(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】パワー半導体用基板の製造方法および耐熱ガラス基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/38 20060101AFI20250212BHJP
H05K 3/12 20060101ALI20250212BHJP
H05K 3/00 20060101ALN20250212BHJP
【FI】
H05K3/38 D
H05K3/12 610H
H05K3/00 X
(21)【出願番号】P 2021056365
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2024-03-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、経済産業省、戦略的基盤技術高度化支援事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】307016180
【氏名又は名称】地方独立行政法人鳥取県産業技術センター
(73)【特許権者】
【識別番号】598117366
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100116861
【氏名又は名称】田邊 義博
(72)【発明者】
【氏名】玉井 博康
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 好明
(72)【発明者】
【氏名】高島 主男
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 強
(72)【発明者】
【氏名】丸本 恵
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕美子
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/194389(WO,A1)
【文献】特開2014-075543(JP,A)
【文献】特開2011-108840(JP,A)
【文献】特開平09-232753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/00
H05K 3/10 - 3/26
H05K 3/38
H01L 25/00 - 25/07
H01L 25/10 - 25/11
H01L 25/16 - 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板に対してガラス基板と電極との密着性を確保するための密着用ペーストをスクリーン印刷により塗布する密着層形成工程と、
電極を形成するパターンに沿って金属微粒子ペーストをスクリーン印刷により塗布する電極パターン層形成工程と、
パワー半導体素子その他の部品のハンダ付けの際の濡れ性を確保するためのハンダ用ペーストをスクリーン印刷により塗布する濡れ層形成工程と、
所定温度にて焼成してそれぞれのペースト部分を固化させる固化工程と、
を順に含んだことを特徴とするパワー半導体用基板の製造方法。
【請求項2】
電極パターン層形成工程を複数回繰りかえして電極の厚みを厚くすることを特徴とする請求項1に記載のパワー半導体用基板の製造方法。
【請求項3】
ガラス基板に対してガラス基板と電極との密着性を確保するための密着用ペーストをスクリーン印刷により塗布し、
ついで、電極を形成するパターンに沿って金属微粒子ペーストをスクリーン印刷により塗布し、
ついで、パワー半導体素子その他の部品のハンダ付けの際の濡れ性を確保するためのハンダ用ペーストをスクリーン印刷により塗布し、
その後、所定温度にて焼成してそれぞれのペースト中のバインダーを放散させて、
ガラスに密着した電極パターン表面の一部又は全部にハンダの濡れ性を確保した層が形成されたことを特徴とする耐熱ガラス基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力の制御や供給をおこなうパワー半導体に好適な基板の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車の普及等、大電力や高電圧用のいわゆるパワー半導体の需要が高まってきている。パワー半導体は必然的に高温となりやすいため、それらを実装する基板としては耐熱性が求められる。このため、パワー半導体用の基板としては、アルミナ等のセラミックス基板が採用されている。
基板上への電極の形成にはフォトリソグラフィが用いられる。すなわち、セラミックス基板に対してメタル層の形成(真空成膜)→レジスト層の形成→パターン露光→現像→エッチング→レジスト部分の除去を経て、後工程にてパワー半導体のハンダ付け等実装がなされるセラミックス基板が製造される。
