(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】画像診断における機械的血栓除去装置の視認性の向上
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20250212BHJP
A61B 90/00 20160101ALI20250212BHJP
【FI】
A61B17/22 528
A61B90/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020102105
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2023-04-19
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515248931
【氏名又は名称】ニューラヴィ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ブレンダン・ケーシー
(72)【発明者】
【氏名】シェーン・コンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】エイダン・ダフィー
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・ケリー
(72)【発明者】
【氏名】ジャクリーン・オゴーマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・オマリー
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・ベイル
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06022374(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0172769(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0089219(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0266542(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0228267(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/22
A61B 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管医学処置の際に使用するための拡張可能な機械装置であって、前記拡張可能な機械装置は、
ストラットであって、上側面と、その反対側の下側面と、前記上側面から前記反対側の下側面まで延在する前記ストラットの内側側壁によって前記ストラット内に画定されたアイレットと、を有し、前記アイレットは少なくとも1つの
凹部を含む幾何学的形状を有する、ストラットと、
前記ストラットの前記アイレット内に配置されたマーカーリベットと、を備え、
圧着前の状態では、前記マーカーリベットの外面のいずれの部分も、中に前記アイレットが画定されている前記ストラットの前記内側側壁に物理的に接触せず、
圧着後の状態では、前記マーカーリベットは、前記アイレットを画定する前記ストラットの前記内側側壁に対して径方向外側に前記ストラットの前記上側面及び前記下側面を覆う重なり領域を形成し、
前記圧着前の状態では、前記マーカーリベットは、
少なくとも1つのくぼみを含む幾何学的形状を有し、前記少なくとも1つのくぼみは、前記ストラットの前記アイレットの
対応する前記少なくとも1つの
凹部と、前記アイレットの横方向軸に沿って並んでいる、拡張可能な機械装置。
【請求項2】
前記アイレットの前記幾何学的形状は、1つより多くの前記
凹部を含む、請求項1に記載の拡張可能な機械装置。
【請求項3】
前記アイレットの前記幾何学的形状は、縦方向軸及び/又は
前記横方向軸に沿って互いの対称の鏡像となった前記
凹部を含む、請求項2に記載の拡張可能な機械装置。
【請求項4】
前記アイレットの前記幾何学的形状は、蝶形バンデージ形状、ロケット形状、又はボウタイ形状のうちの1つである、請求項1に記載の拡張可能な機械装置。
【請求項5】
前記アイレットは、前記縦方向軸に沿って延在する第1及び第2の側部と、前記横方向軸に沿って延在する第3及び第4の側部とを有し、前記少なくとも1つの
凹部は、前記第1の側部に画定された第1の
凹部、前記第2の側部に画定された第2の
凹部、及び前記第3の側部に画定された第3の
凹部を含む、請求項3に記載の拡張可能な機械装置。
【請求項6】
前記第4の側部に前記少なくとも1つの
凹部が画定されていない、請求項5に記載の拡張可能な機械装置。
【請求項7】
前記マーカーリベットの前記少なくとも1つのくぼみは、前記第1の
凹部に対応する第1のくぼみ、及び前記第2の
凹部に対応する第2のくぼみを含む、請求項5に記載の拡張可能な機械装置。
【請求項8】
前記マーカーリベットは、前記圧着後の状態では、前記上側面を覆う前記重なり領域を画定する上側部と、前記下側面を覆う前記重なり領域を画定する下側部と、前記上側部と前記下側部との間に延在する中間部とを含み、前記中間部の前記外面の全体に沿って、中に前記アイレットが画定されている前記ストラットの前記内側側壁との間に隙間が存在する、請求項1に記載の拡張可能な機械装置。
【請求項9】
前記上側部は前記上側面から見たときに楕円形であり、前記下側部は前記下側面から見たときに楕円形である、請求項8に記載の拡張可能な機械装置。
【請求項10】
前記マーカーリベットは、前記ストラットの前記アイレット内に圧着によって固定されている、請求項1に記載の拡張可能な機械装置。
【請求項11】
中に前記アイレットが画定されている前記ストラットの前記内側側壁の、前記上側面に沿った上側縁部、及び前記下側面に沿った下側縁部のうちの少なくとも一方に面取り部を有する、請求項1に記載の拡張可能な機械装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内医療システムに関する。具体的には、本発明は、画像診断における視認性を向上させた、改善された機械的血栓除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
