の酸素透過度は、実施例6の酸素透過度の1.6倍以上である。また、実施例22と比較例7とを比較した場合、比較例7の酸素透過度は、実施例22の酸素透過度の1.5倍以上である。また、第1接着層の弾性率が10MPa未満である場合も、酸素透過度が比較的高くなっている。これは、第1接着層が柔らかすぎることによる弊害が出てきているものと推察される。以上の結果より、第1接着層の弾性率を適度な範囲に調整することによって、コーティング液の種類にかかわらず、良好な酸素透過度を示す積層体が得られると推察できる。
【0166】
<シーラント層の弾性率>
第1シーラント層ないし第5シーラント層のそれぞれから、20mm角のサンプルを形成した。続いて、卓上形精密万能試験機(株式会社島津製作所製 AUTOGRAPH AGS-X 5kN)を用いて、温度:30℃、湿度:70%、標点間距離:250mm、引張速度:5m/分の条件にて、各サンプルを0.05%~0.25%伸ばしたときに測定される引張応力から、第1シーラント層ないし第5シーラント層の弾性率(MD方向の弾性率、ならびに、TD方向の弾性率)を測定した。第1シーラント層ないし第5シーラント層のそれぞれにおけるMD方向の弾性率とTD方向の弾性率との測定結果は、以下の表11に示す。
【0167】
<充填適性>
各実施例及び各比較例で作製した積層体を用いて、95mm×140mmサイズの短辺の一辺を残して三方袋を作製した。続いて、給袋包装機にて水を70g充填した後に当該三方袋の開口部を加熱封止し、包装袋1000袋を作製した。そして、包装袋が良品かどうかをシール部からの水の漏れの有無によって確認した。各実施例及び各比較例における充填適性の評価は、以下の評価基準に基づいて実施した。各実施例における評価結果を以下の表12に示し、各比較例における評価結果を以下の表13に示す。
〔評価基準〕
A:良品率が98%以上
B:良品率が95%以上98%未満
C:良品率が95%未満
【0168】
<包装袋の耐久性評価>
各実施例及び各比較例で作製した積層体を用いて、95mm×140mmサイズの三方袋を作製した。この三方袋に水70gを充填した後、当該三方袋を加熱封止した。その後、128℃、15分のレトルト殺菌処理を実施し、試験用サンプルを作製した。各実施例及び各比較例にて、100袋の試験サンプルを作製した。続いて、各実施例及び各比較例にて、上記100袋の試験サンプルを、床面からの高さが100cmとなる位置から試験サンプルを床面に対して水平にして自由落下させた。当該自由落下を100回繰り返して実施した。その後、破裂しなかった試験サンプルの残存率に基づいて、包装袋の耐久性を評価した。各実施例及び各比較例における包装袋の耐久性の評価は、以下の評価基準に基づいて実施した。各実施例における評価結果を以下の表12に示し、各比較例における評価結果を以下の表13に示す。
〔評価基準〕
A:残存率が100%
B:残存率が95%以上100%未満
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
上記表12及び表13より、実施例57~72及び比較例22~27においては、実施例1~56,73~80などと比較して、包装袋の充填適性が低かった。特に、第5シーラント層が用いられている実施例65~72及び比較例25~27における包装袋の充填適性が低かった。これらは、第4シーラント層のMD方向の弾性率が第1シーラント層と比較して低かったこと、ならびに、第5シーラント層が柔らかすぎたことが一因と推察される。第3シーラント層が用いられている実施例49~56及び比較例22~24においては、実施例1~48,57~80などと比較して、包装袋の耐久性が低かった。これは、第3シーラント層が硬すぎたことが一因と推察される。
【符号の説明】
【0173】
1…積層体、10…バリア層、11…基材、12…密着層、13…蒸着層、14…バリアコート、20…シーラント層、30…第1接着層、40…支持層、50…第2接着層。
【要約】
ガスバリア積層体は、バリアコートが設けられる基材を有するバリア層と、バリア層の第1主面に重なるシーラント層と、バリア層の第2主面に重なる支持層と、バリア層及びシーラント層を接着する第1接着層と、バリア層及び支持層を接着する第2接着層と、を備え、第1接着層は、2液硬化型のウレタン接着剤を含み、基材はポリオレフィンを含み、ガスバリア積層体に対してレトルト処理を実施した後、走査プローブ顕微鏡で測定された第1接着層の弾性率は、5MPa以上53MPa未満である。