【0003】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
従来のパワー半導体を実装する基板は、素材であるセラミックス自体が安価ではない、という問題点があった。
また、真空成膜やフォトリソグラフィといった複数の工程を経る必要があり、加えて、セラミックスは高温焼成が必要で、焼成後に硬度が高くなるため一般的にカケや割れが生じるなど加工性に優れないので、フォトリソグラフィの後の切り分けが困難であり、総じていえば製造効率が高くない、という問題点があった。
更に、セラミックスに銅系導電ペーストで銅厚膜回路を形成する方法もあるが、密着性を改善するためにガラス成分の量を調整する必要があり、ガラス成分の量が少ないと密着性が悪くなり、ガラス成分の量が多いと密着性は改善するが導電性が悪くなり、また、焼成処理によりガラス成分が導体配線の表面に析出されることでハンダ濡れ性が悪くなるため、ペースト成分の配合が難しくなる課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-7399
【文献】特開平5-206635
【文献】特開平8-298359
【文献】特開2008-243840
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、製造効率に優れ安価にパワー半導体用基板ないし耐熱性基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のパワー半導体用基板の製造方法は、ガラス基板に対してガラス基板と電極との密着性を確保するための密着用ペーストをスクリーン印刷により塗布する密着層形成工程と、電極を形成するパターンに沿って金属微粒子ペーストをスクリーン印刷により塗布する電極パターン層形成工程と、パワー半導体素子その他の部品のハンダ付けの際の濡れ性を確保するためのハンダ用ペーストをスクリーン印刷により塗布する濡れ層形成工程と、所定温度にて焼成してそれぞれのペースト部分を固化させる固化工程と、を順に含んだことを特徴とする。
【0007】
すなわち、請求項1にかかる発明は、ペーストを使い分けることにより、金属微粒子や各バインダーの素材選択および調合の自由度を高め、電極へのハンダ付けの信頼性および作業性並びに電極の基板への密着性をいずれも確保し、耐熱性に優れ大電流用途にも好適な電極基板を、セラミックスより安価で加工性にも優れるガラスを用い、簡便かつ安価な方法により製造することができる。
【0008】
ガラス基板は、特に限定されないが、ある程度の高温環境下でも変質せず、膨張率も小さなものが好ましい。また、後述のように、基板を切断したり割り出したりすることもあるため、このような加工性に適したものであることが好ましい。品質よく安価な、ケイ酸ガラスやホウケイ酸ガラスを用いることができる。たとえば、液晶ディスプレイ用ガラスなどを流用することもできる。
密着用ペーストにおける、密着性を確保する素材は、用いるガラスおよび金属微粒子(場合によってはバインダー)に応じて適宜選択および調合すればよい。たとえばバインダーとしてフェノール樹脂、溶剤としてブチルカルビトールなどを挙げることができる。
金属微粒子ペーストも、ガラス、密着用ペースト、ハンダ用ペースト、等の組合せにおいて適宜素材選択および調合すればよい。なお、パワー半導体用基板であるため、金属微粒子すなわちフィラーは、銅や銀を主体とする微粒子であることが好ましい。粒径や粒度分布も適宜設計すればよいが粒径としてはマイクロメートルオーダーからナノメートルオーダーが好ましい。バインダーとしてフェノール樹脂、溶剤としてブチルカルビトールなどを挙げることができる。ペーストには基板を用いた製品に影響がなければ、適宜微量の分散剤などが含まれていてもよいものとする。
ハンダ用ペーストにおける、ハンダの濡れ性をよくする素材も、用いる金属微粒子ペーストに応じて適宜選択および調合すればよい。たとえば、フィラーとして銀コート銅、バインダーとしてエポキシ樹脂を用いたペーストを挙げることができる。
【0009】
なお、スクリーン印刷は、版(スクリーンマスク)を基板直上または下層直上にあてがい上からペーストを擦り付け、スクリーンマスク中のメッシュ越しにペースト層を転写・塗布・形成する技術である。メッシュ(孔)が設けられているところがパターンを形成する。なお、重ね塗りも簡便にできるため、所望に厚くして電極の低抵抗化、発熱抑制を図ることもできる。
また、スクリーンマスクはペーストに応じて交換する。密着層形成工程で用いるスクリーンマスクと、電極パターン層形成工程で用いるスクリーンマスクとは、メッシュ部分は略同形(同パターン)である(密着層用は一回り大きくてもよい)。また、濡れ層形成工程で用いるスクリーンマスクは、メッシュ部分をパワー半導体素子その他の部品のハンダ付けする部分ないし領域のみとするとペーストの無駄を省くことができる。