急性虚血性脳卒中は、脳の脳動脈内の血栓性又は塞栓性の閉塞物(例えば、妨害物)によって引き起こされる。閉塞は、典型的には、血管を通って順行性方向(通常の血流の方向)に移動し、最終的に脳の脳動脈内に詰まった、身体の別の部分から遊離した血液血塊によって引き起こされる。血塊は、経時的に血管内の血塊を小さくし、かつ更に適所に押し込み得る、拍動圧力勾配(すなわち、近位血栓面に作用する全身性血圧から遠位血栓面での逆行性の側副血流からの圧力を引く)を受ける。加えて、血塊と血管の内壁との間にある程度の生物学的接着が生じ得る。
【0003】
血栓除去術として既知の手順を使用し、機械装置を使用して血管内に詰まっている血栓、閉塞物、妨害物、又は血塊を除去することができる。血栓除去治療又は処置は、典型的には、脳卒中後の比較的短い期間(例えば、脳卒中の発症後約48時間未満)内の患者に対して実施され、典型的には約1.0mm超の直径を有する大型血管閉塞物に最適である。典型的には、例えば、血管造影、MRI、CT、又はCT血管造影(CT angiography、CTA)などの撮像法を使用して、血栓除去治療がその特定の患者に好適であるかどうかを判定する。
【0004】
血栓除去処置若しくは治療の間、医師若しくは介入医は、典型的には鼠径部又は腕に位置する動脈内に、又は頸動脈を通る直接アクセスによって、脈管構造を通してガイドワイヤを血管内導入する。ガイドワイヤは、脈管構造を通って血塊、妨害物、又は閉塞物の標的位置へと進められる。ガイドワイヤが適切に位置付けられると、典型的には約1.0mm未満の外径を有するマイクロカテーテルは、マイクロカテーテルを通して軸方向に画定された管腔を通過するガイドワイヤの上をたどる。ガイドワイヤ及びマイクロカテーテルは、標準的なインターベンション技術を用いて血塊又は閉塞物を横断するように使用される。圧縮状態にあるステント又は機械的血栓除去装置を、マイクロカテーテルの管腔を通して標的部位へと誘導し得る。ステント又は機械的血栓除去装置は、マイクロカテーテルから配備されると自動的に拡張し、本来の拡大状態となる。ステント又は機械的血栓除去装置は、典型的には、ステンレス鋼、ニッケル-チタン、又はタンタルなどの生体適合性材料で作製される。
【0005】
血栓除去処置は、画像診断、典型的にはX線透視法(すなわち、連続的X線撮像)によって補助される医療施設の心臓カテーテル室で行われる。血栓除去処置の間、介入医又は医師は、画像診断による支援を受けて血栓除去装置を閉塞における最適な位置に配備する。また、画像診断は、血管の形状、機械的血栓除去装置における血栓の位置、及び、血栓が機械的血栓除去装置と実質的に同じ速度で後退している(血管を通って近位側に引き出されている)かどうかを可視化するのに役立ち得る。また、画像診断を使用して、血管内に基礎的な狭窄があるかどうかを判定することもできる。
【0006】
従来の機械的血栓除去装置は、典型的には、ニチノール(ニッケル55重量%、残部はチタン)又は他の超弾性合金若しくは形状記憶合金で構成される。これらの合金は変形可能/圧縮可能であるが、展開又は加熱されると変形前の本来の形状に自動的に(すなわち、何らかの外部からの物理力を加える必要がない)戻る(記憶している)。
図1は、単一材料、例えば、ニチノールのみで作製された従来のワイヤ100の径方向断面図である。典型的には、レーザーカット又は他の従来技術を用いて、所望のパターン、例えば、骨格又はケージのような拡張可能なメッシュを作製する。この例では、ニチノールワイヤの外径(OD)から中心(C)にかけて、径方向内側へのレーザーカットが5ヶ所で行われ、5つのストラット又はパイ形のウェッジ105が形成されている。当然ながら、2つ以上の所望の数のストラット又はパイ形ウェッジが形成されるように、任意の数の切断を行ってもよい。
【0007】
続いて、形状記憶合金をマンドレル上に位置決めし、加熱することによって、第2の形状を定める。有利なことに、形状記憶合金は、頑丈な骨格又はフレームとなる一方で、その弾性特性により、マイクロカテーテルの管腔内に受容され得るように変形された後に、元の形状を回復することが可能である。機械的拘束及び熱処理によって機械装置の形状を定めることができることから、ニチノール部品は、カテーテルの管腔に押し込まれると、より小さい半径、すなわち半径が減少した状態に折り畳まれる(ラップダウン(wrap down)される)形状に製造され得る。機械装置がカテーテルの遠位端から出されると、機械装置は、より大きな径方向形状を自動的に回復又は復元する。こうした有益な特性がある一方で、形状記憶合金を使用して機械的血栓除去装置を製造する場合に付随する重大な欠点の1つとして、X線透視撮影での視認性が比較的乏しいこと、すなわち、放射線不透過性が比較的低いことがある。この欠点を回避するために、従来の機械的血栓除去装置は、白金コイル又は金リベットなどの追加的な放射線不透過性部品(例えば、マーカーなど)を組み込むことによって、画像診断の際の視認性を改善するように設計されていることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、画像診断(例えば、X線透視法)の際の視認性を向上させた、改善された機械的血栓除去装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、画像診断の際の視認性を向上させた血栓除去装置に関する。
【0010】
本発明の別の態様は、血管医学処置の際に使用するための拡張可能な機械装置に関し、当該装置は、ストラットにおいて画定されたアイレットを有するストラットを備え、アイレットは少なくとも1つのインデント又はアウトデントを含む幾何学的形状を有する。ストラットのアイレット内には、マーカーリベットが固定されている。アイレットの幾何学的形状は、1つ以上のインデント又はアウトデントを含んでもよい。加えて、アイレットのインデント又はアウトデントは、縦方向軸及び/又は横方向軸に沿って互いの対称の鏡像となっていてもよい。特定の構成では、アイレットの幾何学的形状は、蝶形バンデージ形状、ロケット形状、又はボウタイ形状のうちの1つであってもよい。
【0011】
本発明の更に別の態様は、血管医学処置の際に使用するための拡張可能な機械装置に関し、当該装置は、外面及び外径径方向プロファイルを有するストラットを備え、ストラットの外面に凹部が画定され、凹部は径方向内側に延びている。ストラットの凹部内に受容かつ固定されたU字形マーカーリベットを更に含む装置。組み立て後、ストラットとU字形マーカーリベットの組立体の全体の径方向プロファイルはストラット単独での外径径方向プロファイル以下であり、好ましくは互いに同一面となっている。このような構成において、凹部は、環状溝部、又はウェッジ形状の径方向断面プロファイルを有する角度付き凹部であってもよい。