仕様の態様により、濡れ層形成工程後に、絶縁層や耐酸化層、保護層を形成するようなスクリーン印刷を加えることもできる。
固化は広義であって、各バインダーや溶剤を除去し、金属微粒子が結合して所望の抵抗値を発揮するまでの焼成のほか、後で別途このように焼成するとして、ペーストがだれないような乾燥や硬化も含まれるものとする。
なお、本発明において、電極は適宜回路と表現することもできる。
【0010】
請求項2に記載のパワー半導体用基板の製造方法は、請求項1に記載のパワー半導体用基板の製造方法において、電極パターン層形成工程を複数回繰りかえして電極の厚みを厚くすることを特徴とする。
【0011】
すなわち、請求項2にかかる発明は、簡便に電極の低抵抗化を実現し、好適にパワー半導体用基板が製造可能となる。
【0012】
請求項3に記載の耐熱ガラス基板は、ガラス基板に対してガラス基板と電極との密着性を確保するための密着用ペーストをスクリーン印刷により塗布し、ついで、電極を形成するパターンに沿って金属微粒子ペーストをスクリーン印刷により塗布し、ついで、パワー半導体素子その他の部品のハンダ付けの際の濡れ性を確保するためのハンダ用ペーストをスクリーン印刷により塗布し、その後、所定温度にて焼成してそれぞれのペースト中のバインダーを放散させて、ガラスに密着した電極パターン表面の一部又は全部にハンダの濡れ性を確保した層が形成されたことを特徴とする。
【0013】
すなわち、請求項3にかかる発明は、設計自由度の高さに由来して電極へのハンダ付けの信頼性および作業性並びに電極の基板への密着性をいずれも確保した、耐熱性および加工性に優れる安価な電極基板を提供できる。
【0014】
バインダーを放散させる、とは、不要成分を放散させる意であり、溶剤などの放散も含まれるものとする。
【0015】
なお、請求項2のように電極パターン層形成を複数回おこなう場合には、ペーストの粘度や性状によっては、適宜前の電極パターン層を乾燥させる乾燥工程を挟み、各層の安定的な積層を量るようにしてもよい。
【0016】
また、異なるパターンによる電極パターン層形成工程を複数回含ませ、パターンが切り替わる際には絶縁層を形成する絶縁層形成工程を間に挟んで、立体回路を形成するようにしてもよい。これにより、電極の設計自由度を高めることができる。
このとき、絶縁層は、絶縁物質の微粒子を主材とするペーストをスクリーン印刷してもよく、別途(局所的な)絶縁シートを差し込むようにしてもよい。
【0017】
また、ガラス基板を切断ないし割り出す分離工程を更に含ませるようにしてもよい。これにより、一枚のガラス基板から同一または複数種のパターンのパワー半導体用基板を多数製造でき、製造効率を高めることが可能となる。またセラミックスに比して加工時の破損が少なく、歩留まりを向上させ、安価に基板を供給可能となる。
なお、分離工程は、パワー半導体素子その他の部品等をハンダ付けする前とすることも後とすることもでき、前後の工程や作業性を考慮して決定すればよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、製造効率に優れ安価にパワー半導体用基板ないし耐熱性基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態1のパワー半導体用基板の製造方法をしめすフローチャートである。
【
図2】層形成の様子をしめした模式図である。このうち
図2(a)は、電極パターン層が印刷された平面図を、
図2(b)は、濡れ層自身の平面図を、
図2(c)は、濡れ層が形成された直後の基板の平面図である。
【
図3】実施の形態2のパワー半導体用耐熱基板の製造方法をしめすフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明のパワー半導体用基板の製造方法の一実施の形態をしめすフローチャートである。なお、フローチャートの右側に、電極パターン等が形成される様子を表す模式図を付加してある。
【0021】
本発明で使用するスクリーン印刷機またはスクリーン印刷技術は汎用のものであるのでその構成の詳細な説明は省略する。
【0022】
本実施の形態では、用いるペーストは、次の特長を有したものである。
・密着用ペースト:樹脂成分が多いペースト
・金属微粒子ペースト:粒子径が10nm~200μmの銅微粒子粉末を主体的に使用した高導電性ペースト
・ハンダ用ペースト:樹脂成分が少なく酸化されにくいペースト
【0023】
ここでは、200mm×200mm×4mmのガラス基板10を4×5枚並べて印刷する例について説明する。印刷面の大きさは800mm×1000mmとなる。ガラス基板10は、市販の液晶テレビ用のホウケイ酸ガラスを用いたものとする。液晶テレビ用として製造されたガラスは大量に生産され入手が容易で安価であり、平面に狂いがなく(平坦性に優れ)好適である。