【0012】
本発明の更に別の態様は、血管医学処置の際に使用するための拡張可能な機械装置に関し、当該装置は、複数のストラットであって、複数のストラットのそれぞれにおいてアイレットが画定されている、複数のストラットを備える。隣接するアイレットは互いに対して径方向にオフセットされた機械装置の縦方向軸に沿って配置されている。
【0013】
一方で、本発明の更に別の態様は、血管医学処置の際に使用するための拡張可能な機械装置に関し、当該装置は、ストラットであって、当該ストラットにおいて画定されたアイレットを有する、ストラットを備え、アイレットは、1つ以上の段のある層を形成するテーパ状側壁を有する。マーカーリベットは、ストラットのアイレット内に固定されている。
【0014】
本発明の更に別の態様は、血管医学処置の際に使用するための拡張可能な機械装置に関し、当該装置は、内部に画定された壁部を有するアイレットを有するストラットを備える。ストラットの壁部の最外上側縁部又は最内下側縁部のうちの少なくとも一方に沿って、面取り部を有すること。
【0015】
本発明によれば、更に別の態様は、血管医学処置の際に使用するための拡張可能な機械装置に関し、当該装置は、ストラットであって、当該ストラットにおいて画定されたアイレットとストラットプロファイルとを有し、アイレットはS字形を有する、ストラットを備える。相補的なS字形マーカーリベットが、ストラットのS字形のアイレット内に固定されている。
【0016】
本発明の別の態様は、血管医学処置の際に使用するための拡張可能な機械装置に関し、当該装置は、拡張可能な医療用装置の2つの隣接するクラウン間に画定された単一のストラットを備える。単一のストラットは、当該単一のストラットにおいて画定された複数のアイレットのセットを有し、当該セットにおける複数のアイレットのそれぞれの中には、マーカーリベットが固定されている。本発明の一態様では、上記セットにおける複数のアイレットは、連続して互いに重なり合っているが、本発明の別の態様では、上記セットにおける複数のアイレットは、重なり合うことなく順に直線的に連続して配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の上記及び他の特徴は、本発明を例示する以下の発明を実施するための形態及び図面からより容易に明らかになるものであり、いくつかの図面にわたり類似の参照番号は類似の要素を示す。
【
図1】単一材料(ニチノール)で作製された先行技術の従来のワイヤの径方向断面図であり、ワイヤは、外周から中心にかけて径方向内側に向けてレーザーカットされ、5つのパイ形のウェッジ又はセグメントが形成されている。
【
図2】本発明に係る2つの異なる材料から作製された、先行技術の引抜ファイル済管(drawn filed tube、DFT)複合ワイヤの径方向断面図である。放射線不透過性材料で形成された内側コアが、外側金属層によって取り囲まれている。この複合ワイヤは、外周から中心にかけて径方向内側に向けてレーザーカットされ、大きさの等しい5つのパイ形のウェッジ又はセグメントが形成されている。
【
図3】
図2の拡張時のストラットのうちの1つを示す。
【
図4A】リベットの圧着前の(すなわち、リベット打ちの前の)、先行技術の機械的血栓除去装置における、単一のアイレット及び関連する放射線不透過性マーカーリベットの平面図である。
【
図4B】線4B-4Bに沿った、
図4Aの先行技術の機械的血栓除去装置における、単一のアイレット及び関連する放射線不透過性マーカーリベットの断面図である。
【
図4C】リベットが定位置に圧着された後の(すなわち、リベット打ち後の)、
図4Aの先行技術の機械的血栓除去装置における、単一のアイレット及び関連する放射線不透過性マーカーリベットの平面図である。
【
図4D】線4D-4Dに沿った、
図4Cの先行技術の機械的血栓除去装置における、単一のアイレット及び関連する放射線不透過性マーカーリベットの断面図である。
【
図5A】リベットの圧着前の(すなわち、リベット打ち前の)、本発明に係る機械的血栓除去装置における、単一のアイレット及び関連する放射線不透過性マーカーリベットの平面図である。
【
図5B】線5B-5Bに沿った、
図5Aの本発明の機械的血栓除去装置における、単一のアイレット及び関連する放射線不透過性マーカーリベットの断面図である。
【
図5C】線5C-5Cに沿った、
図5Aの本発明の機械的血栓除去装置における、単一のアイレット及び関連する放射線不透過性マーカーリベットの断面図である。
【
図5D】リベットが定位置に圧着された後の(すなわち、リベット打ち後の)、
図5Aの本発明の機械的血栓除去装置における、単一のアイレット及び関連する放射線不透過性マーカーリベットの断面図である。
【
図5E】線5E-5Eに沿った、
図5Dの本発明の機械的血栓除去装置における、単一のアイレット及び関連する放射線不透過性マーカーリベットの断面図である。
【
図5F】線5F-5Fに沿った、
図5Dの本発明の機械的血栓除去装置における、単一のアイレット及び関連する放射線不透過性マーカーリベットの断面図である。
【
図6】その外面の一部において径方向内側に画定された環状形状の凹部、チャネル又は溝を有する、本発明に係る生の(raw)形状記憶合金管の一部分の縦方向断面図である。
【
図7】4つのストラットを有する例示的なレーザーカットされた機械装置の径方向断面図であり、4つのストラットはそれぞれ、その外面に、径方向内側に画定された対応する環状形状の凹部を有する。
【
図8】
図7のストラットのうちの1つの環状形状の凹部内にかしめられるか、又は溶接されたU字形又はC字形マーカーの拡大部分径方向断面図であり、各部品を組み立てたとき、マーカーがストラットの最外面よりも径方向外側に延びていないことを示す。
【
図9A】2つの近位側の放射線不透過性マーカー、3つの遠位側の放射線不透過性マーカー、及び、それらの間に配置された4つの中間の放射線不透過性マーカーセット(各セットが4つの中間マーカーを有する)を有する、例示的な外側ケージの平面図である。
【
図10】小さなプロファイルの効率的なラッピング(wrapping)と管腔の径が比較的細いマイクロカテーテルに対する適合性が改善するように、複数のストラット又はセグメント及び例示的なリベット用アイレットの位置が、千鳥状(位置合わせされていない)径方向構成になっている、例示的な拡張済ケージを示す。
【
図11A】外側ケージのレーザーカットパターンを展開して一部分を示す図であり、小さなプロファイルの効率的なラッピングと比較的径が細いマイクロカテーテルに対する適合性が改善するように、外側ケージの軸方向又は縦方向に沿って千鳥状になった又はオフセットされたアイレットを示す。
【
図11B】拡張前の圧縮状態にある、丸めた後の、
図11Aの外側ケージのレーザーカットパターンの一部分の斜視図であり、外側ケージの軸方向に沿って縦方向にオフセットされたアイレットの配置を示す。
【
図12A】先行技術の、アイレットを画定する組み立て済のストラット、及びアイレットの中に固定された関連するマーカーリベットの断面図であり、マーカー(maker)リベットはアイレット上に張り出し部を有していない。
【
図12B】先行技術の、アイレットを画定する組み立て済のストラット、及びアイレットの中に固定された関連するマーカーリベットの断面図であり、最外/上側面と最下方/下側面の両方において張り出し効果が作り出されることにより、組み立てた各部品の全体プロファイルの増加という不利益が生じている。
【
図12C】アイレットを画定する組み立て済のストラットの本発明に係る断面図であり、アイレットは、オフセットしたレーザーカットにより形成されたテーパ状又は傾斜した側壁と、アイレットの中に固定された関連するマーカーリベットとを有し、張り出し効果の増大と保持性の向上がもたらされている。
【
図12D】アイレットを画定する組み立て済のストラットの本発明に係る断面図であり、アイレットは、段のある又はずれた層を有するテーパ状又は傾斜した側壁と、アイレットの中に固定された関連するマーカーリベットとを有し、張り出し効果の増大と保持性の向上がもたらされている。
【
図12E】アイレットを画定する組み立て済のストラットの本発明に係る断面図であり、アイレットは、その最外/上側面に沿った単一の面取り部分と、アイレットの中に固定された関連するマーカーリベットとを有し、張り出し効果と保持性の向上がもたらされている。
【
図12F】アイレットを画定する組み立て済のストラットの本発明に係る断面図であり、アイレットは、その最外/上側面と、反対側の最内/下側面の両方に沿う2つの面取り部分と、アイレットの中に固定された関連するマーカー(maker)リベットとを有し、張り出し効果を発生させることなく、かつ全体プロファイルを増加させることなく、保持性が向上している。
【
図13A】本発明に係る単一のストラットに画定された例示的なS字形アイレット、及びその中に固定された相補的なS字形マーカーリベットの上面図である。
【
図13B】本発明に係る例示的な単一のストラットの上面図であり、当該単一のストラットは、各々が内部に固定された関連するマーカーリベットを有する一連の複数のアイレットを有し、側面視から観察したとき、セットを含む非直線的に配置されたマーカーリベットは、互いに連続して重なり合い、複数の独立したマーカーリベットではなく、単一の連続的なマーカーリベットの視覚効果を生じさせる。
【
図13C】本発明に係る例示的な単一のストラットの上面図であり、当該単一のストラットは、各々が内部に固定された関連するマーカーリベットを有する一連の複数のアイレットを有し、側面から観察したとき、マーカーリベットは(それらの間で重なり合うことなく)直線的に連続して配置され、単一のマーカーリベットのみによって実現されるよりも、より識別性の高い目視観測が実現され、当該特定のセットが容易に識別可能となっている。
【
図14A】その外周に画定された角度付き凹部を有するストラットの斜視図である。
【
図14C】線14C-14Cに沿った、
図14Aのストラットの角度付き凹部の断面図である。
【
図14E】外周に画定された角度付き凹部を有する組み立て済のストラットの斜視図であり、角度付き凹部の中にはC字形又はU字形マーカーが固定されている。
【
図14F】線14F-14Fに沿った
図14Eの組み立て済のストラットを通る断面図であり、組み立てた際に、C字形又はU字形マーカーがストラットの外径よりも径方向外側に延びないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
「遠位」又は「近位」という用語は、以下の説明において、治療医師若しくは医療介入医に対する位置又は方向に関して使用される。「遠位」又は「遠位に」は、医師若しくは介入医から離れた位置又は離れる方向である。「近位」又は「近位に」又は「近接した」は、医師若しくは医療介入医に近い位置又は向かう方向である。「閉塞」、「血塊」、又は「妨害物」という用語は、区別なく使用される。
【0019】
図2を参照すると、機械的血栓除去装置を製造するための例示的な先行技術としての引抜充填管(drawn filled tube、DFT)複合ワイヤ200の径方向断面図が示されている。
図2のワイヤは、第1の生体適合性材料で作製された内側コア215を有し、内側コア215は、この第1の材料とは異なる第2の生体適合性材料の外層210によって取り囲まれている。内側コア215を形成する第1の材料は、放射線不透過性材料、すなわち、撮像中に視認可能となるように、X線などの放射線の一形態又は別の形態に対して不透過性である材料で作製されている。好ましくは、第1の材料は、比較的高い放射線不透過性を有し、典型的には、白金、金、タンタル、又はタングステンなどの原子番号の大きな(例えば、原子番号が70番台の)材料である。外層210を含む第2の材料は、ニチノール(ニッケル-チタン金属合金)などの形状記憶合金である。次いで、2つの異なる材料から作製された、成形済の引抜充填複合管を、好ましくは超高周波数レーザーを使用して、径方向内側に、外層及び内側コアを通って中心まで(ワイヤを完全に貫通するわけではない)切断してよい。形成されるのは、複数のウェッジ形又はパイ形のストラットである。
図2の例示的な実施形態では、5つのウェッジ形又はパイ形のストラット205が画定されている。当然ながら、引抜充填管ワイヤは、所望に応じて、任意の数の1つ以上のウェッジ形又はパイ形のストラットを画定するようにレーザーカットされてよい。各ストラットは、標準的なニチノール装置の製造のように、マンドレルで拡張させて、ヒートセットしてもよい。
【0020】
図3に示される研磨後の単一の拡張されたストラット205から、本発明に従って製造された各ストラット(引抜充填管ワイヤの全てのストラット)が、示される例示的な実施形態において、放射線不透過性材料、例えば白金から作製された内側コア215の断片又は一部分を含むことが明確に視認できる。全てのストラットが、放射線不透過性材料から作製された一部分を含んでいることから、画像診断の際に、機械的血栓除去装置を完全に、すなわち、その全体を視認することができる。
【0021】