【0024】
まず、ガラス基板10表面に密着層20を形成する(ステップS1)。
密着層20とは、電極パターン層30由来の事実上銅からなる電極35がガラス基板10へ十全に密着し、剥離等しないために介在させる層である。
密着層20の形成に際しては、はじめに、電極35と同形のメッシュが形成されたスクリーンマスクをガラス基板10の上空に0.5mmのクリアランスをもって固定する。次に、スクリーンマスク上に、密着用ペーストをのせスキージにも同ペーストを塗る。スキージをスクリーンマスクに所定の圧力または沈み込み深さで押しつけつつ、スクリーンマスク上の一端から他端まで所定の速度で移動させる。
以上の動作によりガラス基板10上に電極の形状に沿った密着層20が転写形成される。
【0025】
なお、以降の各層の形成においては、適宜上にのせる層の塗布安定性を高めるため、仕様の態様により乾燥工程を介在させるようにする。なお、乾燥工程は必ずしも加温することを意味せず、上にペーストが安定的に付着するような表面性状となれば足り、所定時間放置する態様も含まれる。
【0026】
次に、密着層20の上に電極パターン層30を形成する(ステップS2a)。
電極パターン層30とは、焼成工程(ステップS4)でバインダーをとばし(すなわち放散させ)、銅からなる電極35となるべき層をいう。
電極パターン層30の形成に際しては、はじめに、電極35となる部分にメッシュが形成されたスクリーンマスクを密着層20の上空に0.5mmに膜厚増加分を加えたクリアランスをもって固定する。次に、スクリーンマスク上に、金属微粒子ペーストをのせ、スキージにも同ペーストを塗る。スキージをスクリーンマスクに所定の圧力または沈み込み深さで押しつけつつ、スクリーンマスク上の一端から他端まで所定の速度で移動させる。
ここで、電極35の低抵抗化の設計値に基づき、複数回の層形成をおこなう。本実施の形態では3層厚とする。すなわち、再び電極パターン層30を上のせし(ステップS2b)、更に電極パターン層30を上のせする(ステップS2c)。
以上の動作により密着層20上に密着層20と同形の電極パターン層30が形成される。電極パターン層30の厚みは、1回の印刷で10μm、3回の印刷で30μmである。
なお、印刷時のスクリーンマスクと密着層20のクリアランスは、スクリーン印刷で形成される膜厚は10μmであるため膜厚増加分を加えない位置で固定してもよい。
【0027】
次に、電極パターン層30の上に濡れ層40を形成する(ステップS3)。
濡れ層40とは、後工程で実装するパワー半導体素子その他の部品のハンダ付けの際の濡れ性を確保するためにのせる層である。
濡れ層40の形成に際しては、はじめに、素子の脚がくる周囲にだけメッシュが形成されたスクリーンマスクを電極パターン層30の上空に0.5mmに膜厚増加分を加えたクリアランスをもって固定する。次に、スクリーンマスク上に、ハンダ用ペーストをのせ、スキージにも同ペーストを塗る。スキージをスクリーンマスクに所定の圧力または沈み込み深さで押しつけつつ、スクリーンマスク上の一端から他端まで所定の速度で移動させる。
以上の動作により、電極パターン層30上に部分的に濡れ層40が形成される。
【0028】
なお、各工程におけるスクリーンマスクのメッシュはそれぞれのペーストに適した厚みおよび孔の大きさとしている。
【0029】
次に、各層の形成されたガラス基板10を焼成する(ステップS4)。最高温度および焼成時間、また、昇温および降温工程は適宜設計することができる。
これにより、各ペースト中のバインダーをとばし、ガラス基板10に十全に密着接合した電極であって、ハンダ付けされる部分にはスポット的に良好な濡れ性が確保された、低抵抗の銅電極35が形成される。この状態の基板を、基板11と称することとする。
【0030】
次に、基板11にパワー半導体素子その他の部品をハンダ付けする(ステップS5)。
最後に、基板11を切り出し、パワー半導体素子その他の部品の取り付けられた製品13として分離する(ステップS6)。基板11の切り出しは、ガラスの切り出し技術を適宜用いればよい。なお、ガラス基板10に、はじめから切り出し用の溝を形成しておいてもよい。
【0031】
以上の工程を経ることにより、パワー半導体ののった製品13を得ることができる。なお、パワー半導体をのせる前に基板11を切り出せば、パワー半導体用基板が得られることとなる。
なお、
図2に、層形成の様子を示す。
【0032】
〔実施の形態2〕
次に、立体的に交差したパワー半導体用の耐熱基板を製造する方法について説明する。
図3は、立体的に交差したパワー半導体用耐熱基板を製造するフローチャートである。なお、フローチャートの右側に、電極パターン等が形成される様子を表す拡大模式図を付加してある。
【0033】