上述したように、ストラットの放射線不透過性を上回る放射線不透過性を有する材料(例えば、金、白金、又はタンタル)で作製された1つ以上のマーカーを、ステントのストラットに取り付けるか又は固定することにより、機械的血栓除去装置の、画像診断の際における放射線不透過性、すなわち視認性を向上させ得る。
図4A及び
図4Bは、従来技術の機械的血栓除去装置(例えば、ステント)のストラットにおける単一のアイレット又は開口部400、及び関連する又は対応する単一のリベット405(放射線不透過性材料により作製)の平面図であり、リベットはまだアイレット内に圧着されていない(すなわち、リベット打ちの前)。アイレット及び対応するリベットの線4B-4Bに沿った断面図を
図4Bに示す。この従来の形状のアイレットは楕円形又は卵形であり、関連するマーカーリベットもまた、楕円形、卵形、又は矩形の断面プロファイルを有している(
図4A)。
図4Cの平面図に示されるように、圧着の後(すなわち、リベット打ちの後)、圧着されたマーカーリベットとアイレットとの間に、ある距離(d、d’、d”)の接触又は重なり領域が存在する。
図4Dは、
図4Cの線4D-4Dに沿った、アイレット及び(リベット打ち後の)リベットを通る断面図である。
【0022】
ステントのストラットの開口部又はアイレット内からのリベット打ちされたマーカーの脱落を防止するために、本発明では、接触領域及び重なり領域を増加させることにより、ストラットのアイレット内における、リベットの保持力を高める。
図5A~
図5Fに示される本発明のアイレット設計における断面プロファイルは、従来技術のステント(
図4A~
図4D)のアイレットにおける従来の楕円形断面プロファイル(インデント/凹部及び/又はアウトデント/凸部を有さない)とは異なり、断面プロファイルにおいて1つ以上のインデント/凹部及び/又はアウトデント/凸部を有している。好ましくは、本発明のアイレット設計の断面プロファイルは、複数のインデント/凹部及び/又はアウトデント/凸部を有している。
図5Aの例示的な平面図では、アイレットの断面プロファイルは、蝶形バンデージ、ロケット形状、又はボウタイの断面プロファイルに類似している。アイレットのこの好ましい幾何学的形状構成は、好ましくは、それぞれの側部から中央に向かってテーパ状になっている。つまり、両側部は、線5B-5Bに沿った鏡対称像のように、互いに向かって内側に引き絞られている。本発明に係るアイレット500の各くぼみ部又は凹部510により、従来の矩形又は楕円形のアイレット構成の重なり領域又は表面(d、d’、d”)(
図4C)と比べて、増加した、すなわちより広い重なり領域又は表面(D、D’、D”)がもたらされる。ここで、重なり領域又は表面とは、圧着後(すなわち、リベット打ちの後)に、アイレットの外側プロファイルから放射方向外側に延びる、リベット打ちされたマーカーの領域を表す。この接触面の増加に起因して、リベットの側壁とアイレットの側壁との間の接触面積も増加する。重なり領域及び接触面におけるこうした増加により、対応するアイレット500内にリベット打ちされたマーカー505の保持性が向上する。本発明に係るアイレットのくぼみ部又は凹部510の数、位置、及び配置は、使用時の曲げ、撓み、及び/又は変形が最も大きくなりやすい領域に対して好ましくは標的化された強い保持力が付与されるように、所望に応じて選択されてよい。
【0023】
ステントのストラットに画定されたアイレット内に放射線不透過性マーカーをリベット打ちする代わりに、放射線不透過性材料(例えば、金又は白金)から作製されたマーカーを、ストラット自体の一部分又はセグメントに直接圧着することによっても、機械的血栓除去装置の放射線不透過性を改善することができる。残念ながら、こうした手法では、全体的なプロファイルの望ましくない増加、すなわち、圧着後の組み立て済装置の外径(OD)の増加、及び/又は内径(ID)の減少が生じてしまう。マーカーの全体的なプロファイルに何らかの増加が起きると、不都合なことに、収容又は再シーシングの際にそのリーディングエッジが引っ掛かり箇所となってしまうことがある。これらの問題を克服するために、本発明に係る超記憶合金(super memory alloy)管600(例えば、ニチノール管)の外面又は外側プロファイルは、組み立て済の部品の全体的なプロファイルを増加させることのない、放射線不透過性マーカーのかしめ又は溶接に対応するように加工される。具体的には、ストラットパターンのレーザーカットの前に、
図6に示すように、生の超記憶合金管600の外面から一部分だけを取り除くことによって、1つ以上の環状凹部、チャネル又は溝605を、径方向内側に画定する。なお、環状凹部、チャネル又は溝は、内側管腔610まで貫通していない。1つ以上の環状凹部、チャネル又は溝605は、研削されるか、レーザー加工されてもよく、又は超記憶合金管材料610の外面の一部分だけを取り除くための任意の他の従来技術であってもよい。単一の環状凹部、チャネル又は溝605が、生の超記憶合金管600(所望のパターンにレーザーカットされ、加熱される前のもの)の
図6の部分的な縦方向図に示されている。しかしながら、前述したように、管の外面には、任意の数の1つ以上の環状凹部、チャネル又は溝605が画定されてもよい。環状凹部、チャネル又は溝605は、所望の放射線不透過性マーカーが配置されるべき箇所に配置される。環状凹部、チャネル又は溝605は、管の最も外側の外周から対向する環状凹部、チャネル又は溝の底面までで測定される、径方向内側への深さ「r」を有する。この深さ「r」は、典型的には、壁厚の約10%~約50%で変動する。径方向内側への深さ「r」は、好ましくは約25~50μmであり、U字形又はC字形のマーカーが、ストラットの外径よりも径方向外側に延びることなく、U字形又はC字形のマーカーを内側に圧着させ得るのに十分なものである。むしろ、U字形又はC字形マーカーは、ストラットの外径と同一面となっていることが好ましい。
【0024】
材料が超記憶合金管の外面から取り除かれ、1つ以上の環状凹部、チャネル又は溝が形成されると、その後は、装置の拡張後にこれらの凹部が装置の主なストラット位置と位置合わせされ得るように、加工済の管に所望のストラットパターンがレーザーカットされてよい。
図7の例示的な径方向断面プロファイルでは、超弾性形状記憶合金管は、4つのストラット(615a、615b、615c、615d)を有する所望のパターンにレーザーカットされており、各ストラットは、関連するストラットの外面の一部分を取り除くことによって径方向内側に画定された関連する環状凹部、チャネル又は溝(605a、605b、605c、605d)を備えている。所望に応じて、関連する環状凹部、チャネル、又は溝をそれぞれ有する任意の数の1つ以上のストラットを形成してもよい。それぞれのマーカーは、ストラット内に画定された対応する凹部内にかしめられるか、又は溶接される。
【0025】
図8は、ストラット615c内に画定された環状凹部、チャネル、又は溝内に圧着された単一のU字形又はC字形マーカー620の断面図である。ストラットの外面に画定された環状凹部、チャネル又は溝により、結果として、U字形又はC字形マーカー620の最も外側の外周は、ストラット615cの最外径の外周よりも径方向外側に延びていない。したがって、組み立て済の部品の全体的なプロファイルは増加せず、(すなわち、U字形又はC字形マーカーの最も外側の外周は、ストラットの最外径(OD)と同一面であるか又は径方向内側にあるかのいずれかとなっている、そのため、引っ掛かりが生じ得る危険性が排除される。
【0026】
代替的な構成が
図14A~
図14Fに示されており、ここでは、ストラットに角度を付けたレーザーカットが行われ、結果として、ストラットからウェッジ形又はパイ形の部分が取り除かれている。
図14Aは、いくつかの角度を付けたレーザーカットによって形成されたパイ形又はウェッジ形凹部1405を有する例示的なストラット1400の斜視図である。
図14Aのストラットのパイ形又はウェッジ形凹部の上面図及び側面図が、それぞれ
図14B及び
図14Dに示されている。一方で、
図14Aのストラットのパイ形又はウェッジ形状の凹部の、線14C-14Cに沿った部分断面図が
図14Cに示されている。ストラットに1つ以上の角度を付けたレーザーカットが行われた後、
図14Eの組み立て済の装置の斜視図に示されるように、C字形又はU字形マーカー1410が対応する凹部に圧着されるか、かしめられるか、又は溶接される。
図14Fに示されるように、ストラットへの角度を付けたレーザーカットは、組み立てたときにマーカーがストラットの外径よりも径方向外側に延びないように、行われる。好ましくは、C字形又はU字形マーカーは、ストラットの外径と同一面となっている。
【0027】
図9A及び
図9Bはそれぞれ、機械的血栓除去装置の例示的な外側ケージ900の平面図及び側面図である。この例示的な実施形態では、ケージ900は、近位端にある2つの放射線不透過性マーカー905a、905bと、反対側の遠位端にある3つの放射線不透過性マーカー910a、910b、910cと、それらの間にある4つの中間マーカーセット(915a、915b、915c、915d)とを有し、ここで、各中間マーカーセットは、4つの中間マーカーを含む。具体的には、第1中間マーカーセット915aは、4つの中間マーカーセグメント(915a
1、915a
2、915a
3、915a
4)を含み、第2中間マーカーセット915bは、4つの中間マーカーセグメント(915b
1、915b
2、915b
3、915b
4)を含み、第3中間マーカーセット915cは、4つの中間マーカーセグメント(915c
1、915c
2、915c
3、915c
4)を含み、第4の中間マーカーセット915dは、4つの中間マーカーセグメント(915d
1、915d
2、915d
3、915d
4)を含む。近位端、遠位端、又はそれらの中間にあるケージのストラットに沿って、1つ以上の任意の数の放射線不透過性マーカーが配置されていてもよい。
【0028】
図10は、拡張状態にある例示的なケージ1000の一部分の斜視図である。
図10には、放射線不透過性マーカー材料で作製された関連するリベットを受容するための、4つの例示的なアイレット(1010a~1010d)位置を有する、ストラット又はセグメント1005が示されている。アイレット1010a~1010d、したがって、それらの中に受容される放射線不透過性マーカーリベットは、径方向に位置合わせされない。むしろ、アイレット1010a及び1010cは径方向に位置合わせされる一方で、1010b及び1010dは近位側又は遠位側に千鳥状になっている。アイレット、したがって、それらの中にある放射線不透過性マーカーリベットを、径方向に位置合わせされないように千鳥状に配置することにより、ケージをより効率的に小さい直径にまでラップダウンして(折り畳んで)、カテーテルに収容することが可能となり、有利である。
【0029】
図11A及び
図11Bは、外側ケージのレーザーカットパターンを示す。具体的には、
図11Aには、外側ケージ1100のレーザーカットパターンの一部が、平らに展開させた状態で示されている。この図から明確に見て取れるように、隣接するアイレット1110a~1110eは、外側ケージ1100に沿って縦方向又は軸方向に、互いに対してオフセットされているか、又は千鳥状に配置されている。具体的には、アイレット1110aは1110dに対してオフセットされている。アイレットを千鳥状に配置するか又はオフセットさせることにより、圧縮状態の外側ケージの、比較的ロープロファイルで効率的なラッピングが容易となり、比較的小径のマイクロカテーテル内に画定された管腔で受容するための適合性が高まる。丸めた構成にある拡張前の外側ケージ1100のレーザーカットパターンの一部が、
図11Bの斜視図に示されている。
図11Bでも、隣接するアイレット(1110a~1110e)が、互いに対して、ケージの縦方向又は軸方向に、千鳥状に又はオフセットされて配置されていることが明らかである。
【0030】
各マーカーリベットは、医療処置中に脱落してしまわないように、ストラット内に画定された関連するアイレット内の定位置に固定される。アイレット内でのマーカーの保持は、外側に向かうストラットの内側の方向に、及びストラットの外側から内側に向かう方向に、リベットを脱落させるように作用する力に抵抗するのに十分なものである。アイレットの張り出し部上にマーカーを張り出させることは、部品の固定性を向上させるために使用される典型的な方法であるが、全体的なプロファイルの増加をもたらすという欠点がある。
図12Aは、関連するアイレット1200a内に組み付けられた先行技術のリベット1210aの断面図である。アイレット1200aは、この構成においては、実質的に平行である側壁1215aを有し、矩形又は正方形のウェッジストラット断面1205aが形成されている。この設計では、ストラットのアイレットの上にリベットが張り出しておらず、側壁は(もし傾斜していたとしても)ほとんど傾斜していない。そのため、医療処置中に、マーカーがアイレットから脱落しやすくなっている。また、