なお、実施の形態1と同様の工程については説明を適宜省略する。
本実施の形態では、実施の形態1のペーストに加えて、次のペーストも用いる。
・絶縁用ペースト:絶縁物質を多く含むペースト
【0034】
まず、ガラス基板10表面に密着層20を形成する(ステップS1)。
密着層20は、電極35および電極36がガラス基板10へ十全に密着し、剥離等しないために介在させる層である。
【0035】
次に、密着層20の上に電極パターン層30を形成する(ステップS2a)。
更に、電極パターン層30を上のせする(ステップS2b)。
【0036】
次に、絶縁層50を形成する(ステップS3)。
絶縁層50とは、電極パターン層30と、絶縁層50の直上にのせる電極パターン層31とが交差する部分に介在させる層である。電極がショートしない為に設ける。
絶縁層50の形成に際しては、電極の交差部分にメッシュが形成されたスクリーンマスクを電極パターン層30の上空に0.5mmに膜厚増加分を加えたクリアランスをもって固定する。次に、スクリーンマスク上に、絶縁用ペーストをのせ、スキージにも同ペーストを塗る。スキージをスクリーンマスクに所定の圧力または沈み込み深さで押しつけつつ、スクリーンマスク上の一端から他端まで所定の速度で移動させる。
以上の動作により電極パターン層30の上に絶縁層50が形成される。
【0037】
次に、電極パターン層31を形成する(ステップS4a)。
更に、電極パターン層31を上のせする(ステップS4b)。
電極パターン層31は、電極パターン層30と同様、焼成工程(ステップS6)でバインダーをとばし、銅からなる電極36となるべき層をいう。なお、電極35と電極36は交差部分があり、同一ではない。
電極パターン層31の形成に際しては、はじめに、電極36となる部分にメッシュが形成されたスクリーンマスクを絶縁層50の上空に0.5mmに膜厚増加分を加えたクリアランスをもって固定する。次に、スクリーンマスク上に、金属微粒子ペーストをのせ、スキージにも同ペーストを塗る。スキージをスクリーンマスクに所定の圧力または沈み込み深さで押しつけつつ、スクリーンマスク上の一端から他端まで所定の速度で移動させる。
ここで、電極36の低抵抗化の設計値に基づき、複数回の層形成をおこなう。本実施の形態では2層厚としている。
なお、電極36は、密着層20と絶縁層50との上にまたがって形成され高低差がある。これは、メッシュの孔や厚みを部分的に変えることにより対応するほか、仕様の態様によっては、たとえば、ステップS4aにて、スクリーンマスクを使い分けて複数回の塗り分けをおこない電極パターン層31を形成するようにしてもよく、また、電極36の膜厚は後述のように140μmであるため高低差の対応をしなくてもよい。
以上の動作により立体的な交差を有する電極パターン層31が形成される。
【0038】
次に、電極パターン層31の上に濡れ層40を形成する(ステップS5)。
次に、各層の形成されたガラス基板10を焼成する(ステップS6)。この状態の基板を、基板12と称することとする。
【0039】
最後に、基板12を切り出す(ステップS7)。これにより、パワー半導体用その他、高温環境下でも使用できる耐熱用基板14が得られる。
【0040】
以上説明したように、本発明によれば、加工性が悪く真空蒸着なども必要なセラミックス基板にかえて、ガラス基板を用いるため、容易に割り出せ常圧で電極形成が可能となる。寸法安定性にも優れる。
また、大電流用とするには厚塗りの他、ペースト中の金属微粒子の割合を高める必要がありガラスとの密着性が損なわれる可能性があるところ、スクリーン印刷技術を採用するので別途密着用ペーストを介在させることができ、密着信頼性を簡便に確保ないし向上させることができる。
また同様に、金属微粒子の種類、粒度、割合、バインダー等の種類によってはハンダの濡れ性が損なわれる可能性があるところ、これもスクリーン印刷技術を採用するので別途ハンダ用ペーストを介在させることができ、ハンダの濡れ性を簡便に確保ないし向上させることができる。
【0041】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
たとえば、密着層を20μm厚、電極パターン層を1回の印刷で10μm厚、10回の印刷で100μm厚、濡れ層を20μm厚、絶縁層を20μm厚とすることもできる。
膜厚を重視する場合は、20μm厚とし、細線を形成する場合は10μm厚などの印刷することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、製造効率に優れ安価にパワー半導体用基板ないし耐熱性基板を提供できる。
【符号の説明】
【0043】
10 ガラス基板
11 基板
12 基板
13 製品
14 耐熱用基板
20 密着層
30 電極パターン層
31 電極パターン層
35 電極
36 電極
40 濡れ層
50 絶縁層