図12Bに示すように、アイレット1200bを形成する平行な側壁の上側面及び下側面の両方において、マーカーリベット1210bを張り出させることも、先行技術において既知である。この設計では、張り出し部に起因する全体的なプロファイルの増加と引き換えに、脱落の発生が低減される。本発明に係るアイレット1200cを有する改変された設計が、
図12Cに示されている。アイレット1200cの側壁1215cは、管の中心線からオフセットさせたレーザーを用いてカットされることにより、(台形のように)大きく傾斜しているか又はテーパ状となっており、ここで、最内/下側面において、対向側面間の離間間隔が最小となり、最外/上側面において、対向側面間の離間間隔が最大となっている。アイレット1200cに固定されたリベット12010cは、最内/下側面上のみに張り出し部を有し(このようなプロファイルの増加は、それほど問題とならない)、最外/上側面には張り出していない。傾斜した側壁により、装置の内側又は中心軸に向かってマーカー(maker)を押すように作用する力に対する保持性を特に向上させる一方で、最内面上の張り出し部により、装置の内側から外側にマーカーを押すように作用する力に対する保持性を特に向上させている。
【0031】
したがって、全体的なプロファイルが増加して、マイクロカテーテルを通して送達する際の機械装置のラップダウンが困難になるという、望ましくない犠牲を伴うことのない、ストラット内に画定されたアイレット内にしっかりとマーカーを保持するための、より更に改良された設計を開発することが望ましい。本発明に係る新規な設計は、アイレット1200dのテーパ状又は傾斜した側壁1215dを有し、側壁1215dは、ストラット1205dに画定された複数の段、又はずれたテーパ状層によって更に画定されている(
図12D)。テーパ状又は傾斜した側壁1215dにおけるそのような段又は層は、一連のリングを、直径を減少させつつカットすることによって、標準的なレーザー構成を用いて製造され得るため、有益である。これにより、
図12Cに示される設計と同じ利益がもたらされるが、中心からずらしてレーザーカットする必要はない。
図12E及び
図12Fの断面図では、ストラット断面の壁部(1215e、1215f)はそれぞれ、ストラットに画定された単一の(最外/上側面のみにある)面取り部分又は2つの面取り部分(最外/上側面及び最内/下側面の両方で面取りされている)を有する。本明細書では、面取り部分は、ストラットの側壁の縁部又は角部にある傾斜面又はスロープ面として定義される。一方で、単一面取り部分の構成では、プロファイル又は体積の増加がそれほど問題とならない内側に沿ってのみ、張り出し部の効果が作り出されているが、最外/上側面には張り出しプロファイルは存在していない。他方で、2つの面取り部分の設計では、(その最外/上側面又は最内/下側面のどちらに沿っても)プロファイルを全く増加させることなく、保持の強化がもたらされている。オフセットさせたレーザーを使用して、
図12Eの単一の又は2つの面取り部分構成を作り出すことができる。
【0032】
機械的血栓除去処置は、典型的には、X線透視の下で行われ、機械的血栓除去装置の放射線不透過性マーカーは、介入医に、医療処置中の装置の位置及び拡張/縮小状態についての視覚的指標を提供する。例示として、医療処置中に視覚的指標を用いることにより、介入医に提供される情報としては、送達時のマイクロカテーテルにおける装置の位置、展開時の装置の拡張、回収時の装置の拡張の変化などが含まれ得る。
【0033】
機械装置に沿った複数の位置において外周を取り巻く明確に画定されたリングとして配置された放射線不透過性マーカーは、医療処置中の医師又は介入医に対し、観察可能な情報を提供する。典型的には、処置中において、医師又は介入医によって使用されるX線透視像には2つ、すなわち、(患者の胴体と平行な)前後像と、(患者の側面と平行な)側面像がある。ある特定のマーカーが属するリングを見分けることは、有益となる可能性があり、医師又は介入医にとっての課題となり得る。
【0034】
本発明は、マーカーの視認性を向上させること、及び外周を取り巻く各リングにおけるマーカーを幾何学的に区別化することにより、個別に識別される各マーカーがどのマーカーリングに属しているのかを容易に見分けることについて探求するものであり、もって、医師又は介入医が、各マーカーが位置している、装置の長さに沿った別々の位置における装置の拡張/縮小状態について判断できるようにするものである。
【0035】
本発明によれば、機械装置全体のプロファイルを増加させることなく、又は性能に悪影響(例えば、マイクロカテーテルを通して前進させるときの送達力の増大)を及ぼすことなく、撮像の際のマーカーの区別又は識別が達成される。
図13Aの上面図は、ストラット1305a内に画定された、組み立て済のS字形アイレット1300aを示し、S字形アイレット1300aの中には、相補的なS字形マーカー1310aが固定されている。個々のマーカーリベットの形状を変化させることによって、例えば、長くすることなどによって、リベットは、撮像の際に、よりはっきりとし、容易に視認可能となる。代替的には、単一のアイレット内に固定された単一のマーカーの代わりに、関連するアイレット内に固定された一連の複数のマーカーを有する機械装置の単一のクラウン又は単一のストラット(隣接するクラウン間のセグメントとして定義される)によって、装置全体のプロファイルを増大させることなく、マーカーの視認性を高めてもよい。
図13Bは、本発明に係る、一連の複数のアイレットを有する例示的な単一のストラットの上面図であり、一連の複数のアイレットはそれぞれ、その中に固定された関連するマーカーリベットを有している。様々な視点から観察されるとき、複数のマーカーからなるセットは、単一のストラットに画定された関連する単一のアイレットに固定された単一のマーカーリベットよりも、視認性が高くなる。例えば、部分的な側方傾斜斜視図から観察されるとき、単一のストラットに対する一連のマーカーリベットは、連続して互いに重なり合い、同じ全体体積の放射線不透過性材料を用いた、一連の複数の独立した別々のマーカーリベットではなく、単一の連続的なマーカーリベットの視覚効果を作り出す。
【0036】
図13Cは、本発明に係る、一連の複数のアイレットを有する、代替の例示的な単一のストラットの上面図であり、一連の複数のアイレットは直線的に配置され、それぞれ、その中に固定された関連するマーカーリベットを有している。異なる視点から観察されるとき、これらの複数のマーカーのセットは、単一のマーカーよりも視認性が高い。例えば、端部から又は側面から観察したとき、マーカーリベットは(それらの間で重なり合うことなく)直線的に連続して、又は単一のストラットに画定された単一のアイレットにおいて、単一のマーカーリベットのみによって実現されるよりも、より識別性の高い目視観測を実現する他の一様な構成で、配置されている。
図13A~
図13Cに記載されるこのような新規な特徴は、ストラットにおける任意の所望の位置(例えば、縁部又は外周)において、撮像中に容易に識別可能かつ視認可能となるように、利用されてもよい。
図13B及び
図13Cに示される各セットは3つのマーカーを含んでいるが、所望に応じて、連続した任意の数の2つ以上のマーカーが使用されてもよい。
【0037】
例示され、説明された本発明の特徴は、機械的血栓除去処置で使用され得るが、他の神経血管又は血管内医学処置での使用にも好適である。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施形態に適用されるような本発明の基本的な新規特徴を示し、記載し、かつ指摘してきたが、当業者であれば、例示されたシステム/装置の形態及び詳細、並びにそれらの操作における様々な省略、置換、及び変更を、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく実施し得ることが理解されよう。例えば、実質的に同じ機能を実質的に同じ方法で実行して同じ結果を達成する要素及び/又はステップの組み合わせは全て、本発明の範囲内に包含されるように明らかに意図される。また、上述のある実施形態から別の実施形態への要素の置き換えも、完全に意図及び想定の範囲内である。また、図面は必ずしも一定の比例尺で描かれておらず、あくまでも概念的なものにすぎない点も理解されるべきである。したがって、添付の特許請求の範囲に示される内容によってのみ限定されるものとする。
【0039】
本明細書に引用された全ての発行済み特許、係属中の特許出願、刊行物、論文、書籍、又は他の参照文献はいずれも、その全体が参照により本明細書に援用されている。
【0040】
〔実施の態様〕
(1) 血管医学処置の際に使用するための拡張可能な機械装置であって、前記装置は、
ストラットであって、前記ストラットにおいて画定されたアイレットを有し、前記アイレットは少なくとも1つのインデント又はアウトデントを含む幾何学的形状を有する、ストラットと、
前記ストラットの前記アイレット内に固定されたマーカーリベットと、を備える、拡張可能な機械装置。
(2) 前記アイレットの前記幾何学的形状は、1つより多くのインデント又はアウトデントを含む、実施態様1に記載の拡張可能な機械装置。
(3) 前記アイレットの前記幾何学的形状は、縦方向軸及び/又は横方向軸に沿って互いの対称の鏡像となったインデント又はアウトデントを含む、実施態様2に記載の拡張可能な機械装置。
(4) 前記アイレットの前記幾何学的形状は、蝶形バンデージ形状、ロケット形状、又はボウタイ形状のうちの1つである、実施態様1に記載の拡張可能な機械装置。
(5) 血管医学処置の際に使用するための拡張可能な機械装置であって、前記装置は、
外面及び外径径方向プロファイルを有するストラットであって、前記ストラットの前記外面に凹部が画定され、前記凹部は径方向内側に延びている、ストラットと、
前記ストラットの前記凹部内に受容かつ固定されたU字形マーカーリベットであって、前記ストラットと前記U字形マーカーリベットの組立体の全体の径方向プロファイルは前記ストラット単独での前記外径径方向プロファイル以下である、U字形マーカーリベットと、を備える、拡張可能な機械装置。
【0041】
(6) 前記凹部は、環状溝部、又はウェッジ形状の径方向断面プロファイルを有する角度付き凹部である、実施態様5に記載の拡張可能な機械装置。
(7) 血管医学処置の際に使用するための拡張可能な機械装置であって、前記装置は、
複数のストラットであって、前記複数のストラットのそれぞれにおいてアイレットが画定されている、複数のストラットを備え、前記機械装置の縦方向軸に沿った隣接する前記アイレットの配置は、互いに対して径方向にオフセットされている、拡張可能な機械装置。
(8) 血管医学処置の際に使用するための拡張可能な機械装置であって、前記装置は、
ストラットであって、前記ストラットにおいて画定されたアイレットを有し、前記アイレットはテーパ状側壁を有する、ストラットと、
前記ストラットの前記アイレット内に固定されたマーカーリベットと、を備える、拡張可能な機械装置。
(9) 前記テーパ状側壁は、少なくとも1つの段のある層を形成している、実施態様8に記載の拡張可能な機械装置。
(10) 前記テーパ状側壁は、複数の段のある層を形成している、実施態様8に記載の拡張可能な医療用装置。
【0042】
(11) 前記マーカーリベットは、前記ストラットの最内径面上のみに張り出し部を形成している、実施態様8に記載の拡張可能な医療用装置。
(12) 血管医学処置の際に使用するための拡張可能な機械装置であって、前記装置は、
内部に画定された壁部を有するアイレットを有するストラットであって、前記ストラットの前記壁部の最外上側縁部又は最内下側縁部のうちの少なくとも一方に沿って、面取り部を有する、ストラットを備える、拡張可能な機械装置。
(13) 前記面取り部は、前記アイレットの前記壁部の前記最外上側縁部にある、実施態様12に記載の拡張可能な機械装置。
(14) 前記面取り部は、前記アイレットの前記壁部の前記最外上側縁部及び前記最内下側縁部にある、実施態様12に記載の拡張可能な機械装置。
(15) 血管医学処置の際に使用するための拡張可能な機械装置であって、前記装置は、
ストラットであって、前記ストラットにおいて画定されたアイレットとストラットプロファイルとを有し、前記アイレットはS字形を有する、ストラットと、
前記ストラットのS字形の前記アイレット内に固定された相補的なS字形マーカーリベットと、を備える、拡張可能な機械装置。
【0043】
(16) 血管医学処置の際に使用するための拡張可能な機械装置であって、前記装置は、
前記拡張可能な医療用装置の2つの隣接するクラウン間に画定された単一のストラットであって、前記単一のストラットにおいて画定された複数のアイレットのセットを有する、単一のストラットと、
前記セットにおける前記複数のアイレットのそれぞれの中に固定されたマーカーリベットと、を備える、拡張可能な機械装置。
(17) 前記セットにおける前記複数のアイレットは、連続して互いに重なり合う、実施態様16に記載の拡張可能な機械装置。
(18) 前記セットにおける前記複数のアイレットは、重なり合うことなく順に直線的に連続して配置されている、実施態様16に記載の拡張可能な機械装置。